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審決分類 審判 訂正 発明同一 訂正する C08F
審判 訂正 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正する C08F
管理番号 1061992
審判番号 訂正2002-39050  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-02-18 
確定日 2002-05-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3091976号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3091976号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第3091976号は、平成2年11月15日に特許出願され平成12年7月28日にその特許の設定登録がなされ、その後、山口雅行より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、平成13年12月25日付けで、「訂正を認める。請求項1に係る特許を取り消す。」旨の異議の決定がなされた。
本件請求人は、該異議の決定を取り消すべき旨の訴をし、その訴は平成14年(行ケ)75号として審理中である。
本件は平成14年2月18日に審判請求されたものである。

[2]訂正の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第3091976号の明細書(願書に添付された明細書)を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち次の訂正事項のとおり訂正する。
訂正事項a
請求項1中の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く)」を、『光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)』と訂正する。
訂正事項b
平成12年4月21日付手続補正書で補正された明細書第3頁第15行(特許公報第2頁右欄第8〜9行)の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く)」を、『光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)』と訂正する。

[3]訂正の適否
1.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項bは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを一致させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、又、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものではない。

2.独立特許要件の存否
上記[1]手続きの経緯のとおり、本件特許は、特許異議申立がなされ、「請求項1に係る特許を取り消す」旨の特許異議の決定がなされているので、本件訂正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかを、特許異議申立人が提出した甲第1号証(特開平4-80213号公報参照、以下、「先願明細書1」という。)及び甲第2号証(特開平3-193313号公報参照、以下、「先願明細書2」という。)及び主張した理由について検討する。
2-1.訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1に係る発明は、審判請求書に添付した訂正明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。
『【請求項1】(A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)100重量部に対して、
(B)一般式

(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基またはメトキシ基を示す。)
で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び
(C)10時間半減期の温度が50〜95℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物。』
2-2.先願明細書1及び先願明細書2の記載事項
先願明細書1には次の事項が記載されている。
(a)「主成分として、一般式(I)

