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審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G11B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G11B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G11B
審判 一部申し立て 2項進歩性  G11B
審判 一部申し立て 1項1号公知  G11B
管理番号 1056594
異議申立番号 異議2000-74555  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-26 
確定日 2002-02-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3055662号「強磁性トンネル接合」の請求項1ないし5、7ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3055662号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3055662号の各請求公に係る発明は平成8年9月19日日に出願され、平成12年4月14日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その請求項1〜5,7〜9に係る発明について平成12年12月26日に特許異議申立人遠山タイ子より、及び、請求項1,2,3,、5、8,9に係る発明について特許異議申立人根津 仁より特許異議の申立てがなされ、平成13年3月27日(平成13年4月10日発送)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年6月8日に訂正請求がなされ、平成13年7月12日(平成13年7月27日発送)に再度の取消理由通知がなされ、異議意見書、上申書の提出があったものである。
II.訂正の適否についての判断
II-1.訂正の内容
平成13年6月8日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の記載について、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項2】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルは1.5〜2.5eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項3】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記第1強磁性層の保磁力と、前記第2強磁性層の保磁力とが異なる強磁性トンネル接合。
【請求項4】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層および前記第2強磁性層が、前記絶縁層を介して、反強磁性的結合している強磁性トンネル接合。
【請求項5】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、成膜後に大気中において40〜100℃で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である強磁性トンネル接合。
【請求項6】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、ダイアモンド状炭素膜である強磁性トンネル接合。
【請求項7】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、トンネル接合部分の面積が10μm2以下である強磁性トンネル接合。
【請求項8】 強磁性トンネル接合を感磁部とする磁気抵抗効果素子であって、前記強磁性トンネル接合は、請求項1乃至7に記載された何れかでなる磁気抵抗効果素子。
【請求項9】 磁気抵抗効果素子を有する磁気抵抗効果型ヘッドであって、前記磁気抵抗効果素子は、請求項8に記載されたものでなる磁気抵抗効果型ヘッド。」
を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にあり、トンネル接合部分の面積が10μm2以下である強磁性トンネル接合。
【請求項2】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルは1.5〜2.5eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項3】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記第1強磁性層の保磁力と、前記第2強磁性層の保磁力とが異なる強磁性トンネル接合。
【請求項4】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層および前記第2強磁性層が、前記絶縁層を介して、反強磁性的結合している強磁性トンネル接合。
【請求項5】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、成膜後に大気中において40〜100℃で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である強磁性トンネル接合。
【請求項6】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、ダイアモンド状炭素膜である強磁性トンネル接合。
【請求項7】 強磁性トンネル接合を感磁部とする磁気抵抗効果素子であって、前記強磁性トンネル接合は、請求項1乃至6に記載された何れかでなる磁気抵抗効果素子。
【請求項8】 磁気抵抗効果素子を有する磁気抵抗効果型ヘッドであって、前記磁気抵抗効果素子は、請求項7に記載されたものでなる磁気抵抗効果型ヘッド。」
