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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C23C
管理番号 1062817
異議申立番号 異議2001-72927  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-10-22 
確定日 2002-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3159017号「薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3159017号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 一.手続の経緯
本件特許第3159017号(以下「本件特許」という。)は、平成7年12月11日に特許出願されたものであって、請求項1〜5に係る発明について特許権の設定登録がなされた後、平成13年10月22日付けで特許異議申立人 株式会社神戸製鋼所より、その請求項1〜5に係る特許について特許異議の申立がなされ、その後、平成14年1月15日付けで審判官合議体より特許権者に対して、その請求項1〜5に係る特許について特許取消理由の通知がなされ、これに対して特許権者より、何らの手続がなされなかったものである。

二.本件発明
本件特許の請求項1〜5に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された、次のものである。
「【請求項1】鋼板を焼鈍後冷却し,冷却した鋼板をAlを含有した亜鉛浴へ浸漬して鋼板表面に亜鉛を付着する際に,亜鉛浴温度及び亜鉛浴のAl含有量を制御して,亜鉛浴中で鋼板表面に形成される初期合金層を微細ζ相とすることを特徴とする薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】重量%で、C:0.001〜0.0035%、Si:0.10%以下、Mn:0.08〜2.50%、P:0.005〜0.15%、S:0.001〜0.02%、Sol.Al:0.005〜0.1%、N:0.0035%以下、Ti:0.03〜0.15%を含有する鋼板を、連続溶融亜鉛めっきライン内で焼鈍後侵入板温まで冷却する工程と、侵入板温まで冷却した鋼板を,式(2)に示す範囲でAlを含有した式(3)の温度範囲の亜鉛浴へ浸漬して表面に亜鉛を付着させる工程と,鋼板表面に付着した亜鉛の付着量を制御する工程とを備え,亜鉛浴の温度T℃を浴中Al含有量との関係から式(1)の範囲で設定して、亜鉛浴中で鋼板表面に形成される初期合金層の相を微細ζ相に制御することを特徴とする薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
295+930×Al≦T≦335+930×Al (1)
Al≦0.20 (2)
420≦T (3)
T:浴の温度(℃)、Al:浴中Al含有量(重量%)
【請求項3】鋼中に0.0035%以下のBを添加することを特徴とする請求項2に記載の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】亜鉛付着量を片面あたり40g/m2以下とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】亜鉛付着量を片面あたり30g/m2以下とすることを特徴とする請求項4に記載の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。」
(なお、請求項2中の「式(3)の範囲で設定して」は、明細書全体の記載から見て、「式(1)の範囲で設定して」の誤記として、上記のとおり認定した。)

三.取消理由
一方、上記通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

「本件の請求項1〜5に係る特許は、合議の結果、以下の理由によって取り消すべきものと認める。これについて意見があれば、この通知の発送の日から60日以内に意見書の正本1通及びその副本2通を提出されたい。
理 由
1)本件特許の請求項1、4、5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記引用例1又は3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものである。
2)本件特許の請求項1〜5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である下記引用例1、3〜4-2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
3)本件の請求項1〜5に係る特許は、明細書の記載が下記Aの点で、特許法第36条第4、6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

引用例1.特開平3-249161号公報(特許異議申立の甲第1号証;平成3年11月7日発行)
引用例2.特許第3139353号特許掲載公報(同上、甲第2号証;平成13年2月26日発行)
引用例3.特開平3-191046号公報(同上、甲第3号証;平成3年8月21日発行
引用例4-1.(社)日本鉄鋼協会編「鉄鋼製造法(第4分冊)」(昭和47年6月30日発行)丸善(株)第194〜205頁(同上、甲第4号証-1)
引用例4-2.(社)金属表面技術協会編「金属表面技術便覧(改訂新版)」(昭和51年11月30日発行)日刊工業新聞社、第497〜503頁(同上、甲第4号証-2)
(備考)
I:手続の経緯
本件特許は、平成7年12月11日に出願されたものであって、請求項1〜5に係る発明につき特許権の設定登録がなされた後、平成13年10月22日付けで特許異議申立人 株式会社神戸製鋼所より、その請求項1〜5に係る特許について、特許異議の申立がなされたものである。