(Rは、HまたはCH3)
の化合物とチオール基含有の化合物とを反応させて得られる化合物10〜90重量部とラジカル重合可能なモノマーもしくはオリゴマー90〜10重量部とを含むプラスチックレンズ用組成物。」(特許請求の範囲)
(b)「次にチオール基含有の化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
モノチオール基含有の化合物
・・・・・・・
ジチオール基含有の化合物
1,2-エタンジチオール・・・・・これらの化合物1モルに対して一般式(I)の化合物を基本的には2倍モルとを反応させて得られる化合物。」(第3頁左上欄第1行〜第4頁左上欄第3行)
(c)「本発明のプラスチックレンズ用組成物において、一般式(I)とチオール基含有の化合物とを反応させて得られる化合物が多すぎると、高粘度となり、また、硬化物はもろくて耐衝撃性が低下する物が多い。少ないときには耐熱性、表面硬化が低下する。・・・・・上記の理由のため組成物中10〜90重量部、好ましくは、30〜70重量部とするのが良い。」(第6頁右下欄第13行〜第7頁左上欄第2行)
(d)「本発明のプラスチックレンズ用組成物の硬化に際して使用される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物・・・・・2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニフォスフィンオキシド等の光重合開始剤が挙げられる。これらは1種もしくは2種以上の混合系で使用される。この重合開始剤の配合割合は樹脂成分の合計100重量部に対して、通常、0.005〜5重量部である。」(第7頁左上欄第7行〜同頁右上欄第1行)
(e)「〔実施例〕
以下、実施例及び比較例を挙げ、本件発明をさらに詳しく説明するが、これらに本発明は限定されるものではない、なお、単量体の略号は次の通りである。
・・・・・
A1 :1-イソシアネート-エチルアクリレート
・・・・・
UA1:A1とベンジルチオールとを等モル反応させたチオウレタンアクリレート
UA2:A2(注、「A1」の誤記と認められる。「A2」の記載はない。)と2,2-ビス(4-メルカプトエトキシフェニル)-プロパンを1:2モルで反応させたチオウレタンジアクリレート
M2 :メタクリル酸メチル
・・・・・
M4 :2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-メタクリロオキシエトキシフェニル)-プロパン
・・・・・
重合例1(実施例1)
UM1 60部、M2 40部、2,4,6-トリメチルベンゾイルフォスフィンオキサイド0.03部、t-ブチルパーオキシイソブチレート0.1部、トリデシルフォスフェート0.2部、2-ヒドロキシベンゾフェノン0.2部を混合し、室温でよく撹はんした後、50mmHgに減圧して10分間脱気した。
この組成物を、鏡面仕上げした径70mmの2枚のガラスを、厚み4mmになるように組合せ、周囲をポリ塩化ビニル性ガスケットで囲んだ鋳型中に注入した。
次いで、鋳型の両面から2kwの高圧水銀灯により、2000mj/cm2の紫外線を照射した後、130℃で2時間加熱した。その後、型よりレンズを脱型し、100℃で1時間加熱してアニール処理した。このようして製造したレンズを下記評価法で評価し、その結果を第1表に示した。
・・・・・
重合例2(実施例2)
UM2 50部、M4 50部、ジイソプロピールパーオキシカーボネート2部、2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.1部を混合し、室温でよく撹はんした後、50mmHgに減圧して10分間脱気した。
重合例1と同様に鋳型に注入し、35℃で6時間、50℃で4時間、70℃で3時間、85℃で5時間保存して成形した。型よりレンズを脱型し、100℃で1時間加熱してアニール処理した。このようにして製造したレンズについて重合例1(実施例1)と同様に評価し、その結果を第1表にしめした。」(第7頁右上欄第14行〜第8頁右下欄第13行)
先願明細書2には次の事項が記載されている。
(a)「活性エネルギー線の照射により、または活性エネルギー線の照射と加熱処理とを併用してモノマーを重合させプラスチックレンズを製造する方法において、活性エネルギー線の照射と照射停止とからなる予備重合工程を少なくとも一回行なった後、活性エネルギー線の照射を行なって重合を間完了させることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。」(特許請求の範囲1)
(b)「このような本発明の方法を採用することにより、凹レンズ中心部の湾曲を抑えることが可能となり、面精度の良いレンズが得られる。一方硬化に伴う応力歪を考慮せず、連続的に活性エネルギー線を照射した場合には、残留応力歪の大きなレンズとなり、面精度の悪いレンズとなる。」(第3頁左上欄第6〜11行)
(c)「本発明に用いる光開始剤としては、ベンゾインブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシアセトフェノンなどの分子内結合開裂型、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルなどの分子間水素引抜き型等の光開始剤が使用可能である。また光増感剤としてジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いると光重合速度が向上する。また、有機過酸化物等の熱触媒も併用できる。」(第3頁右上欄下から第3行〜同頁左下欄第5行)
(d)「実施例4
イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物物40重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成化学工業(株)製”アロニックスM-245”)36重量部、ヘキサンジオールジアクリレート25重量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド0.05重量部、t-ブチルパーオキシイソブチレート0.03重量部、2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.02重量部を混合し、そのモノマー組成物を実施例1と同一のモールド型に注入した。
次いで予備重合工程としてモールド型の両面20cmの距離から3KWのメタルハライドランプにより1対のランプ間を2m/min の速度で通過させた。通過後20分間、室温で放置した。その後、連続して、1分間、前記ランプで照射を行ない、ガラス型をはずさずに110℃で1時間硬化を行ない重合を完結させた。その結果を第1表に示した。
さらに、120℃1時間のアニールを行なったレンズについて、同様な評価を行ない、その結果を第1表に示した。」(第4頁左下欄第12行〜同頁右下欄第15行)
(e)「[発明の効果]
本発明によれば、短時間光硬化レンズの欠点であった面精度の改善が著しい。これによって、プラスチックレンズの製造時間が短縮され、ガラス型の使用サイクルが増加し、ガラス型の必要個数を減らすことが可能となった。さらに、生産スペースを削減でき、生産コストの低減への貢献度は極めて高い。」(第5頁右下欄第1〜8行)
2-3.対比・判断
(本件発明が特許法第29条の2の規定に該当するか否かについての検討)
訂正後の本件請求項1に係る発明(以後、「本件発明」という。)と先願明細書1に記載された発明(以後、「先願発明1」という。)とを対比検討する。
本件発明1と先願明細書2に記載された発明(以後、「先願発明2」という。)とを対比検討する。
先願発明1は、特定の化合物を含有するプラスチックレンズ用組成物(摘示事項a)であって、その組成物を構成する主要な化合物は、本件訂正により請求項1から除かれた「イソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物」である。
そして、先願明細書1を検討しても、その特定の化合物以外の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体」については何も記載されていない。
したがって、もはや、本件発明が先願明細書1に記載されている発明とすることはできない。
先願発明2は、特定のモノマー組成物を光重合してレンズを製造することが記載されているが(摘示事項d)、そのモノマー組成物は、本件訂正により請求項1から除かれた「イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物」である。
したがって、もはや、本件発明が先願明細書2に記載されている発明とすることはできない。
(本件明細書の記載が特許法第36条の規定を満たすか否かについての検討)
特許異議申立人は、訂正前の本件明細書の記載が不備であるという根拠として、「オリゴマー」いう語が具体的にどのような化合物を表しているかを発明の詳細な説明の項で何も説明されていないことを挙げて、先願明細書1及び先願明細書2に記載されている樹脂成分との区別がつかないとし、また、訂正前の本件請求項1は、「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。)」という非常に広い表現で規定されているが、その実施例では、2つの単量体が用いられているだけであり、不当に広い範囲を包含しているとしているので、この点について検討する。
「オリゴマー」いう語は、技術的に確立した語とすることができ(特許異議申立人が提出した甲第3号証)、この語を普通の意味で解釈しても、上記本件訂正により、本件発明の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。・・・・・除く)」は、甲第1号証或いは甲第2号証に記載された樹脂成分との異同を判断することができる。
単に、特許請求の範囲の記載が実施例の記載に比して不当に広いという理由だけでは、明細書の記載が不備であるとすることはできない。
したがって、もはや、訂正後の本件明細書には、特許異議申立人が主張する明細書の記載不備はない。
2-4.むすび
また、他に本件訂正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすべき理由を発見しない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第126条第1項ただし書き、同条第2項第3項の規定に適合する。

