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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特39条先願  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 発明同一  B32B
管理番号 1067426
異議申立番号 異議2001-72344  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-03 
確定日 2002-08-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3142272号「積層体」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3142272号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯(特許第3142272号)
平成5年11月26日 原特許出願(特願平5-297010号)
(優先権主張 平成4年12月3日 日本、平成4年12月25日 日本、平成5年5月13日 日本)
平成11年8月9日 本件分割出願(特願平11-225379号)
平成12年12月22日 特許の設定登録(特許第3142272号)
平成13年9月3日他 特許異議の申立(ザ ダウ ケミカル カンパニー外2名より)
平成13年12月21日 取消理由通知
平成14月3月18日 意見書及び訂正請求
II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1の「成分A:メタロセン触媒を用いて製造され下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体を50〜99重量%:
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の最大ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;及び成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレンを1〜50重量%:
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有し、
MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなる層を含む積層体。」を、「成分A:メタロセン触媒を用いて製造され下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体を50〜99重量%:
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;及び
成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレンを1〜50重量%:
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有し、
MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体。」に訂正する。
訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項2の「前記樹脂組成物のMEとMTの関係が、
ME≧[0.2×MT+1]
を満足するものである請求項1記載の層を含む積層体。」を、「前記樹脂組成物が、MFRが8〜20g/10分;密度が0.89〜0.912g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.5〜2.0;MTが1.5g以上であり;且つMEとMTの関係が、
ME≧[0.2×MT+1]
を満足するものである請求項1記載の層を含む積層体。」に訂正する。
訂正事項c.
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
訂正事項d.
明細書の段落【0005】欄の「【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いて製造されたLLDPEと特殊なLDPEとからなり、特定の物性を有する樹脂組成物により、上記本発明の目的が達成されうるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体50〜99重量%と、MFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%とからなり、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3、;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなる層を含む積層体である。」を、「【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いて製造されたLLDPEと特殊なLDPEとからなり、特定の物性を有する樹脂組成物により、上記本発明の目的が達成されうるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体50〜99重量%と、MFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%とからなり、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3、;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり、;且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体である。」に訂正する。
訂正事項e.
明細書の段落【0029】欄の「(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる樹脂組成物は、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であるものでなけらばならない。MFRが上記範囲より大であると製膜が不安定になり、上記範囲より小さいと押出し性、延展性が不良となり好ましくない。密度が上記範囲より大であると低温ヒートシール性が不良となり、上記範囲より小さいとフィルム表面がベタつくため好ましくない。MEが上記範囲より大であると延展性が不良となり、上記範囲より小さいとネックインが不良となりので好ましくない。MTが上記範囲より小であると加工性の改良効果が少なくなるので好ましくない。またQ値については、特に制限されないが、好ましくは3〜6、特に好ましくは3.0〜5.2である。」を、「(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる樹脂組成物は、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であるものでなけらばならない。MFRが上記範囲より大であると製膜が不安定になり、上記範囲より小さいと押出し性、延展性が不良となり好ましくない。密度が上記範囲より大であると低温ヒートシール性が不良となり、上記範囲より小さいとフィルム表面がベタつくため好ましくない。MEが上記範囲より大であると延展性が不良となり、上記範囲より小さいとネックインが不良となりので好ましくない。MTが上記範囲より小であると加工性の改良効果が少なくなるので好ましくない。またQ値については、3〜6、特に好ましくは3.0〜5.2であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]
を満足する。」に訂正する。
訂正事項f.
