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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G03F
管理番号 1064225
異議申立番号 異議2001-73283  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-10 
確定日 2002-06-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3174741号「位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスク」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3174741号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3174741号は、特願平5-323845号(平成5年12月22日出願)の分割出願であって、平成13年3月30日に設定登録され、その後、田辺まさ子及び須田武より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年4月19日に訂正請求がなされたものである。
1.1 異議申立ての概要
異議申立人田辺まさ子及び須田武は、甲第1号証(特願平5-285327号(特開平7-140635号公報参照))を提示し、本件の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件の請求項1〜3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。
1.2 異議申立人田辺まさ子及び須田武が提出した甲第1号証の記載内容
甲第1号証の特許請求の範囲には、「【請求項1】 露光光を透過する基板と、この基板の主表面上に形成された位相シフトパターンと、を備え、前記位相シフトパターンは、前記基板が露出する第1の光透過部と、透過する露光光の位相と透過率とが、前記第1の光透過部を透過する露光光の位相に対して180°変換し、かつ、透過率が5〜40%であり、単一の材料からなる第2の光透過部と、を有する位相シフトマスク。
【請求項2】 前記第2の光透過部は、金属の酸化物、金属の酸化窒化物、金属シリサイドの酸化物および金属シリサイドの酸化窒化物からなる群より選択される、1種類の材料からなる請求項1に記載の位相シフトマスク。
【請求項3】 前記第2の光透過部は、クロムの酸化物、クロムの酸化窒化物、クロムの酸化窒化炭化物、モリブデンシリサイドの酸化物およびモリブデンシリサイドの酸化窒化物からなる群より選択される、1種類の材料からなる請求項1に記載の位相シフトマスク。
【請求項4】 露光光を透過する基板の主表面上に、透過する露光光の位相を180°変換し、かつ5〜40%の透過率を有する所定厚さの位相シフタ膜をスパッタリング法を用いて形成する工程と、この位相シフタ膜の上に、所定のパターンを有するレジスト膜を形成する工程と、このレジスト膜をマスクとして、ドライエッチング法により前記位相シフタ膜のエッチングを行ない、前記基板が露出してなる第1の光透過部と前記位相シフタ膜からなる第2の光透過部とを形成する工程と、を備えた位相シフトマスクの製造方法。
【請求項5】 前記位相シフタ膜を形成する工程は、モリブデンシリサイドのターゲットを用い、アルゴンと酸素との混合ガス雰囲気中で、モリブデンシリサイド酸化物の膜を形成する工程を含む請求項4に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項6】 前記混合ガスの各成分が占める体積百分率の範囲は、アルゴンが76〜92%の範囲であり、残りが酸素である請求項5に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項7】 前記位相シフタ膜を形成する工程は、モリブデンシリサイドのターゲットを用い、アルゴン,酸素および窒素の混合ガス雰囲気中で、モリブデンシリサイド酸化窒化物の膜を形成する工程を含む請求項4に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項8】 前記混合ガスの各成分を占める体積百分率の範囲は、アルゴンが65〜79%、酸素が8〜24%、窒素が3〜20%である請求項7に記載の位相シフトマスクの製造方法。

【請求項23】 パターン形成層の上にレジスト膜を塗布する工程と、前記レジスト膜を、露光光を透過する基板の上に形成された、前記基板が露出する第1の光透過部と、透過する露光光の位相と透過率とが前記第1の光透過部を透過する露光光の位相に対して180°変換し、かつ、透過率が5〜40%であり、単一の材料からなる第2の光透過部とを有する位相シフトパターンを有する位相シフトマスクを用いて露光する工程と、を備えた位相シフトマスクを用いた露光方法。」と記載されている。
また、【0073】及び【0074】段落には、「【0073】次に、第2の実施例として上記位相シフトマスク200の製造方法について、位相シフタ膜としてモリブデンシリサイド酸化膜またはモリブデンシリサイド酸化窒化膜を用いた場合について説明する。
【0074】図3〜図6は、図1に示す位相シフトマスク200の断面に従った製造工程を示す断面構造図である。」と記載されている。
さらに、【0091】段落には、「【0091】表1は、上記スパッタ条件の下で、混合ガスの流量比を種々設定した場合の各ケースにおける真空層506内の圧力、堆積速度および膜質を示すものであり、ケースM-1〜M-7、M-14〜M-15はモリブデンシリサイド酸化窒化物の位相シフタ膜であり、ケースM-8〜M-13、M-16〜M-17はモリブデンシリサイド酸化物の位相シフタ膜である。」と記載されている。
2.訂正の内容について