[4]むすび
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光学部品用硬化性組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)100重量部に対して、
(B)一般式

(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基又はメトキシ基を示す。)
で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び
(C)10時間半減期の温度が50〜95℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化する光硬化性組成物に関し、特にレンズ、プリズム、ミラー及び光ディスクなどの光学部品の製造に適する注型重合用の光硬化性組成物に関するものである。
【従来の技術】
光硬化性樹脂に活性エネルギー線として、水銀ランプなどの紫外線を照射してプラスチックレンズを製造する方法は、既に提案された(特開昭61-194401号、特開昭63-207632号公報等)。この方法は、紫外線照射で短時間に硬化できる利点があるが、硬化樹脂が内部均質性や面の転写精度が充分でなく、また一般に、得られる硬化樹脂の透明性や色相が、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの重合体と較べて劣る欠点があった。そのために、従来のこの種の紫外線硬化性樹脂を用いたレンズ等の光学部品は、実用上で多くの問題があった。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の光学部品製造用の光重合性組成物の上記の欠点を改良しようとするものであり、特に内部均質性、面の転写精度、透明性及び色相等の特性に優れた硬化物を与える光硬化性組成物、好ましくは注型重合による光学部品の製造に適する光硬化性組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、光重合性単量体に特定の光重合開始剤と特定の有機過酸化物とを特定の割合で含有せしめた光硬化性組成物によりその目的を達成することができたものである。
すなわち、本発明の硬化性組成物は、(A)光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)100重量部に対して、
(B)一般式

