• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G03G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
管理番号 1057995
異議申立番号 異議2001-71882  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-09 
確定日 2002-01-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3123076号「静電荷像現像用トナー」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3123076号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3123076号(平成2年11月30日出願、平成12年10月27日設定登録)は、日本ゼオン株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年11月19日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1中に「疎水化度分布を有する」とある記載を、「疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲にある」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項1中に「差(ΔX)が15%以上」とある記載を、「差(ΔX)が25%以上」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項d
明細書第4頁第2〜4行(特許公報第3欄第30〜31行)に「差(ΔX)が15%以上の開きを有する疎水化度分布を有することを特徴とする」とある記載を、「差(ΔX)が25%以上の開きを有し、前記全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にあることを特徴とする」と訂正する。
(5)訂正事項e
明細書第13頁第14〜15行(特許公報第11欄第5行)に「疎水化度10」とある記載を、「疎水化度5」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書第14頁第3行(特許公報第11欄第10行)に「疎水化度20、30・・・・90」とある記載を、「疎水化度5、10、15・・・・90」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書第14頁第11〜12行(特許公報第11欄第19行)に「差ΔX)が15%以上」とある記載を、「差(ΔX)が25%以上」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書第15頁第1行(特許公報第11欄第26行)に「ΔX大きさが15%より小さい」とある記載を、「ΔXの大きさが25%より小さい」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書第22頁第19行、第25頁第11行、第26頁第15行、第27頁第10行、第18行、第20行、第28頁第3行、第7行、第10行、第11行、第15行、第16行、第19行、第20行、第29頁第4行、第5行、第9行、第13行、第14行、第17行、第18行、第30頁第2行、第3行、第6行、第7行、第11行、第12行(特許公報第14欄第28行、第15欄第21行、第42行、第16欄第3行、第9行、第10行、第14行、第17行、第18行、第21行、第22行、第25行、第26行、第29行、第30行、第33行、第34行、第38行、第41行、第42行、第45行、第46行、第49行、第50行、第17欄第3行、第4行、第7行、第8行)に「実施例1」とある記載を、「参考例1」と訂正する。
(10)訂正事項j
明細書第24頁第20行(特許公報第15欄第13行)に「実施例2」との記載を、「実施例1」と訂正する。
(11)訂正事項k
明細書第26頁第17行、第28頁第2行、第29頁第8行(特許公報第15欄第43行、第16欄第13行、第37行)に「実施例3」とある記載を、「実施例2」と訂正する。
(12)訂正事項l
明細書第28頁第1行(特許公報第16欄第12行)に「実施例4」とある記載を、「実施例3」と訂正する。
(13)訂正事項m
明細書第28頁第2行、第29頁第8行(特許公報第8頁第16欄第13行、第37行)に「トナーC」とある記載を、「トナー」と訂正する。
(14)訂正事項n
明細書第28頁第9行(特許公報第16欄第20行)に「実施例5」とある記載を、「実施例4」と訂正する。
(15)訂正事項o
明細書第28頁第10行、第19行、第29頁第17行、第30頁第6行(特許公報第16欄第21行、第29行、第45行、第17欄第3行)に「トナーA」とある記載を、「トナー」と訂正する。
(16)訂正事項p
明細書第28頁第18行(特許公報第16欄第28行)に「実施例6」とある記載を、「参考例2」と訂正する。
(17)訂正事項q
明細書第30頁第14行(特許公報第17欄第11行)に「トナー(a)〜(h)」とある記載を、「トナー(A)〜(H)」と訂正する。
(18)訂正事項r
明細書第31頁第4〜6行(特許公報第17欄第19〜21行)に「図中、・は、トナー(A)〜(E)、(I)とから得られた平均値を、・は、トナー(F)〜(H)とから得られた平均値を示してある。」とある記載を、「図中、〇は、トナー(A)〜(E)、(I)とから得られた平均値を、□は、トナー(F)〜(H)とから得られた平均値を示してある。」と訂正する。
(19)訂正事項s
明細書第31頁第15行〜32頁第6行(特許公報第9頁第18欄第6〜15行)に「実施例では帯電量の変化幅が少ないのに対して、比較例は変化幅が大きく、特に比較例4は、温度35℃、湿度85%の環境で帯電量が低下し、トナー飛散が発生した。 耐刷テスト 実施例1、5及び比較例2〜4をEP-870Z(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例3、4及び比較例1をEP-4300(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例2については、EP-5502(ミノルタカメラ社製)の定着器をオイル塗布タイプに改造し、それぞれ40万枚の耐刷テストを行った。」とある記載を、「実施例では帯電量の変化幅が少ないのに対して、比較例は変化幅が大きかった。 耐刷テスト 実施例4及び比較例2〜3をEP-870Z(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例2、3及び比較例1をEP-4300(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例1については、EP-5502(ミノルタカメラ社製)の定着器をオイル塗布タイプに改造し、それぞれ40万枚の耐刷テストを行った。」と訂正する。
(20)訂正事項t
明細書第33頁(特許公報第10頁)の表1中の、実施例1及び実施例6の記載内容を削除すると共に、「実施例2」ないし「実施例5」とある記載を、「実施例1」ないし「実施例4」と訂正する。
(21)訂正事項u
第10図中の実施例1及び比較例4の記載内容を削除すると共に、「実施例2」ないし「実施例5」とある記載を、「実施例1」ないし「実施例4」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項a〜c
訂正事項aは、請求項1において、「全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲にある」と、全疎水化度X1 (%)を特定するものであり、訂正事項bは、「差(ΔX)」が15%以上のものを、25%以上のものに範囲を特定するものであり、また、訂正事項cは、請求項の削除であるから、訂正事項a〜cはいずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲にある」点は、削除された請求項2に記載されていた事項であり、「差(ΔX)が25%以上」の点は、願書に添付した明細書に、差(ΔX)が25%の実例が記載され、また、取消理由通知で引用した先行文献に記載された範囲を削除するものであるから、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2)訂正事項d、g、h
訂正事項d、g、hは、特許請求の範囲の訂正に伴って生じた、不整合部分を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)訂正事項e、f
本件の実施例に使用している疎水性微粒子の、ぬれ特性(%)と疎水化度(%)との関係を示す第1〜8図には、疎水化度として5%刻みの測定結果(疎水化度0〜100(%)の間)が示されているから、訂正事項e、fは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(4)訂正事項i〜l、n、p、t、u
特許請求の範囲の訂正の結果、本件発明の範囲外となった「実施例1」を「参考例1」に、また、環境安定性の試験を行っていない「実施例6」を「参考例2」とし、これに伴い、実施例2ないし5を、番号を繰り上げて、実施例1ないし4とするもので、実施例等の内容に変更はなく、更に、引用して記載されていた実施例の番号を、新しい参考例あるいは実施例の番号に訂正するものであるから、訂正事項i〜l、n、p、t、uは、明りょうでない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(5)訂正事項m、o
トナーは、その後、疎水性微粒子を加えて処理するものであるから、処理済みのトナーAまたはトナーCではなく、処理前のトナーであることは明らかであるから、訂正事項m、oは、誤記の訂正を目的とするもので、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(6)訂正事項q、r
明細書中には、トナーは、(A)〜(H)以外は記載されておらず、トナー(a)〜(h)は、トナー(A)〜(H)であることは明らかであり、また、第9図中には、〇トナー(A)〜(E)、(I)の平均、また、□トナー(F)〜(H)の平均、と記載されており、「・」がそれぞれ、「〇」及び「□」であることは明らかであるから、訂正事項q、rは、誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(7)訂正事項s
訂正事項sは、本件明細書中には、比較例4は記載されていないのに、比較例4に関する記載がなされていたものを削除するもの、及び、上記実施例を参考例に変更及びそれに伴って、実施例の番号を繰り上げる訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするもので、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 無機微粒子を外添してなるトナーにおいて、この無機微粒子が単一の無機微粒子母材を疎水化剤で処理することにより得られた疎水性無機微粒子であり、且つこの疎水性無機微粒子は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)とぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)との差(ΔX)が25%以上の開きを有する疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用トナー。」