本件訂正請求は、本件特許第3174741号の願書に添付された明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。
2.1 訂正事項
訂正事項a
特許明細書請求項1の「含有されている」を「含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書の【0012】段落の「含有されている」を「含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の【0044】段落の「位相シフトマスクブランクの作成において」を「位相シフトマスクの作成において」と訂正する。
2.2 訂正後の請求項1〜3に係る発明
請求項1
「透明基板上に光半透過膜を有し、この光半透過膜が、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とする膜からなり、かつ前記光半透過膜中の単体の遷移金属と単体のケイ素が、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素中に含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下であることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク。」
請求項2
「請求項1に記載の位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜に、所定のパターンに従ってその一部を除去するパターニング処理を施すことにより、光透過部と光半透過部とからなるマスクパターンを形成してなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク。」
請求項3
「請求項2に記載のハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うことを特徴とするリソグラフィー方法。」
3. 訂正の適否
訂正事項a
上記訂正事項aについては、特許明細書請求項1の「含有されている」を下位概念である「含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、この訂正事項aは、明細書の段落【0025】に「本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいては、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下が好ましい。」と記載されているから、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
訂正事項b
上記訂正事項bは、請求項の訂正に伴い、請求項の記載と発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたり、また、訂正事項bは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
訂正事項c
訂正事項cは、特許明細書の【0044】段落の「位相シフトマスクブランクの作成において」を「位相シフトマスクの作成において」と訂正するものであるが、【0044】段落は、レジストパターンの形成時の電子線照射による帯電の防止について述べているので、訂正前の不明瞭な記載をこの訂正事項cにより明りょうにするものであり、また、訂正事項cは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
従って、上記訂正事項a〜cは、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。
4.特許異議申立てについての判断
4.1 異議申立てに係る本件特許の請求項1〜3に係る発明
上記2.2記載のとおり。
4.2 異議申立ての理由の概要
上記1.1に記載のとおり。
4.3 異議申し立てに係る本件請求項1〜3に係る発明と甲第1号証との対比、判断
4.3.1 本件請求項1に係る発明と甲第1号証との対比、判断
本件請求項1に係る発明が、「光半透過膜中の単体の遷移金属と単体のケイ素が、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素中に含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」構成(以下、「本件請求項1の特徴的構成」という。)を有するのに対し、上記甲第1号証には、上記本件請求項1の特徴的構成の記載又はその記載の示唆がなく、上記本件請求項1に係る発明は、当該本件請求項1の特徴的構成を有することにより、「この光半透過膜が、…同時に、電子線描画の際に電荷が帯電しない程度以上の導電性をも兼ね備え、自由に制御できるものであることから、単純な膜構成により電子線描画時の電荷蓄積や静電気による帯電を防止することが可能となった。」(特許明細書【発明の効果】)という、上記甲第1号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証に記載された発明ではない。
4.3.2 本件請求項2及び3に係る発明と甲第1号証との対比、判断
本件請求項1に係る発明を引用する本件請求項2及び3に係る発明は、本件請求項1に係る発明と同様に、甲第1号証に記載された発明ではない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜3に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1及び2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板上に光半透過膜を有し、この光半透過膜が、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とする膜からなり、かつ前記光半透過膜中の単体の遷移金属と単体のケイ素が、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素中に含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下であることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
