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審決分類 |
審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E01D |
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管理番号 | 1066682 |
審判番号 | 無効2002-35079 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1984-11-07 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-03-07 |
確定日 | 2002-08-05 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1613177号発明「桁の連結構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第1613177号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第1613177号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての出願は、昭和58年4月19日に出願され、平成3年8月15日にその発明について特許の設定登録がされたものである。 これに対して、請求人は、「本件発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、または、甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条の2第1項または同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである」旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証を提出している。 被請求人は、平成14年4月18日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。 請求人は、これに対し、弁駁書を提出している。 2.訂正の可否に対する判断 (2-1)訂正の内容 特許請求の範囲第1項を、次のとおりに訂正する。 「上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結し、桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結してなる桁の連結構造。」 (2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、拡張・変更の存否 特許請求の範囲第1項「圧縮応力が作用するフランジ側」を「圧縮応力が作用する上フランジ側」と訂正することは、フランジを上フランジに限定するものであり、また、「桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結し」と訂正することは、桁の連結構造のうち、桁の腹板及び下フランジの連結構造を限定するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の限定を目的とするものである。 「圧縮応力が作用する上フランジ側」との構成は、本願明細書3頁1〜8行(本願公告公報2欄12〜19行)及び第2、3図に記載され、「桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結し」との構成は、本願明細書3頁12〜15行(本願公告公報2欄第23〜26行)および第2図に記載されているから、いずれの訂正も、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 (2-3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、及び、特許法第134条第5項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第2項の規定に適合するから、当該訂正を認める。 3.本件発明 本件特許第1613177号の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下、本件発明という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。 「上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結し、桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結してなる桁の連結構造。」 4.甲第1号証 請求人が証拠方法として提出した実願昭57-4158号の願書に最初に添付した明細書及び図面(甲第1号証)には次のことが記載されている。 「本考案は橋梁の主桁の連結構造に関するものであり、連結作業が容易であると共に、頂面を平らに維持し床板の設置作業も容易な主桁の連結構造の提供を目的とする。」(明細書1頁12〜15行)、 「主桁列a、b、cを構成する主桁(2)の端部Aの詳細を第4図、第5図及び第6図に示す。 すなわち主桁(2)はH型鋼またはI型鋼で形成され、上フランジ(2a)近くには溶接等で端板(10)が固定される。 端板(10)は穴(11)(11)を有すると共にウェブ(2b)の両側に固定されたリブ(17)(17)により補強されている。 次にウェブ(2b)は複数の山(12)と谷(13)が交互に繰返される波状に形成される。 次に下フランジ(2c)であるが、これには複数の穴(14)(14)…が設けられる。 以上に説明した主桁(2)(2)…が本考案の連結構造により連結される訳であり、次に本考案の連結構造を説明する。 すなわち1対の主桁(2)(2)の端部は相互に突合わされるが、この際一方のウエブ(2b)の山(12)は他方のウェブ(2b)の谷(13)に噛合わされる。 この状態で、端板(10)(10)は両者の穴(11)(11)・・・を貫通するボルト(20)(20)により連結される。 次に主桁(2)(2)の下フランジ(2c)(2c)の上下面にはカバー板(15)(15)(15)(上面左右2枚と下面1枚)が両者に渡って当てられる。 