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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A61M
管理番号 1067332
審判番号 審判1997-2457  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-02-14 
確定日 2001-02-01 
事件の表示 上記当事者間の特許第2504927号発明「カテ-テルデバイス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2504927号発明の明細書の特許請求の範囲第1項、第15項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯・本件特許発明の要旨
本件特許第2504927号発明(以下、「本件特許発明」という。)は、1987年6月2日(パリ条約による優先権主張1986年6月2日、米国)を国際出願日とする特願昭62-503621号の一部を平成7年1月27日に新たな特許出願としたものであって、平成8年4月2日に設定登録がなされた。そして、その要旨は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項および第15項に記載された次のとおりのものと認める。
(特許請求の範囲第1項)
「外部の人体挿入部位から内部組織に、そして標的部位に至る約3mm未満の管腔内径の脈管に沿って少なくとも約5cm長の曲がりくねった管路に沿って該組織内に案内され得る、案内ワイヤと共に用いられるカテーテルを備えるカテーテルデバイスであって、該カテーテルは、
約3mm未満の管腔内径の脈管に沿って少なくとも5cm長の曲がりくねった管路に沿って該標的部位に移動するに充分に可撓性である細長い管状メンバーを備え、
該細長い管状メンバーは案内ワイヤで案内され、該細長い管状メンバーは近位端および遠位端を有し、該細長い管状メンバーの外表面および内表面は該近位端および該遠位端の間に伸びる内部管腔を規定し、該細長い管状メンバーは以下を備える:該挿入部位から内部組織に隣接する領域まで該案内ワイヤをたどるための比較的剛直な近位セグメント、および該領域から該標的部位まで該内部組織内で該約3mmの管腔内径の脈管に沿って少なくとも約5cm長の該曲がりくねった管路に沿って該案内ワイヤをたどるための少なくとも約5cm長の比較的可撓性の遠位セグメントであって、該可撓性の遠位セグメントは近位部分および遠位部分の両部分を有し、該遠位部分は近位部分に比べより可撓性であり、そして該遠位セグメントの遠位部分は、該内部組織内で案内ワイヤにより提供される曲がりくねった管路に沿って該標的部位まで案内ワイヤをたどるに充分に可撓性であるようにする外径、壁厚、および組成であり、そしてここで、該遠位セグメントの近位部分は、該近位セグメントの可撓性と該遠位セグメントの遠位部分の可撓性との間の可撓性を有する1つまたはそれ以上の中間部分を有する遠位セグメント。」(以下、「本件特許第1発明」という。)
(特許請求の範囲第15項)
「外部の人体挿入部位から内部組織に、そして標的部位に至る約3mm未満の管腔内径の脈管に沿って少なくとも約5cm長の曲がりくねった管路に沿って該組織内に案内され得る案内ワイヤと共に用いられるカテーテルを備えるカテーテルデバイスであって、該カテーテルは、
該案内ワイヤ上に受け入れられるように適合され、そしてそれに沿って該標的部位に導かれる細長い管状メンバーを備え、
該細長い管状メンバーは、約3mm未満の管腔内径の脈管に沿って少なくとも5cm長の曲がりくねった管路に沿って該標的部位に移動するに充分に可撓性であり、該細長い管状メンバーは該案内ワイヤで案内され、そして該細長い管状メンバーは近位端および遠位端を有し、該細長い管状メンバーの外表面および内表面は該近位端および遠位端の間に伸びる内部管腔を規定し、該細長い管状メンバーは、以下を備える:該挿入部位から該内部組織に隣接する領域まで該案内ワイヤをたどるための比較的剛直な近位セグメント、および該領域から該標的部位まで、該内部組織内で約3mmの管腔内径の脈管に沿って少なくとも約5cm長の該曲がりくねった管路に沿って該案内ワイヤをたどるための少なくとも約5cm長の比較的可撓性の遠位セグメントであって、
ここで、少なくとも1つのセグメントは、末端に向かって増加する可撓性を有する。」(以下、「本件特許第2発明」という。)
2 当事者の主張
2-1 請求人の主張
請求人は、本件「特許第2504927号の特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