【請求項2】 請求項1に記載の位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜に、所定のパターンに従ってその一部を除去するパターニング処理を施すことにより、光透過部と光半透過部とからなるマスクパターンを形成してなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク。
【請求項3】 請求項2に記載のハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うことを特徴とするリソグラフィー方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクおよびそれを用いたリソグラフィー方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、簡単な膜構成により、マスクパターンを形成する際のレジストへの電子線描画時における電荷蓄積や静電気による帯電を防止しうるハーフトーン型位相シフトマスクブランク、該位相シフトマスクブランクを素材とするハーフトーン型位相シフトマスク、およびこの位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うリソグラフィー方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体LSI製造などにおいては、微細パターンの転写を行うためのマスクであるフォトマスクの1つとして位相シフトマスクが用いられる。この位相シフトマスクのうち、特に単一のホール、ドット、又はライン、スペース等の孤立したパターン転写に適したものとして、ハーフトーン型位相シフトマスクが知られている。
【0003】
このハーフトーン型位相シフトマスクは、透明基板の表面上に形成するマスクパターンを、実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部と、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過させる光半透過部とで構成し、かつ、光透過部を通過してきた光の位相と、光半透過部を通過してきた光の位相を異ならしめることにより光透過部と光半透過部の境界部近傍で通過してきた光が互いに打ち消し合うようにして境界部のコントラストを良好に保持できるようにしたものであり、例えば特開平5-127361号公報には、位相差を180°としたハーフトーン型位相シフトマスクが開示されている。
【0004】
この公報記載のハーフトーン型位相シフトマスクにおいては、透明基板上に光半透過部を構成する光半透過膜は、CrOx、CrNx、CrOxNy、CrOxNyCz等の膜などの、均一な組成の材料からなる一層の膜で構成されている。
【0005】
このように一層の膜からなる光半透過膜を素材として形成した光半透過部を有するハーフトーン型位相シフトマスクは、光半透過部を、主に位相角を制御する透過率の高い層(例えばSOG)と主に光半透過性を制御する透過率の低い層(例えばクロム)との複数種類からなる積層構造としたハーフトーン型位相シフトマスクと比較すると、製造工程の減少、簡略化、欠陥発生率の低減といった利点を有する。
【0006】
このCrOx、CrNx、CrOxNy又はCrOxNyCz等からなる光半透過膜の形成法に関して、上記公報には、クロムをスパッタリングターゲットとして、蒸着雰囲気中に酸素、窒素などのガスを入れることで透明基板上にクロムの酸化物、窒化物、酸窒化物、酸窒炭化物を堆積する方法、すなわち、いわゆる反応性スパッタによる方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の方法(反応性スパッタ法)によって形成されるCrOx、CrNx、CrOxNy又はCrOxNyCz等からなる光半透過膜については、露光に寄与しない程度の光を透過する性質、すなわち露光光に対する透過率が4〜20%という要件と、所定の位相差を与えるという光半透過部の要件を同時に満たしたものは導電性が乏しい。そのため、光半透過膜をパターニングするために行うレジストへの電子線描画において、打ち込まれた電子がレジスト中で帯電してしまい、正確なパターン形成ができないという問題があった。
【0008】
また、導電性の欠如は静電気の帯電へとつながり、マスクの製造工程や使用時においてゴミが吸着しやすいという問題があった。したがって、帯電現象を防止するためには電気を伝導し、拡散させる導電層を例えば透明基板上に設ける必要があり、そのためには製造工程が増加するといった欠点があった。
【0009】
さらに、透明基板と光半透過膜との間に導電層を形成する場合には、短波長の露光光に対して透明である必要があり、特に、近年における高解像度のパターンが要求されることに伴う露光光の短波長化に対しては、そのような露光光に対して透明である導電層材料を新たに開発しなければならないという問題もあった。
【0010】
