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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04G
管理番号 1062703
異議申立番号 異議2000-73236  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-25 
確定日 2002-05-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3012827号「吊り足場組立て工法と吊り足場材」の請求項1、2、5ないし7、11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3012827号の請求項1、4ないし6、10に係る特許を取り消す。 
理由 [手続の経緯]
本件特許第3012827号の特許請求の範囲の請求項1〜13に係る発明についての出願は、平成2年9月28日に出願した特願平2-258922号の一部を平成10年3月6日に新たな特許出願としたものであって、平成11年12月10日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について住友金属建材株式会社より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由通知がなされたところ、その指定期間内である平成13年6月25日に訂正請求がなされたものである。


[訂正の適否についての判断]
【1】訂正の内容
〔1〕訂正事項A:特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。

〔2〕訂正事項B:特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を請求項2と訂正し、同請求項2を「【請求項2】請求項1記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具(4)が足場材(1)から外側に突設され、その配列方向連結具(4)を他方の足場材(1)の配列方向連結受部(21)に差し込んで両足場材(1)を連結し、この足場材(1)の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。

〔3〕訂正事項C:特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を請求項3と訂正し、同請求項3を「【請求項3】請求項2記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込んで両者を連結することを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。

〔4〕訂正事項D:特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を請求項4と訂正し、同請求項4を「【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、支持材(A)と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材(1)の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材(1)を吊り下げ、横に隣接する両足場材(1)の横連結受部(23)に横連結具(5)を係止して足場材(1)を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。

〔5〕訂正事項E:特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を請求項5と訂正し、同請求項5を「【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、パネル状の足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない、このパネル状の足場材(1)の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。

〔6〕訂正事項F:特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を請求項6と訂正する。

〔7〕訂正事項G:特許明細書の特許請求の範囲の請求項8を請求項7と訂正し、同請求項7を「【請求項7】請求項6記載の吊り足場材において、踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔8〕訂正事項H:特許明細書の特許請求の範囲の請求項9を請求項8と訂正し、同請求項8を「【請求項8】請求項6又は請求項7記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)を基材(1a)から突設し、基材(1a)のうち配列方向連結具(4)と反対側に前記配列方向連結具(4)を差し込み可能な配列方向連結受部(21)を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔9〕訂正事項I:特許明細書の特許請求の範囲の請求項10を請求項9と訂正し、同請求項9を「【請求項9】請求項8記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)が、基材(1a)内に形成された差し込み孔であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔10〕訂正事項J:特許明細書の特許請求の範囲の請求項11を請求項10と訂正し、同請求項10を「【請求項10】請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の吊り足場材において、基材(1a)が方形の枠状であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔11〕訂正事項K:特許明細書の特許請求の範囲の請求項12を請求項11と訂正し、同請求項11を「【請求項11】請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込み可能な穴(13、14)を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔12〕訂正事項L:特許明細書の特許請求の範囲の請求項13を請求項12と訂正し、同請求項12を「【請求項12】請求項11記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)に形成された穴(13)が当該配列方向連結具(4)の突出方向に横長であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。

〔13〕訂正事項M:特許明細書の段落【0006】を削除する。

〔14〕訂正事項N:特許明細書の段落【0007】を段落【0006】と訂正し、同段落【0006】を「【0006】本発明の第2の吊り足場組立て工法は、第1の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具が足場材から外側に突設され、その配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結し、この足場材の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。」と訂正する。

〔15〕訂正事項O:特許明細書の段落【0008】を段落【0007】と訂正し、同段落【0007】を「【0007】本発明の第3の吊り足場組立て工法は、第2の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込んで両者を連結する工法である。」と訂正する。

〔16〕訂正事項P:特許明細書の段落【0009】を段落【0008】と訂正し、同段落【0008】を「【0008】本発明の第4の吊り足場組立て工法は、第1乃至第3の夫々の吊り足場組立て工法において、支持材と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材を吊り下げ、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立てる工法である。」と訂正する。

〔17〕訂正事項Q:特許明細書の段落【0010】を段落【0009】と訂正し、同段落【0009】を「【0009】本発明の第5の吊り足場組立て工法は、第1乃至第4の夫々の吊り足場組立て工法において、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行ない、この足場材の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。」と訂正する。

〔18〕訂正事項R:特許明細書の段落【0011】を段落【0010】と訂正し、同段落【0010】を「【0010】本発明の第6の吊り足場材は、基材に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材を取り付けてパネル状にし、同基材の2箇所以上に支持材から吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条を係止して基材を支持具にそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部を設け、基材に、支持材と交差する向きに吊り下げて並べた足場材同士を連結する配列方向連結具を設け、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を連結可能な配列方向連結受部を設けたものである。」と訂正する。

〔19〕訂正事項S:特許明細書の段落【0012】を段落【0011】と訂正し、同段落【0011】を「【0011】本発明の第7の吊り足場材は、第6記載の吊り足場材の踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたものである。」と訂正する。

〔20〕訂正事項T:特許明細書の段落【0013】を段落【0012】と訂正し、同段落【0012】を「【0012】本発明の第8の吊り足場材は、第6又は第7の吊り足場材の配列方向連結具を基材から突設し、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を差し込み可能な配列方向連結受部を設けたものである。」と訂正する。

〔21〕訂正事項U:特許明細書の段落【0014】を段落【0013】と訂正し、同段落【0013】を「【0013】本発明の第9の吊り足場材は、第8の吊り足場材において、配列方向連結受部を、基材内に形成された差し込み孔としたものである。」と訂正する。

〔22〕訂正事項V:特許明細書の段落【0015】を段落【0014】と訂正し、同段落【0014】を「【0014】本発明の第10の吊り足場材は、第6乃至第9の吊り足場材において、基材を方形の枠状としたものである。」と訂正する。

〔23〕訂正事項W:特許明細書の段落【0016】を段落【0015】と訂正し、同段落【0015】を「【0015】本発明の第11の吊り足場材は、第8乃至第10の吊り足場材において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込み可能な穴を設けたものである。」と訂正する。

〔24〕訂正事項X:特許明細書の段落【0017】を段落【0016】と訂正し、同段落【0016】を「【0016】本発明の第12の吊り足場材は、第11の吊り足場材において、配列方向連結具に形成された穴を当該配列方向連結具の突出方向に横長としたものである。」と訂正する。

〔25〕訂正事項Y:特許明細書の段落【0018】を段落【0017】と訂正し、以下同様に、段落【0019】〜【0029】を段落【0018】〜【0028】とそれぞれ訂正する。

〔26〕訂正事項Z:特許明細書の段落【0030】を段落【0029】と訂正し、同段落【0029】を「【0029】【発明の効果】本発明の第1の吊り足場組立て工法は次のような効果がある。・・・(中略)・・・容易になる。」と訂正する。

〔27〕訂正事項a:特許明細書の段落【0031】を段落【0030】と訂正し、同段落【0030】を「【0030】本発明の第2の吊り足場組立て工法は、足場材から外側に突設された配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結するので、足場材の連結が容易且つ確実になる。」と訂正する。

〔28〕訂正事項b:特許明細書の段落【0032】を段落【0031】と訂正し、同段落【0031】を「【0031】本発明の第3の吊り足場組立て工法は、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込んで両者を連結するので、連結が確実になる。」と訂正する。

