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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E06B
管理番号 1064186
審判番号 審判1994-20021  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-04-15 
種別 無効の審決 
審判請求日 1994-11-29 
確定日 2000-03-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第1701774号発明「シヤツタの自動開閉システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1701774号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 一 本件特許発明の要旨
本件特許第1701774号発明(以下、「本件特許発明」という。)は、昭和58年9月19日に特許出願され、平成4年10月14日にその特許の設定の登録がなされたもので、その本件特許発明の要旨は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、それを構成要件に分説すれば下記のとおりのものと認める。
「A 事業所の出入口に設置されたシャッタと、
B 前記事業所内の人の有無を検索し人を検知した時に検知信号を出力する検索用センサと、
C1前記シャッタの開閉時刻が記憶された記憶要素を備え
C2その記憶された開放時刻及び閉鎖時刻に前記シャッタに開放動作及び閉鎖動作を夫々行わせるとともに
C3前記閉鎖時刻において前記検索用センサが検知信号を出力している時には
(i)前記シャッタの閉鎖動作の起動を禁止させ
(ii)若しくは閉鎖動作を途中で停止させて
(iii)必要に応じて開放動作を行わせ
C4その後一定時間以内に前記検索用センサが検知信号を消失した時には前記シャッタに閉鎖動作を行わせ
C5前記シャッタの閉鎖完了後所定時間内に前記検索用センサが検知信号を出力した時にはシヤツタに開放動作を行わせる
C 上記C1〜C5で記述された制御装置と、
D この制御装置と連係し前記シャッタが指定時刻までに開放及び閉鎖完了しなかった場合に所定の管理場所に異常信号を送信する通報装置と
E を具備してなるシャッタの自動開閉システム。」
二 請求人及び被請求人の主張の概要
本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施されていたものであって、特許法第29条第1項第2号の規定に該当するものであり、また、本件特許発明が、同法第29条第1項第2号に該当しないとしても、本件特許出願前に日本国内において公然実施されていた発明に基づいて、当業者が容易に発明することができた発明であるから、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、更に、本件特許発明は、発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないもののした特許出願に対してされたものであるから無効にすべきであると請求人は主張し、この主張事実を立証するために甲第1ないし29号証(甲第8、10、11、15及び16号証は欠番)を提出している。
一方、本件特許発明は、本件特許出願前に日本国内において公然実施されていないので、特許法第29条第1項第2号の規定に該当しないし、また、本件特許出願前に日本国内において公然実施されていたとしても、その公然実施されているものの構成及び効果が本件特許発明とは全く相違するので、同法第29条第2項に該当することはないし、更に、本件特許発明の発明者は、加村 光男であり、請求人の主張のように冒認出願ではないと被請求人は主張し、この主張事実を立証するために乙第1ないし7号証を提出している。
三 請求人の主張
請求人の上記主張の詳細は、下記のとおりである。
1 発明の同一性について
(一)ATS-802アマンドシステム(アマンド制御装置、シャッタ制御盤及び残留者検索器から構成されるシステム)
(1)立証のために使用する証拠
・甲第2号証(ATS-802 アマンド制御装置取扱説明書-昭和54年12月6日付 立石電機株式会社作成)
・甲第3号証(CDブースシャッター動作仕様書-昭和55年5月23日付 三和シャッター工業株式会社作成)
・甲第4号証(AMAND SYSTEMパンフレット-昭和57年以前に綜合警備保障株式会社作成)
(2)立証事実
本件特許発明の各構成要件に、甲第2ないし4号証に記載のATS-802アマンドシステムの各構成要件を対応させて、対応させた各構成要件が一致していることを立証する。
(a)シャッタの存在
上記各号証にはATS-802アマンド制御装置、シャッタ制御盤及び残留者検索器(ATS-802アマンドシステム)は、それぞれ接続され共同して銀行などの現金自動支払機等を設置している、サービスコーナーの顧客出入口に設けられたシャッターの開閉制御を行うものであり、このようなシャッターの存在を要件とするものであることが記載されている。
(b)残留者検索用センサの存在
甲第2号証の9/27頁下から9行ないし10/27頁2行の記載、および甲第3号証の6/6頁のシステム構成図に▲14▼として残留者検索器が示されているように甲第2号証及び甲第3号証には閉店時刻以降にサービスコーナ内に残っている人の存在を検知する残留者検索器がサービスコーナ内に設けられていることが記載されている。
(c1)記憶要素の存在
甲第2号証13/27頁2ないし9行及び15/27頁には、ATS-802アマンド制御装置がシャッタを開閉するための開店時刻および閉店時刻を予め設定して記憶させておく記憶手段を具備していることが記載されている。
(c2)開店時刻および閉店時刻におけるシャッターの開放動作および閉鎖動作
甲第2号証8/27頁1ないし6行及び9/27頁4ないし11行には、構成要件C2の記憶された解放時刻及び閉鎖時刻にシャッタ解放動作及び閉鎖動作をさせることが記載されている。
(c3)(i)閉鎖動作の起動禁止、(ii)閉鎖動作を途中で停止、(iii)必要に応じて開放動作
甲第2号証9/27頁下から2行ないし10/27頁2行に「残留者がある場合は残留者検索を継続し、タイマ2時間以上経過するとアラーム2出力を発し残留者警報の表示ランプ(LED11)を点灯します。残留者が居なくなり10秒経過するとシャッタ閉動作を開始」することが記載されている。
甲第3号証1/6頁下から3行ないし2/6頁10行には、シヤツタの閉鎖動作の起動を禁止させ若しくは閉鎖動作を途中で停止させて必要に応じて開放動作を行わせることが記載されている。
(c4)一定時間以内に検知信号を消失時にシャッタに開放動作
甲第3号証1/6頁下から3行ないし2/6頁10行には、閉鎖時刻後一定時間以内に検索用センサが検知信号を消失した時にはシャッタに閉鎖動作を行わせることが記載されている。
(c5)閉鎖完了後所定時間内に検知信号を出力した時にシャッタに開放動作
甲第3号証2/6の15及び16行には、「シャッタ全閉停止後、3分以内(可変可能)に内部センサーが作動するとシャッタは前記(イ)項の動作を行う」ことが記載されている。
(c)上記c1〜c5で記述された制御装置と、
(d)ガードセンター集中監視制御装置への警報の送信
甲第4号証には、この警報は送信手段によりガードセンターの集中監視制御装置へ送られるようになっていることが記載されている。
(e)シャッタの自動開閉システム
ATS-802アマンドシステムは、以上(a)のシャッタ、(b)の残留者検出手段、(c)の制御手段、(d)の送信手段を具備した、シャッタの自動開閉システムである。
