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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B21C
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B21C
管理番号 1052988
審判番号 訂正2000-39118  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1977-06-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-10-13 
確定日 2002-02-06 
事件の表示 特許第1293128号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.請求の要旨
本件審判請求の要旨は、本件特許第1293128号(昭和50年12月20日出願、昭和60年12月16日設定登録、平成4年11月25日請求公告(特許審判請求公告第751号))の願書に添付した明細書を、本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるというものである。
そして、上記訂正明細書の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「大径角形鋼管を製造する方法において、板厚が19mm〜25mmの一枚厚肉鋼板を長さ方向に移送して両側の開先加工を行なった後、プレスにて角形鋼管の四隅に当たる部分を一箇所宛順次曲げ加工して開先間の隙間がそこから金型が抜出せる最小限の寸法になる角形鋼管近似の形状に成形し、ついで前記角形近似鋼管を複数段の成形ロールを通して上下からローラで押えて送りつつ両側のローラによって順次段階的に押え込んで角形鋼管形状に成形し、かつ両側の開先部をX形状に突合せた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付け溶接し、つぎに開先部内外面を自動溶接によって溶接した後、複数段の矯正ローラからなる歪取りロールを通過させることによって歪取りを行なうことを特徴とする大径角形鋼管の製造方法。」

II.訂正拒絶の理由の概要
平成13年1月30日付で当審が通知した訂正拒絶の理由の概要は、
「訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は、本件特許に係る出願の出願前に日本国内において公然知られた発明及び本件特許に係る出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件審判請求は、同法第126条第4項の規定に適合しない。」
というものである。

III.引用例
訂正拒絶の理由で当審が引用した引用例1〜8は、次のとおりである。
引用例1:昭和49年3月15日付、日刊工業新聞縮刷版
引用例2:16mmPR映画フィルム
引用例3:PR映画の中のナレーション抜粋及び工程順の写真
引用例4:特開昭50-51459号公報
引用例5:特公昭50-35499号公報
引用例6:特開昭49-23366号公報
引用例7:「第23・25回西山記念技術講座 最近の鋼管技術の進歩」社団法人日本鉄鋼協会(昭和48年11月27・28日(第23回)、昭和49年3月5・6日(第25回)、第182〜187頁、第194〜195頁
引用例8:「特別報告書No.18 わが国における最近の鋼管製造技術の進歩」社団法人日本鉄鋼協会、昭和49年7月20日発行、第274〜282頁
(なお、上記引用例1〜引用例8は、本件審判請求前になされた特許第1293128号に係る無効審判(昭和61年審判第11222号)において提示された甲第4、5、7、8、9、10、11、12号証にそれぞれ相当する。)

そして、上記引用例1〜8の記載事項・内容は、次のとおりである。
(1)引用例1の記載事項
(1-1) 「コスト二、三割減に」の見出しの記事
「セイケイ建材工業…(中略)…は生産コストの二割から三割方の軽減、生産スピードの大幅アップが可能という画期的な大径角鋼管の一貫生産システムを完成、十四日から同社佐野工場…(中略)…で試運転をはじめた。」
(1-2)
「これは三井物産を通じて技術導入した…(中略)…その仕組みは一枚の鋼板を油圧プレスで四ヶ所折り曲げ、それに連続して成形ロールで角型に完全フォーミングし、同一ライン上でサブマージド・アークの一面溶接を行って製品化するというもの。」
(1-3)
「従来、採られてきた方法が等厚溝形鋼の突き合わせ二面溶接とか厚板四枚組みの四ヶ所溶接であるのに対し、セイケイの開発したP&FW工法は一面溶接で、しかも一貫して製造できるユニークなものとなっている。」
(1-4)
「こんど完成した製造ラインの装置は…(中略)…その特徴は、(1)製品精度が高く、製品の均一化がはかれる(2)溶接スピードが在来法の二から三倍と速く、しかも溶接個所の裏にアテ金をせずにフラックスを溶け込ますことができ、コストの軽減、納期の敏速化がはかれる(3)同一機で八角形など多角形管の製造ができ、サイズもキメ細かく設定できる-などとなっている。」
(1-5)
「生産サイズは、三百ミリ角、三百五十ミリ角、四百ミリ角、四百五十ミリ角、五百ミリ角、肉厚六ミリ、九ミリ、十二ミリ、十六ミリのもので、セイケイでは…(中略)…全国規模で本格販売体制をとっていく計画。」

