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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない H01J
審判 全部無効 1項1号公知 無効としない H01J
管理番号 1062308
審判番号 審判1998-35509  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-02 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-10-26 
確定日 2001-03-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2693401号発明「偏向コイルの巻線機及び圧着用導電性部材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続きの経緯
本件特許第2693401号の請求項1ないし7に係る発明についての出願は、平成7年5月15日に特願平7-115894号として特許出願され、平成9年9月5日にその発明について特許の設定登録がなされた後、平成10年10月26日付けで株式会社多賀製作所より特許無効審判の請求がなされたものである。

第2 本件特許発明の要旨
本件特許第2693401号の請求項1ないし7に係る発明は、その特許請求の範囲1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
(イ) 被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構と、線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型とを備えた偏向コイルの巻線機において、
(ロ)線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材と、これらの導電性部材を線材に圧着する手段と、線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極と、
(ハ)移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と、この導電性部材を移動する手段と、この導電性部材と前記圧着手段により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極とを備えるとともに、
(ニ)前記導電性部材を導電性の帯状連続部材で構成し、この帯状連続部材を前記圧着手段へ供給する手段と、帯状連続部材を所定の位置で切断する手段とを備えたこと
(ホ)を特徴とする偏向コイルの巻線機。
【請求項2】 前記帯状連続部材の一部を所定間隔で切り起こして折り曲げたフープ材で形成したことを特徴とする請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項3】 前記導電性部材の移動手段が、移動機構を備えた線材供給機構である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項4】 前記導電性部材の移動手段が、移動機構と導電性部材の把持機構を備えた前記第1の電極である請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項5】 前記新たに線材に圧着した導電性部材と金型との間で線材を切断する手段を備えた請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項6】 前記圧着手段と前記第1の電極とを、軸方向の相対移動機構を備えた相対する一対の部材で構成した請求項1に記載の偏向コイルの巻線機。
【請求項7】 被覆導線からなる線材に圧着部を圧着し、電圧の印加によりこの圧着部を被覆の内側に食い込ませ、所定位置で切断することで被覆導線と電気的に接触した電極を構成するフープ材からなる圧着用導電性部材であって、前記圧着部と、圧着時に線材が圧着部の外側へはみ出すのを阻止する爪とを、前記フープ材の一部を切り起こすことで所定間隔に形成したことを特徴とする圧着用導電性部材。
なお、請求項1の特定事項について、便宜上(イ)〜(ホ)に分節した。

第3 請求人の主張の無効理由の概要
請求人は、甲第1号証乃至甲第37号証を提出し、

商品名「SUPER-VH」あるいは「SUPER-VH型DY型巻線機」(以下「SUPER-VH」という。)は、請求項1ないし7に係る発明の構成要件を充足している(以下、「SUPER-VH」の構成要件充足性という。)が、本件請求項1ないし7に係る発明の特許は、下記の(A)〜(F)の無効理由があるから、特許無効とされるべきである。

無効理由(A)(日立水沢又は特許権者による公然実施)
請求項1乃至請求項7に係る発明は、「SUPER-VH」として、特許権者により「製造」され、本件特許出願(優先日平成6年10月17日、出願日平成7年5月15日)前である少なくとも平成5年11月26日から平成6年10月17日以前の間、株式会社日立水沢エレクトロニクス(以下、「日立水沢」という。)に「貸し付け」られ、繰り返し「使用」されていた、よって、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、日立水沢または特許権者によって、本件特許出願前に日本国内において公然実施をされた発明であり特許法第29条第1項第2号の規定に該当する。
無効理由(B)(松下電子による公然実施)
本件巻線機は、商品名「SUPER-VH」として日本国内において特許権者により製造販売されており、平成5年10月25日以降、松下電子工業株式会社に請求人巻線機と比較の上で販売されていた。
よって、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、本件巻線機の販売により日本国内において公然実施された発明に該当するので、特許法第29条第1項第2号の規定に該当する。
無効理由(C)(日立水沢による公知)
日立水沢では平成5年1月26日前から請求人の製造販売による偏向コイルに用いられる巻線機が使用されていたところ、その後に本件巻線機を借り受け、使用した日立水沢の開示によって、本件巻線機は日本国内において公然知り得たものである。
よって、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、本件巻線機により日本国内において公然知り得た発明に該当するので、特許法第29条第1項第1号の規定に該当する。
無効理由(D)(松下電子による公知)
平成5年10月25日に、松下電子が請求人巻線機と「SUPER-VH」とを対比の上で検討を求めており、その対比の上で「SUPER-VH」の詳細を熟知していた。よって、請求項1請求項7に係る発明は、松下電子が公然知っていた発明、あるいは松下電子からの開示により請求人が公然知っていた発明に該当するので、特許法第29条第1項第1号の規定に該当する。

無効理由(E)(日立マレーシアの調査による公知)
「SUPER-VH」は、日立水沢の子会社であるHCPM(日立マレーシア)で使用され、請求人巻線機と同一工場屋根内に設置されているので相互に自由に見学することが可能である。
平成6年7月12日〜同16日の間に、当工場において「SUPER-VH」が請求人に調査され帰国しているので、その調査内容が日本国内に持ち帰られたことにより、日本国内において公然知られたものとなった。
よって、請求項1請求項7に係る発明は、日本国内において公然知られた発明となり、特許法第29条第1項第1号の規定に該当する。

無効理由(F)(巨名電子の調査による公知)
「SUPER-VH」は、台湾国の巨名電子股 有限公司(以下、「巨名電子」という。)に貸し付け、販売されており、請求人巻線機と相互に自由に見学できるようになっていた。
本件巻線機は、平成6年1月25日〜同2月2日の間、平成6年1月27日〜同2月5日の間、及び、平成6年4月10日〜同17日の間に、巨名電子において請求人に調査され、その調査内容が日本国内に持ち帰られた。
よって、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、請求人により、日本国内において公然知られた発明であるから、特許法第29条第1項第1号の規定に該当する。