2.特許異議申立て理由の概要
特許異議申立人 日本ゼオン株式会社は、甲第1号証(特開昭62-293253号公報)、甲第2号証(AEROSILのパンフレット 日本アエロジル株式会社発行)、甲第3号証(R809の製品規格及び処理剤の報告 日本エアロジル株式会社営業部平野順一作成)、甲第4号証(実験成績証明書 日本ゼオン株式会社総合開発センター 主席研究員幕田善広作成)を提示し、
(1)本件発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであること、および、
(2)本件特許明細書には、記載上の不備があるため、本件特許は、特許法第36条第3項の規定に違反して特許されたものであることにより、
その特許を取り消すべき旨主張する。

3.甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証には、次の事項が記載されている。
「1)導電性支持体上に感光層を設けてなり、当該感光層の表層がヒドラゾン系化合物および/またはスチリル系化合物を含有する感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーにより現像する工程を含む画像形成方法において、1次粒子の平均粒径が20mμ以上である流動化剤微粒子が添加され、見掛け嵩密度が0.35g/cm3以上であるトナーを用いることを特徴とする画像形成方法。」(特許請求の範囲)
「本発明において用いることができる流動化剤微粒子の具体的な製品としては、例えば次のものを挙げることができる。・・・・・疎水性酸チタン微粒子「T-805」(平均粒径:30mμ、日本アエロジル社製)・・・・・疎水性シリカ微粒子「R-809」(平均粒径:30mμ、日本アエロジル社製)」(第11頁左上欄第12行〜右上欄第6行)
「トナーA・・・・・このポリエステル樹脂100重量部、カーボンブラック・・・・・10重量部、低分子量ポリプロピレン・・・・・3重量部をボールミルにより混合し、混練、粉砕、分級の各工程を経て平均粒径10μmのトナー粉末を得た。 このトナー粉末100重量部に、疎水性酸化チタン微粒子「T-805」(日本アエロジル社製)0.6重量部を添加し、タービュラーミキサーにより10分間混合して、見掛け嵩密度が0.36g/cm3のトナーを製造した。これを「トナーA」とする。」(第19頁右下欄末行〜第20頁右上欄第6行)
「トナーC・・・・・このポリエステル樹脂100重量部、カーボンブラック・・・・・10重量部、低分子量ポリプロピレン・・・・・3重量部をボールミルにより混合し、混練、粉砕、分級の各工程を経て平均粒径10 mのトナー粉末を得た。 このトナー粉末100重量部に、疎水性アルミナ微粒子「RX-C」(日本アエロジル社製)0.4重量部を添加し、タービュラーミキサーにより10分間混合して見掛け嵩密度が0.40g/cm3 のトナーを製造した。これを「トナーC」とする。 トナーD トナーCの製造において得られた平均粒径10 mのトナー粉末100重量部に対し、疎水性シリカ微粒子「R-809」(日本アエロジル社製)0.8重量部を添加し、タービュラーミキサーにより10分間混合して見掛け嵩密度が0.40g/cm3 のトナーを製造した。これを「トナーD」とする。」(第20頁右上欄第15行〜右下欄第9行)

