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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B60K 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 B60K |
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管理番号 | 1053272 |
異議申立番号 | 異議1998-72660 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-05-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-05-29 |
確定日 | 2001-12-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2684029号「電動自転車」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2684029号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2684029号の請求項1〜4に係る発明についての出願は、平成4年5月26日に出願した特願平4-157387号(以下、その出願を「原原出願」という)の一部を平成7年6月23日に特願平7-157974号(以下、その出願を「原出願」という)として新たな特許出願とし、更にその一部を平成8年9月4日に特願平8-234053号として新たな特許出願としたものであって、平成9年8月15日にそれらの発明について特許の設定登録がなされ、その後、特許申立人三洋電機株式会社より特許異議の申立てがなされ、当審より取消理由通知がなされ、審尋書がなされ、さらに再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年1月17日に特許異議意見書が提出されたものである。 II.本件特許発明 (1)本件特許発明の認定 本件特許第2684029号の請求項1〜4に係る発明は、明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された下記のとおりのものと認める。 【請求項1】 人力駆動系と電気駆動系とを並列に設けた電動自転車において、繰返し充放電可能な長尺状のバッテリーケースを車体フレームのフレーム部材の長手方向に沿わせて配置するとともに、前記バッテリーケースを車体フレームに対しこのバッテリーケースの長手方向の一端部を支点にして揺動自在かつ着脱自在に設け、前記バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させ、続いてその一端部を支点に揺動させる一連の車体フレームへの装着操作に伴い前記バッテリーケースに設けた放電用接触端子が前記車体フレーム側に設けたモータ側接触端子に自動的に接続する構造としたことを特徴とする電動自転車。 【請求項2】 請求項1記載の電動自転車において、バッテリーケースを支点回りに揺動させることによって放電用接触端子がモータ側接触端子に接続する構造としたことを特徴とする電動自転車。 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の電動自転車において、バッテリーケースをシートチューブとシートステーと後輪とによって囲まれる空間に配置し、車体側方に揺動自在としたことを特徴とする電動自転車。 【請求項4】 請求項1ないし請求項3記載のうち何れか一つの電動自転車において、バッテリーケースに充電用接触端子と放電用接触端子とを設け、これらを並列に接続したことを特徴とする電動自転車。 (2)分割要件の可否 ア.原原出願等の記載事項 原原出願及び原出願の願書に添付された明細書及び図面には、バッテリーケースはすべて、車体フレームに対して支持箱を介して取り付けられているものしか記載されていない。 イ.第1回目の取消理由及び審尋書の経緯 第1回の取消理由通知において、本件特許明細書の請求項1における「バッテリーケースを車体フレームに対しこのバッテリーケースの長手方向の一端部を支点にして揺動自在かつ着脱自在に設け、前記バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させ、続いてその一端部を支点に揺動させる」ことは、分割出願の原出願の出願当初の明細書及び図面の記載には記載されておらず、出願日の遡及は認められないとしたところ、特許権者は、本件の請求項1における「車体フレーム」には、実施例における支持箱を含むものであり、上記事項は原出願に記載されていると意見書において主張した。これに対して、当審において、審尋書を通知したところ、その回答書において、「補正後の請求項1の記載での「バッテリケースの一端部を車体フレームに係合」とは、 「バッテリケースを直接車体フレームへ係合すること」 及び 「バッテリケースを支持箱のような第3の部材を介して車体フレームに係合すること」の両方を含む。」と回答している。 ウ.当審での「車体フレーム」の定義 一般に、車体フレームの意味は、車体の骨格の働きをする部材として解されているとともに、「モーターサイクル」モーターサイクル編集委員会編、株式会社山海堂、平成3年5月25日発行の6.2.2フレームの種類における図6-3によると、車体フレームとなるダウンチューブ、タンクレール、シートレールとそれに一体的に固定的に設けられているブラケット類までも含めてフレームとして明示されているので、車体の骨格の働きをする部材とその部材に当初から一体的に設けられ、フレームと同一視しうるものまでも車体フレームと言うことはできるが、単に車体フレームに対して他の部品を取付けるための部材まで含めて車体フレームと言うことはできない。 また、原原出願、原出願及び本件の特許明細書において「車体フレーム」が定義付けられているかについてみると、それぞれの詳細な説明において「車体フレーム」について記載されている箇所を精査しても、車体フレームが支持箱及びその取付部材を含むものであるのとの定義付けに関する記載はない。 さらに、支持箱及びその取付部材であるフレームに対して揺動自在に取り付けられるものまでも「車体フレーム」に含むことを示す客観的証拠は何らない。 したがって、本件特許明細書の請求項1における「車体フレーム」は、揺動自在に取り付けられている支持箱は含まないものと認める。 エ.