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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G05F
管理番号 1065460
審判番号 不服2001-7246  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2002-10-02 
事件の表示 平成10年特許願第 97748号「電源回路及びこれを用いた電気機器」拒絶査定に対する審判事件[平成11年10月29日出願公開、特開平11-296235]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月9日の出願であって、平成12年9月12日に拒絶理由が通知され、平成13年4月3日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年6月4日付けで手続補正がなされたものである。
2.本件手続補正について
2-1.前記平成13年6月4付の手続補正(以下、本件手続補正という。)は、補正前明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載を、手続補正書に記載された請求項1乃至6のとおり、また、補正前明細書の段落【0007】、段落【0011】の記載を、手続補正書に記載された段落【0007】、段落【0011】のとおり補正しようとするもので、特に、特許請求の範囲の請求項1については「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系の電源オフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられた電源スイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路と、この補助電源回路を二次側回路として扱うために安全規格上要求される条件を満たして、前記電源プラグから導入される交流電力を前記電源スイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達する認定コンデンサとを備えたことを特徴とする電源回路。」と補正(以下、同項記載の発明を補正発明という。)しようとするものである。
2-2.そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について検討する。
2-2-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-161811号公報(以下、引用例1という。)に、「第4図に示すように、従来の給電回路では、電源コンセント102に供給される交流電力は、手動で操作されるメイン電源スイッチ104およびリレースイッチ108を介して、メイントランス110の1次コイル112に給電される。メイントランス110の2次コイル114から出力された交流電力は、整流、平滑、安定化等された後、メインアンプ等の本回路116に供給される。また、電源コンセント102に供給される交流電力は、メイン電源スイッチ104を介して。サブトランス120の1次コイル122に供給される。サブトランス120の2次コイル124から出力された交流電力は、ブリッジダイオード126で全波整流され、コンデンサ128で平滑され、レギュレータ130で安定化され、直流電流に変換される。この直流電力は、マイクロコンピュータ132に供給される。マイクロコンピュータ132には、フォトダイオード等を備えるリモコンセンサ134が接続される。マイクロコンピュータ132の出力は、リレー106のリレーコイル138に与えられる。マイクロコンピュータ132およびリモコンセンサ134は、受光回路136を構成する。図示しないリモコンが操作され、リモコンから出力されたリモコン信号は、リモコンセンサ134によって受信され、リモコン信号がマイクロコンピュータ132に入力される。このリモコン信号は、マイクロコンピュータ132で解析され、パワーオン信号であれば、リレーコイル138を励磁する。これによって、リレースイッチ108が導通し、メイントランス110の1次コイル112に交流電力が供給される。従って、本回路116に直流電力が供給される。スタンバイ指令であれば、リレーコイルを消磁する。これによって、リレースイッチ108が遮断し、メイントランス110の1次コイル112への交流電力の供給が停止される。したがって、本回路116への直流電力の供給が停止される。」(2頁左上欄11行乃至左下欄7行)と記載されていることが認められ、この記載によれば引用例1には、「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系のリレースイッチオフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられたメイン電源スイッチとリレースイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路と、前記電源プラグから導入される交流電力を前記リレースイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達するサブトランスとを備えた電源回路。」との発明(以下、引用例1発明という。)が開示されていると認めることができる。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平1ー147082号(実開平3-86419号)のマイクロフィルム(以下、引用例2という。)に、「第1図に示すように、交流電源11に整流回路である第1の全波整流ダイオードブリッジ回路12の交流入力端子を接続している。そして前記第1の全波整流回路12の整流出力端子間に平滑回路を形成する平滑コンデンサ13を接続し、その平滑コンデンサ13の両端間に負荷回路14を接続している。また前記交流電源11に全波整流ブリッジ回路を形成する第2の全波整流ダイオードブリッジ回路15を、その交流入力端子の一方を1対の第1のコンデンサ16、17の一方のコンデンサ16を介し、その交流入力端子の他方を第1のコンデンサ16、17の他方のコンデンサ17を介して接続している。そして前記第2のコンデンサ18を接続し、その第2のコンデンサ18の両端間に制御回路19を接続している。」(8頁17行乃至9頁13行)、「このように制御回路19に供給する低電圧を第1のコンデンサ16、17と第2のコンデンサ18との分圧によって得るようにしているので、電圧降下のための抵抗を不要にでき、電力損失はほとんど無い。従って電力効率を向上できる。また抵抗を使用しないので温度上昇という問題も発生しない。」(13頁12行乃至18行)と記載されていることが認められる。
