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審決分類 |
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない A47J 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない A47J 審判 全部無効 特29条の2 訂正を認める。無効としない A47J 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A47J |
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管理番号 | 1064904 |
審判番号 | 無効2000-35296 |
総通号数 | 35 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1988-06-20 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-06-06 |
確定日 | 2001-04-16 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2131036号発明「製パン器に於けるこね用羽根の制御方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2131036号に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、昭和61年12月12日の特許出願(特願昭61-297351号)であり、出願公告(特公平7-79772号公報)後の平成9年7月25日に設定の登録がなされ、これに対して、平成12年6月6日付けでエムケー精工株式会社より無効審判の請求がなされ、被請求人は、平成12年9月25日付けで訂正請求を行ったものである。 2.訂正請求について (1)訂正の内容 被請求人が求めた訂正請求の内容は、次のとおりである。 a.特許明細書の特許請求の範囲中の「一定時間こね用羽根を」と「間欠的に回転させた後」の間に、「間欠パルス通電によって」を追加する。 b.特許明細書の特許請求の範囲中の「こね用羽根を連続して回転させることを特徴とする」を、「こね用羽根を連続して回転させることで、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせることを特徴とする」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項a.は、こね用羽根の間欠的な回転に関して、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、上記訂正事項b.は、混ねつの方法を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記いずれの訂正も新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、平成6年法律第116号(以下、「平成6年法」という。)による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、並びに特許法法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.無効理由について (1)本件発明 本件特許明細書は、上記のとおり訂正されることとなり、本件発明の要旨は、訂正明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】予めパンケース内に入れられた水及びパン材料を、こね用羽根の回転力により混ねつする製パン工程に於いて、こね開始時こね用羽根の回転力により粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠パルス通電によって間欠的に回転させた後、こね用羽根を連続して回転させることで、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせることを特徴とする製パン器に於けるこね用羽根の制御方法。」 (2)請求人の主張 請求人は、下記の甲第1〜5号証を提出し、本件発明の特許を無効とすべきである旨主張している。その理由の概要は、次のとおりである。 (理由1)本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づ いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件 発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされた ものである。 (理由2)特許発明の明細書には、不備があり、特許法第36条第4、5項 に規定する要件を満たしていない。 (理由3)本件発明は、甲第4、甲第5号証に記載された周知技術を考慮す ると、実質的に甲第3号証に記載された考案と同一であり、しか も、本件発明の発明者が、甲第3号証記載の実用新案登録出願の 考案をした者と同一ではなく、また、本件出願の時にその出願人 が、上記実用新案登録出願の出願人と同一でもないので、特許法 第29条の2の規定により特許を受けることができなかったもの である。 