(2)甲第2号証には、二酸化チタンT805の項に、「TiO2 P25の表面をオクチルシランで化学的に処理した疎水性グレードで分散性にすぐれている。」と記載されている。

(3)甲第3号証には、R809が、「Aerosil OX50をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理したもの」であることが記載されている。

(4)甲第4号証には、疎水性酸化チタン微粒子「T-805」及び疎水性シリカ微粒子「R-809」について、疎水化度分布を測定した実験結果として、疎水性酸化チタン微粒子「T-805」は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)が85%、ぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)40%で、その差(ΔX)が45%であること、また、疎水性シリカ微粒子「R-809」は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)が65%、ぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)が45%で、その差(ΔX)が20%であることが記載されている。

4.理由1.特許法第29条第1項第3号違反について
本件発明は、訂正の結果、「無機微粒子が単一の無機微粒子母材を疎水化剤で処理することによって得られた疎水性無機微粒子」であることに加え、「疎水性無機微粒子は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)とぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)との差(ΔX)が25%以上の開きを有する疎水化度分布を有し」かつ、「全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にあること」に特徴を有するものとなった。
これに対して、刊行物1には、「1)導電性支持体上に感光層を設けてなり、当該感光層の表層がヒドラゾン系化合物および/またはスチリル系化合物を含有する感光体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーにより現像する工程を含む画像形成方法において、1次粒子の平均粒径が20mμ以上である流動化剤微粒子が添加され、見掛け嵩密度が0.35g/cm3 以上であるトナーを用いることを特徴とする画像形成方法。」(特許請求の範囲)に関し、その明細書中の実施例には、疎水性酸化チタン微粒子「T-805」(日本アエロジル社製)及び疎水性シリカ「R-809」(日本アエロジル社製)をトナー粉末に添加し、混合することで、それぞれ、トナーA及びトナーDを製造したことが記載されている。
ところで、甲第2号証には、二酸化チタンT-805が、「TiO2 P25の表面をオクチルシランで化学的に処理した疎水性グレードで分散性にすぐれている」ことが、甲第3号証には、R-809が、「Aerosil OX50をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理したもの」であることが、それぞれ記載されており、これらの無機微粒子が、単一の無機微粒子母材を疎水化処理することにより得られた疎水性無機微粒子であることは明らかである。
一方、甲第4号証(実験成績証明書)によれば、トナーAで使用しているT-805は、ΔXが45%で、X1 (%)が85%、トナーDで使用しているR-809は、ΔXが20%で、X1 (%)が65%であるから、トナーAの疎水性無機微粒子のΔX(20%)は、本件発明のΔXが25%以上、の範囲外であり、また、トナーDの疎水性無機微粒子の全疎水化度X1 (85%)は、本件発明の20〜80%、の範囲外である。
すなわち、トナーA及びトナーDに関する記載から、甲第1号証に、ΔXが25%以上であり、かつ全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲である疎水性無機微粒子が記載されているとすることはできない。
そして、甲第1号証には、他に、疎水性無機微粒子は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)とぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)との差(ΔX)が25%以上の開きを有する疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1 (%)が20〜80%の範囲とすること、及びそれによる作用、効果について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。

5.理由2.特許法第36条第4項違反について
本件明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であるとする具体的理由の要点は次のとおりである。
(イ)本件請求項1には、「無機粒子を外添してなる」としているのに、発明の詳細な説明の欄には「内添」方法が記載されている。
(ロ)本件明細書の発明の詳細な説明の欄には、疎水化度を10%間隔でぬれ特性を測定することが記載されているが、この測定法では、請求項で規定する、末尾が5%となる値は測定することができない。
(ハ)「ぬれ特性が5%以上」の規定では、ぬれ特性が5%以上であれば100%に至るまでのいかなる測定値でもよいと解釈することができる。
(ニ)本件明細書には、疎水化度の測定に200mlのビンを用いる旨記載されているが、疎水化度80%以上は、測定不可能である。
以下に検討する。
(イ)について
本件発明は、出願当初は、無機粒子を外添するもの以外に内添するもの等も含まれていた(無機粒子を外添するものに特定されてはいなかった)ものを、その後、補正によって、無機粒子を外添するものに特定されたものであるが、無機粒子を外添するもの以外に、内添するもの等の記載があるからといって、本件発明を当業者が容易に実施することができないものではなく、(イ)の点で、取り消さなければならない程の瑕疵があるとすることはできない。
(ロ)について
上記の訂正の結果、(ロ)の明細書の記載が不備である点は解消された。
(ハ)について
例えば、「5%以上のとき」あるいは「5%以上となっているとき」と規定されていると、5%以上であれば100%に至るまでのいかなる測定値でもよいと解釈されるものと考えられるが、本件の「5%以上となるとき」が、5%以上であれば100%に至るまでのいかなる測定値でもよいと解釈するのは適当ではなく、上記異議申立人の(ハ)の主張は採用することができない。
(ニ)について
200mlのビンには、当然200ml以上の液体は入らないから、200ml以上の液体を用いたい場合には、それより大きなビンを用いればよいことは明らかであり、また、200mlより大きなビンを用いると、異なる結果となるなどの、大きなビンを使用することができない格別の理由もないから、200mlのビンを用いるとの記載があることをもって、測定が不可能であるとすることはできない。

よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であるとすることはできない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
現像装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 無機微粒子を外添してなるトナーにおいて、この無機微粒子が単一の無機微粒子母材を疎水化剤で処理することにより得られた疎水性無機微粒子であり、且つこの疎水性無機微粒子は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)とぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)との差(ΔX)が25%以上の開きを有する疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電荷像を現像する静電荷像現像用トナーに関する。
従来技術
電子写真においては、トナーとキャリアとの混合系現像剤を用いたカスケード現像法(アメリカ合衆国特許(USP)第2297691号、USP第2618552号)もしくは磁気ブラシ現像法(USP第2832311号)によるか、又はトナーのみからなる現像剤を用いたタッチダウン現像法(USP第4121931号)、非磁性一成分現像法(USP第3731146号)などにより、静電荷像を可視化して又は静電荷像を反転現像により可視化して高品質な安定した画像をえる。
これらの現像法に適用するトナーとしては、バインダーとしての熱可塑性樹脂に帯電制御剤としての染料、着色剤としての顔料または離型剤としてワックス等を加えて混練、粉砕、分級を行い平均粒径が4〜25μmのトナー粒子としたものが用いられている。そして一般的にトナーに流動性を付与したりクリーニング性を向上させたりするためにシリカ、酸化チタンや酸化アルミナ等の無機微粉末が添加される。
これらの無機微粉末は親水性であり、その結果トナーの流動性や摩擦帯電性に湿度が大きく影響する。このような環境条件の影響を防ぐため、これらの無機微粉末の表面を疎水化剤を用いて表面処理したものを用いてトナーとし、複写機等の現像装置に適用するのが普通である(USP第3720617号、特公昭54-203444号公報)。
これらの疎水化剤としては、一般的シランカップリング剤が使用されている。例えば二酸化ケイ素粒子の表面の水酸基をシランカップリング剤から誘導されるシラノール基との間で反応して疎水化されている。疎水化度については特公平1-22616号公報で開示されているが十分とはいえず、帯電の立ち上がりや均一性および安定性などに問題がある。
発明が解決しようとする課題
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、疎水化剤を用いて疎水化度分布を有するように、表面処理した無機微粉末をトナーに含有させることにより、トナー流動性さらにはトナーの荷電立ち上がり性や均一性に優れ又荷電の環境安定性に優れたトナーを得るに至り本発明を完成した。
課題を解決するための手段
本発明は、無機微粒子を外添してなるトナーにおいて、この無機微粒子が単一の無機微粒子母材を疎水化剤で処理することにより得られた疎水性無機微粒子であり、且つこの疎水性無機微粒子は、ぬれ特性が100%となるときの全疎水化度X1(%)とぬれ特性が5%以上となるときの疎水化度X2(%)との差(ΔX)が25%以上の開きを有する疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する。
単一の無機微粒子としては、乾式法又は湿式法で製造した二酸化ケイ素(無水)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩、二酸化チタン、アルミナ炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛などを挙げることができる。
これらの無機微粒子の平均粒径は1mμm〜2μm、好ましくは5mμm〜1μmである。
本発明においては無機微粒子は、疎水化度分布を有するように疎水化剤で疎水化処理を施す。
疎水化剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系等の各種のカップリング剤及びシリコーンオイル等が用いられる。シラン系ではクロロシラン、アルキルシラン、アルコキシシラン、シラザン等を挙げることができる。具体的に例えば
・CH3SiCl3
・(CH3)2SiCl2
・(CH3)3SiCl
・CH3Si(OCH3)3
・CH3Si(OCH2CH3)3
・(CH3)3Si(OCH3)
・(CH3)2Si(OCH3)2
・(CH3)2Si(OCH2CH3)2
・Si(OCH2CH3)4
・Si(OCH3)4
・CH3(H)Si(OCH3)2
・CH3(H)Si(OCH2CH3)2
・(CH3)2(H)Si(OCH2CH3)

・(CH3)3SiNHSi(CH3)3
・CH3(CH2)17Si(CH3)(OCH3)2
・CH3(CH2)17Si(OCH3)3
・CH3(OH2)17Si(OC2H5)3
・CH3(CH2)3Si(CH3)2Cl
・CH3(CH2)17Si(CH3)2Cl
・CH3(CH2)17Si(CH3)Cl2
・CH3(CH2)17SiCl3等を挙げることができる。
チタネート系では例えば


等を挙げることができる。
シリコーンオイル系では、例えば
一般式[I]:

〔式中、R1は-C3H6OC2H4OH,

を表わす]
一般式[II]:

〔式中、R2は-CH3、-Hを表わす]
一般式[III]:

〔式中、R3は-CH3,-OCH3を表わす〕
一般式[IV]:

一般式[V]:

