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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G01M
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G01M
管理番号 1053254
異議申立番号 異議2000-74378  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-04-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-05 
確定日 2002-01-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3049398号「給水給湯配管の漏水検査方法及び該漏水検査方法に使用する検査装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3049398号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.取消理由の概要
本件特許第3049398号(平成1年8月31日出願、平成12年3月31日設定登録)の請求項1,2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という)に対して、当審において異議申立て理由と同じ取消理由を通知したが、その概要は、以下の(1)〜(4)のとおりである。
(1)本件発明1は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件発明2は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1〜6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)「水圧テスター」の構造が不明であったものが、平成11年10月12日付補正により明瞭となったので、当該補正は要旨変更となるから、本件出願日は補正をした時に繰り下がる。よって、本件発明1,2は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物7(本件出願の公開公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないし、さらに、本件発明1,2は、刊行物7に基づいて、あるいは刊行物7及び下記刊行物8に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.実願昭54-143506号(実開昭56-61440号)のマイクロフィルム
2.建築設備 37〔12〕(1986)建築設備綜合協会出版部p.48-52
3.建築設備と配管工事 建築設備施行ハンドブック 14〔9〕(1976)日本工業出版p.114-131
4.特開昭60-222743号公報
5.特開昭59-210341号公報
6.特開昭59-3333号公報
7.特開平3-87626号公報
8.実願平1-21730号(実開平2-113144号)のマイクロフィム
(4)本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。すなわち、次の(a)の点では、特許法第36条第3項に規定する要件を、(b)の点では、特許法第36条第4項に規定する要件を、(c)の点では、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件をそれぞれ満たしていない。
(a)「水圧テスター」に関し、実願平1-21730号(実開平2-113144号)が引用されているが、その明細書及び図面の記載内容が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているとみなすことはできず、当業者が実施できる程度に記載されてるとはいえない。
(b)請求項2において、「水圧テスター」が「パッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構」にすることが規定されているが、水抜き配置のみしか取り得ず、所期の漏水検査機能を達成できない。よって、発明に不可欠な構成を欠如している。また、請求項2には、水抜きコマ9に、実願平1-21730号(実開平2-113144号)のマイクロフィルムに記載されているような「水孔9′」が記載されておらず、水の供給や水抜きができないことになる。よって、発明に不可欠な構成を欠如している。
(c)請求項2において、「パッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構」の「パッキン」について、発明の詳細な説明及び図面のどこにも記載されていない。また、「パッキン」と「水抜きコマ」との位置関係が不明である。

2.当審の判断
取消理由(4)について検討する。
(1)本件特許発明と「水圧テスター」
特許明細書の特許請求の範囲に、次のように記載されているように、本件発明1,2のいずれにおいても、「水圧テスター」が構成要件とされている。
「【請求項1】マンション、アパート、ビルディング、住宅などの新規建築物に配管された給水配管とこれと接続する複数の給湯配管の各接続部分の漏水検査方法において、
前記給水配管並びに前記給湯配管とをバイパス管で連結して一体化させると共に、前記各給水配管並びに前記給湯配管の各水栓口にエア抜きテストプラグを装填すると共に、前記給水配管並びに給湯配管の元栓口には水圧テスターを装着してなり、
該水圧テスターに水圧ポンプを接続し、
該水圧ポンプで水圧テスターを介して前記給水配管並びに給湯配管に送水して、前記エア扱きテストプラグで前記給水配管並びに前記給湯配管内の残留エアを放出して前記給水配管並びに給湯配管を密閉し、該密閉後に前記給水給湯配管の元栓口から前記水圧ポンプで前記給水配管並びに前記給湯配管に一定時間一定水圧を掛け、前記給水配管並びに前記給湯配管を同時に検査することを特徴とする給水給湯配管の漏水検査方法。
【請求項2】マンション、アパート、ビルディング、住宅などの新規建築物に配管された給水配管とこれと接続する複数の給湯配管の各接続部分の漏水検査方法に使用する検査装置において、
前記給水配管と前記給湯配管とを連結するバイパス管と、前記給水配管並びに前記給湯配管の各水栓口に装填するエア抜きテストプラグと、前記給水配管並びに前記給湯配管の元栓口に装着した水圧テスターとから構成され、