(2)引用例2
引用例2は16mmPRフィルムであるところ、その主たる内容は引用例3についての記載事項を参照のこと。

(3)引用例3の記載事項
引用例3には、大径角形鋼管についてのPR映画の中の製造方法の部分のナレーション抜粋及び工程順のスチール写真が次の内容で示されている。
(3-1)セイケイ建材工業は、従来の溝型鋼の2面溶接による問題点を解決し、片側1面溶接による大径角形鋼管の製造に成功したこと(第1頁〜第2頁、写真NO.1〜No.3)。
(3-2) 第3頁〜第7頁、写真No.4〜No.13
1500トンの油圧式プレスブレーキにより、角形鋼板の四隅に当たる鋼板部分を一箇所宛順次曲げ加工して鋼板を角形鋼管近似の形状に成形すること。
(3-3) 第8頁〜第10頁、写真No.14〜No.20
成形ロールを通して順次角形鋼管形状に成形し、かつ移送して、正方形になったところで大径角形鋼管端部を片側一面の自動溶接をしていくこと。
(3-4) 第10頁〜第12頁、写真No.21〜No.25
自動溶接によって溶接した後、断面矯正ローラを通過させて若干のふくらみを矯正し、曲り矯正を行なって、最後に必要な長さに切断して大径角形鋼管を製造する。

(4)引用例4の記載事項
(4-1) 特許請求の範囲
「素板を移動させつつ適当な成形手段で所望断面形の管状に成形し、成形される管材のシーム部の裏側にこの管材と同類の材質よりなり且つ該管材の移動速度と同速度で供給される帯当て金を密着させる一方、該シーム部の表側に溶接トーチを配置し、帯当て金及び管材を移動させつつ溶接を行うと共に、帯当て金も同時に溶着させるようにすることを特徴とする溶接管製造方法。」
(4-2) 第2頁左下欄第5行〜同頁右下欄第2行
「以下本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。第1図は本発明方法に従って断面矩形状の溶接管を製造している状態を示すもので、まず帯鋼を成形ロール1、1及び2、2により図に示すような断面矩形の管状に成形し(図中3で示す)、そしてこの管材3のシーム部の裏側にこの管材と同類の材質よりなる帯当て金4を管材3 の移動速度と同速度で管内に供給し、これを第2図に示すような加圧ブロック5によって密着させる一方、シーム部の表側に溶接トーチ6,6を配置すると共にフラックスを散布し、ワイヤ送給機構(略)からそれぞれのトーチに溶接ワイヤ8を定速で繰り出しながらサブマージアーク溶接を開始し、帯当て金4及び管材3の移動速度と同一速度で溶接を進行させ、帯当て金4も同時に溶着させるようにする。」
(4-3) 第3頁右上欄第1〜4行
「本発明では、帯状の素板を所望な断面形の管状に成形する方法は特定の方法に限定されず、成形ロール、成形プレスその他の成形手段によるような従来既知の成形方法でよい。」

(5)引用例5の記載事項
(5-1) 特許請求の範囲第1項
「継ぎ目が稜線上に来ない角型鋼管をプレスにより成形するに当たり、稜線部となる4ヶ所のうち継目部に近い2ヶ所と他の2ヶ所のうちの1ヶ所をそれぞれまず90°内向きに成形し残る一つの稜線部となる個所を、成形する角型鋼管の対角の長さを有し概ねその中心線上で直交し加圧中心線に対してほぼ45°の傾斜面を有する凸面に上下に有する中型とこの中型のその上下の凸面にそれぞれ相応する凹面を有する上型並びに下型とを含むプレスの上型と中型の間又は下型と中型の間にその残る一つの稜線部となる個所に対位する既に賦形された角部を挟持した状態で上型を上昇又は上型を下降して角型鋼管を制作する方法。」
(5-2) 第2欄第5〜10行
「従来、角型鋼管の量産化されている最大寸法は一辺の長さが200mmで厚さが8mm以下のものであり、それ以上の寸法のものについては、各辺を構成する鋼板を溶接で組立てるか、溝形に成形したものを突合わせて溶接するかする方法が一般的に採用されている。」
(5-3) 第2欄第11〜17行
「この発明は、一辺の長さが250mm、板厚が6mm以上のものを対象とし、しかも継目が稜線上に来ることのないそして溶接線が一線である角形鋼管をプレス成形する新規な方法並びに装置を提供し、もって、大型角形鋼管の量産化、製品々質の均一化、歩留の向上等々を効果的に達成しようとするものであり、」
(5-4) 第1〜4図
第1図には、引用例5に記載の発明を実施するプレス装置の概略側面図が、第2,3図には第1図のプレスの作業状態を説明する図が、第4図には、鋼板Aを折り曲げて角型鋼管形状にする工程がそれぞれ示されている。