〔29〕訂正事項c:特許明細書の段落【0033】を段落【0032】と訂正し、同段落【0032】を「【0032】本発明の第4の吊り足場組立て工法は、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するので、吊り足場を配列方向だけでなく、横方向にも容易に組立てることができる。」と訂正する。

〔30〕訂正事項d:特許明細書の段落【0034】を段落【0033】と訂正し、同段落【0033】を「【0033】本発明の第5の吊り足場組立て工法は、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行なうので安全で、作業し易く、作業性も向上する。」と訂正する。

〔31〕訂正事項e:特許明細書の段落【0035】を段落【0034】と訂正し、同段落【0034】を「【0034】本発明の第6の吊り足場材はパネル状であるため、その上に作業者がのって次の吊り足場材を吊り下げたり、後から吊り下げた吊り足場材を先に吊り下げた吊り足場材に連結したりすることができ、しかも、・・・(中略)・・・踏み材が基材に固定されているので、従来のように足場板を横材に番線で固定する必要がなく、足場の組立て作業が容易になる。」と訂正する。

〔32〕訂正事項f:特許明細書の段落【0036】を段落【0035】と訂正し、同段落【0035】を「【0035】本発明の第7の吊り足場材は、基材に横連結具を係止可能な横連結受部を設けたので、横方向への連結も容易になり、吊り足場の横幅の調節も容易になる。」と訂正する。

〔33〕訂正事項g:特許明細書の段落【0037】を段落【0036】と訂正し、同段落【0036】を「【0036】本発明の第8の吊り足場材は、配列方向連結具を基材から突設したので、それを配列方向連結受部に差し込むだけで足場材の横方向への連結が可能になる、連結が容易にもなる。」と訂正する。

〔34〕訂正事項h:特許明細書の段落【0038】を段落【0037】と訂正し、同段落【0037】を「【0037】本発明の第9の吊り足場材は、配列方向連結受部が基材内に形成された差し込み孔であるため、配列方向連結受部の形成が容易になる。」と訂正する。

〔35〕訂正事項i:特許明細書の段落【0039】を段落【0038】と訂正し、同段落【0038】を「【0038】本発明の第10の吊り足場材は、基材1aが方形の枠状であるため、形状が安定する。」と訂正する。

〔36〕訂正事項j:特許明細書の段落【0040】を段落【0039】と訂正する。


【2】訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
〔1〕訂正事項Aについて
この訂正は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

〔2〕訂正事項B〜Lについて
これらの訂正は、特許請求の範囲の請求項2の削除に係る上記訂正事項Aに伴う訂正であって、訂正前の特許請求の範囲の請求項3〜13の請求項の項番号を順次繰り上げて請求項2〜12とすると共に、同請求項のうち請求項2〜5、7〜12において引用する請求項の項番号を上記繰り上げた各請求項の項番号にしたがってそれぞれ変更するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

〔3〕訂正事項M〜Z,a〜jについて
これらの訂正は、特許請求の範囲の訂正に係る上記訂正事項A〜Lの訂正に伴い、それとの整合を図るために特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。


【3】訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許明細書に対する本訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


[特許異議の申立について]
【1】本件請求項に係る発明
以上のとおり、特許明細書に対する本訂正が認められるから、特許異議の申立てをされた訂正前の特許請求の範囲の請求項1,2(削除),5〜7,11に係る発明に対応する、訂正後の特許請求の範囲の請求項1,4〜6,10に係る発明(以下それぞれ「本件訂正発明1,4〜6,10」という)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,4〜6,10に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ワイヤ、チェーン等の索条(B)を支持材(A)から吊り下げ、その吊り下げた索条(B)に、基材(1a)に作業者がのれる広さの踏み材(2)を取り付けたパネル状の足場材(1)を係止して、同足場材(1)を支持材(A)にそれと交差する向きに吊り下げ、この足場材(1)の先方或は後方に他の足場材(1)を前記足場材(1)と同様の向きに吊り下げ、両足場材(1)のうち一方の足場材(1)の配列方向連結具(4)と他方の足場材(1)の配列方向連結受部(21)とを連結して両足場材(1)を並べて連結し、この足場材(1)の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、支持材(A)と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材(1)の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材(1)を吊り下げ、横に隣接する両足場材(1)の横連結受部(23)に横連結具(5)を係止して足場材(1)を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、パネル状の足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない、このパネル状の足場材(1)の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項6】基材(1a)に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材(2)を取り付けてパネル状にし、同基材(1a)の2箇所以上に支持材Aから吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条(B)を係止して基材(1a)を支持具(A)にそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部(3)を設け、基材(1a)に、支持材(A)と交差する向きに吊り下げて並べた足場材(1)同士を連結する配列方向連結具(4)を設け、基材(1a)のうち配列方向連結具(4)と反対側に前記配列方向連結具(4)を連結可能な配列方向連結受部(21)を設けたことを特徴とする吊り足場材。
【請求項10】請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の吊り足場材において、基材(1a)が方形の枠状であることを特徴とする吊り足場材。」


【2】引用刊行物
刊行物1:特公平7-103679号公報
(異議申立書の甲第1号証、本件特許出願の分割の元となった
原出願である特願平2-258922号の公告公報)
刊行物2:特公平7-103679号公報の
特許法第64条の規定による補正公報
(異議申立書の甲第2号証、平成11年6月14日発行)
刊行物3:特開平4-140363号公報
(異議申立書の甲第3号証、上記原出願の出願当初の明細書及び
図面としての公開公報)