甲第1号証:実願昭58-66852(実開昭59-172586号) のマイクロフィルム 甲第2号証:特開昭59-49717号公報 甲第3号証:実願昭61-170103(実開昭63-76236号) の願書に最初に添付した明細書又は図面 甲第4号証:実開昭57-155081号公報 甲第5号証:特開昭57-12941号公報 (3)甲各号証記載の事項 甲第1〜5号証には、以下の事項が記載されている。 甲第1号証(実願昭58-66852(実開昭59-172586号)のマイクロフィルム)には、「パンの生地練りから焙焼までを一貫して行なわしめるパン製造機において、練り羽根の回転数を練り工程の初期のみ低回転数としたことを特徴とするパン製造機。」(実用新案登録請求の範囲)に関して、「本考案の目的は、練り工程を行なう練り羽根の回転数を初期のみ低回転とすることで、生地材料の飛び散りを少なくし、水分の初期吸収を均一化することが可能なパン製造機を提供するにある。」(第2頁第7〜10行)、「この欠点を解消するため、練り工程の初期は練り羽根の回転数を最適値より大巾に低回転とし、」(第3頁第18〜20行)、「第1図は本考案を採用したパン製造機の構成図である。練り容器兼焙焼用パン型4の底部には練り羽根3が配設され、」(第4頁第7〜10行)、「まずフタ6を取り、パン生地用小麦粉、砂糖、塩、パン生地用油、イーストを練り容器兼焙焼用パン型4に入れる。その後適当な温度の水を加えた後、フタ6を閉めスイッチ(図示せず)を入れる」(第4頁第15〜19行)、「図に示した一実施例では初期回転数を80rpmで2分間、その後最適回転数400rpmで13分混練する様、制御回路1にて制御される。」(第5頁第4〜7行)との記載が図面と共に示されている。 甲第2号証(特開昭59-49717号公報)には、「調理機」に関して、「本発明は上述の如き従来の欠点に鑑み成されたもので、調理材料に適した回転速度をモーターに与えることによって材料の飛び散りを防止し均一な混ざり具合いを得ることを目的とするものである。」(第1頁右欄第17行〜第2頁第1行)、「駆動開始直後は1.5秒おきの1600rpmの低速間欠駆動を9秒間続ける。この間材料は、容器(4)の周面や材料投入口(5)付近に飛散して付着することなく、ソフトな力で水と小麦粉を荒く混ぜ合わせ、水と小麦粉とが結びついて玉状になったものを間欠運動により砕いて水気のない小麦粉の部分に分散させる。・・・(中略)・・・この後調理のパターンは次の段階へ移行する。即ちモーター(M)は中速(2500rpm)で35秒間連続駆動される。」(第3頁左下欄第19行〜同頁右下欄第15行)との記載が図面とともに示されている。 甲第3号証(実願昭61-170103(実開昭63-76236号)の願書に最初に添付した明細書又は図面)には、「(1)小麦粉、水等のパンを作る材料を収納する容器(9)と、この容器(9)内で回転して前記材料をこね合わせる撹拌翼(8)と、この撹拌翼(8)を回転させる電動機(4)とを備えた調理器において、撹拌初期の一定時間前記撹拌翼(8)を低速回転させることを特徴とした調理器。・・・(中略)・・・(3)前記撹拌翼(8)を低速回転させるための電動機(4)の断続運転機能を有する制御回路基板(3)を有してなる実用新案登録請求の範囲第1項記載の調理器。」(実用新案登録請求の範囲)、「本考案は上記問題点を解決するためになされたものであり、撹拌初期の材料が分離している状態の一定時間は撹拌翼を低速回転させるようにしたものである。作用 このようにすることにより材料の撹拌初期の一定時間は、撹拌翼が低速回転しているので分離している材料は飛散することなく均一に混ざり合うようになり、一定時間経過後は撹拌翼を全速回転させて材料を練り上げる。」(第2頁第19行〜第3頁第8行)、「この動作の状態を第5図により説明すると、まず、スイッチ23を押してスイッチ入力を”H”にすると撹拌工程が開始される。ゼロクロス検出回路14からの出力パルスをマイコン21でカウントし、第5図に示す如きタイミングでトランジスタ24のON/OFFを制御する。これによると最初のT3時間はT1時間ON、T2時間OFFのインターバルでトランジスタ24のON、OFFによって電動機4の断続運転によりマイコン21を介して低速運転でゆるやかな撹拌を行ない、時間T3経過後時間T4まではマイコン21を介して電動機4の全速回転で従来通りの撹拌を行う。断続運転のタイミングはT1=約0.2秒、T2=約1.0秒程度である。」(第7頁第3〜18行)との記載が図面と共に示されている。 甲第4号証(実開昭57-155081号公報)には、「・・・この中空室に回転しないよう拘束状態にセットする不燃性の器体と、この器体の底に上記器体のセット時駆動軸と係合するように設けた回転翼と、・・・(中略)・・・タイマーが設定時間になると、注水用弁の開放と同時に天火用ヒーターの加熱、混捏用回転翼の駆動、回転翼の停止にともなう一次発酵、ガス抜き、二次発酵後にヒーターが焼成温度となるように作動させることを特徴とする製パン器。」(実用新案登録請求の範囲)が、図面と共に示されている。 甲第5号証(特開昭57-12941号公報)には、「ヒータを取り付けた加熱槽内に、こね羽根付パン型を挿入し、前記パン型内で、生地を混捏する際、制御手段によって自動的に断続混捏することを特徴とするパン製造方法。」