(6)引用例6の記載事項
(6-1) 第3頁右上欄第9行〜同頁右下欄第7行
「本発明装置例は、以上の通りの構成であるが、以下にその作動を第4図に沿って説明する。…(中略)…鋼板(22)はアウターポンチ(11)と下金型(13)のダイ(14)とによりその両端が折り曲げられて幅L2の凵型となり、一次加工が完了する(第4図B)。この一次加工が完了するとアウターポンチ(11)を上昇させ、その後、ノックアウト(18)が上昇してそのプレート(17)が凵型に成形された鋼板(22)をダイ(14)(14)よりも上位置にある如く持ち上げ(第4図C)、その作動が終了すると…(中略)…インナポンチ(8)がノックアウト(18)の受力に打勝って下降し、鋼板(22)を、上部がインナポンチ(8)の幅L2より若干広い間隔を開口したほぼ角型に成形する(第4図D)。以上のようにして鋼板(22)をほぼ角形に成形すると、主シリンダ(5)のラム(6)と共にインナポンチ(8)を上昇させ、(この場合、鋼板(22)の上部はインナポンチの幅L2より若干広い間隔があいているので容易に抜けて上昇することができる。)鋼板(22)内より逸脱せしめる。」
(6-2) 第3頁右下欄第8〜18行
「この状態では、鋼板(22)はほぼ角形に成形されているが、開口している上端を接合するために、アプライト(3)の下側両側に対向して配した横押しシリンダ(19)(19)…群の各々を同時に、しかも同等の押圧力で作動せしめて鋼板(22)の左右両側面を押圧プレート(20)(20)で圧し、鋼板(22)の開口端を断面角形となる如く接合し、その後、前記横押しシリンダ(19)に取付けた各溶接装置(21)をプレス中心軸C1〜C2に進出させることによりその接合端を仮付溶接を行ない、最終的な角型コラムを成形する。」
(6-3) 第4図
第4図には、前記(6-1)で摘記した記載によって説明されている折り曲げ工程が図示されている。

(7)引用例7の記載事項
(7-1) 図12、第182頁第1行〜第186頁下から2行
UOE製管法によって大径溶接鋼管を製造する方法であって、鋼板の端部にエッジトリミングとベベリングを施す工程、複数工程で曲げ加工して丸形鋼管形状に成形する工程、自動仮付溶接、タブ板取付け、内面溶接・外面溶接を行う工程及び溶接部の歪除去、寸法精度の向上、材料の機械的強度の恢復のための拡管工程を含む方法。
エッジトリミング及びベベリングは鋼板を長さ方向に移送しながら行うこと(図12の「エッジトリミングとベベリング」の工程図参照)。
(7-2) 第183頁第19〜23行
「4.1.3 製造工程と設備技術の発展 UOE工場の代表的設備の特長と発展について述べる。(1)開先加工 溶接部の開先加工を行なう設備で、ロータリーカッターと開先加工を行なう数本のバイトが取付けられている。発生期と第2期ではこの方式が採用されていたが、厚肉、ハイグレード化に伴いプレナー型が主流となっている。これはロータリー型では厚肉に難点があること、厚肉素材の両面開先を能率よく取る必要があるためである。」
(7-3) 第186頁第18〜24行
「(5)仮溶接→本溶接 …(中略)…仮付→本溶接のラインは、溶接部の信頼性を決定する設備であり、省力化と溶接部の欠陥防止のための各種の方式が採用されている。」
(7-4) 第194頁第1行〜第195頁第1行
「4.4 ケージロールフォーミング製管法 …(中略)…4.4.2製造法 図18はこの方式の代表的工程を示す。この図の例では、厚板を素材として使用しているが…(中略)…図よりわかるようにUOE方式による成型、仮付け方式が、ケージフォーミング、高周波抵抗溶接に置きかわったもので、本溶接以下の工程は、UOE方式とまったく同一である。」
(7-5) 第194頁図18
ケージ・ロール・フォーミング工程図として、多数のロールを使用して鋼板を鋼管に成形すること及び鋼管の内外面を溶接することが図示されている。