2-2-2.対比・判断
補正発明と引用例1発明とを対比するに、補正発明がその「電源スイッチ」としてどのような態様のスイッチを採用しているのかにつき何ら限定するものでないことは請求項1の記載に照らして明らかであり、請求項1の記載の限度では、補正発明が規定する「電源スイッチ」は、トランスの1次側と電源プラグの間で、かつ、電源プラグから導入される交流電力が該電源スイッチを介することなく補助電源回路に伝達できる機能が発揮される部位に設けられているものと解することができ、かかる観点からは、引用例1発明の「リレースイッチ」が補正発明の「電源スイッチ」に相当する(包含される)ものといえ、そうすると、補正発明と引用例1発明とは、「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系の電源オフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられた電源スイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路を備え、前記電源プラグから導入される交流電力を前記電源スイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達する電源回路。」の点で一致し、
(1)補正発明が、トランスの一次側と電源プラグとの間に電源スイッチを設けているのに対し、引用例1発明は電源スイッチの他にメイン電源スイッチを設けている点、
(2)補正発明が、補助電源系として補助電源回路と、この補助電源回路を二次側回路として扱うため安全規格上要求される条件を満たす認定コンデンサとを備えているのに対し、引用例1発明は補助電源回路とサブトランスとを備えいる点、でそれぞれ相違する。
そこで、前記各相違点について検討する。
A.相違点(1)について
引用例1発明の電源プラグとメイン電源スイッチとが有する技術的意味は、電源プラグを抜くことなくメイン電源スイッチのオン・オフ操作により主電源系と補助電源系とに対して電力の供給・遮断をするものであって、引用例1発明がメイン電源スイッチを設けたのは電源プラグの操作(抜く、差し込む)を回避することによって主電源系と補助電源系に対する電力の供給・遮断を行うためと解されるが、しかしながら、この主電源系と補助電源系とに対する電力の供給・遮断は電源プラグの操作(抜く、差し込む)によっても当然に実現できるのであるから、メイン電源スイッチを設けるか否か(引用例1発明からメイン電源スイッチを削除する)は当業者の設計事項といえ、しかも、電源プラグから直接補助電源系に電力を供給することは前示引用例2、特開平9ー121475号公報にも示されているように周知の技術であるから、そうすると、補正発明の相違点(1)にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
B.相違点(2)について
前示引用例2に記載され、また、特開平9-121475号公報にも記載されているように補助電源系を補助電源回路とコンデンサで構成することは周知の技術である。
ところで、本願明細書の「補助電源側の交流電力は、トランス一次側の電源スイッチよりも電源プラグよりのノードから取り出されるが、この電力取り出し部には、電気機器の消費電力に応じて安全規格上電源の一次側に要求される条件を満たす認定コンデンサを介在させている。このような認定コンデンサを介在させることにより、認定コンデンサに後続する回路部分は、二次側回路としての扱いが可能となり、整流回路等における配線ピッチやダイオード等の素子ランドのピッチ等を小さいものとすることができる。」(段落【0013】)との記載によれば、補正発明が相違点(2)にかかる認定コンデンサを採用したのは安全規格上電源の一次側に要求される条件を満たすためと解されるが、製品の設計において、その製品を構成する部品にどのようなものを採用すべきかに当たり、その部品に対する安全規格が存在するのであればそれを満たすものを採用するが当業者の当然ともいえる採用指針というべきところ、本願明細書に「ここで、認定コンデンサとは、海外安全規格(UL(UL1414)、CSA(C22.2No.0、No.1)、BSI(BS EN60065(1994))、IEC384-14第2版(1993)少なくとも1つ)を満足するもので、例えば定格電圧125VACで安定した動作を保証されセラミックコンデンサやフィルムコンデンサ等を指す。」(段落【0008】)とも記載されているようにコンデンサに関し、機関名UL(アメリカ)、機関名CSA(カナダ)、機関名BSI(イギリス)等の海外安全規格が存在することは良く知られたことであるから、前示周知の補助電源系を補助電源回路とコンデンサで構成するもののコンデンサとして前記認定コンデンサを採用することは当業者の通常の設計事項というべきである。
そして、コンデンサの種類、材質等によって1次側と2次側とを分離、絶縁できることは当業者が容易に認識できることであるから、そうすると、補正発明の前示相違点(2)にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
