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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A47B
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効とする。(申立て全部成立) A47B
管理番号 1067312
審判番号 無効2000-35186  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-04-10 
確定日 2002-10-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3010255号発明「収納ボックス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3010255号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第3010255号に係る発明についての出願は、その願書に「特許法第46条第2項の規定による特許出願」と記載し、平成6年4月26日に出願した意匠登録出願(意願平6-12256号)を平成8年7月31日に特許出願に変更しようとしてした出願であって、平成11年12月10日に出願日を平成8年7月31日として設定登録されたものであり、本件請求項1及び請求項2に係る発明は、特許明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認められる。
【請求項1】 前面に開口部を有する外箱と、この外箱内に前記開口部から出入自在に嵌装される内箱とからなる収納ボックスであって、
前記外箱を、その底部の内面上に設けられて前後方向に伸びる左右一対の外箱側案内レールと、この外箱側案内レールから上方に僅かに突出すべく前記開口部内側に設けた左右一対の外箱側回転ローラーとを有したものとして構成するとともに、
前記内箱を、その底部の外面に設けられて前記外箱側回転ローラーを案内すべく前後方向に伸びるとともに、当該内箱の底部から下方に僅かに突出する左右一対の内箱側案内レールと、前記外箱側案内レールに対応する位置であって当該内箱の後端部に設けられ、前記外箱側案内レール上にて案内される左右一対の内箱側回転ローラーとを有したものとして構成したことを特徴とする収納ボックス。
【請求項2】 前記外箱の奥に位置する底部上に、前記内箱を外箱内に嵌装したとき、前記内箱側回転ローラーがはまり込むローラー収納部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の収納ボックス。

2 請求人の主張の概要
本件請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証(特開平8-103339号公報)に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1及び請求項2に係る発明の特許は、特許法29条1項ないし特許法29条2項の規定に違反してなされたものである。
3 被請求人の主張の概要
本件特許は、平成6年4月26日に出願した意匠登録出願(意願平6-12256号)から正当に特許出願に変更して成立したものであるから、本件特許出願の日は、甲第1号証の特許出願がなされた平成6年10月3日よりの前の平成6年4月26日である。したがって、甲第1号証に記載された発明は、特許法29条1項各号に掲げる発明ではない。
原意匠出願は、合成樹脂を材料として具体的に製品化がなされた収納ボックスを写真に撮って、これを図面に代えて使用したもので、本件発明は、甲第1号証に記載された発明より以前に実質的に完成していたものであり、その保護を求める出願も正当になされたものである。
本件特許の出願の審査における平成10年10月13日付け拒絶理由通知書において、審査官は、本願明細書に記載されている従来の技術、発明が解決しようとする課題、発明の効果及び機能に関して、この出願の原出願には何ら記載されておらず、本願の明細書又は図面には、原出願の出願当初に記載された事項の範囲内でないものを含むから、本願は不適法な変更出願であり、出願日の遡及は認められないとしているが、これに対して、出願人は意見書を提出して、本件発明の構成は当業者が意匠出願の図面等から直接的一義的に導き出せる事項であると釈明し、その結果特許査定に至ったものである。特許査定の謄本には、「この出願については、拒絶の理由を発見しないから、特許査定する」とのみ記載されており、当然上記の釈明を認められたものと理解している。