(二)本件特許発明と甲第2ないし4号証に記載された発明との対比
本件特許発明は前記特許請求の範囲の分説に述べたとおりであり、甲第2ないし4号証に記載された発明は前述した通りである。
以下、ATS-802アマンドシステムと本件特許発明の構成要件A、B、C1、……と対応する項目(a)、(b)、(c1)……との対比を行う。
(イ)Aと(a)
Aに言う事業所とは、例えば銀行の現金自動支払機、現金自動預金機、現金自動両替機等を設置してあるサーピスコーナであることは、本件特許公報(甲第1号証)の第4欄3ないし11行および第2図より明らかであり、シャッタはその出入口に設けられるシャッタであるから(a)のシャッタに該当する。
(ロ)Bと(b)
Bの検索用センサは前記事業所内の人の有無を検索し、人を検知した時に検知信号を出力する手段であり、(b)の残留者検索器もサービスコーナ内に残っている人の存在を検知する手段であるからBの検索用センサは(b)の残留者検索器に該当する。
(ハ)C1と(c1)
C1の記憶要素はシャッタの開閉時刻を記憶させる手段であるから、(c1)のシャッターを開閉するための開店時刻および閉店時刻を予め設定して記憶させておく記憶手段に該当する。
(ニ)C2と(c2)
C2において、前記記憶手段に記憶された開放時刻及び閉鎖時刻にシャッタの開放動作を行わせることは、(c2)において、記憶手段に記憶された開店時刻になると開放動作を行い、記憶された閉店時刻に閉鎖動作を開始することに該当する。
なお、閉店時について子細に見れば、記憶された閉店時刻から10秒経過した時点で閉鎖動作が開始するわけであるが10秒という時間は予め分かっている決まった時間であるからその10秒も記憶されていることになりその時点を閉鎖時刻と考えればよいわけであり、C2が(c2)に該当することの妨げとはならない。
(ホ)C3と(c3)
C3において、閉鎖時刻に検索用センサが検知信号を出力しているときC3の(i)のようにシャッタの閉鎖動作の起動を禁止することは、(c3)において、閉店時刻にサーピスコーナ内に残留者が居る場合にはシャッターの閉鎖動作が開始されないということに該当する。
C3の(ii)、(iii)のように閉鎖動作を途中で停止させ必要に応じて開放動作を行わせるという動作は、閉鎖時刻には検索用センサが検知信号を出力していず、従って閉鎖動作を開始したところ、閉鏡動作の途中で検知信号が出力した場合の動作であるから、(c3)の、閉店時刻には残留者検索器が検知信号を出力していなくて、閉鎖動作が開始し、その閉鎖動作中に検知信号が出力された場合、シャッターが自動的に停止し、1秒後に開放動作に転じ開放動作を10秒継続した後停止するという動作をしたり、或いはシャッターが自動的に停止し1秒経過後に開放動作に移り全開まで行って停止する、という動作に該当することになる。
(ヘ) C4と(c4)
C4の、その後一定時間内に検索用センサの検知信号が消失したときに閉鎖動作を行わせるという動作は、(c4)において、残留者検出器が一定時間内に警戒状態に復帰(人の存在を示す検知信号がなくなっていること)した場合、自動的に閉鎖するという動作に該当する。
(ト)C5と(c5)
C5における、前記シャッタの閉鎖完了後所定時間内に検索用センサが検知信号を出力した時にはシャッタに開放動作を行わせるという動作は、(c5)における(c4)項の閉鎖動作により全閉して停止してから3分以内に残留者検索器が再び検知信号を出力したときにはシャッターは停止状態から開放動作に転じ全開まで行って停止するという動作に該当する。C5の「所定時間」は(c5)の「3分」に対応する。
(チ)Cと(c)
以上のようにC1〜C5がそれぞれ(c1)〜(c5)に該当するからCの制御装置は(c)の制御装置に該当する。
(リ)Dと(d)
Dにおける、シャッタが指定時刻までに開放及び閉鎖完了しなかった場合に所定の管理場所に異常信号を送信する通報装置は、(d)における、開店時刻までシャッターの開放が完了していない場合および閉店時刻から予め決められた時間を経過したとき(この時点が閉鎖完了の指定時刻ということになる)にシャッターの閉鎖が完了していない場合には異常として警報を発し、この警報をガードセンター(所定の管理場所に該当する)の集中監視制御装置へ送る送信手段に該当する。
(ヌ) Eと(e)
以上の結果、Eのシャッタの自動開閉システムは(e)のシャッタの自動開閉システムに該当する。
(ル)まとめ
以上のように、本件特許発明は甲第2号証(ATS-802アマンド制御装置)、甲第3号証(シャッター制御盤)および甲第4号証に記載されている、ATS-802アマンド制御装置とシャッター制御盤とを組み合わせたATS-802アマンドシステムは、本件特許発明のシャッタの自動開閉システムと同じである。
2 出願前公然実施
前述のATS-802アマンドシステムが本件特許発明の出願前に公然実施されていたものであることを立証する。
(一)立証のために使用する証拠
・甲第12号証の1の覚書および同2の警備計画書(図面付)
・甲第13号証の1の警備請負契約書(覚書)および同2の警備計画書(図面付)
・申第14号証の1の警備請負契約書および同2の警備計画書(図面付)
(二)出願前公然実施の立証
甲第12号証の1および2、甲第13号証の1および2、甲第14号証の1および2の各証拠は、それぞれ、綜合警備保障株式会社が、北海道ビルサービス会社、富士銀行、三菱銀行との間で北海道拓殖銀行円山支店宮の森出張所、富士銀行河原町支店、三菱銀行大和支店の各支店のキャッシュコーナーを警備対象として加えることについて合意した契約書およびその第3条で呼び出されている警備計画書である。
そして、それぞれの契約書第2条および警備計画書第3条第4条にはアマンドシステムが用いられることが明記されており各警備計画書の添付図にはその機種がATS-802と明記されている。
添付図面が警備計画書と一体のものであることは添付図面の名称欄および所在地欄の記載が各契約書第1条および警備計画書第1条の警備対象およびその所在地と一致することから明白である。
また、シャッター制御盤は添付図中SMCという記号で表示されており、図の下方の記号名称表によれば記号SMCは安全機構制御盤となっている。
この安全機構制御盤が、シャッター制御盤のことであることは甲第26号証(ATS-802制御装置 工事、試験要領)の3枚目の左側の上のブロック中に「安全機構制御盤(シャッター制御盤)」とあることから明らかである。なお、添付図中の記号名称表の記号欄でSMCの後に付されている文字Cは三和シャッター工業株式会社製のものであることを示している。
このシャッター制御盤が甲第3号証のCDブースシャッター動作仕様書(三和シャッター工業株式会社作成)のものであることは、次の点より明らかである。即ち第1に、甲第3号証の6/6頁のシステム構成図において、シャッター制御盤▲5▼がアマンド制御装置ATS-802又はATS-801又はS-811に接続されるようになっていること、第2に甲第3号証の1/6頁に「1-1通常動作」としてアマンド制御装置(ATS-801、802、S-811)の指令によってシャッターは自動的に開放・閉鎖の動作をし、甲第3号証のシャッター制御盤はアマンド制御装置ATS-801又はATS-802又はS-811から指令を受けてシャッターを開閉するものであること、そして、第3に三和シャッター工業株式会社は、甲第3号証のシャッター制御盤以外にはATS-802と接続するシャッター制御盤を製造してはいないこと、の3点である。
以上述べたところにより、甲第12号証の2、甲第13号証の2および甲第14号証の2のそれぞれに添付されている図面中のSMC(安全機構制御盤)即ちシャッター制御盤は甲第3号証の仕様のものであることが明らかである。
かくして、前述の北海道拓殖銀行円山支店宮の森出張所、富士銀行河原町支店および三菱銀行大和支店の各所に設置稼動されたアマンドシステムは、ATS-802を用いたアマンドシステムであるということになる。
