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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1059383
審判番号 審判1998-15083  
総通号数 31 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-09-24 
確定日 2001-01-29 
事件の表示 平成2年特許願第314805号「コンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置」拒絶査定に対する審判事件(平成4年8月6日出願公開、特開平4-216354)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (手続の経緯、本願発明)
本願は、平成2年11月20日(優先権主張平成2年2月16日、平成2年10月5日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、原審及び当審において補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「(1)コンパクトカセットテープに記録された情報を読み出すコンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置であって、
磁気ヘッドが固定される磁気ヘッド装着空間と、磁気ヘッド装置をカセットデッキの移動シャーシに取付けるために前記移動シャーシに形成された孔に対応して設けられる一対のビス孔と、を有するヘッド取付け台と、
カセットハーフの小開口部に挿入されてテープの走行を規制する一対のテープガイド部と、
前記磁気ヘッド装着空間の両側で各々テープの走行を規制する3.79〜3.83mmの溝幅を有する一対のヘッドガイド部とを備え、
前記テープガイド部及び前記ヘッドガイド部は前記ヘッド取付け台とともに合成樹脂により一体成型されることを特徴とするコンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置。」(以下、「本願発明」という。)
(引用例)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-247950号公報(以下、「引用例」という。)には、走行するテープの磁気ヘッドに対する接触位置の規制が、補助テープガイドによる規制とその後で行なわれる主テープガイドによる規制の2段階で行なわれるようにし、それによって、上記規制をテープに無理が生じない状態で精度良く行なうことを目的とした、コンパクトカセットを使用する「テーププレーヤー」が記載されている。
そして、上記引用例には以下の事項についても記載されている。
(1)ヘッドベース(21)は、メカシャーシ(2)の上面において前後方向へ一定の範囲内で移動自在に支持されていること。(6頁右下欄16行〜7頁左上欄2行)
(2)ヘッド保持部材(33)は、底板(34)と壁板(35,35’)と上板(36)が合成樹脂により一体に形成されて成り、前記底板(34)の左右両端部に取付孔(37,37’)が形成され、また前記壁板(35,35’)の後端部に主テープガイド(38,38’)が一体に形成されており、該主テープガイドは、前記壁板(35,35’)の後端面に上下方向に長い略コ字形の切欠部(39,39’)を設けることによって形成されていること。(7頁右上欄4〜20行)
(3)磁気ヘッド(43)は、そのヘッド面(44a)が上記2つの主テープガイド(38,38’)の間に位置している状態で上記ヘッド保持部材(33)に保持されていること。(7頁右下欄18行〜8頁左上欄4行)
(4)テープガイド部材(48)は、上記ヘッド保持部材(33)の底板(34)よりひと回り程大きい基部(49)と、該基部(49)の左右両端部から立設された立上部(50,50’)と、該立上部の上方に寄った部分から後方へ向けて突出した略長方形状を為すガイド部(51,51’)とが、合成樹脂により一体に形成されて成り、補助テープガイド(52,52’)は、前記ガイド部(51,51’)の後端部の上下両端部を除く部分が成すテープ接触面(53,53’)と、該テープ接触面の上下両端から後方へ突出した規制片(54,54’,55,55’)とから成ること。(8頁左上欄8行〜同右上欄4行)
(5)テープガイド部材(48)における基部(49)の立上部(50,50’)寄りの位置に取付孔(56,56’)が形成されており、前記基部(49)の下面に位置決め突部(57)が形成されていること。(8頁右上欄14〜17行)
(6)テープガイド部材(48)は、その基部(49)の下面に設けられた位置決め突部(57)をヘッドベース(21)に形成された位置決め孔(59)に嵌合し、かつ、その他の図示しない位置決め手段によって、ヘッドベース(21)の主部(21a)の上面に対して前後方向及び左右方向の位置決めがなされ、また、ヘッド保持部材(33)は、テープガイド部材(48)の基部(49)の上面において、図示しない位置決め手段によりテープガイド部材(48)に対して位置決めがなされると共に、前記ヘッド保持部材(33)の取付孔(37,37’)と前記テープガイド部材(48)の取付孔(56,56’)にこの順序で挿通されたねじ(60,60’)の先端部が、前記ヘッドベース(21)に形成された螺孔(58,58’)に螺合され、これによって、前記ヘッド保持部材(33)とテープガイド部材(48)がヘッドベース(21)に固定されること。(8頁左下欄10行〜同右下欄5行)
(7)主テープガイド(38,38’)と補助テープガイド(52,52’)を別部品でなく一体に形成してもよいこと。(13頁右下欄9〜12行)