その理由の概要は、次のとおりである。
特許権者から、本件審判請求人の製品が本件特許の原出願の権利を侵害している旨の1994年4月21日付けのレター(甲第4号証)を受領したので本件無効審判について請求人適格を有する。
本件特許発明は、本願出願前に国内又は外国において頒布された甲第2号証刊行物及び甲第3号証刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、同法第123条第1項第2号により、無効とすべきである。(なお、審判請求人は、同法第123条第1項第1号により無効とすべきである旨主張しているが、特許が第29条第2項の規定に違反してされたときは、第123条第1項第2号に該当するので上記のように認定した。)
そして、上記主張を立証するために、次の証拠方法を提示している。
甲第1号証 特許第2504927号公報(本件特許)
甲第2号証 T.M.H.CHAKERA他 ″Composite Catheter for Selective Cerebral Angiography Following an Arch Aortogram″,Australasian Radiology,Vol.XXIX,No.1,February,1985
甲第3号証 特開昭58-218966号公報
甲第4号証 TARGET THERAPEUTICSのGary R.Bangが、Yasuhiro Hirataに宛てた1994年4月21日付けのレター
2-2 被請求人の主張
これに対し、被請求人は、「本件審判の請求を却下する。審判費用は請求人の負担とする。」、または「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
その答弁の概要は次のとおりである。
甲第4号証は、Yasuhiro Hirata氏へのレターであって、本件審判の請求人宛のレターではないから、本件審判の請求は、審判請求の利益のない者によってなされた不適法な審判請求である。
仮に請求が不適法でないとしても、本件特許は無効理由を有さない。
3 当審の判断
3-1 請求人適格について
甲第4号証は、Yasuhiro Hirata氏宛のレターであって、その内容は、「コック製品」の輸入と販売を中止するよう警告するものである。
そして、この「コック製品」は、「コック」という名称が審判請求人の名称の一部と一致すること、また、審判請求人の「本件審判請求人の製品が・・・」との主張に対して被請求人は反論していないことから、甲第4号証のレター中の「コック製品」は、審判請求人の製品と認められる。
してみると、甲第4号証のレターの内容は請求人に影響を及ぼすものであり、該レターの宛先が直接に請求人宛ではないにしても、無効審判を請求する利益を有するものである。したがって、請求人は、無効審判の請求人適格を有しており、被請求人の主張は採用できない。
3-2 特許法第29条第2項の無効理由について
3-2-1 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「一過性脳虚血発作(T.I.A)の評価のために、大動脈弓造影および選択的脳血管造影を必要とする患者では、大きな大動脈撮影カテーテル(より精緻な選択的カテーテルにより追従される)の使用から、穿刺部位における出血の問題が通常でないことはない。この課題は、多くの施設において、交換シースの使用により克服されてきている。
Royal Perth Hospitalでは、我々は、大動脈撮影に、サイズが6.3Frenchのテフロンカテーテルを用い、これを、頸動脈循環の選択的研究のために、複合カテーテルと交換した。この複合カテーテルは、60cm長さの、6.3Frenchのポリエチレンカテーテル材料(内径1.55mm、外径2.10mm)に連結された、40cmの、5Frenchのポリエチレン管材(内径1.12mm、外径1.66mm)先端部を有する(図1)。この複合カテーテルの使用は、大動脈撮影カテーテルが引き抜かれ、そして選択的頸動脈注射、および脊椎注射のために予備成形されたカテーテルで置き換えられるとき、穿刺部位の周りの鯵出を止める。
交換シースと共に用いられる標準の5Frenchカテーテルに対するこの複合カテーテルの第2の主要な利点は、近位部分のより大きな直径により全アセンブリに与えられる増加したトルクである。この増加したトルクは、曲がりくねった頸動脈の選択的カテーテル法におけるより大きな制御を可能にし、そして同時に、この複合カテーテルのより小さな直径の頭蓋部分は、外傷傷害性がより少なく、そして頸動脈および脊柱動脈中に導入されたガイドワイヤ上をより容易に進行し得る。