本発明は、上述のような背景のもとでなされたものであり、簡単な膜構成により電子線描画時の電荷蓄積や静電気による帯電を防止できるハーフトーン型位相シフトマスクブランク、上記位相シフトマスクブランクを素材としたハーフトーン型位相シフトマスク、およびこの位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うリソグラフィー方法を提供することを目的としたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、簡単な膜構成により、電子線描画時の電荷蓄積や静電気による帯電を防止しうるハーフトーン型位相シフトマスクブランクについて鋭意研究を重ねた結果、透明基板上に遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とし、かつケイ素が少なくとも酸化ケイ素および/または窒化ケイ素の形態で含まれている光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクが、上記の好ましい性質を有すること、そしてこの位相シフトマスクブランクに、常法に従ってパターニング処理を施すことにより、所望のマスクパターンを有するハーフトーン型位相シフトマスクが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)透明基板上に光半透過膜を有し、この光半透過膜が、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とする膜からなり、かつ前記光半透過膜中の単体の遷移金属と単体のケイ素が、酸化ケイ素および/または窒化ケイ素中に含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下であることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク、
(2)上記位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜に、所定のパターンに従ってその一部を除去するパターニング処理を施すことにより、光透過部と光半透過部とからなるマスクパターンを形成してなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク、および
(3)上記ハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うことを特徴とするリソグラフィー方法、
を提供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクは、透明基板上に光半透過膜を有するものであって、該透明基板の材料については特に制限はなく、従来、位相シフトマスクブランクに慣用されているもの、例えばソーダ石灰ガラスやホワイトクラウンのようなソーダライムガラス;ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、アルミノケイ酸ガラスのような低膨張ガラス;合成石英のような石英ガラス、あるいはポリエステルフィルムのようなプラスチックフィルムなどが用いられるが、LSIやLCD用マスクの基板材料としては、ソーダ石灰ガラスおよび石英ガラスが好適である。
【0014】
一方、上記透明基板上に設けられる光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過する性質と、露光光の位相を所定量シフトさせる性質とを有するとともに、マスクパターンを形成する際のレジストへの電子線描画時に電荷が帯電しない程度以上の導電性を有するものである。本発明においては、このような特性を有する光半透過膜としては、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とする膜が用いられる。
【0015】
上記遷移金属としては、特に制限はなく、周期律表IVB族、VB族、VIB族に属する金属元素の中から適宜選ぶのがよい。このような遷移金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどを挙げることができるが、これらの中で、チタニウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンが性能の面などから好適である。これらの遷移金属は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜の成膜方法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えばスパッタリング法、遷移金属とケイ素の組成を調整したタブレットを用いるEB蒸着法、イオンプレーティング法などの中から、状況に応じて適宜選ぶことができるが、これらの中で、特にスパッタリング法が好適である。例えば、酸素、窒素および窒素酸化物の中から選ばれる少なくとも1種を含むスパッタガス中において、前記遷移金属とケイ素とを含有するターゲットをスパッタリングして、透明基板上に光半透過膜を形成することにより、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造することができる。ここで、スパッタガスとしては、酸素や窒素や窒素酸化物ガスとアルゴンその他の不活性ガスとの混合ガスが用いられる。酸素ガスおよび窒素ガスは、膜中にそれぞれ酸素(O)、窒素(N)を導入するためのものであり、一方、窒素酸化物ガスは、膜中に酸素(O)と窒素(N)とを導入するためのものである。この窒素酸化物ガスとしては特に制限はないが、一酸化窒素(NO)ガスや二酸化窒素ガス(NO2)が好ましい。
【0017】
また、膜の透過率と導電率を制御するためには、反応ガスとして酸素ガスのみを用いる場合には、スパッタガス総流量の15〜60%程度の酸素ガスを導入するのが望ましく、また反応ガスとして窒素ガスのみを用いる場合には、スパッタガス総流量の15〜100%程度の窒素ガスを導入するのが望ましい。さらに、反応ガスとして酸素ガスと窒素ガスを用いる場合には、スパッタガス総流量の15〜55%程度の酸素ガスおよび15〜80%程度の窒素ガスを導入するのが望ましい。なお、NやOの膜中への導入方法は、上記の酸素ガスや窒素ガスや窒素酸化物ガスの使用に限られるものではなく、上述のような効果が期待できる場合、他の酸素化合物や窒素化合物(例えばNH3ガス)を使用してもよい。また、スパッタリング法としては特に制限はなく、従来公知の方法、例えばDCスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などが好ましく用いられる。なお、スパッタリング時の基板加熱や、成膜後のアニーリングなどを適宜行ってもよい。さらに、ターゲット組成としては、遷移金属とケイ素との原子比が30:1〜1:20の範囲にあるのが好ましい。