〔式中、R4はアルキル基、R5、R6は水素、アルキル基又は-R7-NH2(R7:アルキル基)、R8はメチル基又はメトキシ基を表わす〕
等を挙げることができ特に限定するものではない。
疎水化剤を用いて無機微粉末の表面を処理するには、次のような方法による。まず、疎水化剤単独か又はテトラヒドロフラン(THF)、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンあるいはアセトン等の溶剤を用いて混合希釈し、無機微粉末をブレンダー等で強制的に攪拌しつつカップリング剤の希釈液を滴下したりスプレーしたりして加え充分混合する。次に得られた混合物をバット等に移してオーブンに入れ加熱し乾燥させる。その後再びブレンダーにて攪拌し充分に解砕する。このような方法において各々の疎水化剤は同時に用いて処理してもよい。このような乾式法の他に無機微粉末を疎水化剤を有機溶剤を溶かした溶液に浸漬し、乾燥させ解砕するというような湿式による処理法もある。
また、無機微粉末は、上記疎水化処理を施す前に、100℃以上で加熱処理した方が望ましい。
無機微粒子に上記のような疎水化処理を施し、疎水化度の分布を付与するには、まず所定量の無機微粉末をブレンダー等によって撹拌しながら疎水化剤またはその希釈混合液を滴下またはスプレー等によって加え十分に混合する。そしてさらに所定量の上記と同一の無機微粉末を加え十分に撹拌する。このように疎水化剤に対して無機微粉末を段階的に加えることによって疎水化度の分布を付与することができる。
本発明において疎水化度とは、以下に記載のごとくメタノール使用量から算出される値をいう。
即ち、200mlのビーカーに純水50mlを入れ、0.2gの試料を添加する。攪拌しながら、ビュレットから無水硫酸ナトリウムで脱水したメタノールを加え、液面上に試料がほぼ認められなくなった点を終点として要したメタノール量から下記式により疎水化度を算出する。

(式中Cはメタノール使用量(cc)を表す)
上記式より、疎水化度とメタノール使用量の関係を表わすと下記のごとくになる。

疎水化度分布は以下のごとく求められる。
0.2gの試料を200mlのビンに純水50mlと無水硫酸ナトリウムで脱水したメタノールを疎水化度5に対応する量加え、強く1分間振り混ぜた後、1時間静置し、沈んだ試料を分離する。それを蒸発皿に移し、溶液を蒸発乾固し、デシケータ中で放冷する。蒸発乾固後の試料(g)を測定し、下記式より“ぬれ特性(%)”測定する。