と訂正するものである。
II-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正後の請求項1に新たに加わった限定事項は、訂正前の請求項7に含まれていた限定事項であり、訂正後の請求項2〜5は訂正後の請求項1を引用する項、訂正後の請求項7,8はそれぞれ訂正前の請求項8,9を繰り上げたものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものである。
また、上記訂正は、願書の最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、特許異議申立てがされていない訂正前の請求項6に対応する訂正後の請求項6は、訂正後の請求項1を引用している項であり、また絶縁層をダイアモンド状炭素膜とする従来技術もないことから独立特許要件も満足する。
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2〜3項の規定に適合し、請求項6についてはさらに同法第126条第4項の規定にも適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議申立てについての判断
III-1.特許異議申立ての概要
III-1-1.特許異議申立人遠山タイ子の申立ての概要
特許異議申立人遠山タイ子は、証拠として
宮崎照宣「スピントンネル磁気抵抗効果」
日本応用磁気学会誌Vol.20.No.5、1996,896-904頁(甲第1号証)
及び
Terunobu Miyazaki、Nobuki Tezuka
「Spin polarized tunneling in ferromagnet/insulator/ferromagnet junctions」
Journal of Magnetism and Magnetic Materials,151(1995)403-410(甲第2号証)
を示し、
(1)(訂正前の)請求項1〜5,7〜9中の「バリアポテンシャル」は測定ないしは評価方法によって変わるので不明確であり、「直線領域」も意味不明であるため特許法第36条第6項第2号に違反する。
(2)(訂正前の)請求項1〜5,7〜9に係る発明は、甲第1号証に記載の公然と知られた発明と同一であるから特許法第29条第1項第1号に、また甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたため特許法第29条第2項に該当し、
(訂正前の)請求項1,3〜4、8〜9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当するので、
(訂正前の)請求項1〜5,7〜9に係る発明に対する特許は特許法第113条第4号または第2号の規定により取り消されるべきである。
III-1-2.特許異議申立人根津 仁の申立ての概要
特許異議申立人根津 仁は、証拠として刊行物、特開平8-70149号公報を示し、(訂正前の)請求項1,2,3、5,8,9に係る発明は上記刊行物に記載の発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、同発明に対する特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
III-2.当審の判断
III-2-1.特許異議申立人遠山タイ子の申立てについて
(1)特許法第36条違反について
バリアポテンシャルの測定方法は、特許権者の提出した、

Jagadeesh S.Moodera,R.Meservey,and P.M.Tedrow
「Artificial tunnel barriers produced by cryogenically deposited Al2O3 」
Appl.Phys.Lett.Vol.41.No5.1 September 1982 pp488-490(乙第1号証)、

J ohn.G.Simmons
[Electric Tunnel Effect between Dissimilar Electrodes Separated by a Thin Insulating Film」
Journal of Applied Physics Volume34 Number9 September 1963 pp2582(乙第2号証)、

C.K.Chow
「Square-Mean-Root Approximation for Evaluating Asynmetric Tunneling Characteristics」
Journal of Applied Physics Volume36 .Number2 February 1965 pp561(乙第3号証)、

佐藤雅重、小林和雄
「磁化固定層をもつ強磁性トンネル接合の磁気抵抗効果」
日本応用磁気学会誌Volume21、No.4-2、1997 pp489-492(乙第4号証)

に示される如く、電流-電圧曲線の直線部分を利用して、乙第2号証のSimmonの式、もしくはその発展形である乙第3号証のChowの式でフィッテイングして求める方法が確立しており、直線部分(直線領域)の設定の可否についても、乙第2号証のSimmonの理論では、V=0の低電圧領域では、V-I特性が直線近似可能であり、理論値と実測値との比較により、それらのずれを解析することによってバリヤポテンシャルが求められることが知られていることから、異議申立人の主張する不明確さは認められない。温度、絶縁層の厚さについても、温度は特に限定がなければ室温と解釈するのが通常であり、厚さもバリヤポテンシャルの数値を前提とするとの特許権者の主張を了解出来る。
また、同時に当審で審問した、強磁性トンネル接合の接合面積の上限値10μm2 の臨界的意義については、表I-1および追加の実験成績からも、接合面積10μm2の付近にMR変化率の変曲点があり、10μm2 以下の領域でMR変化率が大きく且つ安定していることが読み取られ、また各表に散見される、歩留まり、MR変化率のばらつきも、製造条件等のばらつきに依存すると考えられて、接合面積10μm2以下で本願発明に必要な高いMR変化率が得られると言う事実の信頼性を損なうに至らないので、臨界的意義を認めることが出来る。