そして、これらのアマンドシステムが上記各所において稼動を開始した日は以下の通りである。
北海道拓殖銀行円山支店宮の森出張所……契約発効日である昭和57年8月23日
富士銀行河原町支店……契約発効日である昭和56年2月9日(添付図面の覚書事項欄にもアマンドシステム運用開始がS56.2.9である旨記載されている)
三和銀行大和支店……契約発効日である昭和55年6月23日(添付図面にもアマンド稼動がS55.6.23であることが記載されている)
以上各所のアマンドシステム稼動開始日はいずれも、本件特許発明の出願日である昭和58年9月19日よりも1年ないし3年2箇月以上も前である。
以上各所で設置稼動されたATS-802を用いたアマンドシステムは、発明の同一性で前述した通り、本件特許発明と同じ発明である。
従って、本件特許発明は、特許法第29条1項2号のその特許出願前に日本国内において公然実施された発明、ということになり、同法第29条1頃柱書および同法第123条1頃2号の規定により無効とすべきこととなる。
四 被請求人の主張
請求人の上記主張に対して、被請求人は以下のように反論している。
1 発明の同一性
甲第14号証の2に添付された昭和54年8月1日作成の図面にはすでにシステム名として「ATSー802アマンド制御装置」が記載され、更に、甲第19号証に示された「SKー811制御監視システム」では、その写真▲8▼に示されたCDシャッター制御盤の銘板に製造年月として「昭和55年11月」と表示されているのに対して、アマンドシステムを旧システムから新システムへの変更するよう勧誘した書面である甲第6号証及び甲第7号証作成の日付は昭和57年1月8日と明記されていることから、ATSー802アマンド制御装置とシャッタ制御盤とからなるアマンドシステムは昭和54年当時にはすでに存在し、また、SK-811アマンド制御装置とシャッタ制御盤とからなるアマンドシステムも、昭和55年当時にはすでに存在しており、しかも、これら両システムの構成は、昭和57年1月ごろ迄は甲第6、7号証でいう旧システムタイプであり、その後に新システムタイプが登場した経緯があるものと認められる。
即ち、アマンド制御装置とシャッタ制御盤とを含めて称するアマンドシステムが昭和57年当時迄は、旧システムタイプであり、その後に新システムタイプが加わったことが明らかである。
また、甲第3号証の6/6頁の図面(ブロック図)は、1/6〜4/6頁の文書部分は新システムの構成を示しているので、両者は書面として一体をなすものではない。この6/6頁のブロック図によると残留者検索器14の出力信号はアマンド制御装置とシャッター制御盤とのうちアマンド制御装置のみに供給される構成となっているから、この構成は、旧システムを示している。
この6/6頁のブロック図について、請求人は、残留者検索器14がアマンド制御装置に接続されているのは誤記で、シャッター制御盤に接続されているのが正しいと主張しているが、この図は旧システムと一致するので誤記ではなく、1/6〜4/6頁と一体をなすものではないことは明白である。
5/6頁の図面(インターフェース)には端子名「5B」、「NB1」、「NB2」が記載されているが、そのうち端子名「5B」は、この端子にパルサー5Bを接続するという意味で付された名称である。甲第14号証の2に添付の図面の1/2頁(配線系統図)の左側に表示された二つの一覧表の右側の表の5番欄の次の欄には「パルサ5Bは飛込み用センサのみの使用とする」と記載されていることから、アマンドシステムでは飛込み感知用赤外線警報器としてパルサー5B(この5Bは一例)が使用されていたことは明白であるので、端子名「5B」がこの端子にパルサー5Bを接続するという意味で付された名称であることに相違ない。したがって、この図の端子「5B」と「NB1」との間に接続されている、「センサー信号」なる文字が付された接点記号はパルサー5Bの接点出力であることを示している。
このように、請求人が提出した甲第2ないし4号証に記載のATS-802アマンドシステムは、「閉指令が出ると、シャッタ閉鎖完了まで検索センサの機能を止める」旧システムであるから、本件特許発明と同一ではない。
2 出願前公然実施
甲第2ないし4号証に記載のATSー802アマンドシステムが、仮に本件特許発明と同一であったとしても、警備請負契約書の覚書第第10条には、「甲(銀行)または甲の従業員は乙(請求人)の承諾なくして甲の施設内の乙所有の機器につき、分解、開被その他の方法により機器の内部機構を視察、模写、模造等を行い乙所有の技術情報考案等を侵害し、もしくは第三者に侵害せしめてはならない。」と定めている。このことから甲は、乙所有物について負っている守秘義務がシャッタ制御盤を含むシステム全体に不可分的に賦課されている特殊な立場にある。1つのシステムとしてアマンド制御装置と関連して動作するシャッタの動きは請求人所有の技術情報考案となるというべきである上に、警備請負契約の第7条に、「甲及び乙は、本契約並びに警備実施にあたり、知り得た相手方の機密事項を一切他に漏洩してはならない。」と定めているから、結局一体となって機能するシステムの動きに関する情報・技術等については銀行は秘守義務を負担しているというべきであって、銀行は、この技術・情報等を自由に開示できる立場にはない。
更に、請求人は、銀行のキャッシュサービスコーナーにおいて、不特定の誰かがシャッタの開閉の動きに関心をもってキャッシュコーナーに出入りしてシャッタの動きを調べればシャッタが顧客の動きに対してどのような開閉動作をするか(即ち発明の内容)がすべて分かってしまうと主張する。一般論として、特定人の出入りのみを許可するように管理されている工場内にある出願前の発明品を工場に侵入して盗むことができるとしても、それは公然とはいえないし、シャッタの開閉の動きに関心を持った者がキャッシュコーナーに出入りしてシャッターの動きを自由に調べられるというものではない。
このように、シャッタを設置したキャッシュサービスコーナーはシャッタの開閉の動きに関心を持ってキャッシュコーナーに出入りしてシャッタの動きを自由に調べることができないように管理された場所であるから、これらシステムはシャッタが顧客の動きに対してどのような開閉動作をするか(発明の内容)を不特定の一般人が知り得る状態に置かれているとはいえない。
五 特許請求の範囲の記載事項の技術的意味
口頭審理において、特許請求の範囲に記載の「その後一定時間以内に」、「閉鎖時刻において」、「指定時刻」、「一定時間」および「所定時間内」の技術的意味について、当審合議体作成の下記確認事項▲1▼ないし▲9▼に対して両当事者は以下のように主張している。
1 確認事項
▲1▼「その後一定時間以内に」の技術的意味が、特許請求の範囲の記載からでは一義的に決められないので、明細書の発明の詳細な説明を参酌して認定判断する。
▲2▼上記の「その」がなにを指すかについては明細書の発明の詳細な説明中に何も記載されていない。また、「一定時間以内に」の用語の意味を直接説明した記載は、明細書の発明の詳細な説明中に認められない。
▲3▼明細書の発明の詳細な説明中には、特許公報第3欄第17行、同欄34行に「その後一定時間以内に」が記載されているが、前後関係の文章からみると特許請求の範囲に記載された文章と同じであるから、それが何を指し何を意味しているのかその記載からでは判明しない。「一定時間」については、同第10欄第43行、第11欄第5行及び同欄第16行の3カ所に記載がある。
▲4▼上記3カ所の「一定時間」は、明細書の発明の詳細な説明中に、特許請求の範囲のAからDの各構成に対応させて、実施例の作用としてAから順番にDまでの作用を説明した箇所に記載されている。したがって、特許請求の範囲に記載された「一定時間」と、上記3カ所の「一定時間」とは同じ技術的意味で用いられている。この認定を覆す記載は他に認められない。
