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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61L
管理番号 1058027
異議申立番号 異議2001-71789  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-18 
確定日 2002-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3121302号「照射型殺菌装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3121302号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由
1. 本件は、特許第3121302号(特願平9-316653号出願)に係り、その特許を受けた特許請求の範囲の【請求項1〜8】に係る発明のうち【請求項1〜4】に係る発明の特許につき、取消を請求して提起された特許異議申立事件に存する。

2. 本件の手続きの経緯の概要は、以下のとおりである。
1)出願日:平成9年11月4日
2)特許権設定登録日:平成12年10月20日
3)特許公報:平成12年12月25日発行
4)異議:平成13年6月18日 株式会社豊振科学産業所より、異議申立
5)取消理由通知:平成13年11月22日付けで、当審より取消理由の通 知
6)訂正請求等:平成13年12月21日付けで、特許権者より訂正請求と 意見書の提出

3. そこで、上記平成13年12月21日付けでした訂正請求が、特許法の趣旨に照らし適法であるかどうかにつき審案する。
i) 上記訂正請求において、特許権者は、請求の趣旨として、
“特許第3121302号の明細書を、請求書に添付した訂正明細書の通りに訂正することを求める。”
とあり、その内訳をなす訂正事項は、以下のとおりである。
(1).訂正事項a)
特許請求の範囲の【請求項1】の記載である、
「 殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備えたことを特徴とする照射型殺菌装置。」を、

『殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、
ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備え、
前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴とする照射型殺菌装置。』と、
訂正する。

(2).訂正事項b)
明細書の段落番号【006】の記載である、
「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による照射型殺菌装置は、前記タンクに形成された窓孔を覆う照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記照射線透過部材側から見て前記発光管部分の後方に設けられ、発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へと反射させる反射板とを備えたことを特徴としている。」を、

『【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による照射型殺菌装置は、前記タンクに形成された窓孔を覆う照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、
ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記照射線透過部材側から見て前記発光管部分の後方に設けられ、発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へと反射させる反射板とを備え、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴としている。』
に訂正する。

ii) 上記訂正事項の適法性を、個別に審案する。
(1)訂正事項a)について
訂正事項a)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された照射型殺菌装置の構成要素の一つである「ランプ」についての構成要件を限定し、
更に、この「ランプ」と「反射板」との関係についての構成要件を追加しようとするものである。
したがって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この事項中における「ストレート状に延びる発光管部分」は、出願当初の明細書の段落番号【0021】(第6頁第6〜7行)における「発光管部分21は、これらの図3、4に示すようにフィラメント20からストレート状に延びる部分と、その先で蛇行する部分とからなっており、」との記載から明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、「前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したこと」という、「ランプ」と「反射板」との関係についての構成要件を追加する部分については、
出願当初の明細書の段落番号【0021】(第6頁第8〜12行)における「また、このような発光管部分21を有するランプ17は、図2にも示されているように、ソケット19より反射板18を貫通した後、屈曲して照射線透過部材4近傍まで延び、照射線透過部材4とほぼ平行な面において蛇行した後、反射板18に向かって上昇し、再びこれを貫通してソケット19に戻るように、ケーシング6内に設置される。」との記載、及び、
段落番号【0022】(第6頁第18〜20行)における「また、このランプ17は、その特異形状に起因して従来のスパイラルランプよりも反射板18を照射線透過部材4に近接して配置することができ、」との記載からも明らかなように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるというべきである。
勿論、この訂正事項によって、本件に係る発明の解決すべき課題に相違をもたらすものではないから、実質的に特許請求の範囲を変更若しくは拡大するものではない。

(2)上記訂正事項b)について
この訂正事項は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の項における記載との整合性をとるためのものであり、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
むろん、この訂正事項によって、本件に係る発明の解決すべき課題に異変をもたらすものではないから、実質的に特許請求の範囲を変更若しくは拡大するものではない。

以上のとおりであるから、本件の上記訂正請求の内容は、特許法第120条の4第2項ただし書第1号、第3号に規定する目的に符合し、且つ同法同条第3項の規定において準用する同法第126条第2項、第3項の規定にも適合するものであるところ、この訂正請求は、法的に認容してしかるべきものである。