明細書の段落【0045】欄の「実施例2〜13、22〜23及び比較例1〜8
成分A及び成分Bとして、表1に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例1と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表1に示す通りである。」を、「実施例2〜13、23及び比較例1〜8,19
成分A及び成分Bとして、表1に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例1と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表1に示す通りである。」に訂正する。
また、明細書の段落【0050】欄の表1のつづきの「実施例22」を「比較例19」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無の判断
訂正事項aにおいて、(1)エチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体に関して、溶出曲線のピークを1つに限定すること、樹脂組成物の物性に関して、(2)Q値を限定すること、(3)ME、MTの関係式を導入することは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する、そして、(1)〜(3)の事項については、それぞれ訂正前の明細書の実施例、明細書の段落【0029】及び請求項2に記載されているから、訂正事項aによる訂正は、特許明細書の記載の範囲内であり、特許請求の範囲を実質上、拡張又は変更するものではない。
訂正事項bは、樹脂組成物について、訂正前の請求項3の限定を付すものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、特許明細書の記載の範囲内であり、特許請求の範囲を実質上、拡張又は変更するものではない。
訂正事項cは、請求項を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項d及びeは、特許請求の範囲を減縮した結果、特許請求の範囲の記載と一致しなくなった明細書の記載を訂正後の特許請求の範囲に一致させるための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
訂正事項fは、H/Wは0.5であるため、請求項1における要件(c)を満たさないのに実施例22と記載していたのを比較例19に訂正すものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部等を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.特許異議申立の概要
1.特許異議申立人ザ ダウ ケミカル カンパニー(以下、申立人Aという)
申立人Aは、甲第1号証〜甲第9号証の2を提出して、次の主張をしている。
(1)本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明であるか、又は、(2)甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これら請求項に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項に違反してなされたものである。
(3)本件訂正前の請求項1〜3の発明に係る出願は、適法な分割出願とはいえず、出願日の遡及は認められないから、これらの発明は、原出願の公開公報(甲第8号証の2)に記載された発明であり、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものである。
(4)本件訂正前の請求項1〜3の発明は、同一出願人が同日にした出願の明細書(甲第8号証の1、甲第9号証の1及び甲第9号証の2)に記載された発明と同一であるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してなされたものである。
(5)本件明細書には、実施例及び比較例で使用する種々のLLDPE及びLDPEの具体的製造条件の開示がないから、本件訂正前の請求項1〜3に係る特許は、特許法第36条に違反してなされたものである。
2.特許異議申立人東ソー株式会社(以下、申立人Bという)
申立人Bは、甲第1号証〜甲第5号証及び参考資料を提出して、(1)本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してなされたものである、と主張している。
3.特許異議申立人三井化学株式会社(以下、申立人Cという)
申立人Cは、甲第1号証〜甲第4号証を提出して、次の主張をしている。
(1)本件訂正前の請求項1〜3の発明に係る出願は、適法な分割出願とはいえず、出願日の遡及は認められないから、これらの発明は、原出願の公開公報(甲第1号証)に記載された発明であり、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものである。
