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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H
管理番号 1065400
審判番号 審判1998-1693  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-07-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-02-05 
確定日 2002-08-23 
事件の表示 平成4年特許願第359869号「コアレスペーパーロールの製法とこれに用いる装置」拒絶査定に対する審判事件(平成6年7月19日出願公開、特開平6ー199452号)についてした平成11年9月17日付けの審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12年(行ケ)第17号、平成13年1月15日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年12月28日の出願であって、平成7年6月7日に出願公告がなされたところ、平成7年8月31日付けで特許異議申立てがあり、平成9年12月24日付けで特許異議申立の理由により拒絶査定されたところ、平成10年2月5日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされると共に、平成10年3月9日付けで手続補正書が提出された。
これに対し、上記手続補正を却下し、審判請求が成り立たない旨の審決が、平成11年9月17日付けでなされたが、この審決を不服として、平成12年1月13日に東京高等裁判所に出訴され、平成13年1月15日に同審決を取り消す旨の判決の言い渡しがあった。

本願発明の認定に関し、上記審決では、平成10年3月9日付け手続補正でなされた請求項1の補正が特許請求の範囲の減縮ではなく、公告時の発明を変更するものであるからとの理由で上記手続補正を却下し、本願発明は、公告時の特許請求の範囲に記載された発明であると認定したが、上記判決では、「請求項1の補正は、特許請求の範囲の減縮であり、また、公告時の発明を変更するものではない」との判断が示された。
平成10年3月9日付け手続補正では、請求項1の補正に加え、特許請求の範囲の減縮を目的として請求項2も補正されたが、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明である「コアレスペーパーロールの製法」に用いられる「コアレスペーパーロールの製造装置」であり、上記判決で示された判断に基づけば、請求項2の補正についても、請求項1の補正と同様、特許請求の範囲を減縮するものであり、また、公告時の発明を変更するものではない。

よって、請求項1及び2に係る発明は、上記手続補正により補正された以下のものである。
【請求項1】ペーパー巻取り用の巻取軸を加熱して巻取りパートにおける巻取りに供し、このペーパー巻始端に水又は接着剤液を塗布して巻取りを進行させ、上記巻始端に塗布された水又は接着剤液を上記加熱巻取り軸により乾燥してペーパー巻芯部に保形層を形成するコアレスペーパーロールの製法において、上記巻取りが完了したペーパーロールを上記巻取りパートのペーパーロール排出側に設けられた巻取軸抜き取りパートへ転出して巻取軸の抜去を行ない、該抜去された巻取軸をグリッパーにて吊上げて上記巻取りパートの上方に配された加熱パートへ供給して上記加熱を行ない、該加熱パートにて加熱された巻取軸を上記グリッパーにて上記巻取りパートに供給し上記巻取りを行なわせるようにしたコアレスペーパーロールの製法。
【請求項2】巻取軸にペーパーを巻取る巻取手段と、この巻取手段に供給する巻取軸を加熱する巻取軸加熱手段と、この加熱巻取軸に巻き取るペーパーの巻始端に水又は接着剤を塗布する手段と、巻取りが完了したペーパーロールの転出を受け巻取軸の抜去を行なう巻取軸抜き取り手段と、上記巻取手段の上方に配された巻取軸加熱手段と、上記巻取軸抜き取り手段により抜去された巻取軸を該巻取軸抜き取り手段から吊上げて上記巻取軸加熱手段へ供給すると共に加熱済巻取軸を該巻取軸加熱手段から上記巻取手段に供給するグリッパーとから成ることを特徴とするコアレスペーパーロールの製造装置。