▲5▼そうであるならば、上記3カ所の前後関係の文脈から、「一定時間」の技術的意味を判断するのは妥当である。
▲6▼明細書の発明の詳細な説明の欄に、「制御回路54は、本体収納盤40の接続端子C12に設定された一定時間以上残留検知信号が与えられると、換言すれば正面シャッタ9が指定時刻(例えば18時00分)までに閉鎖動作を完了しないと、シャッタ閉鎖異常信号を発生して通報装置22及び通信回線器44の一般通信回線を介して管理会社55に送信するようになる。」(第10欄第42行ないし第11欄第5行)との記載がある。この記載において、「指定時刻(例えば18時00分)までに閉鎖動作を完了しない」場合とは、
ア.検索用センサが残留者検知信号を出力していて、閉鎖動作が開始されないで、指定時刻に、シャッタが解放状態のままである場合、
イ.検索用センサが残留者検知信号を消失していて、閉鎖動作は開始されたが、指定時刻には、閉鎖途中でシャッタが半開きの状態である場合、が考えられる。
開放状態のままである場合は、検知信号が指定時刻まで継続している場合であるから、「一定時間」の終点は、指定時刻以降であると考えられる。他方、半開きの状態である場合、指定時刻の直前、即ち、シャッタが閉鎖するのに要する時間より短い時間だけ前に、検知信号は消失している。この場合、「一定時間」の終点は、指定時刻の前後のいずれでも問題はない。したがって、ア.イ.両方の条件が満たされるのは、「一定時間」の終点が、少なくとも、指定時刻以降であると考えられる。
次に、「その後一定時間以内に」の「その」は何を指しているかが決まれば、「一定時間」の始点も決まることになる。ところで、明細書の詳細な説明中には、上記記載事項を説明する記載は見当たらないので、前後関係の文脈から判断するのが相当であると考えられる。
したがって、「その」は、ア.「閉鎖時刻」を指すか、イ.「閉鎖動作の起動を禁止」若しくは「閉鎖動作を途中で停止」を指すか、いずれかと考えられる。もし、「一定時間」の始点が閉鎖動作の起動を禁止若しくは閉鎖動作を途中で停止した時点であるとすると、閉鎖時刻から閉鎖動作が途中で停止する時点までの間は、「一定時間」ではないことになる。そうすると、閉鎖時刻前から出力していた検知信号が閉鎖時刻後に消失した場合は、「一定時間」が設定されていないことになり、システムは、「一定時間」以内に検知信号が消失したと判定することができず、検知信号が消失しているのに、シャッタ閉鎖動作が開始しないこととなり、不合理である。次に、「その」が「閉鎖時刻」を指すとすると、終点は、指定時刻以降であり、本件特許発明の作用、実施例の記載等からみて、合理的である。
したがって、「その後一定時間以内に」は、「閉鎖時刻から指定時刻以降の時間以内に」を意味していると考えるのが相当である。
▲7▼「閉鎖時刻において」の技術的意味は、時間的な幅を有することを意味しており、閉鎖動作中の時間を含むものである。
▲8▼「所定時間内」の技術的意味は、シャッタ閉鎖完了してから、予め定めた時間長内という意味で、人間の行動パターンにより決定される時間長で、一般的には数分間程度である。
▲9▼「指定時刻」の技術的意味は、記憶要素に記憶された閉鎖(又は、解放)時刻を過ぎた後、決まった時刻になってもシャッタが解放(又は、閉鎖)のままになっているときに、異常と判定しこれを管理場所に通報する動作における、その決まった時刻を意味する。
2 上記確認事項▲1▼ないし▲9▼の認否
請求人は▲1▼ないし▲5▼、▲7▼及び▲8▼については確認事項を認め、▲6▼及び▲9▼については以下のように主張している。
被請求人は確認事項の全てを認めた。
3 確認事項▲6▼及び▲9▼についての請求人の主張
確認事項▲6▼について、シャッタが閉鎖するのに要する時間より短い時間だけ前に、一定時間以上与えられていた検知信号は消失している。この場合、「一定時間」の終点は、指定時刻よりもシャッタが閉鎖動作を開始してから完全閉鎖するまでに要する時間だけ前の時刻よりも後であると考えられるから、ア.の場合とイ.の場合とを合わせて、「その後一定時間以内に」は、「閉鎖時刻から、指定時刻よりもシャッタが閉鎖動作を開始してから完全閉鎖するまでに要する時間だけ前の時刻よりも後の時刻以内に」を意味していると考えるのが相当であり、
確認事項▲9▼について、「指定時刻」の技術的意味は、記憶要素に記憶された閉鎖(又は、解放)時刻を過ぎた後、決まった時刻になってもシャッタが解放(又は、閉鎖)のままになっているときに、異常と判定してこれを管理場所に通報する動作における、その決まった時刻あるいは決まった時刻から決まった時間だけ経過した時刻を意味していると考えるのが相当である。
六 甲第2ないし4号証に記載のATS-802 アマンドシステムと本件特許発明の同一性
口頭審理において、甲第2ないし4号証に記載のアマンドシステムATS-802と本件発明の同一性について、当審合議体作成の下記確認事項▲1▼ないし▲3▼に対して両当事者は以下のように主張している。
1 確認事項
▲1▼本件特許発明のア.「閉鎖時刻において」、イ.「一定時間」、ウ.「所定時間内」及びエ.「指定時刻」は、甲第2及び3号証の記載事項の下記の事項に相当することを認めるか。
ア.「閉鎖時刻において」は、甲第2号証の9/27の4-6閉鎖制御のタイムチャート及び「告知時間が終了すると告知灯を点滅し残留者検索を開始し‘残留者無し’の状態から10秒経過するとシャッタ閉動作を開始します。」(同頁下から5行ないし3行)の記載からみて、「告知時間終了時点からシャッタ閉鎖動作中の時間」に相当する。
イ.「一定時間」は、タイムチャートおよび「シャッタ閉出力をN回出力してもシャッタ閉アンサバック信号が入力されない場合は、警報をして、アラーム1出力を発しシャッタ警報の表示ランプ(LED8)を点灯します。」(10/27の第14行ないし16行)の記載からみて、「告知時間終了時点からシャッタ閉出力をN回出力するのに要する時間」に相当する。
ウ.「所定時間内」は、甲第3号証の2/6の(2)(ハ)「シャッタ全閉停止後、3分以内(可変可能)に内部センサが作動するとシャッタは前記(イ)項の動作を行う。」の記載からみて、「3分以内」に相当する。
エ.「指定時刻」は、「シャッタ閉出力をN回出力してもシャッタ閉アンサバック信号が入力されない場合は、警報をして、アラーム1出力を発しシャッタ警報の表示ランプ(LED8)を点灯します。」(10/27の第14行ないし16行)の記載からみて、「シャッタ閉出力をN回出力した時刻」に相当する。
▲2▼「一定時間」は、甲第2号証の「告知時間終了時点からシャッタ閉出力をN回出力するのに要する時間」に相当するから、その時間以内に検知信号が消失した時に、シャッタが閉鎖動作を行う点が、甲第3号証の2/6の1-3の(2)(イ)に、残留者検索器が復帰(検索器からの出力信号が消失)すると、シャッタは、閉鎖指令の投入(閉鎖動作)を行う旨記載されている。したがって、本件特許発明のC4の構成が上記のように甲第2及び3号証に記載されていると認めるか。
▲3▼甲第2号証の「残留者検出」及び甲第3号証の「残留者検索器」、甲第2号証の「設定データ」、甲第2号証の「開店時刻」「告知時間終了時刻」、甲第4号証の「ガードセンター」および甲第4号証の「各種警報、開・閉店情報等を送るシステム」が本件特許発明の「検索用センサ」、「記憶要素」、「解放時刻」「閉鎖時刻」、「所定の管理場所」及び「通報装置」に相当することから、上記▲1▼及び▲2▼の認定からみて、甲第2ないし4号証に記載のATS802のアマンド制御装置を用いたシャッタの自動開閉システムは、本件特許発明(構成要件A、B、C1、C2、C3、C4、C5、D、E)と同一であると認めるか。
2 ▲1▼ア.の認否
請求人……上記確認事項を認める。
被請求人…上記確認事項を認める。
3 ▲1▼イ.の認否