第4 被請求人の主張の概要
これに対して、被請求人は、乙第1号証乃至乙第6号証を提出して、

(1)「SUPER-VH」の構成要件充足性
(2)日立水沢または特許権者による公然実施(無効理由(A))、
(3)松下電子による公然実施(無効理由(B)
(4)日立水沢による公知(無効理由(C))
(5)松下電子による公知(無効理由(D))
(6)日立マレーシアの調査による国内公知(無効理由(E)、
(7)巨名電子の調査による国内公知(無効理由(F))について、

それぞれ、おおよそ以下のとおり主張している。

(1)「SUPER-VH」の構成要件充足性について、
甲号各証は、「SUPER-VH」が請求項1に係る発明の構成要件を充足していることさえ証明しておらず、「SUPER-VH」が請求項2ないし7に係る発明の構成要件を充足していることを証明していないことは当然である。

(2)日立水沢または特許権者による公然実施(無効理由(A))について
イ.特許権者(被請求人)は、本件特許出願前に「SUPER-VH」の「製造」を行ったことはあるが、この「製造」は、被請求人の企業内において秘密保持義務を有していない第三者の関与なしになされていたものであって、「公然実施」には当たらない。
ロ.特許権者(被請求人)が、「SUPER-VH」を日立水沢に対し、「貸し渡し」たことについては否定しないが、貸し渡し期間は平成5年12月から平成6年2月の間であり、上記「貸し渡し」は、取引基本契約書(乙第1号証)の第33条に規定する秘密保持義務という制限のもとでなされたものであって、「公然実施」には当たらない。
ハ.日立水沢は、「SUPER-VH」を秘密の状態で「使用」することができた。
ニ.特許権者(被請求人)作成の日立水沢に対する平成5年1月26日付け「御見積書」(甲第3号証)は、単に商談が行われていたことを示しているにすぎず、
土谷実作成の「写真撮影報告書(3)」(甲第4号証)に添付された写真は、平成5年10月製造の「SUPER-VH」を撮影したものであるが、該「SUPER-VH」がマレーシア国の日立マレーシアに輸出・納品されたことを示しているにすぎず、
特許権者(被請求人)作成の「INVOICE」(甲第8号証)、及び、田辺義明及び土谷実作成の「写真撮影報告書(1)写真撮影報告書(2)」(甲第9号証)に添付された写真は、それぞれ、「SUPER-VH」が台湾国に輸出されたこと、及び、台湾国に輸出された該「SUPER-VH」を撮影しているに過ぎず、甲第3,4,8,9号証は、「SUPER-VH」が、日本国内において「公然販売」されたことを証明していない。

(3)松下電子による公然実施、公知(無効理由(B),(D))について
イ.松下電子工業株式会社カラー管(事)部品工場(塚)作成の1993年(平成5年)10月25日付け「捲線機比較導入検討」(甲第30号証)は、松下電子工業による請求人捲線機と特許権者捲線機との比較、導入検討を示しているにすぎず、「SUPER-VH」の購入を証明していない。
ロ.被請求人が、平成6年4月頃「SUPER-VH」の販売に際し、松下電子工業と締結した取引基本契約書(乙第5号証)の第33条によれば、松下電子工業には秘密保持義務が課せられており、
照会申出書及び回答書(乙第6号証の1、2)によれば、松下電子工業の「SUPER-VH」の「使用」による偏向ヨークコイル巻線工程は、第三者に公開し得る事項ではないことから、松下電子に対する「公然販売」の事実は存在せず、
「SUPER-VH」の構成が、平成6年10月17日(優先日)以前に第三者に公開された事実もないことから、平成6年10月17日(優先日)以前に日本国内において「公然知られた」事実も存在しない。

(4)日立水沢による公知(無効理由(C))について
イ.鈴木秀次作成の「主張報告書」(甲第15号証)は、「N社縦型巻線機」に関するものであり、「SUPER-VH」に関するものとはいえず、
特許権者(被請求人)作成の「概略仕様書」(甲第5号証)は、「SUPER-VH」の全ての構成を開示している訳ではなく、
日立水沢の社員河野准之作成の「陳述書」(乙第4号証)によれば、河野准之は、請求人の担当者に上記「概略仕様書」のコピーを渡していないから、甲第15号証は、日立水沢における「SUPER-VH」の「公知性」を証明していない。
ロ.土谷實作成の「陳述書」(甲第19号証)に添付の図面が、平成5年12月当時の「見学」による「SUPER-VH」の構成の記憶だとすれば、これは極めて異例な事態であり、
日立水沢の社員河野准之作成の「陳述書」(乙第4号証)によれば、河野准之は、上記「見学」を拒否しているから、甲第19号証は、日立水沢における請求人の担当者による「SUPER-VH」の「公知性」を客観的に証明していない。
ハ.吉田正勝作成の「陳述書」(甲第29号証)は、日立水沢の元社員が「SUPER-VH」に接触したことを証明しているだけであって、甲第29号証は、日立水沢における請求人による「SUPER-VH」の「公知性」を証明していない。

(5)日立マレーシア、巨名電子の調査による国内公知(無効理由(E)、(F))について
請求人は、日立マレーシア、巨名電子における請求人の担当者による「SUPER-VH」の「見学」を客観的に証明しておらず、請求人の担当者が秘密保持を解除されていたかは、極めて疑問である。