2.引用例
前置審査において、平成10年5月21日付け拒絶理由で通知された特開昭63-66054号公報及び特開平4-55250号公報(以下、「引例1」及び「引例2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
(1)引例1:特開昭63-66054号公報
内周に巻芯としての紙管がない無芯紙の無芯紙ロールの製造装置及び製造方法に関し、
(ア)「第1図はこの発明の無芯紙ロールの製造装置を示し、これがペーパの巻取部Aと、ペーパのロール体を押し抜いて取る押抜部Bと、ペーパの切断部Cと、押抜部Bの巻軸をペーパの巻取部Aに移送する巻軸移送部Dとからなる。」(第3頁左上欄第7〜11行)、
(イ)「次に、かかる状態において、・・・・・、ペーパ(7)を巻軸(1)に巻き込んでいく。こうしてペーパ(7)のロール体(4)が所定の巻厚になると、・・・・・上記ロール体(4)を左方のガイド通路Rに押し出す。このため、ロール体(4)はそのガイド通路R上を転がって、上記押抜部Bの支承部材(16)上の二又状態にそのロール体(4)の巻軸(1)の端部が支承されるように受け止められる。」(第3頁右下欄第4〜20行)、
(ウ)「次に、上記のように巻軸(1)が支承部材(16)上にあるロール体(4)は、ペーパ(7)端の切断および貼着を終了した後、チェーンホイール(12),(13)上のチェーン(14)に取り付けた押抜部材(15)に載置された状態で、第2図中矢印P方向へ軸方向移動する。・・・・・このため、支承部材(16)はロール体(4)の端面を矢印P方向に押圧し、このロール体(4)を巻軸(1)から押し抜くように動作する。」(第4頁右上欄第3〜13行)、
(エ)「こうして、ロール体(4)が全て側壁外部に搬出されたときは、巻軸(1)は支承部材(16)と係止部材(18)上に架けわたされており、第1のシリンダ(31)のピストンロッド(34)が伸長して降下し、つかみ部材(32)により巻軸(1)をつかみ取った後、モータ(13)の逆転によって押抜部材(15)は往路に沿って復帰し、最右端に至って次の巻軸(1)の支承動作に備える。」(第4頁右上欄第18行〜第4頁左下欄第5行)、
(オ)「このようにして、ペーパ(7)の巻取り、切断、押し抜きおよび巻軸(1)の移し替えが連続的に、しかも繰り返し実施され、無芯紙ロールが製造されるのである。」(第4頁左下欄第16〜19行)が、それぞれ、記載されている。

(2)引例2:特開平4-55250号公報
無芯トイレットペーパーロールの製造方法に関して、
(カ)「この発明のトイレットペーパーロールの製造方法は外径が紙筒芯とほぼ同じに伸長した伸縮自在な固い巻軸に、トイレットペーパーの巻き初めにはトイレットペーパーに接着剤の水溶液を噴霧しながらトイレットペーパーを、固く巻付けて、トイレットペーパー同志が仮着されてトイレットペーパーの仮着筒芯を形成し、このトイレットペーパーの仮着筒芯の外側にトイレットペーパーをロール状に固く巻付けた後に、この伸縮自在な固い巻軸の外径を縮小し、この伸縮自在な固い巻軸を固く巻いたロール状のトイレットペーパーから抜いてトイレットペーパーロールを製造する。」(第2頁左下欄第6〜17行)、
(キ)「この実施例の製造方法で造ったトイレットペーパーロール7はトイレットペーパー同志が仮着してトイレットペーパーの仮着筒芯6を有するのでトイレットペーパーロール7の大きな孔8の周縁部の保形が良いし、更に巻軸1を加熱しておくと、噴霧した接着剤液が少々早く乾燥されてトイレットペーパー同志の仮着が早くなるから、径を小さくして巻軸1をトイレットペーパーロール7より引抜き際にトイレットペーパーロール7の巻き初め部に成形されたトイレットペーパーの仮着筒芯6によりトイレットペーパーロールの形状をより良く保つことができる。」(第3頁左下欄第11行〜右下欄第2行)が、それぞれ記載されている。

3.対比・判断
まず、請求項1に係る発明について検討する。
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と、引例1に記載された発明とを比較すると、引例1に記載された発明の「巻取部A」、「押抜部B」、及び、「巻軸移送部Dのつかみ部材(32)」は、請求項1に係る発明の「巻取りパート」、「巻取軸抜取パート」及び、「グリッパー」に、それぞれ相当するので、両者は、「ペーパー巻取り用の巻取軸を巻取りパートにおける巻取りに供して製造するコアレスペーパーロールの製法において、上記巻取りが完了したペーパーロールを上記巻取りパートのペーパーロール排出側に設けられた巻取軸抜き取りパートへ転出して巻取軸の抜去を行ない、該抜去された巻取軸をグリッパーにて吊上げて上記巻取りパートに供給し上記巻取りを行なわせるようにしたコアレスペーパーロールの製法。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:請求項1に係る発明では、ペーパ巻始端に水又は接着剤液を塗布して巻取りを進行させるとともに、巻取軸を加熱することによって乾燥を促進させ、ペーパー巻芯部に保形層を形成させるものであるのに対し、引例1に記載された発明には、巻き初めにそのような処置を施すことについては何ら示されていない点。

