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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 一部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 一部申し立て 発明同一 H01L |
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管理番号 | 1058076 |
異議申立番号 | 異議1998-75824 |
総通号数 | 30 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-02-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-03 |
確定日 | 2002-02-27 |
異議申立件数 | 3 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2760740号「ディープ紫外線リソグラフィー」の特許請求の範囲第5、11、12項に係る特許に対する特許異議の申立てについて平成12年10月17日付けでした決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決[平成13年(行ケ)第89号、平成13年12月11日判決言渡]があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2760740号の特許請求の範囲第9項に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2760740号の特許請求の範囲第5、11、12項に係る発明についての出願は、昭和60年6月12日に出願した特願昭60-502662号(パリ条約による優先権主張1984年6月21日、米国)の一部を平成5年11月17日に新たな特許出願としたものであって、平成10年3月20日にその特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人キヤノン株式会社、横田貞則菅原益夫より特許異議の申立てがなされた。その後、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成11年12月15日に訂正請求がなされ、これに対して、訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成12年8月4日に補正書が提出されたところ、平成12年10月17日付で、上記訂正請求を認めず、上記第5、12項に係る発明は取り消し、上記第11項に係る発明は維持する旨の決定がなされた。 これに対して、本件特許の特許権者は、取消決定取消訴訟を提訴し、平成13年(行ケ)第89号として審理され、平成13年12月11日に、前記平成13年(行ケ)第89号の取消決定取消事件について、「特許庁が平成10年異議第75824号事件について平成12年10月17日にした決定中、特許第2760740号の特許請求の範囲の第12項に記載された特許を取り消した部分を取り消す。」との判決の言渡があった。 そこで、さらに審理の上、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年1月30日に訂正請求が提出されるとともに、上記平成11年12月15日付訂正請求は取り下げられた。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 (a)訂正事項a 特許請求の範囲第5、6、11項を削除する。 (b)訂正事項b 上記特許請求の範囲の一部の削除に伴い、特許請求の範囲第7,8、9、10、12項を、同第5、6、7、8、9項と、項番を繰り上げる。 (c)訂正事項c 特許請求の範囲第9項(訂正前第12項)について、「デバイスを製造する方法」を「半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法」に、「レーザ放射」を「KrFエクサイマーレーザーパルス放射」に、「レンズアセンブリ」を「石英ガラスのみのレンズアセンブリ」に、「加工物」を「レジスト層を有する加工物」に、「前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を十分に狭めるステップ」を「前記レンズアセンブリに前記放射を向ける前に、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を電力半値点で、0.1オングストローム以下のバンド幅に十分に狭めるステップ」に、それぞれ、訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項a、cは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)独立特許要件 上記訂正事項cは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するから、訂正後の特許請求の範囲第9項に係る発明(以下、本件発明という)の独立特許要件について検討する。 (a)本件発明 本件発明は、訂正後の本件明細書の特許請求の範囲第9項に記載されたとおりの以下のものと認められる。 半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法において、相対的に広いバンド幅を有するKrFエクサイマーレーザーパルス放射を発生するステップ、前記放射の少なくとも一部を前記放射の経路内に配置された石英ガラスのみのレンズアセンブリを介してレジスト層を有する加工物に向けるステップ、ここで、前記アセンブリは前記相対的に広いバンド幅放射に応答して許容できないほど大きな色収差を示すものであり、前記レンズアセンブリに前記放射を向ける前に、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下のバンド幅に十分に狭めるステップ、及び前記加工物から前記デバイスを完成するために前記加工物をさらに処理するステップを含むことを特徴とする製造方法。 (b)引用刊行物記載の発明 (イ)当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物4(特開昭60-140310号:異議申立人キヤノン株式会社の提出した甲第4号証の1)には、 ・「本発明は投影露光装置によってIC、LSI等の集積回路を製造するときの投影レンズに関し、特に波長150nm〜400nmの範囲の短波長の輝線に近い発光スペクトルを放射する光源を用いて集積回路のパターンをシリコンウエハー等に焼付けるときに有効な投影レンズに関するものである。」(公報第2頁左上欄第4〜10行) ・「特に本発明においては波長248.5nmを主たる発光スペクトルとするエキシマレーザーを用いインジエクシヨン、ロツキング等の手段によつて波長幅を狭くした場合に特有の効果を発揮する投影レンズの提供を目的としている。本発明の目的を達成するための投影レンズの主たる特徴は、・・前記第1,第2,第3レンズ群を各々単一のガラス材料の複数のレンズより構成すると共に・・を満足することである。単一のガラス材料で構成したのは使用する波長域がエキシマレーザーの非常に狭い発光スペクトルの光を利用した為、色収差を考慮しなくても良いからであり、波長域が多少広がれば複数のガラス材料を用いて色収差を補正するのが好ましい。後述する本発明の投影レンズの実施例はすべて溶融石英のみの単一硝材で構成しており、使用波長は248.5nmを主体としている。」(公報第2頁右下欄第2行〜第3頁左上欄第6行) という記載事項がある。 (ロ)刊行物5(米国特許第3573456号明細書:異議申立人菅原益夫の提出した甲第1号証)には、 ・「本発明はフォトレジスト材料で被覆されたシリコンウエハ中に高分解能な像を投影する手段に関するものである。また本発明は、フォトレジスト材料で被覆されたガラス板、又はフォトグラフィックな食刻が必要とされ、感光乳剤が使われるいかなる材料にも適用し得るものである。マイクロ回路の製造においては、感光性材料で被覆されたシリコンウエハ上に縮小された高分解能な像を転写することが望ましい。それからウエハは、投影された回路を生成するために食刻されるか、さもなければ処理される。」(コラム1第4〜36行) ・「本発明の他の目的は、紫外光線の光源、バンドパスフィルター、及び石英(quartz)対物レンズから成る高解像紫外投影手段を提供することである。