(8)引用例8の記載事項
(8-1) 第277頁左欄26〜42行
「(a)縁加工 縁切断加工の方法としてディスクタイプのサイドトリマーで板厚程度の幅をトリムし、バイトで開先を加工する方法と多数のバイトを用いて両側面を10mm程度切削し、同時に内外面の開先を加工するエッジプレーナー方式がある。…(中略)…サイドトリマー方式の場合、トリマーの剪断可能厚さが20mm程度であり、かつ鋼板が移動するため切削のびびりが出やすく厚肉には不向きであり、管厚25.4mmまで製造する新しい工場では後者の方法を採用している。開先の形状は図4.7.5のようであり、内面の開先は溶込みのため以外に内面溶接ヘッドのガイドの役目をもち、ガイドローラーはこの開先によるV溝内を移行する。」
(8-2) 第279頁右欄第18〜29行
「(e)仮付溶接 仮付は突合せ部をスポット的に行う方法と全長連続して行う方法がある。溶接方法としてはスポット溶接の場合、一部で手動アーク溶接法が用いられているが、人件費の増加に伴い全長仮付溶接と同様CO2-Arガス自動溶接法が採用されている。仮付溶接の際、管の突合せ部の段違いを防止し、突合せ面が密着するように管を十分に拘束した状態で作業する必要がある。拘束の方法として管をバンドあるいは型ワクで締める方法と、電縫管の溶接と同様、サイドロールおよびトップロールにより突合せ面を密着させながら管を移動させる方法がある。」
(8-3) 第279頁右欄第30行〜第280頁左欄第2行
「(ハ)コンティニアスフォーミングロール方式 …(中略)…端面の波うちを防止するために、プレフォーミングの部分に多数の小さいロールを管軸方向に並べて成形するいわゆるケージロールタイプのフォーミング方式が開発され、外形1,200mmまでの大径鋼管がこの方式で製造されるようになった。図4.7.8はこの方式による成形過程を示すものでエッジスカーフィングされた鋼板はロールの端曲げ装置を通過したのちプレフォーミング内の小さなロール群(ケージロール)により円滑に成形され、フィンロールを経て高周波抵抗溶接法により溶接される。」
(8-4) 第277頁図4.7.5
開先の形状として、「外面用開先をとらない場合」と「外面用開先をとる場合」とが示されている。
(8-5) 第280頁図4.7.8
コンティニアスロールフォーミング過程として、多数のロールを用いて鋼板を鋼管に成形していく工程が図示されている。

IV.当審の判断
1.引用発明
引用例2は、セイケイ建材において生産している大径角鋼管の製造過程を写した16mmPR映画フイルムであるところ、このフィルムが本件特許の出願前に不特定多数人に対して公開映写された事実は、平成1年6月15日に行なわれた昭和61年審判第11222号の審理における第2回口頭審理調書及び証人菊池一明及び須賀好冨の証言(同日付作成の証人調書参照)によって、これを認めることができる。
そして、引用例3は引用例2の一部のナレーション抜粋及び工程順のスチール写真であると認められるところ、引用例3には、一枚の鋼板をプレスによって角形鋼管の四隅に当る部分を一個所宛順次曲げ加工して角形鋼管近似の形状に成形すること、角形鋼管近似の形状になったものを成形ロールによって正方形に成形した後、自動溶接によって片側一面溶接すること、溶接後に断面矯正ローラによって若干の膨らみを的確に矯正することがそれぞれ示されている。
したがって、「一枚の鋼板をプレスにて角形鋼管の四隅に当る部分を一個所宛順次曲げ加工して角形鋼管近似の形状に成形し、角形鋼管近似の形状になったものを成形ロールによって正方形に成形し、自動溶接によって片側一面溶接し、溶接後に断面矯正ローラによって若干の膨らみを的確に矯正する大径角形鋼管の製造方法」は、引用例3に示される技術事項をその内容とする引用例2の16mmPR映画フイルムの公開映写によって、本件特許の出願前に日本国内において公然知られるに至った発明であると認められる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

