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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B42D
管理番号 1063681
審判番号 無効2000-35646  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-11-30 
確定日 2002-02-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3054512号発明「カレンダー帳等の製本方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3054512号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3054512号発明は、平成5年3月12日に出願され、平成12年4月7日にその特許権の設定の登録がなされ、平成12年11月30日に有限会社彩光及び渡辺通商株式会社より本件特許を無効にすることについての審判が請求され、被請求人より平成13年3月12日に答弁書が提出され、平成13年4月9日付けで無効理由を通知したところ、平成13年6月11日に請求人より、平成13年6月12日に被請求人より、それぞれ意見書が提出され、また、平成13年8月24日に請求人より弁駁書が提出され、被請求人より平成13年9月12日に口頭審理陳述要領書が提出され、平成13年9月25日に特許庁の審判廷において石川芳郎の証人尋問が行われ、平成13年10月18日に被請求人より意見書(第2回)が提出されたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という)は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「重ね合わせた複数枚の紙片の上辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合し、この流し込んだ接着剤によって、紙片の上辺に、厚紙よって形成した背カバーを接着するカレンダー帳等の製本方法。」
にある。

3.請求人らの主張
請求人らは、下記の証拠方法を提示し、本件発明は、その特許出願前に国内で公然と知られ、公然と実施されていた検甲第1号証の冊子の構成、および甲第2号証乃至甲第9号証の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定に該当し無効とされるべきである旨主張する。

(1)書証等
検甲第1号証:私立東京文化小学校において、1991年(平成3年)3月の終業式当日に、当時小学1年生に配布された学級だより「でめつうしん」の冊子
甲第1号証:特許第3054512号公報(本件特許公報)
甲第2号証:実公昭35-13805号公報
甲第3号証:実公昭35-26104号公報
甲第4号証:特開昭59-185696号公報
甲第5号証:特開平3-108589号公報
甲第6号証:特開昭60-179296号公報
甲第7号証:実願昭46-5206号(実開昭47-3827号)のマイクロフイルム
甲第8号証:実願昭63-149682号(実開平2-71668号)のマイクロフイルム
甲第9号証:平成4年7月1日 日本接着剤工業会発行の「接着剤読本(8版)」目次、4〜5頁、41〜45頁
(2)人証
石川芳郎
住所 東京都新宿区早稲田町77番地

4.被請求人の主張
被請求人は、下記の証拠方法を提出し、検甲第1号証並びに検乙第1号証の冊子の製本方法は、いずれも本文1を綴じ針9や金属線7で固定し、その後本文1にボンドを塗布して、表紙や見返しの接着を行う平綴じと呼ばれる従来の製本方法であり、本文の固定に綴じ針等を使用することなく、紙片の上辺の全長に沿って形成した貫通孔内に流し込んだ接着剤によって、厚紙の背カバーを紙片の上辺の表裏面に接着することにより製本を行うという本願発明の技術的思想の開示はなく、また、請求人の主張は石川芳郎証人の証言と矛盾しており、事実に基づかないで、自己の主張を尤もらしくするために、自分勝手に構築したものであり、全く信用できない旨主張する。

検乙第1号証:私立東京文化小学校において、1991年(平成3年)3月の終業式当日に、当時小学1年生に配布された学級だより「でめつうしん」の冊子(朝倉教諭所有のもの)
乙第1号証:朝倉寿夫の陳述書

5.当審で通知した上記無効拒絶理由
本件発明は、実願昭58-184221号(実開昭60-91457号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物1」という)及び公然実施又は公然知られていた発明、あるいは、実願平1-25047号(実開平2-115464号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物2」という)、特公平3-21359号公報(以下、「引用刊行物3」という)及び公然実施又は公然知られていた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効にされるべきである。