本発明の他の目的は、紫外光線の光源、バンドパスフィルター、石英対物レンズ、及びその石英を補正(correct)するのに適合した1つの非球面板(aspheric plate)から成る高解像度紫外投影手段を提供することである。」(コラム2第40〜46行) ・「アプローチ3 このアプローチは、大きな開口と1ミリメートル当たり600本を超える分解能とを有し、50オングストロームのバンドパスをもつ単一周波数で働く対物レンズの製造に向けられた。そのレンズのために選ばれた狭いバンドパスフィルタを表す参考例がFig.2に示されている。そのフィルターは誘電体多層膜から成る。このアプローチは、色収差(chromatic aberrations)に関して補正されない石英の単色対物レンズの製造に基づいている。基本的に、この系は選ばれたブランクスからの溶融石英(fused quartz)で作られた複数素子の対物レンズ7であり、蛍石(fluorite)で作られる選定された幾何学素子8による1個の修正用の非球面、又は球面の素子を持つ。屈折率1.432を示すその修正用素子は、特に選ばれたブランクの中で屈折率1.478を提供する他の素子群と組み合わされる。その非球面板は、像のエッジの歪みと対物レンズの球面素子群における異常とに対する修正(correct)のために用いられる。より詳細にFig.1を参照すると、光源1は通常の電源と通常のトリガー手段9とを有する高輝度のキセノン水銀ランプである。バンドパスフィルター2は誘電体層と反射防止コートとをもつ石英から成る。ランプは光軸3に沿って高輝度のビームを透過するように使われている。石英のコンデンサーレンズ4は、石英板6上に設けられた高分解能な写真乳剤5の投影すべき像を介して光ビームを通すように使われる光軸上に設けられる。こうして投影されたビームは石英の対物レンズ7を通り、さらにその補正されていない石英レンズを修正するように特別にみがかれた非球面の蛍石板を通る。それから、高分解能で高エネルギーのビームは、フォトレジスト材料の層11を上に有するシリコンウエハ10に進み、縮小された、又は縮写されたマイクロ像を転写する。フォトレジスト材料の層11に画像が転写された後、そのシリコンウエハは、転写されるべき回路の複写をウエハ上に生成するために食刻されるか、さもなければ処理される。Fig.2を参照すると、そこにはいろいろな素子の波長特性を説明する図が示されている。フォトレジスト材料の感度がオングストロームの波長に対して曲線Pで表されている。ランプの放射曲線が波形Lで示され、その波形LはピークL1、L2、L3、L4を有する。透過(transmission)を1つの周波数に限定することが望まれるので、最も大きなピークLを透過するように狭いバンドパスフィルターが選ばれる。そのバンドパスフィルターの曲線はピークFで示され、中心バンドパスの周波数は3550オングストロームの近辺にある。曲線Tは石英の透過特性を示す。本発明では、フォトレジスト材料の感度帯域内で高分解能をもつ十分なパワーが得られる。そのフィルターはノイズ周波数を取り除くのに役立ち、全ての透過素子は、選定された周波数において良好な透過性を有する石英から成る。」(コラム5第64行〜コラム6第45行) という記載事項がある。 (c)対比・判断 (イ)本件発明と刊行物4に記載された発明を対比する。 ・刊行物4では、「本発明は投影露光装置によってIC、LSI等の集積回路を製造するときの投影レンズに関し、・・有効な投影レンズに関するものである。」と記載され、投影レンズの構成を主な観点として記載されているが、当業者であれば、刊行物4の記載から、集積回路を製造する方法としての観点からも捉えられることは明かであり、また、「IC、LSI等の集積回路」は半導体材料からなる加工物であることも当然であるから、刊行物4には、半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法が示唆されていると認められる。 ・刊行物4の「波長248.5nmを主たる発光スペクトルとするエキシマレーザーを用いインジエクシヨン、ロツキング等の手段によつて波長幅を狭くした場合に特有の効果を発揮する投影レンズの提供を目的としている。」という記載から、光源で発生されたエキシマレーザーの波長幅は、インジエクシヨン、ロツキングなどの手段によって波長幅を狭くしたものに比べて、相対的に広いということができ、また、「波長248.8nmを主たる発光スペクトルとするエキシマレーザー」がKrFエキシマパルスレーザーであることも明かであるから、刊行物4には、想定的に広い波長幅を有するKrFエキシマパルスレーザーを発生する構成が示唆されていると認められる。 ・刊行物4の「投影レンズの主たる特徴は、・・前記第1,第2,第3レンズ群を各々単一のガラス材料の複数のレンズより構成すると共に・・を満足することである。単一のガラス材料で構成したのは使用する波長域がエキシマレーザーの非常に狭い発光スペクトルの光を利用した為、色収差を考慮しなくても良いからであり、波長域が多少広がれば複数のガラス材料を用いて色収差を補正するのが好ましい。後述する本発明の投影レンズの実施例はすべて溶融石英のみの単一硝材で構成しており」という記載は、投影レンズはすべて溶融石英からなり、狭い発光スペクトル(波長幅)では色収差の補正の必要はないが、広い発光スペクトルでは色収差の補正が必要である、つまり、色収差が許容できないことを示していることは、当業者には明かであり、また、集積回路の製造では、半導体からなる加工物にレジスト層を塗布し、投影レンズを介してエキシマレーザーを照射することは当業者には常識である。すると、刊行物4には、エキシマレーザーを溶融石英からなる投影レンズを介してレジスト層を有する加工物に照射し、該投影レンズは広い波長幅のレーザーでは色収差が許容できないものとなる構成が示唆されていると認められる。 ・刊行物4の「波長248.5nmを主たる発光スペクトルとするエキシマレーザーを用いインジエクシヨン、ロツキング等の手段によつて波長幅を狭くした場合に特有の効果を発揮する投影レンズの提供を目的としている。」という記載は、光源からのエキシマレーザーを投影レンズに照射する前に、インジエクシヨン、ロツキング等の手段によつて波長幅を狭くしている構成を示していることは明かであり、また、「単一のガラス材料で構成したのは使用する波長域がエキシマレーザーの非常に狭い発光スペクトルの光を利用した為、色収差を考慮しなくても良いからであり、波長域が多少広がれば複数のガラス材料を用いて色収差を補正するのが好ましい。」という記載は、波長幅を狭くされたエキシマレーザーでは投影レンズの色収差が補正を必要としない、つまり、色収差が許容できる程度のものであることを示しているから、刊行物4には、投影レンズにエキシマレーザーを照射する前に、その波長幅を狭くし、投影レンズの色収差が許容できる程度のものにする構成が示唆されていると認められる。 ・刊行物4には直接記載されていないが、集積回路の製造において、加工物にエキシマレーザーでパターンを焼き付けた後に、現像、洗浄、乾燥など種々の処理がなされることは自明の技術事項である。 以上のことから、本件発明と刊行物4に記載された発明は、 半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法において、相対的に広いバンド幅を特徴とするKrFエクサイマーレーザーパルス放射を発生するステップ、前記放射の少なくとも一部を前記放射の経路内に配置された石英ガラスのみのレンズアセンブリを介してレジスト層を有する加工物に向けるステップ、ここで、前記レンズアセンブリは前記相対的に広いバンド幅放射に応答して許容できないほど大きな色収差を示すものであり、前記レンズアセンブリに前記放射を向ける前に、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を十分に狭めるステップ、及び、前記加工物から前記デバイスを完成するために前記加工物をさらに処理するステップを含むことを特徴とする製造方法。 で一致し、次の点で相違する。 本件発明では、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、放射のバンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下のバンド幅に十分に狭める構成であるのに対して、刊行物4に記載された発明では、各パルスのパワーについて、また、バンド幅を具体的にどの程度に狭めるかについての言及がない点。 以下、上記相違点について検討する。 