また、平成5年改正の特許法で補正の制限を厳しくし、そのための審査基準も公表されたが、「変更出願についての審査基準」は未だ公表されておらず、追って補充となっているという経緯からすると、意匠出願からの特許出願への変更は従前の例によるのが相当で、補正についての審査基準を根拠に出願日の遡及を認めないとする上記拒絶理由通知書の認定判断は不当である。

4 本件発明の出願日について
4-1 審査経過
本件特許出願の審査経過についてみると、平成10年10月13日付けで拒絶の理由が通知され、該拒絶の理由は、従来の技術、発明が解決しようとする課題、発明の効果及び機能に関する本願明細書の記載について、本願明細書又は図面には原意匠出願の出願当初に記載された事項の範囲内でないものを含むから、出願日の遡及は認められない旨の認定の下に、引用文献1:実願平4-53624号(実開平7-44633号)のCD-ROM、及び引用文献2:実願平1-134258号(実開平3-72742号)のマイクロフィルムを引用して、出願前日本国内において頒布された刊行物(引用文献1、2)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというもので、これに対して、出願人は、意見書及び手続補正書を提出し、意見書において、本願が出願日の遡及が認められる変更出願であるとの主張とともに、引用文献1及び2に記載された発明と同一でなく、引用文献1及び2に記載された発明からは、当業者といえども本願発明は容易になし得ないと主張し、その後本件出願は、変更出願としてではなく、通常の特許出願として特許査定され、その特許は、出願日を現実に特許出願した日である平成8年7月31日として設定登録されたことが認められる(本件特許公報第1頁に記載された出願日及び登録原簿に記載された出願日参照)。
被請求人は、本件出願の審査において、本件発明の構成は当業者が意匠出願の図面等から直接的一義的に導き出せる事項であると釈明し、その結果特許査定に至ったものであるから、本件出願は正当な変更出願であって、出願日は原意匠出願の日に遡及すると主張する。
しかしながら、被請求人は、本件出願が出願日の遡及が認められる変更出願であるとの主張とともに、引用文献1及び2に記載された発明と同一でなく、引用文献1及び2に記載された発明からは、当業者といえども本願発明は容易になし得ないとも主張しており、本件出願の出願日が遡及する結果本件発明が特許査定されたと直ちにいうことはできない。
すなわち、本件出願の審査においては、たとえ出願の変更が不適法で出願日が原意匠出願の日に遡及しなくとも、本件発明は、引用文献1及び2に記載された発明と同一ではなく、引用文献1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないとして、特許査定されたと解することができる。そして、このことは実際に出願日が遡及することなく特許査定され登録されている事実と矛盾するものではない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

4-2 本件特許明細書の記載と原意匠図面等の記載
平成6年4月26日に出願した意匠登録出願(意願平6-12256号)の願書に最初に添付した図面ないし写真(以下、「原意匠図面等」ということがある。)は、正面図、背面図、左側面図、平面図、底面図、A-A拡大断面図及び収納部を引き出した状態を示す参考図であり、該参考図には、3個所に引き出し線が記載され、「収納部」「回転ローラー」(2個所)と記載されている。
上記正面図、背面図、平面図、底面図、左側面図、A-A拡大断面図及び収納部を引き出した状態を示す参考図は、それぞれ本件出願の図1(イ)、(ロ)、図2(イ)、(ロ)、図3、図4及び図7に対応する。
意匠出願から特許出願への変更が認められれば、特許出願は原意匠出願の時にしたものとみなされ出願日が遡及するものであるから、変更出願の願書に添付した明細書又は図面に記載される事項は、原意匠図面等に記載した事項の範囲内のものでなけばならない。
よって、本件明細書及び図面の記載が、原意匠図面等に記載した事項の範囲内のものかどうかについて検討する。
(ア)左右一対の回転ローラー及び案内レールについて
明細書の【発明の実施の形態】の欄に記載されている「左右一対の外箱側回転ローラー14」(【0013】)及び「左右一対の内箱側回転ローラー24」(【0016】)について、原意匠図面等を参照すると、A-A断面図ないし参考図に外箱側回転ローラー及び内箱側回転ローラーが記載されていることが認められるが、いずれも収納ケースの長手方向端部A-Aに沿った断面図であって、回転ローラーの立体的形状を特定することは困難で、該回転ローラーは例えば左右に延びる一本の棒状のものであるとも考えられ、原意匠図面等から該回転ローラーが左右に一対すなわち2個配置されているとすることはできない。