そして、補正発明が奏する「以上述べたようにこの発明による電源回路では、サブトランスを用いることなく、認定コンデンサにより取り出された電力を用いた補助電源回路によりバックアップ電力を得るようにしており、これにより低消費電力で安定したバックアップ電力の供給を行うことができる。また認定コンデンサを用いて電力を取り出すことにより、補助電源回路を二次電源回路として扱うことが可能となり、素子は配線のレイアウトが容易になる。」(段落【0024】)との作用効果も引用例1及び周知技術(引用例2及び前示周知例)から当業者が予測できる範囲のものである。
2-2-3.むすび
以上のとおり、補正発明は、引用例1及び周知技術(引用例2及び前示周知例)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件手続補正は、特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明
本願発明は、請求項1乃至6に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を本願発明という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系の電源オフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられた電源スイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路と、前記電源プラグから導入される交流電力を前記電源スイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達する、安全規格上要求される条件を満たす認定コンデンサとを備えたものであることを特徴とする電源回路。」
4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-161811号公報(以下、引用例1という。)に、「第4図に示すように、従来の給電回路では、電源コンセント102に供給される交流電力は、手動で操作されるメイン電源スイッチ104およびリレースイッチ108を介して、メイントランス110の1次コイル112に給電される。メイントランス110の2次コイル114から出力された交流電力は、整流、平滑、安定化等された後、メインアンプ等の本回路116に供給される。また、電源コンセント102に供給される交流電力は、メイン電源スイッチ104を介して。サブトランス120の1次コイル122に供給される。サブトランス120の2次コイル124から出力された交流電力は、ブリッジダイオード126で全波整流され、コンデンサ128で平滑され、レギュレータ130で安定化され、直流電流に変換される。この直流電力は、マイクロコンピュータ132に供給される。マイクロコンピュータ132には、フォトダイオード等を備えるリモコンセンサ134が接続される。マイクロコンピュータ132の出力は、リレー106のリレーコイル138に与えられる。マイクロコンピュータ132およびリモコンセンサ134は、受光回路136を構成する。図示しないリモコンが操作され、リモコンから出力されたリモコン信号は、リモコンセンサ134によって受信され、リモコン信号がマイクロコンピュータ132に入力される。このリモコン信号は、マイクロコンピュータ132で解析され、パワーオン信号であれば、リレーコイル138を励磁する。これによって、リレースイッチ108が導通し、メイントランス110の1次コイル112に交流電力が供給される。従って、本回路116に直流電力が供給される。スタンバイ指令であれば、リレーコイルを消磁する。これによって、リレースイッチ108が遮断し、メイントランス110の1次コイル112への交流電力の供給が停止される。したがって、本回路116への直流電力の供給が停止される。」(2頁左上欄11行乃至左下欄7行)と記載されていることが認められ、この記載によれば引用例1には、「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系のリレースイッチオフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられたメイン電源スイッチとリレースイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路と、前記電源プラグから導入される交流電力を前記リレースイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達するサブトランスとを備えた電源回路。」との発明(以下、引用例1発明という。)が開示されていると認めることができる。
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平1ー147082号(実開平3-86419号)のマイクロフィルム(以下、引用例2という。)に、「第1図に示すように、交流電源11に整流回路である第1の全波整流ダイオードブリッジ回路12の交流入力端子を接続している。そして前記第1の全波整流回路12の整流出力端子間に平滑回路を形成する平滑コンデンサ13を接続し、その平滑コンデンサ13の両端間に負荷回路14を接続している。また前記交流電源11に全波整流ブリッジ回路を形成する第2の全波整流ダイオードブリッジ回路15を、その交流入力端子の一方を1対の第1のコンデンサ16、17の一方のコンデンサ16を介し、その交流入力端子の他方を第1のコンデンサ16、17の他方のコンデンサ17を介して接続している。そして前記第2のコンデンサ18を接続し、その第2のコンデンサ18の両端間に制御回路19を接続している。」(8頁17行乃至9頁13行)、「このように制御回路19に供給する低電圧を第1のコンデンサ16、17と第2のコンデンサ18との分圧によって得るようにしているので、電圧降下のための抵抗を不要にでき、電力損失はほとんど無い。従って電力効率を向上できる。また抵抗を使用しないので温度上昇という問題も発生しない。」(13頁12行乃至18行)と記載されていることが認められる。
5.対比・判断