次に、疎水化度5、10、15・・・・90に対応するメタノール量を順次使用し、上記と同様にしてぬれ特性を測定する。疎水化度とぬれ特性の関係をグラフに表わすことによって、疎水化度分布が明瞭に表わされる。例えば、後述する疎水性微粒子(a)の分布が第二図に示されている。
本発明においては、ぬれ特性が100%となる疎水化度(全疎水化度という)X1(%)が、20≦X1≦80の範囲にあり、ぬれ特性が5%以上を示すときの疎水化度X2と全疎水化度X1との差(ΔX)が25%以上となる分布を有するように流動化剤を疎水化する。無機微粉末に、疎水化度として、このような分布を付与することにより、環境安定性、トナー飛散防止、カブリの発生防止、荷電の安定性を達成することができる。全疎水化度が20%より小さいときは高湿時の荷電性が低下し、トナー飛散、カブリ等が問題となる。全疎水化度が80%より大きいものは製造的に難しい。また、ΔXの大きさが25%より小さいと、荷電の安定性が得られない。
本発明の表面処理された無機微粉末をトナーに含有させるには、トナー混練時に該無機微粉末を同時に練り込んでトナー内部に均一に分散させる方法(内添)がある。また重合法によりトナーを作製する場合は、重合時に無機微粉末を加えてトナーの形成と同時に無機微粉末を取り込ませる方法等も利用できる。さらにトナー表面に無機微粉末をハイブリダイゼーションシステム、メカノフュージョンシステム等で機械的剪断力で固着させる方法も利用できる。
トナーは一般に少なくともバインダー樹脂、着色剤からなる微小粒子で、磁性キャリア粒子とともに二成分で使用するもの、トナーを非磁性一成分で使用するもの、トナー内部に磁性剤を含有させたトナー(磁性トナー)として一成分で使用するもの等存在するが、本発明に従い疎水化処理された無機微粒子はいずれのトナーにも適用できる。
係るトナーに添加する無機微粒子の量は一成分で使用するか、二成分で使用するか等にあわせて通常使用される量で適用すればよく、例えば二成分現像剤に内添加あるいは外添加する場合、トナーに対して0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の量で使用する。又一種以上のブレンド系でも使用できる。
トナーに用いるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、エポキシ樹脂等各種の樹脂が使用される。
ヒートロール定着用トナーの場合は、ワックス等の離型剤がトナーに添加されるのが普通である。定着時にローラー表面へトナーがオフセットするのを防止するのがその目的である。一般的には低分子量ポリプロピレンや低分子量ポリエチレン等の低い分子量ポリオレフィンが挙げられる。
以下に、本発明を実施例を用いてさらに詳しく説明する。
疎水化処理製造例(a)
疎水化剤として、ヘキサメチルジシラザン2gをテトラヒドロフラン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルシリカ;アエロジル#200(日本アエロジル杜製)を乾燥器で120℃、2時間処理した。その内、20gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら、上記混合液を5分間かけて徐々に添加した。
さらに、アエロジル#200を5g加えて、3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、150℃の恒温槽で2時間加熱処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が50%〜70%でΔXが20%の疎水性シリカ(a)を得た。
第1図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(b)
疎水化剤としてジメチルシリコーンオイル3gをトルエン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてアエロジルP-25(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃2時間処理した。その内35gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間かけて徐々に添加した。さらにアエロジルP-25を15g加えて、3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、200℃の恒温槽で5時間処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が30%〜55%でΔXが25%の疎水性酸化チタン(b)を得た。
第2図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(c)
疎水化剤としてハイドロジエンポリシロキサン2gをトルエン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルアルミナRX(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃、2時間処理した、その内、20gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら、上記混合液を徐々に添加した。さらにコロイダルアルミナRXを20g加えて、3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し170℃の恒温槽で5時間加熱処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が25%〜60%でΔXが35%の疎水性アルミナ(c)を得た。
第3図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(d)
疎水化剤としてジメチルジメトキシシラン1.5gをテトラヒドロフラン15gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルシリカ;アエロジル#130(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃2時間処理した。その内、10gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間かけて徐々に添加した。添加後、コロイダルシリカ#130を5g加え、3000rpm5分間攪拌し、さらにコロイダルシリカ#130を5g加え3000rpm5分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、120℃の恒温槽で2時間加熱処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が15%〜55%でΔXが40%の疎水性シリカ(d)を得た。
第4図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(e)
疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン2.5gをテトラヒドロフラン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルシリカ;アエロジル#200(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃2時間処理した。その内25gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間かけて徐々に加え、3000rpmで10分間攪拌後120℃の恒温槽で2時間処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が75%〜80%でΔXが5%の疎水性シリカ(e)を得た。
第5図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(f)
疎水化剤としてジメチルシリコーンオイル2.5gをトルエン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子として酸化チタン微粒子MT-150A(テイカ社製)を乾燥器で120℃2時間処理した。その内、35gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間で徐々に加えた。さらに3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、200℃の恒温槽で5時間処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が50%〜55%でΔXが5%の疎水性酸化チタン(f)を得た。
第6図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(g)