従って、これらの事項が特許法第36条の規定に違反するとはできない。
(2)特許法第29条違反について
(2)-1 異議申立人遠山タイ子の提出した異議証拠甲第1号証及び甲第1号証に記載された事項の証拠能力について
異議申立人遠山タイ子の提出した異議証拠甲第1号証:
宮崎照宣「スピントンネル磁気抵抗効果」
日本応用磁気学会誌Vol.20、No.5、1996,896-904頁
は、
1.著者宮崎照宣氏が本件発明と同じ分野の研究者であり、かつ当該分野において企業と共同出願を行っている等完全な第三者とは言えず、また法的に守秘義務が無いと言っても、自己の研究成果である甲第1号証に記載の事実を論文(甲第1号証)掲載以前に第三者に全て公開するとも断言できない。さらに第三者が上記宮崎照宣氏にアクセスして上記甲第1号証に記載の事実を知ったという証拠がない。この点は共同研究者についても同様である。
2.一般的に学会は論文を受理した後も、守秘義務の有無にかかわらず、第三者に当該論文の内容を公表するとは考えられないので、論文が受理されたことをもって公開されたとも言えない。
ことから、上記宮崎照宣氏及び共同研究者が自己の研究結果として、本件出願前に本件(訂正前の)請求項1〜5、7〜9に係る発明と同じ事項を知っていたとしても、上記各請求項に係る発明を特許法同29条第1項第1号に定める公然知られた発明とは言えず、学会内でも公然と知られていたとは認められないので、甲第1号証は公知の刊行物としても、公然と知られた発明の証拠としても採用できない。
また、異議申立人は、上記甲第1号証の第4節に,Al2O3 の障壁高さについて従来の報告値が1〜3eVであると記載されていることから、
上記甲第1号証が有効でなくとも、甲第1号証執筆時に公知であることが明らかであるとするが、これも甲第1号証が公知文献でない以上伝聞証拠に過ぎず採用できない。甲第1号証の接合面積に関する記載も同様である。
(2)-2.甲第2号証について
甲第2号証は甲第1号証と同様、強磁性体/絶縁体/強磁性体接合のスピン分極トンネル接合による磁気抵抗効果に関するもので、第407頁のテーブル2には、種々の接合、温度における磁気抵抗比と障壁高さ(MR ratio and barrier height for various junctions)が示され、そのテーブル中に、80NiFe/Al2O3/Co 接合において障壁高さ(barrier height)Φ1(eV)が0.61-0.75、Φ2(eV)が0.13-0.19 であることが示され、第409頁には「結果はテーブル2に示されており、Φ1 は異なる厚さの絶縁体のケースに対応し、Φ2 は50Åの一定厚さの絶縁体のケースに対応する。(The result is shown in Table 2, in which Φ1 is corresponds to the case of different insulator thickness and Φ2 the case of 50Åconstant insulator thickness. )」と記載されている。
しかし、訂正後の請求項1において新たに規定された限定事項「トンネル接合部分の面積が10μm2以下」については、格別の記載はない。当審が同時に取消理由として通知した刊行物特開平4-42417号公報に「強磁性トンネル効果を用いた多層構造の磁気抵抗効果膜を形成する一対の磁性層間の接合面積が小さいほど再生感度が向上する」との記載(公報第4頁右上欄第8〜11行参照)があるが、ここにも、「トンネル接合部分の面積が10μm2以下」にするとの記載も示唆もない。そして、上記刊行物に示されない数値限定を含む上記限定事項により規定される構成により「高いMR変化率を、再現性よく得る」という甲第2号証及び引用刊行物にない効果を得ている。 訂正された請求項2〜8項はいずれも請求項1を引用するものである。
(2)-3.まとめ
以上より訂正後の請求項1〜8に係る発明は甲第1号証に示された公然と知られた発明と同一であるとも、甲第2号証に記載された発明と同一であるとも、甲第1,2号証、及び当審の引用刊行物に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたとも認められないため、上記各請求項に係る発明に対する特許は特許法第29条のいずれの規定にも該当せず、取り消されるべきものとはいえない。
III-2-2.特許異議申立人根津 仁の申立てについて
特許異議申立人根津 仁の証拠として示す刊行物、特開平8-70149号公報には、
「第1強磁性層と、酸化アルミニウムからなる絶縁層と、保磁力が第1強磁性層と異なる第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合において、抵抗変化率が10%以上である強磁性トンネル接合、トンネル接合を利用した磁気抵抗素子、及びトンネル接合を利用した磁気抵抗素子を感磁部とする磁気ヘッド。」
が示されていると認められるが、訂正後の各請求項に規定された限定事項である「トンネル接合部分の面積が10μm2以下」である点については何の記載もない。 従って、訂正後の請求項1〜8に係る発明は上記刊行物に期さされた発明と同一であるとはいえずず、特許法第29条第1項第3号に該当するとは認められないため、同法第113条第2号の規定にもとづいて上記各請求項に係る発明に対する特許を取り消すことは出来ない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立て理由及び証拠によっては、本件の訂正後の請求項1〜8に係る発明に対する特許を取り消すことは出来ない。
また、他に 上記各発明に対する特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
強磁性トンネル接合
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合であって、