本願発明と引用例1発明とを対比するに、本願発明がその「電源スイッチ」としてどのような態様のスイッチを採用しているのかにつき何ら限定するものでないことは請求項1の記載に照らして明らかであり、請求項1の記載の限度では、本願発明が規定する「電源スイッチ」は、トランスの1次側と電源プラグの間で、かつ、電源プラグから導入される交流電力が該電源スイッチを介することなく補助電源回路に伝達できる機能が発揮される部位に設けられているものと解することができ、かかる観点からは、引用例1発明の「リレースイッチ」が本願発明の「電源スイッチ」に相当する(包含される)ものといえ、そうすると、本願発明と引用例1発明とは、「電気機器に主要な電力を供給する主電源系と、この主電源系の電源オフ時に前記電気機器にそのバックアップに必要な補助電源力を供給する補助電源系とを有する電源回路において、前記主電源系は、主電源回路と、電源プラグから導入される交流電力を前記主電源回路に伝達するトランスと、前記トランスの一次側と前記電源プラグとの間に設けられた電源スイッチとを備え、前記補助電源系は、補助電源回路を備え、前記電源プラグから導入される交流電力を前記電源スイッチを介さずに前記補助電源回路に伝達する電源回路。」の点で一致し、
(1)本願発明が、トランスの一次側と電源プラグとの間に電源スイッチを設けているのに対し、引用例1発明は電源スイッチの他にメイン電源スイッチを設けている点、
(2)本願発明が、補助電源系として補助電源回路と、安全規格上要求される条件を満たす認定コンデンサとを備えているのに対し、引用例1発明は補助電源回路とサブトランスとを備えいる点、でそれぞれ相違する。
そこで、前記各相違点について検討する。
A.相違点(1)について
引用例1発明の電源プラグとメイン電源スイッチとが有する技術的意味は、電源プラグを抜くことなくメイン電源スイッチのオン・オフ操作により主電源系と補助電源系とに対して電力の供給・遮断をするものであって、引用例1発明がメイン電源スイッチを設けたのは電源プラグの操作(抜く、差し込む)を回避することによって主電源系と補助電源系に対する電力の供給・遮断を行うためと解されるが、しかしながら、この主電源系と補助電源系とに対する電力の供給・遮断は電源プラグの操作(抜く、差し込む)によっても当然に実現できるのであるから、メイン電源スイッチを設けるか否か(引用例1発明からメイン電源スイッチを削除する)は当業者の設計事項といえ、しかも、電源プラグから直接補助電源系に電力を供給することは前示引用例2、特開平9ー121475号公報にも示されているように周知の技術であるから、そうすると、本願発明の相違点(1)にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
B.相違点(2)について
前示引用例2に記載され、また、特開平9-121475号公報にも記載されているように補助電源系を補助電源回路とコンデンサで構成することは周知の技術である。
ところで、本願明細書の「補助電源側の交流電力は、トランス一次側の電源スイッチよりも電源プラグよりのノードから取り出されるが、この電力取り出し部には、電気機器の消費電力に応じて安全規格上電源の一次側に要求される条件を満たす認定コンデンサを介在させている。このような認定コンデンサを介在させることにより、認定コンデンサに後続する回路部分は、二次側回路としての扱いが可能となり、整流回路等における配線ピッチやダイオード等の素子ランドのピッチ等を小さいものとすることができる。」(段落【0013】)との記載によれば、本願発明が相違点(2)にかかる認定コンデンサを採用したのは安全規格上電源の一次側に要求される条件を満たすためと解されるが、製品の設計において、その製品を構成する部品にどのようなものを採用すべきかに当たり、その部品に対する安全規格が存在するのであればそれを満たすものを採用するが当業者の当然ともいえる採用指針というべきところ、本願明細書に「ここで、認定コンデンサとは、海外安全規格(UL(UL1414)、CSA(C22.2No.0、No.1)、BSI(BS EN60065(1994))、IEC384-14第2版(1993)少なくとも1つ)を満足するもので、例えば定格電圧125VACで安定した動作を保証されセラミックコンデンサやフィルムコンデンサ等を指す。」(段落【0008】)とも記載されているようにコンデンサに関し、機関名UL(アメリカ)、機関名CSA(カナダ)、機関名BSI(イギリス)等の海外安全規格が存在することは良く知られたことであるから、前示周知の補助電源系を補助電源回路とコンデンサで構成するもののコンデンサとして前記認定コンデンサを採用することは当業者の通常の設計事項というべきである。
そして、本願発明が奏する「以上述べたようにこの発明による電源回路では、サブトランスを用いることなく、認定コンデンサにより取り出された電力を用いた補助電源回路によりバックアップ電力を得るようにしており、これにより低消費電力で安定したバックアップ電力の供給を行うことができる。また認定コンデンサを用いて電力を取り出すことにより、補助電源回路を二次電源回路として扱うことが可能となり、素子は配線のレイアウトが容易になる。」(段落【0024】)との作用効果も引用例1及び周知技術(引用例2及び前示周知例)から当業者が予測できる範囲のものである。
6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び周知技術(引用例2及び前示周知例)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-19 
結審通知日 2002-07-30 
審決日 2002-08-12 
出願番号 特願平10-97748
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荘司 英史米山 毅  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 菅澤 洋二
大野 覚美
発明の名称 電源回路及びこれを用いた電気機器  
代理人 伊丹 勝  

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