また、参考図には、本件図面で図番13及び図番23として示される実線が記載されているが、該実線が、「左右一対の外箱側案内レール13」、「左右一対の内箱側案内レール23」であることを示す記載はない。
そうすると、回転ローラーに対する案内レールについても、「左右一対の外箱側案内レール13」、「左右一対の内箱側案内レール23」として構成されているかどうか原意匠図面等から認識できるものではない。
したがって、請求項1に係る発明の「前記外箱を、その底部の内面上に設けられて前後方向に伸びる左右一対の外箱側案内レールと、この外箱側案内レールから上方に僅かに突出すべく前記開口部内側に設けた左右一対の外箱側回転ローラーとを有したものとして構成する」、「前記内箱を、その底部の外面に設けられて前記外箱側回転ローラーを案内すべく前後方向に伸びるとともに、当該内箱の底部から下方に僅かに突出する左右一対の内箱側案内レールと、前記外箱側案内レールに対応する位置であって当該内箱の後端部に設けられ、前記外箱側案内レール上にて案内される左右一対の内箱側回転ローラーとを有したものとして構成した」点も、原意匠図面等の記載の範囲内の事項とはいえない。
(イ)従来の技術及びその改良技術の問題点の記載について
本件発明の従来技術及びその改良技術について、明細書に、
「 しかしながら、この種の収納ボックスは、これを多段に積み上げて、例えば押入内に収納しておかれるものであり、一番上側のものは問題がないとしても、上から2段目以下のものについて、内箱を外箱に対してスライドさせることは、仮に当該収納ボックスが比較的軽い衣類等を収納するためのものであっても、困難となる場合がある。特に、これからの高齢化社会のように、老人だけの生活が増加すると考えられる傾向であってみれば、内箱を外箱に対して単にスライドさせる構造の収納ボックスでは、不都合が生ずると考えられる。
そこで、スチールデスクの引出しに用いられているようなスライド装置を、この種の収納ボックスに採用することが考えられる。スチールデスクの引出しに用いられているスライド装置は、内箱に相当する引出しの両側部外方に水平方向に設けられた雄レールと、デスクの内側面に設けられて雄レールに対応する雌レールとを有して、雌レールにローラを取り付けておいて、このローラによって支持されるように、上記雌雄のレールを嵌合するようにしているものである。このようなスライド装置を、合成樹脂によって一体成形されることの多い収納ボックスに採用することは、構造が複雑すぎて不適当である。つまり、スチールデスクの引出しに用いられているようなスライド装置を、この種の収納ボックスに適用することは、内外箱の寸法精度を良くしなけれならないだけでなく、材料費や製造コストも高くなって、適当ではない。」(【0003】〜【0004】)
と記載されているが、このようなことは原意匠図面等の記載の範囲内のものではない。
(ウ)請求項2に係る発明の作用の記載について
請求項2に係る発明のローラー収納部の作用として、
「これとは逆に、内箱20を外箱10内にスライドさせるときは、内箱20は外箱側回転ローラー14及び内箱側回転ローラー24によって極めて軽く移動する。そして、内箱20を完全に外箱10内に押し込んだ状態では、外箱10の底部12の内端側に設けたローラー収納部16内に内箱側回転ローラー24がカチリという音を伴って自然に収納されるため、内箱20が外箱10内に完全に嵌装されたという節度感を得ることができる。それだけでなく、内箱20を強く押圧して外箱10内に押し込むことによるリバウンドを有効に抑止することができるのである。」(【0011】)と記載されているが、原意匠図面等には、ローラー収納部が認められるが、「カチリという音を伴って自然に収納されるため、内箱20が外箱10内に完全に嵌装されたという節度感を得ることができ」、「内箱20を強く押圧して外箱10内に押し込むことによるリバウンドを有効に抑止することができる」ことは、原意匠図面等に開示されているとはいえず、原意匠図面等の記載の範囲内のものとはいえない。
(エ)他の実施の形態について