前記絶縁層によるバリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にあり、
トンネル接合部分の面積が10μm2以下である
強磁性トンネル接合。
【請求項2】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記絶縁層によるバリアポテンシャルは1.5〜2.5eVの範囲にある
強磁性トンネル接合。
【請求項3】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層の保磁力と、前記第2強磁性層の保磁力とが異なる
強磁性トンネル接合。
【請求項4】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層および前記第2強磁性層が、前記絶縁層を介して、反強磁性的結合している
強磁性トンネル接合。
【請求項5】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記絶縁層は、成膜後に大気中において40〜100℃で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である
強磁性トンネル接合。
【請求項6】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記絶縁層は、ダイアモンド状炭素膜である
強磁性トンネル接合。
【請求項7】 強磁性トンネル接合を感磁部とする磁気抵抗効果素子であって、
前記強磁性トンネル接合は、請求項1乃至6に記載された何れかでなる
磁気抵抗効果素子。
【請求項8】 磁気抵抗効果素子を有する磁気抵抗効果型ヘッドであって、
前記磁気抵抗効果素子は、請求項7に記載されたものでなる
磁気抵抗効果型ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果素子、磁気ヘッドに用いられる強磁性トンネル接合に関する。
【0002】
【従来の技術】
高密度磁気記録における再生ヘッドとして、異方性磁気抵抗(以下AMRと称する)効果を用いた磁気抵抗効果型ヘッド(以下MR磁気ヘッドと称する)が商品化されている。しかしながら、磁性層にNiFe等のAMR効果膜を用いているため、磁気抵抗(MR)変化率は約2%、感度は0.5%/Oeと低いので、さらに高MR変化率、高感度なMR膜が望まれている。
【0003】
このような要望に応える技術として、近年、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)という新しい現象が見出され、従来のAMR効果より大きな磁気抵抗変化率が得られるということで研究が進められている。GMR効果を生じる、強磁性層/非磁性金属層/強磁性層/反強磁性層の膜構成からなるスピンバルブ(SV)膜は、2〜5%/Oeの高感度な特性を示すため、これを用いたSVヘッドが次世代再生ヘッドとして注目され、実用化研究が始められている。
【0004】
一方、GMR効果とは別に、強磁性層/絶縁層/強磁性層の接合構造を持ち、両強磁性層の磁化の相対角度に依存してトンネル効果があらわれる強磁性トンネル効果という現象が見出され、この現象を利用した磁気抵抗効果素子の研究及び開発が進められている。強磁性トンネル効果膜は非常に高い磁場感度を有するため、10Gbit/inch2以上の超高密度磁気記録における再生ヘッドとして可能性がある。S.Maekawa and V.Gafvert等は、IEEE Trans.Magn.,MAG-18,707(1982)において、磁性体/絶縁体/磁性体接合で両磁性層の磁化の相対角度に依存してトンネル効果が現れることが期待されることを理論的、実験的に示した。
【0005】
特開平4-42417号公報は、強磁性トンネル効果膜を有する磁気抵抗効果素子を開示しており、従来のMRヘッドにくらべ、微小な漏洩磁束の変化を高感度、かつ、高分解能に検出できること、接合面積を狭めることによりピンホ-ルの発生確率を小さくして、再生感度を一層向上させることができる旨述べられている。
【0006】
また、特開平4-103014号公報は、磁性層に反強磁性体からのバイアス磁界を印加する強磁性トンネル効果膜およびそれを用いた磁気抵抗効果素子を開示している。
【0007】
更に、T.Miyazaki及びN.Tezuka等は、J.Magn.Magn.Mater.139(1995)L231において、Fe/Al2O3/Feトンネル接合で室温においてMR変化率18%が得られたと報告している。また M.Pomerantz,J.C.Sloczewski及びE.Spiller等は、Fe/a-Carbon/Fe膜について開示している。
【0008】
しかしながら、これまで報告された強磁性トンネル接合には、種々の解決すべき課題が存する。
【0009】
なお、本発明における強磁性トンネル接合は上記の強磁性トンネル効果膜と同一のものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高いMR変化率を、再現性良く得ることのできる強磁性トンネル接合を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの課題は、磁気抵抗効果素子または磁気ヘッド等への応用において、構造を簡素化し得る強磁性トンネル接合を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明は、第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合において、前記絶縁層によるバリアポテンシャルを0.5〜3eVの範囲に設定したことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は強磁性トンネル接合を概念的に示す斜視図、図2は図1のA2ーA2線に沿った断面図である。図示するように、強磁性トンネル接合は、第1強磁性層1と、絶縁層3と、第2強磁性層2とが順次積層されてなる。これらは、適当な絶縁支持基板4上に積層されている。本発明は、かかる構造において、絶縁層3によるバリアポテンシャルを0.5〜3eVの範囲に設定したことを特徴とする。
