• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない A61N
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない A61N
管理番号 1067349
審判番号 審判1999-35156  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-04-08 
確定日 2001-12-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第2609574号発明「交流電位治療器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第2609574号の請求項1に係る発明(平成6年4月19日出願、平成9年2月13日設定登録。以下、「本件発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「交流高電圧を生体に印加して治療を実行する電位治療器において、交流昇圧トランスTの高圧2次コイルLの両端に並列の抵抗R1とダイオードD1と、この並列回路と直列に抵抗R2を含む正電圧ブリーダ回路を接続するとともに、このブリーダ回路により、生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率を1対3に設定してなる交流電位治療器。」
2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明の明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の構成及び効果が記載されていないから、特許法第36条第4項の規定に違反し、また同明細書の特許請求の範囲の請求項1は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項となっていないから、同法第36条第5項第2号に違反しているものであり、本件の特許は無効にすべきであると主張している。
3.記載不備とする理由
請求人は記載不備とする点について、第一乃至第三の理由を挙げているが、その各理由の主張内容は、大略以下のとおりである。
1)第一の理由
本件発明の明細書の発明の詳細な説明中の「健康な人体内における正負イオンの理想的存在比率は正25%対負75%である。」旨の記載事項は技術的に誤ったものと認められ、該事項が本件発明の基幹乃至は本質的部分となっている技術事項ででもあるかのような記載を含むこの明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の構成及び効果が記載されているということができない。
2)第二の理由
本件発明の明細書の発明の詳細な説明には、「正電圧と負電圧との波高値比率が健康な人体内に存在する正負イオンの理想的存在比率(正25%対負75%)に等しい割合になる交流高電圧電位(すなわち、正負の波高値比率が、1対3になる交流高電位)を生体に印加すれば、治療効果に有効性と速効性をもたせ、かつ拒否反応の発生を防止できる。」旨の記載があるが、この「1対3」という事項が「1対3」に設定すれば当然効果が奏され、かつ「1対3」の波高値比率を他の比率にしたときは効果を全く奏さないか顕著な効果は殆ど奏さないことを立証するデータ等あるいは理由ないし根拠がないことから判断できない。したがって、上記の効果が正電圧と負電圧との波高値比率を「1対3」という割合に限定されたものに特有の効果であるとは認められない。以上のことからみて、本件発明は技術的に未完成であり、未完成である発明を実施することができないのは自明であるから、この明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の構成及び効果が記載されているとはいえない。
3)第三の理由
特許請求の範囲の請求項1には「1対3」という事項が記載されているが、これが発明の構成に欠くことができない事項であるか(すなわち、「1対3」という事項が欠けては所期の効果を奏する発明は成立しないのか)、それとも技術的に意味のない条件であるのか(すなわち、「1対3」という事項が欠けても所期の効果を奏する発明は成立するのか)が判断できないので、「1対3」という技術意義不明な事項を含む請求項1は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであると認めることができない。
4.判断
1)第一の理由について
「健康な人体内における正負イオンの理想的存在比率は正25%対負75%である。」旨の記載事項の根拠は、被請求人の提出した乙第一号証に添付書類とされた、株式会社コロナ社発行「基礎医学1」、シュプリンガー・フェアラーク東京株式会社発行「スタンダード人体生理学」、株式会社医学書院発行「標準生理学第4版」を総合して判断すると、人間の生体の静止電位(代表的な数値としては-90mV)から活動電位のピーク値(代表的な数値としては+30mV)を生ぜしめる状態の正負イオンの存在比率にあると解することができ、かかる事項を技術的に誤ったものと認めるに足る証拠は存在しない。
そして、本件発明の目的は、「正電圧と負電圧との波高値比率が1対3となるような高圧交流電圧を得ることと、トランス2次コイルに生じる負の半波分の電力損失をなくすること」(段落【0005】参照)にあり、該目的を実現するための構成は、請求項1に記載の構成と対応する構成として段落【0006】に明確に記載されており、さらにその効果は、「生体印加交流の正電圧と負電圧との波高値比率を1対3とすることができ」、「健康な人体内における正負イオンの理想的存在比率に等しい割合で生体に交流電位を印加できるので、治療効果に有効性と速効性をもたせ、かつ拒否反応の発生を防止することができ」、「2次コイルに生じる負の半波分の電力損失をなくすことができ省エネ化の実現と無用な発熱を防止できる」(段落【0012】乃至【0014】参照)とするものである。
したがって、本件発明に係る明細書の発明の詳細な説明中には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の目的、構成及び効果が記載されているというべきであり、請求人の主張する第一の理由は認められない。
2)第二の理由について
正負の波高値比率が、1対3になる交流高電圧を生体に印加することの意義は、生体の電気現象はイオンの移動によって行われるものであり、細胞膜を介して細胞内外に発生する電位差により行われるものであることから、かかるイオンの移動に代え該当電圧を付与することにより、通常の細胞膜を介して細胞内外に発生する電位差を与えるとの考察に基づくものと認められる。
そして、正負電圧の波高値比率を1対3とすることに関し、被請求人の提出した乙第一号証に添付書類とされた、湖東総合病院作成「パワーヘルス使用成績」によれば、それによる治療効果の有効性が確認できるものである。
確かに、正負電圧の波高値比率として、「1対3」以外のものについてのデータは何等示されておらず、「1対3」のものとそれ以外の比率のものとを比較することは出来ないが、このことをもって、本件発明が未完成であるとはいえず、本件発明の明細書の発明の詳細な説明中には、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、発明の構成及び効果が記載されていないとする請求人の主張は認められない。
3)第三の理由について
特許請求の範囲の請求項1には、正電圧と負電圧との波高値比率が健康な人体内に存在する正負イオンの理想的存在比率(正25%対負75%)に等しい割合になるものとして、「1対3」という数値を特定した事項が記載されており、それによる効果も確認できるものであるから、上記「1対3」という記載事項を技術的に意味のない条件であるということはできない。
したがって、上記「1対3」という記載事項を含む請求項1は、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでないとの主張は認められない。
5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由によっては本件発明を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第162条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-12-06 
結審通知日 1999-12-17 
審決日 1999-12-20 
出願番号 特願平6-103247
審決分類 P 1 112・ 531- Y (A61N)
P 1 112・ 534- Y (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 賢一  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 大里 一幸
和泉 等
登録日 1997-02-13 
登録番号 特許第2609574号(P2609574)
発明の名称 交流電位治療器  
代理人 高橋 功一  
代理人 中島 昇  
代理人 旦 範之  
代理人 小林 将高  
代理人 旦 武尚  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