この複合カテーテルは、5Frenchの遠位セクションを、6.3Frenchストック上に融合結合することにより作製される。これは、テーパー状の鋳型中で、管腔中に導入されたプラグを用い、結合される両端を加熱することにより達成され、接合部で内部および外部の滑らかなテーパーを確実にする。
この複合カテーテルと類似の寸法のカテーテルが、6.3French管材の先端部を、所望の長さに伸ばすことにより、融合溶接の必要性なくして作製され得ることが認識される。しかし、実際には、このようなカテーテルは、伸ばされないカテーテルと同じ所望の記憶および弾性特性を有さず、そしてそれは、必要な「頸動脈追従」形状に満足して形成され得ないことが見出された。
我々は、この複合カテーテルを、25人の患者に用いて一過性脳虚血発作の評価を表し、そしてこの複合カテーテルを用いて、25人の患者のすべてにおいて成功した選択的カテーテル法を達成した。機械的な失敗が存在した患者または任意のその他の困難性に直面した患者はいなかった。血管造影後、すべてのカテーテルを検査し、結合部で弱くなったりまたはねじれたりすることがなかったことを示した。
我々は、動脈孔を「栓塞」することおよび交換シースのコストを節約すること、そしてまた、格別のトルクを提供することが、このようなカテーテルの使用の導入に対して十分な理由であることを推挙したい。
」(被請求人が平成9年11月10日付け答弁書に添付した翻訳文に基づく。)
3-2-2 対比・判断
3-2-2-1 本件第1発明について
甲第2号証に記載された複合カテーテルは、6.3Frenchと5Frenchのカテーテル材料をテーパ状の鋳型の中で加熱融合し結合することで作成されるから、そのテーパ状の鋳型の部分は、軸方向に所定の長さを有するテーパ状のカテーテルとなる。
してみると、穿刺部位、血管、複合カテーテル、5Frenchの遠位セクション、テーパ状のカテーテル、6.3Frenchストックが、本件第1発明の人体挿入部位、脈管、カテーテル(管状メンバー)、遠位セグメントの遠位部分、遠位セグメントの近位部分、近位セグメントに夫々対応する。そして、甲第2号証において、5Frenchの遠位セクションは40cmの長さであるから少なくとも約5cm長の長さであることに相違なく、また、5Frenchの遠位セクションと6.3Frenchストックの材質はいずれもポリエチレンであるから、5Frenchの遠位セクションは、6.3Frenchストックより、より可撓性であり、テーパ状の部分はそれらの中間の可撓性を有することは明らかである。
してみると、甲第2号証に記載されたカテーテルは、次の点で、本件第1発明と一致する。
「外部の人体挿入部位から内部組織に、そして標的部位に至る脈管に沿って少なくとも約5cm長の曲がりくねった管路に沿って該組織内に案内され得る、案内ワイヤと共に用いられるカテーテルを備えるカテーテルデバイスであって、該カテーテルは、
脈管に沿って少なくとも5cm長の曲がりくねった管路に沿って該標的部位に移動するに充分に可撓性である細長い管状メンバーを備え、
該細長い管状メンバーは案内ワイヤで案内され、該細長い管状メンバーは近位端および遠位端を有し、該細長い管状メンバーの外表面および内表面は該近位端および該遠位端の間に伸びる内部管腔を規定し、該細長い管状メンバーは以下を備える:該挿入部位から内部組織に隣接する領域まで該案内ワイヤをたどるための比較的剛直な近位セグメント、および該領域から該標的部位まで該内部組織内で該脈管に沿って少なくとも約5cm長の該曲がりくねった管路に沿って該案内ワイヤをたどるための少なくとも約5cm長の比較的可撓性の遠位セグメントであって、該可撓性の遠位セグメントは近位部分および遠位部分の両部分を有し、該遠位部分は近位部分に比べより可撓性であり、そして該遠位セグメントの遠位部分は、該内部組織内で案内ワイヤにより提供される曲がりくねった管路に沿って該標的部位まで案内ワイヤをたどるに充分に可撓性であるようにする外径、壁厚、および組成であり、そしてここで、該遠位セグメントの近位部分は、該近位セグメントの可撓性と該遠位セグメントの遠位部分の可撓性との間の可撓性を有する1つまたはそれ以上の中間部分を有する遠位セグメント」
そして、次の点で両者は相違する。
本件第1発明では脈管の管腔内径が約3mm未満であるのに対し、甲第2号証では、大動脈弓造影および選択的脳血管造影のために頸動脈、脊柱動脈中を進行させることが記載されているものの、管腔内径の大きさは記載されていない点。
そこで、上記相違点について検討すると、甲第2号証に開示されたカテーテルは、その外径が2.10mm、1.66mmであるから、管腔内径が約3mm未満の脈管を進行しうるものであり、管腔内径が約3mm未満の脈管に沿って案内させることは、当業者が容易に想到しうるものである。
ところで、被請求人は、