【0014】
強磁性トンネル接合において、電子eがスピンの向きを保ったまま、第1強磁性層1から、絶縁層3を介して、第2強磁性層2に通り抜ける(図1、図2参照)とき、電子eの透過率はスピンを考慮して求めた波動関数を用いて、入射波と透過波の振幅自乗比から求められ、そのトンネルコンダクタンスGは、
G=G0′(1+P1′・P2′)COSθ
と表される。ここで、
P1′=[(K1↑-K1↓)/(K1↑+K1↓)]α1
P2′=[(K2↑-K2↓)/(K2↑+K2↓)]α2
G0′:両強磁性層内での電子の波数K1↑、K1↓、K2↑、K2↓及びバリアポテンシャルの高さで定まる定数
α1、α2: バリアポテンシャルの高さに依存する係数
P1′、P2′: 両強磁性層1、2の有効スピン偏極度
P1、P2: 両強磁性層1、2のスピン偏極度(有効スピン偏極度P1′、P2′の分数部分)
である。トンネルコンダクタンスの変化率△G/G0は、
△G/G0=2・P1′・P2′
となる。トンネルコンダクタンスの変化率△G/G0はMR変化率と同義である。
【0015】
バリアポテンシャルの高さが低いと、それに依存する係数α1、α2が小さくなるため、両強磁性層の有効スピン偏極度P1′、P2′も小さくなり、MR変化率が低くなる。逆に、バリアポテンシャルが充分に高いと、有効スピン偏極度P1′、P2′が、スピン偏極度P1、P2に近づき、高いMR変化率が得られる。
【0016】
バリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にある本発明の場合、高いMR変化率を、再現性よく得ることができる。その理由の一つは、バリアポテンシャルを0.5〜3eVの範囲に保つことにより、均一性が良好で、ピンホールの非常に少ない絶縁層3の形成が保証されるためと推測される。
【0017】
もう一つの理由は、上述したバリアポテンシャルの範囲では、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に、絶縁層3を介して、安定した反強磁性的結合を生じるためと推測される。バリアポテンシャルが1.5〜2.5eVの範囲では、特に好ましい結果が得られた。
【0018】
バリアポテンシャルが3eVを越えると、高いMR変化率を得ることができなくなる。原因は明確ではないが、3eVを越えるバリアポテンシャルの範囲では、トンネル電流が流れなくなるためではないかと推測される。
【0019】
バリアポテンシャルが0.5eVよりも小さくなると、この種の強磁性トンネル接合において期待される高いMR変化率を得ることができなくなる。その理由は、絶縁層3の均一性が劣化し、ピンホールが増えるためと推測される。
【0020】
次に、バリアポテンシャルが0.5〜3eVとなる範囲において、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に、絶縁層3を介して、安定した反強磁性的結合を生じさせ得る可能性は、この強磁性トンネル接合を、磁気ヘッドの読み取り用磁気変換素子に用いる場合に大きな利点をもたらす。
【0021】
図3は反強磁性的結合を生じている場合の磁場ー磁気抵抗変化率特性を示す図である。図3に示すように、反強磁性的結合を生じている場合、磁場ー磁気抵抗曲線L1、L2が零磁場付近の領域△Hで、MR変化率が最も高い値を示すようになる。従って、この強磁性トンネル接合を磁気ヘッドの読み取り用磁気変換素子として用いた場合、バイアス磁場を印加する必要がなく、形状効果のみで、零磁場付近で直線領域が得られる。このため、磁気ヘッドの構造を簡素化することができる。
【0022】
上述のようなバリアポテンシャルを確保し得る絶縁層3の一例は、大気中で40〜100℃アニールした酸化アルミニウム膜である。かかる酸化アルミニウム膜は、金属アルミニウムが局部的に存在しなくなったため、上下の強磁性層1-2間でブリッジができなくなり、その結果、高いバリアポテンシャルを有する極薄絶縁層3を有する強磁性トンネル接合が実現できる。
【0023】
絶縁膜の他の例としては、ダイアモンド状炭素膜(Diamond-like carbon膜、以下DLC膜と称する)も、高いバリアポテンシャルを有する極薄絶縁層3を実現するのに有効である。特に、プラズマCVD法で作製したDLC膜は、数十Åという非常に薄い層厚においても、均一、かつ、ピンホ-ルのない良好な絶縁層3が得られる。
【0024】
なお、M.Pomerantz,J.C.Sloczewski 及びE.Spiller等が開示した中間層のC膜は、MBE法で作製したアモルファス-C膜であり、プラズマCVD法で作製したDLC膜とは異なる。具体的には、アモルファス-C膜は炭素同士がネットワーク状に結合しているものであるが、本発明のDLC膜は炭素と水素がネットワ-ク状に結合しており、本質的に異なるものである。
【0025】
本発明において、通常、第1強磁性層1の保磁力と、第2強磁性層2の保磁力とは、互いに異ならせる。図4は第1強磁性層1の保磁力H1と、第2強磁性層2の保磁力H2とを、H1>H2(またはH2>H1)のように異ならせた場合の磁化曲線を示している。図示するように、磁化曲線は二段ループになっている。図4中、円の内部に示された2つの矢印は、第1強磁性層1の磁化の向き、及び、第2強磁性層2の磁化の向きをそれぞれ示している。
【0026】
第1強磁性層1の磁化の向きと、第2強磁性層2の磁化の向きは、印加磁界が保磁力H2(絶対値)より大きく、かつ、保磁力H1(絶対値)よりも小さい場合は、反平行になり、印加磁界が保磁力H1よりも大きい場合は、平行になる。電気抵抗は、磁化の向きが反平行状態のとき大きく、磁化の向きが平行状態であるとき小さくなる。磁化の向きが平行である時の抵抗値Rsとし、磁化の向きが反平行から平行へ変化した時の抵抗の変化分を△Rとすると、MR変化率は△R/Rsとなる。これにより、外部印加磁界を検出することができる。
【0027】
次に実施例を挙げて説明する。
実施例1