4. 本件特許異議の申立についての判断
(一). 本件の上記訂正請求は、既述のとおり法的に容認されるべきものであるところ、本件出願の【請求項1〜4】に係る発明は、訂正請求後の特許請求の範囲の【請求項1〜4】の記載に徴し、以下のとおりのものである。

『【請求項1】
殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、
ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備え、
前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴とする照射型殺菌装置。
【請求項2】
ケーシング外部よりその内部へと外気を導入して前記ランプを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の照射型殺菌装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記ケーシングの開口端と反対側の端部に設けられたファンであり、前記反射板とケーシング内壁との間には間隙が形成されるとともに、反射板より照射線透過部材側のケーシング壁面部分には、空気孔が形成されることを特徴とする請求項2に記載の照射型殺菌装置。
【請求項4】
前記空気孔を介したケーシング内部への異物混入を防止する異物混入防止手段を有することを特徴とする請求項3に記載の照射型殺菌装置。』

(二). 特許異議申立の理由の概要
これに対して、特許異議申立人は、
1) 「特開平1-195859号公報」(甲第1号証刊行物:以下、「第1引用例」という。)、
2) 「1996年12月1日ニッポ電機株式会社発行『紫外線ランプ総合カタログ』」(甲第2号証刊行物:以下、「第2引用例」という。)(「このカタログは、その態様と裏表紙の左下欄に記載された事項に徴し、1996年12月1日に、頒布された刊行物であると推認されるところ、これに記載された紫外線ランプは、本件特許発明の特許出願日1997年11月4日以前に公然知られたものというべきである。」)、

3) 「特開昭52-38063号公報」(甲第3号証刊行物:以下、「第3引用例」という。)、
を、それぞれ提出して、
本件請求項1、2、3及び4に係る各特許発明は、第1引用例、第2引用例及び第3引用例に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これ等につき受けた特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨、主張している。

(三). [引用例の記載事項]
1). 第1引用例には、以下の事項が、図面とともに記載がされている。
イ) 「この発明は、タンク内に貯蔵された流体例えば水等の液体又は空気等の気体を殺菌する場合等に用いて好適な貯蔵タンク内の殺菌装置に関する。」 (第1頁右欄第3行〜5行目)
ロ) 「この窓孔2を覆うように閉塞板3が設けられており、この閉塞板3は石英等の殺菌可能な照射線例えば紫外線、赤外線、電子線等の透過する透過材により構成される。4はこの閉塞板3を位置決めし、かつ後述する筺体としてのランプハウジング5を取付ける為の取付部であり、タンク1より肉厚に形成されている。
ランプハウジング5は上述した窓孔2と対応して筒状に形成され、その一端緑には肉厚に形成された鍔部6が形成されており、かかるランプハウジング5の鍔部6が上述したタンク1の取付部4上にあてがわれた状態で、締付ネジ7が取付部4に形成されたネジ孔内にねじ込まれることにより、閉塞板3がこの取付部4と鍔部6との間で、パツキン8を介して挟着され、この窓孔2が、液密又は気密に閉塞される。尚、取付部4と鍔部6との間にもテフロン等よりなるパツキン9が介在される。
ランプハウジング5の他端即ち図において上端縁10が内方に折り曲げられており、これにほぼ等角間隔をもって複数個のL字状をなした取付金具11が熔接等により取付けられており、これら取付金具11の下端には係止片12を有する。
上述した上端縁10に対して更に反射板13が取付ネジ14により付けられる。この反射板13には紫外線、赤外線、電子線等の殺菌能力を有する照射線を発生するランプ15が予め固定されており、反射板13をランプハウジング5の上端縁10に取付けることによって、ランプ15がランプハウジング5の中ほどに位置される。又、この反射板13には、複数の空気孔16が形成されている。」(第2頁下段右欄第1行目〜第3頁上段左欄12行)
ハ) 「また、本実施例ではランプハウジング5の側壁にこれを貫通してしかもランプ15の発熱部(フィラメント)(第1図では図示せずもランプ15の略付け根部分にあり)より下側の位置に冷却手段としてのノズル25を設ける。そしてこのノズル25を介して外部より空気又は冷却ガス等の気体を送り込むようにする。
このような構成によれば、タンク1の窓孔2は閉塞板3によって完全に密封され、よってタンク1内の流体がこの窓孔2を通じて外部に漏れ出すことがない。しかも閉塞板3が照射線透過材により形成されているので、ランプ15の点灯により、これよりの紫外線等がタンク1内に照射し、流体を殺菌し、かつタンク1の内面をも殺菌することは勿論である。」(第3頁上段右欄第18行〜同頁下段左欄第12行目)