集積回路を製造する工程のうちの露光工程において、エキシマレーザーのバンド幅を、インジエクシヨン、ロツキング等によつて狭くする手段を採ると、この狭くする手段により、エキシマレーザーは、バンド幅が狭くなる一方、パワーが低下するということは、当業者には自明程度のことであり、また、色収差が小さくなると、分解能が高くなること、パワーが低下すれと、露光に必要な時間が長くなり、スループットが低下することは、当業者にはよく知られたことであるから、バンド幅を狭くすると、分解能は高くなるが、スループットは低下するということは、当業者には容易に予測し得ることである。ところが、このことについて、刊行物4には何らの記載はなく、分解能、スループットの両者を考慮して、どの程度にバンド幅を狭くし、どの程度のパワーを得るようにするかという具体的構成については、全く開示されていない。 しかし、本件発明においては、バンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下で、各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールのもので、高分解能、高スループットが達成できることを見出した、つまり、高分解能、高スループットを達成するための、具体的な数値を開示したものであり、この点で、本件発明は、刊行物4にはない、技術的な意義を有するということができる。 したがって、本件発明は、刊行物4に記載された発明と実質的に同一であるということはできない。 (ロ)本件発明と刊行物5に記載された発明を対比する。 ・刊行物5の「本発明はフォトレジスト材料で被覆されたシリコンウエハ中に高分解能な像を投影する手段に関するものである。・・マイクロ回路の製造においては、感光性材料で被覆されたシリコンウエハ上に縮小された高分解能な像を転写することが望ましい。それからウエハは、投影された回路を生成するために食刻されるか、さもなければ処理される。」という記載において、「シリコンウエハ」は半導体材料から成る加工物であり、「マイクロ回路」は集積回路であることは明かであるから、刊行物5には、半導体材料から成る加工物から集積回路デバイスを製造する方法が示唆されていると認められる。 ・刊行物5の「光源1は通常の電源と通常のトリガー手段9とを有する高輝度のキセノン水銀ランプである。」という記載及びFig.2の記載から、刊行物5には、露光光源として、幅広い波長に多くのピークを有する、キセノン水銀ランプを使用している構成が記載されていると認められる。 ・刊行物5の「本発明の他の目的は、紫外光線の光源、バンドパスフィルター、及び石英(quartz)対物レンズから成る高解像紫外投影手段を提供することである。本発明の他の目的は、紫外光線の光源、バンドパスフィルター、石英対物レンズ、及びその石英を補正(correct)するのに適合した1つの非球面板(aspheric plate)から成る高解像度紫外投影手段を提供することである。」、「アプローチ3 このアプローチは、大きな開口と1ミリメートル当たり600本を超える分解能とを有し、50オングストロームのバンドパスをもつ単一周波数で働く対物レンズの製造に向けられた。そのレンズのために選ばれた狭いバンドパスフィルタを表す参考例がFig.2に示されている。そのフィルターは誘電体多層膜から成る。このアプローチは、色収差(chromatic aberrations)に関して補正されない石英の単色対物レンズの製造に基づいている。基本的に、この系は選ばれたブランクスからの溶融石英(fused quartz)で作られた複数素子の対物レンズ7であり、蛍石(fluorite)で作られる選定された幾何学素子8による1個の修正用の非球面、又は球面の素子を持つ。屈折率1.432を示すその修正用素子は、特に選ばれたブランクの中で屈折率1.478を提供する他の素子群と組み合わされる。その非球面板は、像のエッジの歪みと対物レンズの球面素子群における異常とに対する修正(correct)のために用いられる。」との記載から、刊行物5に記載された露光装置の光学系は、対物レンズは、色収差補正されない石英の単色対物レンズからなり、この対物レンズに追加される蛍石から成る補正板は、像のエッジの歪みと球面素子群の異常を修正するため、つまり、色収差ではない収差を補正するものであることが明かであるから、刊行物5には、色収差に関しては、実質的に補正されていない、つまり、許容できない色収差を示す、石英で構成された対物レンズのみで構成されているということができる。また、刊行物5の「本発明はフォトレジスト材料で被覆されたシリコンウエハ中に高分解能な像を投影する手段に関するものである。」という記載を合わせれば、刊行物5には、キセノン水銀ランプからの光を石英で構成される対物レンズを介して、レジスト層を有する加工物に投影し、この対物レンズは色収差が許容できないものである構成が示唆されていると認められる。 ・刊行物5の「50オングストロームのバンドパスをもつ単一周波数で働く対物レンズの製造に向けられた。」、「本発明では、フォトレジスト材料の感度帯域内で高分解能をもつ十分なパワーが得られる。」という記載から、刊行物5には、対物レンズの前で、50オングストロームのバンド幅を持つようにキセノン水銀ランプからの光のバンド幅が狭められ、この狭められた光により、フォトレジスト材料の感度帯域内で高分解能をもつ十分なパワーが得られる構成が示唆されていると認められる。 ・刊行物5の「それからウエハは、投影された回路を生成するために食刻されるか、さもなければ処理される。」という記載から、刊行物5には、露光後に、回路を完成するために加工物をさらに処理する構成が示唆されていると認められる。 以上のことから、本件発明と刊行物5に記載された発明は、 半導体材料から成る加工物から集積回路デバイスを製造する方法において、光の放射を発生するステップ、前記放射の少なくとも一部を前記放射の経路内に配置された石英ガラスのみのレンズアセンブリを介してレジスト層を有する加工物に向けるステップ、ここで、前記アセンブリは許容できないほど大きな色収差を示すものであり、前記アセンブリに前記放射を向ける前に、前記放射のバンド幅を狭めるステップ、及び前記加工物から前記デバイスを完成するために前記加工物をさらに処理するステップを含むことを特徴とする製造方法。 で一致し、次の点で相違する。 (i)本件発明では、相対的に広いバンド幅を特徴とするKrFエクサイマーレーザーパルス放射であるのに対して、刊行物5に記載された発明では、幅広い波長に多くのピークを有する、キセノン水銀ランプである点。 (ii)本件発明では、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下のバンド幅に純分に狭める構成であるのに対して、刊行物5に記載された発明では、50オングストロームのバンド幅を持つようにキセノン水銀ランプからの光のバンド幅が狭められ、この狭められた光により、フォトレジスト材料の感度帯域内で高分解能をもつ十分なパワーが得られる構成である点。 ・相違点(i)について 半導体材料から集積回路を製造する方法において、パルス化されたKrFエクサイマーレーザーを使用することは、例えば、特開昭57-198631号公報(異議申立人菅原益夫の提出した甲第2号証)等に示されるように、当業者には周知の技術であるから、刊行物5に記載された発明において、幅広い波長に多くのピークを有する、キセノン水銀ランプに換えて、パルス化されたKrFエクサイマーレーザーを使用することは、当業者が容易になし得ることである。そして、この周知のパルス化されたKrFエクサイマーレーザーからの放射について、バンド幅を狭くする手段を通さない状態では、通した状態より、相対的にバンド幅が広いことは当然である。 ・相違点(ii)について 刊行物5においては、バンドパスフィルタにより、Fig.2に示されるような幅広い波長に分布を持つ、キセノン水銀ランプから、ある1つのピーク波長を取り出し、それを、50オングストロームのバンド幅をもつ単一周波数の光として使用している。つまり、この50オングストロームのバンド幅をもつ単一周波数の光の中で生じる色収差は、許容しているものと認められる。そして、この単一周波数の光を使用により、フォトレジスト材料の感度帯域内で高分解能をもつ十分なパワーが得られるとしている。 ここに、放射のバンド幅を狭くするほど、色収差が小さくなることは自明であるから、刊行物5に記載された発明においても、さらに、バンド幅を狭くすることは、当業者が容易に想到し得ることである。しかし、上記2.(3)(c)(イ)で述べたように、放射のバンド幅を狭くすると、放射のパワーが低下することとなるが、刊行物5に記載された発明において、どの程度にバンド幅を狭くし、どの程度のパワーを得るかは当業者といえども、容易に想到し得るものではない。 