【発明の実施の形態】において、回転ローラーと案内レールの関係を「敷居の上に取り付けたレールと、これに上から嵌合する戸車との関係のように」することについて、「なお、例えば内箱側回転ローラー24及び外箱側案内レール13を、敷居の上に取り付けたレールと、これに上から嵌合する戸車との関係のようにして、外箱側回転ローラー14の周面に形成した溝が外箱側案内レール13上に形成した軌条に案内されるようにすれば、内箱20の外箱10に対する出入操作をより一層円滑なものとすことができる。このことは、外箱側回転ローラー14及び内箱側案内レール23についてもいえることである。」(【0012】)と記載され、【0017】【0021】にも同様に記載されているが、この構成について、原意匠図面等には何ら記載されていない。

以上のように、本件明細書及び図面等に記載された上記(ア)〜(エ)の事項は、原意匠登録出願の願書に最初に添付した図面等の記載の範囲内のものではないから、原意匠登録出願から本件特許出願への変更は不適法であって、本件特許の出願日の遡及は認められない。
したがって、本件特許の出願日は、登録原簿に記載されているとおりの平成8年7月31日である。
なお、被請求人は、意匠出願からの特許出願への変更は従前の例によるのが相当で、補正についての審査基準を根拠に出願日の遡及を認めないとするのは不当であると主張するが、意匠出願から特許出願への変更が認められれば、特許出願は原意匠出願の時にしたものとみなされるという出願の変更の効果を考慮すると、特許出願の明細書又は図面には、原意匠出願の願書に最初に添付した図面等に記載した事項の範囲を越えて記載することはできないとするのが相当であり、被請求人の主張は採用できない。

5 引用発明の認定及び本件発明との対比・判断
5-1 本件請求項1に係る発明について
異議申立人が提出した甲第1号証刊行物(特開平8-103339号公報)は、本件出願日である平成8年7月31日より以前の平成8年4月23日に公開されたもので、該刊行物には、
「 前面に開口部(21)を有する外箱(2)と、この外箱(2)に上記開口部(21)から出入自在に嵌装された内箱(3)とからなる収納ボックスにおいて、
上記外箱(2)の内面底部には幅方向一対の前後方向に延びる外箱側敷居部(22)が設けられ、
上記内箱(3)の外面底部には上記外箱側敷居部(22)に対応した内箱側敷居部(36)が設けられ、
上記外箱側敷居部(22)には前後方向に延びる外箱側軌条(22a)が敷設され、
上記内箱側敷居部(36)には前後方向に延びる内箱側軌条(36a)が敷設され、
外箱(2)の開口部(21)には外箱側ローラ(4)が周面を外箱側敷居部(22)から上方に突出させた状態で付設され、
内箱(3)の後方外面底部には内箱側ローラ(5)が周面を内箱側敷居部(36)から下方に突出させた状態で付設され、
上記外箱側ローラ(4)および内箱側ローラ(5)の周面には、上記内箱側軌条および外箱側軌条に嵌め込まれる環状溝がそれぞれ設けられていることを特徴とする収納ボックス。」(特許請求の範囲請求項1、図1及び図2)が記載されている。
上記記載によれば、
該収納ボックスは、前面に開口部を有する外箱と、この外箱内に前記開口部から出入自在に嵌装される内箱とからなる収納ボックスであること、
外箱においては、外箱側軌条(22a)が、外箱の内面底部の幅方向両側部にあって、前後方向に延びる左右一対の外箱側敷居部(22)に設けられ、外箱側ローラ(4)が、周面を外箱側敷居部(22)から上方に突出させた状態で外箱の開口部(21)に付設されていること、
内箱においては、内箱側軌条(36a)が、外箱側敷居部(22)に対向して内箱(3)の外面底部に設けられた左右一対の内箱側敷居部(36)に設けられ、内箱側ローラ(5)が、周面を内箱側敷居部(36)から下方に突出させた状態で内箱(3)の後方外面底部には付設されていること、
外箱側ローラ(4)は内箱側軌条(36a)に案内され、内箱側ローラ(5)は外箱側軌条(22a)に案内されること、
とが認められる。
したがって、甲第1号証には、
「 前面に開口部を有する外箱と、この外箱内に前記開口部から出入自在に嵌装される内箱とからなる収納ボックスであって、
前記外箱を、その底部の内面上に設けられて前後方向に伸びる左右一対の外箱側軌条と、この外箱側軌条から上方に僅かに突出すべく前記開口部内側に設けた左右一対の外箱側ローラとを有したものとして構成するとともに、
前記内箱を、その底部の外面に設けられて前記外箱側ローラを案内すべく前後方向に伸びるとともに、当該内箱の底部から下方に僅かに突出する左右一対の内箱側軌条と、前記外箱側軌条に対応する位置であって当該内箱の後端部に設けられ、前記外箱側軌条上にて案内される左右一対の内箱側ローラとを有したものとして構成したことを特徴とする収納ボックス。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