2.本件発明と引用発明との対比
本件発明と引用発明とを対比すると、両者は、「大径角形鋼管を製造する方法において、一枚鋼板をプレスにて角形鋼管の四隅に当る部分を一個所宛順次曲げ加工して角形鋼管近似の形状に成形し、ついで前記角形近似鋼管を成形ロールを通して角形鋼管形状に成形し、かつ移送して自動溶接によって溶接した後、ロールを通過させることを特徴とする、大径角形鋼管の製造方法」で一致し、以下の点で相違する。
相違点1;
本件発明が、鋼板として「板厚が19mm〜25mmの一枚厚肉鋼板」を使用し、これを「長さ方向に移送して両側の開先加工を行な」うのに対し、引用発明では、鋼板は、「板厚が19mm〜25mmの厚肉鋼板」ではなく(以下、「相違点1-1」という。)、また、「長さ方向に移送して両側の開先加工を行な」うものではない点(以下、「相違点1-2」という。)。
相違点2;
本件発明が、「開先間の隙間がそこから金型が抜出せる最小限の寸法になる角形鋼管近似の形状に成形」するのに対し、引用発明ではその点が明らかでない点。
相違点3;
本件発明が、「複数段の成形ロールを通して上下からローラで押えて送りつつ両側のローラによって順次段階的に押え込んで角形鋼管形状に成形」するのに対し、引用発明ではその点が明らかでない点。
相違点4;
本件発明が、「(角形鋼管形状の)両側の開先部をX形状に突合せた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付溶接し、つぎに開先部内外面を自動溶接によって溶接」するのに対し、引用発明は、「(角形鋼管形状の)両側の開先部をX形状に」するとはしておらず(以下、「相違点4-1」という。)、また、「開先部を突合せた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付溶接し、つぎに開先部内外面を自動溶接によって溶接」するものではない(以下、「相違点4-2」という。)点。
相違点5;
本件発明が、溶接後の大径角形鋼管を「複数段の矯正ローラからなる歪取りロール」を通過させて歪取りを行っているのに対し、引用発明では、「断面矯正ローラ」を通過させて若干の膨らみを矯正している点。

3.相違点についての検討
(1)相違点1について
(1)-1.相違点1-1について
引用例1は、引用例2のPR映画の発注元であるセイケイ建材工業株式会社が有する大径角形鋼管の技術を紹介した新聞記事であり、そこには、一枚の鋼板を油圧プレスで四ヶ所折り曲げ、それに連続して成形ロールで角形にフォーミングし、同一ラインでサブマージド・アークによる一面溶接を行って大径角鋼管を製造する方法が記載されており、鋼管径としては、300mm角、350mm角、400mm角、450mm角、500mm角のものが、また、鋼管肉厚としては、6mm、9mm、12mm、16mmのものを生産できることが記載されている。
そして、引用例1の紹介記事によれば、引用例2によって公知となった引用発明においては、6〜16mmという幅広い板厚にわたり鋼管を製造し得ることが明らかにされているといえるから、引用発明における大径角形鋼管の製造に際し、鋼板としては、板厚が薄肉のものから厚肉のものまで利用可能であることは当業者が容易に理解し得るところと認められる。
ところで、引用例1の紹介記事に示された具体的な最大鋼管肉厚は16mmであるが、16mmを越えた肉厚の鋼管は製造し得ないとの特段の技術的な制約があげられているわけではなく、一方、引用例5には、引用発明と同様に鋼板の四隅を一個所宛て順次曲げ加工し、次いで端部を溶接して大型角型鋼管を製造する方法について、従来、最大寸法で一辺の長さが200mmで厚さが8mm以下のものしか得られなかったものを、この方法によって、一辺の長さが250mm、板厚が6mm以上のものを製造することができる旨記載されており((5-2)、(5-3)参照)、引用例5のこの記載によれば、本件特許の出願前から、肉厚が大な大型角型鋼管の製造が望まれていたことは当業者にとって明らかであるといえる。
してみれば、引用発明において、板厚に特段の技術的な制約があるとはいえない以上、板厚16mmを越える鋼板を用いること、即ち、本件発明で定めた板厚が19mm〜25mmの厚肉鋼板を適用してみることは、引用例1、引用例5の記載に基づき当業者が容易に想到し得たことと認められる。
なお、請求人は、参考資料1を提出するとともに、平成13年4月11日付意見書(以下、単に「意見書」という。)第5頁(3-1C)において、「大径角形鋼管の一般的な用途先である建築物の柱材に使用されるための基準を示す参考資料1によれば、引用例5の「厚さが6mm以上のもの」は「12mmまで」と見るのが妥当であり、『板厚が19mm〜25mm』をも含むと見るのは、通常の建築設計法上からは矛盾する数値であり、一般的に設計される範囲から外れている」旨主張する。
そこで検討するに、引用例5を引用した主旨は、引用例5に記載された「厚さが6mm以上のもの」という数値範囲によって表現される鋼管肉厚が、本件発明の鋼管の肉厚『19mm〜25mm』を含むということを示すためではなく、本件特許に係る出願の出願前から肉厚が大な大型角型鋼管の製造が望まれていた、ということを明らかにするためのものであって、『19mm〜25mm』が「厚さが6mm以上のもの」に含まれるか否かを問題としているわけではない。
さらに、引用例5に記載された角形鋼管は、その用途が建築用であると限定されているわけではないから、そこに示された「板厚が6mm以上のもの」が、具体的にどの程度の板厚を意味するのかを、請求人が提出した参考資料1の観点から判断すべきであるとする理由もない。
よって、請求人の前記主張は採用できない。