【3】本件特許出願が原出願(刊行物1〜3参照)から適法に分割されたか否かについての検討
〔1〕本件訂正発明5について
(1)本件訂正発明5は本件訂正発明1〜4のいずれかを引用するものであり、本件訂正発明1〜4のいずれかの吊り足場組立て工法において、「パネル状の足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない」との限定を付したものである。
(2)ところで、本件特許出願の分割の元となった原出願である特願平2-258922号の特許査定時の請求項1,2に係る発明(以下それぞれ「原出願の発明1,2」という、刊行物2参照)は、以下のとおりである。
「1 支持材Aから吊下げたワイヤ、チェーン等の索条Bを、作業者がのれる広さの踏み材2が取り付けられている足場材1の係止部3に係止して同足場材1を支持材Aと交差する向きに吊下げ、この足場材1の先方或は後方に他の足場材1を前記足場材1と同様の向きに吊り下げて並べ、並べた足場材1のうち一方の足場材1の配列方向連結具4と他方の足場材1の配列方向連結受部21を連結して両足場材1を連結し、前記吊下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材1又は先に吊り下げて連結した足場材1の上で行い、この足場材1の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
2 請求項1記載の吊り足場組立て工法において、支持材Aと交差する向きに吊下げた足場材1の横に、それと同じ向きにして他の足場材1を吊り下げ、横に隣接する両足場材1の横連結受部23に横連結具5を係止して足場材1を横方向にも連結し、前記吊下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材1又は先に吊り下げて連結した足場材1の上で行なうようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」
(3)そこで、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1とを対比すると、原出願の発明1の「支持材A」,「索条B」,「作業者がのれる広さの踏み材2」,「配列方向連結具4」,「配列方向連結受部21」が、本件訂正発明5(本件訂正発明1)の「支持材(A)」,「索条(B)」,「作業者がのれる広さの踏み材(2)」,「配列方向連結具(4)」,「配列方向連結受部(21)」にそれぞれ相当し、また、原出願の発明1の「前記吊下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材1又は先に吊り下げて連結した足場材1の上で行い」が、本件訂正発明5の「足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない」に相当し、そして、原出願の発明1の「足場材1」については、特許請求の範囲の記載からは、「作業者がのれる広さの踏み材2」がどのような部材に取り付けられて当該「足場材1」が形成されるのか定かでなく、また、「パネル状の」ものであるのか否かも定かでないが、当該「足場材1」には、「踏み材2」以外にも「係止部3」,「配列方向連結具4」,「配列方向連結受部21」等が付属していることからみて、それの一部分が上記各部となり或いは上記各部を形成するための部材を別途設置することができ且つ「踏み材2」を取り付けることができるような何らかの基本構造物、即ち、原出願の発明の実施例に記載されているような「基材1a」が必須のものと認められ(尚、原出願の特許査定時の請求項3に係る発明は当該「基材1a」について言及している)、このような構造の「足場材1」が「パネル状の」ものであることは明かである(訂正明細書の段落【0017】には、基材に踏み材を取り付けたものがパネル状である旨記載されている)から、原出願の発明1の「作業者がのれる広さの踏み材2が取り付けられている足場材1」と本件訂正発明5(本件訂正発明1)の「基材(1a)に作業者がのれる広さの踏み材(2)を取り付けたパネル状の足場材(1)」との間に実質的な差異はないものであるから、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1とは、構成上、全ての点で一致している。
(4)また、本件訂正発明4(本件訂正発明1を引用)を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1を引用する原出願の発明2とを対比すると、原出願の発明2の「支持材Aと交差する向きに吊下げた足場材1の横に、それと同じ向きにして他の足場材1を吊り下げ、横に隣接する両足場材1の横連結受部23に横連結具5を係止して足場材1を横方向にも連結し」との構成において、その「横連結受部23」,「横連結具5」が、本件訂正発明5(本件訂正発明4)の「横連結受部(23)」,「横連結具(5)」にそれぞれ相当するから、上記(3)での検討事項を踏まえて考えると、原出願の発明2に開示された上記構成は、本件訂正発明5(本件訂正発明4)の「支持材(A)と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材(1)の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材(1)を吊り下げ、横に隣接する両足場材(1)の横連結受部(23)に横連結具(5)を係止して足場材(1)を横方向にも連結する」の構成と一致するから、本件訂正発明4(本件訂正発明1を引用)を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1を引用する原出願の発明2とは、構成上、全ての点で一致している。
(5)したがって、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1とは同一であり、また、本件訂正発明4(本件訂正発明1を引用)を引用する本件訂正発明5と原出願の発明1を引用する原出願の発明2とは同一である。
(6)尚、特許権者は、原出願の発明1,2は、「足場材を吊り下げて『並べ』るか、或は『並べた』足場材を連結するものである。即ち、足場材を吊り下げ時に並べるもの」であるが、「本件発明1を引用する本件発明6は、多数枚の足場材を吊り下げるだけであり、吊り下げたときに並べる必要はなく、吊り下げ後の連結時に作業者が連結しながら並べる方法」(尚、「本件発明1,6」はそれぞれ「本件訂正発明1,5」である)であるから、両者には大きな相違がある旨主張しているが、本件特許明細書(訂正明細書)中において、「並べる」ことがどのような状態の技術事項を意味するのか定かでないが、本件訂正発明5(本件訂正発明1)は、支持材に対する索条の固定位置の後調整や索条の長さ調整等について格別規定するものではなく、吊り下げられた足場材は「並べて連結」されるのであるから、既に索条に係止して吊り下げてある足場材の先方或は後方に他の足場材を、既に吊り下げてある索条に係止して吊り下げた際には、両足場材は並んだ状態となるものと推認されるものであり、また、索条について、何らかの固定位置の調整や長さ調整を行うものであるとしても、足場材同士を連結する際には、必然的に足場材同士が並んだ状態となり、即ち、並べなければ連結することができないものであり、また逆に、原出願の発明1,2も、足場材を連結した後には足場材同士が並んだ状態となり、さらに、本件特許明細書(訂正明細書)中には、特許請求の範囲に「並べて連結し」との記載(請求項1)と、先に吊り下げた足場材の先方に足場材を「吊り下げて並べ」た後に「二つの吊り足場材をその配列方向(前後方向)に連結する」旨の組立て順序の記載(訂正明細書、段落【0028】)があるから、特許権者の上記主張には直ちに首肯することはできない。

〔2〕適法に分割されたか否かについてのまとめ
以上のとおりであり、本件特許出願である分割出願に係る発明と、本件特許出願の分割の元となった原出願に係る発明とが同一となるから、本件特許出願は不適法な分割出願ということになり、出願日の遡及は認められず、その出願日は現実の出願日である平成10年3月6日となる。


【4】刊行物1〔特公平7-103679号公報〕(異議申立書の甲第1号証)記載の発明
本件特許出願の現実の出願日(平成10年3月6日)前に公知である原出願の公告公報である刊行物1には、吊り足場組立て工法とそれに使用される足場材に関して、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】支持材Aから吊下げたワイヤ、チェーン等の索条Bを、作業者がのれる広さの踏み材2が取り付けられている足場材1に係止して同足場材1を支持材Aと交差する向きに吊下げ、この足場材1の先方或は後方に他の足場材1を前記足場材1と同様の向きに吊り下げて並べ、並べた足場材1のうち一方の足場材1の配列方向連結具4と他方の足場材1の配列方向連結受部21を連結して両足場材1を連結し、この足場材1の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。【請求項2】請求項1記載の吊り足場組立て工法において、支持材Aと交差する向きに吊下げた足場材1の横に、それと同じ向きにして他の足場材1を吊り下げ、横に隣接する両足場材1の横連結受部2に横連結具5を係止して足場材1を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。【請求項3】基材1aに作業者がのれる広さの網や板等の踏み材2を取り付け、同基材1aの2箇所以上に支持材Aから吊下げるチェーン、ワイヤ等の索条Bを係止して基材1aを支持具Aにそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部3を設け、基材1aに、支持材Aと交差する向きに吊下げて並べた足場材1同士を連結する配列方向連結具4を設け、基材1aのうち配列方向連結具4と反対側に配列方向連結受部21を設け、同基材1aの横方向端部側に、支持材Aと交差する向きに吊り下げられた足場材1とその横にそれと同じ向きに吊り下げられた他の足場材1とを連結する横連結具5を係止可能な横連結受部23を設けてなることを特徴とする足場材。」(特許請求の範囲)
(イ)「また、踏み材2の上に作業者がのって安定した状態で吊り下げ作業や組立て作業を行うことができる。」(3頁5欄28〜30行)
(ウ)「第6図〜第8図は同工法に使用される足場材1の一例である。これらの図に示す1aは基材である。この基材1aは2本の金属製の角パイプ10が対向して配置され、その両端部に金属製の短い丸パイプ11を貫通させて両角パイプ10を連結して、作業者がのれる広さの細長角型に形成されている。また前記角パイプ10間は適宜間隔毎にアルミニウム製の軽量連結鋼材12により支持固定されている。第1図〜第8図に示す3は係止部であり、これは橋梁の桁材等の支持材Aから吊下げられたチェーン、ワイヤー等の索条Bを係止するためのものであり、前記基材1aの長手方向両端部に設けられている。」(3頁5欄37〜49行)
(エ)「人がのれる広さの足場材1を幅方向に連結固定して安定した吊り足場を作り、その上に作業者Mがのって順次別の足場材1を連結固定するため、従来のように細く不安定な縦材(単管)Eや横材(単管)Fの上に作業者Mがのる必要がなく、作業者Mが落下する危険性も少なく、作業の安全性が著しく向上する。」(4頁8欄15〜20行)
(オ)「人がのれる広さの足場材1を幅方向に連結固定して吊り足場を作り、その上に作業者Mがのって順次別の足場材1を連結固定するものであるため、従来のようにクレーン等を移動させる必要がなく、高速道路の橋梁工事等でその下の道路を閉鎖する必要もなく、交通の妨げになることもない。また、クレーンを使用できない箇所でも、安全に且つ短期間に吊り足場を作ることができる。」(4頁8欄21〜27行)
これら(ア)〜(オ)の記載を含む刊行物1全体の記載及び足場に係る当業者の技術常識によれば、刊行物1には以下の発明が記載されているものと認められる。
《刊行物1記載の発明1》(本件訂正発明1に対応)
「ワイヤ、チェーン等の索条Bを支持材Aから吊り下げ、その吊り下げた索条Bに、2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる基材1aに作業者がのれる広さの踏み材2を取り付けた足場材1を係止して、同足場材1を支持材Aにそれと交差する向きに吊り下げ、この足場材1の先方或は後方に他の足場材1を前記足場材1と同様の向きに吊り下げ、両足場材1のうち一方の足場材1の配列方向連結具4と他方の足場材1の配列方向連結受部21とを連結して両足場材1を並べて連結し、この足場材1の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにした吊り足場組立て工法。」
《刊行物1記載の発明2》(本件訂正発明6に対応)
「2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる基材1aに作業者がのれる広さの網や板等の踏み材2を取り付け、同基材1aの2箇所以上に支持材Aから吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条Bを係止して基材1aを支持材Aにそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部3を設け、基材1aに、支持材Aと交差する向きに吊り下げて並べた足場材1同士を連結する配列方向連結具4を設け、基材1aのうち配列方向連結具4と反対側に前記配列方向連結具4を連結可能な配列方向連結受部21を設けた吊り足場材1。」
《刊行物1記載の発明3》(本件訂正発明4に対応)
「支持材Aと交差する向きに吊り下げた足場材1の横に、それと同じ向きにして他の足場材1を吊り下げ、横に隣接する両足場材1の横連結受部23に横連結具5を係止して足場材1を横方向にも連結するようにした吊り足場組立て工法。」
《刊行物1記載の発明4》(本件訂正発明5に対応)
「足場材1の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材1の上で行ない、この足場材1の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てるようにした吊り足場組立て工法。」
《刊行物1記載の発明5》(本件訂正発明10に対応)
「基材1aが2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる吊り足場材1。」