ここで、上記(7)に関する記載について検討すると、主テープガイド(38,38’)は、ヘッド保持部材(33)に保持される磁気ヘッド(43)に対して、磁気テープ(15)を高精度に位置規制するものであり、また、ヘッド保持部材(33)と主テープガイド(38,38’)は、合成樹脂により一体に形成されていることが前提となっているから、上記(7)に関する記載は、補助テープガイド(52,52’)と主テープガイド(38,38’)をヘッド保持部材(33)と合成樹脂により一体に形成することを意味するものと解するべきである。
そして、磁気ヘッドを保持するヘッド保持部材(33)、補助テープガイド(52,52’)及び主テープガイド(38,38’)は、磁気ヘッド装置を構成していることが明らかである。
してみれば、上記引用例には以下の発明が記載されていることになる。
「コンパクトカセットテープに記録された情報を読み出すコンパクトカセットテープ用磁気へッド装置であって、
磁気ヘッド(43)が固定される磁気ヘッド装着空間と、磁気ヘッド装置をテーププレーヤーのヘッドベース(21)に取付けるために前記ヘッドベースに形成された螺孔(58,58’)に対応して設けられる一対の取付孔(37,37’)と、を有するヘッド保持部材(33)と、
カセットハーフの窓(13)に挿入されてテープ(15)の走行を規制する一対の補助テープガイド(52,52’)と、
前記磁気ヘッド装着空間の両側で各々テープの走行を規制する一対の主テープガイド(38,38’)とを備え、
前記補助テープガイド及び前記主テープガイドは前記ヘッド保持部材とともに合成樹脂により一体成型されるコンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置。」
(対 比)
そこで、本願発明(前者)と引用例に記載された発明(後者)とを比較すると、後者における「テーププレーヤー」、「ヘッドベース」、「螺孔」、「取付孔」、「ヘッド保持部材」、「窓」、「補助テープガイド」及び「主テープガイド」は、それぞれ前者における「カセットデッキ」、「移動シャーシ」、「孔」、「ビス孔」、「ヘッド取付け台」、「小開口部」、「テープガイド部」、及び「ヘッドガイド部」に相当するものであるから、両者は、
「コンパクトカセットテープに記録された情報を読み出すコンパクトカセットテープ用磁気へッド装置であって、
磁気ヘッドが固定される磁気ヘッド装着空間と、磁気ヘッド装置をカセットデッキの移動シャーシに取付けるために前記移動シャーシに形成された孔に対応して設けられる一対のビス孔と、を有するヘッド取付け台と、
カセットハーフの小開口部に挿入されてテープの走行を規制する一対のテープガイド部と、
前記磁気ヘッド装着空間の両側で各々テープの走行を規制する一対のヘッドガイド部とを備え、
前記テープガイド部及び前記ヘッドガイド部は前記ヘッド取付け台とともに合成樹脂により一体成型されるコンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置。」
である点において実質的に一致しており、次の点において相違する。
相違点
ヘッドガイド部が、前者においては、3.79〜3.83mmの幅の溝を有しているのに対して、後者では溝幅がどの程度か明らかでない点。
(当審の判断)
以下、上記相違点について検討する。
ガイド部を有する磁気ヘッド装置において、前記ガイド部の溝幅をテープの幅と略等しくすることは、例示するまでもなく周知の事項であり、しかも、前記溝幅を3.83mmにすること、又はテープ幅より3〜20μm広くすることも従来から通常行なわれていたことである〔例えば、特開昭62-67758号公報、及び実願昭58-35915号(実開昭59-142911号)のマイクロフィルム参照〕から、引用例に記載された発明におけるヘッドガイド部の溝幅を3.79〜3.83mmに特定することは、当業者が必要に応じて適宜選定することができた設計的事項である。
しかも、本願発明を全体的にみても、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項から当業者が当然予測できる範囲を超える格別の作用・効果を見出すことができない。
なお、審判請求人は、引用例の上記(7)に関する記載について、「ヘッド取付け台とヘッドガイド部とテープガイド部の3点を一体成型することは、一切示唆されていないと解すべきである。」と主張している。
しかしながら、引用例の上記(7)に関する記載の解釈については、上記「(引用例)」の項(6頁15行〜7頁5行)において既に述べたとおりである。
そして、仮に引用例の上記(7)に関する記載が、請求人の主張のとおりに解されるべきであったとしても、上記引用例に記載された発明の実施例として開示された磁気ヘッド装置において、ヘッド保持部材(33)とテープガイド部材(48)とを一体成型して本願発明のように構成することは、上記(7)に関する記載、即ち、2種類のテープガイドを一体に成型することを示唆する記載、に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(むすび)
以上のとおりであって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-10-26 
結審通知日 1999-11-09 
審決日 1999-11-25 
出願番号 特願平2-314805
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 卓哉山澤 宏  
特許庁審判長 高瀬 博明
特許庁審判官 田良島 潔
犬飼 宏
発明の名称 コンパクトカセットテープ用磁気ヘッド装置  

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