(2)本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第4号証の実験報告書によれば、甲第3号証の先願明細書に記載された発明と同一であるから、これら請求項に係る特許は、特許法第29条の2第1項に違反してなされたものである。
IV.各異議申立ての証拠とその記載
各異議申立人が提示したのは、以下の証拠である。

(申立人A(ザ ダウ ケミカル カンパニー)提出分)
甲第1号証 米国特許第4339507号明細書(以下、刊行物1という)
甲第2号証 特開昭58-194935号公報(上記、刊行物2という)
甲第3号証 Speciality Plastics Conference’86、K.Tominari;Special applications and markets for ethylene alpha-olefin copolymers in Japan(1986-11)(以下、刊行物3という)
甲第4号証 EXXPOL Technology Vol.1,No.1 p1〜3、1992)(以下、刊行物4という)
甲第5号証 C.S.Speed,B.C.Trudell,A.K.Mehta,F.C.Stehling;Structure/Property Relationships in EXXPOLTM Polymers,Society of Plastics Engineers Polyolefins VII International Conference(1991年2月24〜27日)Wyndham Greenspoint Hotel Houston,Texas(以下、刊行物5という)
甲第6号証 Tappi Journal 1992年2月 p99〜103(以下、刊行物6という)
甲第7号証 Polymer Engineering and Science Vol.16,No.12 p811〜816(1976)(以下、刊行物7という)
甲第8号証の1 特許第2978387号公報(原出願の特許公報、先願明細書1という)
甲第8号証の2 特開平7-26079号公報(刊行物8という)
甲第9号証の1 特許第2980876号公報(先願明細書2という) 甲第9号証の2 同特許における平成13年1月5日付訂正請求書(抜粋)
(申立人B(東ソー株式会社)提出分)
甲第1号証 特開昭59-133238号公報(以下、刊行物9という)
甲第2号証 東ソー株式会社 四日市研究所 幸田真吾による2001年8月30日作成の実験証明書(以下、実験報告書1という)
甲第3号証 三井石油化学工業(株)製タフマーのカタログ(以下、刊行物10という)
甲第4号証 「ペトロテック」第15巻第2号 第138〜142頁(1992年2月)(以下、刊行物11という)
甲第5号証 特開昭56-64865号公報(以下、刊行物12という)
参考資料 「日本ゴム協会誌」第70巻第2号 第100〜105頁、1997年2月15日
(申立人C(三井化学株式会社)提出分)
甲第1号証 特開平7-26079号公報(刊行物8に同じ)
甲第2号証 特願平4-157938号明細書(以下、先願明細書3という)
甲第3号証 特開平6-65443号公報
甲第4号証 三井化学株式会社 生産技術研究所 筒井俊之、高分子研究所 高橋守、渡辺淳による平成12年7月12日作成の実験報告書(以下、実験報告書2という)
以下、各異議申立人の提出した証拠の種類に応じて、1.先願明細書1〜先願明細書3、2.刊行物1〜12の記載、3.実験報告書1〜2の記載、に分けて摘示する。
1.先願明細書1〜先願明細書3の記載
(1)先願明細書1(特許第2978387号公報参照)には、「成分A:下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体 50〜99重量%
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の最大ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有することを特徴とするラミネート用樹脂組成物。」(【請求項1】)が記載されている。
(2)先願明細書2(特許第2980876号公報参照)には、「メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)50〜99重量%、およびMFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3 である高圧法低密度ポリエチレン(成分B)1〜50重量%を含有し、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなるフィルム。」が記載されている。
(3)先願明細書3(特願平4-157938号明細書)には、次の記載がなされている。
3-1.「[A]エチレンと、炭素数3〜20のα-オレフィンとの共重合体であって、
(i)密度(d)が0.880〜0.950g/cm3の範囲であり、
(ii)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.01〜200g/10分の範囲であり、