第5 証拠関係

1,請求人による証拠方法
甲第1号証 :電波新聞15面、1993年2月25日、「コイル自動巻線機の製品戦略」の項
甲第2号証 :日刊工業新聞13版11面、1993年11月24日、「鞍型用全回転偏向ヨーク巻線機、日特エンジが発売」の項
甲第3号証 :見積書、品名 金型回転式偏向ヨーク巻線機(日特エンジニアリング(株)から(株)日立水沢エレクトロニクス宛)平成5年1月26日
甲第4号証 :写真撮影報告書(3)、(報告者土谷実、1998年9月7日にマレーシア国バンギ、H.C.P.M社にて撮影とされる)
甲第5号証 :日特ENGINEERING.CO.LTDの松橋、鈴木による「偏向ヨーク専用新型巻線機、SUPERシリーズ、従来をはるかに超越(SUPER)したDY生産設備、(稼働率・良品率・自動化率)の提案、Ver2」との文書
甲第6号証 :「剥離装置」とタイトルのある文書
甲第7号証 :日特エンジニアリング(株)DF推進事業部 事業部長大杉英雄と記載された「当社DY巻線機開発の推移、特色」とタイトルのある文書
甲第8号証 :インボイス、MODEL:SUPER-VH(日特エンジニアリングから台湾ZEMINTRON ELECTRONIC CO.LTDへ)
甲第9号証 :写真撮影報告書(1)(報告者田辺義明、1997年12月9日に台湾高雄巨名電子にて撮影とされる)および
写真撮影報告書(2)(報告者土谷実 1998年4月10日に巨名電子で撮影とされる。
甲第10号証 :SUPER-VHの特許についての報告書、(93年10月28日付け日特エンジニアリング部長大杉英雄から松下電子工業第2事業部宛)
甲第11号証の1 :見積書、品名SUPER-VH型ヨーク巻き線システム(日特エンジニアリングから巨名電子宛)平成5年11月25日
甲第11号証の2 :合約書、民国82年(1993年)12月24日、MODEL SUPER-VH型巻線機
甲第12号証 :日特縦型H巻線機(SUPER-VH)検討報告書、検討期間H5.12.10〜H6.2.8、(6.3.9水沢高橋、6.3.22河野の印あり)
甲第13号証 :お問い合わせ回答の件と称するFAX文書、94.3.8、日立水沢サトマ宛、HCPM Y,SAI
甲第14号証 :SUPER-VHの件と称するFAX文書、94.8.5、HCPM
甲第15号証 :出張報告書、93年2月16日、報告者、多賀製作所 鈴木友次「目的:日立水沢エレクトロニクス、N社縦型巻線機情報収集」(甲第9号証が添付)
甲第16号証の1 :出張旅費精算書、鈴木友次
甲第16号証の2 :領収証、5年1月26日、水岩観光タクシー
甲第16号証の3 :領収証、5年1月27日、水岩観光タクシー
甲第17号証 :出張報告書、93年11月29日、報告者、多賀製作所 鈴木友次「目的:日立水沢エレクトロニクス、181関係タクト短縮について」
甲第18号証の1 :出張旅費精算書、鈴木友次
甲第18号証の2 :領収証、5年11月26日、日高タクシー
甲第18号証の3 :領収証、5年11月26日、駒形タクシー
甲第18号証の4 :領収証、5年11月25日、水沢タクシー
甲第19号証 :陳述書、土谷実、平成12年4月27日、(サインのみ)
甲第20号証の1 :出張(日立水沢エレクトロニクス)旅費精算書、土谷実
甲第20号証の2 :領収書、5年12月16日、水岩観光タクシー
甲第20号証の3 :領収書、5年12月17日、日高タクシー
甲第20号証の4 :領収書、5年12月17日、水岩観光タクシー
甲第20号証の5 :領収書、5年12月16日、千成、多賀製作所宛
甲第20号証の6 :領収書、5年12月16日、LAMANDER
甲第21号証の1 :海外(巨名電子)出張旅費精算書、94.1.25〜2.2、山下和男
甲第21号証の2 :明細表
甲第21号証の3 :海外出張経費支出明細
甲第21号証の4 :出金伝票、94年2月3日、山下和男
甲第21号証の5 :領収書、6年1月25日、東京空港交通
甲第21号証の6 :不明
甲第21号証の7 :外貨交換メモ、山下和男宛、台湾銀行
甲第21号証の8 :中華民国高雄国際機場、領収書
甲第21号証の9 :領収券、94.2.2、東京国際交通
甲第22号証の1 :海外出張(巨名電子)旅費精算書、6.1.27〜2.5、本多勝美
甲第22号証の2 :明細表
甲第22号証の3 :明細表
甲第22号証の4 :海外出張経費支出明細
甲第22号証の5 :海外出張経費支出明細
甲第22号証の6 :領収証、94.1.27、国際交通
甲第22号証の7 :領収証、6.1.27、東京国際交通
甲第22号証の8 :領収証、94.1.27、新東京国際空港公団
甲第22号証の9 :外貨交換メモ、本多勝美宛、台湾銀行
甲第22号証の10:中華民国高雄国際機場、領収書
甲第22号証の11:領収券、94.2.2、東京国際交通
甲第22号証の12:領収証、94.2.5、国際交通
甲第23号証の1 :海外出張(巨名電子)旅費精算書、94.4.10〜4.17、山下和男
甲第23号証の2 :明細表
甲第23号証の3 :海外出張経費支出明細
甲第23号証の4 :海外出張経費支出明細
甲第23号証の5 :領収書
甲第23号証の6 :領収書、山下宛、94.4.11、茅場町パールホテル
甲第23号証の7 :領収券、94.4.11、東京空港交通
甲第23号証の8 :旅客サービス使用料、新東京国際空港公団
甲第23号証の9 :外貨交換メモ、山下和男宛、台湾銀行
甲第23号証の10:領収書、94.4.12、大友大飯店
甲第23号証の11:領収書、94.4.12、大友大飯店
甲第23号証の12:出金伝票、94.4.18
甲第23号証の13:出金伝票、94.4.18
甲第23号証の14:出金伝票、94.4.18
甲第23号証の15:出金伝票、94.4.18
甲第23号証の16:中華民国高雄国際機場、領収書
甲第23号証の17:領収書、94.4.16、芙蓉交通
甲第23号証の18:領収証、山下和男宛、94.4.17、茅場町パールホテル
甲第23号証の19:領収書、94.4.17、錨自動車
甲第24号証の1 :海外出張(巨名電子)旅費精算書、6.4.19〜4.17、本多勝美
甲第24号証の2 :明細表
甲第24号証の3 :海外出張経費支出明細
甲第24号証の4 :領収証、94.4.10、国際交通
甲第24号証の5 :領収証、94.4.10、大和自動車
甲第24号証の6 :領収証、94.4.11、本多宛、茅場町パールホテル
甲第24号証の7 :領収券、94.4.11、東京空港交通
甲第24号証の8 :旅客サービス施設使用料、新東京国際空港公団
甲第24号証の9 :外貨交換メモ、本多勝美宛、台湾銀行
甲第24号証の10:中華民国高雄国際機場、領収書
甲第24号証の11:領収証、本多勝美宛、94.4.11、茅場町パールホテル
甲第24号証の12:出金伝票、支払先 本多勝美、6.4.17、
甲第24号証の13:切符、6.4.17、西武鉄道
甲第24号証の14:領収証、94.4.17、国際交通
甲第25号証 :陳述書、林文成、2000年4月27日(甲第9、6号証が添付)
甲第26号証の1 :海外出張(日立マレーシア)旅費精算書、94.7.12〜7.16、鈴木友次
甲第26号証の2 :明細表
甲第26号証の3 :海外出張経費支出明細
甲第26号証の4 :領収書、鈴木宛、THE FEDERAL KAUALA LUMPUR
甲第26号証の5 :領収書、鈴木宛、THE FEDERAL KAUALA LUMPUR
甲第27号証の1 :海外出張(H・C・P・M)旅費精算書、風間健太郎
甲第27号証の2 :明細表
甲第27号証の3 :海外出張経費支出明細
甲第27号証の4 :領収書、風間宛、THE FEDERAL KAUALA LUMPUR
甲第27号証の5 :領収書、風間宛、THE FEDERAL KAUALA LUMPUR
甲第28号証の1 :陳述書、ZAINUDIN、2000.4.28(甲第4号証が添付)
甲第28号証の2 :甲第28号証の1(陳述書)の訳文
甲第29号証 :陳述書、吉田正勝、2000年4月27日(甲第12号証が添付)
甲第30号証 :捲線機比較導入検討と題する文書、多賀製作所福岡専務宛、松下電子工業カラー管部品工場
甲第31号証 :写真撮影報告書(4)(報告者 土谷実、1998年9月7日にマレーシア、バンギ、H.C.P.Mにて撮影とされる)
甲第32号証 :NRI証券調査レポート、野村総合研究所、1993.11.11
甲第33号証 :甲第9号証の写真撮影報告書(1)の写真(3)の説明
甲第34号証 :甲第4号証の写真撮影報告書(3)の写真(5)の説明
甲第35号証 :甲第9号証の写真撮影報告書(1)の写真(7)の説明
甲第36号証 :甲第4号証の写真撮影報告書(3)の写真(8)の説明
甲第37号証 :甲第7号証の補足証拠、電波新聞7面、94年4月28日、「売上増、利益確保へ戦略」の項、