6.当審の判断
6-1.検甲第1号証及び引用刊行物記載等の発明
証人の証言、検甲第1号証(武田啓所有)及び検乙第1号証(朝倉寿夫教諭所有)によれば、次の事項が認められる。
(1)東京文化小学校において、1年生を担任していた朝倉寿夫教諭は1990年(平成2年)4月9日から1991年3月19日(検乙第1号証には1990年4月9日から1991年3月19日の日付のものが綴られている)に、学級だよりである「でめつうしん」を生徒に配布したこと。
(2)証人は、孫である武田啓が通学していた関係から、希望する生徒に、その生徒が保管していた「でめつうしん」を証人の会社である文陽堂において、1991年3月頃冊子に製本したこと。
(3)証人は、検乙第1号証を製本したこと。
(4)検甲第1号証の冊子は、以下の工程によって製本されたこと。
(a)各「でめつうしん」を2つ折りにして孔を2つ開け、
(b)孔を開けた「でめつうしん」を揃え、これにホッチキスの針状のものを両側から打ち込んで「でめつうしん」を綴じて冊子状にし、
(c)この冊子状にしたものを見返しの上に置き、孔の中にホットメルトを流し込み、また、孔以外の部分に刷毛で糊を塗り、ホットメルトが固まる前に見返しを載せて圧をかけ、盛り上がったホットメルトを平らにし、
(d)見返しが貼られた冊子状にしたものと表紙の背を水性エマルジョンである背糊で接着する。
そして、証人の証言は、「希望者のみに配布しました。」、試作は「していないと思います。」、製本業者は学校の出入業者ではない、という朝倉寿夫教諭の陳述内容(乙第1号証)とも齟齬はなく信用できるといえるし、また、被請求人は、請求人の主張は信用できない旨主張するが、証人の証言が信用できないとは主張していない。
そうすると、証人の証言及び検甲第1号証によると、検甲第1号証のものは、被請求人が指摘するように、本文1を綴じ針9で固定し、本文1の背部にボンドを塗布して表紙の接着を行うものではあるが、複数枚の紙片の一辺に沿って貫通孔を複数個形成し、これらの複数枚の紙片を重ね合わせて複数個の貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片をこの流し込んだ接着剤によっても接合し、この流し込んだ接着剤によって、紙片の両側に、見返しを接着して製本することが把握できるから、製本方法において、複数枚の紙片の一辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合することによって複数枚の紙片を綴じると共に、この流し込んだ接着剤によって、綴じた紙片の両側に他の紙片を接着する技術が、本件出願前に公然実施又は公然知られていたと認められる。
また、当審において、通知した無効理由に引用した上記引用刊行物1(実願昭58-184221号(実開昭60-91457号)のマイクロフイルム)には、
「第1図は本実施例の正面図、第2図は第1図における右方向から見た側面図、第3図は本実施例のカレンダーを剥離する状態を示す正面図である。図においてカレンダー1は綴じ込み用台紙2によって上部にて綴じられている。この綴じ込み用台紙2は厚紙による台紙の他に金具、その他の材質のものを使用してもよいことは勿論である。3及び4は日付を印刷したカレンダー用紙である。本実施例においてはカレンダー用紙3、4にそれぞれ1カ月分の日付が印刷されている。尚、カレンダー用紙3、4はそれぞれ分離しているものであり、上部において綴じ込み用台紙2によって綴じられているもので、この綴じ込み用台紙2とカレンダー用紙3、4の接触面から切り離すことにより剥離可能に構成されている。本実施例のカレンダー用紙3、4の綴じ方は、まずカレンダー用紙3に1月の日付が印刷され、次にこのカレンダー用紙3の次頁には3月の日付が、更に、その次頁には5月の日付がくるように綴じられている。」(3頁1行〜20行)
カレンダー1と綴じ込み用台紙2は共に紙製であるから、カレンダー1と綴じ込み用台紙2とは接着によって綴じられていることは明らかであるから、上記記載によると、引用刊行物1には、
重ね合わせた複数枚のカレンダー用紙2、3・・の上辺に厚紙よって形成した綴じ込み用台紙2を接着するカレンダーの製本方法(以下、「引用刊行物1の発明」という)が記載されていると認められる。
同じく引用した上記引用刊行物2(実願平1-25047号(実開平2-115464号)のマイクロフイルム)には、
「第1図ないし第3図に示すように背部2と、この背部2に連続する両側片3とからなり、この背部2の内側にはホットメルトバインダー層4を全面に有していることは従来のものと異なる処はないが、この考案にあっては背部2の外側からホットメルトバインダー層4の途中にまで達する縦長の凹条9が施されているのが特徴である。
・・・またこの凹条9は縦長であるとしたが、この縦長とは第4図に示すように製本される本文紙5の厚さに応じて、適当な位置の凹条9を背貼り用クロス1の折曲げ筋目とするもので、例えば本文紙5がレポート、論文、雑誌等の如き体裁のもので製本されたものが縦に置かれるものにあっては文字通り、縦長であるが、例えば伝票、レターペーパー等の如く平積みされる体裁のものにあっては、横長というべきであろうが、要するに背貼り用クロスの長さ方向をいうもので、前記した横長をも含めて縦長というものである。」(7頁10〜8頁16行)、
「この考案になる背貼り用クロスを用いて本文紙を製本するには、次のようにされるのが普通である。すなわち、第1図に示したものは、背貼り用クロス1と本文紙5とからなるもので、本文紙5の最外側の紙と背貼り用クロス1の両側片3とが貼着されて、本文紙5の最外側の紙が表表紙6、裏表紙7となるものである。」(9頁3〜9行)と記載されている。
上記「凹条9は縦長であるとしたが、・・・例えば伝票、レターペーパー等の如く平積みされる体裁のものにあっては、横長というべきであろう」の記載によると、本文紙5の上辺に沿って背貼り用クロス1を接着したものが記載されているといえるから、引用刊行物2には、
重ね合わせた複数枚の本文紙5の上辺に、背部2とこの背部2に連続する両側片3とからなる貼り用クロス1を、ホットメルトバインダー層4で接着する伝票、レターペーパー等の製本方法(以下、「引用刊行物2の発明」という)が記載されていると認められる。
同じく引用した上記引用刊行物3(特公平3-21359号公報)には、
「簡易製本の場合、製本後の耐折、引き裂き等の強度を求めるためには、背貼りクロスの基材である紙を積層したりしてその厚みを増すか、あるいは強度のある厚紙を背貼りクロスとして用いることが要求されている」(1頁左欄23行〜右欄4行)