本件の出願日の認定 上述のとおり、本件特許明細書の請求項1に記載の「車体フレーム」は、揺動自在に取り付けられている支持箱は含まないものと認められるので本件特許明細書の請求項1の「前記バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させ」た事項は、本件特許出願の原原出願及び原出願の明細書及び図面には全く記載されていないことになり、また、原原出願の出願当初の明細書及び図面の記載からみて自明の事項でもない。したがって、本件特許は、分割要件を満たしておらず、出願日の遡及は認められない。よって、本件特許の出願日は、本件特許が実際に出願された平成8年9月4日と認める。 III.取消理由1について ア.引用刊行物記載の事項 第1回目の取消理由で引用した刊行物1(特開平5-319104号公報)には、「前記バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させ」た点を除き、その他の事項は、本件特許発明と同一のものが記載されている。同じく、第1回目の取消理由で引用した刊行物3(実公昭60-7995号公報)には、「自転車の補助動力としてバッテリー及び駆動部を搭載した電動自転車」(公報第1頁左欄25行〜26行)において、「第2図はバッテリーケース7の下部外側面に設けた突起部8をフレーム体の立パイプ1およびメインパイプ2に固定された切欠付支持金具9にはめ込み、前記突起部8を支点にして回転するとバッテリーケース7の把手10が、シートステー3に取付けられたロック装置11にて固定される構造となっている。」(第1頁右欄23行〜第2頁左欄4行)が記載されている。 イ.対比・判断 本件特許明細書の請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、 「人力駆動系と電気駆動系とを並列に設けた電動自転車において、繰返し充放電可能な長尺状のバッテリーケースを車体フレームのフレーム部材の長手方向に沿わせて配置するとともに、前記バッテリーケースを車体フレームに対しこのバッテリーケースの長手方向の一端部を支点にして揺動自在かつ着脱自在に設け、バッテリケースを揺動させる一連の車体フレームへの装着操作に伴い前記バッテリーケースに設けた放電用接触端子が前記車体フレーム側に設けたモータ側接触端子に自動的に接続する構造としたことを特徴とする電動自転車。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点> 本件特許明細書の請求項1に係る発明においては、「バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させ」ているのに対して、上記刊行物1に記載された発明においては、バッテリーケースは、支持箱を介して車体フレームに係合している点 以下、相違点について検討する。 上記刊行物3には、「バッテリーケースの一端部を車体フレームに係合させる」ものが記載されており、刊行物3も電動自転車のバッテリーの車体フレームへの取付に関するものであり、刊行物1の支持箱に代えて上記刊行物3の構成を採用することは当業者が容易になしえたことである。 また、本件特許明細書の請求項1に係る発明の効果も、刊行物1及び刊行物3記載のものから予測できる効果以上のものは認められない。 さらに、本件特許明細書の請求項2〜4に係る発明と上記刊行物1とを比較すると、それぞれの請求項2〜4に記載された限定事項は、すべて上記刊行物1に記載されていると認められるため、上記請求項1の場合の対比と同様な相違点となるので、上記請求項1に係る発明と同様の理由により、上記刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 したがって、本件特許明細書の請求項1〜4に係る発明は、上記刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 IV.取消理由2について (1)平成11年10月21日付けで取消理由通知書を通知したがその要旨は、「本件特許発明は、「バッテリケースを直接車体フレームへ装着すること」言い換えれば、支持箱のようなバッテリー支持具を介すること無くバッテリケースを直接車体フレームに取り付けることも含むことになるが、本件特許明細書の詳細な説明において、車体フレームに対して支持箱のような第3の部材を介さずにバテッリケースをどのように取り付けるのか、全く記載されておらず、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載しているとは認められず、本件特許は、特許法第36条第4項に違反している。」というものである。 (2)それに対し特許権者は、上記取消理由通知に対する特許異議意見書において、請求項1の「車体フレーム」は、支持箱等を含むものであるから、詳細な説明において支持箱を介して車体フレームに取り付けている実施例が示されており、取消理由は失当であると主張している。 (3)当審の判断 上記II.(2)ウ.に記載のように本件特許明細書の請求項1の「車体フレーム」は、支持箱を含まないダウンチューブとシートチューブからなる車体骨格の働きをする部材と見るのが相当であるので、本件特許明細書の詳細な説明には、その車体フレームに対してどのようにバッテリーケースを取り付けるのか全く記載されていないのであり、依然特許法第36条第4項に規定された要件を満足していない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、本件特許明細書における発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められず、本件特許発明についての特許は、特許法第36条第4項の規定に違反してなされたものである。 V.むすび したがって、本件特許明細書の請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第百十3条第2号及び第四号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-04-12 |
出願番号 | 特願平8-234053 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(B60K)
P 1 651・ 531- Z (B60K) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 長屋 陽二郎、小山 卓志 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 鈴木 法明 |
登録日 | 1997-08-15 |
登録番号 | 特許第2684029号(P2684029) |
権利者 | ヤマハ発動機株式会社 |
発明の名称 | 電動自転車 |
代理人 | 木村 良雄 |
代理人 | 山口 隆生 |