相違点2:巻取軸の加熱に関して、巻取軸抜き取りパートで巻取軸を抜去した後、巻取軸をグリッパーで巻取りパートの上方に配された加熱パートへ供給して加熱を行ない、加熱後、巻取軸をグリッパーにて巻取りパートに供給するものであるのに対し、引例1に記載された発明には、巻取軸を加熱することについては何ら開示されていない点。
すなわち、請求項1に係る発明は、巻取軸を加熱する加熱パートを有し、「巻取りパート」→「巻取軸抜き取りパート」→「加熱パート」→「巻取りパート」の順で、巻取軸を移動させてコアレス(トイレット)ペーパーロールを製造するとともに、加熱パートが巻取りパートの上方に配置されているものであるのに対し、引例1に記載の発明は、巻取軸を加熱する加熱パートを有していない点。

そこで、上記相違点につき検討する。
相違点1について:
コアレストイレットペーパーロールを作る際に、トイレットペーパーの巻き初めに、トイレットペーパーに接着剤の水溶液を噴霧し、トイレットペーパーの仮着筒芯を形成させるようにしたものが引例2に記載されており、また、巻取軸を加熱することで、接着剤の水溶液の乾燥を促進できることも記載されている。そして、引例2の仮着筒芯は、ペーパーロールの形状をよりよく保つことができるものであることから、請求項1に係る発明のペーパー巻芯部の保形層に相当するものである(上記(カ)、(キ)参照)。
ところで、トイレットペーパーを製造する際に、トイレットペーパーの始端に水又は薄い接着液を塗り保形層を形成することは、従来から、この分野で広く行われてていることであり、コアレスペーパーを製造する場合にも広く実施されているものである(例えば、実願昭49-134051号(実開昭51-61049号)のマイクロフィルム参照)。
してみると、引例1記載の発明に、引例2記載の上記技術事項を採用したことに格別の困難があったとは認められない。

相違点2について:
引例2には、トイレットペーパーの巻き初めに噴霧した接着剤の水溶液を速く乾燥させてペーパー同士の仮着を早めるために、巻軸を加熱しておくことが記載されており(上記(キ)参照)、上記相違点2に係る構成は、引用例2に記載された該技術事項から当業者が容易に想到できたものである。
相違点2に関し、請求人は、前置審査での平成10年5月21日付け拒絶理由通知に対する平成10年8月7日付け意見書において、「巻取軸をグリッパーにて抜去パートから加熱パートへ再供給するに当たって、同じグリッパーを抜去パートから加熱パートへ供し、更に同じグリッパーを加熱パートから巻取りパートへ供する一連の装置乃至方法に関しては、第1,第2引例には全く開示がなく、」と主張している(意見書第3頁第14〜16行)。しかしながら、引例1には、加熱パートはないものの、それ以外のパートからパートへ巻取軸をグリッパーでつかんで供給することが開示されており、引例2に記載の「巻取軸(巻軸1)を加熱しておく」技術事項を採用する場合、新たに、巻取軸(巻軸1)を加熱するための「加熱する工程(パート)」をプロセスに組み込むことは、当業者にとって自明のものである。また、巻取軸の加熱は、巻取りパートで塗布する接着剤液を速やかに乾燥させることを目的とするものであるので、加熱には時間がかかるのであるから巻取りパートで加熱するのでは加熱のタイミングが遅すぎることとなり、タイミングが遅くならないように、「加熱パート」を「巻取りパート」の直前に配することは、その目的を達成するために当然選択されることである。
更に、請求人は、上記意見書において、「このリサイクル工程乃至装置において、「加熱パートを巻取りパートの上方に配置した点」も重要な要素であり、」と述べた上で、上方に配置することが何故重要であるかについては、「この一連のグリッパーの機能目的は加熱パートを巻取りパートの上方に配置せねば実現できない、又そのように配置することによって、既知の巻取軸抜去パート→巻取りパートへ移行せしめるグリッパー機能を、上記巻取軸加熱パートへ供して巻取りパートへ供する機能に合理的に転換し改善できるものであり、抜去軸をグリッパーでつかんで中空に存する加熱パートに吊り上げ、そのまま同じグリッパーで巻取りパートへ吊り上げる着想は通常の発想では、単純であるが想到し難いものである。」と主張している(意見書第3頁第18〜28行)。
しかしながら、引例1記載の発明も、抜去した巻取軸を巻取りパートへ運ぶのにグリッパーで吊り下げて運んでいくものであって、引例1の第1図の記載からみても、「巻取軸抜去パート」から巻取軸をグリッパーで吊り上げ、吊り上げた状態でグリッパーを横移動し、そして、巻取軸の吊り下げ位置を降下させて、巻取軸を「巻取りパート」に設置するものであり、グリッパーでつかまれた巻取軸の位置は、常に、「巻取りパート」の上方にある。引例1記載の発明において、前示の通り加熱パートを巻取りパートの直前に配するのであるから、こうした巻取軸の移動途中、即ち、「加熱パートを巻取りパートの上方に配置」することになる。また、請求項1に係る発明において、「加熱パートを巻取りパートの上方に配置する」ことによって顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