請求人……「一定時間」とは、閉指令信号を出し始めてN回出し終わるまでの時間のことであり、Nをある値に設定すれば一定になるこであり、甲第2号証には10/27頁5行目に「N=5〜15」と記載されている。
シャッタ閉指令出力が出る間に残留者有りの場合には、その時間分だけN回目の出力時間が遅れる。
「一定時間」は残留者有りと無しの場合の2つがある。
被請求人…本件発明の「一定時間」は残留者有り無しによって変動するものではない。そして、甲第2ないし4号証の記載からみると、残留者有りの場合には指定時刻が変動するが、本件発明の「指定時刻」が変動することはない。
4 ▲1▼ウ.の認否
請求人……上記確認事項を認める。
被請求人…上記確認事項を認める。
5 ▲1▼エ.の認否
請求人……上記確認事項を認める。
被請求人…▲1▼イで述べたように残留者有りの場合には、「指定時刻」が変動するので上記確認事項を認めない。
6 ▲2▼の認否
請求人……上記確認事項を認める。
被請求人…上記確認事項を認めない。
甲第3号証の2/6の1-3(2)(イ)に「内部センサーが復帰しており、かつ、再度「閉鎖指令」の投入」の「再度」は、巣鴨のアマンドシステム検証調書に示されたように2回目の閉鎖時刻があるとも理解できるし、甲第2号証とも用語が違っているので、必ずしもN回のうちの1つとは理解できない。
7 ▲3▼の構成要件(A、B、C1、C2、C3、C4、D)の認否
請求人……C4を除き上記確認事項を認める。
被請求人…C4、Dを除き上記確認事項を認める。
ところで、請求人は、構成要件C4を認めない理由として、該確認事項▲1▼のイ.「一定時間」について、「一定時間」とは、閉指令信号を出し始めてN回出し終わるまでの時間のことであり、シャッタ閉指令出力が出る間に残留者有りの場合には、その時間分だけN回目の出力時間が遅れるから、「一定時間」は残留者有りと無しの場合の2つがあるが、告知時間が経過して残留者無しの場合には、「一定時間」は変動しないので、その場合には本件発明と同一である旨を主張している。
それに対して、被請求人は、構成要件C4、Dを認めない理由として、本件発明の「一定時間」は残留者有り無しによって指定時刻が変動するものではなく、ところが、ATS-802アマンドシステムは、甲第2ないし4号証の記載からみると、残留者有りの場合には指定時刻が変動することから、本件発明の一定時間とアマンドシステムのそれとは構成が異なり、そして、甲第2ないし4号証を参照しても、「指定時刻」を示す記載が存在せず、特に、甲第4号証の7頁の記載からみると、単に種々のデータを送るだけであって、指定時刻までに閉鎖完了しない場合に、異常信号を送信することについては、どこにも記載されていない、と主張している。
七 証人尋問
平成10年6月30日、証人坂元敦が甲第9号証(陳述書)を作成したこと、本件特許発明の発明者は証人坂元敦であること、アマンドシステムの技術事項等、同じく、証人加村光男が乙第6号証(陳述書)を作成したこと、本件特許発明の発明者は証人加村光男であること、その発明の開発経緯等、につき証人尋問を行った。
更に、平成10年7月7日、甲第2号証(ATSー802アマンド制御装置の取扱説明書完成図)に関して、証人田井賦が当該甲第2号証の作成に関与したこと、その甲第2号証に記載の技術事項等、同じく、甲第3号証(CDブースシャッター動作仕様書)に関して、証人保坂孝男が当該甲第3号証の作成したこと、その甲第3号証に記載の技術事項等、につき証人尋問を行った。
各証人尋問の証言結果から、以下のイないしヘの事実が認められる。
イ 昭和54、5年頃、総合警備保障(株)は、アマンドシステムの基本仕様に基づいて、立石電機(株)に対してアマンド制御装置の取扱説明書(甲第2号証)、そして、三和シャッタ(株)に対してシャッタ制御盤のCDブースシャッタ動作仕様書(甲第3号証)、の作成のために、両社に発注依頼を行った。
ロ 甲第2号証は、証人田井賦が立石電気株式会社サイバネーション・システム事業部でシステム設計を担当していた時に、綜合警備保障(株)の指示に従い、昭和54年12月6日に部下の佐藤に作成させたものであり、これは綜合警備保障(株)様に納めた無人化店舗の警備システム(アマンド制御装置)の型式ATSー802の取扱説明書である。そして、該取扱説明書は、製作依頼者である綜合警備保障(株)に、昭和56年8月28日に提出された。
ハ ATーS802のアマンド制御装置は、残留者検索器が人の有無を検知したとしても、シャッタを開閉させる機能を有していない。換言すれば、ATSー802のアマンド制御装置は、シャッタの開閉指令を出力しているだけである。
ニ 甲第3号証は、証人保坂孝男が綜合警備保障の指示に従い昭和55年5月23日に作成したものであり、アマンド制御装置(ATSー801、802、Sー811)に用いるシャッタ制御の動作仕様書で、そして、1/6から6/6まで一綴りの資料である。
ホ 5/6に記載のシャッタ制御盤は、内部センサーの信号によりシャッタの開閉動作を起動させ、また、アマンド制御装置は、開閉停の指令信号をシャッタ制御盤に出力することによりシャッタの開閉動作を起動させるものである。
ヘ 6/6は、システム構成図で厳密なものではなく、正確に書くならば残留者検索器はシャッタ制御盤に接続されるものである。
八 当審の判断
1 特許請求の範囲の記載事項の技術的意味
上記確認事項▲1▼ないし▲9▼について、被請求人は確認事項のとおり認めている。
しかし、請求人は、▲6▼の「その後一定時間以内に」の意味として、シャッタが半開きの状態である場合には、指定時刻の直前、即ち、シャッタが閉鎖するのに要する時間より短い時間だけ前に、検知信号は消失している場合であるから、それは、「閉鎖時刻から指定時刻前のシャッタが閉鎖するのに要する時間より前の時間以内に」を意味しており、▲9▼の「指定時刻」の意味として、決まった時刻になってもシャッタが開放(又は、閉鎖)のままの時に、管理場所に異常を通報する場合のその決まった時刻、あるいは決まった時刻から決まった時間だけ経過した時刻を意味している、と主張しているので、その点について判断する。
該確認事項▲6▼に対して、「一定時間」の終点は、ア.(シャッタが開放状態)とイ.(シャッタが半開きの状態)の条件がともに満たされるためには、少なくとも指定時刻以降でなければならない。「一定時間」をこのように解するならば、閉鎖時刻に「一定時間」が始まるので、「一定時間」以内に検知信号が消失すれば、シャッタ閉鎖動作が開始するとともに、逆に、「一定時間」以上検知信号が継続すれば指定時刻に閉鎖動作を完了しないという本件特許発明の作用が矛盾なく得られる。
なお、請求人が主張する「閉鎖時刻から指定時刻前のシャッタが閉鎖するのに要する時間より前の時間以内に」と「一定時間」の終点を解すると、ア.のシャッタが開放状態の場合には、既に一定時刻を過ぎていることから、検索用センサが検知信号を消失した時にシャッタが閉鎖動作を行わないこととなり、矛盾が生じる。したがって、この請求人の主張は採用できない。
また、確認事項▲9▼に対して、請求人は、管理場所に異常を通報す場合のその決まった時刻、あるいは決まった時刻から決まった時間だけ経過した時刻を意味していと主張している。ところで、上記したように「指定時刻」の技術的意味は、記憶要素に記憶された閉鎖(又は、開放)時刻を過ぎた後、決まった時刻になってもシャッタが開放(又は、閉鎖)のままになっているときに、異常と判定しこれを管理場所に通報することにより、無人化の事業所であっても迅速に対処することにある。ところで、請求人の主張の意図は、ATS-802アマンドシステムのシャッタがア.の開放状態の場合には、閉鎖時刻から検知信号が消失して、シャッタ閉鎖指令信号が出力されるまでの時間だけ指定時刻が遅れることから、「あるいは決まった時刻から決まった時間だけ経過した時刻」と主張しているものと思われる。しかし、上記した「指定時刻」の技術的意味から判断して、その指定時刻及び通報時刻を何時にするかは任意ではあるが、常識的には、指定時刻は、何らかの理由で利用客にトラブルが生じた場合でも、利用客が事業所からゆとりをもって退出できる時間等を考慮して設定するし、通報時刻は、指定時刻と同時に設定するか、若干遅く設定するものと解される。しかし、請求人の主張のように解すると、シャッタ閉鎖指令信号が出力される時刻によって、閉鎖時刻が変わってしまうこととなり、迅速に対処することが不可能となり矛盾が生じるから、この請求人の主張も採用できない。