前記エア扱きテストプラグが前記各水栓口に取り付ける螺子部と残留エアを放出する小孔のエア孔を設けた中空成型体をなし、水圧テスターがT字形状体の流体路の管本体をなし、管本体の脚部先端部に加圧ポンプと連結する螺子部を形設するとともに該脚部管内にパッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構にし、
前記水圧テスターの脚部に水圧ポンプを接続し、該水圧ポンプで水圧テスターを介して前記各給水配管並びに給湯配管に送水して、前記各水栓口の前記エア扱きテストプラグで該各配管内の残留エアを放出して前記給水配管と前記給湯配管内を水圧で密閉し、該密閉後に前記給水配管並びに前記給湯配管の元栓口から前記水圧ポンプで前記給水配管並びに前記給湯配管に一定時間一定水圧を掛けることを特徴とする給水給湯配管の漏水検査装置。」
(2)「水圧テスター」についての記載
一方、平成11年12月14日付手続補正書で全文補正された明細書(特許明細書)の発明の詳細な説明には、「水圧テスター」の具体的な構造等について次のイ、ロ、ハの記載しかない。
イ.「水圧テスターがT字形状体の流体路の管本体をなし、管本体の脚部先端部に加圧ポンプと連結する螺子部を形設するとともに該脚部管内にパッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構にし、」(明細書第5頁第5〜8行、特許公報第5欄第32〜36行参照)
ロ.「水圧テストは、両配管1、2の元栓口1′、2′に、本出願人の提案した実願平1-21730号に示す水圧テスター13、14を取付けて行う。この水圧テスター13、14の構造の詳細は、前述の実願平1-21730号に詳細に説明するように、金属性でもつて製造されたT字型の流体路を形成した管本体には、管本体の脚部先端部に加圧ポンプと連結する袋ナット取り付け捩子部を形設している。この袋ナット取り付け捩子部の上部で流体路には、逆止め弁機構(図示せず)を備えられている。また、この脚部と直交する基体部の一方側に水圧を検出するゲージ部体、他方側に給水給湯配管1、2と接続する配管側取り付け捩子部を配設した構造のである。」(明細書第7頁第25行〜第8頁第4行、特許公報第7欄第40行〜第8欄第1行参照)
ハ.「検査終了後は、脚部先端部すなわち逆止め弁機構の下端部に押上軸を備えた水抜きコマ体を備えた袋ナット部体を装着することによって、コマ体の押上軸が逆止め弁機構を押上げ、流体路を解放するので、検査後の配管1,2から水抜きを容易に行事ができる。このように脚部先端部にコマ体を取り付けることによって検査後の水抜きを容易に行うことができる。」(明細書第8頁第13〜17行、特許公報第8欄第13〜19行参照)
「パッキン」については、請求項2と同文の上記記載イを除くと、上記記載ロ、ハを含めて、発明の詳細な説明のどこにも記載されていない。また、「水抜きコマ」についても、検査終了後の水抜きにおける、「押上軸を備えた水抜きコマ体」の動作を説明する上記記載ハがあるだけであって、検査終了後に装着される「袋ナット部体」の「押上軸を備えた水抜きコマ体」と、漏水検査装置の部品であるからして漏水検査時に漏水検査装置に備えられている前記逆止め機構の「水抜きコマ」との関係も不明である。また、それぞれどのような形状や寸法で、どのような配置関係にあるのかも不明な「パッキン」と「水抜きコマ」とを、「パッキンを下にして水抜きコマを上向きにし配置した逆止め機構」も、結局どのような構成のものか、明確でない。
そして、「水圧テスター」の斜視図である第3図は、その外観形状がT字形であり、メータのある側とは反対側の先端と脚部先端には螺子が設けられていることが図示されているが、内部構造は不明である。漏水検査装置の概略図である第1図及びエア抜きプラグの一部切り欠き図である第2図にも、「水圧テスター」の内部構造を教示する記載はない。
また、上記記載ロ中の実願平1-21730号の明細書及び図面〔上記刊行物8、実願平1-21730号(実開平2-113144号)のマイクロフィルム参照〕をみると、「パッキンを下にして水抜きコマを上向きにし配置した逆止め機構」、「押上軸を備えた水抜きコマ体」及び「袋ナット部体」の形状、構造が記載されているようにもみえるが、上記記載ロ中の出願番号の記載自体からは、「水圧テスター」の具体的な形状、構造等が分かるものではない。
(3)(a)の点について
そうすると、本件特許明細書及び図面には、本件特許発明において使用する「水圧テスター」について、どのような形状、構造の「水圧テスター」を使用すればよいのか不明であり、当業者が容易に実施できるように記載されているとは認められないから、本件発明1,2の特許は、その明細書が特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(4)請求項2の記載について
請求項2においては、「水圧テスターがT字形状体の流体路の管本体をなし、管本体の脚部先端部に加圧ポンプと連結する螺子部を形設するとともに該脚部管内にパッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構」と特定されているが、上記(2)においても検討した如く、その記載の「パッキンを下にして水抜きコマを上向きに配置した逆止め弁機構」も、結局どのような構成のものか明確でない以上、そのような請求項2の記載は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものとは認められないから、本件発明2の特許は、明細書が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1,2に係る特許は、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反してなされたものであり、他の取消理由について検討するまでもなく、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-11-16 
出願番号 特願平1-225063
審決分類 P 1 651・ 534- Z (G01M)
P 1 651・ 531- Z (G01M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 菊井 広行  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 阿部 綽勝
志村 博
登録日 2000-03-31 
登録番号 特許第3049398号(P3049398)
権利者 株式会社ケーイーケー
発明の名称 給水給湯配管の漏水検査方法及び該漏水検査方法に使用する検査装置  
代理人 須山 佐一  
代理人 尾股 行雄  
代理人 南 一清  

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