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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1063974
審判番号 不服2001-4752  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-29 
確定日 2002-08-26 
事件の表示 平成 9年特許願第 98004号「回転磁界発生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年10月23日出願公開、特開平10-285996]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年3月31日の出願であって、平成12年8月8日に拒絶理由が通知され、平成13年2月27日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
2.本件手続補正について
2-1.前記平成13年3月29日付の手続補正(以下、本件手続補正という。)は、補正前明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載を、「一端で互いに接続される(2N+1)(Nは1以上の正整数)個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に一方がN極、他方がS極となるように巻回した(2N+1)個の磁極部を設け、この(2N+1)個の磁極部の一組又は複数組を互いに所定の角度をなして配置した固定子を有する磁界発生部と、前記固定子の内側に設けられ1組のN極とS極とを有する回転子と、周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記(2N+1)個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して前記(2N+1)個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せとこの2つのコイルに印加するパルス極性とを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部とからなる回転磁界発生装置。」と補正(以下、補正発明という。)、補正前明細書の段落【0004】の記載を、「【課題を解決するための手段】本発明は、一端で互いに接続される(2N+1)(Nは1以上の正整数)個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に一方がN極、他方がS極となるように巻回した(2N+1)個の磁極部を設け、この(2N+1)個の磁極部の一組又は複数組を互いに所定の角度をなして配置した固定子を有する磁界発生部と、前記固定子の内側に設けられ1組のN極とS極とを有する回転子と、周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記(2N+1)個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して前記(2N+1)個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せとこの2つのコイルに印加するパルス極性とを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部とからなる回転磁界発生装置を特徴とする。」と補正、しようとするものである。
2-2.そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について検討する。
2-2-1.引用発明
「一端で互いに接続される3個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に一方がN極、他方がS極となるように巻回した3個の磁極部を設け、この3個の磁極部の複数組を互いに所定の角度をなして配置した固定子を有する磁界発生部と、前記固定子の内側に設けられ1組のN極とS極とを有する回転子とを備えた回転磁界発生装置。」は、特開平6ー284674号公報にも、「本実施例はラジアル面対向型のステッピングモータの概略構成を示しており、環状のロータ1は外周部がN、Sの2極に着磁されており、両極の着磁部2N、2Sの両端間には中心には回転軸(図示せず)が設けられているのは言うまでもない。一方ロータ1の外周部に対向するステータ磁極41〜46は円周方向に60゜間隔で配置してある。このステータ磁極41〜46のステータコイル51〜56の磁化方向(巻線方向)は円周上で交互に異なる方向となるように設定されており、中心を介して対向する各対のステータ磁極41、44、42、45、43、46のステータコイル51、54、52、55、53、56は図2に示すように並列又は図3に示すように直列接続してコイル組A、B、Cを構成するとともにこれらコイル組A、B、Cを図示するようにY結線してある。・・・各コイル組A、B、Cの非共通接続端は外部コントローラ端子a、b、cを構成する。尚各ステータコイル51〜56の巻線方向と同じとする場合には結線方向を変えれば良い。而して、例えば端子aが+の時にはステータコイル51に対応するステータ磁極41はN極に励磁されるとすると、ステータコイル54はS極に励磁されることになる。図2、3において*印はこの端部+極が印加された場合N極となるを示している。」と記載されているように本願出願前に周知のもの(以下、周知発明という。)である。
2-2-2.対比・判断
補正発明と周知発明とを対比すると、両者は「一端で互いに接続される3個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に一方がN極、他方がS極となるように巻回した3個の磁極部を設け、この3個の磁極部の複数組を互いに所定の角度をなして配置した固定子を有する磁界発生部と、前記固定子の内側に設けられ1組のN極とS極とを有する回転子とを備えた回転磁界発生装置。」の点で一致し、補正発明が周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記3個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して前記3個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せとこの2つのコイルに印加するパルス極性とを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部を備えているのに対し、周知発明はかかる構成を備えていない点で相違する。
そこで、前記相違点について検討する。
周知発明が属するステッピングモータにおいて、それを駆動するのに周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記(2N+1)個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して前記(2N+1)個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せとこの2つのコイルに印加するパルス極性とを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部によることは、原査定の拒絶の理由で引用された特開平2-269458号公報(第4図の関連説明)や特開平4-308499号公報(第10図の関連説明)にも記載されているように周知技術であって、これを前示周知発明に付加構成してその回転磁界を発生させること、すなわち、補正発明の相違点にかかる構成は当業者であれば容易に想到できたものというべきである。