【5】本件訂正発明1,4〜6,10と刊行物1記載の発明との対比・判断
〔1〕本件訂正発明1について
本件訂正発明1と刊行物1記載の発明1とを対比すると、刊行物1記載の発明1の「索条B」,「支持材A」,「配列方向連結具4」,「配列方向連結受部21」が、本件訂正発明1の「索条(B)」,「支持材(A)」,「配列方向連結具(4)」,「配列方向連結受部(21)」にそれぞれ相当し、また、刊行物1記載の発明1の「2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる基材1aに作業者がのれる広さの踏み材2を取り付けた足場材1」が、本件訂正発明1の「基材(1a)に作業者がのれる広さの踏み材(2)を取り付けたパネル状の足場材(1)」に相当することは明かであるから、両者は一致する。

〔2〕本件訂正発明4について
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明4と刊行物1記載の発明1を引用する刊行物1記載の発明3とを対比すると、刊行物1記載の発明3の「横連結受部23」,「横連結具5」が、本件訂正発明4の「横連結受部(23)」,「横連結具(5)」にそれぞれ相当し、その他の各部材の対応関係は上記〔1〕「本件訂正発明1について」の項で検討したとおりであるから、両者は一致する。

〔3〕本件訂正発明5について
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明5又は本件訂正発明4(本件訂正発明1を引用)を引用する本件訂正発明5と刊行物1記載の発明1を引用する刊行物1記載の発明4とを対比すると、各部材の対応関係は上記〔1〕「本件訂正発明1について」及び〔2〕「本件訂正発明4について」の項で検討したとおりであるから、両者は一致する。

〔4〕本件訂正発明6について
本件訂正発明6と刊行物1記載の発明2とを対比すると、刊行物1記載の発明2の「係止部3」,「2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる基材1aに作業者がのれる広さの網や板等の踏み材2を取り付け」が、本件訂正発明6の「係止部(3)」,「基材(1a)に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材(2)を取り付けてパネル状にし」にそれぞれ相当し、その他の各部材の対応関係は上記〔1〕「本件訂正発明1について」の項で検討したとおりであるから、両者は一致する。

〔5〕本件訂正発明10について
本件訂正発明6を引用する本件訂正発明10と刊行物1記載の発明2を引用する刊行物1記載の発明5とを対比すると、刊行物1記載の発明5の「基材1aが2本の金属製の角パイプ10をその両端部において金属製の短い丸パイプ11で連結しさらに適宜間隔毎に軽量連結鋼材12により支持固定して作業者がのれる広さの細長角型に形成してなる」が、本件訂正発明10の「基材(1a)が方形の枠状である」に相当し、その他の各部材の対応関係は上記〔4〕「本件訂正発明6について」の項で検討したとおりであるするから、両者は一致する。


【6】特許異議の申立についてのまとめ
結局、本件訂正発明1,4〜6,10は、刊行物1記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。