3インチφのガラス基板でなる絶縁支持基板4上に、NiFeでなる第1強磁性層1、酸化アルミニウム膜でなる絶縁層3及びCoでなる第2強磁性層2を積層し、図1及び図2に示した強磁性トンネル接合を得た。酸化アルミニウム膜でなる絶縁層3は、アルミニウム膜を大気中において60℃、24時間の熱処理を行なって形成した。強磁性トンネル接合の接合面積は0.25〜2500μm2とした。
【0028】
上述した接合面積を持つ強磁性トンネル接合を、各20個ずつ作製し、各接合面積毎のバリアポテンシャル、MR変化率の平均値及びそのばらつきを調べた。また、歩留りについても調べた。次に、強磁性トンネル接合の作製方法を具体的に説明する。
【0029】
まず、大きさ3インチφのコ-ニング7059ガラス基板でなる支持基板4上に第1強磁性層1として、層厚10nmのNiFe膜をRFスパッタ法で成膜し、レジストフォトリソ、Arイオンミリング、レジスト剥離の微細加工技術を用いて、0.5〜50μm×0.5mmの矩形状にパタ-ニングした。
【0030】
その後、レジストパタ-ニングをおこない、第1強磁性層1を構成するNiFe層の表面酸化層を逆スパッタにより除去したあと、電子ビ-ム加熱式真空蒸着法により、層厚5nmのアルミニウム膜を成膜した。
【0031】
その後、サンプルを真空蒸着装置から取り出して、大気中において60℃、24時間の熱処理を行なった後、リフト・オフ・プロセスを経て、直径3mmφの酸化アルミニウム膜でなる絶縁層3を形成した。
【0032】
次に、再びレジストパタ-ニングをおこなった後、第2強磁性層2として層厚100nmのCo膜をRFスパッタ法で成膜し、続いて、リフトオフプロセスを経て、第1強磁性層1と直角方向に0.5〜50μm×0.5mmの矩形状パタ-ンを持つ第2強磁性層2を形成した。これにより、接合面積0.25〜2500μm2の強磁性トンネル接合が得られた。
【0033】
また、比較として、従来用いられている自然酸化アルミニウム膜(成膜後、大気中において24時間放置)を絶縁層3としたNiFe/酸化アルミニウム/Co強磁性トンネル接合も同様に作製した。
【0034】
実施例及び比較例において採用された第1強磁性層1および第2強磁性層2の成膜条件は以下に示す通りである。また、アルミニウム膜は、到達圧力3×10-5 Pa、蒸着速度0.05nm/secで作製した。
<強磁性層成膜条件>
到達圧力:1×10-5Pa
タ-ゲット: Ni80Fe20at%、Co(4インチφ)
スパッタガス:Ar 50 sccm
スパッタ圧力:0.5Pa
投入パワ-: 150 W
成膜レ-ト:NiFe 45nm/min、Co 40nm/min
基板温度: 水冷
このようにして作製したサンプルについて、直流4端子法で磁気抵抗(MR)曲線を測定した。なお、測定時の最大印加磁場は±1kOeとし、-1kOeの磁場を印加させたのち、磁場を徐々に大きくして+1kOeまでかけ、再び-1kOeに戻した。また、バリアポテンシャルはトンネル接合のV-I特性を測定し、直線領域からのずれをもとめた。
【0035】
図5に本発明に係る接合面積50×50μm2の強磁性トンネル接合の磁気抵抗曲線を示す。印加磁場を-1kOeより大きくしていくと、+5Oeにおいて、第1強磁性層1の磁化反転がおこり、第1強磁性層1 と第2強磁性層2のスピンが反平行になるため、電気抵抗が大きくなる。バリアポテンシャルを求めた結果0.5eVであり、作製した20個のうち16個において同様のMR曲線が得られた。MR変化率は6.6〜8.1%であり、MR変化率の平均値は7.6%で、変化率ばらつきは±7%であった。
【0036】
一方、自然酸化アルミニウム膜を絶縁層3とした比較例の強磁性トンネル接合においては、バリアポテンシャルは0.2eVしか得られなかった。また、4個しかMR曲線が観測できず、MR変化率平均値は1.5%と低く、平均値ばらつき±88%と非常に大きかった。種々の接合面積についても同様の評価を行なった。これらの結果を表1ー1、1ー2に示す。


【0037】
表1から明らかなように、大気中60℃熱処理により形成した酸化アルミニウム膜を絶縁層3としての用いることにより、0.5〜3eVの高いバリアポテンシャルと高いMR変化率が得られ、しかもばらつきが少なく、高い歩留まりが得られる。特にバリアポテンシャルが1.5〜2.5eVのとき歩留りが高い。また、30〜250℃の温度範囲で大気中熱処理して得られた酸化アルミニウム膜を絶縁層3とした強磁性トンネル接合のMR特性を調べた結果、40〜100℃熱処理した場合に、高いMR変化率が得られ、しかも、ばらつきが少なく、高い歩留まりが得られることがわかった。
【0038】
実施例2
ガラス基板でなる支持基板4上に、絶縁層3をDLC膜によって構成した強磁性トンネル接合を形成した。第1強磁性層1はCo50Fe50によって構成し、第2強磁性2層2はCoによって構成した。接合面積は0.25〜2500μm2とした。第1強磁性層1及び第2強磁性層2は実施例1と同様の方法で作製した。絶縁膜3を構成するDLC膜は、プラズマCVD法により、層厚5mm、直径3mmφになるよう成膜し、リフトオフ法によりパタ-ニングした。DLC膜の成膜条件は以下に示す。
【0039】
<DLC膜成膜条件>
到達圧力:2×10-3 Pa
導入ガス:メタン 5sccm
スパッタ圧力:3.5Pa
RFパワ-:50 W
自己バイアス:-150 V
成膜レート:10nm/min
基板温度:加熱および水冷なし
また、比較例として、自然酸化アルミニウム膜を絶縁層3としたCo50Fe50/酸化アルミニウム/Co強磁性トンネル接合を作製した。
【0040】
上記実施例及び比較例のサンプルについて、直流4端子法でMR特性を測定して得られた結果を表2ー1、2ー2に示す。


【0041】
