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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1067079
審判番号 不服2001-19089  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-06-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-25 
確定日 2002-10-31 
事件の表示 平成 9年特許願第333871号「ディスク装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 6月22日出願公開、特開平11-167766]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]出願の経緯、本願発明
本願は、平成9年12月4日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成13年8月24日付け手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載から見てその特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、本願発明という。)。
「【請求項1】 上外装カバーと下外装カバーとを有し装置全体を収納する筐体と、ディスクを載置して前記筐体に収納しあるいは前記筐体から排出するディスク載置搬送手段と、前記ディスク載置搬送手段を強制的に排出させる強制イジェクト機構と、前記ディスク載置搬送手段が排出動作をするとき0.5から1.0mm排出した位置で前記ディスクの周縁部分に触れるように前記下外装カバーの側面に配置されディスクの厚みよりも厚く形成された緩衝部材とを有し、 前記緩衝部材は、摩擦係数の大きな材質と弾力性を有する材質との多層構造としたことを特徴とするディスク装置。」

なお、平成13年10月25日付けの手続補正は、補正却下された。

[2]原審の拒絶理由
平成13年9月14日付けの拒絶査定は、「この出願は,平成13年6月26日付け拒絶理由通知書に記載の理由によって,拒絶をすべきものと認める。」というものであり、平成13年6月26日付けの拒絶理由のうち、理由2は、以下のとおりである。

「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内において公然知られ又は公然実施をされ若しくは日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項1〜3
引用文献等一覧
1.特開平 9-212999号公報
2.特開平 9-213000号公報」