[むすび]
以上のとおりであるから、本件発明1,4〜6,10は、それぞれ特許を受けることができない発明である。
したがって、本件発明1,4〜6,10についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
吊り足場組立て工法と吊り足場材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ、チェーン等の索条(B)を支持材(A)から吊り下げ、その吊り下げた索条(B)に、基材(1a)に作業者がのれる広さの踏み材(2)を取り付けたパネル状の足場材(1)を係止して、同足場材(1)を支持材(A)にそれと交差する向きに吊り下げ、この足場材(1)の先方或は後方に他の足場材(1)を前記足場材(1)と同様の向きに吊り下げ、両足場材(1)のうち一方の足場材(1)の配列方向連結具(4)と他方の足場材(1)の配列方向連結受部(21)とを連結して両足場材(1)を並べて連結し、この足場材(1)の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項2】
請求項1記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具(4)が足場材(1)から外側に突設され、その配列方向連結具(4)を他方の足場材(1)の配列方向連結受部(21)に差し込んで両足場材(1)を連結し、この足場材(1)の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項3】
請求項2記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込んで両者を連結することを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、支持材(A)と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材(1)の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材(1)を吊り下げ、横に隣接する両足場材(1)の横連結受部(23)に横連結具(5)を係止して足場材(1)を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、パネル状の足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない、このパネル状の足場材(1)の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。
【請求項6】
基材(1a)に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材(2)を取り付けてパネル状にし、同基材(1a)の2箇所以上に支持材Aから吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条(B)を係止して基材(1a)を支持具(A)にそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部(3)を設け、基材(1a)に、支持材(A)と交差する向きに吊り下げて並べた足場材(1)同士を連結する配列方向連結具(4)を設け、基材(1a)のうち配列方向連結具(4)と反対側に前記配列方向連結具(4)を連結可能な配列方向連結受部(21)を設けたことを特徴とする吊り足場材。
【請求項7】
請求項6記載の吊り足場材において、踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたことを特徴とする吊り足場材。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)を基材(1a)から突設し、基材(1a)のうち配列方向連結具(4)と反対側に前記配列方向連結具(4)を差し込み可能な配列方向連結受部(21)を設けたことを特徴とする吊り足場材。
【請求項9】
請求項8記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)が、基材(1a)内に形成された差し込み孔であることを特徴とする吊り足場材。
【請求項10】
請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の吊り足場材において、基材(1a)が方形の枠状であることを特徴とする吊り足場材。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込み可能な穴(13、14)を設けたことを特徴とする吊り足場材。
【請求項12】
請求項11記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)に形成された穴(13)が当該配列方向連結具(4)の突出方向に横長であることを特徴とする吊り足場材。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高速道路、橋梁、プラントの輸送管を配管するためのラック、建物等の建設工事或はそれらの改修工事等を行う場合に、桁材や高欄等の支持具から下方に足場材を吊り下げて吊り足場を作るのに使用される吊り足場組立て工法と足場材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速道路や橋梁等の工事を始めとする各種の建設、土木工事では、吊り足場を作り、その上で建設作業や改修工事等を行なうことが多い。この吊り足場は従来は例えば以下のようにして組立てられていた。
a.第9図のように、作業者Mがのったクレ-ン等Cを移動させながら、二本の桁材等の支持材Aにチェ-ン吊下用クランプDを所定間隔で取付け、夫々のクランプDにチェ-ンBを吊り下げる。
b.第10図のように吊り下げられているチェ-ンBに親パイプと呼ばれる縦材Eを通し、その上に熟練した鳶職人等の作業者Mがのって隣り合う縦材E同士を連接させる(これを通常は親パイプを流すという)。
c.第11図のように吊り下げられている縦材Eの間に、ころがしパイプと呼ばれる横材Fを渡してそれらを直交クランプ等の固定具Gにより固定する。
d.同横材Fの中央部に腹起こしパイプと称される補助材Hを載せ、これと横材Fとを直交クランプ等の固定具Gで固定する。
e.第12図のように前記横材Fの上に足場板Jを載せて同横材Fに番線Kにより固定する。
f.前記足場板Jに作業者Mがのって、それより先の縦材E間に別の横材Fを渡して固定し、その横材Fに足場板Jを載せて固定する。この作業を繰返して所望とする範囲に吊り足場を組立ててゆく。
g.第13図のように前記縦材Eに手摺Lを取付けたり、必要に応じて、吊り足場の下に落下防止用ネットNを張ったり、吊り足場の上に養生シ-トを被せたりする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の吊り足場組立て工法は以下のような問題があった。
a.第10図のように先に吊り下げられている縦材Eにのって次の縦材Eをチェ-ンBの間に流さなければならないので、その作業は熟練者でなければ難しく、しかも手間と時間がかかる。また如何に熟練した鳶職人といえども落下する危険性が高く、作業の安全面に多くの問題があった。
b.第11図のように縦材Eに横材Fを渡して固定したり、第12図のように足場板Jを固定したり、第13図のように落下防止用ネットNを張ったりしなければならないので、それらの作業が面倒であり、完成までに多くの手間と時間がかかり、その分だけコスト高になり、しかもこの吊り足場を仮設するために工期全体が長びく。
c.第9図のようにクレ-ンCを移動させなければならないので、非常に面倒であり、手間もかかる。しかも例えば高速道路の橋梁工事ではクレ-ンCを移動するために橋梁の下の道路を封鎖する必要があるので、通行の邪魔になり、交通渋滞の原因ともなる。しかも橋梁の下が川や池等の場合はクレ-ンを使用できないことがあり、その場合は全て人手作業になるので作業性が著しく低下し、しかも危険性も高まる。
また、従来は吊り足場の組み立てに必要な単管、足場板J、番線、落下防止用ネットN等の各種部材が個別に独立してばらばらになっているので、現場での組立作業が面倒であるとか、組立中に部品が落下して危険であるとか、各部品の管理や、取扱い、運搬等が面倒で煩雑であるといった各種難点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、作業の安全性が高く、作業性がよく、短期間に且つ未熟者でも手軽に吊り足場を組み立てることができるようにした吊り足場組立て工法と、足場材として必要な各種部材がまとめられて一枚に形成されて吊り足場を組み立て易く、管理、取扱も容易で、吊り足場を組み立て中に部品が落下する危険もない足場材を提供することにある。