表2から明らかなように、プラズマCVD法で作製したDLC膜を、絶縁層3として用いることにより、高いバリアポテンシャルおよび高いMR変化率が得られ、しかも、ばらつきが少なく、高い歩留まりが得られることがわかる。例えば、本実施例による接合面積50×50μm2のサンプルについて、作製した20個のうち、15個でMR曲線が得られた。MR変化率の平均値は18.9%で、変化率のばらつきは±12%であった。また、実施例1と同様に、バリアポテンシャル1.5〜2.5eVのとき特に歩留りが高かった。これに対して、自然酸化アルミニウム膜を絶縁層3とした比較例の強磁性トンネル接合においては、バリアポテンシャルは小さく、5個しかMR曲線が観測できず、MR変化率平均値は3.3%と低く、ばらつきは±88%と非常に大きかった。
【0042】
次に、接合面積と反転磁場との関係について述べる。接合面積が小さいほど絶縁層3のピンホールなどの欠陥が少なくなるため高い歩留まりが得られることは報告されている。表1および表2からわかるように、本実施例の強磁性トンネル接合において、接合面積が小さいほどMR変化率は高く、また高い歩留まりが得られる。特にバリアポテンシャル1.5〜2.5eVのときに歩留りが高くなる。また、図5に示す磁場Hab、即ち、第1強磁性層1の磁化が反転する磁場が、負の方向にシフトしていくことがわかった。特に、接合面積が10μm2より小さくバリアポテンシャルが1.5〜2.5eVのとき、零磁場において第1強磁性層1と第2強磁性層2の各々の磁化が反平行状態になる。このことは、両磁性層間に反強磁性的結合力が作用していることを示している。接合面積が10μm2より小さい場合に高いMR変化率と高い歩留まりが得られたのは、均一でピンホールの非常に少ない絶縁層3を用い、かつ、接合面積を小さくすることにより、両磁性層間に反強磁性的結合が生じたためと考えられる。また実施例1-7及び実施例2-8に示すように、接合面積が10μm2以下でもバリアポテンシャルが2.5eVより大きいと、両磁性層間で反強磁性的接合は得られず、歩留りも若干低下する。
【0043】
次に、本発明に係る強磁性トンネル接合を、磁気ヘッドへ適用した例について述べる。
<本発明のMRヘッド>
実施例2によるCo50Fe50/DLC/Co強磁性トンネル接合を磁気抵抗効果膜に用いた再生用磁気抵抗効果型ヘッドを作製し、磁気記録媒体に書き込まれた記録信号を読み出し、再生感度および再生出力を調べ、従来のAMR磁気抵抗効果型ヘッドと比較した。図6に本発明にかかる強磁性トンネル接合を用いた再生用磁気ヘッドの模式図を示す。次に、ヘッドの作製方法について説明する。
【0044】
まず、膜厚30μmのアルミナ絶縁膜が形成されたAl2O3ーTiC基板(図示しない)上に下部シ-ルド膜71として、DCスパッタ法を用いて、膜厚2μmのセンダスト膜を形成し、フォトリソグラフおよびArイオンエッチングにより所定の形状にした。
【0045】
次に、この上に下部絶縁層81として、RFスパッタ法を用いて、膜厚80nmのアルミナ膜を形成し、続いて、第1電極膜61として、レジストパタ-ニング後、Cr(5nm)/Cu(30nm)/Cr(5nm)膜をDCスパッタ法により成膜し、リフトオフ法で所定の形状に加工した。
【0046】
次に、膜厚10nmのCo50Fe50膜でなる第1強磁性層1、膜厚5nmのDLC膜でなる絶縁膜3及び膜厚5nmのCo膜でなる第2強磁性層2を積層し、それによって強磁性トンネル接合9を形成した。強磁性トンネル接合の形成方法について述べる。
【0047】
まず、レジストパタ-ニング後第1強磁性層1として、Co50Fe50(10nm)層をRFスパッタ法で形成し、絶縁層3としてDLC(5mm)層をプラズマCVD法で形成した。次に、第2強磁性層2として、Co(10nm)層をRFスパッタ法で形成し、リフトオフ法により幅1μm×長さ6μmの形状にした。
【0048】
最後に、第1電極膜61と同じ方法で、レジストパタ-ニング後、第2電極膜62としてCr(5nm)/Cu(30nm)/Cr(5nm)膜を成膜し、リフトオフ法で所定の形状に加工した。なお、第2電極膜を成膜する前に、第2強磁性層2の上部に形成された表面酸化層などを逆スパッタで除去し、最終的な第2強磁性層厚が5μnmになるようにした。その上に、上部絶縁層82として膜厚90nmのアルミナ膜を形成した。
【0049】
次に、上部シ-ルド膜72として、膜厚2μmのNiFe膜をDCスパッタ法で成膜し、フォトリソおよびArイオンエッチングにより所定の形状にした。最後に、めっき法でCuのバンプ電極膜を作製したのち、保護膜として膜厚30μmのアルミナ膜を被せた。その後、所定の大きさに加工研磨して接合面積が幅1μm、長さ1μmの再生用磁気抵抗効果型ヘッドとした。すなわち、ヘッドのトラック幅は1μmおよびMRハイトは1μm、MRシ-ルド間隔は0.27μmとした。
<従来のAMRヘッド:比較例>
比較のため、図7に示すような、SALバイアス方式のNiFe層をMR膜としたトラック幅1μm、MRハイト1μm、MRシ-ルド間隔0.27μmの従来のAMRヘッドも作製した。作製方法を以下に示す。下部絶縁層81の形成までは本発明の強磁性トンネル接合型MRヘッドと同じである。下部絶縁層81を形成した後、まずSAL膜としてNiFeRh膜51、磁気分離膜としてTa膜52及び、MR膜としてNiFe膜53をDCスパッタ法で成膜し、微細加工技術により矩形状に加工した。その後、電極膜61、62、上部絶縁層82及び上部シ-ルド膜72を薄膜及び微細加工技術で形成した。
【0050】
この磁気ヘッドを用いて、保磁力2500Oe、膜厚50nmの磁気記録媒体に書き込まれた記録信号を再生し、特性を調べた。図8は、単位トラック幅当たりの再生出力と記録密度を比較した図である。曲線L3は本発明に係る強磁性トンネル接合を用いた磁気ヘッドの特性、曲線L4は従来のAMRヘッドの特性をそれぞれ示している。図8に示すように、本発明の再生用磁気抵抗効果型ヘッドによれば、従来のAMRヘッドより4〜5倍の再生出力が得られた。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)高いMR変化率を、再現性良く得ることのできる強磁性トンネル接合を提供することができる
(b)磁気抵抗効果素子または磁気ヘッド等への応用において、構造を簡素化し得る強磁性トンネル接合を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る強磁性トンネル接合を模式的に示す斜視図である。