2). 第2引用例には、以下の事項が、開示されていると捉えられる。
イ) 「略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに照射線を発光するランプに相当する構成を有する紫外線ランプ」
(第2引用例第7頁「紫外線ランプ一覧」の項下段の写真中上部左側の写真において、蛇行する発光管の技術的構成部分が、開示されている。)

3).第3引用例には、以下の事項が、図面とともに記載されている。
イ) 「一方、この露出した殺菌光源の一部7aをおおうようにし、通風孔8a、8bを有するキャップ8を前記蓋1にかぶせて、冷却室Bを形成する。そして通風孔の一方8aの方には冷却用ファン9を取り付け、冷却室Bの空冷を行なう。図中矢印Xは冷却風の流れを示す。このようにして、殺菌光源7の一部7aを冷却し、その封体温度をファン9による送風量を適正に設定することにより、第1図のグラフに示すt℃付近にする。尚、10は外気に塵が含まれている場合、キャップ8内に塵が吸入されるのを防止するフイルターである。」(第2頁左欄第10行〜20行目)

(四). 対比・判断
(イ) 本件の特許請求の範囲の【請求項1】に係る発明(以下、「本件第1発明」という。)と上記第1引用例に記載された発明との対比判断は、以下のとおりである。
(i) 第1引用例に記載された「貯蔵された流体例えば水等の液体又は空気等の気体を殺菌する場合等に用いて好適な貯蔵タンク1」、「ランプ15の点灯により、これよりの紫外線等がタンク1内に照射し、流体を殺菌する殺菌装置」及び「石英等の殺菌可能な照射線例えば紫外線、赤外線、電子線等の透過する透過材により構成される閉塞板3」は、
それぞれの部材の構成と機能に徴し、本件第1発明の「殺菌すべき流体を貯蔵するタンク」、「殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置」及び「窓孔を覆う平板状の照射線透過部材」に相当していることは、明らかである。
さらに、第1引用例に記載の「ランプハウジング5」、「反射板13」および、「紫外線、赤外線、電子線等の殺菌能力を有する照射線を発生するランプ15」は、それらの技術概念と機能に鑑み、
本件第1発明の「窓孔の周囲に固定するケーシング」、「照射線を発生するランプ」及び「発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板」に相当していることも亦、明白といって妨げない。
そこで、第1引用例に記載の発明を、本件第1発明の構成との牽連性において抽出してみると、
「殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、
前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備えた照射型殺菌装置。」のとおりであり、
これが、本件第1発明と、第1引用例に記載された発明との一致するところであるというべきである。

(ii) そこで、本件第1発明と第1引用例に記載の発明とを比較すると、
1).本件第1発明は、照射線を発生するランプにつき、
ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するものあるのに対して、
第1引用例に記載の発明においては、
第1図図示の態様からみるに、所謂スパイラルランプの形状を呈しており、本件第1発明の如き平行面蛇行形式は、採用しておらず、
且つストレート状発光管部分も具備しないものである点、

