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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1053322
異議申立番号 異議2001-71174  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-11-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-09 
確定日 2002-02-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3120174号「乾燥もずく食品及びその製造方法」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3120174号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3120174号(平成11年5月18日出願、平成12年10月20日設定登録)の請求項1ないし8に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】浸透圧により含有水分が減少しているもずくと、具材と、を含み、凍結乾燥され、固形状になっていることを特徴とする、乾燥もずく食品。
【請求項2】浸透圧により含有水分が減少しているもずくと、具材と、スープ材を含み、凍結乾燥され、固形状になっていることを特徴とする、乾燥もずく食品。
【請求項3】結着剤による浸透圧によりもずくに含まれている水分を減少させるステップ、水分を減少させたもずくを凍結乾燥させるステップ、を含むことを特徴とする、乾燥もずく食品の製造方法。
【請求項4】具材にもずくを加え、次いで、浸透圧によりもずくに含まれている水分を減少させることができるスープ材を加えた後、凍結乾燥させることを特徴とする、乾燥もずく食品の製造方法。
【請求項5】スープ材に結着剤が加えられており、当該結着剤がもずくに含まれている水分を減少させることを特徴とする、請求項4記載の乾燥もずく食品の製造方法。
【請求項6】食塩により浸透圧を生じさせることを特徴とする、請求項3、4または5記載の乾燥もずく食品の製造方法。
【請求項7】食塩の濃度が5〜15重量%であることを特徴とする、請求項6記載の乾燥もずく食品の製造方法。
【請求項8】食塩による浸透圧によりもずくに含まれている水分を減少させるステップ、水分を減少させたもずくを凍結乾燥させるステップ、を含んでおり、上記食塩の濃度が5〜15重量%であることを特徴とする、乾燥もずく食品の製造方法。」

2.異議申立ての理由の概要
異議申立人 カネリョウ海藻株式会社は、下記の甲第1〜12号証を提出して、
(1)本件請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願日前に日本国内において公然実施された発明、又は日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条1項2号、又は第2項の規定により特許を受けることができないものである、
(2)本件明細書の発明の詳細な説明には、もずくに浸透圧をかける方法が明確かつ十分に記載されているとはいえず、本件請求項1ないし8に係る発明の特許は、同法第36条第4項の規定に違反してなされたものである、
旨主張している。

甲第1号証 特開平1ー128771号公報
甲第2号証 関東工業化学教育研究会編「実用化学用語事典」株式会社 オーム社、昭和61年4月10日発行、178頁
甲第3号証 森山 登著「分散・凝集の化学」産業図書株式会社、19 95年7月20日発行、122〜123頁
甲第4号証 特開平8ー89214号公報
甲第5号証 石井頼三 他5名編「商品大辞典」東洋経済新報社、昭和 51年6月15日発行、1127〜1128頁
甲第6〜11号証
カネリョウ海藻株式会社の販売に係るFDもずくスープ購 入事実の証明書、チラシ及び納品書
甲第12号証 FDもずくスープのチラシ記載の包材納入証明書、チラシ 及び売上伝票

3.対比、判断
29条1項2号、2項違反について>
甲第1号証には、「もずくのぬめりの原因となっている、もずく表面の粘性物質が、もずくを塩で処理し、次いで水洗処理することにより除去されること、および粘性物質が除去されてぬめりのなくなったもずくは、そのまま又は甘塩で長期間保存可能であり、また凍結乾燥、………等による乾燥処理により、乾燥もずくが得られ、………さらに乾燥もずく及びこれを粉末化したものは、インスタント食品とすることが可能である」(1頁右下欄下3行〜2頁左欄4行)と記載されているが、浸透圧により生もずくの含有水分を減少させた後に凍結乾燥して得られる乾燥もずくを用いて乾燥もずく食品を製造することについては何も記載されていない。
また、甲第2号証及び甲第3号証には、「浸透圧」の一般的な原理、現象が記載され、甲第4号証には、もずく、各種調味液及び薬味をそれぞれ個包装してなる即席もずくカップスープが記載され、甲第5号証には、コーヒー、果実パルプシチュー、卵等の流動性食品を凍結乾燥して凍結乾燥食品を製造することが記載されているが、そのいずれにも浸透圧により生もずくの含有水分を減少させた後に凍結乾燥して得られる乾燥もずくを用いて乾燥もずく食品を製造することについては何も記載されていない。
さらに、甲第6〜12号証の商品パンフレットには、FDもずくスープ(しいたけ)及びFDもずくスープ(ゆず)が記載され、そこには該商品が本件特許の出願前に不特定の第3者に販売されていたことを裏付ける事実が示されているが、前記FDもずくスープ(しいたけ)及びFDもずくスープ(ゆず)は、単に凍結乾燥したもずくを使用するものであり、本件請求項1に係る発明の乾燥もずく食品とは明らかに異なるものである。
異議申立人は、「浸透圧」の一般的な原理、現象が知られておれば、浸透圧を利用してもずく内の含有水分を減少させることは当業者が容易に推考できることである旨主張しているが、本件請求項1に係る発明は、「浸透圧により生もずくの含有水分を減少させた後に凍結乾燥させたものを食したところ、生もずくが本来有している以上のぬめり感を味わうことができる」との知見に基づいてなされたものであり、生もずくを凍結乾燥する前に浸透圧によりもずく内の含有水分を減少させておけば、凍結乾燥もずくを熱湯で戻したとき、生もずくが本来有している以上のぬめり感を味わうことができるということは、甲第1ないし12号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件請求項1に係る発明は、浸透圧により含有水分が減少しているもずくを凍結乾燥することにより、特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明であるということはできず、また甲第1ないし12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

本件請求項2ないし8に係る発明は、「浸透圧により含有水分が減少しているもずくを凍結乾燥する」ことを必須の構成要件とする発明であるから、
請求項1に係る発明と同様の理由により、本件特許の出願前に日本国内において公然実施された発明であるということはできず、また甲第1ないし12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

36条4項違反について>
異議申立人は、もずくの表皮に「ぬめり」がくっついていると浸透圧は「ぬめり」が障害となって半透膜を介する浸透圧現象は発生し得ないと考えるのが妥当であるところ、明細書の発明の詳細な説明には、浸透圧をかける前にもずくの「ぬめり」を除去するのか、しないのかについての記載がまったくなく、当業者がもずくに浸透圧をかける方法を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない、旨主張している。
この点について検討すると、特許明細書の実施例1には、「食塩含有量30%の塩蔵もずく(ホンモズク)を流水で洗浄して食塩の含有量を1%以下(ここでは、0.5%とした)にし、………このもずくの不可食部(根から10mmまでの部分)を切断した後湯中に入れ、90℃に温度が達した後、30秒間湯通しする。その後25℃前後まで冷却し、水切りを行う………上記洗いもずくを20mmに切断する。」との記載があり、浸透圧をかける前の「洗いもずく」を調製する方法は明細書中に明確かつ十分に記載されているものと認められ、かつ該「洗いもずく」に浸透圧をかけることにより、特許明細書に記載されたとおりの効果を奏することができるものと認められるので、上記の点に異議申立人が指摘するような記載不備はない。

4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1ないし8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2002-01-24 
出願番号 特願平11-137772
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 536- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 大高 とし子
斎藤 真由美
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3120174号(P3120174)
権利者 日本ドライフーズ株式会社
発明の名称 乾燥もずく食品及びその製造方法  
代理人 藤井 重男  
代理人 梶原 克彦  
代理人 藤井 信行  
代理人 藤井 信孝  

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