2,被請求人による証拠方法
乙第号1証 :基本契約書、甲:(株)日立水沢製作所、乙:日特エンジニアリング(株)、昭和60年4月1日
乙第2号証 :基本契約書、甲:(株)日立メディアエレクトロニクス、乙:日特エンジニアリング(株)、平成8年2月8日
乙第3号証 :陳述書、大杉英雄、平成12年7月12日
乙第4号証 :陳述書、河野准之、平成12年7月12日
乙第5号証 :取引基本契約書、甲:松下電子工業(株)、乙:日特エンジニアリング(株)、平成6年4月11日
乙第6号証の1 :照会申出書、赤尾直人、平成10年5月1日
乙第6号証の2 :回答書、筒井俊治、平成10年5月15日

第6 当審の判断
1.無効理由(A)(日立水沢または特許権者による公然実施)について
審判請求人は、、平成5年11月26日から平成6年10月17日以前の間、日立水沢に貸し付けられ、使用された旨主張しているのでこの点について検討する。
甲第3号証は、平成5年1月26日付け(株)日立水沢エレクトロニクス宛の日特エンジニアリング(株)の納入見積書であって、品名として「SUPER-VH-PRT型」の記載がある。
甲第15、16号証によれば、平成5年1月26日〜27日に(株)多賀製作所社員鈴木秀次が、(株)日立水沢エレクトロニクスに出張し、N社縦型巻線機に関する情報を得たこと、甲第17,18号証によれば、平成5年11月25日〜26日に同人が(株)日立水沢エレクトロニクスに出張し、N社の縦型H/V巻線機が貸し出し納入されたことを出張報告にまとめている。
また、甲第12号証は、6.3.22水沢、河野、6.3.9水沢、高橋倫の印が押された日特縦型H巻線機(SUPER-VH)検討報告書であって、平成5年12月10日〜平成6年2月8日の検討期間において、巻線機を借用し、取付け検討を行った旨の記載がある。
甲第13号証によれば、平成6年5月8日付けでHCPM(マレーシア)から、日特巻線機についての回答が日立水沢サトマ宛にあり、甲第14号証によれば、6.8.5水沢、河野の印が押されたHCPM(マレーシア)からのSUPER-VHについての報告がある。
甲第29号証の吉田正勝名の陳述書によれば、平成5年12月頃から翌年の5月頃まで、SUPER-VHが日特から日立水沢エレクトロニクスに貸し出され、生産技術の機械室に設置されていた旨の陳述がある。
これらの証拠によれば、平成5年末頃から平成6年2月頃に(株)日特エンジニアリング製の縦型巻線機「SUPER-VH」が(株)日立水沢エレクトロニクスに貸し出されたこと、当該巻線機について検討が行われたことが窺われる。
このことは被請求人の提出した乙第3号証の大杉英雄(日特エンジニアリング)の陳述書において、「日特エンジニアリング株式会社(当社)が平成5年12月から、平成6年2月にかけて、株式会社日立水沢エレクトロニクスに対し「SUPER-VH巻線機」という、商品名の偏向コイル巻線機を貸し渡した」旨陳述していることからも裏付けることができる。
なお、甲第19,20号証において、土谷実が平成5年12月16日に日立水沢エレクトロニクスに出張し、SUPER-VHを見学したと陳述し、巻線機の構造図を添付している。
甲第20号証の1〜甲第20号証の6によれば、土谷本人が日立水沢に出張したことが認められるものの、別添の構造図は、見学によっては、外装カバーにより通常は本来見えるはずのない部分まで詳細に記載しており、他に見学時の写真など、その事実を裏付ける証拠も提出されていないことから、土谷実が見学したという見学の内容、ひいては見学の事実に疑いを抱く余地が生じるものである。
よって、甲第19号証は、日立水沢で本件巻線機が公然実施されたことを立証する証拠として採用しない。
ところで、乙第1号証の基本契約書によれば、昭和60年4月1日から昭和61年3月31日まで株式会社日立水沢製作所(株式会社日立水沢エレクトロニクスの旧社名)と日特エンジニアリング株式会社との間に秘密保持の契約が取り交わされており、乙第2号証の基本契約書によれば、平成8年2月8日から1年間、株式会社日立メディアエレクトロニクス(株式会社日立水沢エレクトロニクスの新社名)と日特エンジニアリング株式会社との間に秘密保持の契約が取り交わされている。
このように乙第1号証及び乙第2号証の基本契約書が取り交わされていたことを勘案すると、昭和61年4月1日から平成8年2月7日まで、特段の事情がなければ、相互の秘密保持の状態は保たれていたものと通常は理解できる。
このことは乙第3号証の大杉の陳述内容及び乙第4号証の河野の陳述内容とも合致するところである。
よって、審判請求人がいうところの平成5年11月26日から平成6年10月17日以前の間も、貸し出しという実施形態を考慮すれば、上記乙1号証または乙第2号証のような秘密保持の契約がなされ、若しくは秘密保持の状態を保っていたものと理解するのが相当である。
しかも、甲第15,17号証の出張報告書は、いずれも自動巻線機の情報を得たことが記載されるのみであって、当該「SUPER-VH」を、鈴木英雄が不特定人として見学したことの立証、当該巻線機が内部機構を容易に理解できる状態で設置されていたことの立証、前記相互の秘密保持の契約等にもかかわらず、当該巻線機の設置状態が日立水沢エレクトロニクス社外に対し公開された状態で設置されていたことの立証がいずれもなされていない。
よって、前記立証がなされていない以上、自動巻線機「SUPER-VH」が日立水沢に貸し出され、使用されたことをもって、当該巻線機が公然実施されたものとすることができない。
したがって、請求人が主張する無効理由(A)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、(株)日立水沢エレクトロニクスに貸し出され、使用されたことをもって、公然実施された発明であるとすることができない。
2.無効理由(B)(松下電子による公然実施)について
審判請求人は、平成5年10月25日以降、松下電子工業株式会社に請求人巻線機と比較の上で販売活動していた旨主張しているので、この点について検討する。
甲第10号証の書面によれば、平成5年10月28日に日特エンジニアリング(株)の大杉英雄名で松下電子工業(株)宛にSUPER-VH(鞍型全回転式巻線機)の特許等に関し、他社の特許、実用新案との比較を報告していたものと認められる。
甲第30号証「捲線機比較導入検討」の書面によれば、平成5年10月25日付けで、松下電子工業(株)から(株)多賀製作所宛に、多賀製と日特製との比較の上で導入金額の検討依頼がなされていたことが認められる。