2).本件第1発明は、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したものであるのに対して、
第1引用例に記載の発明の発光管においては、抑も、ストレート状に延びる発光管部分を欠如しているところ、斯かる発光管部分で反射板を貫通するように構成することも、反射板を前記照射線透過部材に近接して配置することも包括しないものである点、
において、それぞれ相違している。
(iii) [相違点の判断]
i) 相違点1).について
ところで、第2引用例に開示された「略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに照射線を発光するランプに相当する構成を有する紫外線ランプ」は、現実的使用態様を想定すると、
本件第1発明の「照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプ」を、包括していると捉えることができる。
したがって、第1引用例に記載の発明の照射線発生ランプに代えて第2引用例に開示された「照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有す照射線を発生するランプ」を、採択して、本件第1発明のこの点における構成を容易に想到することを得たかが問題となる。
しかしながら、第2引用例に開示の発明においては、ストレート状発光管部分は定かではなく、斯かる構成部分の存在を認定することはでき難いところであり、その為、ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を兼備するものではないという外はない。
それ故、第1引用例に記載の発明のランプに代えて、第2引用例に記載の
ランプを採択しても第1).の相違点の間隙は補充することはできず、此等両引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到することを得たものとすることはできないというべきである。
ii) 相違点2).について
上記において検討したとおり、第1引用例に記載の発明は勿論のこと、第2引用例に開示の発明においても、ストレート状に延びる発光管部分は、具備しないものである。
したがって、斯かるストレート状に延びる発光管部分の存在を前提とするこの点における構成即ち、ストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置することは、此等両発明を如何様に組合せ勘案しようとも当業者において予測する限りでないといってしかるべきである。
以上のとおりであるから、本件第1発明につき、前掲第1、第2引用例に記載された発明に基づいて、当業者が、容易に発明をすることができたものとすることはできない。
なお、第3引用例に記載の発明は、専ら冷却手段を具体的に実現する冷却ファンに関する技術思想の公知性のために援用に供したものであるから、本件第1発明の特徴的構成部分は具有していず、上記二つの相違点の間隙を補充する要因とはなりえない。

(ロ) 本件特許請求の範囲の【請求項2】に係る発明(以下、「本件第2発明」という。)について
本件第2発明は、前記第1発明を引用して、この発明を特定すべく冷却手段を備えるという付加的限定を施したものである。
上記のとおり、本件第1発明につき、前掲第1、第2、第3引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することを得たものとすることができないと審示したとおりであるところ、第1発明よりも構成要件をより特定した第2発明については、まして、上掲第1〜第3引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することを得た限りではないというべきである。
(ハ) 本件特許請求の範囲の【請求項3】に係る発明(以下、「本件第3発明」という。)について
本件第3発明は、上記本件第2発明の構成要件である冷却手段をファンとする更なる特定を付し、且つ空気孔なる付加的限定を施したものである。
それ故、本件第2発明について審案したとおり、本件第1発明を限定した本件第2発明を更にその構成要件を特定し、且つ付加的限定をする本件第3発明は、なおさら、前掲第1、第2、第3引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものとすることはできない。
(ニ) 最後に、本件特許請求の範囲の【請求項4】に係る発明(以下、「本件第4発明」という。)につき、審案する。
本件第4発明は、上記本件第3発明に、さらに異物混入防止手段という付加的限定を施してなるものである。
上記のとおり、本件第3発明につき、前掲第1、第2、第3引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することを得たものとすることができないところ、これを構成要件的により特定して限定を付した本件第4発明については、まして、これ等の各引用例それぞれに記載された発明に基づいて当業者が、容易に想到することができたものとする限りではないというべきである。