【図2】
図1のA2ーA2線に沿った断面図である。
【図3】
強磁性トンネル接合の磁気抵抗変化率特性を示す図である。
【図4】
強磁性トンネル接合の磁化曲線を示す図である。
【図5】
本発明に係る強磁性トンネル接合の磁気抵抗変化率特性を示す図である。
【図6】
本発明に係る強磁性トンネル接合を用いた磁気ヘッドの構成を概略的に示す斜視図である。
【図7】
AMR効果を用いた従来の磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図8】
本発明の再生磁気ヘッドと従来のAMRヘッドの再生特性を示す図である。
【符号の説明】
1 第1強磁性層
2 第2強磁性層
3 絶縁層
4 基板
51 SAL膜
52 磁気分離膜
53 MR膜
61、62 電極膜
71 下部シ-ルド膜
72 上部シ-ルド膜
81 下部絶縁層
82 上部絶縁層
9 強磁性トンネル接合
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許請求の範囲の記載について、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項2】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルは1.5〜2.5eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項3】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記第1強磁性層の保磁力と、前記第2強磁性層の保磁力とが異なる強磁性トンネル接合。
【請求項4】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層および前記第2強磁性層が、前記絶縁層を介して、反強磁性的結合している
強磁性トンネル接合。
【請求項5】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、成膜後に大気中において40〜100℃で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である強磁性トンネル接合。
【請求項6】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、ダイアモンド状炭素膜である強磁性トンネル接合。
【請求項7】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、トンネル接合部分の面積が10μm2以下である強磁性トンネル接合。
【請求項8】 強磁性トンネル接合を感磁部とする磁気抵抗効果素子であって、前記強磁性トンネル接合は、請求項1乃至7に記載された何れかでなる磁気抵抗効果素子。
【請求項9】 磁気抵抗効果素子を有する磁気抵抗効果型ヘッドであって、前記磁気抵抗効果素子は、請求項8に記載されたものでなる磁気抵抗効果型ヘッド。」
を、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1強磁性層と、絶縁層と、第2強磁性層とが順次積層されてなる強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルが0.5〜3eVの範囲にあり、トンネル接合部分の面積が10μm2以下である強磁性トンネル接合。
【請求項2】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層によるバリアポテンシャルは1.5〜2.5eVの範囲にある強磁性トンネル接合。
【請求項3】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記第1強磁性層の保磁力と、前記第2強磁性層の保磁力とが異なる強磁性トンネル接合。
【請求項4】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、
前記第1強磁性層および前記第2強磁性層が、前記絶縁層を介して、反強磁性的結合している
強磁性トンネル接合。
【請求項5】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、成膜後に大気中において40〜100℃で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である強磁性トンネル接合。
【請求項6】 請求項1に記載された強磁性トンネル接合であって、前記絶縁層は、ダイアモンド状炭素膜である強磁性トンネル接合。
【請求項7】 強磁性トンネル接合を感磁部とする磁気抵抗効果素子であって、前記強磁性トンネル接合は、請求項1乃至6に記載された何れかでなる磁気抵抗効果素子。
【請求項8】 磁気抵抗効果素子を有する磁気抵抗効果型ヘッドであって、前記磁気抵抗効果素子は、請求項7に記載されたものでなる磁気抵抗効果型ヘッド。」
と訂正する。
異議決定日 2002-01-22 
出願番号 特願平8-248410
審決分類 P 1 652・ 536- YA (G11B)
P 1 652・ 113- YA (G11B)
P 1 652・ 111- YA (G11B)
P 1 652・ 537- YA (G11B)
P 1 652・ 121- YA (G11B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 豊  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 内藤 二郎
田良島 潔
登録日 2000-04-14 
登録番号 特許第3055662号(P3055662)
権利者 ティーディーケイ株式会社
発明の名称 強磁性トンネル接合  
代理人 西脇 民雄  
代理人 阿部 美次郎  
代理人 阿部 美次郎  
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