更に、乙第6号証の2の松下電子工業(株)の回答書によれば、「SUPER-VH巻線機」を工場内で使用していることが認められる。
これらの証拠によれば、「SUPER-VH巻線機」の商談が平成5年10月頃に行われ、現在使用されているものと理解できる。
ところで乙第5号証の松下電子工業(株)と日特エンジニアリング(株)との取引基本契約書によれば機密保持の契約がなされており、特段の事情のない限り、取引において機密保持がなされていたことが理解できる。
また、上記乙第6号証の回答書によれば、本件巻線機を使用したことによる偏向ヨークコイルの捲き線工程は、社外の第3者に公開しうる事項でないことを明示している。
よって、平成5年10月頃に行われていたと推定される販売活動において、その販売行為が公然と行われたことを示す形跡は存在しない。
したがって、請求人が主張する無効理由(B)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、松下電子工業(株)に対し販売活動を行ったことをもって、公然実施された発明であるとすることができない。
3.無効理由(C)(日立水沢による公知)について
審判請求人は、本件巻線機を借り受け、使用した日立水沢の開示によって、本件巻線機は日本国内において公然知り得たものである旨主張しているので、この点について検討する。
本件巻線機「SUPER-VH」を借り受け、使用した(株)日立水沢エレクトロニクスが、公然として借り受け、公然と使用したものでないことは、無効理由(A)で検討したとおりである。
そして、他に本件巻線機「SUPER-VH」を社外の第3者に開示した事実は、全証拠をみても見当たらない。
したがって、請求人が主張する無効理由(C)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、(株)日立水沢エレクトロニクスの開示によって、公然知られた発明であるとすることができない。
4.無効理由(D)(松下電子による公知)について
審判請求人は、松下電子が請求人巻線機と「SUPER-VH」とを対比しており、「SUPER-VH」の詳細を熟知していた。よって、請求項1請求項7に係る発明は、松下電子が公然知っていた発明、あるいは松下電子からの開示により請求人が公然知っていた発明に該当する旨主張している。
平成5年10月25日付けの甲第30号証「捲線機比較導入検討」の書面は、多賀製と日特製の捲線機の捲線スピード比較、設備金額比較、投資金額比較が記載されているのみであって、甲第30号証のみでは(株)松下電子工業が「SUPER-VH」の詳細を熟知していたことを立証したことにならない。
また、仮に(株)松下電子工業が「SUPER-VH」の詳細を熟知していたとしたところで、乙第5号証にみられるように、松下電子工業(株)と日特エンジニアリング(株)との間には機密保持の契約がなされているのであるから、(株)松下電子工業が熟知していたとの事実をもって、「SUPER-VH」が公然知られたものとすることができない。
さらに(株)松下電子工業から多賀製作所に開示された情報は、全証拠をみても甲第30号証の書面だけであり、書面に記載された捲線機の捲線スピード比較、設備金額比較、投資金額比較だけで「SUPER-VH」の構造を特定することができないのは明らかである。
したがって、請求人が主張する無効理由(D)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、松下電子工業(株)が公然知っていた発明、あるいは松下電子からの開示により請求人が公然知っていた発明に該当しない。
5.無効理由(E)(日立マレーシアの調査による公知)について
審判請求人は、平成6年7月12日〜同16日の間に、当工場において「SUPER-VH」が請求人に調査され帰国しているので、その調査内容が日本国内に持ち帰られたことにより、日本国内において公然知られたものとなった旨主張しているので、この点について検討する。
甲第26号証、甲第27号証によれば、鈴木秀次及び風間健太郎が平成6年7月12日〜16日の間、日立マレーシアに出張したことが明らかである。
甲第28号証のAHMADによる陳述によれば、上記出張の間、自由にSUPER-VHの見学ができた旨を陳述している。
しかし、その出張において調査した内容が日本国内に持ち帰られたことを示す事実又は調査報告書が証拠として提出されておらず、仮に前記報告書が存在したとしても報告書が公然と知られたことを示す証拠も提出されておらず、結局、審判請求人の主張は根拠となるものがない。
さらに、日立マレーシアに関する報告書である甲第4号証及び甲第31号証は、いずれも写真の撮影年月日が本件出願後であり、特許法第29条第1項を適用すべき根拠となる証拠ではない。
したがって、請求人が主張する無効理由(E)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、日本国内において公然知られた発明であるとすることができない。
6.無効理由(F)(巨名電子の調査による国内公知)について
審判請求人は、本件巻線機が、平成6年1月25日〜同2月2日の間、平成6年1月27日〜同2月5日の間、及び、平成6年4月10日〜同17日の間に、巨名電子において請求人に調査され、その調査内容が日本国内に持ち帰られた旨主張しているので、この点について検討する。
甲第21号証によれば、平成6年1月25日から2月2日まで、山下和男が台湾の巨名電子に出張し、甲第22号証によれば、平成6年1月27日から2月5日まで、本多勝美が同社に出張したことが明らかである。
甲第23号証、甲第24号証によれば、平成6年4月10日から17日まで、山下和男、本多勝美が台湾の巨名電子に出張したことが明らかである。
そして、甲第25号証の林文成による陳述書によれば、上記の期間中にSUPER-VHの見学をした旨の陳述がある。
しかし、その出張において調査した内容が日本国内に持ち帰られたことを示す事実又は調査報告書が証拠として提出されておらず、仮に前記報告書が存在したとしても報告書が公然と知られたことを示す証拠も提出されておらず、結局、審判請求人の主張は根拠となるものがない。
さらに、台湾の巨名電子に関する報告書である甲第9号証は、写真の撮影年月日が本件出願後であり、特許法第29条第1項を適用すべき根拠となる証拠ではない。
したがって、請求人が主張する無効理由(F)は、理由があるとすることができず、本件請求項1乃至請求項7に係る発明は、日本国内において公然知られた発明であるとすることができない。