【0018】
このようにして形成された光半透過膜の膜厚dは、位相シフト量をφ、屈折率をn、露光光の波長をλとすると、次の(I)式で決定される。
【0019】
d=(φ/360)×{λ/(n-1)} …(1)
(1)式において、位相シフト量φは180°であることが理想的であるが、実用的な位相シフト量は160°≦φ≦200°であればよい。
【0020】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクは、前記のようにして得られたハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜に、所定のパターンに従ってその一部を除去するパターニング処理を施し、光透過部と光半透過部とからなるマスクパターンを形成することにより得られる。
【0021】
図1は本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクおよびハーフトーン型位相シフトマスクを示す図であり、更に具体的には図1(a)がハーフトーン型位相シフトマスクブランクの1例の断面図であり、図1(b)がハーフトーン型位相シフトマスクの1例の断面図である。
【0022】
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクは図1(a)に示されるように、透明基板1の上に光半透過膜2aが形成されたものである。また、ハーフトーン型位相シフトマスクは図1(b)に示されるように、図1(a)に示されるハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜2aに所定のパターンにしたがってその一部を除去するパターニング処理を施して、光半透過部2と光透過部3とで構成されるマスクパターンを形成したものである。
【0023】
本発明の位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜においては、該膜中のケイ素は、少なくとも酸化ケイ素および/または窒化ケイ素の形態を有しており、この酸化ケイ素や窒化ケイ素中に、通常遷移金属元素とケイ素元素が含有されている。また、露光光に対する光透過率は、マスクパターンの光転写の際に用いるレジストの感度にもよるが、一般的には4〜20%であるのが好ましく、5〜15%が特に好ましい。これは、光透過率が4%未満の場合は、図1(b)において、光半透過部2と光透過部3との境界部を通過する光同士の位相ずれによる相殺効果が充分得られず、また、20%を超える場合は、光半透過部2を通過してきた光によってもレジストが感光してしまう恐れがあるためである。この光半透過膜2a、光半透過部2の単位膜厚当たりの光透過率は、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素の含有率を選定することにより選ぶことができる。
【0024】
また、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクとしては、光半透過膜の可視域における透過率が30〜70%の範囲にあるものが好適である。このような可視域における透過率を有することにより、マスクの位置合わせ(アライメント)のために、新たにアライメントマークを形成するための膜を形成する必要がなくなる。
【0025】
さらに、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいては、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下が好ましい。その理由は、シート抵抗が5×107Ω/□を超えると、電子線照射により打ち込まれた電子を充分に導電しがたいためである。この導電性を得るためには、酸素(O)や窒素(N)の含有率を選定することによって選ぶことができる。この場合、先に述べたように酸素(O)や窒素(N)の含有率を増せば光透過率は増加するが、反面、導電率は低下する傾向にある。また屈折率、反射率、吸収係数等の特性を遷移金属、Si、O、Nの組成により好適に選ぶことができる。
【0026】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、光半透過膜における各構成元素の比率については、該光半透過膜が前記した特性を有するように適宜選べばよく、特に制限はないが、一般的には、遷移金属:ケイ素:酸素および/または窒素との割合が、原子比で10〜55%:15〜80%:70%以下の範囲で選定される。
【0027】
次に、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法の好適な例について、図2を参照しながら説明する。
【0028】
図2は、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程の1例の説明図であって、まず、透明基板1の表面に上記のように光半透過膜2aを形成して得られた位相シフトマスクブランクを用意する[図2(a)参照]。次いで、この位相シフトマスクブランクの光半透過膜2a上に、4000〜6000オングストローム程度の厚さの電子線レジスト膜を形成し[(図2(b)参照]、所定のパターンに従って電子線を照射したのち、レジストの現像処理を行ってレジストパターン4を形成する[(図2(c)参照]。次に、レジストパターン4をマスクとして、光半透過膜2aをドライエッチング処理したのち[(図2(d)参照]、残存レジストパターン4を剥離することにより、光半透過部2aおよび光透過部3を有する本発明のハーフトーン型位相シフトマスクが得られる[(図2(e)参照]。