(1)-2.相違点1-2について
引用例7には、UOE法によって大径溶接鋼管を製造する技術について、溶接部の開先加工を鋼板を長さ方向に移送しながら行うこと、製品の最大寸法としては56インチφ×1インチ(25.4mm)のものが生産されていること及び厚肉素材について両面開先をとることが記載されている((7-2)参照)。
また、引用例8には、丸形鋼管について、溶接に先立って鋼板の縁を開先加工すること及び厚肉鋼板には内外面の開先を加工するエッジプレーナー方式が採用されることが記載されており((8-1)参照)、図4.7.5の(b)には、鋼板端部に「突き合わせ面」、「外面用開先」及び「内面用開先」をそれぞれとったものも示されている。
してみると、鋼管製造技術において、溶接に先立って溶接すべき端部を開先加工することは本件特許に係る出願の出願前から当業者に周知の技術であることが認められ、また、丸形鋼管と角形鋼管とでは、溶接により鋼管を製造する際に、溶接技術において格別の差異があるとすることはできないから、引用発明において、鋼板を「長さ方向に移送して両側の開先加工を行な」うことは、引用例7、引用例8に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認める。

(2)相違点2について
引用例6には、上枠(1)にインナポンチ(8)を有し、下枠(2)に下金型(13)を配置させ、該ポンチ(8)を下降させて下金型との間で鋼板を角型に成形するプレスにおいて、鋼板を、その上部がインナポンチ(8)の幅L1(「インナポンチ(8)の幅L2」と記載されているが、第1図、第4図(D)からみて、明らかに「インナポンチ(8)の幅L1」の誤記と認められるので、この様に認定した。)より若干広い間隔を開口した角型に成形し(第4図(A)〜(D)参照)、次いでインナポンチ(8)を上昇させて鋼板22内より離脱させる技術が開示されている((6-1)参照)。
してみれば、引用発明において、鋼板の曲げ加工に用いた金型を、角形鋼管近似の形状に成形されたものから離脱させるための構成として、引用例6記載の技術を適用し、「開先間の隙間がそこから金型が抜出せる最小限の寸法になる角形鋼管近似の形状に成形」することは当業者が容易に想到し得たことと認める。
なお、請求人は、意見書第7頁(3-2C)において、「引用例6は、インナポンチの下降により、下金型との間で2箇所の曲げ加工をを同時に行なっています。したがって、・・・開口端間の隙間は大きいものになり・・・開口端を断面角型となる如く接合する際に、各辺が撓み状に変形したりし、開口端間の突合わせ、すなわち接合は正確に行えず、以て溶接は好適に行えません。特に、厚肉で大径の角形鋼管の成形の際には撓み状の変形は大きい」旨主張する。
しかしながら、「一枚鋼板をプレスにて角形鋼管の四隅に当る部分を一個所宛順次曲げ加工して角形鋼管近似の形状に成形」することは、本件発明と引用発明との一致点としてあげたように、引用発明で行なわれているのであって、その様な曲げ加工に際し、金型が抜け出せる程度の間隙を有する最小限の寸法になる角形鋼管近似の形状にまで成形することが公知であることを明らかにするために引用例6を引用したのであるから、引用例6で2箇所の曲げ加工が同時に行なわれていることを根拠とする請求人の前記主張は失当である。