それに対して、本件発明では、KrFエクサイマーレーザーパルス放射を使用したとき、バンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下で、各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールのもので、高分解能、高スループットが達成できることを見出した、つまり、高分解能、高スループットを達成するための、具体的な数値を開示したものであり、この点は、刊行物5に記載された発明、その他の周知・自明の事項を参照しても、当業者が容易に想到し得たということはできない。 したがって、本件発明は、刊行物5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものということはできない。 (4)むすび したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)申立の理由の概要 (a)異議申立人キヤノン株式会社は、本件の訂正前の特許請求の範囲第5項に係る発明は、甲第1号証の1(特開昭60-257519号公報)に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反し、同第11項に係る発明は、甲第2号証(september 1980/solid state technology/日本版「レーザ投影描画装置」36頁〜42頁)に記載された発明と同一であり、あるいは、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、または、甲第3号証(特開昭59-226317号公報)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項、あるいは、同第2項、または、同第29条の2の規定に違反し、同第12項に係る発明は、甲第4号証の1(特開昭60-140310号公報:刊行物4)に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反し、特許請求の範囲第12項及び本件明細書は記載が不備であり、特許法第36条第3項及び第4項の規定する要件を満たしていない旨主張している。 (b)異議申立人横田貞則は、本件の訂正前の特許請求の範囲第12項に係る発明は、甲第1号証(特開昭60-140310号公報:刊行物4)に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反している旨主張している。 (c)異議申立人菅原益夫は、本件の訂正前の特許請求の範囲第12項に係る発明は、甲第1号証(米国特許第3573456号明細書:刊行物5)に記載された発明と同一であるかもしくは該発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第1項もしくは第2項の規定に違反している旨主張している。 (2)異議申立人の申立ての理由について (a)上記2.で述べたとおり、上記訂正が認められ、本件の訂正前の特許請求の範囲第5、11項は削除されたから、異議申立ての対象は存在しないものとなった。 (b)本件の訂正前の特許請求の範囲第12項(訂正後の第9項)について 異議申立人キヤノン株式会社、同横田貞則、同菅原益夫は、いずれも、いくつかの文献を提示して、本件発明の、バンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下で、各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールである範囲の、KrFエキシマレーザーが周知であると主張するが、これは、KrFエキシマレーザーとして、一般に、その程度のものが得られることを示しているだけであって、半導体デバイスの露光において、色収差と分解能の関係、露光パワーとスループットの関係を考慮して、高分解能・高スループットを実現可能な、バンド幅とパルスパワーの数値範囲を示すものではない。 してみると、バンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下で、各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールである範囲の、KrFエキシマレーザーが一般的に周知であったとしても、本件発明が、刊行物4に記載された発明と同一である、また、刊行物5に記載された発明と同一である、あるいは、刊行物5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得るものであるとすることはできない。 また、異議申立人キヤノン株式会社は、「前記加工物から前記デバイスを完成するために前記加工物をさらに処理するステップ」の「処理」について、本件の発明の詳細な説明に対応する記載はなく、本件の発明の詳細な説明を参照しても、該記載の内容が不明瞭であると主張するが、半導体デバイスを製造する際に、露光工程の後に、現像、洗浄などの様々な処理工程があることは周知であり、上記記載について、当業者であれば、それら周知の処理工程を示すものと解するのが当然であるから、該記載の内容が不明瞭であるということはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、異議申立人キヤノン株式会社、横田貞則、菅原益夫の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことができない。 また、他に、本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 光リソグラフィー装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 固有のバンド幅を有するレーザー放射を与えるパルスレーザー手段(12); 放射路に配置され、前記レーザー放射により与えられる前記固有のバンド幅をもつ放射に応答して許容できないほど大きい色収差を示すレンズアセンブリ(108、110)であって、該レンズアセンブリは本質的に単一の光学物質から形成されているものであり; 前記レーザー(12)の出力に応答して前記レンズアセンブリが許容できるほど低い色収差を示すまで前記放射の固有のバンド幅を十分に狭くする調節およびバンド幅狭化手段(54); 連続波信号を提供するための連続波信号レーザー(62); 前記パルスレーザーおよび連続波信号レーザーを同軸的に伝播するための装置(55、64); 前記同軸的に伝播される前記パルスレーザーおよび連続波信号レーザーを偏向する二次元走査アセンブリ(20、22);および 前記偏向された連続波信号レーザーに応答して所定の整合からの偏差を検出し、前記走査アセンブリに修正信号を加えて、前記連続波信号レーザーの前記所定の整合および前記同軸的に伝播される前記パルスレーザーの整合を保持する光検出器(24)を含むことを特徴とする光リソグラフィー装置。 【請求項2】 請求項1に記載の装置において、前記装置はさらに、前記整合されたパルスレーザーの経路内に置かれ、それに向けられるパルスレーザーの直径より小さな直径の開口を持つ視野ストップ(82)、および 前記二次元走査アセンブリに信号を加え、前記パルスレーザーを前記ストップ内の開口を横断してシステマティクに走査し、前記開口を通過して伝播されるパルスの強度輪郭の面積の平均化を行うコンピューター制御手段(38)を含むことを特徴とする装置。 【請求項3】 請求項2に記載の装置において、前記装置はさらに、前記装置の動作の1サイクルの間に前記パルスレーザーによって供給される累積エネルギーを測定し、供給される総エネルギーが所定の閾値を超えたときに前記サイクルを停止する光積分器(94)を含むことを特徴とする装置。 【請求項4】 請求項2に記載の装置において、当該装置はさらに、 走査レンズアセンブリ(101); 走査ミラーアセンブリ(106);および 前記パルスレーザーを前記走査レンズアセンブリを介して前記走査ミラーアセンブリに投影し、前記パルスレーザーの連続パルスからなる拡大された仮想源を生成する手段(98)を含むことを特徴とする装置。 【請求項5】 (旧請求項7)第1のパルスレーザー(12)の源は、高分解能フォトリソグラフィーのための振動離隔領域を含む加工物支持テーブル(16)、及び前記第1のパルスレーザー源から前記テーブルへ光を向ける整合手段を含む光リソグラフィー装置であって、 該第1のパルスレーザー源がパルス紫外線レーザーからなり、前記テーブルから物理的に分離された状態にあり、 前記整合手段が (1)連続波信号レーザーから誘導されたフィードバック信号に応答する二次元走査アセンブリ(20、22)、 (2)第1のパルスレーザー(12)の源からの紫外線光と同時伝播される連続波信号レーザー(62)の第2のレーザー源、及び (3)該第1のパルスレーザー源と前記テーブルの間の相対的移動の際に所定の整合を維持するために、前記テーブルでの前記連続波信号レーザーを検出し、前記連続波信号レーザーから誘導されたフィードバック信号を前記二次元走査アセンブリへ向けるための手段を含むことを特徴とする光リソグラフィー装置。 