(iii)DSCにおける融点の最大ピーク(T(℃))と密度(d)とが、
T<400×d-250
で示される関係を満たし、
(iv)190℃におけるメルトテンション(MT(g))とメルトフローレート(MFR)とが、
MT≦2.2×MFR-0.84
で示される関係を満たし、
(v)23℃におけるデカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが、
MFR≦10g/10分のとき、
W<80×exp(-100(d-0.88))+0.1
MFR>10g/10分のとき、
W<80×(MFR-9)0.26×exp(-100(d-0.88))+0.1
で示される関係を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体と、
[B]メルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分の範囲内にある高圧ラジカル法による低密度ポリエチレンからなり、
上記エチレン・α-オレフィン共重合体[A]と、上記高圧ラジカル法低密度ポリエチレン[B]との重量比([A]:[B])が、99:1〜60:40の範囲内にあることを特徴とするエチレン系共重合体組成物。」(【請求項1】)
3-2.「上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン共重合体[A]は、後述するような(a)遷移金属化合物、(b)有機アルミニウムオキシ化合物および(c)担体、必要に応じて(d)有機アルミニウム化合物から形成されるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα-オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.880〜0.950g/cm3となるように共重合させることによって製造することができる。」(【0028】)
3-3.「また、本発明に係る高圧ラジカル法低密度ポリエチレンは、密度(d)が0.910〜0.930g/cm3の範囲にあることが望ましい。・・・密度勾配管で測定される。」(【0080】)、
3-4.「本発明のエチレン系共重合体組成物を加工することにより得られるフィルムは、規格袋、砂糖袋、油物包装袋、水物包装袋等の各種包装用フィルムや農業用資材等に好適である。また、ナイロン、ポリエステル等の基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。」(【0090】)
3-5.「【発明の効果】・・・・このようなエチレン系共重合体組成物からは、透明性、機械的強度、ヒートシール性、ホットタック性、耐熱性、耐ブロッキング性に優れたフィルムを製造することができる。」(【0091】)
3-6.エチレン・α-オレフィン共重合体[A]の重合条件は、全圧18kg/cm2-G、重合温度80℃、ガス組成(1-ヘキセン/エチレン= 0.020、水素/エチレン=6.6×10-4、エチレン濃度=16%)及び得られた共重合体の物性は、密度0.923g/cm3、MFR1.1 g/10分であったこと(【0099】及び【0100】)。
なお、特開平6-65443号公報(申立人Cの甲第3号証)によれば、特願平4-157938号(先願明細書3)は、優先権を主張して出願された特願平5-68851号の優先権の基礎とされ、特開平6-65443号として出願公開されたことが確認できる。
2.刊行物1〜16の記載
(1)刊行物1には、次の記載がなされている。
1-1.密度が約0.912〜0.940(g/cm3)の線状低密度エチレン炭化水素コポリマー2〜80重量%と密度が約0.93(g/cm3)以下の高圧低密度ポリエチレンホモ又はコポリマー20〜98重量%からなる基材上への押出しコーティング用組成物(クレーム1参照)、
1-2.線状低密度エチレン炭化水素コポリマーは、約0.916〜0.9 28g/cm3の好ましい密度、1/2以上、好ましくは2以上、最も好ましくは10以上、100以下、好ましくは50以下、最も好ましくは30以下のメルトインデックス及び2.7〜4.1、好ましくは2.8〜3.4の分子量分布(Mw/Mn)をもつこと(8欄12行、8欄42〜47行、8欄48〜58行参照)
1-3.高圧低密度ポリエチレンホモ又はコポリマーは、約0.91〜0.93g/cm3の密度及び約1〜20g/10分のメルトインデックスをもつこと(7欄50行、クレーム3参照)
(2)刊行物2には、次の記載がなされている。
2-1.「密度が0.895g/cm3以上0.955g/cm3以下で、炭素数1000個当りの短鎖分岐数(短鎖分岐度)が5以上40以下の、エチレンと炭素数3以上18以下のα-オレフィンとの共重合体に、メルトテンションが4g以上15g以下の高圧法低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン系共重合体を10重量%以上60重量%以下混合して成る加工性とフイルム物性のすぐれた押出ラミネート用組成物。」(特許請求の範囲第1項)