(3)相違点3について
引用例4には、溶接管製造方法において、角形鋼管近似の形状となっているものを成形ロール1、1及び2、2により角形鋼管に成形することが記載されており、そして、これら成形ロール1、1及び2、2は管材の進行方向の前後、しかも、上下・両側に設けられていることから、引用例4には、「複数段の成形ロールを通して上下からローラで押えて送りつつ両側のローラによって順次段階的に押え込んで角形鋼管形状に成形」することが開示されているといえる。
また、鋼板を所定形状にまで成形するために成形ロールを多段で使用することは、引用例7の図18((7-5)参照)或いは引用例8の図4.7.8((8-5)参照)にそれぞれ図示されているように周知である。
してみると、引用発明において、角形鋼管近似の形状のものを成形ロールを用いて角形鋼管形状に成形するに際して、「複数段の成形ロールを通して上下からローラで押えて送りつつ両側のローラによって順次段階的に押え込んで角形鋼管形状に成形」することは、引用例4の記載或いは引用例7、8に示される周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことと認める。

(4)相違点4について
(4)-1.相違点4-1について
鋼管製造技術において、溶接に先立って溶接すべき端部を開先加工することは、本件特許に係る出願の出願前、当業者に周知の技術である(前記「(1)-2.相違点1-2について」参照)ところ、引用例8には、開先加工について、「縁切断加工の方法として・・・多数のバイトを用いて両側面を10mm程度切削し、同時に内外面の開先を加工するエッジプレーナー方式がある。・・・管厚25.4mmまで製造する新しい工場では後者の方法を採用している。開先の形状は図4.7.5のようであり・・・」((8-1)参照)と記載され、その具体的な開先の形状として「外面用開先をとる場合」が図示されている((8-4)第277頁図4.7.5参照)ことから、「鋼管形状のものを両側の開先部をX形状に」形成することは、引用例8の開示から当業者が容易に想到し得ることと認められる。
(4)-2.相違点4-2について
鋼管の仮付溶接については、引用例6に、角型鋼管において開口端を有する角型近似鋼管の左右側面を押圧することによって開口端を断面角型となる如く接合してから仮付溶接を行なうことが記載され((6-2)参照)、引用例8には、丸形大径溶接鋼管の仮付溶接に関して、「・・・仮溶接方法としては・・・自動溶接法が採用されている。仮付溶接の際、管の突合せ部の段違いを防止し、突合せ面が密着するように・・・作業する必要がある。拘束の方法として・・・突合せ面を密着させながら管を移動させる・・・」((8-2)参照)と記載されていることから、「開先部を突合せた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付溶接し」との点は、これら引用例6、引用例8に開示されているといえ、しかも、引用例7には、丸形大径溶接鋼管についてのものではあるが、「仮付→本溶接のラインは、溶接部の信頼性を決定する設備であり、省力化と溶接部の欠陥防止のため各種の方式が採用されている。」((7-3)参照)との記載があるように、鋼管の溶接においては、仮付溶接してから本溶接することは通常に行われることであると認められる。
してみれば、引用発明において開先を設けた際に、「開先部を突合せた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付溶接し、次に開先部内外面を自動溶接によって溶接」することは、引用例6〜8の記載に基づき当業者が容易に想到し得たことと認める。
なお、請求人は、意見書第10〜11頁(3-4D)において、「本件発明は、ただ単に「両側の開先部をX形状に突き合わせた状態で溶接する」ものではなく、『角形近似鋼管を複数段の成形ロールを通して角形鋼管形状に成形し、かつ成形ロール群により上下、両側から押え込むことにより両側の開先部をX形状に突合わせた状態で移送して開先突合せ面を順次仮付け溶接する』構成によって、『上下からローラで押えられて送られつつ両側のローラによって順次段階的に押え込まれ、4隅のそれぞれ異なる部位の隅部の角度が90°になって、開先部がX形状で正確に突合された状態で順次溶接機によって仮付けされ、これによって断面が所定の角形鋼管の成形品となる。』ことが、本件発明の最大の効果でありかつ特色であります。」或いは「本件発明でいう大径角形鋼管を製造する場合において、かかる相互結合的な意味合いでの、『成形ロール群により上下、両側から押え込むことにより両側の開先部をX形状に突合せた状態で移送して開先突合わせ面を順次仮付け溶接する』構成についての記載は、引用例6〜8には何ら記載されておらず、また示唆するものでもありません。そして、引用例6〜8の記載に基づき当業者が容易に想到し得るものでもありません。」と主張する。
そこで、検討するに、前記「(3)相違点3について」で既に述べたように、引用例4には、「複数段の成形ロールを通して上下からローラで押えて送りつつ両側のローラによって順次段階的に押え込んで角形鋼管形状に成形」する工程が記載されるとともに、該工程に続けて、(成形ロール1、1及び2、2を通過後)角形鋼管を溶接することが記載されている((4-1)、(4-2)参照)ところ、角形鋼管を溶接する際のその突合せ面の状態については明記されるところはない。
しかしながら、引用例6の、角型鋼管において開口端を有する角型近似鋼管の左右側面を押圧することによって開口端を断面角型となる如く接合してから仮付溶接を行ない、最終的な角型コラムを得る旨の記載((6-2)参照)、また、引用例8の、仮付溶接の際、管の突合せ部の段違いを防止し、突合せ面が密着するように管を十分に拘束した状態で作業するために、サイドロールおよびトップロールにより突合せ面を密着させながら管を移動させる旨の記載((8-2)参照)からも明らかなように、角形鋼管であるか丸形鋼管であるかに拘わらず、所定形状に成形された鋼管の溶接に際しては、その突合せ面を押圧、密着させた状態で溶接するのが通常であるといえるから、引用例4に明記されるところはないとしても、引用例4記載の溶接管製造工程においても、当然に、角形鋼管の突合せ面は、押圧、密着されていると認めざるを得ない。
そうであれば、引用例4に記載される複数段の成形ロールは、角形鋼管形状に成形するロールであると同時に、角形鋼管を上下、両側から押え込むことにより両側の突合せ面を突合せた状態で移送するロールであると認められる。
なお、突合せ面にX形状の開先部を設けることに困難性を要するものでないことは、前記「(4)-1.相違点4-1について」で既に述べたとおりである。
よって、請求人が、本件発明の特色であるとする『成形ロール群により上下、両側から押え込むことにより両側の開先部をX形状に突合せた状態で移送して開先突合わせ面を順次仮付け溶接する』構成については、引用例4及び引用例6〜8の記載から当業者が容易に想到し得るものといえるから、請求人の前記主張は採用できない。