(i)甲第2号証のカテーテルは、脳の血管中で用いられるカテーテルではない、
(ii)甲第2号証の複合カテーテルは、曲がりくねった通路の組織部位に近づく際の限界を克服するように設計されたカテーテルではない、
(iii)甲第2号証のカテーテルの連結部分は、遠位セクションと近位セクションの中間の可撓性を有している中間セクションとはいえない、
旨、主張している。
しかし、
(i)特許請求の範囲第1項には、カテーテルデバイスが内部組織に案内される旨の記載はあるが、脳の血管中を案内される旨の記載はない。そして、被請求人は、内部組織が脳の深い部位ののような軟組織を意味する(段落【0054】)旨主張しているが、通常、内部組織が必ずしも脳の組織を意味するものではない。発明の詳細な説明の欄の段落【0054】の記載は、一実施例を説明したに過ぎないものであり、特許請求の範囲の用語を定義するものではない。よって、被請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
(ii)被請求人は、曲がりくねった管路をa.多数の曲部(そのうちのいくつかは90°以上の角度である)、b.管腔の直径が約3mm未満の小血管、およびc.全長が少なくとも約5cmの標的組織内の管路を含む(段落【0054】)旨主張しているが、通常、「曲がりくねった管路」をこの技術分野において上記のように限定して解するものではない。また、上記のような管路は、本件の一実施例の説明の中で記載されているに過ぎないものであって、特許請求の範囲の用語を定義するものではない。したがってこの点の主張も、特許請求の範囲の記載に基づかない主張である。
(iii)甲第2号証には、「この複合カテーテルは、5Frenchの遠位セクションを、6.3Frenchストック上に融合結合することにより作製される。これは、テーパー状の鋳型中で、管腔中に導入されたプラグを用い、結合される両端を加熱することにより達成され、接合部で内部および外部の滑らかなテーパーを確実にする。」との記載があり、5Frenchの遠位セクションと6.3Frenchストックとをテーパ状の鋳型の中で結合すれば、当然にテーパ状の部分が形成され、このテーパ状の部分を介して接続されるものである。してみると、このテーパ状の部分が本件特許第1発明の遠位セグメントの近位部分(被請求人がいう中間セグメント)に相当する。よって、被請求人の主張は採用できない。
3-2-2-2 本件第2発明について
本件第2発明と本件第1発明との相違点は、本件第1発明では遠位セグメントが遠位部分と近位部分を有するのに対し、本件第2発明では遠位セグメントと近位セグメントの少なくとも1つのセグメントが末端に向かって増加する可撓性を有する点であり、その余に格別の相違点は認められない。
そこで、本件第1発明との相違点についてのみ検討すると、「セグメントが末端に向かって増加する可撓性を有する」とは、セグメント全体が連続的に末端に向かって増加する可撓性を有することに限らず、セグメントの一部が末端に向かって増加する可撓性を有するものを含むものである。してみると、甲第2号証に記載のカテーテルにおいて、テーパ部は末端に向かって増加する可撓性を有するものであり、テーパ部は遠位セグメントと近位セグメントのいずれかに含まれることから、上記本件第1発明との相違点は甲第2号証に記載されている。
したがって、本件第2発明は、本件第1発明で検討したのと同じ理由により、甲第2号証に記載のものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。
4 まとめ
以上のとおりであるから、本件審判請求人は、請求人適格を有している。そして、本件第1発明、本件第2発明は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
従って、本件第1発明、第2発明に係る特許は、いずれも特許法第123条第1項第2号に該当するので、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1998-05-15 
結審通知日 1998-05-22 
審決日 1998-05-29 
出願番号 特願平7-12128
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多喜 鉄雄山中 真吉村 康男川端 修  
特許庁審判長 安田 啓之
特許庁審判官 小松 徹三
志村 博
登録日 1996-04-02 
登録番号 特許第2504927号(P2504927)
発明の名称 カテーテルデバイス  
代理人 社本 一夫  
代理人 神田 藤博  
代理人 山本 秀策  

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