【0029】
このようにして得られた本発明のハーフトーン型位相シフトマスクは、図3の説明図で示されるように、露光光L0が照射された場合、この露光光L0が、光半透過部2を通過して図示していない被転写体に達する光L1と光透過部3を通過して同じく被転写体に達する光L2とに別れる。この場合、光半透過部2を通過した光L1の強度は、実質的にレジストの露光に寄与しない程度の弱い光である。一方、光透過部3を通過した光L2は実質的に露光に寄与する強い光である。したがって、これによりパターン露光が可能となる。この際、回折現象によって光半透過部2と光透過部3との境界を通過する光が互いに相手の領域に回り込みをおこすが、両者の光の位相はほぼ反転した関係になるため、境界部近傍では互いの光が相殺し合うことで実質的な光強度が減衰する。これによって、境界が極めて明確となり解像度が向上する。
【0030】
本発明はまた、前記ハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うリソグラフィー方法をも提供するものである。
【0031】
このリソグラフィー方法については、マスクとして本発明のハーフトーン型位相シフトマスクを用いる方法であれば、特に制限されず、従来LSIなどの製造において慣用されている方法を用いることができる。
【0032】
例えば、被加工層を表面に形成した基板上にレジスト層を設けたのち、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクを介して、該レジスト層に紫外線、g線、i線、Deep UV、エキシマレーザー光、エックス線などを選択的に照射する。次いで現像工程において不必要な部分のレジスト層を除去し、基板上にレジストパターンを形成させたのち、このレジストパターンをマスクとして被加工層をエッチング処理し、次いで該レジストパターンを除去することにより、マスクパターンに忠実なパターンを基板上に形成することができる。
【0033】
【作用】
上述の本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクは、光半透過部を形成するための光半透過膜を有し、この光半透過膜が、遷移金属とケイ素と酸素および/または窒素とを主な構成要素とする膜からなっており、この膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過する性質と、露光光の位相を所定量シフトさせる性質とを有するとともに、電子線描画の際に電荷が帯電しない程度以上の導電性を有し、かつ導電性の幅広い制御性をも兼ね備えたものであることから、単純な膜構成により電子線描画時の電荷蓄積や静電気の帯電による影響を防止しつつ再現性の高いパターニングが可能となった。
【0034】
また、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用いることにより、好適な位相シフトマスクを得ることができる。
【0035】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
(1)ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造
図1(a)に示すハーフトーン型位相シフトマスクブランクを次のようにして製造した。
【0037】
透明基板1として、主表面を鏡面研磨した石英ガラス基板を用い、この基板上に、ターゲット組成比がタングステン(W)とケイ素(Si)との原子比で1:1、スパッタガスの組成がアルゴンと酸素との容量比で1:1である条件にて、RFマグネトロンスパッタリング法により、膜厚1240オングストロームの光半透過膜を形成し、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造した。形成された光半透過膜の屈折率nは2.0、λ=248nmのときの透過率は8.0%、W:Si:Oの原子比は26:29:45、シート抵抗は3.0×106Ω/□未満であった。
【0038】
図4は、このようにして得られたハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜の波長に対する光透過率の依存関係を示す図である。
【0039】
また、この光半透過膜について、その膜表面からの深さ方向への原子の分布を、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により分析した。その結果を図5に示す。図5において、X軸が結合エネルギー(BINDINGENERGY)(eV)、Y軸が原子数に対応する量、Z軸がサイクル数(CYCLES)(膜表面からの深さに対応し、数字が小さいほど初期の膜表面に近い)を示す。この図より、膜中にSiO2が含まれていることが分かる。
【0040】
(2)ハーフトーン型位相シフトマスクの製造
上記(1)で得られたハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用い、図2の工程図に従って、ハーフトーン型位相シフトマスクを製造した。
【0041】
まず、位相シフトマスクブランクの光半透過膜2a上に電子線レジスト膜4a(東ソー社製:CMS-M8)を6000オングストロームの厚さに形成し(図2(b)参照)、所定のパターンにしたがって電子線を照射した後、レジストの現像処理を行なってレジストパターン4を形成した(図2(c)参照)。
【0042】
次に、レジストパターン4をマスクとして光半透過膜2aを反応性ドライエッチング方式(RIE)平行平板型ドライエッチング装置を用いて、ドライエッチング処理した(図2(d)参照)。
【0043】