【請求項6】 (旧請求項8)請求項5に記載の装置において、前記連続波信号レーザーを向けるための手段が、 前記電気信号に応答して前記連続波信号レーザーの伝播の方向を制御する二次元走査アセンブリ(20、22)を含むことを特徴とする装置。 【請求項7】 (旧請求項9)ウエハ上に線形形状を形成するために、移動可能な装置に関連して整合されたレーザーパルスの出力ビームを保持するための方法において、 前記移動可能な装置へ前記レーザーパルスビーム及び連続波レーザービームを前記移動可能な装置に設けられた光検出器へ導くステップ、ここで、前記検出器は、前記連続波レーザービームの変動を表す電気信号を生成し、 前記電気信号をフィードバックループを介して二次元走査アセンブリに加えることにより、前記検出器に対する前記連続波レーザービームの整合を維持し、それにより前記移動可能な装置に対する前記レーザーパルスビームを維持するステップを特徴とする方法。 【請求項8】 (旧請求項10)請求項7に記載の方法において、前記レーザービームがパルスレーザーおよびこのパルスレーザーと同軸的に伝播される連続波信号レーザーを含み、前記検出器が前記連続波信号レーザーにのみ応答して前記フィードバックループ内に連続電気信号を生成することを特徴とする方法。 【請求項9】 (旧請求項12)半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法において、 相対的に広いバンド幅を特徴とするKrFエクサイマーレーザーパルス放射を発生するステップ、 前記放射の少なくとも一部を前記放射の経路内に配置された石英ガラスのみのレンズアセンブリを介してレジスト層を有する加工物に向けるステップ、ここで、前記アセンブリは前記相対的に広いバンド幅放射に応答して許容できないほど大きな色収差を示すものであり、 前記レンズアセンブリに前記放射を向ける前に、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を電力半値点で0.1オングストローム以下のバンド幅に十分に狭めるステップ、及び 前記加工物から前記デバイスを完成するために前記加工物をさらに処理するステップを含むことを特徴とする製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は新しい短波長リソグラフシステムに関する。 【0002】 【発明の背景】 本発明は光学リソグラフィー、より詳細には高品質細線半導体デバイスを製造するために採用される短波長光学リソグラフィー用の装置および方法に関する。 【0003】 光学写像システムにおける等しい線及び間隔の分解能限界(Lmin)は以下によって表わされることが知られている。 【0004】 Lmin=Kλ/NA (1) ここで、Kは定数であり、この値は典型的には0.4から1.0の範囲にあり製造及び照射条件並びにレジスト特性に依存し、λは露出放射線の波長であり、そしてNAは投影光学装置の開口数である。 【0005】 (1)式より、印刷可能な最少形状はλを減少させるか、あるいはNAを増加することによって縮小できることがわかる。しかし、システムの焦点の深度は(NA)2に逆比例して変化するため、通常、実際の高分解能システムにおいては所望のLminを達成するのにはNAを増加するのではなくλを減少する方が有利である。 本発明は新しい短波長リソグラフシステムに関する。 【0006】 【発明の要約】 本発明によるリソグラフシステムはディープ紫外線の範囲の波長にて動作する狭バンド幅可調節レーザーを含む。単色の石英ガラスのみで製造されたレンズアセンブリがレーザーの出力を移動可能な支持体、例えば、周知の“スピッピングテーブル”上に搭載されたレジスト被覆ウエーハの連続部分に当てるのに使用される。 【0007】 本発明に従って狭バンド幅レーザーと単色レンズアセンブリとを組合せて使用することによって、システムの焦点追跡を迅速にかつ簡単に行なうことが可能となる。これはレーザーの出力を投影レンズを介して加工物の表面に当て、レーザーの波長をレンズの焦点長とレンズから加工物面までの間隔とが等しく保持されるように制御することによって遂行される。本発明によるシステムの他の特徴は後に説明される。 【0008】 本発明は周知のタイプの“ステップアンドリピード”リソグラフィックシステムとの関連で説明される。 【0009】 本発明の一面によると、レーザー照射源が物理的にシステムの可動テーブル部分から離される。従って、例えば、図1に示されるパルスレーザー12を含む装置10は、好ましくは、図2に示されるステッピング テーブル16を含む装置14から離された所に位置される。この構成においては、装置10によって提供されるレーザービームは図1の矢印18によって示されるごとく、空気あるいは制御された空間を通って装置14に伝播される。(実際には、後に明らかになるように 、2つの同軸に配置されたレーザービームが装置10から矢印18の方向に伝播される。片方のビームは露出放射線として使用され、他方のビームは単に整合制御の目的に使用される。) 【0010】 前述の装置10と14を物理的に離すのには幾つかの理由がある。例えば、図1に示されるレーザー12は有毒成分を含み、安全上、これを作業員から離れた所に位置することが必要とされる。 【0011】 動作においては、ステッピング テーブルによってレジスト被覆半導体ウエーハ40の連続部分を照射線の経路内に移動される。従来は、テーブルの割出しの度に、ビームの照射を行なう前にテーブルの移動に起因する振動が止まるのを待つことが必要であった。これは時間のかかる作業である。 【0012】 本発明の一面においては、装置10及び14にレーザービームをテーブル16の振動に合せて瞬時に移動することによってレーザービーム18のテーブルに対する整合を確保するための装置が提供される。従って、個々のテーブルの割出しの後にただちにビームの照射を行なうことができる。一例として、この装置には、装置10内の標準駆動ガルバノメータミラー20及び22、及びテーブル16上に搭載された従来の象限光検出器あるいはポジションセンシティブ光検出器24を含む。この光検出器24によって提供される電気信号はそれぞれガルバノメータモータ30及び32を制御するフィードバックループ内の差動増幅器26及び28に加えられる。モータ30はY軸に平行のシャフト34を介して機械的にミラー20に結合され、モータ32はZ軸に平行のシャフト36を介してミラー22に結合される。ミラー20及び22を選択的に回転することによって、装置10から放射されるレーザービーム18の方位がテーブル16の振動による移動を補正するように制御的に変化される。 【0013】 静止状態において、テーブル16に対して要求されるレーザービーム18の方位が制御コンピューター38からガルバノメータモータ30及び32に加えられる定常信号によって確立される。差動増幅器26及び28によってモータ30及び32に供給される追加の可変信号はコンピュータによって供給される定常信号に重複される。このプロセスに関しては後に詳細に説明される。 【0014】 図2の装置14内に含まれる個々のレンズは石英ガラスのみから製造される。石英ガラスは短波長光に対して高度に透明な高安定材質である、さらに、石英ガラスは指定のレンズ設計に従って精密に加工することができる。このような明白な長所を持つのにもかかわらず、レーザー照射に基づく短波長(例えば、ディープUV)光学リソグラフィー用の高品質レンズアセンブリを製造するのに単一の光学材質(石英ガラス)の使用を提唱するのは本出願人が初めてである。従来は 、色収差を補正するために複合材質を使用してレンズを製造するのが通常であった。 【0015】 本出願人は石英ガラスのみから製造されるレンズアセンブリを設計してみて、このアセンブリと結合されるレーザー源が、単一の光学材質アセンブリにて色収差の問題を回避するためには、実用上極度に狭いバンド幅を持つことが要求されることを認識した。レーザー源のバンド幅が十分に狭くないときは、色収差の問題を回避できなく、従って、レーザービームが照射されるウエーハ40(図2)上の投射像がボケてしまう結果となる。 【0016】 しかし、本出願人は十分なパワーを持つ適当な短波長レーザー源は全て本質的に極度に広いバンド幅を持つことを発見した。この時点でとるべき1つの明白な行動は、他の研究者のように、利用できるレーザー源のバンド幅の範囲内で色収差の問題を回避するためにレンズアセンブリを再設計することである。