5. 結語
上記のとおりであるから、特許異議申立人の主張した理由及び提出した証拠をもっては、本件第1発明〜第4発明につき受けた特許を取り消すことはできない。
それ故、本件第1、第2、第3、第4発明につき受けた特許を、取り消すべきであるという特許異議申立人の主張は採用することができない。
なお、外に、本件第1、第2、第3、第4発明につき、受けた特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照射型殺菌装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備え、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴とする照射型殺菌装置。
【請求項2】
ケーシング外部よりその内部へと外気を導入して前記ランプを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の照射型殺菌装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記ケーシングの開口端と反対側の端部に設けられたファンであり、前記反射板とケーシング内壁との間には間隙が形成されるとともに、反射板より照射線透過部材側のケーシング壁面部分には、空気孔が形成されることを特徴とする請求項2に記載の照射型殺菌装置。
【請求項4】
前記空気孔を介したケーシング内部への異物混入を防止する異物混入防止手段を有することを特徴とする請求項3に記載の照射型殺菌装置。
【請求項5】
前記異物混入防止手段は、前記空気孔を外部より多重に覆うように前記ケーシング外壁に装着され、その一端が開放された複数の筒状スカート部材からなることを特徴とする請求項4に記載の照射型殺菌装置。
【請求項6】
前記複数の筒状スカート部材は、径方向に隣接するスカート部材の各開放端が互いに逆向きになるようにケーシング外壁に固定されることを特徴とする請求項5に記載の照射型殺菌装置。
【請求項7】
前記異物混入防止手段は、前記空気孔周囲のケーシング壁面部分に装着され、空気孔を塞ぐネットであることを特徴とする請求項4または5に記載の照射型殺菌装置。
【請求項8】
さらに、前記照射線透過部材と前記ケーシング開口端との間には、フッ素ゴムよりなるパッキンリングが装着されることを特徴とする請求項7に記載の照射型殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンク内に貯蔵された流体(例えば、水、空気等)を殺菌する装置に関し、特に紫外線などの殺菌能力の有る照射線を流体に対して照射できるようにした照射型殺菌装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、流体を貯蔵するタンクの一部(通常、タンク上部)に窓孔を形成し、この窓孔を、石英ガラスなどの透過部材で覆うと共に、筒状のランプケーシングの開放端を貯蔵タンクの窓孔周りに固定し、このランプケーシングの内部に紫外線ランプを設置して、ランプからの紫外線を透過部材を介して貯蔵タンク内に照射することにより、流体を殺菌するようにした照射型殺菌装置が提案されている(特公昭62-52580号、特公平4-66589号公報など)。
【0003】
上記のような従来の照射型殺菌装置においては、制限されたケーシング内で少しでも多くの紫外線を照射できるように、筒状のケーシングと同軸状に旋回する螺旋状の発光管部分を備えた紫外線ランプが用いられることが多い。また、タンク側(又は透過部材側)から見て、ランプの後方に反射板を設けることによって、タンク側に照射される紫外線量を増加し、装置としての殺菌力を高めるような配慮がなされているほか、ランプ周囲の熱気を外部に排出させるべく、反射板に空気孔を多数形成するなどの工夫がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように発光管部分を螺旋化した、所謂スパイラルランプは、タンク側(又は透過部材側)から見て、その発光管同士が互いに重なり合う形となるために、ランプよりタンク側へと向かう光量がそれ程多くなく、発光部分が長い割には、タンクヘの紫外線照射率が低いという問題がある。
【0005】
また、反射板に空気孔が形成されている場合には、その空気孔の分だけ面積が減少してしまい、反射板自体の反射効率も低下させることになり、ランプからタンク内への紫外線照射率の低下を招いてしまうという問題がある。本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであって、上述した従来装置よりもタンク内への照射効率が高く、以って高い殺菌能力を有する照射型殺菌装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による照射型殺菌装置は、前記タンクに形成された窓孔を覆う照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記照射線透過部材側から見て前記発光管部分の後方に設けられ、発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へと反射させる反射板とを備え、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、ケーシング内に設けられたランプは、照射線透過部材に近接してこれと略平行な面において蛇行する発光管部分を有することにより、同じ長さの発光管部分を有するスパイラルランプを備える従来装置に比較して、発光管部分のうち照射線透過部材に対向する部分の面積、即ち、照射線透過部材に面してタンク内を直接照射する発光管部分の面積が増加し、タンク内を広角範囲に亘って効率良く照射することができる。
【0008】
照射型殺菌装置は、ケーシング外部よりその内部へと外気を導入して前記ランプを冷却する冷却手段を備えることが好ましい。この場合、冷却手段によりケーシング内を換気してランプの温度が異常に高温になるのを抑えることができ、ランプの寿命を延ばすことができる。
【0009】
また、前記冷却手段は、前記ケーシングの開口端と反対側の端部に設けられたファンであり、前記反射板とケーシング内壁との間には間隙が形成されるとともに、反射板より照射線透過部材側のケーシング壁面部分には、空気孔が形成されることが好ましい。これにより、ケーシング外の空気がファンによってケーシング内に吸い込まれ、ランプの発熱部分を適宜冷却した後、空気孔からケーシング外へと排出される対流が生じる。
【0010】