(式中、Xはメチル基、メトキシ基又は塩素原子を示し、nは2又は3の数を示し、Rはフェニル基又はメトキシ基を示す。)
で表わされる少なくとも1種の光重合開始剤を0.01〜0.3重量部、及び
(C)10時間半減期の温度が50〜95℃の範囲にある有機過酸化物を0.02〜0.5重量部含有してなる光学部品用光硬化性組成物である。
本発明で用いられる光重合性のジエチレン性不飽和単量体としては、たとえばp-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン、m-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン、p-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルチオ〕キシリレン、m-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシエチルチオ〕キシリレン、4,4′-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕ジフェニルスルフォンなどのイオウ含有ジ(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、2,2-ビス〔4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル〕プロパン、そのハロゲン誘導体、2,2-ビス〔4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕プロパン、そのハロゲン誘導体等のビスフェノールA骨格含有ジ(メタ)アクリレート類、m-ビス〔(4-ビニルフェニル)メチルチオ〕キシリレン、β,β′-ビス〔(4-ビニルフェニル)メチルチオ〕ジエチルエーテルなどのスチレン系化合物等があげられる。特に好ましいそのジエチレン性不飽和単量体は、p-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレン、m-ビス〔β-(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ〕キシリレンなどのイオウ含有ジ(メタ)アクリレート類である。
なお、本明細書に記載の「(メタ)アクリロイル」、又は「(メタ)アクリレート」は、アクリロイルとメタアクリロイルの総称、又はアクリレートとメタクリレートの総称である。
本発明で用いられる(B)光重合開始剤の前記一般式(I)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6-ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどがあげられる。特に好ましいその光重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド及びトリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステルである。
これらの光重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。光重合開始剤の使用割合は、ジエチレン性不飽和単量体100重量部に対して0.01〜0.3重量部、好ましくは0.02〜0.2重量部である。光重合開始剤の割合が多すぎると、硬化物(硬化樹脂)の内部均質性が悪くなるばかりでなく、色相も悪くなる。また、その割合が少なすぎると、組成物が充分に硬化しなくなる。
本発明で用いられる(C)有機過酸化物は、10時間半減期の温度が50〜95℃の範囲内にあるものである。その具体例としては、1,1-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)シクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、ターシャリーブチルパーオキシイソブチレートなどのパーオキシエステル類、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類等があげられる。これらの有機過酸化物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
有機過酸化物の配合割合は、ジエチレン性不飽和単量体100重量部に対して0.02〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部である。有機過酸化物の配合割合が多すぎると、硬化物の色相が悪くなるばかりでなく、場合によつては硬化物の機械的物性が低下する。また、その割合が少なすぎると組成物が充分に硬化しなくなる。
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、重合促進剤、重合調節剤、防曇剤、離型剤、その他の添加剤を配合することができる。
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線照射による重合と、加熱重合とを適宜に併用することにより重合硬化させることができる。たとえば紫外線等の活性エネルギー線照射による重合後に、さらに加熱重合する方法、活性エネルギー線照射と同時に加熱して重合する方法、或いは予備的な加熱重合した後に、活性エネルギー線照射する方法等を用いて重合硬化させることができる。これらの重合硬化させる方法のうちで、重合硬化物の硬化度、内部均質性、色相等の点からして、まず紫外線等の活性エネルギー線を照射し、次いで加熱重合する方法が好ましい。
その活性エネルギー線照射用の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが適宜に用いられる。また、加熱重合は、任意の温度を用いることができるが、通常、使用した有機過酸化物の分解温度を考慮して決定される。一般的には、70〜140℃の範囲内の温度が用いられる。
以下に実施例及び比較例をあげてさらに詳述する。これらの例において記載の部は、重量部を意味する。
また、これらの例に記載の硬化物の物性は、下記の試験方法を用いて測定した。
▲1▼ 光線透過率
厚さ2mmの試験片を用いて、500nmの光線の透過率を測定した。
▲2▼ 屈折率及びアツベ数
アツベ屈折計(アタゴ社製)を用いて、25℃で測定した。
▲3▼ 光学歪
東芝歪検査機(東芝硝子社製)で測定し、歪のないものを○、歪のあるものを×と評価した。
実施例1
構造式