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の第1の吊り足場組立て工法は、ワイヤ、チェーン等の索条を支持材から吊り下げ、その吊り下げた索条に作業者がのれる広さの踏み材が取り付けられたパネル状の足場材を係止して、同足場材を支持材にそれと交差する向きに吊り下げ、この足場材の先方或は後方に他の足場材を前記足場材と同様の向きに吊り下げ、両足場材のうち一方の足場材の配列方向連結具と他方の足場材の配列方向連結受部とを連結して両足場材を並べて連結し、この足場材の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。
【0006】
本発明の第2の吊り足場組立て工法は、第1の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具が足場材から外側に突設され、その配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結し、この足場材の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。
【0007】
本発明の第3の吊り足場組立て工法は、第2の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込んで両者を連結する工法である。
【0008】
本発明の第4の吊り足場組立て工法は、第1乃至第3の夫々の吊り足場組立て工法において、支持材と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材を吊り下げ、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立てる工法である。
【0009】
本発明の第5の吊り足場組立て工法は、第1乃至第4の夫々の吊り足場組立て工法において、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行ない、この足場材の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。
【0010】
本発明の第6の吊り足場材は、基材に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材を取り付けてパネル状にし、同基材の2箇所以上に支持材から吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条を係止して基材を支持具にそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部を設け、基材に、支持材と交差する向きに吊り下げて並べた足場材同士を連結する配列方向連結具を設け、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を連結可能な配列方向連結受部を設けたものである。
【0011】
本発明の第7の吊り足場材は、第6記載の吊り足場材の踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたものである。
【0012】
本発明の第8の吊り足場材は、第6又は第7の吊り足場材の配列方向連結具を基材から突設し、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を差し込み可能な配列方向連結受部を設けたものである。
【0013】
本発明の第9の吊り足場材は、第8の吊り足場材において、配列方向連結受部を、基材内に形成された差し込み孔としたものである。
【0014】
本発明の第10の吊り足場材は、第6乃至第9の吊り足場材において、基材を方形の枠状としたものである。
【0015】
本発明の第11の吊り足場材は、第8乃至第10の吊り足場材において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込み可能な穴を設けたものである。
【0016】
本発明の第12の吊り足場材は、第11の吊り足場材において、配列方向連結具に形成された穴を当該配列方向連結具の突出方向に横長としたものである。
【0017】
【発明の実施形態】
第1図〜第5図は本発明の吊り足場組立て工法の一実施例であり、第6図〜第8図は同工法に使用される足場材1の一例である。この足場材1は基材1aに踏み材2を取り付けてパネル状にしてある。基材1aは2本の金属製の角パイプ10が対向して配置され、その両端部に金属製の短い丸パイプ11を貫通させて両角パイプ10を連結して、作業者がのれる広さの細長角型に形成されている。また前記角パイプ10間は適宜間隔毎にアルミニウム製の軽量連結鋼材12により支持固定されている。
【0018】
第1図〜第8図に示す3は係止部であり、これは橋梁の桁材等の支持材Aから吊り下げられたチェ-ン、ワイヤー等の索条Bを係止するためのものであり、前記基材1aの長手方向両端部に設けられている。この実施例では係止部3として単管パイプを使用し、それを基材1aの長手方向両側の丸パイプ11とそれより内側に設けられた軽量連結鋼材12との間に渡してなる。この係止部3に桁材等の支持材Aから吊り下げられている索条Bを掛けることにより、前記基材1を支持材Aにそれと交差する向きに吊り下げることができる。
【0019】
第1図〜第8図の2は踏み材である。この実施例の踏み材2にはエキスパンドメタルが使用されている。この場合、踏み材2は基材1aの幅方には全幅に亙って配置固定されているが、長さは基材1aの長手方向の寸法よりも短くして、踏み材2の長手方向両端部と基材1aと間に、隣り合う基材1a同士を横方向に連結する横連結具5を差込んでセット可能な空間部22を形成してある。また、踏み材2の長さを基材1aよりも短くすることにより、軽量で、しかも足場面積の十分に広い吊り足場を得ることができる。この場合、踏み材2を基材1aの幅方向だけでなく長手方向の全面をも覆うように取付けておけば、足場面積の十分に広い吊り足場を得ることができ、吊り足場上の物品が落下することもない。また、従来の第13図の様にように落下防止用ネットNを張る必要がなく、その分だけ足場組立て作業が容易になり、施工に要する時間を短縮でき、コストを低減することができる。
【0020】
踏み材2は網状のエキスパンドメタル以外のものであってもよく、例えば板材とか樹脂製板等の平板状のものを使用してもよい。踏み材2は基材1aの長手方向両端部までの全面に取付けてもよい。踏み材2が網状のものの場合はその網の目に索条Bを通して前記係止部3に係止するのがよく、踏み材2が平板状のものでしかも全面に取付けられた場合は、係止部3の近くに貫通穴を開けて空間部22を形成し、その空間部22に索条Bを通して係止部3に係止するのがよい。いずれの場合も、基材1と踏み材2との間には横連結具5を差込んでセット可能な空間部22を形成してある。
【0021】
第3図、第6図、第7図に示す4は配列方向連結目、21は配列方向連結受部であり、これらは支持材Aに吊り下げられて配列方向(支持材Aの長手方向)に隣接する2つの基材1a同士をその配列方向(前後方向)に連結するためのものである。
【0022】
この実施例の配列方向連結具4には第6図、第7図に明示するようにB型ジョイントが使用され、その一端が基材1aの二本の丸パイプ11の夫々に差込まれて取付けられ、他端が基材1の側面から外側に突設されている。
【0023】
前記の配列方向連結受部21には基材1の長手方向両端に取付けられた丸パイプ11の通孔のうち、配列方向連結具4が取付けられた端部と反対側の端部を利用し、その端部を配列方向連結受部21としてある。
【0024】
そして、配列方向連結具4の他端側を他方の基材1aの丸パイプ11の通孔(配列方向連結受部21)内に差込み、この配列方向連結具4に形成されている貫通穴13と丸パイプ11に形成されている係止穴14とを位置合わせし、同丸パイプ11の外側からそれらの穴13、14にグラビティ-ロック等の貫通部材15を貫通させると、同配列方向連結具4が丸パイプ11から抜けなくなるようにしてあり、これにより前記足場材1が配列方向に連結されるようにしてある。
【0025】
第5図、第8図に示す5は横連結具であり、これは第3図に示す様に基材1a同士をその長手方向(配列方向に対して横方向)に連結するためのものである。この連結具5には第8図に示すように通常の固定クランプが使用されている。
【0026】