また、照射型殺菌装置はさらに、前記空気孔からケーシング内部へ異物が混入することを防止する異物混入防止手段を有することが好ましい。これにより、外部からケーシング内への異物混入を防止でき、ランプを保護することができる。なお、この異物混入防止手段は、前記空気孔を外部より多重に覆うように前記ケーシング外壁に装着され、その一端が開放された複数の筒状スカート部材により構成されるようにしても良い。この場合、筒状スカート部材の設置により、装置外部より空気孔へとダイレクトに向かう異物流れ(風、雨など)が阻止され、ケーシング内異物混入の可能性を低めることができる。
【0011】
さらに、前記複数の筒状スカート部材は、ケーシングの径方向に隣接するスカート部材の各開放端が互いに逆向きになるようにケーシング外壁に固定されることが好ましい。これにより空気孔外方には、スカート部材によってラビリンス状の複雑な通路が形成され、ケーシング内異物混入の可能性をさらに低めることができる。
【0012】
また、前記異物混入防止手段は、前記空気孔周囲のケーシング壁面部分に装着され、空気孔を塞ぐネットでも良い。この場合、異物が空気孔に設けられたネットによってブロックされ、ケーシング内への異物混入の可能性を低めることができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記照射線透過部材と前記ケーシング開口端との間には、フッ素ゴムからなるパッキンリングが装着される。この場合、従来より使用されているシリコン製パッキンリングに比べ、フッ素ゴムは紫外線による劣化が低いため、殺菌装置本体とタンクとのシール性が向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明による照射型殺菌装置の実施形態を説明する。図1は、本発明の照射型殺菌装置が殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着された状態を示す縦断面図であり、図2は、図1に示した殺菌装置の内部構造を示す一部切欠斜視図である。
【0015】
図1において、1はタンク、2はこのタンク1の一部に形成された円形の窓孔である。本発明による照射型殺菌装置(以下、殺菌装置)3は、この窓孔2を包むようにしてタンク1上に据え付けられ、窓孔2を覆う平板状の照射線透過部材4を備えている。この照射線透過部材4は、殺菌可能な照射線(例えば、紫外線、赤外線、電子線など)を透過する石英ガラスなどの透過材料により形成されている。なお、5はこの照射線透過部材4を位置決めするとともに、殺菌装置3を取り付けるためのケーシング着座部であり、タンク1よりも厚肉化されている。
【0016】
図1及び図2から明らかなように、殺菌装置3を構成するケーシング6は、窓孔2に対応して筒状に形成され、軸方向一端(図2において、下端)が開口し、その開口端には、フランジ部7が設けられている。ケーシング6は、照射線透過部材4を載置するケーシング着座部5に対し、パッキンリング8を介して装着されている。なお、このパッキンリング8は、従来同様にシリコン、テフロン(商標)等を用いて形成することができるが、照射線(例えば紫外線)に対する耐劣化性に優れたフッ素ゴムを用いて形成しても良い。
【0017】
ケーシング6のタンク1への取り付けにあたっては、まず、ケーシング6のフランジ部7がタンク1のケーシング着座部5にあてがわれた状態で、締付けネジ9がケーシング着座部5に形成されたネジ孔にねじ込まれ、照射線透過部材4がこのケーシング着座部5とフランジ部7との間で、パッキンリング8を介して締め付けられ、以って窓孔2は液密又は気密状に閉塞されている。
【0018】
ケーシング6の他方端(図2において、上端)には、下端と同様にフランジ部10が設けられ、このフランジ部10には、円盤11がボルト(図示せず)等の手段によって固定されている。この円盤11は、本殺菌装置3を冷却するための外気をケーシング6内に取り込むファン12をその中央部に備えており、ファン12は図示しない電源より供給される電力で駆動するようになっている。ファン12の上部には、外気の導入に際してケーシング6内に異物が混入しないように、ネット13が被せられており、さらにその上方には、ファン12を保護するため、円盤11をその上側から覆う円筒形のキャップ14が、ブラケット15を介して円盤11に固定されている。
【0019】
一方、ケーシング6内部においては、円盤11の下面より照射線透過部材4に向かって2本のステー16が垂下し、その先端には後述するランプ17からの照射線を反射するための反射板18が反射面を下(照射線透過部材4側)にして固定されている。なおこの反射板18は、ケーシング6の内壁面との間に環状の間隙を生じるべく、ケーシング内径よりも小径化されている。
【0020】
ランプ17は、殺菌能力を有する照射線、例えば紫外線、赤外線または電子線を発生することができ、ステー16のほぼ中間位置に保持されるソケット(ランプベース)19と、このソケット19に取付けられた複数のフィラメント20と、これらのフィラメント20を内封する発光管部分21とからなっている。
【0021】
図3及び図4は、このランプ17の発光管部分21の平面図及び側面図である。発光管部分21は、これらの図3、4に示すようにフィラメント20からストレート状に延びる部分と、その先で蛇行する部分とからなっており、共に照射線を透過する材料から一体的に形成されている。また、このような発光管部分21を有するランプ17は、図2にも示されているように、ソケット19より反射板18を貫通した後、屈曲して照射線透過部材4近傍まで延び、照射線透過部材4とほぼ平行な面において蛇行した後、反射板18に向かって上昇し、再びこれを貫通してソケット19に戻るように、ケーシング6内に設置される。
【0022】
このように本実施形態においては、ランプ17の発光管部分21を蛇行させ、その部分を照射線透過部材4に近接させることにより、ケーシング軸線方向に旋回する発光管部分を有する従来のスパイラルランプに比較して、ランプ17の照射線透過部材4への投影面積を大きくすることができ、殺菌すべき流体を貯蔵するタンク1に対して高い照射効率を達成することができる。また、このランプ17は、その特異形状に起因して従来のスパイラルランプよりも反射板18を照射線透過部材4に近接して配置することができ、光源と反射板18との距離短縮に伴って反射効率を高めることができる。
【0023】
参考までに、本発明の殺菌装置3に使用されるランプ17の照射光量と、従来のスパイラルランプの照射光量とを同一条件下においてそれぞれ測定した結果を次表に示す。なお、本試験において使用された従来のランプ及び本発明のランプは、ともに同じ長さの発光管部分を有しており、光量測定は、ランプ底面より50mm直下の位置で行われ、また、各ランプは、空冷しない常温、無風の状態で点灯され、使用電源はAC100Vであった。
【0024】
【表1】