しかし、これは石英ガラス以外の光学材質を併用することを必要とする。このため、本出願人は、石英ガラスのみによるレンズ設計はそのままとし、レーザー源を十分に狭いバンド幅を示すように再設計する明白でない方法をとった。この独特のアプローチによってより優れたレンズの設計が実現されたばかりか、さらに、電子的焦点追跡、並びにレーザー源の電子的調節を達成する道が開かれた。レーザー源の電子的調節によって、後に詳細に説明されるように、レーザー源をレンズアセンブリの動作特性に合致させることが可能となる。 【0017】 一例として、図1の装置10に含まれるレーザー12はエクサイマーレーザーから構成される。この分類のレーザーは例えば、4000オングストローム以下から2000オングストローム以下の範囲の波長にはUV放射を行なう能力を持つ。 エクサイマーレーザー及びこれらのリソグラフィーへの応用は多数の文献に紹介されている。これらには、G.M.ジューブローク(G.M.Dubroeucq)らによって、マイクロ回路エンジニアリング会議、アーヘン、ドイツ、1979年、9月の議事録(Proceeding of Microcircuit Engineering Conference)、ページ328-337に発表の論文〔レーザー投射プリンティング(Laser Projection Printing)〕;T.マクグレース(T.Mc Grath)によってソリッド ステート テクノロジー(Solid State Technology)、1983年、12月号、ページ165-169に発表の論文〔エクサイマーレーザーのマイクロエレクトロニクスの応用(Applications of Excimer Lasers in Microelectronics)〕;K.J.ポラスコ(K.J.Polasko)らによってIEEE エレクトロン デバイス レターズ(IEEEElectron Device Letters)、Vol.DEL-5、No.1、1984年1月号、ページ24-26に発表の論文〔エクサイマーレーザーを使用してのAg2 Se/GeSeのディープUV露出(Deep UV Exposure of Ag2Se/GeSe2 Utilizing an Excimer Laser);及びK.ジェイン(K.Jain)らによってアプライド オプテイクス(Applied Optics)、Vol.23、No.5、1984年3月1日号、ページ648-650に発表の論文〔エクサイマーレーザー投影リソグラフィー(Excimer Laser Projection Lithography)等が含まれる。 一例として、図1のレーザー12は2484オングストロームの公称中心波長にて動作するように設計されたパルスKrFガスエクサイマーレーザーから構成される。(KrF内のフッ素成分は非常に有毒である。)一例として、レーザー12のパルス反復速度は約1000パルス/秒に選択される。 【0018】 本質的には、KrFエクサイマーレーザー12(図1)は電力半値点で約10オングストロームのスペクトルバンド幅を持つ。しかし、高分解能リソグラフィー用の石英ガラスのみのレンズアセンブリは色収差の問題を回避するためには約0.1オングストローム以下のレーザー源バンド幅が必要であることが再確認されたため、本出願人はレーザー12とバンド幅狭化アセンブリとを結合することによって、2484オングストロームの所でたった0.05オングストロームの電力半値点バンド幅を特徴とする出力を得ることに成功した。1000パルス/秒の反復速度における、これら個々のパルスのパワーは約5ミリジュールであるが、これは均質の高分解能高スループットリソグラフィーに対して十分なものである。 【0019】 レーザー12の固有のバンド幅を峡化するためには、幾つかの方法が使用できる。図3にはこれを遂行するための1つの適当なアセンブリが示される(この図面にはレーザーの部分42及び44も示される)。レーザーから放射されるビーム46は標準低長短比エタロン48を通じて伝播され、従来のかすめ入射線回折格子50に入射するが、これと対面して高反射率ミラー52が位置する。一例として、回折格子50は1ミリメートル当たり3000から4000の溝を持つ。要素48、50及び52はそれぞれ調節及びバンド幅峡化アセンブリを構成する 。このアセンブリは図1にも示され、参照番号54が与えられている(“バンド幅峡化”は当分野においては、“線幅峡化”とも呼ばれる)。 【0020】 所望の峡バンド幅出力がバンド幅狭化手段54から放射され、図3の矢印55によって示される方向に伝播する。矢印55は図1にも示されるが、ここでは、これはX軸に平行の方位を持つ。 バンド幅狭化手段54はまたレーザー出力55の中心波長を所定の値にし、その後、波長をこの値に正確に保持する(あるいは電子焦点追跡を達成する目的で意図的にこの値から波長を外す)ための装置を提供する。これは要素48、50及び52の任意の1つあるいは幾つかを図3の図面の平面に垂直な軸を中心として回転することによって達成される。例えば、大まかな調節は、ミラー52及び/あるいは回折格子50を回転することで十分に達成できる。微調節はエタロン48のみを回転することによって達成される。実際に使用する場合は、要素50及び52の片方あるいは両方を回転することによって最初に所定の中心波長が確立される。その後、レーザーがこの波長のところに保持、あるいはエタロンの方位のみを選択的に制御することによってこの波長から外れて微調節される。 【0021】 図3に簡略的に示されるごとく、微細位置決め装置56は機械式結合器58によってエタロン48に接続される。微細位置決め装置56に加えられるライン60上の信号に応答して、エタロンの方位がレーザービーム55の波長が所定の値に保持されるように、あるいは電子焦点追跡を遂行するために波長をこの値から指定の量だけ外れた所に移動するように制御される。微細位置決め装置56が制御される方法については後に詳細に説明される。 【0022】 当技術においては、バンド幅狭化手段54によって遂行されるような短波長レーザーの出力の調節あるいはバンド幅峡化を遂行するための幾つかの装置が知られている。これに関しては、例えば、J.ゴールドハー(J.Goldhar)らによってオプティクス レターズ(Optics Letters)、Vol.1、No.6、1977年、12月号、ページ199-201に発表の論文〔不安定共震器間隙を使用するインジェクション ロック、峡バンドKrF放電レーザー(Injection-Locked.Narrow-Band KrF Discharge Laser Using an Unstable Resonator Cavity)〕;T.J.マッキー(T.J.Mckee)らによって、IEEE ジャーナル オブ クゥオンタム エレクトロニクス(IEEE Journalof Quantum Electronics)、Vol.1、QE-15,No.5、1979年5月号、ページ332-334に発表の論文〔TEA稀ガスハロゲン化物エクサイマーレーザーのスペクトル峡化を含む動作及びビーム特性(Operating and Beam Characteristics,Including Spectral Narrowing of a TER Rare-Gas Halide Excimer Laser)〕;K.R.ジャーマン(K.R.German)によってアプライド オプティクス(Applied Optics)、Vol.20、No.18、1981年9月15日号、ページ3168-3171に発表の論文〔CWレーザー用かすめ入射角チューナー(Grazing Angle Tuner for CW Lasers)〕;及びR.G.カロ(R.G.Caro)らによって、ジャーナルフィジクス D:アプライド フィジクス(Journal Physics D:Applied Physics)、15、1982年、ページ767-773に発表の論文〔峡バンド幅及び限定回折発散を持つ単純な可調節KrFレーザーシステム(A Simple Tunable KrF Laser System with Narrow Bandwidth and Diffraction-Limited Devergence)〕を参照すること。 【0023】 上述のガルバノメータモータ30及び32(図1)を制御するためのフィードバックループは連続電気入力信号を必要とする。しかし、パルスレーザー12は検出器24(図2)を介してこのような信号を提供する能力を持たない。従って 、装置10には連続波(CW)レーザー62(例えば、6328オングストロームにて動作する標準ヘリウム-ネオンレーザー)も含まれる。レーザー62は前述の2484オングストロームのビームと同軸の連続基準ビームを提供するように設計される。