[3]引用文献に記載された事項、引用発明
引用文献1.特開平 9-212999号
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動自在に支持されたディスク搬送体と、該ディスク搬送体が前記ディスク再生位置から前記ディスク脱着位置へ移動する期間に於いてのみ前記ディスク搬送体に保持されたディスクの回転を制動する制動手段を備えたことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】 ディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動自在に支持されたディスク搬送体と、該ディスク搬送体が前記ディスク再生位置から前記ディスク脱着位置へ移動する期間に於いてのみ前記ディスク搬送体に保持されたディスクと当接する弾性体を備えたことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項3】 ディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動自在に支持されたディスク搬送体と、ディスクを回転させるディスク駆動装置と、該ディスク駆動装置を微小移動可能に前記ディスク搬送体に遊着する遊着手段と、前記ディスク搬送体が前記ディスク再生位置から前記ディスク脱着位置へ移動する期間に於いてのみ前記ディスク駆動装置に保持されたディスクと当接する当接体を備えたことを特徴とするディスク再生装置。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その第1の特徴は、ディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動自在に支持されたディスク搬送体と、該ディスク搬送体が前記ディスク再生位置から前記ディスク脱着位置へ移動する期間に於いてのみ前記ディスク搬送体に保持されたディスクの回転を制動する制動手段を備えたことである。」
「【0010】
(1)はディスクであり、音楽や映像や情報等が書き込まれている。(2)はターンテーブルであり、ディスク(1)を載置する。(3)はターンテーブルのシャフトである。(4)(4)(4)(4)は球形のホックであり、発条等により外方向に付勢された状態でシャフト(3)に挿着される。その付勢力により、ディスク(1)がターンテーブル(2)とホック(4)の間に挟持される。
【0011】
(5)は駆動部であり、ターンテーブル(2)を6倍速の3,000rpmで回転させるモータ(図示せず)を具備する。(6)はディスク搬送体であり、少なくともディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動させる移動機構(7)(7)を具備する。この移動機構はディスク搬送体(6)を脱着位置から再生位置へ付勢されたエネルギーを発条に貯え、そのエネルギーによりディスク搬送体(6)を再生位置から脱着位置に移動させる安価な機構である。」
「【0013】
(9)は筐体である。(10)は当接体であり、ゴム等の弾力性を有する材質からなり、筐体(9)に固着される。その固着位置は、ディスク搬送体(6)がディスク再生位置(図2の位置)からディスク脱着位置(図4の位置)へ移動する期間に於いてのみ、当接体(10)がディスク(1)と当接する位置(図3の位置)となっている。このように、当接部(10)は再生位置及び脱着位置ではディスク(1)と当接しておらず、再生や脱着に支障をきたさない。この当接部(10)はディスク(1)が直線上を移動したと仮定すると最も重合する場合で0.5mmディスク(1)に食い込むようになっている。
【0014】
(11)はプリント基板であり、少なくとも装置の各部を制御する制御回路(12)とディスク搬送体(6)が再生位置にあることを検出するスイッチ(13)を具備する。スイッチ(13)は、ディスクが挿入されたとき自動的に再生させたり、ディスク搬送体(6)が再生位置にきていない時は釦操作に関係なくSTOP状態にさせるためのものである。
【0015】
以上の構成に於けるディスク(1)の排出動作を説明する。再生中にEJECT釦(図示せず)が押されると、制御回路(12)はディスク搬送体(6)を脱着位置に移動開始させる。そして、スイッチ(13)がディスク搬送体(6)から離間してOFF状態になると、制御回路(12)はターンテーブル(2)の回転を制動するように駆動部(5)を制御する。然し乍ら、ディスク(1)が完全に停止するまでには2秒〜3秒を要する。ディスク搬送体(6)は発条の力で瞬時に移動するために、ディスク(1)は回転したまま、当接部(10)と当接する。当接部(10)はディスク(1)にディスク(1)の径方向に最大0.5mm重合するようになっている。この重合は、当接部(10)の弾力、並びに駆動部(5)とディスク搬送体(6)間の遊着手段(8)の遊動により吸収される。このときの反発力によって生じるディスク(1)と当接部(10)の摩擦により、ディスク(1)の回転が制動されて停止する。その後、ディスク(1)は当接部(10)より離間し、脱着位置まで排出される。」
「【0016】
このように、ディスク搬送体(6)の移動が安価な発条を用いた機構であっても、当接体(10)を追加するだけで、CDの6倍で高速回転するディスク(1)を制動することができる。また、この制動力を得るために、耐衝として従来より使用されている遊着手段(8)を兼用しており、本発明の制動手段を安価に構成することができる。」
「【0018】
また、ディスク搬送体(6)を制御回路(12)の制御により移動させるようにした場合は、再生位置でターンテーブル(2)の回転が停止した後に排出させれば、前述の如く、指先を負傷したり、ディスクやディスク再生装置を損傷させるという危険はない。然し乍ら、排出に2秒〜3秒を要するために、早くディスクを交換したい使用者にとっては不満となり、このようなディスク再生装置にも、本発明は有用である。」
第1図には、当接体10とディスク1の外周側縁厚みについて、当接体10の厚みが、ディスク1の厚みより厚く図示されており、筐体9は上下左右を全体を収納している。

上記摘記した事項によれば、ディスク脱着位置とディスク再生位置の間を移動自在に支持されたディスク搬送体と、該ディスク搬送体が前記ディスク再生位置から前記ディスク脱着位置へ移動する期間においてのみ前記ディスク搬送体に保持されたディスクの回転を制動する制動手段を備えたディスク装置の発明(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。
「装置全体を収納する筐体と、
ターンテーブルに載置したディスクを筐体内の再生位置に収納しあるいは筐体から排出するディスク搬送体と、ディスク搬送体を移動させる移動機構と、ディスク搬送体が筐体から移動するときディスクの周縁部に振れるように筐体の側面に固着されディスクの厚みよりも厚く形成された当接体とを有し、
当接体は、ゴム等の弾力性を有する材質からなるディスク装置。」

引用文献2.特開平 9-213000号公報
「【0037】 上記イジェクト動作によりトレー12は、前面ベゼル15がシャーシ10から所定距離Lだけ離間した位置に摺動する。これにより、トレー12は、操作者が引き出すことができる程度まで押し出される。このとき、ディスクDA は、まだ天板19の下面に設けられた一対の制動部材13に摺接していない。」
「【0043】 図9は本発明の第2実施例を示す斜視図、図10はトレーが装着位置に係止された状態を示す平面図である。 シャーシ18の右側に延在する延在部18bに起立する側面18cの内側には、イジェクト動作時にディスクDA の外周に摺接する制動部材51が固着されている。この制動部材51は、例えばフエルト又はスポンジ等の柔らかい材質のものが使用されており、ディスクDA の外周を傷つけることはない。」