6-2.対比・判断
6-2-1.引用刊行物1の発明との対比
本件発明と引用刊行物1の発明とを対比すると、引用刊行物1の発明の「カレンダー用紙2、3」「綴じ込み用台紙2」及び「カレンダー」が本件発明の「紙片」「背カバー」及び「カレンダー帳等」に相当しているから、
両者は、重ね合わせた複数枚の紙片の上辺に厚紙よって形成した背カバーを接着するカレンダー帳等の製本方法で一致し、
本件発明では、「複数枚の紙片の上辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合し、この流し込んだ接着剤によって、本文紙5の上辺に、背カバーを接着」しているのに対し、引用刊行物1の発明では、複数枚の紙片の上辺に背カバー(綴じ込み用台紙2)を接着しているが、その方法が明らかでない点で構成が相違している。
上記相違点について検討すると、製本方法において、複数枚の紙片の一辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合することによって複数枚の紙片を綴じると共に、この流し込んだ接着剤によって、綴じた紙片の両側に他の紙片を接着する技術が、本件出願前に公然実施又は公然知られていたので、上記引用刊行物1の発明において、複数枚の紙片を前記公然実施又は公然知られていた技術を適用して綴じて、本件発明のように構成することは当業者なら容易にできることである。
そして、本件発明の奏する効果は、引用刊行物1に記載された発明および公然実施又は公然知られた発明から予測できる程度のことであって格別のものではない。
したがって、本件発明は引用刊行物1に記載された発明および公然実施又は公然知られた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

6-2-2.引用刊行物2の発明との対比
本件発明と引用刊行物2の発明とを対比すると、引用刊行物2記載の発明の「本文紙5」及び「貼り用クロス1」が、本件発明の「紙片」及び「背カバー」に相当し、本件発明は「カレンダー」に限定されているわけではないから、引用刊行物2記載の発明の「伝票、レターペーパー等」は本件発明の「カレンダー帳等」に含まれる。
そうすると、両者は、重ね合わせた複数枚の紙片の上辺にホットメルトタイプの接着剤によって背カバーを接着するカレンダー帳等の製本方法で一致し、
(1)本件発明では、「複数枚の紙片の上辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合し、この流し込んだ接着剤によって、本文紙5の上辺に、背カバーを接着」しているのに対し、引用刊行物2記載の発明では、複数枚の紙片の上辺にホットメルトタイプの接着剤によって背カバーを接着している点、
(2)背カバーが、本件発明では、「厚紙よって形成し」ているのに対し、引用刊行物2記載の発明では、厚紙よって形成されているか不明である点、で構成が相違している。
上記相違点について検討する。
上記(1)の相違点については、製本方法において、複数枚の紙片の一辺に沿って貫通孔を複数個形成し、この貫通孔内にホットメルトタイプの接着剤を溶融状態にして流し込んで各紙片を接合することによって複数枚の紙片を綴じると共に、この流し込んだ接着剤によって、綴じた紙片の両側に他の紙片を接着する技術が、本件出願前に公然実施又は公然知られていたので、上記引用刊行物2の発明において、複数枚の紙片の綴じるために前記公然実施又は公然知られていた技術を適用して綴じて、本件発明のように構成することは当業者なら容易にできることである。
上記(2)の相違点については、背カバーを厚紙によって形成することは周知である(例えば、引用刊行物3参照)であるから、引用刊行物2記載の発明において、背カバーである貼り用クロス1を厚紙よって形成することは当業者が適宜できることである。
そして、本件発明の奏する効果は、引用刊行物2に記載された発明および公然実施又は公然知られた発明並びに周知技術から予測できる程度のことであって格別のものではない。
したがって、本件発明は引用刊行物2に記載された発明および公然実施又は公然知られた発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

6-3.むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-12-20 
結審通知日 2001-12-26 
審決日 2002-01-17 
出願番号 特願平5-51988
審決分類 P 1 112・ 121- Z (B42D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
藤井 靖子
登録日 2000-04-07 
登録番号 特許第3054512号(P3054512)
発明の名称 カレンダー帳等の製本方法  
代理人 鳥居 和久  
代理人 北川 政徳  
代理人 東尾 正博  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  
代理人 武田 明広  
代理人 武田 賢市  
代理人 武田 賢市  
代理人 武田 明広  

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