一方、6328オングストロームビームは検出器24によって連続電気信号に変換され、フィードバックループに加えられるが、このループがそれぞれガルバノメータモータ30及び32を制御する。 【0024】 検出器24によって6328オングストロームの基準ビームが検出器24との所定の整合から外れていることが検出されるたびに、所定の整合を再確立するために修正信号がモータ30及びあるいはモータ32に加えられる。この6328オングストロームビームと2484オングストロームビームは装置10内で同軸的に伝播されるため、この修正信号は2484オングストロームの露出ビームの所定の整合を再確立するのに使用することができる。 【0025】 CWレーザー62(図1)の出力は高反射率ミラー64を介して二色性ミラー66に向けられる。ミラー66は6328オングストロームの入射ビームを矢印68によって示されるX方向経路に沿って右方向に反射するように設計される。ミラー66はまたアセンブリ54から放射される2484オングストロームの入射ビームの殆どを同一のX方向に沿って伝送するように設計される。従って、矢印68は6328オングストロームのCWビーム及び2484オングストロームのパルスビームが同軸的に伝播し続けてガルバノメータミラー20及び22に入射する進路を示す。ミラー20及び22によって反射された後、この同軸ビームは装置10から外に伝播されるが、この同軸ビームが前述のビーム18を構成する。 【0026】 図1のバンド幅狭化手段54から放射される2484オングストロームのビームの少量(例えば、約1パーセント)がミラー66によって矢印69によって示されるY軸に沿って波長計70に向けて上方向に反射される。これに応答して、波長計70は差動増幅器72の1つの入力に電気信号を提供する。増幅器72へのもう1つの入力は制御コンピュータ38によって供給される。こうして、リード60に加えられる増幅器72の出力によってバンド幅狭化手段54の出力がコンピュータ38によって規定される所定の中心波長に保持される。また、後に詳細に説明されるごとく、コンピュータ38によって増幅器72に加えられる信号を使用して、電子焦点追跡を行うために中心波長を意図的に変化させることも可能である。 【0027】 さらに、前述のコンピュータ38(図1)のバンド幅狭化手段54から放射されるビームの中心波長を簡単に制御及び調節することのできる能力はここに説明の装置の全体としての設計及び製造を簡単にする。これは、実際には、石英ガラスのみで製造されるレンズアセンブリを所定の仕様に正確に製造することは非常に困難であるためである。従来の方法では、製造させたレンズアセンブリが装置に搭載され、このアセンブリが指定の中心周波数にてテストされ、再びバンド幅狭化手段が分解され、さらに調節のための加工、ポリシング等が行われる。 【0028】 次に、レンズアセンブリが再度搭載され、さらに装置のテストが行われ、これがレンズアセンブリと中心波長が概ね合致するまで反復される。このように固定の中心波長を得るために機械的にレンズアセンブリの調節及びマッチングを行うことは、時間的にもコスト的にも明らかに割高となる。 【0029】 これに対し、本出願人の設計によると、多くの場合、石英ガラスのみで製造されたレンズアセンブリを前述の装置に最初に一度搭載するだけで、レンズアセンブリを再度分解することなく装置をほぼ理想的に調節することが可能である。これは搭載されたアセンブリをそのままとし、露出ビームの中心波長をコンピュータ38の制御下で最初に製造されたレンズアセンブリの動作特性と装置の動作波長の間でほぼ最適の合致が得られるように調節することによって達成される。このような機械的でなく電子的な装置の調節は本質的に有利である。 【0030】 装置10から矢印18の方向に放射される2484オングストローム及び6328オングストロームのレーザビームは図2に示される装置14に向けられる。より詳細には、これらビームは装置14内のミラー74に向けられる。ミラー74は6328オングストロームの波長では高度に反射性であり、2484オングストロームの波長では高度に透過性であるように設計される。結果として、6328オングストロームのビームは殆どは矢印76の方向に右に向けられ、2484オングストロームビームの殆どは矢印78の方向に下方に向けられる。 【0031】 図2の矢印76の方向に伝播される6328オングストロームビームはフィルタ80を通過する。フィルタ80は6328オングストロームビームは通過するが、ミラー74によって矢印76の方向に反射された2484オングストロームビームはブロックするように設計される。従って、6328オングストロームのCWビームのみが検出器24に当たる。一方、前述したごとく、検出器24は図1に示されるフィードバックループに連続電気信号を提供し、ガルバノメータモータ30及び32の動作を制御する。こうして、テーブル16に対する6328オングストロームビーム76の方位、従って、同軸的に置かれる2484オングストロームの露出ビーム78の方位がテーブル14が振動している間でも一定に保持される。 【0032】 図2の矢印78の方向に下方に伝播する2484オングストロームビームは可調節視野ストップあるいは間隙82に向けられる。一例として、ストップ82の所のビームの直径はストップの開口部の直径よりも大きく設計される。 【0033】 実際には、図2のストップ82を通って伝播される2484オングストロームビームの等強度線はストップ内の開口部に対して非対称的となる。さらに、この非対称性はパルスによって異なる傾向を持つ。補正しなければ、この要因によって、照射の均質性が満たされず、この結果、ウエーハ40の表面の所の線幅の制御が不十分となる。 【0034】 本発明の一面によると、ストップ82に向けられた少しサイズの大きなビームが少量ΔX及びΔZだけデイザー、つまりシステマテイクに移動される。例えば、数百の連続レーザーパルスを含む露出では、この移動によってストップ82を通じて伝播されるパルスの面積の平均化を行うことが可能である。この平均化によって、ウエーハ40の表面により均質の照射が得られることとなる。 【0035】 面積の平均化を遂行するためにストップ82(図2)に向けられる2484オングストロームビーム78の移動はコンピュータ38(図1)によって制御される。コンピュータ38によってリード86及び87を介してガルバノメータモータ30及び32に加えられる信号によって、ストップ82内の開口部を横断してのビームの前述の移動ΔZ及びΔXが実現される。 【0036】 ストップ82を通過する2484オングストロームビーム78は図2に示されるミラー88に当たる。このミラーは入射ビームの比較的小さな量(例えば、約1パーセント)を反射するように設計される。こうして反射された部分は、フィルタ90を通過して光ダイオード92に向けられる。フィルタ90は2489オングストロームの光は通過するが、6328オングストロームの光はブロックするように設計される。こうして、ストップ82によって伝播されたビームの6328オングストローム成分の全てが光ダイオード92に当たることから阻止される。 【0037】 図2の光ダイオード92は吸収線量制御及びレーザートリガ装置の部分を構成する。光ダイオード92は個々の2484オングストロームパルスの部分を標本し、これに応答して、光積分器94(図1)に加えられる電気信号を生成する。制御コンピュータ38は第2の制御入力信号(吸収線量制御信号)を光積分器94に供給する。一方、積分器94の出力はトリガ信号としてレーザー12に加えられる。 【0038】 吸収量線制御及びレーザートリガ装置の動作は以下の通りである。コンピュータ制御の下で、ステッピングテーブル16が微細位置決め装置95によってレジストを被覆されたウエーハ40のチップ位置がレチクル84上に含まれるパターンに露出される位置に移動される。(一例として、このレチクルはこの上に単一チップパターンを含むものと仮定される。)コンピュータ38は次に積分器94を起動し、2484オングストロームのパルスの放射を開始するためにレーザー12をトリガする。光ダイオード92によって標本された個々のパルスの部分及びこれを表す信号が積分器94に加えられる。積分器94がコンピュータ38によってセットされた所定の吸収線量が達成されたことを検出すると、レーザー12にパルスの放射を停止する信号が送られる。次に、テーブル16がウエーハ40上の別のチップ位置を次の露出のための位置に位置するように移動される。 【0039】 露出はコンデンサーレンズ110、ウエーハ40上に写されるパターンを含むレチクル84、及び投影レンズ108を通じて行われる。次にレンズ110に対する照射の仮想源について説明する。 【0040】 図2に示されるごとく、ミラー88を通過して伝播される2484オングストロームビーム78はコリメーティングレンズに向けられる。