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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1062927
異議申立番号 異議1998-71663  
総通号数 33 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-01-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-08 
確定日 2001-11-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2662070号「インジェクションブロー成形品」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2662070号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2662070号の発明は、平成2年2月16日(優先権主張 平成1年2月16日)に特許出願され、平成9年6月13日にその特許の設定登録がなされ、その後、日本ゼオン株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年9月14日付けで訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して平成11年4月16日付けで手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
1.訂正請求に対する補正の適否
平成11年4月16日付けの手続補正は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の「ブロー成形時の樹脂温度」なる記載を「ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度」なる記載に補正し、かつ、該全文訂正明細書の第37頁第16行の「プリフォームの温度」なる記載を「ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度」なる記載に補正するものである。
これらの補正は、明りょうでない記載を釈明するものと認められ、また、これらの補正後の記載は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書に記載された事項の範囲内のものと認められる。
したがって、この補正は、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
2.訂正事項
平成11年4月16日付け手続補正書で補正された、平成10年9月14日付けの訂正請求には、次の訂正事項が含まれている。
▲1▼特許請求の範囲の請求項1の「環状オレフィン系樹脂から成形されるインジェクションブロー成形品」なる記載を、「環状オレフィン系樹脂から、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度を前記環状オレフィン系樹脂の軟化温度(TMA)の±10℃以内としてインジェクションブロー成形して得られたインジェクションブロー成形品」と訂正する。
▲2▼明細書第66頁第18〜20行の「プリフオームの温度は、使用樹脂のTMAの±50℃の範囲とするのが好ましい。」との記載を、「ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度は、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)のTMAの±10℃以内である。」と訂正する。
3.訂正の適否
訂正事項▲1▼、▲2▼は、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度が、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度(TMA)の±10℃以内であることを記載するものである。
特許権者は、訂正事項▲1▼の訂正の根拠として、「本件当初明細書第70頁第11行〜第74頁表1において、使用した環状オレフィン系樹脂の軟化温度(TMA)が±10℃以内の範囲内にあるという事実および、本件当初明細書第74頁表1において、ブロー条件としてプリフォーム温度すなわちブロー成形時のプリフォーム樹脂温度が記載されているという事実にある。」と述べ、訂正事項▲2▼の訂正の根拠としても同趣旨の主張をしている。
そこで検討するに、本件特許明細書第70頁第11行〜第74頁表1には、実施例1〜4に関する記載がなされており、各実施例には、使用した環状オレフィン系樹脂の軟化温度と、ブロー成型時の樹脂温度が記載されているものの、両者はそれぞれ別個に記載されており、互いを関連付ける記載はなされていない。例えば、実施例1に関しては、そこで使用した環状オレフィン系樹脂の軟化温度が115℃であることと、ブロー時のプリフォーム温度が115℃であることがそれぞれ記載されているが、このプリフォーム温度(115℃)が、環状オレフィン系樹脂の軟化温度(115℃)との差を0℃とするように定められたことは記載されていない。他の実施例にも、使用した環状オレフィン系樹脂の軟化温度と、ブロー成型時の樹脂温度を互いに関連付ける記載がない。仮に、互いに関連付ける記載があると解釈できるとしても、実施例1〜4における、使用した環状オレフィン系樹脂の軟化温度と、ブロー成型時の樹脂温度との温度差は、それぞれ、0℃、-8℃、-10℃、-3℃と計算できるのみであり、±10℃以内という範囲が実質上記載されているとはいえない。
さらに、本件特許明細書及び図面を詳細に検討しても、ブロー成形時のプリフォーム樹脂温度が、使用樹脂(環状オレフィン系樹脂)の軟化温度(TMA)の±10℃以内であることが記載されているとは認められない。
したがって、訂正事項▲1▼▲2▼は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではないから、平成5年法律第26号による改正後の特許法第126条第1項ただし書に規定する要件を満足しない。
4.むすび
以上のとおりであるから、この訂正請求は認められない。
III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
本件の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1、2」という)は、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】下記式[I]または下記式[II]で表される環状オレフィン成分とエチレン成分とを付加重合してなる環状オレフィン系樹脂から成形されるインジェクションブロー成形品;

