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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04R
審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H04R
管理番号 1064385
異議申立番号 異議2002-71425  
総通号数 34 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-04 
確定日 2002-08-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3236469号「磁気駆動装置およびその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3236469号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 本件発明
本件特許第3236469号(平成13年9月28日設定登録、請求項の数8)に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された「磁気駆動装置およびその製造方法」に係るものであるところ、その請求項1ないし4に記載された発明(以下「本件発明」という。)は、次に掲げるとおりのものである。

「【請求項1】 筒状のボビンの外周面に巻かれたコイルと、そのコイルを横断する磁界を与える磁界発生部材とを有し、前記磁界と、コイルに流れる電流とによってボビンに駆動力が与えられる磁気駆動装置において、
前記コイルは、ボビンの軸方向に間隔を開けて同一線材で互いに逆向きに巻かれた第1のコイルと第2のコイルとから成り、両コイル間では、第1のコイルの巻き終端部から線材を折曲げ角部を形成することなくほぼ180度ターンさせて第2のコイルの巻き始端部に導く連結部が設けられていることを特徴とする磁気駆動装置。
【請求項2】 連結部では、線材が直線部を有することなく同一方向に連続して湾曲している請求項1記載の磁気駆動装置。
【請求項3】 連結部では、前記線材がほぼ円弧形状またはほぼ楕円形状となるように連続して湾曲している請求項2記載の磁気駆動装置。
【請求項4】 前記第2のコイルの巻き終端部から前記線材を折曲げ角部を形成することなくほぼ180度ターンさせて、前記第1のコイルの既に巻かれた下層の線材の上にさらに線材が巻かれている請求項1記載の磁気駆動装置。」

第2 特許異議申立の理由及び証拠の概要
特許異議申立人は、本件発明は、次に掲げる甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、また、請求項1,3,4は、同法36条5項2号の規定に違反し、特許を受けることができない旨主張している。

甲第1号証:特開昭55-37071号公報
甲第2号証:実願平4-70455号(実開平6-70400号公報)のCD-ROM
甲第3号証:実願昭60-147117号(実開昭62-55311号公報)のマイクロフィルム

1 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、本件請求項1に係る発明との関連において、次に掲げる発明が記載されている。
「筒状のボビンの外周面に巻かれたコイルと、そのコイルを横断する磁界を与える磁界発生部材とを有し、前記磁界と、コイルに流れる電流とによってボビンに駆動力が与えられる磁気駆動装置において、
前記コイルは、ボビンの軸方向に間隔を開けて同一線材で互いに逆向きに巻かれた第1のコイルと第2のコイルとから成り、両コイル間では、第1のコイルの巻き終端部から線材を180度ターンさせて第2のコイルの巻き始端部に導く連結部が設けられていることを特徴とする磁気駆動装置」

2 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、甲第1号証に記載された発明と同趣旨の発明が記載されている。

3 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、本件請求項1に係る発明との関連において、次に掲げる発明が記載されている。
「筒状のボビンの外周面に巻かれたコイルと、
前記コイルは、複数のコイルとから成り、前記コイルの一部が180度ターンされているNMRイメージング装置用コイル」

第3 本件発明と甲第1ないし3号証に記載された発明との対比・検討
本件発明と甲第1ないし3号証に記載された発明とを対比して、検討すると、甲第1ないし3号証に記載された発明は、次に掲げる主要な事項を備えていない。

「第1のコイルと第2のコイルとの連結部としての、折曲げ角部を形成することなくほぼ180度ターンさせた線材」

この主要な事項を採用することにより、本件発明は、「第1のコイルと第2のコイルとの連結部において線材に大きな応力やダメージが与えられる変形部を無くし、高出力時の発熱による破断などが生じず、また絶縁不良が生じないようにした磁気駆動装置を提供する」という目的を達成し、「ボビンに形成される第1のコイルおよび第2のコイルの両コイル間に、折曲げ角部が形成されることなく、さらに好ましくは同一方向に連続して湾曲してほぼ180度Uターンする線材の連結部が形成されているため、この線材に応力集中がなく、断線が生じにくく、また高出力電流が与えられたときの発熱による断線も生じない。」という効果を奏するものである。