レンズ96はビームを小さなスポットに集め、これをミラーあるいはプリズム要素98に向ける機能を持つ。この小さなスポットは照射の第1の仮想源を構成する。要素98はビームをここでは視野レンズ100及び追加のレンズ要素102及び104によって代表される走査レンズアセンブリ101の視野のエツジに偏向するように設計される。一方、このビームは、走査ミラーアセンブリ106によって走査レンズアセンブリ101に反射される。 【0041】 投影レンズ108の入射ひとみの十分な照射、従って、ウエーハ40上の適切な像特性を達成するためには、レンズ108の入射ひとみの直径の約50から75パーセントを照射することが有効である。一例として、開口ストップ109(図2に簡略的に示される)として定義される入射ひとみは直径約100ミリメートルとされる。従って、これより、単に小さな第1の仮想源をレンズ108に再照準するだけでは、レンズ108の入射ひとみの十分な照射を得ることができないことが明かである。 【0042】 本発明の一面によると、投影レンズ108に実際に再照準される仮想源の有効サイズがレンズ96によって生成される第1の仮想源の有効サイズよりも大きくなるように増大される。これは走査レンズアセンブリ101及び走査ミラーアセンブリ106によって遂行される。後に詳細の説明のこれらアセンブリの動作によって、有効仮想源のサイズ及び形状の両方がコンピュータ38からアセンブリ106に加えられる信号の制御下で選択的に変化される。重要なことは、このような変化を与える過程において、2484オングストロームのレーザー光が説明の装置内で消費されないことである。従って、投影レンズ108の入射ひとみに再照準される照射のサイズ及び形状が変化されても得られる露出光の全てがウエーハ40の表面に照射される。 投影レンズ108の入射ひとみの照射部分のサイズ及び形状の両方を変化できる能力は、これによって、例えば、ウエーハ40上の幾つかの重要な部分の分解能を最適化するように照射を調節でき、またウエーハ40上のレジスト層の非線形特性を最大限に活用できるという点において非常に大きな意味を持つ。 【0043】 図2に簡略的に示される走査ミラーアセンブリ106はミラー112及び2つの独立的に回転可能な回転シャフト114及び116を含む。シャフト114はX軸に対して平行に方位し、一方、シャフト116はX軸に対して垂直方位する。シャフト116の後方及び前方への回転によって、ミラー112が2つの頭を持つ矢印118によって示されるように後方及び前方にロックされる。このロックキングが起こるのと同時に、シャフト114が、矢印120にて示されるように回転される。換言すると、ミラーがシャフト116の回転に応答してロックすると、ロックキングミラーが独立的にシャフト114によって回転される。この結果、レンズ100のすぐ左のY-Z平面内の比較的大きな領域Aが図1のレーザー12によって供給される連続パルスによって実質的に満たされ、大きな面積の仮想源が形成される。一例として、ウエーハ40上のチップ位置が露出される個々の期間内にレーザー12によって数百の連続パルスが供給される。 【0044】 前述の大きな面積の仮想源のサイズはシャフト116によってミラー112がロックされる程度を変えることによって変化することができる。これに加えて、仮想源の形状はミラー112がロックされている間のシャフト114の回転速度を変えることによって変化できる。 【0045】 レンズ100(図2)の左に形成される比較的大きな面積の仮想源から放射される光は再照準レンズ110によってレチクル84上に含まれるパターンを照射するように向けられる。レチクル48を通過して伝播される光はレンズ109によってウエーハ40の表面上のチップ位置に映像される。一例として、レンズ109はウエーハ表面上にレチクルパターンの減少変形(例えば、5から1への減少)を形成する。 【0046】 標準露出システムにおいては、通常、焦点の追跡は機械的にプロジェクションレンズからウエーハまでの距離を変化することによって達成される。通常、これは、システムの光学コラムを移動するか、あるいはウエーハを移動することによって行われる。いずれの場合も調節には時間がかかりシステム内に好ましくない機械的共振が与えられる。 【0047】 本発明の一面においては、焦点の追跡は非機械的に迅速に遂行される。この能力は単一光学材質から製造されるレンズが使用されることによって得られる。このようなレンズは、色収差を補正されたレンズと異なり、波長と焦点距離との間にほぼ線形的な関係を示す。従って、レーザー12(図1)の波長を電子的に変化させることによって、投影レンズ108(図2)の焦点面をも変化することができる。 【0048】 焦点追跡装置の動作は以下の通りである。最初に、標準焦点センサ111が投影レンズ108とウエーハ40の表面との間の距離が所定の値から異なるか否かを検出する。例えば、この距離が例えば、ウエーハ40のそりなどに起因して1ミクロンだけ変化(減少)されたものと仮定する。すると、この変動を表す信号がリード122を介してコンピュータ38に送られる。これに応答して、コンピュータは前述の周波数制御ループ内に含まれる差動増幅器72(図1)に対応する修正信号を加える。すると、増幅器72によって調節及び線幅狭化アセンブリ54から放射されるパルスの中心波長を増加するための信号が加えられる。一例として、中心波長が0.1オングストロームだけ増加される。これによって、レンズの焦点距離が1ミクロンだけ減少され、こうして、レンズ-ウエーハ間距離の想定された1ミクロンの減少が正確に補正される。 【図面の簡単な説明】 【図1】 一体となって本発明による短波長光学リソグラフィーを達成するための装置を簡略的に示す図である。 【図2】 一体となって本発明による短波長光学リソグラフィーを達成するための装置を簡略的に示す図である。 【図3】 図1の一部の特定の装置をより詳細に示す図である。 【符号の説明】 12 パルスレーザー手段 54 調節及びバンド幅狭化手段 108、110 レンズアセンブリ 62 レーザー 55、64 同軸的に伝播するための装置 20、22 二次元走査アセンブリ 24 レーザーパルス整合保持手段 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 (1)訂正事項a 特許請求の範囲第5、6、11項を削除する。 (2)訂正事項b 上記特許請求の範囲の一部の削除に伴い、特許請求の範囲第7,8、9、10、12項を、同第5、6、7、8、9項と、項番を繰り上げる。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲第9項(訂正前第12項)について、「デバイスを製造する方法」を「半導体材料からなる加工物から集積回路デバイスを製造する方法」に、「レーザ放射」を「KrFエクサイマーレーザーパルス放射」に、「レンズアセンブリ」を「石英ガラスのみのレンズアセンブリ」に、「加工物」を「レジスト層を有する加工物」に、「前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を十分に狭めるステップ」を「前記レンズアセンブリに前記放射を向ける前に、バンド幅を狭くされた放射の各パルスのパワーが少なくとも5ミリジュールではあるが、前記アセンブリが許容できるほど低い色収差を示すように前記放射のバンド幅を電力半値点で、0.1オングストローム以下のバンド幅に十分に狭めるステップ」に、それぞれ、訂正する。 |
異議決定日 | 2000-10-17 |
出願番号 | 特願平5-287158 |
審決分類 |
P
1
652・
161-
YA
(H01L)
P 1 652・ 121- YA (H01L) P 1 652・ 532- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中西 一友、松本 邦夫 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
綿貫 章 森 正幸 伊藤 昌哉 辻 徹二 |
登録日 | 1998-03-20 |
登録番号 | 特許第2760740号(P2760740) |
権利者 | エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション |
発明の名称 | ディープ紫外線リソグラフィー |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 吉澤 弘司 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 長尾 達也 |
代理人 | 吉澤 弘司 |