て表わされる含イオウメタアクリル系化合物(これを単量体▲1▼という。)100部に、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(「TMDP」という。)0.05部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂社製)0.2部を加え、均一に撹拌混合したのち、脱泡して組成物とした。
この組成物を、鏡面仕上げしたガラス板とシリコンゴムとからなる厚さ6mmの鋳型中へ、アルゴン雰囲気下で注入した。次いで、その鋳型のガラス面より高さ40cmの距離から、出力80W/cmの高圧水銀灯で8分間(ガラス両面からそれぞれ4分間ずつ)紫外線照射した。得られた硬化物を脱型後、エアーオーブン中で100℃で2時間加熱し、無色透明で光学歪のない硬化物を得た。
この硬化物を、物性測定のために切削研磨して測定サンプルの寸法に加工し、その物性を測定した結果は表1に示すとおりであった。
実施例2
実施例1で用いた単量体▲1▼100部の代りに、構造式

で表わされる含イオウメタアクリル系化合物(これを単量体▲2▼という。)100部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調節し、同様にして注型・硬化させたところ、光学歪のない無色透明の硬化物が得られた。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
実施例3
実施例1で用いたt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.2部の代りに、t-ブチルパーオキシピバレート(日本油脂社製)0.2部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化し、光学歪のない無色透明の硬化物を得た。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
実施例4
実施例1で用いたt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.2部の代りに、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製)0.2部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化して光学歪のない無色透明の硬化物を得た。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
実施例5
実施例1で用いたTMDP0.05部の代りに、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル0.05部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化して光学歪のない硬化物を得た。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
比較例1
実施例1で用いたTMDP0.05部の代りに、ベンジルジメチルケタール0.05部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化したところ、硬化物は無色透明にならず、黄色を呈していた。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
比較例2
実施例1で用いたTMDP0.05部の代りに、同化合物0.5部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化したところ、硬化物は無色透明にならず、黄色を呈しており、また光学歪があった。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。
比較例3
実施例1で用いたTMDP0.05部の代りに、同化合物0.005部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型したのち、16分間(ガラス両面からそれぞれ8分間ずつ)、同様の光源で紫外線照射したが、脱型可能な硬化物が得られなかった。
比較例4
実施例1で用いたt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートを全く用いずに、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化させたところ、脱型後、加熱して得た硬化物は、脆くて、切削加工できなかった。
比較例5
実施例1で用いたt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.2部の代りに、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート0.5部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化させたところ、脱型後、加熱して得た硬化物は脆くて、切削加工できなかった。
比較例6
実施例1で用いたt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.2部の代りに、同化合物1.0部を用い、そのほかは実施例1と同様にして組成物を調製し、同様にして注型・硬化させたところ、硬化物は無色透明にならず、黄色を呈しており、かつ光学歪があった。
この硬化物の物性は表1に示すとおりであった。

【発明の効果】
本発明の光硬化性組成物は、内部均質性、面の転写精度、透明性及び色相に優れた硬化物を与えることができ、光学部品の製造に有利に用いることができる。
 
訂正の要旨 訂正事項a
請求項1中の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く)」を、『光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)』と訂正する。
訂正事項b
平成12年4月21日付手続補正書で補正された明細書第3頁第15行(特許公報第2頁右欄第8〜9行)の「光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く)」を、『光重合性のジエチレン性不飽和単量体(オリゴマーを除く。またイソシアネートエチル(メタ)アクリレートとチオール基含有化合物とを反応させて得られる化合物を含むもの、並びにイソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとをモル比1:2で反応させた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレートの混合物を除く)』と訂正する。
審理終結日 2002-04-15 
結審通知日 2002-04-18 
審決日 2002-05-07 
出願番号 特願平2-307121
審決分類 P 1 41・ 534- Y (C08F)
P 1 41・ 161- Y (C08F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野寺 務  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 舩岡 嘉彦
中島 次一
登録日 2000-07-28 
登録番号 特許第3091976号(P3091976)
発明の名称 光学部品用硬化性組成物  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 長谷川 曉司  

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