7.「SUPER-VH」の構成要件充足性について、
本件請求項1乃至請求項7に係る発明が、審判請求人の主張するような無効理由が存在しないことは上述したとおりであるが、本件請求項1乃至請求項7に係る発明の特定事項が、審判請求人が提出した証拠に基づき、「SUPER-VH」に開示されているかについて、本件出願後の撮影年月日である甲第4号証、甲第9号証及び甲第31号証も含めて、念のため検討する。
(請求項1に係る発明について)
7-1.特定事項(イ)について
甲第1号証及び甲第2号証によれば、水平型偏向ヨーク用の自動巻線機「SUPER-VH」を発売する旨の記載があり、「SUPER-VH」なる自動巻線機が「偏向コイルの巻線機」であることは明らかである。
審判請求人は、偏向コイルを通電形成する巻線機である以上、被覆電線からなる線材を供給する機構を備えているとして、甲第4号証の写真及び甲第6号証を挙げ、更に甲第2号証及び甲第4,9号証を挙げて、線材供給機構から線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型が示されているとしている。
そこで、特定事項(イ)を検討するに当たり、これらの証拠を中心に検討を進める。
(1)線材供給機構について
まず、甲第4号証の写真撮影報告書(3)によれば、(6)の拡大写真に写された銘板から「TYPE SUPER-VH」の文字が読み取ることができ、甲第4号証の写真は自動巻線機「SUPER-VH」を撮影したものと理解できる。
甲第4号証の(5)拡大内部写真についての詳細説明として「電極の右下奥に「ノズルを備えた線材供給機構」が位置し」と記載しているが、(5)の写真には開口部の右側側板から突出する長方形状の曲面のような陰影を有する物体が視認できるだけで、これがノズルなのか不明であり、また前記曲面を有する物体が線材供給機構であるのか不明である。
この点に関連し、甲第9号証の写真撮影報告書(1)には、(4)の銘板の拡大写真からみて銘板に「TYPE SUPER-VH」の文字が読み取ることができ、甲第9号証の写真は自動巻線機「SUPER-VH」を撮影したものと理解できる。
甲第9号証の写真(3)からは、右側にウオームギヤによって前後に移動可能な機台上に円筒状軸が直立し、該軸から水平方向に円錐形の先端部を有する円筒形の物体が突出している点が読みとれる。しかし、かかる円筒形の物体がノズルなのか写真だけでは判読することができない。
前記写真(3)の拡大図とされる甲第33、34号証を見ても前記円筒形の物体の先端に円錐状のものが読み取ることができるだけで、これが線材を供給するノズルであるとまでは判読することができない。
更に、甲第9号証の写真(7)からは、前記円筒形の物体が回転しているものとみられ、その先端部附近から線材が延びていることが読みとれる。しかし、この写真からだけでは前記線材が前記円筒形の物体から引き出されているとまでは判読することができない。
また、甲第6号証は「剥離装置」と記載されているものの,SUPER-VHとの関係が不明であるため、SUPER-VHの構造を正しく示す証拠として採用することができない。
ところで、甲第10号証の日特エンジニアリング(株)部長大杉英雄名による書面によれば「SUPER-VHは上下する回転体にXYZ動作可能なノズルを具備し」と記載しており、前記円筒形の物体がノズルであるか否かに拘わらず、線材を供給するノズルが存在することは明らかである。
また、使用する線材が被覆導線である点について検討するに、甲第3号証の見積書からSUPER-VHにはヒュージングユニット1基そなえていること、甲第5号証からは、SUPER-VHがすて端子ヒュージング方式と称するはくり通電を行うことが明らかであり、このヒュージングを行なう対象が被覆導線であることは自明である。
以上から、自動巻線機「SUPER-VH」は、甲第4号証及び甲第9号証の写真の内容に拘わらず、「被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構」の特定事項を備えている。
(2)金型について
甲第4号証の写真撮影報告書(3)の(9)の写真及び甲第9号証の写真撮影報告書(1)の(1)、(2)、(5)、(6)の写真、甲第34号証の拡大写真によれば、円板の架台上に中央の突起物に向かい、円板の両端から山状に中央が盛り上がるように3本のビームが設けられていることが読みとれる。また、甲第9号証の(2)の写真からは、上方の円板に3本のビームが設けられていることも読みとれる。
そして、これらが何らかの金型であろうことは容易に想像が付くところである。
しかし、これらの写真から、この金型が「線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型」であるとまでは判読することができない。
ところで、甲第2号証には「「SUPER-VH」は、・・・偏向ヨーク専用巻線機。巻き線用金型を縦型に配置した独自の構造で・・・金型の回転安定性に優れ」と記載されている。
すなわち、線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型が存在することになる。
そこで、再度、上記写真について検討するに上記甲第4号証、甲第9号証の写真からは前記金型以外に金型らしきものは見てとれないことからして、甲第2号証の記載を併せ読めば、前記3本のビームを構成要素とする金型が、線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型であると理解することができる。
さらに、かかる線材が線材供給機構から供給されることは自明である。
(3)特定事項(イ)についてのむすび
自動巻線機「SUPER-VH」は、本件請求項1にかかる発明の特定事項であるところの「(イ) 被覆導線からなる線材を供給する線材供給機構と、線材供給機構から供給される線材を巻き回して偏向コイルを形成する金型とを備えた偏向コイルの巻線機において、」の構成を具備している。
なお、甲第19号証に添付された図面は、通常目視により確認できる事項以外の部分も記載しており、想像で記載した疑いを解消できないから、これを構成要件充足性の判断に当たり証拠として採用できない。