この横連結具5は基材1aと踏み材2の長手方向両端部間に形成された空間部22に差込んでセットすると共に、基材1aの長手方向(横方向)に並べられた2つの足場材1の丸パイプ11(この実施例では丸パイプ11を横連結受部23としてある)に下方から係止固定して両横連結受部23同士を連結し、これにより基材1a同士を横方向に連結できるようにしてある。
【0027】
横連結具5は連結する2つの基材1aのいずれか一方の横連結受部23に予め取付けておいてもよく、それとは別にしておいて、現場で取付けるようにしてもよい。横連結具5の構造やその連結機構は前記以外のものであってもよい。
【0028】
次に、本発明の吊り足場組立て工法の実施例を説明する。
▲1▼.第1図のように二本の桁材等の支持材Aの対向位置にチェ-ン吊下用クランプDを取付けてそれに索条Bを吊り下げる。
▲2▼.その索条Bを足場材1の長手方向両端部に設けられている係止部3の夫々に掛けて、その足場材1を支持材A間に支持材Aに対して交差する向きにして水平に吊り下げる。
▲3▼.この足場材1の上面に取付けられている踏み材2に第2図のように作業者Mがのって支持材Aの先方に別のクランプDを取付け、それに索条Bを吊り下げる。
▲4▼.この索条Bを第3図のように他の足場材1の長手方向両端部に設けられている係止部3の夫々に掛けて、その足場材1を先に吊り下げた足場材1の先方にそれと同じ向きに吊り下げて並べる。
▲5▼.後から吊り下げた足場材1に取付けられている配列方向連結具4と先に吊り下げた足場材1の丸パイプ11の通孔(配列方向連結受部21)とを第6図、第7図のように連結して二つの吊り足場材をその配列方向(前後方向)に連結する。以下、第2図、第3図、第6図、第7図の作業を繰返して第4図のように多数の足場材1をその配列方向に連結して吊り足場を組立てる。
この場合、各足場材1には踏み材2が取付けられているので、第12図に示す従来例のように別の足場板Jを横材Fに番線Kで固定する必要がなく、また第13図に示す従来例のように落下防止用ネットNを別に取付ける必要もない。
▲6▼.前記のようにして組立てられた吊り足場の幅が狭い場合には、第5図のように隣の支持材AにクランプDを取付けてそれに索条Bを吊り下げ、その索条Bを別の足場材1の係止部3に掛け、同足場材1を先に吊り下げられている足場材1の長手方向横に吊り下げる。この足場材1と先に組立てられている足場材1の丸パイプ11(横連結受部23)に横連結具(例えばクランプ)5を係止固定して両足場材1を連結し、吊り足場を横方向に所望幅に広げる。
▲7▼.第5図のように組立てられた吊り足場には必要に応じて手摺を取付けたり、養生シ-トを被せたりする。
【0029】
【発明の効果】
本発明の第1の吊り足場組立て工法は次のような効果がある。
▲1▼.人がのれる広さのパネル状の足場材を配列方向に吊り下げて連結固定して吊り足場を作るため、その上に作業者がのって順次別の足場材を吊り下げて連結固定することができ、従来のように細く不安定な縦材(単管)や横材(単管)の上に作業者がのる必要がなく、作業者が落下する危険性も少なく、作業の安全性が著しく向上する。また、従来のようにクレ-ン等を使用しなくとも足場組立て作業ができ、高速道路の橋梁工事等でその下の道路を閉鎖する必要もなく、交通の妨げになることもない。また、クレ-ンを使用できない箇所ででも、安全に且つ短期間に吊り足場を作ることができる。
▲2▼.足場材が基材に踏み材を固定してパネル状にしてあるので、先に吊り下げた足場材の上に作業者がのり易く、しかも安定性があり、足場材の吊り下げ、足場材の連結等の作業が非常にし易くなり、吊り足場の組み立て作業が安全になる。また、従来のように現場で組立てた単管の上にそれとは別体の足場板をのせ、その足場板を横材に番線で固定する必要もなく、足場組立て作業が容易になる。
▲3▼.足場材の基材に踏み材、配列方向連結具、配列方向連結受部が取り付けられているので、その足場材を現場で索条で吊り下げるだけで、他の部材を必要とせずに吊り足場を組立てることができ、しかも熟練も要せず、誰でも手軽に吊り足場を組立てることができる。
▲4▼.基材に踏み材、配列方向連結具4、配列方向連結受部が取り付けられているパネル状の足場材を吊り下げるので、吊り下げられて隣接する足場材のうち一方の足場材の配列方向連結具と他方の足場材の配列方向連結受部を連結するだけで隣接する足場材同士をその配列方向(前後方向)に手軽に連結することができ、施工に要する時間を大幅に短縮でき、ひいては吊り足場組立てに要するコストが大幅に低減する。
▲5▼.足場材が支持材にそれと交差する向きに吊り下げられるので、多数の足場材を離れた2つの支持材間に吊り下げて連結することにより、離れた2つの支持材間に吊り足場を組立てることができる。
▲6▼.足場材を吊り下げるのがチェーン、ワイヤ等の索条であるため、索条の長さを調節して吊り下げる足場材の高さを調節することができ、また、索条は360度いずれの方向にも首振りできるので足場材に係止し易くもなり、足場材を支持材と交差する向きに吊り下げることも容易になる。
【0030】
本発明の第2の吊り足場組立て工法は、足場材から外側に突設された配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結するので、足場材の連結が容易且つ確実になる。
【0031】
本発明の第3の吊り足場組立て工法は、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込んで両者を連結するので、連結が確実になる。
【0032】
本発明の第4の吊り足場組立て工法は、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するので、吊り足場を配列方向だけでなく、横方向にも容易に組立てることができる。
【0033】
本発明の第5の吊り足場組立て工法は、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行なうので安全で、作業し易く、作業性も向上する。
【0034】
本発明の第6の吊り足場材はパネル状であるため、その上に作業者がのって次の吊り足場材を吊り下げたり、後から吊り下げた吊り足場材を先に吊り下げた吊り足場材に連結したりすることができ、しかも、安定した状態で吊り下げ作業や組立て作業を行うことができるので、取扱が容易であり、作業者が安全であり、作業もし易くなり、作業能率も向上する。また、1枚の吊り足場材に係止部と、配列方向連結具と、配列方向連結受部をまとめてあるので、他の部材を使用することなく、その足場材1を吊り下げて連結するだけで手軽に吊り足場を組立てることができ、熟練も要せず、誰でも組立て可能である。踏み材が基材に固定されているので、従来のように足場板を横材に番線で固定する必要がなく、足場の組立て作業が容易になる。
【0035】
本発明の第7の吊り足場材は、基材に横連結具を係止可能な横連結受部を設けたので、横方向への連結も容易になり、吊り足場の横幅の調節も容易になる。
【0036】
本発明の第8の吊り足場材は、配列方向連結具を基材から突設したので、それを配列方向連結受部に差し込むだけで足場材の横方向への連結が可能になる、連結が容易にもなる。
【0037】
本発明の第9の吊り足場材は、配列方向連結受部が基材内に形成された差し込み孔であるため、配列方向連結受部の形成が容易になる。
【0038】
本発明の第10の吊り足場材は、基材1aが方形の枠状であるため、形状が安定する。
【0039】
本発明の第11、12の吊り足場材は、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに穴を設けたので、両穴に貫通部材を差し込むだけで、両者を容易且つ確実に連結できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の吊り足場組立て工法における第1工程の一例を示す説明図。
【図2】
本発明の吊り足場組立て工法における第2工程の一例を示す説明図。
【図3】
本発明の吊り足場組立て工法における第3工程の一例を示す説明図。
【図4】
本発明の吊り足場組立て工法における第4工程の一例を示す説明図。
【図5】
本発明の吊り足場組立て工法による吊り足場の組立て途中の斜視図。
【図6】
本発明の吊り足場材の一例を示す斜視図。
【図7】
本発明の吊り足場材の他例を示す斜視図。
【図8】
本発明の吊り足場材の横への連結構造の説明図。
【図9】
従来の吊り足場組立て工法の第1工程の説明図。
【図10】
従来の吊り足場組立て工法の第2工程の説明図。
【図11】
従来の吊り足場組立て工法の第3工程の説明図。
【図12】
従来の吊り足場組立て工法の第4工程の説明図。
【図13】
従来の吊り足場組立て工法の第5工程の説明図。
【符号の説明】
1は足場材
1aは基材
2は踏み材
3は係止部
4は配列方向連結具
5は横連結具
13は穴
15は貫通部材
21は配列方向連結受部
23は横連結受部
Aは支持材
Bは索条
 