本件請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「外箱側軌条」、「外箱側ローラ」、「内箱側軌条」、「内箱側ローラ」は、それぞれ本件発明の「外箱側案内レール」、「外箱側回転ローラー」、「内箱側案内レール」、「内箱側回転ローラー」に相当するから、本件請求項1に係る発明と引用発明1とは、ともに
「 前面に開口部を有する外箱と、この外箱内に前記開口部から出入自在に嵌装される内箱とからなる収納ボックスであって、
前記外箱を、その底部の内面上に設けられて前後方向に伸びる左右一対の外箱側案内レールと、この外箱側案内レールから上方に僅かに突出すべく前記開口部内側に設けた左右一対の外箱側回転ローラーとを有したものとして構成するとともに、
前記内箱を、その底部の外面に設けられて前記外箱側回転ローラーを案内すべく前後方向に伸びるとともに、当該内箱の底部から下方に僅かに突出する左右一対の内箱側案内レールと、前記外箱側案内レールに対応する位置であって当該内箱の後端部に設けられ、前記外箱側案内レール上にて案内される左右一対の内箱側回転ローラーとを有したものとして構成したことを特徴とする収納ボックス。」であり、同一である。
5-2 本件請求項2に係る発明について
甲第1号証には、上記5-1で引用した収納ボックスを限定した「上記収納ボックスであって、上記内箱(3)の前方外面底部に、内箱(3)が外箱(2)に嵌装された状態で、外箱側ローラ(4)の上方に突出している部分を嵌め込む凹部(38)が形成されてなる収納ボックス。」(特許請求の範囲請求項2、図1及び図2)(以下、「引用発明2」という。)が、記載されている。
本件請求項2に係る発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の凹部(38)は本件請求項2に係る発明のローラー収納部に相当するから、両者は内箱を外箱に嵌装したとき回転ローラーとローラー収納部とがはまり込む点では一致し、本件請求項2に係る発明が、内箱側回転ローラーがはまり込むローラー収納部を外箱の奥に位置する底部上に形成しているのに対して、引用発明2では、外箱側回転ローラーがはまり込むローラー収納部を内箱の前方外面底部に形成している点で相違する。
上記相違点を検討すると、両者は、内箱を外箱に嵌装したときローラー収納部に回転ローラーがはまり込むようにして安定させる点では共通し、回転ローラーは内箱側及び外箱側に2組備わっていることを考慮すると、ローラー収納部にはまり込むようにする回転ローラーを内箱側回転ローラーとするか、外箱側回転ローラーとするかは、当業者が適宜選択し得る事項であり、いずれを選択するにしてもその作用効果に格別の相違は認められない。
そして、内箱側の端部に設けられた内箱側回転ローラーに対してローラー収納部を設けようとすると、該ローラー収納部は外箱の奥に位置する底部上に形成されることは必然であるから、引用発明2の外箱側回転ローラーに対してローラー収納部を設けることに代えて、内箱側回転ローラーに対してローラー収納部を設けて本件請求項2に係る発明とすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証刊行物に記載された発明であって、特許法29条1項3号に掲げられた発明に該当するから、その特許は、同法123条1項2号に該当し、無効にすべきものである。
また、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法123条1項2号に該当し、無効にすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-11 
結審通知日 2001-05-22 
審決日 2001-06-05 
出願番号 特願平8-202120
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A47B)
P 1 112・ 113- Z (A47B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 寛  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 後藤 千恵子
幸長 保次郎
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3010255号(P3010255)
発明の名称 収納ボックス  
代理人 植木 久一  
代理人 廣江 武典  
代理人 小谷 悦司  

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