7-2.特定事項(ロ)について
審判請求人は、「線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材」の点は、甲第3,11,6,9号証に示されていると主張し、「これらの導電性部材を線材に圧着する手段と、線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極」の点は甲第6,9,35号証に示されていると主張している。
そこで、特定事項ロを検討するに当たり、上記証拠を中心に検討する。
甲第3号証の見積書には、金型回転式偏向ヨーク巻線機SUPER-VH-PRT型にはヒュージングユニット1基が備えられていることが記載されている。
そして、甲第11号証の1の見積書にはSUPER-VH型捲き線機には剥離装置(端子圧着式)が備えられる点が記載されている。
しかし、甲第35号証の写真によれば、線材が上下のピンに挟まれた点がみてとれるが、どの部材が導電性部材なのか識別できず、またどれが第1の電極なのか識別することができない。
甲第9号証についても甲第35号証と同様のことがいえる。
また、甲第6号証は「剥離装置」と記載されているものの,SUPER-VHとの関係が不明であるため、SUPER-VHの構造を正しく示す証拠として採用することができない。
よって、甲第3、11,9、35号証によっても、SUPER-VHに関しヒュージングユニット又は剥離装置が存在することが把握できるだけであり、さらに、SUPER-VHに関する他の証拠によっても、自動捲き線機SUPER-VHが「線材供給機構から供給された線材の両側から線材の外周に当接または近接して配置される導電性部材と、これらの導電性部材を線材に圧着する手段と、線材の導電性部材圧着部に所定の電圧を印加する一対の第1の電極と、」という特定事項(ロ)を備えているとすることができない。
7-3.特定事項(ハ)について
審判請求人は、「移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と、この導電性部材を移動する手段と、」の特定事項は、甲第2,4,5,9,33,34号証に開示され、「この導電性部材と前記圧着手段により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極を備えるとともに、」の特定事項は、甲第2,4,5,6,9,30,33〜35号証に開示されていると主張している。
甲第6号証は「剥離装置」と記載されているものの,SUPER-VHとの関係が不明であるため、SUPER-VHの構造を正しく示す証拠として採用することができない。
甲第2号証には「三軸ロボット搭載の引き回しユニットの採用と合わせて・・・複雑なワイヤの引き回しを可能にした。・・・ワイヤクリップ可能になり、」(甲2,4段5行〜5段3行)と記載され、甲第5号証には「3軸ロボット式ワイヤー引き回しユニット・・・ワイヤークリップ可能になりました。」(甲5、1頁26行〜27行)と記載されている。
しかし、甲第9号証の(7)、甲第33号証、甲第34号証、甲第4号証、甲第5号証をみても、どれが導電性部材であり、どれが第1の電極に当たり、どれが係止手段であり、どれが移動する手段であり、どれが圧着手段であり、どれが第2の電極に当たるのか識別することができない。
請求人は写真に付記を加え、部材名を記載しているが、SUPER-VHの該当する個所がそれぞれ請求人付記のような機能を有することを裏付ける証拠が他にないから、やはり識別することができない。
以上の証拠から見れば、SUPER-VHは、3軸ロボット式ワイヤー引き回しユニットを備え、ワイヤー引き回しとともにクリップが可能であるということが把握できるだけである。
よって、「移動した導電性部材を第1の電極以外の場所に係止する手段と、この導電性部材を移動する手段と、この導電性部材と前記圧着手段により新たに線材に圧着された導電性部材との間に電圧を印加する一対の第2の電極とを備えるとともに、」という特定事項(ハ)を自動捲き線機SUPER-VHが備えているとすることができない。