II:証拠の記載事実
上記各引用例には、特許異議申立書の「b.証拠の説明」の欄(第2〜3頁、第11〜12頁、第16〜19頁)に指摘された事項が記載されており、併せて以下の事項が記載されている。
引用例1(甲第1号証)
(1-1)「Alを0.05wt%以上0.30wt%以下及びPbを0.30wt%以下含み, 残部がZn及び不可避的不純物からなり、浴温が450℃以上470℃以下に保たれた溶融亜鉛めっき浴に鋼板を浸漬し、引き続き片面当たりの付着量が30g/m2以上となるように付着量を制御した後・・・合金化熱処理を行う合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記溶融亜鉛めっき浴への鋼板浸入温度を[1]式及び[2]式を共に満たすTとし・・・ことを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。([1]、[2]式略。)」(特許請求の範囲)
(1-2)「この発明は、自動車車体や家庭用電化製品等に利用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関連し、加工の際に要求される摺動特性と耐パウダリング性に優れた厚目付合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造に関する。」(第1頁右下欄第6〜10行)
(1-3)「合金化溶融亜鉛めっき鋼板の一般的な製造方法としては、冷間圧延された鋼板を連続溶融亜鉛めっきライン(以下、CGLと称す)で再結晶温度以上に加熱して焼鈍し、次いで460℃程度に加熱された亜鉛浴中に浸漬することにより亜鉛めっきを行い、亜鉛の付着量を制御したは550℃乃至650℃まで再加熱して合金化熱処理を施す方法が知られている。」(第1頁右下欄第15行〜第2頁左上欄第4行)
(1-4)「目付量を減らすことによって皮膜の剥離量が減少しパウダリングの問題が緩和される。このことに着目し、皮膜を薄くしてその耐食性を向上させようとの試みもなされている。・・・これに基づき、従来多く使用されていた45g/m2の目付量のものに替えて、15乃至30g/m2の目付量のものを使用することによって、パウダリングの問題を解決することを提案している。」(第2頁左下欄第4〜14行)
(1-5)「(実施例1) 第1表に示す鋼種(1)、鋼種(2)、鋼種(3)及び鋼種(4)の・・・冷延鋼板をCGLに通板し、溶融亜鉛めっきを施した後、付着量をガスワイピングにより調整し、引き続いて合金化熱処理を施し、得られた合金化亜鉛鍍金鋼板について耐パウダリング性及び摺動特性を調べた。めっき浴組成は、Al0.10wt%、Pb0.03wt%であり、浴温は465℃、付着量は片面当たり70g/m2に調整した。」(第5頁右上欄第3〜13行)、及び、上記「鋼種(1)」の組成(%)が「C 0.045、Si tr.、Mn 0.15、P 0.018、S 0.02、SolAl 0.022、Ti -、Nb -」であったこと。(第4頁左下欄第1表)
(1-6)「(実施例3) 第1表に示す鋼種(1)について、実施例1と同様に溶融亜鉛めっき後合金化熱処理を施し、得られた合金化亜鉛鍍金鋼板について耐パウダリング性及び摺動特性を調べた。めっき浴組成は、Al0.12wt%,Pb0.1wt%であり、浴温は455℃、付着量は片面当たり30g/m2・・・を目標に調整した。・・・・他に付着量の少ない従来例についても行い浴組成をAl0.18wt%、Pb0.1wt%とした。」(第7頁左下欄第5〜19行)

引用例2(甲第2号証)
本引用例2は、本件出願後に頒布されたものであって、以下の記載が認められる。
(2-1)「【請求項1】 重量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.10%以下、Mn:0.08〜2.5%、P:0.005〜0.15%、S:0.001〜0.02%、Sol.Al:0.005〜0.1%を含有する鋼板を、連続溶融亜鉛めっきライン内で焼鈍後、式(2)に示す範囲でAlを含有し、式(1),(3)で規定した浴温範囲の亜鉛浴へ浸漬して表面に亜鉛を付着させる工程と,鋼板表面に付着した亜鉛の付着量を制御する工程とを備え,亜鉛浴の温度T℃を浴中Al含有量との関係から下式の範囲で設定して、亜鉛浴中で形成される初期合金層を微細ζ相に制御することを特徴とする薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
335+930×Al≦T≦375+930×Al
(1)Al≦0.20
(2)420≦T
(3)T:浴の温度(℃)、Al:浴中Al含有量(重量%)
【請求項2】 亜鉛付着量を片面あたり40g/m2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】 亜鉛付着量を片面あたり30g/m2以下とすることを特徴とする請求項2に記載の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。」(特許請求の範囲)
(2-2)「本発明者らは亜鉛浴のAl濃度と温度を任意の値に設定することによって、初期合金層を制御し、ひいては付着量を制御することができる。特に(1),(2),(3)式を満たす範囲に浴のAl濃度と温度を設定すれば、初期合金層が微細なζ相になり、付着量を安定的かつ効果的に小さくすることができることを見出だした。初期合金層の形態の亜鉛浴のAl濃度および温度への依存性は、下地の鋼種成分により異なるため、本発明では、下地鋼板を上記成分に限定した。本発明の鋼は、Alキルド鋼である。」(段落【0011】〜【0012】)
(2-3)「このようにして、ワイピング時に鋼板とめっき皮膜の界面に形成されて いる初期合金層を、微細なζ相になるように制御することにより、ワインピングをより効果的に行えるようにし、結果として、片面当たりの付着量が40g/m2以下ないしは30g/m2以下の薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板を、安定にかつ生産性高く製造することが可能となる。」(段落【0022】)