[3]本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、ディスクの回転を停止させるためディスク周縁部と接触する部材を筐体に設けたディスク装置で共通し、
引用発明の「当接体」と本願発明の「緩衝部材」は、機能がディスク周縁部に触れてディスクの回転を停止させる「接触部材」で共通し、
引用発明の「ディスク搬送体」は、本願発明の「ディスク搬送手段」に相当し、両者は以下の発明で一致する。
「装置全体を収納する筐体と、ディスクを載置して前記筐体に収納しあるいは前記筐体から排出するディスク載置搬送手段と、前記ディスク載置搬送手段が排出動作をするとき前記ディスクの周縁部分に触れるように前記筐体の側面に配置されディスクの厚みよりも厚く形成された接触部材とを有するディスク装置。」

相違点
1.筐体の構成が、本願発明では、上外装カバーと下外装カバーとからなり、接触部材は、下外装カバーに設けられているのに対して、引用発明では、上下カバーとからなる筐体の構成については不明であり、接触部材は筐体の側面に設けられている点で相違する。

2.ディスク搬送手段を強制的に排出させる強制イジェクト機構を、本願発明は有しているのに対して、引用発明では記載されていない点で相違する。

3.ディスクの周縁部と接触部材が触れるのが、ディスク載置搬送手段の排出動作をするときの、本願発明では0.5〜1.00mmであるのに対して、引用発明では具体的数値範囲が記載されていない点相違する。

4.接触部材が、本願発明では摩擦係数の大きな材質と弾力性を有する材質との多層構造からなる緩衝部材であるのに対して、先願発明ではゴム等の弾力性を有する材質であり、多層構造を有しない当接体である点で相違する。

[4]当審の判断
相違点1
ディスク装置が天板(上外装カバー)とシャーシ(下外装カバー)とから成り、シャーシ(下外装カバー)に制動部材(ディスク周縁部と接触する部材)を有する構成が引用文献2に記載されており、引用発明における筐体を上下外装カバーから構成し、ディスク周縁部と接触する部材を下外装カバーに設けることは容易に推考できることと認める。

相違点2
ディスクが何等かの理由でディスクの排出が通常には実行できないおそれを排除するために、ディスク搬送手段を強制的に排出させる強制イジェクト機構は本願出願時、ディスク装置に備えられる慣用技術となっており(特開平6-251481号公報、特開平8-129816号公報、特開平8-147843号公報等参照。)、引用発明においても、強制イジェクト機構を備えていると解されるが、備えていないとしても追加する程度のことは当業者に何ら格別の技術的創作力を課すものではない。

相違点3
ディスク排出時に回転しているディスクにユーザーが手を触れるおそれを解消するためには、ディスクの回転が可能な限り回転するディスクの筐体外の露出が少ない方が安全であることは容易に理解されることであり、引用例の発明においても、ユーザーの安全性確保のために適宜に設定されることであり、数値を0.5〜1.0mmの範囲に設定することは簡単な試行に基づいて容易に設定できることと認められる。

相違点4
回転するディスクの回転をディスクの周縁部に接触部材を触れさせて停止するにあたっては、ディスクの周縁部を損傷させずに停止させ、且つ停止後はディスクが接触部材との摩擦少なく通過する必要があることは明かであり、先願発明においても、摩擦係数の大きな材質と弾力性を有する材質との組合せにより小さい部材においても効率的に機能を発揮できるように層構造とすることは容易に推考できることと認められる。

[5]むすび
以上のとおりであり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2002-08-22 
結審通知日 2002-08-27 
審決日 2002-09-13 
出願番号 特願平9-333871
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 相馬 多美子
犬飼 宏
発明の名称 ディスク装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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