疎水化剤としてジメチルジクロルシラン1gをテトラヒドロフラン10gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルシリカ;アエロジル#130(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃2時間処理した。その内、25gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間かけて徐々に加え、さらに3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、120℃の恒温槽で2時間処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が35%〜40%でΔXが5%の疎水性シリカ(g)を得た。
第7図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
疎水化処理製造例(h)
疎水化剤としてオクチルトリメトキシシラン1.2gをテトラヒドロフラン7gに溶解した混合液を準備した。
無機微粒子としてコロイダルシリカ#200(日本アエロジル社製)を乾燥器で120℃、2時間処理した。その内8gを高速ミキサーに入れ、2500rpmで攪拌しながら上記混合液を5分間かけて徐々に加えた。さらにアエロジル#200を17g加えて、3000rpm10分間攪拌した。ミキサーから内容物を取り出し、120℃の恒温槽で5時間処理した後、解砕し、疎水化度分布(X2〜X1)が0%〜70%でΔXが70の疎水性シリカ(h)を得た。
第8図に疎水化度とぬれ特性の関係を示し、疎水化度分布を示した。
参考例1
(トナーAの調製)
・スチレン/n-ブチルメタクリレート共重合樹脂(数平均分子量Mn:6300、Mw/Mn:42、軟化点:132℃、ガラス転移点:60℃) 100重量部
・カーボンブラック MA#8(三菱化成社製) 8重量部
・オフセット防止剤 ビスコール550P(三洋化成工業社製) 5重量部
・荷電制御剤 ボントロン E-81(オリエント化学社製) 3重量部
上記の原料をヘンシェルミキサーで混合した。混合物を2軸混練押出機で混練後冷却した。
混練物の粗粉砕し、ジェット粉砕機で粉砕し、風力分級機により分級し、4〜20μm(平均粒径9.5μm)のトナーを得た。上記のトナー100重量部に疎水性微粒子(a)0.2重量部を加え、ヘンシェル混合機中1200rpmで1分間混合処理した(得られたトナーをトナーAとする)
(キャリアの製造)
成分
・ポリエステル樹脂(AV23、OHV40、軟化点123℃、ガラス移転点67℃)
100重量部
・Fe-Zn系フェライト微粒子MFP-2(TDK社製) 500重量部
・カーボンブラック MA#8(三菱化成社製) 2重量部
上記材料をヘンシェルミキサーにより十分混合した。次いで、混合物をシリンダ部180℃、シリンダヘッド部170℃に設定した押し出し混練機を用いて、溶融、混練した。混練物を冷却後、粗粉砕し、さらにジェットミルで微粉砕した。粉砕物を分級機を用いて分級し、平均粒径60μmのバインダー型キャリア[I]を得た。
(現像剤評価)
トナーA36gをキャリア564gと混合し、二成分現像剤を調製し、帯電性、環境性テスト、耐刷実写テストに供した。
実施例1
(トナーBの調製)
・ポリエステル樹脂(数平均分子量Mn:4800、Mw/Mn:2、8、軟化点101℃、ガラス転移点63℃) 100重量部
・銅フタロシアニン顔料 Lionol Blue FG-7350(東洋インキ製造社製)
3重量部
・荷電制御剤 ボントロン E-84(オリエント化学社製) 2重量部
上記の原料を参考例1のトナーAと同様な方法で処理し、5〜25μm(平均粒径10.3μm)のトナーを得た。上記トナー100重量部に疎水性微粒子(b)1重量部と疎水性シリカR-974(日本アエロジル社製)0.2重量部を加えヘンシェル混合機中1200rpmで1分間混合処理した(得られたトナーをトナーBとする)
(キャリアの製造)
スチレン/メチルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルアクリレート/メタクリル酸から成るスチレン-アクリル系共重合体(1.5:7:1.0:0.5)80重量部とブチル化メラミン樹脂20重量部をトルエンで希釈し、固形比2%のスチレン-アクリル樹脂溶液を調合した。芯材として焼結フェライト粉(F-300;パウダーテック社製平均粒径50μm)を用いてスピラコータ(岡田精工社製)により、芯材に対して該溶液を3.0重量%の被覆ができるようにスプレーでコート乾燥した。その後140℃で3時間硬化させ、さらに170℃で4時間で熱処理させ、電気抵抗値が4.3×1010Ωcmの熱硬化性アクリルコートキャリア[II]を得た。
(現像剤評価)
トナーB48gをキャリア552gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
実施例2
(トナーCの調製)
・スチレン/n-ブチルメタクリレート共重合樹脂(数平均分子量Mn:4500、Mw/Mn:60、軟化点121℃、ガラス転移点60℃) 100重量部
・カーボンブラック MA#8(三菱化成社製) 8重量部
・オフセット防止剤 ビスコール 550P(三洋化成工業社製) 5重量部
・荷電制御剤 ボントロン N-01(オリエント化学社製) 3重量部
上記の原料を参考例1と同様な方法で処理し、5〜25μm(平均粒径11.3μm)のトナーを得た。
上記のトナー100重量部に疎水性粒子(d)0.1重量部を加え、ヘンシェル混合機中1200rpmで1分間混合処理した(得られたトナーをトナーCとする)
(現像剤評価)
トナーC36gを参考例1において調製したキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
実施例3
実施例2のトナー100重量部に疎水性微粒子(c)0.5重量部を加え参考例1と同様な方法で混合処理した。得られたトナーをトナーDとする。
(現像剤評価)
トナーD36gを参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
実施例4
参考例1のトナー100重量部に疎水性微粒子(d)0.15重量部を加え、参考例1と同様な方法で混合処理した。得られたトナーをトナーEとする。
(現像剤評価)
トナーC36gと参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
参考例2
参考例1のトナー100重量部に疎水性微粒子(h)0.2重量部を加え、参考例1と同様な方法でトナーを調製した。得られたトナーをトナー1とする。
(現像剤評価)
トナーI36gを参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
比較例1
実施例2のトナー100重量部に疎水性微粒子(e)0.1重量部を加え、参考例1と同様な方法でトナーを調製した。得られたトナーをトナーFとする。
(現像剤評価)
トナーF36gを参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
比較例2
参考例1のトナー100重量部に疎水性微粒子(f)1重量部を加え、参考例1と同様な方法でトナーを調製した。得られたトナーをトナーGとする。
(現像剤評価)
トナーG36gを参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
比較例3
参考例1のトナー100重量部に疎水性微粒子(g)0.2重量部を加え、参考例1と同様な方法でトナーを調製した。得られたトナーをトナーHとする。
(現像剤評価)
トナーH36gを参考例1のキャリア[I]564gと混合し、二成分現像剤を調製し、参考例1と同様な評価に供した。
帯電立ち上がり性の評価
キャリア[I]とトナー(A)〜(H)とから、トナー混合比2重量%に調製した現像剤を用い、電子写真学会誌、第27巻、第3号(1988)、「現像剤帯電速度の決定」に記載されている方法により、現像剤混合時間における帯電量(q)を測定した。
その測定データをもとに、log(qm-q)とtとの関係を第9図に示した。ここでqmは飽和(あるいは極大)帯電量を示す。
図中、○は、トナー(A)〜(E)、(I)とから得られた平均値を、□はトナー(F)〜(H)とから得られた平均値を示してある。
log(qm-q)は時間tに対して、直線性を示し、その傾きで帯電立ち上がり速度の大小を表すことができる。直線の傾きが急な程帯電の立ち上がりが速いことを示す。
環境安定性測定
温度25℃で湿度50%、温度10℃で湿度30%、温度35℃で湿度85%の帯電量変化を調べた。結果を第10図に示した。
実施例では帯電量の変化幅が少ないのに対して、比較例は変化幅が大きかった。
耐刷テスト
実施例4及び比較例2〜3をEP-870Z(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例2、3及び比較例1をEP-4300(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例1については、EP-5502(ミノルタカメラ社製)の定着器をオイル塗布タイプに改造し、それぞれ40万枚の耐刷テストを行なった。このときの帯電量と画質(トナー飛散)について評価した。トナー飛散は目視で観察し、以下のごとくランク付を行なった。
○:ほとんどトナー飛散が認められない。
△:若干トナー飛散が認められる。(実用上使用可)
×:トナー飛散が多く、複写機内の汚れがひどい(実用上使用不可)
以上の評価結果を表1に示した。