ドライエッチング処理後、残存レジストパターン4を剥離することにより、光半透過部2および光透過部3を有する位相シフトマスクを得た(図2(e)参照)。
【0044】
本実施例によれば、位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜2aが、前述のように3.0×106Ω/□未満のシート抵抗を有するため、位相シフトマスクの作成においてレジストパターンの形成のために行なう電子線照射によって打ち込まれた電子が帯電することを充分に防止できるものであった。
【0045】
また、本実施例の位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜2aは、透明基板1とのエッチング選択比(光半透過膜のエッチング速度/透明基板のエッチング速度)が3以上であるため、適宜な条件でのエッチングを行なうことにより、透明基板1をほとんど傷つけずに光半透過膜2aのエッチングを行なうことができた。
【0046】
また、本実施例において、光半透過膜2a(光半透過部2)は、透明基板1との充分な付着性を有しており、通常のフォトマスク作成の洗浄工程で行なわれる超音波洗浄やスクラブ洗浄にも耐えることができ、さらに耐酸性に優れているため、上記洗浄工程で行なわれる熱濃硫酸洗浄あるいは過酸化水素と濃硫酸との混合液による洗浄に充分耐え得るものであった。
【0047】
また、図4に示すように、可視域における透過率が42%程度であり、実施例1と同様にマスクの位置合わせ(アライメント)のために新たにアライメントマークを形成するための膜を形成する必要がない。
【0048】
本実施例の位相シフトマスクを使用したところ、従来の位相シフトマスクと同様の焦点深度が得られた。
【0049】
(実施例2)
実施例1の試料について365nmでの屈折率を測定し、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクとしての条件を満たす膜厚において光半透過膜を作成しその透過率を測定したところ、いずれも5〜15%の範囲であり、365nm波長においてもハーフトーン型シフトマスクブランクおよびハーフトーン型位相シフトマスクとして使用できることを確認した。
【0050】
(実施例3)
実施例1においてガス導入条件の内、酸素ガスの導入量を総量に対し各々5〜10%程度減少させ光半透過膜を作成し、436nmにおける屈折率よりハーフトーン型位相シフトマスクブランクとしての条件を満たす膜厚において透過率を測定したところ、いずれも5〜15%の範囲であり、導電率を含む他の特性についてもすべて充分な特性値を満たした状態で436nm波長においてもハーフトーン型シフトマスクおよびハーフトーン型位相シフトマスクブランクとして使用できることを確認した。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクは、透明基板上に光透過部を形成するための光半透過膜を有し、この光半透過膜が、実質的に露光に寄与しない強度の光を透過する性質と露光光の位相を所定量シフトさせる性質とを有すると同時に、電子線描画の際に電荷が帯電しない程度以上の導電性をも兼ね備え、自由に制御できるものであることから、単純な膜構成により電子線描画時の電荷蓄積や静電気による帯電を防止することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクブランクおよび本発明のハーフトーン型位相シフトマスクを示す図であり、図1(a)がハーフトーン型位相シフトマスクブランクの1例の断面図、図1(b)がハーフトーン型位相シフトマスクの1例の断面図である。
【図2】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程の1例を示す説明図である。
【図3】
ハーフトーン型位相シフトマスクの作用説明図である。
【図4】
実施例1で得られたハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜の波長に対する光透過率の依存関係を示す図である。
【図5】
実施例1で得られたハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜の膜表面から深さ方向への原子の分布をESCAによって分析した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 光半透過部
2a 光半透過膜
3 光透過部
4 レジストパターン
4a レジスト膜
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項b及びcは、明りょうでない記載の釈明を目的とする。
訂正事項a
特許明細書請求項1の「含有されている」を「含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書の【0012】段落の「含有されている」を「含有されており、光半透過膜のシート抵抗が5×107Ω/□以下である」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書の【0044】段落の「位相シフトマスクブランクの作成において」を「位相シフトマスクの作成において」と訂正する。
異議決定日 2002-05-30 
出願番号 特願平9-30680
審決分類 P 1 651・ 16- YA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 柏崎 正男
辻 徹二
登録日 2001-03-30 
登録番号 特許第3174741号(P3174741)
権利者 ホーヤ株式会社
発明の名称 位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスク  
代理人 中村 静男  
代理人 中村 静男  
代理人 藤村 元彦  
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