これに対して、甲第1ないし3号証に記載された発明は、上記主要な事項を備えてなく、また、甲第1ないし3号証には、この主要な事項を示唆する記載もなされていない。
したがって、本件発明は、甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

第4 特許異議申立人の主張についての検討
1 特許法29条2項の容易性について
異議申立人は、申立の理由で、甲第1,2号証には、上記主要な事項は記載されていないが、この主要な事項については、甲第3号証の第2図に、ボビンの円周面にU字状の連結部を介して逆方向に巻かれたコイルが開示されている。したがって、本件発明は、甲第3号証記載のU字状の連結部を単に適用した(寄せ集めた)ものにすぎない旨主張しているので、これについて検討する。

甲第3号証の第2図及びその説明では、「NMRイメージング装置におけるZ勾配磁場コイルは、直線性及び安定性の良い磁場を発生する必要があるから、精度よく巻かれ、巻回状態にて所定の関数系に基づく形状を呈する構成と成っている。」(2頁10行ないし3頁2行を参照)と記載され、第2図をみると、ボビンの円周面にU字状のコイルが示されているが、これらから、本件発明の主要な事項である「U字状の線材である連結部」が記載ないしは示唆されているとはいえないし、甲第3号証には、U字状とすることについて、本件発明のように、線材に大きな応力が与えられて、高出力電流が与えられたときの発熱による断線を防止することについては、記載ないしは示唆されていない。
したがって、甲第3号証には、「U字状の線材である連結部」は記載されていないから、本件発明は、甲第3号証記載のU字状の連結部を単に適用した(寄せ集めた)ものにすぎない、との異議申立人の主張は妥当ではない。

2 特許法36条5項2号の要件について
異議申立人は、申立の理由で、上記主要な事項における「折曲げ角部を形成することなく」とは、否定的表現により発明を特定しようとするもので、何ら具体的に特定し得ないばかりか、出願人の開示した範囲を超える、また、この主要な事項における「ほぼ」180度ターンとは、曖昧な文言で不明確である、さらに、請求項3に記載の「ほぼ」円弧状、「ほぼ」楕円状も、曖昧な文言で不明確である旨主張しているので、これについて検討する。

本件明細書には、スピーカの従来技術として、甲第1,2号証記載のものと同様に、スピーカにおける第1のコイルと第2のコイルとの「連結部」には「角部が形成」されていた旨が記載され、本件発明は、第1のコイルと第2のコイルの「連結部」に「角部が形成」された従来のスピーカを除くために、否定的な表現となったもので、「線材(導体)に角部が形成されない」全てのスピーカ又はコイルに係るものではないから、否定的な表現は一般的には好ましくないところ、本件発明においては、本件明細書の開示の範囲内で特定されているといえる。
また、「ほぼ」180度ターン、「ほぼ」円弧状、「ほぼ」楕円状の「ほぼ」については、正確、精密に「180度ターン」「円弧状」「楕円状」という意味でないことは、本件明細書をみると明らかで、概ね、概略という程度の意味であるから、この「ほぼ」という表現で、本件発明が不明確とまではいえない。

第5 むすび
以上、本件特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-08-08 
出願番号 特願平7-106956
審決分類 P 1 652・ 534- Y (H04R)
P 1 652・ 121- Y (H04R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松澤 福三郎  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 酒井 朋広
小林 秀美
登録日 2001-09-28 
登録番号 特許第3236469号(P3236469)
権利者 アルパイン株式会社
発明の名称 磁気駆動装置およびその製造方法  
代理人 野▲ざき▼ 照夫  

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