以上の理由から、請求項1に係る発明は、引例1及び引例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と、引例1に記載された発明とを比較すると、引例1に記載された発明の「巻取部Aの装置」、「押抜部Bの装置」、及び、「巻軸移送部Dのつかみ部材(32)」は、請求項1に係る発明の「巻取り手段」、「巻取軸抜き取り手段」及び、「グリッパー」に、それぞれ相当するので、両者は、「巻取軸にペーパーを巻取る巻取手段と、巻取りが完了したペーパーロールの転出を受け巻取軸の抜去を行う巻取軸抜き取り手段と、上記巻取軸抜き取り手段により抜去された巻取軸を該巻取軸抜き取り手段から吊上げて上記巻取手段に供給するグリッパーとから成ることを特徴とするコアレスペーパーロールの製造装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点3:請求項2に係る発明では、巻取手段に供給する巻取軸を加熱する巻取軸加熱手段と、この加熱巻取軸に巻き取るペーパーの巻始端に水又は接着剤を塗布する手段とを有しているのに対し、引例1に記載された発明は、これらの装置を有していない点。

相違点4:請求項2に係る発明では、巻取軸加熱手段が巻取手段の上方に配置されており、巻取軸がグリッパーによって巻取軸抜き取り手段から吊り上げられて巻取軸加熱手段に供給され、次いで、巻取手段に供給されているのに対し、引例1記載の発明は、巻取軸加熱手段を有しておらず、その結果、グリッパーは、巻取軸抜き取り手段から、直ちに、巻取軸を巻取手段に供給するものである点。

そこで、上記相違点につき検討する。
相違点3について:
コアレストイレットペーパーロールを作る場合、トイレットペーパーの巻き初めに、トイレットペーパーに接着剤の水溶液を噴霧し、トイレットペーパーの仮着筒芯を形成させるようにしたものが引例2に記載されており、接着剤の水溶液の乾燥を促進するために巻取軸を加熱することも記載されている。
よって、引例1記載の発明に、上記相違点に係る構成を採用することに格別の困難があったとは認められない。

相違点4について:
引例1記載の発明は、その第1図の記載からみても、巻取軸を抜去してから巻取軸をグリッパーで吊り上げ、吊り上げた状態でグリッパーを横移動し、そして、巻取軸の吊り下げ位置を降下させて、巻取軸を巻取手段に供給するものであり、グリッパーでつかまれた巻取軸の位置は、巻取手段の上方にある。引例1記載の発明において、巻取軸抜き取り手段と巻取手段との間に巻取軸加熱手段を配置する場合、こうした巻取軸の移動途中に巻取軸加熱手段を設けることは、極めて自然な選択であり、これを選択することに格別の困難があったとは認められないので、請求項1に係る発明において、巻取軸加熱手段を巻取手段の上方に配置し、巻取軸がグリッパーによって巻取軸抜き取り手段から吊り上げられて巻取軸加熱手段に供給され、次いで、巻取手段に供給されるようにした点に格別の発明があったとは認められない。
また、そうすることによって得られる効果も格別のものではない。

以上の理由から、請求項2に係る発明は、引例1及び引例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
よって、本願の請求項1及び2に係る発明は、引例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-08-26 
結審通知日 1999-09-07 
審決日 1999-09-17 
出願番号 特願平4-359869
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 哲夫八日市谷 正朗  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 杉原 進
船越 巧子
鈴木 美知子
村本 佳史
発明の名称 コアレスペーパーロールの製法とこれに用いる装置  
代理人 中畑 孝  

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