(特許請求の範囲)に関して、「第2図チャートで示すようにパン型1内でこね羽根2によって断続的にこねられたパン生地は制御回路12で制御されて一定温度に保たれたパン型1内で発酵され、こね羽根2を回転させることによってガス抜きされることを数回繰り返し、熟成の終ったパン生地は、パン型1内でこね羽根2をパン型底部に残したまま焼き上げられるのである。」(第2頁左欄第9〜16行)との記載が、図面と共に示されている。 (4)判断 (理由1:進歩性について) 訂正後の本件発明(前者)と、甲第1号証記載のもの(後者)とを対比する。 後者の「練り容器兼焙焼用パン型」、「生地材料」、「練り羽根」、「初期のみ」、「パン製造機」は、それぞれ前者の「パンケース」、「パン材料」、「こね用羽根」、「一定時間」、「製パン器」に相当している。そして、後者の、考案の目的に関する記載からみて、後者のものにおける「一定時間」とは、「生地材料の飛び散り」が落ち着くまでの時間であることが窺える。また、上述の工程に関する記載からみて、生地材料と水は、混ねつ以前に予め練り容器兼焙焼用パン型に入れられていることが理解できる。 したがって、両者は、予めパンケース内に入れられた水及びパン材料を、こね用羽根の回転力により混ねつする製パン工程に於いて、こね開始時こね用羽根の回転力により粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠パルス通電によって間欠的に回転させた後、こね用羽根を連続して回転させることで、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせることを特徴とする製パン器に於けるこね用羽根の制御方法の点で一致し、1)前者が、こね用羽根を間欠パルス通電によって間欠的に回転させるものとしているのに対して、後者では、こね用羽根を連続回転させている点、2)前者が、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせるのに対して、後者には変速器の使用の有無についての記載が無い点で両者は相違している。 そこで、上記1)の点についてみると、上記のように、甲第2号証には、材料の飛び散りを防止するために、調理開始後一定時間、モーターによって切削刃を低速で間欠駆動させる点が記載されている。小麦粉と水等との混ぜ合わせについても示されていることから、これを製パン器のこね用羽根の制御方法に採用することに格別の困難性は認められない。しかし、甲第2号証記載のものは、「複数段の回転速度をもつモーター」とあるように、変速器を使用するものであることが理解できる。 そして、前者は、該構成を具備することにより明細書記載の効果を奏するものである。 なお、請求人は、弁駁書において、「甲第1号証の発明において低回転数とすることで粉体が飛散しないようにしている点を、同じ目的を達成するものである甲第2号証発明の、こね用羽根を間欠的に回転させる構成で置き換えることは当業者にとり容易なことである。」(第3頁第4〜7行)と主張しているが、甲第2号証記載のものは、いずれの実施例においても調理開始後の間欠運転を、低速回転後高速回転を行うものが示されている。低速回転を行っている時間、又は高速回転を行っている時間は、確かに速度を変化させないものであるが、このいずれかのもののみを抽出することが示唆されているとはいえない。 したがって、請求人の上記主張は、採用できない。 よって、本件発明が、甲第1号証及び甲第2号証記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (理由2:記載不備について) 請求人は、1)特許請求の範囲の記載された構成では、粉体がパンケースの外に飛び散らないようにするという課題を解決するための必須の構成要件についての記載がない点、2)回転、停止の時間間隔について、この発明が、その作用効果を達成することができる程度に記載されていない点で不備があると主張している(審判請求書[4]本件特許を無効とするべき理由2(明細書の不備))。 まず、1)についてみると、本件発明の特許請求の範囲においては、確かに回転数、回転、停止の条件についての所定の条件が記載されてはいないが、こね用羽根を間欠的に回転させるという構成は明示されていることから、所定の条件が記載されていないからといって、直ちに必須の構成要件が記載されていないということはできない。 次に、上記2)の点についてみると、明細書には、「斯かる状態から羽根を瞬時回転し粉体がケース外に飛び出る前に停止する様にすると粉体はやや静止の状態に戻る斯くして粉体が落ち着くまで休止させてから再び羽根を舜時回転、休止をする動作を数十回繰り返しすると粉体はパンケース外に飛び散ること無く、水と良く融合して糊状化する。」(訂正明細書第2頁第13〜17行参照)との記載があり、「時刻イから混ねつ用羽根4が回転を始めると・・・(中略)・・・モーター9が時刻ロで停止すると・・・ケース3内で時刻ハで静止した後ケース底面に落下する、この間に水12,粉体11の一部は徐々に混合されて行く。斯く数十回の回転・・・停止を繰り返す事で完全に粉体11と水12は飛散する事なく融合する。」(同第2頁第26行〜同第3頁第4行参照)との記載が、モーターの制御を示すタイムチャート(第3図)と共に示されている。 確かに具体的数値の記載は十分とはいえないが、当業者であれば、目的、作用、パンケースの大きさ等の条件を勘案し、該数値は適宜選択し得ることと推測されることから、当業者が容易に実施しうる程度に記載されていないとすることはできない。 よって、上記請求人の主張を採用することはできない。 (理由3:同一性について) 訂正後の本件発明(前者)と本件出願の日前の他の実用新案登録出願である実願昭61-170103号(実開昭63-76236号)の願書に最初に添付された明細書に記載された考案(後者)とを対比する。 後者の「容器」、「小麦粉、水等のパンを作る材料」、「撹拌翼」は、それぞれ前者の「パンケース」、「水及びパン材料」、「こね用羽根」に相当する。そして、後者の「調理器」は、「本考案は撹拌により小麦粉、水等のパンの材料を練りあげる家庭用の調理器に関するものである。」との記載からみて、機能的には、前者の「製パン器」に相当している。 また、上記明細書の記載からみて、後者の小麦粉、水等のパンを作る材料は、混ねつの前に、容器に入れられていることが理解できる。そして、後者の実用新案登録請求の範囲第3項記載の実施例のものにおける「断続運転」は、前者の「間欠パルス通電」に相当するものと考えられる。さらに、後者のものにおける「撹拌初期の一定時間」とは、該考案の課題を考慮すると、前者の「粉体飛散が落ち着くまでの一定時間」に相当するものと考えられる。 したがって、両者は、予めパンケース内に入れられた水及びパン材料を、こね用羽根の回転力により混ねつする製パン工程に於いて、こね開始時こね用羽根の回転力により粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠パルス通電によって回転させた後、こね用羽根を連続して回転させることで、粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせることを特徴とする製パン器に於けるこね用羽根の制御方法で共通するが、 前者が、1)こね用羽根を間欠的に回転させるようにし、2)変速器を使用しないで混ねつさせているのに対して、後者のものは、該構成を関する記載がない点で相違している。 なお、請求人は、1)の点について、後者に記載されている、「撹拌初期の一定時間(T3時間)電動機を断続運転して撹拌翼を低速回転させる」構成が、前者の「こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠的に回転させ」る構成に相当する旨主張している(審判請求書第8頁第26行〜同第9頁第3行)。 しかしながら、先に見たように、後者記載のものは、粉体飛散が落ち着くまでの一定時間電動機を間欠パルス通電によって回転させることは記載されているが、同期間、こね用羽根を間欠的に回転することまでは記載されていない。 また、請求人は、2)の点について、「電動機4の断続運転は「変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせる」ためであることが明らかである。」と主張している(弁駁書第3頁第18〜19行)。 しかし、後者のものは、撹拌初期の一定時間は、「低速」回転とし、その後「全速」回転させるものであること、つまりは変速手段を設けていることが推測され、変速器を設けないものとした前者と構成は異なるものである。 そして、前者は、該構成を具備することにより、明細書記載の「今迄の様なモーターの変速による防止と違い交流モーターに減速器を使用しての切り換え操作の必要も無くコスト低減を計れる他減速器等から発生する騒音も無い幾多の利点がある。」という効果を奏するものである。 したがって、本件発明が、先願考案と同一であるという請求人の主張は、採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。 また、他に本件発明の特許を無効とすべき理由を発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 製パン器に於けるこね用羽根の制御方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】予めパンケース内に入れられた水及びパン材料を、こね用羽根の回転力により混ねつする製パン工程に於いて、こね開始時こね用羽根の回転力による粉体飛散が落ち着くまでの一定時間こね用羽根を間欠パルス通電によって間欠的に回転させた後、こね用羽根を連続して回転させることで、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせることを特徴とする製パン器に於けるこね用羽根の制御方法。 【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 本発明は家庭でパンを製造する製パン器でパン材料と水とで混ねつを始める段階での混ねつに関するものである。 (ロ)従来の技術 一般にパンの製造はパン材料である小麦粉ミルク、ショートニング、塩、イースト菌等のパン材料に水を注加して混ねつを開始し次いで、発酵、又再こね、ベンチタイム、丸め、ホイロ、焼き上げの工程を経てパンを手動で或いは上記工程のシーケンスを自動化して作られている。所が上記パン材料に水を注入して混ねつを開始した時、粉体に水が浸透しない内はこね用回転羽根の回転速度が速すぎると該羽根によって粉体のみがパンケース外に跳ね飛ばされるので最初水と粉体が融合しないうちは羽根の回転速度を遅くして粉体を飛ばさない様にし、やがて混ねつし、パン材料に十分水が浸透した後は、回転を早くして混ねつに必要な回転数に戻している。即ち混ねつの速度を変える事によって粉体が飛散するのを防止する様にしている。 (ハ)発明が解決しようとする問題点 小麦粉等の粉体に水を注入し回転羽根で、一定方向の回転で混ねつを開始する際、粉体と水とが最初分離している為混ねつ用の回転羽根の通常の速度では粉体が飛散するので回転羽根の駆動用モーターの回転数を直流モーターでは入力電圧を加減して減速するか、交流誘導モーターでは減速器を使用して減速する等の方法がとられている。 その為寿命、騒音、価格等不都合な事が多かった。 (ニ)問題点を解決する為の手段 混ねつに際し粉体が飛散しない様にする為に回転羽根の速度を減速して行なう為の種々の不都合に対し、回転羽根の速度を変えずに回転羽根の回転を間欠的にする事によって粉体の飛散をなくす様にして上記の不都合をなくしたものである。 (ホ)作用 パン製造に於ける混ねつの工程は最も重要であり、生地の仕上がりは回転速度と時間との相関関係から、良質のグルテンを得るに必要な回転速度と時間が決められる。更に実用上の仕上り時間を考慮すると混ねつ用羽根の回転速度はほゞ毎分200回転以上が要求される。この様な速度で連続して水及び粉体を混ねつすればパンケース内の水や空気が回転する羽根に叩かれてその反動で粉体を飛び散らせ又粉体自身も羽根に叩かれて飛び上がる。斯かる状態から羽根を瞬時回転し粉体がケース外に飛び出る前に停止する様にすると粉体はやや静止の状態に戻る斯くして粉体が落ち着くまで休止させてから再び羽根を舜時回転、休止をする動作を数十回繰り返しすると粉体はパンケース外に飛び散ること無く、水と良く融合して糊状化する。斯かる状態になってから羽根の回転を連続運転に切り替えて、こね工程に移る。従って、モーターの速度変速によらない間欠パルス通電によって変速の困難な誘導式モーターで変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせる事が出来る。 (ヘ)実施例 第1,2図に於いてケース3内にパン材料である粉体11を入れ更に水12を注入する、混ねつ用羽根4はシャフト5にかん着自在に取り付けられ下部にプーリー6を固着し、こねに際しモーター9に回転、停止の繰り返しの信号を出す制御部10は第3図のタイムチャートに示す制御部10にプログラムされた通りに回転及び停止をする。時刻イから混ねつ用羽根4が回転を始めると水12、粉体11は羽根4と同じ方向に廻り出すが、やがて水12,粉体11及び羽根4の動きによって水分を含まない一部の粉体ケース3の上縁に向かって飛び上がって来る。制御部10にはこの時間以前にモーター9が停止する様にプログラムされているので、モーター9が時刻ロで停止すると水12,粉体11及び飛び上がりかかった粉体11はケース3内で時刻ハで静止した後ケース底面に落下する、この間に水12、粉体11の一部は徐々に混合されて行く。斯く数十回の回転…停止を繰り返す事で完全に粉体11と水12は飛散する事なく融合する、以後図3のネの様にモーター9は連続回転に移り混ねつ終了で停止する。 (ト)効果 以上の様に此の発明に係わる自動製パン器に於ける混ねつ初期の羽根の間欠回転制御方法で粉体の飛散を防止するので今迄の様なモーターの変速による防止と違い交流モーターに減速器を使用しての切り変え操作の必要も無くコスト低減を計れる他減速器等から発生する騒音も無い幾多の利点がある。 【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明に係わる自動製パン器の線図。第2図は本発明の作用を示す斜視図。第3図はモーターの制御を示すタイムチャート図である。 1……本体、2……オーブン、3……パンケース、4……混ねつ用羽根、5……シャフト、6……プーリー、7……ベルト、8……プーリー、9……モーター、10……制御部、11……粉体、12……水、13……ヒーター。 |
訂正の要旨 |
訂正事項 a.明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の特許請求の範囲の請求項1の「一定時間こね用羽根を」と、「間欠的に回転させた後」との間に、「間欠パルス通電によって」の語句を追加する。 b.特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の特許請求の範囲の請求項1の「こね用羽根を連続して回転させること」と、「を特徴とする」との間に、「で、変速器を使用しないで粉体をパンケース外に飛散させずに混ねつさせること」の語句を追加する。 |
審理終結日 | 2001-02-06 |
結審通知日 | 2001-02-20 |
審決日 | 2001-03-05 |
出願番号 | 特願昭61-297351 |
審決分類 |
P
1
112・
532-
YA
(A47J)
P 1 112・ 121- YA (A47J) P 1 112・ 531- YA (A47J) P 1 112・ 16- YA (A47J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 博、新見 浩一 |
特許庁審判長 |
滝本 静雄 |
特許庁審判官 |
岡田 和加子 岡本 昌直 |
登録日 | 1997-07-25 |
登録番号 | 特許第2131036号(P2131036) |
発明の名称 | 製パン器に於けるこね用羽根の制御方法 |
代理人 | 湯田 浩一 |
代理人 | 渡辺 秀治 |
代理人 | 竹本 松司 |
代理人 | 魚住 高博 |
代理人 | 杉山 秀雄 |
代理人 | 長谷川 洋 |
代理人 | 渡辺 秀治 |
代理人 | 塩野入 章夫 |
代理人 | 長谷川 洋 |