〔上記式[I]において、nは、0もしくは正の整数であり、R1〜R12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子もしくは基を表し、R9〜R12は、互いに結合して単環または多環の基を形成していてもよく、かつ該単環または多環の基が二重結合を有していてもよく、また、R9とR10とで、またはR11とR12とでアルキリデン基を形成していてもよい。];
式省略・・・[II]
[式[II]の説明省略]。
【請求項2】インジェクションブロー成形品が、上記環状オレフィン系樹脂に、炭化水素から誘導される重合体、塩素含有重合体、不飽和酸から誘導される重合体、不飽和アルコールあるいはアミンから誘導される重合体、エポキシドから誘導される重合体、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ホルムアミド系樹脂および天然重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体をブレンドした樹脂組成物から形成されていることを特徴とする請求項1記載のインジェクションブロー成形品。」
2.引用刊行物の記載
当審が通知した取消理由で引用した、本件の優先権主張日前に頒布されたことが明らかな刊行物1(東独国経済特許第230828号明細書(DD 230828 A1)(発行日1985年12月11日))には、次の記載事項がある。
▲1▼「中空体がエチレン-ノルボルネン共重合体もしくはエチレン-ノルボルネン共重合体とエラストマー、他のポリマー、添加剤との混合物を含有することを特徴とする熱可塑性プラスチック製中空体。」(特許請求の範囲第1項)
▲2▼「共重合体が、エラストマーもしくは他のポリマー、または天然ゴムのような共重合体、エラストマー性エチレン-二元及び三元共重合体またはそのグラフト重合体、ポリブタジエン、エラストマー性ブタジエン-二元及び三元共重合体またはそのグラフト重合体、クロル化及びクロルスルフォン化ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、クロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、ポリスルフィドゴム、フルオルカーボンゴム、ニトロソゴム、カルボキシニトロソゴム、ポリアクリレートゴム、ポリウレタンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルフォン、あるいは、それらの混合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の中空体。」(特許請求の範囲第3項)
▲3▼「この課題は、本発明に従って、中空体がエチレン-ノルボルネン共重合体か、エチレン-ノルボルネン共重合体とエラストマー、他のポリマー、添加剤との混合物を含有する熱可塑性プラスチック製の中空体によって解決される。この共重合体またはその混合物を、溶融し、ブロー成形ないし射出ブロー成形によって中空体に成形する。」(第1頁第38〜40行)(翻訳文第3頁第21〜末行)
▲4▼「ノルボルネンの割合が60モル%、ガラス転移温度152℃、溶融指数5g/10分のエチレン-ノルボルネン共重合体を、255℃の樹脂温度で射出し、45gの重さのプリフォームにした。このプリフォームを190℃に冷却後、ブロー成形により容積0.5リットル、壁厚約1.5mmの瓶にした。この際に行う延伸処理によって、材料の強靭性が改良される。この瓶は、食品用に適しており、120℃の飽和蒸気で滅菌できる。」(第2頁の実施例2)(翻訳文第5頁の実施例2)
3.対比、判断
3-1.本件発明1について
刊行物1には、記載事項▲1▼からみて、エチレン-ノルボルネン共重合体から成形される中空体が記載され、該中空体は、記載事項▲3▼▲4▼からみて、射出ブロー成形によって成形される。したがって、刊行物1には、「エチレン-ノルボルネン共重合体から成形される射出ブロー成形品」の発明(以下「刊行物1の発明」という)が記載されているものと認められる。
そこで、本件発明1と刊行物1の発明を対比するに、前者における式[I]で表される環状オレフィン成分には、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン(式[I]において、nが0、R1〜R4、R9〜R12が水素原子のもの)が含まれるところ(特許明細書の第6頁参照)、この化合物は、後者におけるノルボルネンの別称であるから、前者における「式[I]で表される環状オレフィン成分とエチレン成分とを付加重合してなる環状オレフィン系樹脂」は、後者における「エチレン-ノルボルネン共重合体」に相当している。また、前者における「インジェクションブロー成形品」は、後者における「射出ブロー成形品」に相当している。
したがって、本件発明1と刊行物1の発明は、構成上相違するところがない。
ゆえに、本件発明1は、刊行物1に記載された発明と認められるから、本件発明1の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
3-2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1において、環状オレフィン樹脂に、特定の重合体をブレンドした発明であるが、刊行物1には、これら特定の重合体のブレンドについても記載されている(記載事項▲2▼)。
したがって、本件発明2も、刊行物1に記載された発明と認められるから、本件発明2の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
IV.むすび
したがって、本件発明1、2についての特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-08-06 
出願番号 特願平2-35254
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 杉原 進天野 宏樹  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
石井 あき子
登録日 1997-06-13 
登録番号 特許第2662070号(P2662070)
権利者 三井化学株式会社
発明の名称 インジェクションブロー成形品  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 西川 繁明  

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