したがって、以上の理由から、特許請求の範囲の記載事項の技術的意味は、当審の確認事項に記載の通りに解するものとする。
2 甲第2ないし4号証の記載事項
甲2号証のアマンド制御装置取扱説明書、甲3号証のCDブースシャッター動作仕様書(シャッタ制御盤)及びAMAND SYSTEMパンフレットは、それぞれATS-802アマンドシステムの取扱説明書、仕様書及びパンフレットであるものと認められる。
そして、甲第2ないし4号証の記載事項を、以下のように認定した。
(一)甲第2号証
甲第2号証9/27頁の4-6閉店制御のタイムダイヤグラム及びその説明事項の記載、8/27頁12ないし15行と10/27頁14ないし16行の記載、及び、13/27頁2ないし9行および15/27頁の記載からみて、下記のa.ないしf.が記載されているものと認められる。
a.予告時刻と閉店(告知)時刻間に残留者検索を開始し、‘残留 者無し’の場合、告知時間が終了し10秒経過すると、シャッタ閉動作を開始する。
b.シャッタ閉動作開始でシャッタ閉出力をONとし(ON時間2秒OFF時間18秒サイクル)、シャッタ閉指令をN回(N=5〜15)送出する。
c.シャッタ閉指令をN回出力しても、シャッタ閉アンサバック信 号が入力されない場合は、警報として、アラーム1出力を発してシャッタ警報の表示ランプを点灯する。
d.‘残留者有り’の場合、残留者検索を継続し、タイマ2時間(その終点時刻は、シャッタ閉指令の最後のONの時刻より早い。)以上経過するとアラーム2出力を発し残留者警報ランプを点灯し、残留者が居なくなり10秒経過するとシャッタ閉動作を開始する。
e.アマンド制御装置は、シャッタ閉出力をN回出力した時刻、即ち指定時刻までに閉鎖完了しなかった場合に、警報としてアラームを発しシャッタ警報の表示ランプを点灯する
f.アマンド制御装置は、シャッタを開閉するための開店時刻および閉店時刻を予め設定して記憶させておく記憶手段を具備している。
(二)甲第3号証
甲第3号証1/6頁の「概要」には、「本安全システムシャッター(呼称CDブースシャッタ)は、銀行等に設置される現金支払機(CD)現金預金機(AD)等のブース出入口に設置するシャッターで、無人化制御システム(綜合警備保障(株)アマンドシステム)によって操作、管理ができ、かつ、対人、対物に於ける安全機能を附帯しているシャッタである。」、同頁の「1-1 通常動作」には、アマンド制御装置の「開放指令」の投入によりシャッタは自動的に開放し、全開にて停止すること、及び、アマンド制御装置の「閉鎖指令」の投入によりシャッタは自動的に閉鎖し、全閉にて停止すること、又、同頁の「1-3 内部センサーによる動作」には、シャッタ閉鎖動作中に内部センサー(飛び込み感知器(赤外線警報装置)又は残留者検索器)が作動すると、シャッタは、自動的に停止し1秒後に反転開放して全開停止し、その時、‘残留者無し’であれば、シャッタは再度「閉鎖指令」の投入によって自動的に閉鎖し、もし、閉鎖動作中に再び内部センサーが作動すると前記の動作を再度行うこと、及び、シャッタ全閉停止後、3分以内(可変可能)に内部センサーが作動するとシャッタは上記の動作を行うこと、が記載されているものと認められる。
なお、上記の「シャッタ閉鎖動作中に内部センサーが作動すると、シャッタは、自動的に停止し1秒後に反転開放して全開停止し、その時、‘残留者無し’であれば、シャッタは再度「閉鎖指令」の投入によって自動的に閉鎖し、もし、閉鎖動作中に再び内部センサーが作動すると前記の動作を再度行う」の記載から、内部センサーの検知信号は、アマンド制御盤の「閉鎖指令」の投入を制御しているものと認められる。即ち、シャッタ閉鎖動作中に内部センサーが作動すると、シャッタは自動的に停止することから、内部センサーから出力された検知信号は、アマンド制御盤からの「閉鎖指令」の投入を止めているものと認められる。そのように認定すると、シャッタが全開停止した時であって、検知信号が出力されていない場合のシャッタの動作も矛盾なく理解できる。即ち、検知信号が出力されていないので上記認定の逆の場合であるから、アマンド制御盤から「閉鎖指令」が投入されることとなり、シャッタ制御盤から閉鎖信号が出力されシャッタが閉鎖動作を行うこととなる。またその認定と矛盾する記載は、甲第3号証には見当たらないのでそのように認定した。
(三)甲第4号証
被請求人が成立を認めている甲第4号証第7頁には、ガードセンターの集中監視制御装置へは各種警報開・閉店情報等を送信することが記載されているものと認められる。そして、甲第4号証は、本件出願前に頒布されたパンフレットであるので、上記の技術事項は本件出願前に公知の技術事項である。
3 出願前公然実施
ATS-802アマンドシステムは、甲第2号証に記載のアマンド制御盤と甲第3号証に記載のシャッタ制御盤から成り立っているが、このシステムが公然実施されていたか否かを検討する。
甲第12号証、甲第13号証及び甲第14号証の各証拠の記載内容からみて、ATS-802アマンド制御盤(アマンド制御装置)は、貸渡されたものであり、シャッタ制御盤(甲各号証の「SCM」に相当)は譲渡されたものと認められる。
そして、甲各号証の覚書の第7条には「甲及び乙は本契約並びに警備実施にあたり、知り得た相手方の機密事項を一切他に漏洩してはならない。」及び第10条には「甲または甲の従業員及び警備対象の従業員は乙の承諾なくして甲の施設内にある乙所有の機器につき、分解、開被その他の方法により機器の内部機構を視察、模写、模造等を行い乙所有の技術情報考案等を侵害し、もしくは第三者に侵害せしめてはならい。」と規定されている。この第10条の規定からみて、甲の施設内にある総合警備保障(株)の所有の機器(アマンド制御盤等)について、甲は黙秘の義務が有ったものと認められる。そして、第7条の規定からみて、本契約並びに警備を実施するに際して、双方がそこで知り得た機密事項を漏洩してはならないことは明らかである。
そうであるならば、ATS-802アマンド制御盤は、販売者と購入者との間に黙秘の義務があるが、シャッタ制御盤は、譲渡されたものであって両者間に黙秘の義務がないものであるから、その限りにおいてシャッタ制御盤は公然実施していたものと認められる。
しかしながら、この点に関して、被請求人は、平成10年10月28日付け答弁書において、警備請負契約書覚書の第10条の規定、また、ATS-802アマンドシステムは、シャッタ制御盤とともに請求人所有のアマンド制御盤とパッシブセンサと組み合わせて一体となって始めて本来の動作がなされる1つのシステムとなる特徴を有していること、このことからシャッタの機能を開示しようとする場合には、これに関連して必然的に乙所有のアマンド制御盤及びパッシブセンサの機能の開示を必要とする関係にあり、結果的に甲は、乙所有物について負っている守秘義務がシャッタ制御盤を含むシステム全体に不可分的に賦課されている特殊な立場にあり、更に、1つのシステムとしてアマンド制御盤と関連して動作するシャッタの動きは請求人所有の技術情報考案となるというべきである上に、警備請負契約書覚書の第7条の規定から、結局一体となって機能するシステムの動きに関する情報・技術等については銀行は秘守義務を負担しているというべきであって、銀行は、この技術・情報等を自由に開示できる立場にはないと主張している。