【0025】
上記の表1からも明らかなように、発光管部分を蛇行させた本発明ランプ17は、従来のスパイラルランプよりも、全経過時間(0〜20分)を通じて高い出力光量を以ってランプ底面より下方に照射できることが確認されている。
【0026】
次に、本実施形態における装置内外の空気の流れについて説明する。図2において矢印で示したように、ケーシング6外の空気は、ファン12の駆動によってキャップ14とケーシング6との隙間及びファン12内を通ってケーシング6内に吸い込まれる。ケーシング6内に吸い込まれた空気は、まず、殺菌装置3内で最も高温となるフィラメント20の周辺部を冷却し、次いで、ケーシング6の内壁と反射板18との環状間隙を抜けて、ランプ17の蛇行部分を冷却する。その後、冷却空気は、ケーシング6の壁面部分であって、反射板18より照射線透過部材4側の位置に周状等間隔に設けられた空気孔22からケーシング6外へと排出される。
【0027】
また、本実施形態においては、空気孔22には、内側にネットが貼り付けられており、ケーシング6外から空気孔22を介して異物が混入しないようになっている。異物混入の可能性を更に低めるため、本実施形態では、この空気孔22に近接してケーシング6の外壁に、上部を開放させた筒状のスカート部材23と、このスカート部材23を覆うようにして下部を開放させたスカート部材24とが、ケーシング6の径方向に隣接して固定されている。これにより、殺菌装置3を屋外に設置した場合にも、ケーシング6の側方からケーシング6内部への塵や雨水等の異物侵入を防止することができ、電気系統などの故障を回避することができる。
【0028】
このように本実施形態では、フィラメント20の周辺部を始めとするランプ17の発熱部をファン12を用いて強制的に冷却することにより、自然対流による冷却方式の従来装置よりもケーシング6内の温度上昇を効果的に抑えることができ、またランプ自体の高温化による照度低下を低く抑えることができる。
なお、冷却空気の流れる方向については、本実施形態において説明された方向に限定されるものではなく、冷却空気が上記の方向とは逆方向に流れるように構成しても良い。即ち、空気孔22から空気をケーシング6内に取り込んで、ランプ17の蛇行部分及びフィラメント20の周辺部を冷却させた後、ファン12内を通ってキャップ14とケーシング6との隙間から外部に排出させるようにしても良い。
【0029】
参考として、本殺菌装置3内に設置したランプ17を自然冷却した場合とファン12を用いて強制冷却した場合のそれぞれのランプ照度、表面温度、及び装置内温度について、その経時変化を比較した結果を次表に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
この計測結果を見ると、当然ながら、強制冷却した場合には、自然冷却の場合よりも装置内温度およびランプ表面温度の上昇率が少ないことがわかる。また、これに伴って、ランプ照度の低下度合も、自然冷却では60分後の照度が106.9μWから15μWまで低下するのに対し、強制冷却では107.2μWから103.3μWと、その変化幅は格段に小さくなっている。これらのことから、強制冷却した場合には、装置自体の耐久性のみならず、より高い殺菌効果が得られることがわかる。
【0032】
なお、本発明装置では、ケーシング外壁に固定されたスカート部材23、24がケーシング6の表面積を増加することにもなるため、そのフィン効果により冷却作用をさらに促進されることが予想される。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ケーシング内に設けられたランプは、照射線透過部材に近接してこれと略平行な面において蛇行する発光管部分を有することにより、同じ長さの発光管部分を有するスパイラルランプを備える従来装置と比較して、発光管部分のうち照射線透過部材に対向する部分の面積、即ち、照射線透過部材に面してタンク内を直接照射する発光管部分の面積を大きくすることができるばかりか、反射板を照射線透過部材に近接して配置することができので、タンク内への照射効率及び反射板による反射効率を増加させて、殺菌能力を高めることができる。
【0034】
また、スパイラルランプを使用した従来装置と異なり、ケーシング内壁と反射板との間に環状間隙が設けられているので、反射板に冷却空気流通のための孔を設ける必要がなく、それだけ反射板の面積を大きくとることができ、これによっても反射効率を高めることができ、ひいては殺菌能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による殺菌装置およびタンクの縦断面図である。
【図2】 図1の殺菌装置の内部構造を示す一部切欠斜視図である。
【図3】 図2のランプの発光管部分をソケット側から見た平面図である。
【図4】 図2のランプの発光管部分の側面図である。
【符号の説明】
1…タンク
2…窓孔
3…照射型殺菌装置
4…照射線透過部材
5…ケーシング着座部
6…ケーシング
7…フランジ部
8…パッキンリング
9…締付けネジ
10…フランジ部
11…円盤
12…ファン
13…ネット
14…キャップ
15…ブラケット
16…ステー
17…ランプ
18…反射板
19…ソケット
20…フィラメント
21…発光管部分
22…空気孔
23、24…スカート部材
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a)
「【請求項1】
殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備えたことを特徴とする照射型殺菌装置。」