発明の効果
本発明により、疎水化度分布を有する無機微粒子をトナーに添加することにより、トナー流動性、帯電立ち上がり、帯電均一性、環境安定性に優れたトナーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第8図は疎水化度分布を示す図である。第9図は帯電の立ち上がり性を示す図である。第10図は、環境安定性を示す図である。
【図面】










 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3123076号の明細書を、以下のとおり訂正する。
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1中の、「疎水化度分布を有する」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「疎水化度分布を有し、前記全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にある」と訂正する。
訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項1中の、「差(ΔX)が15%以上」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「差(ΔX)が25%以上」と訂正する。
訂正事項c.
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2を削除する。
訂正事項d.
明細書第4頁第2〜4行(特許公報第3欄第30〜31行)の、
「差(ΔX)が15%以上の開きを有する疎水化度分布を有することを特徴とする」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「差(ΔX)が25%以上の開きを有し、前記全疎水化度X1(%)が20〜80%の範囲にあることを特徴とする」と訂正する。
訂正事項e.
明細書第13頁第14〜15行(特許公報第11欄第5行)の、
「疎水化度10」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「疎水化度5」と訂正する。
訂正事項f.
明細書第14頁第3行(特許公報第11欄第10行)の、
「疎水化度20、30・・・・90」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「疎水化度5、10、15・・・・90」と訂正する。
訂正事項g.
明細書第14頁第11〜12行(特許公報第11欄第19行)の、
「差ΔX)が15%以上」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「差(ΔX)が25%以上」と訂正する。
訂正事項h.
明細書第15頁第1行(特許公報第11欄第26行)の、
「ΔX大きさが15%より小さい」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「ΔXの大きさが25%より小さい」と訂正する。
訂正事項i.
明細書第22頁第19行、第25頁第11行、第26頁第15行、第27頁第10行、第18行、第20行、第28頁第3行、第7行、第10行、第11行、第15行、第16行、第19行、第20行、第29頁第4行、第5行、第9行、第13行、第14行、第17行、第18行、第30頁第2行、第3行、第6行、第7行、第11行、第12行(特許公報第14欄第28行、第15欄第21行、第42行、第16欄第3行、第9行、第10行、第14行、第17行、第18行、第21行、第22行、第25行、第26行、第29行、第30行、第33行、第34行、第38行、第41行、第42行、第45行、第46行、第49行、第50行、第17欄第3行、第4行、第7行、第8行)の、「実施例1」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「参考例1」と訂正する。
訂正事項j.
明細書第24頁第20行(特許公報第15欄第13行)の、「実施例2」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「実施例1」と訂正する。
訂正事項k.
明細書第26頁第17行、第28頁第2行、第29頁第8行(特許公報第15欄第43行、第16欄第13行、第37行)の、「実施例3」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「実施例2」と訂正する。
訂正事項l
明細書第28頁第1行(特許公報第16欄第12行)の、「実施例4」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「実施例3」と訂正する。
訂正事項m.
明細書第28頁第2行、第29頁第8行(特許公報第16欄第13行、第37行)の、「トナーC」との記載を、誤記の訂正を目的として、「トナー」と訂正する。
訂正事項n.
明細書第28頁第9行(特許公報第16欄第20行)の、「実施例5」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「実施例4」と訂正する。
訂正事項o.
明細書第28頁第10行、第19行、第29頁第17行、第30頁第6行(特許公報第16欄第21行、第29行、第45行、第17欄第3行)の、
「トナーA」との記載を、誤記の訂正を目的として、「トナー」と訂正する。
訂正事項p.
明細書第28頁第18行(特許公報第16欄第28行)の、「実施例6」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「参考例2」と訂正する。
訂正事項q.
明細書第30頁第14行(特許公報第17欄第11行)の、
「トナー(a)〜(h)」との記載を、誤記の訂正を目的として、
「トナー(A)〜(H)」と訂正する。
訂正事項r.
明細書第31頁第4〜6行(特許公報第17欄第19〜21行)の、
「図中、・は、トナー(A)〜(E)、(I)とから得られた平均値を、・は、トナー(F)〜(H)とから得られた平均値を示してある。」との記載を、誤記の訂正を目的として、
「図中、○は、トナー(A)〜(E)、(I)とから得られた平均値を、□は、トナー(F)〜(H)とから得られた平均値を示してある。」と訂正する。
訂正事項s.
明細書第31頁第15行〜32頁第6行(特許公報第18欄第6〜15行)の、
「実施例では帯電量の変化幅が少ないのに対して、比較例は変化幅が大きく、特に比較例4は、温度35℃、湿度85%の環境で帯電量が低下し、トナー飛散が発生した。
耐刷テスト
実施例1、5及び比較例2〜4をEP-870Z(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例3、4及び比較例1をEP-4300(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例2については、EP-5502(ミノルタカメラ社製)の定着器をオイル塗布タイプに改造し、それぞれ40万枚の耐刷テストを行った。」との記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「実施例では帯電量の変化幅が少ないのに対して、比較例は変化幅が大きかった。
耐刷テスト
実施例4及び比較例2〜3をEP-870Z(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例2、3及び比較例1をEP-4300(ミノルタカメラ社製)を用い、実施例1については、EP-5502(ミノルタカメラ社製)の定着器をオイル塗布タイプに改造し、それぞれ40万枚の耐刷テストを行った。」と訂正する。
訂正事項t.
明細書第33頁(特許公報第10頁)の表1中の、実施例1及び実施例6の記載内容を削除すると共に、「実施例2」ないし「実施例5」との記載を、「実施例1」ないし「実施例4」と訂正する。
訂正事項u.
第10図中の実施例1及び比較例4の記載内容を削除すると共に、「実施例2」ないし「実施例5」との記載を、「実施例1」ないし「実施例4」と訂正する。
異議決定日 2001-12-28 
出願番号 特願平2-337541
審決分類 P 1 651・ 113- YA (G03G)
P 1 651・ 531- YA (G03G)
最終処分 維持  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 植野 浩志
六車 江一
登録日 2000-10-27 
登録番号 特許第3123076号(P3123076)
権利者 ミノルタ株式会社
発明の名称 静電荷像現像用トナー  
代理人 西川 繁明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