ところで、一般的に、あるシステムが二つの装置から構成されている場合に、その一方の装置が販売者と購入者との間に黙秘の義務を有し、他方の装置が譲渡され、そして、その他方の装置については両者間に黙秘の義務を有さない場合に、他方の装置が一方の装置から技術として独立して成り立つならば、他方の装置はそれ単独のものとしては公然実施されたものというのが相当である。
そこで、甲第3号証に記載のシャッタ制御盤が甲第2号証に記載のアマンド制御盤から技術として独立して成り立っているかどうかについて検討する。
ATS-802アマンドシステムのシャッタ制御盤は、シャッタの駆動用モータに対して、シャッタの開放・閉鎖・停止の各信号を出力すること、及び、シャッタの閉鎖完了後、所定時間に残留者検索器が検知信号を出力した時、シャッタに開放動作を行わせることにより、シャッタの各動作を制御している装置である。そこで、シャッタの開放及び閉鎖の各動作、シャッタの停止動作及びシャッタの閉鎖完了後のシャッタの動作とに分けて、シャッタ制御盤がアマンド制御盤から技術として独立して成り立っているかを検討する。
まず、シャッタの開放及び閉鎖の各動作について検討する。
シャッタを何時開閉するかはアマンド制御盤によって設定されており、シャッタ制御盤は、その開閉の指令信号を受信して、シャッタの駆動モータに開放及び閉鎖の信号を出力してシャッタを制御している。そして、シャッタを何時開閉するかはユーザが決めることであるから、その時間は任意に設定可能なものである。したがって、その開放及び閉鎖時間を何時に設定するかについては技術的な意義があるものとは認められないから、シャッタ制御盤がアマンド制御盤から技術として独立して成り立っているといえる。
次に、シャッタの停止動作について検討する。
シャッタ制御盤は、シャッタ閉鎖動作中に内部センサーの検知信号を受信した時(‘残留者有り’)、該制御盤からシャッタの停止信号が出力され、その停止信号によりシャッタを停止させ、1秒後にシャッタ制御盤から開放信号が出力されて、シャッタが反転開放して全開停止するものである。このようにシャッタ制御盤は、シャッタの停止動作及びその後のシャッタの開放動作を制御している。また、内部センサーとしての飛び込み感知器は、シャッタの安全制御用センサーとして良く知られており、その感知器から出力される検知信号も特別なものではなく普通のものであるから、その検知信号に技術的な意義があるものとは認められない。
そして、シャッタが全開停止し、その時、‘残留者無し’であれば、シャッタは再度「閉鎖指令」の投入によって自動的に閉鎖し、もし、閉鎖動作中に再び内部センサーが作動すると前記の動作を再度行うこととなる。そして、八の2の(二)で述べたように、内部センサーの検知信号は、アマンド制御盤の「閉鎖指令」の投入を制御しているものであるから、‘残留者無し’即ち、検知信号が出力されなくなれば、アマンド制御盤の「閉鎖指令」が投入されてシャッタが閉鎖動作を行うこととなる。したがって、シャッタが全開停止後の上記動作は、アマンド制御盤ではなくシャッタ制御盤が全て行っているものである。
以上のように、シャッタの停止動作及びその後の動作は、シャッタ制御盤が制御していること、及び、アマンド制御盤からシャッタのこの動作に何等の影響があるものとも認められないことから、シャッタ制御盤がアマンド制御盤から技術として独立して成り立っているといえる。
更に、シャッタの閉鎖完了後のシャッタの動作について検討する。
シャッタ制御盤中には所定時間をカウントするタイマが設けられていて、シャッタの閉鎖完了後、所定時間に残留者検索器が検知信号を出力した時、シャッタに開放動作を行わせ、所定時間後には、検知信号が出力されてもシャッタに開放動作を行わせないようにシャッタの駆動用モータを制御しているから、この動作は、アマンド制御盤から独立してシャッタ制御盤だけが行っている動作である。
以上のことから、シャッタ制御盤は、シャッタの開放・閉鎖・停止の各動作の制御及び全閉後の所定時間のシャッタの動作の制御を行っていること、及び、アマンド制御盤からシャッタのこの動作に何等の影響があるものとも認められないことから、シャッタ制御盤がアマンド制御盤から技術として独立して成り立っているといえる。
したがって、甲第3号証に記載のシャッタ制御盤(該制御盤に制御されたシャッタの動作)は、本件特許発明の出願前に公然実施されたものと認められる。
ところで、被請求人は、四の2において既述したように、シャッタを設置したキャッシュサービスコーナーはシャッタの開閉の動きに関心を持ってキャッシュコーナーに出入りしてシャッタの動きを自由に調べることができないように管理された場所であるから、これらシステムはシャッタが顧客の動きに対してどのような開閉動作をするか(発明の内容)を不特定の一般人が知り得る状態に置かれているとはいえないと主張しているので、この主張が妥当なものかどうかを検討する。
昭和50年代の初頭、日本キャッシュサービス(株)の無人のキャッシュコーナーで、人が閉じ込められる事故が多発していたこと、及び、その後各銀行は無人のキャッシュコーナーを増設していったことは良く知られた事実である。そして、その頃のキャッシュコーナーを利用する顧客は、現金自動支払機等の操作の仕方をよく知らず、また該コーナー内に閉じ込められることの不安をも抱いており、そのためにこれらの不安から顧客はこれらのことを銀行に対して質問すると考えるのは自然なことであり、特に、閉店時間間近に利用する顧客はその不安が特に強いが故に、閉じ込めの問題に対する銀行の対応について質問するのは自然のことと思われる。銀行は、顧客からその対応を聞かれたら、銀行としては顧客の不安を払拭するために、たとえ閉じ込められたとしても、シャッタは再度開放されるので安全であることを十分納得してもらい、それでも納得しない顧客には、シャッタの具体的動作についても説明し十分納得してもらおうと努力するものと思われる。そして、銀行はそのシャッタの動作については、黙秘の義務を有していないことは上記したとおりである。以上のことから、ATS-802アマンドシステムのシャッタ制御盤が制御しているシャッタの動作については、不特定多数の人が知り得る状態にあったとするのが相当であるから、被請求人のこの主張も採用できない。
したがって、上記の甲第3号証に記載の事実から、下記の技術事項が公然実施されていたものと認められる。
「事前に決められた開放時刻及び閉鎖時刻に、アマンド制御装置からの開放及び閉鎖指令信号により、シャッタ制御盤は、金融機関の無人店舗の出入口に設置されたシャッタの開放動作及び閉鎖動作の制御を行うとともに、無人店舗内の人の有無を検索している残留者検索器が前記閉鎖時刻において‘残留者有り’と検知した場合、閉鎖動作を行わせず、‘残留者無し’と検知した場合、閉鎖動作を開始させるが、閉鎖動作中に‘残留者有り’と検知した場合、停止させた後開放させて全開停止させ、その時、‘残留者無し’と検知すれば、アマンド制御装置の閉鎖指令信号によりシャッタ制御装置はシャッタの閉鎖動作の制御を行い、閉鎖動作中に再び残留者検索器が作動すると前記の動作の制御を行い、そして、シャッタが全閉停止後、所定の時間以内に残留者検索器が作動するとシャッタに上記の動作をさせるように制御する」
4 公然実施されたATS-802アマンドシステムのシャッタ制御盤と本件特許発明の対比・判断
そこで、本件特許発明(以下、「前者」という。)と本件特許発明の出願前に公然実施されたATS-802アマンドシステムのシャッタ制御盤(以下、「後者」という。)とを対比すると、両者は、「事業所の出入口に設置されたシャッタと、前記事業所内の人の有無を検索し人を検知した時に検知信号を出力する検索用センサと、事前に設定された開放時刻及び閉鎖時刻に前記シャッタに開放動作及び閉鎖動作を夫々行わせるとともに、前記閉鎖時刻において前記検索用センサが検知信号を出力している時には、前記シャッタの閉鎖動作の起動を禁止させ、若しくは閉鎖動作を途中で停止させて必要に応じて開放動作を行わせ、その後に前記検索用センサが検知信号を消失した時には前記シャッタに閉鎖動作を行わせ、前記シャッタの閉鎖完了後所定時間内に前記検索用センサが検知信号を出力した時にはシャッタに開放動作を行わせる制御装置」である点で一致し、