『 【請求項1】
殺菌すべき流体を貯蔵するタンクに装着され、殺菌力を有する照射線によって前記流体を殺菌処理する照射型殺菌装置であって、前記タンクに形成された窓孔を覆う平板状の照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へ反射させる反射板と、を備え、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に近接して配置したことを特徴とする照射型殺菌装置。』
に、訂正する。
訂正事項b)
「【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による照射型殺菌装置は、前記タンクに形成された窓孔を覆う照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記照射線透過部材側から見て前記発光管部分の後方に設けられ、発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へと反射させる反射板とを備えたことを特徴としている。」
を、
『 【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による照射型殺菌装置は、前記タンクに形成された窓孔を覆う照射線透過部材と、一端が開口し、その開口端を上記タンクの窓孔の周囲に固定するケーシングと、前記ケーシング内に設けられ、ストレート状に延びる発光管部分及び前記照射線透過部材に近接して照射線透過部材と略平行な面において蛇行する発光管部分を有するとともに前記照射線を発生するランプと、前記照射線透過部材側から見て前記発光管部分の後方に設けられ、発光管部分からの照射線を照射線透過部材側へと反射させる反射板とを備え、前記ランプのストレート状に延びる発光管部分が前記反射板を貫通するように構成し、これにより前記反射板を前記照射線透過部材に接近して配置したことを特徴としている。』
に、訂正する。
異議決定日 2002-01-17 
出願番号 特願平9-316653
審決分類 P 1 652・ 121- YA (A61L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 克夫  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 藤原 稲治郎
和泉 等
登録日 2000-10-20 
登録番号 特許第3121302号(P3121302)
権利者 三共電気株式会社
発明の名称 照射型殺菌装置  
代理人 松隈 秀盛  
代理人 武田 賢市  
代理人 武田 賢市  
代理人 武田 明広  
代理人 武田 明広  

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