7-4.特定事項(ニ)について
審判請求人は、「前記導電性部材を導電性の帯状連続部材で構成し、」の点は、甲第4,6,9,10,36号証に開示されており、「この帯状連続部材を前記圧着手段へ供給する手段と、帯状連続部材を所定の位置で切断する手段と」の点は甲第4,6,9,36号証に開示されていると主張している。
甲第6号証がSUPER-VHの構造を正しく示す証拠として採用できないことは上述したとおりである。
甲第4号証の(8)、(11)、甲第36号証によれば、リールからコ字状突起を有する金属光沢の帯状部材が延出し、端部が斜めに屈曲には円弧状板に沿って延びている状態がみてとれる。
次に、甲第9号証の(7)には、線材が上下のピンに挟まれ、その右側に刃状のものが対向していることがみてとれるが、帯状の導電性部材がどれなのか識別できず、したがって刃状のものが帯状連続部材を切断する機能を有しているのか識別できない。
さらに、甲第10号証の書面によれば、SUPER-VHの特許等の報告として「日特:連続した金属の一部に線材をNC制御により、移動させヒュージング、通電後にその一部を切断する。」との記載があるものの、仮にこの記載がSUPER-VHの構造を示していたとしても、特定事項(ニ)については、連続した金属で構成し、この連続した金属を移動する手段が記載されているだけである。
以上を併せみれば、特定事項(ニ)については、SUPER-VHが、「帯状連続部材を圧着手段へ供給する手段と、帯状連続部材を所定の位置で切断する手段と」の点を備えているとすることができない。
以上検討したように、審判請求人が示した全証拠によっても、SUPER-VHが本件請求項1に係る発明の特定事項(ロ)、特定事項(ハ)及び特定事項(ニ)の「帯状連続部材を圧着手段へ供給する手段と、帯状連続部材を所定の位置で切断する手段と」の構成を備えているとすることができない。
よって、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するとすることができない。

(請求項2乃至請求項6に係る発明について)
本件請求項2乃至請求項6に係る発明は、請求項1を引用しているものであるから、請求項1に係る発明と同様な理由により、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するものではない。

(請求項7に係る発明について)
審判請求人は、甲第9号証の「写真撮影報告書(2)」の(2)、甲第4号証の「写真撮影報告書(3)」の(5)、(8)及び(11)、甲第6号証には、帯状連続部材の一部を所定間隔毎に切り起こして爪を有するフープ材が示され、甲第9号証の「写真撮影報告書(1)」の(7)には第1の電極で線材にフープ材が圧着されている状態が示されているから、請求項7に係る発明は、特許法第29条第1項第1号または2号の規定に該当する旨主張している。
そこで検討するに、甲第6号証がSUPER-VHの構造を正しく示す証拠として採用できないことは上述したとおりである。
甲第9号証の「写真撮影報告書(2)」の(2)の写真、甲第4号証の(8)の写真甲第36号証の拡大写真を見ても、金属光沢のある帯状部材に一定間隔のコ字状の突起が識別できるだけで、前記突起が切り起こしたものと識別することができない。
甲第4号証の(5)、(11)の写真からはコ字状の突起すら識別することができない。
甲第9号証の(7)の写真、甲第35号証の拡大写真を見ても、上述したように線材が上下のピンに挟まれた点が把握できるものの、どれが第1の電極でどれがフープ材なのか識別できない。
なお、甲第19号証は上述したと同様の理由により、これを構成要件充足性の判断に当たり証拠として採用できない。
結局、これらの証拠からは、リールから金属光沢の帯状部材が引き出され、帯状部材には一定間隔のコ字状の突起を有する点が把握できるだけであって、請求項7に係る発明の特定事項である、「 被覆導線からなる線材に圧着部を圧着し、電圧の印加によりこの圧着部を被覆の内側に食い込ませ、所定位置で切断することで被覆導線と電気的に接触した電極を構成するフープ材からなる圧着用導電性部材であって、前記圧着部と、圧着時に線材が圧着部の外側へはみ出すのを阻止する爪とを、前記フープ材の一部を切り起こすことで所定間隔に形成した圧着用導電性部材。」の点は把握することができない。
したがって、請求項7に係る発明は、特許法第29条第1項第1号又は第2号の規定に該当するとすることができない。

(構成要件充足性のむすび)
仮に、無効理由(A)乃至無効理由(F)において、自動捲き線機SUPER-VHに対し、公然知られ又は公然実施された事実が立証され、かつ、仮に、撮影年月日が本件出願後であるところの甲第4号証、甲第9号証及び甲第31号証に撮影された事実が、本件出願前に公然知られたものであったとしても、上述したように構成要件が異なるのであるから、本件請求項1乃至請求項7に係る発明が、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するものではない。
8.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至請求項7に係る特許を無効にすることができない。
また、他に本件請求項1乃至請求項7に係る特許を無効にすべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-15 
結審通知日 2001-01-05 
審決日 2001-01-16 
出願番号 特願平7-115894
審決分類 P 1 112・ 112- Y (H01J)
P 1 112・ 111- Y (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 向後 晋一  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 平井 良憲
山川 雅也
登録日 1997-09-05 
登録番号 特許第2693401号(P2693401)
発明の名称 偏向コイルの巻線機及び圧着用導電性部材  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 野村 泰久  
代理人 吉田 芳春  
代理人 赤尾 直人  
代理人 高橋 敬一郎  
代理人 松澤 與市  
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