引用例3(甲第3号証)
(3-1)「C:0.02wt%以下、Si:0.1wt%以下、N:0.01wt%以下、Al:0.1wt%以下を含有し、更にTiを0.2wt%以下又はTi+Nbを0.2wt%以下を含有する冷延鋼板表面に溶融Znめっき後、合金化処理を行う合金化溶融Znめっき鋼板の製造方法において、予め綱板表面を・・・処理した後、0.08wt%以上のAlを含有する溶融Znめっき浴中で、下式を満足する浸入板温Tで溶融Znめっき後、470〜520℃の温度で合金化処理することを特徴とする皮膜加工性に優れた合金化溶融Znめっき鋼板の製造方 法。
(1000A+380)-40≦T≦(1000A+380)+40
但し、T:浸入板温℃ A:めっき浴中Alwt%」(特許請求の範囲)
(3-2)「自動車用鋼板としてプレス成形性に付与する目的で、Ti及びTi?Nbを添加した極低炭素鋼を素材としている場合がほとんどである。」(第1頁右下欄第17〜20行)
(3-3)「合金化溶融Znめっき鋼板のフレーキング性及びパウダリング性については、薄目付(45g/m2以下)の場合、比較的問題は少ない」(第2頁左上欄第18行〜右上欄第1行)
(3-4)「Ti:Tiを鋼中に添加することにより、C、NをそれぞれTiC、TiNとして固定し、これら不純物元素が鋼板のプレス成形性に及ぼす悪影響を削減せしめ、高い延性・・・を有する鋼板を製造することが可能である。」(第3頁左上欄第14〜18行)
(3-5)「浴中Alを0.08wt%以上としたのは、この濃度以下では、通常の連続Znめっきラインでは、めっき時にΓ相が形成し、その後の合金化処理によってパウダリング性が著しく劣るためである。」(第3頁右下欄第18行〜第4頁左上欄第1行)

引用例4-1(甲第4号証-1)
溶融亜鉛メッキ鋼材について以下の記載がなされている。
(4-1-1)「a.亜鉛と鉄との反応 溶融メッキはすべてメッキ素材とメッキ金属との反応によって被覆されるものである。メッキ素材とメッキ金属との間に合金の生成が起こらなければ強固な被覆は望めない。」(第195頁中段)
(4-1-2)「合金層は比較的じん性に富んだδ1相はともかく、一般に加工性が悪いため、ふつうメッキ被覆に必要な量以外の合金層の生成はできるだけ抑制した方がよい.そのため溶融Zn浴中に0.1〜0.2%くらいのAlが添加される。Alが添加されると、浴中の素材がZnと反応するよりさきにAlと選択的に反応し、素地面に微量のAl-Fe合金層が生成し、これがZn-Fe合金層の発達を抑制する。Alを含むメッキ浴を用いれば変形および曲げ加工の容易なメッキ層を得るこができる。」(第195頁下〜第196頁中段)
(4-1-3)「b.亜鉛メッキ鋼板の製造 亜鉛メッキ鋼板の製造法としては、はじめからある寸法に切断された鋼板をメッキする切板メッキと、コイル状になった鋼帯(ストリップ)を連続的にメッキし、あとで鋼板に切断する方法とがあるが、連続溶融Znメッキ設備の大形化および高速化のため、この方法を採用する法が能率的であり、現在はほとんど後者の方法がとられている。連続メッキには素材を酸洗やフラックス処理せず、酸化還元により表面を清浄にしてメッキするゼンジミア法と、酸洗、フラックス処理してメッキするクックノートマン法とに分類される。
(i)ゼンジミア法 この方法は図16・21のようにコイルを巻きもどし、先行コイルとスポット溶接で連結したのち、ストリップ表面に付着した油脂類を加熱・酸化によって焼失させ、そのとき生成したスケールを高温においてガス還元し、ついで空気に触れることなくZn浴中にはいる。ゼンジミア法では表面の前処理のため酸類およびフラックス剤は必要としない。酸化や還元による熱消費量は大きいが、未焼なましのコイルが使える利点があり」(第196頁中段〜第197頁上段)
(4-1-4)「溶融Znの浴の温度はふつう460℃前後で」(第200頁下段)
(4-1-5)「Znメッキ鋼板のメッキ付着量はJISG3302(亜鉛鉄板)に規制されている。Znメッキの付着量の調節はメッキ浴面に設置された一対の絞りロールによって行なわれる。・・・最近になってロールにかわり、ガスワイピング法が開発されるに至った。これはメッキ付着量をガス圧力によって制御する方法である。メッキ付着量の均一性が得られ。グループパターンはまったくみられず美しい仕上がりが得られる。」(第201頁中段)
(4-1-6)「ふつう生産されているZnメッキ板のZnメッキ量を比較すれば、図16・28のようになる。」(第205頁上段)と記載され、そして当該「図16・28」には、溶融メッキの場合につき、「薄メッキ」、「標準メッキ」及び「厚メッキ」とメッキ厚さによる区分ごとに、それぞれのZnメッキ量が示されている。また、同図によると、「薄メッキ」におけるZnメッキ量が片面当り40数g/m2〜80数g/m2であることが示されている。