そして、補正発明が奏する「上記の如く構成される本発明によれば、(2N+1)個のコイルのうち前記パルスを印加する2つのコイルの組合せと、2つのコイルの他端に印加するパルス極性とを順次変化させることで、回転磁界を得ることができる。その結果、3相交流発生用の複雑なインバータ回路を必要とせず、3相インバータに代わる簡易な回転磁界発生装置を提供できる。」(補正明細書9頁25行乃至29行)との作用効果も前示周知発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
2-2-3.むすび
以上のとおり、補正発明は、周知発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件手続補正は、特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明
本願発明は、平成12年10月10日付手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、本願発明という。)
「一端で互いに接続される(2N+1)(Nは1以上の正整数)個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に巻回した(2N+1)個の磁極部を設け、この(2N+1)個の磁極部の一組又は複数組を互いに所定の角度をなして配置した磁界発生部と、周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記(2N+1)個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して前記(2N+1)個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せとこの2つのコイルに印加するパルス極性とを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部とからなる回転磁界発生装置。」
4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-116692号公報(以下、引用例という。)に、「図4で、28は固定子ハウジング、22は固定子鉄心で、これは図5に示す磁極31-1〜31-6を構成している。・・・前記磁極へ図5の32-1〜32-6で示すように巻かれており、各々180ずれた磁極が同極となるように巻線が施されている。」(3欄20行乃至26行)、「このような構成の永久磁石形3相ステップモータ1は、従来のU相リード、V相リード、W相リードの3本の他に中性点リードを加えた4本リードを備えているので、図1に示した駆動装置でユニポーラ運転が可能となる。・・・・15がスイッチ素子2〜4のベース駆動回路、16が3相分配回路、17が励磁モード設定回路、18が駆動パルス入力回路、21が駆動パルス入力端子を示している。」(4欄1行乃至17行)、「例えば、スイッチ素子2及びスイッチ素子4がオンでスイッチ素子3がオフとなると、中性点Nから流入した駆動電流がU相及びW相へ流れ、合計の総電流が総電流検出抵抗13を経由して駆動電源14へ戻る。」(4欄30行乃至34行)、「図2は、このように総電流が一定電流値へ制御された状態でU相、V相、W相の励磁が切り替えられていく様子を示している。この図で、駆動パルスの到来に応じて各相の電流切り換えが行われるが、常に2相が励磁されるようになっている。」(5欄4行乃至8行)と記載されていることが認められ、これらの記載によれば引用例には「一端で互いに接続される3個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に巻回した3個の磁極部を設け、この3個の磁極部の複数組を互いに所定の角度をなして配置した磁界発生部と、周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を前記3個のコイルの中性点から前記コイルのうち2つのコイルに入力して前記3個のコイルのうちパルスを同時に印加する2つのコイルの組合せを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部とからなる回転磁界発生装置。」との発明(以下、引用例発明という。)が開示されていると認めることができる。
5.対比・判断
本願発明と引用例発明とを対比すると、両者は「一端で互いに接続される3個のコイルのそれぞれ半分を対向配置される一対の極部に巻回した3個の磁極部を設け、この3個の磁極部の複数組を互いに所定の角度をなして配置した磁界発生部と、周期的なパルス列を発生するパルス発生部と、このパルス発生部の出力を同時に印加する2つのコイルの組合せを、前記回転磁界発生部において回転磁界が発生するように順次変化させてパルスを出力するパルス印加制御部とからなる回転磁界発生装置。」の点で一致し、本願発明が3個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して2つのコイルを同時に印加し、この2つのコイルに印加するパルス極性を変化するのに対し、引用例発明はかかる構成を備えていない点で相違する。
そこで、前記相違点について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-269458号公報(第4図の関連説明)あるいは特開平4-308499号公報(第10図の関連説明)にも示されているように、引用例発明が属するステッピングモータにおいて2相励磁駆動を行うのに、(2N+1)個のコイルのうち2つのコイルの他端間に入力して2つのコイルを同時に印加し、パルス極性を変化させることは周知の駆動の仕方であり、この周知の駆動の仕方を引用例発明の(2N+1)個のコイルの中性点から前記コイルのうち2つのコイルに入力してパルスを同時に印加することに代えて採用することが技術的に困難であるとする事情も見当たらないのであるから、本願発明の相違点にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
そして、本願発明が奏する「上記の如く構成される本発明によれば、(2N+1)個のコイルのうち前記パルスを印加する2つのコイルの組合せと、2つのコイルの他端に印加するパルス極性とを順次変化させることで、回転磁界を得ることができる。その結果、3相交流発生用の複雑なインバータ回路を必要とせず、3相インバータに代わる簡易な回転磁界発生装置を提供できる。」(明細書19行乃至23行)との作用効果も引用例及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-19 
結審通知日 2002-05-14 
審決日 2002-06-18 
出願番号 特願平9-98004
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荘司 英史佐々木 一浩佐々木 訓  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 紀本 孝
菅澤 洋二
発明の名称 回転磁界発生装置  

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