訂正の要旨 訂正の要旨
〔1〕訂正事項A:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
〔2〕訂正事項B:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を請求項2と訂正し、同請求項2を「【請求項2】請求項1記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具(4)が足場材(1)から外側に突設され、その配列方向連結具(4)を他方の足場材(1)の配列方向連結受部(21)に差し込んで両足場材(1)を連結し、この足場材(1)の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。
〔3〕訂正事項C:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項4を請求項3と訂正し、同請求項3を「【請求項3】請求項2記載の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込んで両者を連結することを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。
〔4〕訂正事項D:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項5を請求項4と訂正し、同請求項4を「【請求項4】請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、支持材(A)と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材(1)の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材(1)を吊り下げ、横に隣接する両足場材(1)の横連結受部(23)に横連結具(5)を係止して足場材(1)を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。
〔5〕訂正事項E:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を請求項5と訂正し、同請求項5を「【請求項5】請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吊り足場組立て工法において、パネル状の足場材(1)の吊り下げ作業、連結作業を先に吊り下げた足場材(1)の上で行ない、このパネル状の足場材(1)の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てるようにしたことを特徴とする吊り足場組立て工法。」と訂正する。
〔6〕訂正事項F:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を請求項6と訂正する。
〔7〕訂正事項G:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項8を請求項7と訂正し、同請求項7を「【請求項7】請求項6記載の吊り足場材において、踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔8〕訂正事項H:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項9を請求項8と訂正し、同請求項8を「【請求項8】請求項6又は請求項7記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)を基材(1a)から突設し、基材(1a)のうち配列方向連結具(4)と反対側に前記配列方向連結具(4)を差し込み可能な配列方向連結受部(21)を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔9〕訂正事項I:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項10を請求項9と訂正し、同請求項9を「【請求項9】請求項8記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)が、基材(1a)内に形成された差し込み孔であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔10〕訂正事項J:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項11を請求項10と訂正し、同請求項10を「【請求項10】請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の吊り足場材において、基材(1a)が方形の枠状であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔11〕訂正事項K:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項12を請求項11と訂正し、同請求項11を「【請求項11】請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の吊り足場材において、配列方向連結受部(21)とそれに差し込まれた配列方向連結具(4)とに貫通部材(15)を差し込み可能な穴(13、14)を設けたことを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔12〕訂正事項L:特許請求の範囲の減縮を目的として、特許明細書の特許請求の範囲の請求項13を請求項12と訂正し、同請求項12を「【請求項12】請求項11記載の吊り足場材において、配列方向連結具(4)に形成された穴(13)が当該配列方向連結具(4)の突出方向に横長であることを特徴とする吊り足場材。」と訂正する。
〔13〕訂正事項M:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0006】を削除する。
〔14〕訂正事項N:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0007】を段落【0006】と訂正し、同段落【0006】を「【0006】本発明の第2の吊り足場組立て工法は、第1の吊り足場組立て工法において、配列方向連結具が足場材から外側に突設され、その配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結し、この足場材の吊り下げ及び連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。」と訂正する。
〔15〕訂正事項O:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0008】を段落【0007】と訂正し、同段落【0007】を「【0007】本発明の第3の吊り足場組立て工法は、第2の吊り足場組立て工法において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結臭とに貫通部材を差し込んで両者を連結する工法である。」と訂正する。
〔16〕訂正事項P:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0009】を段落【0008】と訂正し、同段落【0008】を「【0008】本発明の第4の吊り足場組立て工法は、第1乃至第3の夫々の吊り足場組立て工法において、支持材と交差する向きに吊り下げたパネル状の足場材の横に、それと同じ向きにして他のパネル状の足場材を吊り下げ、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するようにしたことを特徴とする吊り足場組立てる工法である。」と訂正する。
〔17〕訂正事項Q:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0010】を段落【0009】と訂正し、同段落【0009】を「【0009】本発明の第5の吊り足場組立て工法は、第1乃至第4の夫々の吊り足場組立て工法において、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行ない、この足場材の吊り下げと連結を繰返して吊り足場を組立てる工法である。」と訂正する。
〔18〕訂正事項R:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0011】を段落【0010】と訂正し、同段落【0010】を「【0010】本発明の第6の吊り足場材は、基材に作業者がのれる広さの網や板等の踏み材を取り付けてパネル状にし、同基材の2箇所以上に支持材から吊り下げるチェーン、ワイヤ等の索条を係止して基材を支持具にそれと交差する向きに吊り下げ可能な係止部を設け、基材に、支持材と交差する向きに吊り下げて並べた足場材同士を連結する配列方向連結具を設け、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を連結可能な配列方向連結受部を設けたものである。」と訂正する。
〔19〕訂正事項S:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0012】を段落【0011】と訂正し、同段落【0011】を「【0011】本発明の第7の吊り足場材は、第6記載の吊り足場材の踏み板(2)に足場材(1)を索条(B)で吊り下げるための貫通孔を設けたものである。」と訂正する。
〔20〕訂正事項T:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0013】を段落【0012】と訂正し、同段落【0012】を「【0012】本発明の第8の吊り足場材は、第6又は第7の吊り足場材の配列方向連結具を基材から突設し、基材のうち配列方向連結具と反対側に前記配列方向連結具を差し込み可能な配列方向連結受部を設けたものである。」と訂正する。
〔21〕訂正事項U:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0014】を段落【0013】と訂正し、同段落【0013】を「【0013】本発明の第9の吊り足場材は、第8の吊り足場材において、配列方向連結受部を、基材内に形成された差し込み孔としたものである。」と訂正する。
〔22〕訂正事項V:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0015】を段落【0014】と訂正し、同段落【0014】を「【0014】本発明の第10の吊り足場材は、第6乃至第9の吊り足場材において、基材を方形の枠状としたものである。」と訂正する。
〔23〕訂正事項W:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0016】を段落【0015】と訂正し、同段落【0015】を「【0015】本発明の第11の吊り足場材は、第8乃至第10の吊り足場材において、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込み可能な穴を設けたものである。」と訂正する。
〔24〕訂正事項X:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0017】を段落【0016】と訂正し、同段落【0016】を「【0016】本発明の第12の吊り足場材は、第11の吊り足場材において、配列方向連結具に形成された穴を当該配列方向連結具の突出方向に横長としたものである。」と訂正する。
〔25〕訂正事項Y:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0018】を段落【0017】と訂正し、以下同様に、段落【0019】〜【0029】を段落【0018】〜【0028】とそれぞれ訂正する。
〔26〕訂正事項Z:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0030】を段落【0029】と訂正し、同段落【0029】を「【0029】【発明の効果】本発明の第1の吊り足場組立て工法は次のような効果がある。…(中略)…容易になる。」と訂正する。
〔27〕訂正事項a:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0031】を段落【0030】と訂正し、同段落【0030】を「【0030】本発明の第2の吊り足場組立て工法は、足場材から外側に突設された配列方向連結具を他方の足場材の配列方向連結受部に差し込んで両足場材を連結するので、足場材の連結が容易且つ確実になる。」と訂正する。
〔28〕訂正事項b:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0032】を段落【0031】と訂正し、同段落【0031】を「【0031】本発明の第3の吊り足場組立て工法は、配列方向連結受部とそれに差し込まれた配列方向連結具とに貫通部材を差し込んで両者を連結するので、連結が確実になる。」と訂正する。
〔29〕訂正事項c:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0033】を段落【0032】と訂正し、同段落【0032】を「【0032】本発明の第4の吊り足場組立て工法は、横に隣接する両足場材の横連結受部に横連結具を係止して足場材を横方向にも連結するので、吊り足場を配列方向だけでなく、横方向にも容易に組立てることができる。」と訂正する。
〔30〕訂正事項d:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0034】を段落【0033】と訂正し、同段落【0033】を「【0033】本発明の第5の吊り足場組立て工法は、足場材の吊り下げ作業と連結作業を先に吊り下げた足場材の上で行なうので安全で、作業し易く、作業性も向上する。」と訂正する。
〔31〕訂正事項e:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0035】を段落【0034】と訂正し、同段落【0034】を「【0034】本発明の第6の吊り足場材はパネル状であるため、その上に作業者がのって次の吊り足場材を吊り下げたり、後から吊り下げた吊り足場材を先に吊り下げた吊り足場材に連結したりすることができ、しかも、…(中略)…踏み材が基材に固定されているので、従来のように足場板を横材に番線で固定する必要がなく、足場の組立て作業が容易になる。」と訂正する。
〔32〕訂正事項f:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0036】を段落【0035】と訂正し、同段落【0035】を「【0035】本発明の第7の吊り足場材は、基材に横連結具を係止可能な横連結受部を設けたので、横方向への連結も容易になり、吊り足場の横幅の調節も容易になる。」と訂正する。
〔33〕訂正事項g:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0037】を段落【0036】と訂正し、同段落【0036】を「【0036】本発明の第8の吊り足場材は、配列方向連結具を基材から突設したので、それを配列方向連結受部に差し込むだけで足場材の横方向への連結が可能になる、連結が容易にもなる。」と訂正する。
〔34〕訂正事項h:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0038】を段落【0037】と訂正し、同段落【0037】を「【0037】本発明の第9の吊り足場材は、配列方向連結受部が基材内に形成された差し込み孔であるため、配列方向連結受部の形成が容易になる。」と訂正する。
〔35〕訂正事項i:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0039】を段落【0038】と訂正し、同段落【0038】を「【0038】本発明の第10の吊り足場材は、基材1aが方形の枠状であるため、形状が安定する。」と訂正する。
〔36〕訂正事項j:明りょうでない記載の釈明を目的として、特許明細書の段落【0040】を段落【0039】と訂正する。
異議決定日 2002-03-29 
出願番号 特願平10-55145
審決分類 P 1 652・ 113- ZA (E04G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小山 清二砂川 克中田 誠  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 憲子
伊波 猛
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3012827号(P3012827)
権利者 株式会社新成工業
発明の名称 吊り足場組立て工法と吊り足場材  
代理人 小林 正治  
代理人 小林 正治  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  

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