この状態でカバー板(15)(15)(15)の穴(16)(16)…及び下フランジ(2c)(2c)の穴(14)(14)…にボルト(20)(20)…を装着する。」(明細書2頁18行〜4頁2行)。 したがって、甲第1号証には、 「上下フランジ(2a),(2c)とウエブ(2b)からなる主桁(2)の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ(2a)側の端面に、主桁(2)の長手方向と直交する端板(10)をフランジとウエブ(2b)の一部にかけて当がつて固着し、この端板(10)同志を直接突き合わせると共に、ボルト(20)により連結し、下フランジ(2c)は、主桁(2)の長手方向に沿うカバー板(15)と、ボルト(20)によって連結し、主桁(2)のウエブ(2b)の上部を除く部分は、ウエブ(2b)相互が山(12)及び谷(13)で噛合って連結してなる主桁(2)の連結構造」の考案が記載されていると認められる。 5.被請求人の主張 被請求人は、特許法第29条の2について、次のように主張している。 [構成の相違] 甲第1号証記載の考案は、本件特許発明の構成のうちの上記構成要素e.を具えていない。 すなわち甲第1号証記載の考案は、桁の腹板の上部を除く、腹板の連結板よりも下の部分については、主桁(2)(2)の腹板に相当するウエブ(2)の端部が波状に形成され、波状のウエブ(2b)(2b)が噛合した状態とされており、これにより腹b板全体としては、連結板に相当する端板(10)(10)とボルト(20)および、互いに噛合状態で突き当てられた波状の部分で連結されるだけの構成となっている。 それゆえ甲第1号証記載の考案は、腹板全体の連結構造の点で、本件特許発明とは構成が明らかに異なっている。 ちなみに、甲第1号証記載の腹板の連結構造については、上述した桁の長手方向と直交する連結板での連結と波状の部分の噛合状態での突き当てとの組合せ以外に明確な記載はなく、本件特許発明のような、桁の長手方向と直交する連結板での連結と桁の長手方向に沿う連結板での連結との組合せについての記載は全くない。 [作用効果の相違] 一般に、架け渡した橋梁では、その橋梁の自重に加えて橋梁を通る車両等の載荷荷重によって、桁の腹板の上部および上フランジに大きな圧縮応力が発生すると同時に、桁の腹板の下部および下フランジに大きな引張り応力が発生する。 しかしながら甲第1号証記載の考案は、桁の圧縮応力が作用する腹板の上部を除く腹板の部分すなわち大きな引張り応力が作用する腹板の部分を桁の長手方向に沿う連結板と高力ボルトによって連結してその引張り応力に充分に耐える本件特許発明と全く異なり、連結板よりも下の腹板の部分が、噛合状態で突き当てられているのみで自由に離れ得るため、上記の大きな引張り応力に全く耐えることができず、下フランジの連結板に大きな負担をかけざるを得ないことから、本件特許発明とは作用効果が明らかに相違する。 [結論] 従って、上記構成の相違はいわゆる「微差」ではありえないことから、本件特許発明は、甲第1号証記載の考案とは構成が同一でなく全く相違するのみならず、作用効果も全く相違するものであるから、本件特許には特許法第29条の2違反の無効理由はない。 6.対比 本件発明と甲第1号証に記載された考案(以下、先願考案という。)とを対比すると、先願考案の「上フランジ(2a)」、「下フランジ(2c)」、「ウエブ(2b)」、「主桁(2)」、「端板(10)」、「ボルト(20)」、「カバー板(15)」が、本件発明の「上フランジ」、「下フランジ」、「腹板」、「桁」、「桁の長手方向と直交する連結板」、「ボルト、高力ボルト」、「桁の長手方向に沿う連結板」にそれぞれ相当し、両者は、「上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結し、下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結してなる桁の連結構造」である点で一致し、本件発明が「桁の腹板の上部を除く部分は、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結し」たのに対し、先願考案は「桁の腹板の上部を除く部分は、腹板相互が山(12)及び谷(13)で噛合って連結」した点で、一応、相違する。 7.当審の判断 上記相違点を、検討すると、本件発明及び先願考案は、いずれも、「桁の連結部上面を平にして、床版を桁上面にそのまま載置出来るようにすることにより、現場の架設作業を簡単かつ容易にすると共にコストを軽減すること」(本願明細書2頁13〜17行(本願公告公報2欄4〜8行))を技術課題としており、このことは、両者とも、「圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結」するという具体化手段により、課題解決をしており、桁の腹板の上部を除く部分をどのように連結するかにより上記課題を解決したわけではない。 そして、本件発明と同様の上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、引張り応力に耐えるようにするという、桁の連結部が本来的に有する課題を解決するために、腹板の部分を桁の長手方向に沿う連結板と高力ボルトによって連結することは周知慣用であるから、先願考案において、桁の腹板の上部を除く部分は、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結することは単なる慣用技術の付加にすぎない。 したがって、先願考案において、相違点の本件発明の構成とすることは、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 被請求人は、両者の[構成の相違]として、「甲第1号証記載の腹板の連結構造については、上述した桁の長手方向と直交する連結板での連結と波状の部分の噛合状態での突き当てとの組合せ以外に明確な記載はなく、本件特許発明のような、桁の長手方向と直交する連結板での連結と桁の長手方向に沿う連結板での連結との組合せについての記載は全くない。」と主張するが、このように組み合わせた点に発明があるわけではなく、また、前述のように、腹板の部分を桁の長手方向に沿う連結板と高力ボルトによって連結することは周知慣用であるから、この構成を、先願考案に採用することは単なる周知技術の付加にすぎない。 また、被請求人は、両者の[作用効果の相違]として、「甲第1号証記載の考案は、・・・連結板よりも下の腹板の部分が、噛合状態で突き当てられているのみで自由に離れ得るため、上記の大きな引張り応力に全く耐えることができず、下フランジの連結板に大きな負担をかけざるを得ないことから、本件特許発明とは作用効果が明らかに相違する。」