(一)シャッタの開閉時刻が記憶された記憶要素に関して、前者は記憶要素を具備しているのに対して、後者がこのような記憶要素を具備しているかどうか不明な点、
(二)シャッタが指定時刻までに開放及び閉鎖完了しなかった場合、前者は所定の管理場所に異常信号を送信する通報装置を有しているのに対して、後者がその状態が続いた場合に管理場所に通報するかどうか不明な点、
(三)検索センサが検知信号を消失した時のシャッタ動作に関して、前者は、閉鎖時刻から指定時刻以降の時間以内に消失した場合に、シャッタは閉鎖動作をするのに対して、後者が閉鎖時刻後に検知信号を消失した時には、シャッタが閉鎖動作をするが、該信号が何時の時刻までに消失したら閉鎖動作をするのか不明な点、以上の点で両者は相違している。
5 相違点の判断
以下に上記相違点の検討を行う。
相違点(一)について、
本件特許発明の出願前、事前に設定した時刻にシャッタを自動的に開閉動作させることは、通常行われていたことであるから、シャッタの制御装置にその時刻を記憶する記憶要素を用いることも通常行われていたことである。したがって、シャッタ制御盤に開閉時刻が記憶された記憶要素を用いてシャッタに開閉動作を行わせることは、当業者が容易に想到できたものと認める。
相違点(二)について、
本件特許発明の出願前に公知であるカタログ(甲第4号証)によれば、シャッタが開放及び閉鎖完了しなかった場合に、ガードセンターに警報・通報等の信号を送信していることが読み取れる。そして、何時その信号を送信するかは不明であるが、現金の安全管理と顧客の信頼とを第一とする銀行にとって、閉鎖(又は、開放)時刻を過ぎた後に何時までもその状態を継続させておくとは考えられず、通常、閉鎖(又は、開放)時刻後、数分後に該信号を送信するのが自然であり、その送信の時刻を何時にするかは、銀行の要望等によって任意に選択できる事項であるから、シャッタが閉鎖(又は、開放)時刻を過ぎた後、シャッタが開放(又は、閉鎖)のままになっているときに、指定時刻までに管理場所に異常信号を送信することは、当業者にとって容易に想到できたことである。
相違点(三)について、
シャッタ制御盤が制御しているシャッタは、上記したようにシャッタ閉鎖動作中に残留者検索器が作動すると、自動的に停止し、その後全開停止し、その時、‘残留者無し’であれば、再度閉鎖指令信号によって自動的に閉鎖し、もし、閉鎖動作中に再び残留者検索器が作動すると前記の動作を再度行うが、この動作だけからでは、残留者検索器の検知信号が何時の時刻までに消失したら閉鎖動作をするのかは不明である。ところで、銀行で用いられるシャッタが閉鎖時刻を過ぎた後、何時になっても開放状態のままでは、現金自動支払機等に何人でも接触が可能な状態となり、現金の安全管理を第一とする銀行にとって早急にシャッタを閉鎖したいことは当然ではあるが、他方、シャッタが閉鎖してしまい顧客が閉じ込められてしまう事態も避けたいのも当然であるから、銀行は、この両方の要望を満足するものを選定するのが自然なことである。例えば、指定時刻以前の時間以内に検知信号が消失したら閉鎖動作を行わせるとすると、指定時刻前にシャッタが閉鎖動作を行わない事態が発生することとなり、顧客が閉じ込められる事態は避けられるが、現金の安全管理が担保できないこととなり銀行の要望に合わない。しかし、指定時刻以降の時間以内に検知信号が消失したら閉鎖動作を行わせるとすると、上記の両方の要望を満足する。
以上のことから、当業者が、銀行の上記の両方の要望を満足するために、指定時刻以降の時間以内に検知信号が、消失したら、シャッタに閉鎖動作を行わせることは容易に想到できたことである。
ところで、この点に関して被請求人は、六の7で既述したように、本件発明の「一定時間」は残留者有り無しによって指定時刻が変動するものではなく、これに対し、ATSー802アマンドシステムは、甲第2ないし4号証の記載からみると、残留者有りの場合には指定時刻が変動することから、本件発明の一定時間とアマンドシステムのそれとは構成が異なると主張している。しかし、本件構成要件C4は、閉鎖時刻から指定時刻以降の時間以内において、検知信号が消失した場合のことを規定しているもので、一定時間以降については規定していないが、被告主張のようなことがあるとしても、ATS-802アマンドシステムは、指定時刻以降の時間以内に残留者検索器が検知信号を消失した時にはシャッタに閉鎖動作を行わせているから、被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件特許発明は、公然実施されたATS-802アマンドシステムのシャッタ制御盤及び公知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ところで、被請求人は、平成10年12月25日付けの上申書において、甲第2号証の作成日が昭和54年12月6日、甲第3号証の作成日が昭和55年5月23日であるが、甲第14号証の2に添付された図面の作成日が昭和54年8月1日となっており、甲第2、3号証の作成日よりも前の日付けになっている。一方、甲第12、13号証の2にそれぞれ添付された図面の日付けは甲第2、3号証の作成日よりも後の日付けになっているが、これら甲第12、13号証の2に添付の図面に記載の名称と同一の「ATS-802制御装置」及び「安全制御盤」と記載されている。このことから、アマンド制御装置及びシャッタ制御盤が甲第14号証の2に添付の図面のものと、甲第12、13号証の2に添付の図面のものとは、構成が同一と考えられるので、甲第12、13号証のアマンド制御盤及びシャッタ制御盤が甲第2、3号証に示すものであると断定することはできないと主張している。
しかし、上記の七のイに記載したように、綜合警備保障(株)は、昭和53年頃に、新システムのATS-802アマンドシステムを銀行に納品していたこと、および、甲第2号証の取扱説明書、甲第3号証の動作仕様書は、普通、製品が存在しなければ作成できないものであること、これらのことを勘案すれば、甲第14号証の2に添付された図面の作成日が、甲第2、3号証の作成日より以前であっても矛盾しない。したがって、被請求人のこの主張は採用できない。
九 結論
したがって、本件特許発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定によって無効とされるべきものである。
なお、請求人は、アマンドシステムとして他のS-811制御監視システムについてATS-802アマンドシステムと同様の理由で本件特許発明を無効にすべきであり、また、冒認出願であるから本件特許発明を無効とすべきであるとも主張しているが、上記のとおりであるからこれらの点については検討するまでもない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-02-18 
結審通知日 1999-03-02 
審決日 1999-03-11 
出願番号 特願昭58-173626
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 史郎高瀬 浩一  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 樋口 靖志
幸長 保次郎
登録日 1992-10-14 
登録番号 特許第1701774号(P1701774)
発明の名称 シヤツタの自動開閉システム  
代理人 鈴木 誠  
代理人 森田 尚男  
代理人 八幡 義博  
代理人 籏 進  
代理人 佐藤 強  
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