(5)相違点5について
引用発明においては、断面矯正ローラは大径角形鋼管の若干の膨らみを矯正するために設けられているが、本件の特許請求の範囲の記載中の「歪」とは、「形がゆがんでいること。いびつ」(「広辞苑第2版」による。)ということであるから、引用発明における大径角形鋼管の若干の膨らみのある形状(いびつな形状)を矯正して所定の形状にするという操作は、結局は、歪を取る操作に他ならない。
そうであれば、歪取りロールとして、矯正ローラを複数段設けることは、当業者の単なる設計事項にすぎず、歪除去の程度に応じて当業者が適宜に定め得るものと認められる。

4.まとめ
以上のとおり、前記各相違点に係る本件発明の構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たものであり、しかも、本件発明において、前記各相違点をその構成として備えたことにより奏される効果も、当業者が予測し得ない格別の効果であるとは認められない。
したがって、本件発明は、本件特許に係る出願の出願前に国内において公然知られた発明(引用例2、引用例3参照)及び本件特許の出願前に国内において頒布された刊行物である引用例1、引用例4〜8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

V.むすび
以上のとおり、本件審判請求に係る訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件審判請求は特許法第126条第4項の規定に適合しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-03 
結審通知日 2001-12-06 
審決日 2001-12-19 
出願番号 特願昭50-152105
審決分類 P 1 41・ 121- Z (B21C)
P 1 41・ 856- Z (B21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 征四郎河野 尚孝  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 池田 正人
大橋 賢一
登録日 1985-12-16 
登録番号 特許第1293128号(P1293128)
発明の名称 大径角形鋼管の製造方法  
代理人 笹原 敏司  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 森本 義弘  
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