引用例4-2(甲第4号証-2)
「8・3 亜鉛メッキ(板類)」の欄に以下の記載がある。
(4-2-1)「(1)連続メッキラインの種類 大別すると素材の焼なましの方法およびメッキのための洗浄方式から次のように分類される。タイプ1.火炎洗浄,ライン内焼なまし方式(Sendzimir方式) タイプ2.湿式洗浄,ライン内焼なまし方式(U.S.Steel方式)」(第497頁中段)
(4-2-2)「(3)連続メッキにおけるメッキ浴の管理 連続メッキでは合金層の抑制のためにメッキ浴に0.1〜0.2%Alを添加する点が、切板メッキや鋼管、形鋼などの亜鉛メッキと大きく異なるところで、後者のメッキ層に現われるΓ,δ1,ζの各相はみられず、きわめて薄いFe2Al5およびδ1相の存在が報告されている。鉄と亜鉛の反応は図8・7および図8・8に示す平衡状態図から説明されるが、アルミニウムを含む亜鉛浴に鋼板を浸せきすると、最初にFe-Al化合物の合金層が形成され、ある時間亜鉛の侵食を抑制する効果が認められており、0.1〜0.2%Alの浴ではこの潜伏時間は30秒〜数分間である。連続メッキでは溶融亜鉛との接触時間は数秒〜十数秒であるから、浴中のアルミニウムの管理によってきわめて合金層の薄いメッキが製造される。」(第498頁下段)

III:対比・判断
本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明5」という。)と、引用例1〜4-2に記載された発明とを対比すると、特許異議申立書第3〜8頁の「c.本件発明1及び4〜5について」及び「d.まとめ」の欄、第12〜14頁の「c.本件発明と証拠の対比」及び「d.まとめ」の欄、及び、第19〜24頁の「c.本件発明2〜5と証拠の対比」及び「d.まとめ」の欄に記載されたとおり、引用例2の記載を参酌すれば、本件発明1、4及び5は引用例1に記載された発明であり、本件発明1は引用例3に記載された発明であり、また、本件発明1〜5は引用例1及び3〜4-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明である。
なお、上記の対比・判断においては、本件請求項2及び発明の詳細な説明(段落【0005】)における「式(3)の範囲で設定」なる記載は「式(1)の範囲で設定」の誤記として扱った。

A.(明細書等の記載要件について)
特許請求の範囲及びそれに対応する発明の詳細な説明の記載における、イ:「薄目付け」、ロ:「式(1)〜(3)」、及びハ:「微細ζ相」については、特許異議申立書第24〜26頁の「IV:申立の根拠4に係る具体的理由」の欄 に指摘のとおり、用語の意味内容に客観性がなく(上記イ)、あるいは技術的意義が不明(上記ロ及びハ)であるので、特許法第36条第4、6項に規定する要件を満足しない。」

四.その後の経過、及び結論
これに対して、特許権者からは何らの手続がなされず、そして、 上記通知した取消理由は妥当なものである。

五.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、4及び5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反して特許を受けたものであり、本件請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けたものであり、また、本件請求項1〜5に係る特許は、特許法第36条第4、6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件請求項1〜5に係る特許は、拒絶をすべき旨の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-05-08 
出願番号 特願平7-321875
審決分類 P 1 651・ 536- Z (C23C)
P 1 651・ 113- Z (C23C)
P 1 651・ 121- Z (C23C)
P 1 651・ 537- Z (C23C)
最終処分 取消  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 池田 正人
市川 裕司
登録日 2001-02-16 
登録番号 特許第3159017号(P3159017)
権利者 日本鋼管株式会社
発明の名称 薄目付け溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法  
代理人 小谷 悦司  
代理人 植木 久一  

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