と主張するが、前述のように、引張り応力に耐えるようにするという、桁の連結部が本来的に有する課題を解決するために、腹板の部分を桁の長手方向に沿う連結板と高力ボルトによって連結することは周知慣用であるから、この構成を、先願考案に採用することは単なる周知技術の付加にすぎず、この点で両者の作用効果が相違するからといって、両者が同一でないということはできない。 したがって、被請求人の上記[結論]は誤りである。 8.むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、先願考案と同一であり、しかも本件発明の発明者が先願考案の考案者であるとも、また、本件の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないから、本件特許は、特許法第29条の2第1項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 桁の連結構造 (57)【特許請求の範囲】 1.上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結し、桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結してなる桁の連結構造。 【発明の詳細な説明】 本発明は、橋梁等の主構成部材として使用する上下フランジと腹板からなる桁の連結部の構造に関するものである。 第1図は、従来一般に行われているI形断面の桁の連結構造を示すものである。図中1はI形断面の桁で、1aはその上フランジ、1bは下フランジ、1cは腹板である。しかしてこの桁1の長さは架設現場に輸送する場合の輸送面から制限をうけるために、通常輸送可能な長さに分割して製作され、架設現場において第1図に示すように連結される。図中2は連結板、3は高力ボルト(ナツトを含む)である。 しかしながらこのような連結構造では、桁1の上フランジ1aの上面に、連結板2および高力ボルト3の頭部が突出しているため、連結した桁1の上面に覆工板やプレキヤスト版(図示せず)を載置する場合に、前記突出部分が邪魔になる。したがつて従来は、桁1上に載置する床版を特に改造したり、桁1の上面に何らかの処置を施していたが、これらの方法はいずれも手数が余分にかかる上に、コストも増大するという欠点があつた。 本発明は上述の欠点を解消するためなされたもので、桁の連結部上面を平らにして、床版を桁上面にそのまま載置できるようにすることにより、現場の架設作業を簡単かつ容易にすると共に、コストを軽減することを目的とするものである。 以下第2図〜第5図について本発明の実施例を説明する。図中前記符号と同一の符号は同等のものを示す。 本発明においては、上フランジ1aと下フランジ1bと腹板1cからなる桁1の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ1a側の端面に、桁1の長手方向と直交する連結板4を、上フランジ1aと腹板1cの上方の一部分にかけて当がつて溶接により固着し、この連結板4,4同志を直接突き合わせると共に、これらを貫通する高力ボルト(ナツトを含む)3によつて締結する。図中5は連結板4の下部と腹板1との間に溶接した補強板で、必要に応じて設ければよい。また第3図中の6は腹板1c間の間隙である。 なお桁1の他の部分、すなわち腹板1cの上部を除く部分、および下フランジ1bの連結部は、従来通り連結板2と高力ボルト3によって連結する。 本発明の連結構造は上述の通りであるから、このように連結した桁1に荷重が作用した場合、桁1の下部に生ずる引張応力は連結板2および高力ボルト3によつて吸収し、桁1の上部に生ずる圧縮応力は連結板4,4同志の突き合わせ接合によつて十分吸収することができる。 なお第5図に示すように連結した桁1をクレン等の吊索7によつて吊り上げる場合は、連結板4,4間に引張力が作用するが、この程度の自重による引張力は、連結板4,4間を連結する高力ボルト3によつて十分吸収することができる。 しかして本発明によれば、桁1の連結部の上面が平らになり、従来の連結部のように突出物がないため、桁1上に直接覆工板やプレキヤスト版をそのまま載置することができる。したがつて従来のように、載置する床版を改造する必要がなく、その他の処置も全く必要としないから、本発明によれば、現場の架設作業を簡単かつ容易にすると共に、コストを軽減することができるという効果が得られる。 【図面の簡単な説明】 第1図は従来一般に行われている桁の連結構造を示す立面図、第2図は本発明の連結構造を示す立面図、第3図はその部分詳細図、第4図は第3図の側面図、第5図は連結した桁を吊り上げる状態を示す立面図である。 1…I形断面の桁 1a…上フランジ 1b…下フランジ 1c…腹板 2…連結板 3…高力ボルト 4…連結板 5…補強板 6…間隙 7…吊り索 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許請求の範囲第1項を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおりに訂正する。 「上下フランジと腹板からなる桁の連結部において、圧縮応力が作用する上フランジ側の端面に、桁の長手方向と直交する連結板をフランジと腹板の一部にかけて当がつて固着し、この連結板同志を直接突き合わせると共に、ボルトにより連結し、桁の腹板の上部を除く部分および下フランジは、桁の長手方向に沿う連結板と、高力ボルトによって連結してなる桁の連結構造。」 |
審理終結日 | 2002-06-07 |
結審通知日 | 2002-06-12 |
審決日 | 2002-06-25 |
出願番号 | 特願昭58-67862 |
審決分類 |
P
1
112・
161-
ZA
(E01D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 憲子 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
中田 誠 鈴木 公子 |
登録日 | 1991-08-15 |
登録番号 | 特許第1613177号(P1613177) |
発明の名称 | 桁の連結構造 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 牛木 護 |
代理人 | 外山 邦昭 |
代理人 | 杉村 興作 |