2-2.「本発明は良好な加工特性および高品質ラミネートフイルムを提供する押出ラミネート用組成物に関する。」(第1頁右下欄末行〜第2頁左上欄第2行)
2-3.「本発明のもつ実用的な価値は、加工の容易さと、性能面ではとくにLLDPEの有する良好なホットタック性ならびにヒートシール強度を備えた押出ラミネートフイルムの生産を両立させることに成功したことにある。」(第2頁左下欄第2〜6行)
2-4.「このLLDPEに比較的に少量の高圧法低密度ポリエチレンを添加することを試みたところ樹脂膜の巾や厚さの変動は、飛躍的に改善され実用上問題のない加工が可能になった。しかも驚くべきことに高圧法・低密度ポリエチレンにLLDPEを添加することにより、ホットタック性ならびにヒートシール強度は著しく向上し、殆んどLLDPEのそれらの特性に近いレベルに達することを見出した。このとき、他の物性、とくに伸び、衝撃強度、引裂強度、腰は配合割合に応じて向上し、これらの特性は加成性が認められた。」(第2頁左下欄第18行〜右下欄第9行)
2-5.「本発明の主旨を損わない限り、触媒や重合方法については特に制約はなく、例えば触媒としては所謂チーグラー型触媒やフィリップス型触媒が挙げられ」(第5頁右下欄第2〜5行)
2-6.「メルトテンション 東洋精機製メルトテンションテスターによりオリフィス穴から一定量のポリマーを強制的に押出しモノフィラメントを形成し引取ロールにより引取速度を上げモノフィラメントの切断する最高の張力(g)で表わす。押出し温度=150℃ 押出し速度=0.32g/分 オリフィス=2mmφ L/D=4 サンプル量=5g」(第9頁左上欄下から第12〜3行)
2-7.LLDPEとしては、密度が、0.923g/cm3のものを用い、高圧法・低密度ポリエチレンとしては、メルトテンションが8gの住友化学製高圧法・低密度ポリエチレンスミカセンL705を用い、これらを配合して押出ラミネート組成物とし、基材(ユニチカ社製延伸ナイロンフィルム、エンブレム(厚さ15μ)にスミカセンL705を20μ押出コートしたもの)にコート厚み30μ又は15μで押出したこと。(実施例1参照)
(3)刊行物3には、次の記載がなされている。
3-1.超低密度ポリエチレン(Ultralow Density Polyethylene)(ULDPE)に関して、ULDPEはフィルム用に用いられること(「4.ULDPE適用の例」参照)、タフマーA(TAFMER A)のグレードA-4085は、3.6g/10分のメルトフローレート、0.88g/cm3の密度、54℃のビカット軟化点を有すること(「表1 タフマーのグレードとその性状」参照)、スナック、クラッカー用フィルムに、構造が、OPP、LDPE+ULDPE(押出被覆)及びCPP(非アンカー処理)の3層のもの(「第12図 ULDPEを使用する複合フィルムの構造」参照)があること。
(4)刊行物4には、EXACT(登録商標)に関して、1992年後半には、包装用のEXACTフィルム樹脂を上市の予定であること、既に、開発顧客は、従来の樹脂では得られない、シール性、靭性、光学性及び透明性で向上したフイルム特性を見出していることが記載されている。(第3頁左欄下から第16〜11行参照)
(5)刊行物5には、EXXPOL(登録商標)ポリマーに関して、 その組成分布をTREF(Temperature Rising Elution Fractionation)で試験した結果について、EXXPOLTM樹脂は、単一のコモマーコンテントの周りにしっかり密集したコモノマー分子を有する、非常に狭いCDの物質であることが記載されてい る。(Composition Distributionの項参照)
(6)刊行物6には、次の記載がなされている。
6-1.「新しいファミリーの線状ポリエチレンは高められたシール特性をもたらす」との表題のもとに、「ここで議論される新技術を使った、シングルサイト触媒は、ただ一つの活性触媒サイトを有し、タイプDのような図1で示されるエチレンポリマー分子のまさに単一型を製造する。これは、マルチサイト触媒からの製造される広いMWD及びCDとは反対に、非常に狭いMWD及びCDを有するポリマーを与える。MWD及びCDにおけるこれらの相違は、図1に示されている。(第100頁左欄下から第16〜10行)
6-2.「狭いMWD及びCD分布は、同じメルトインデックスと密度を有する線状低密度ポリエチレン/非常に低密度のポリエチレン(LLDPE/ VLDPE)より低ピーク融点及びより均一な結晶構造を生成する。これら相違は、ホットタック及びヒートシール特性で有利な変化をもたらす。」(第102頁左欄下から第22〜17行)
(7)刊行物7には、「低密度ポリエチレンの粘弾性に及ぼす長鎖分枝の影響」と題して、「全ポリマーのダイスウエル測定は、同じメルトフロー(MI)の試料に対するLCB(長鎖分枝)割合が増加すると共に、溶融弾性が増加することを示す。観察されたダイスウエル特性とGPCデータの比較は、ダイスウエルは分子サイズに依存する性質であり、分子間のもつれ効果に依存しないことを示す。このことは、LDPE溶融の弾性の測定が、市販の樹脂のLCBの相対的割合を測定する手段を提供することを示唆する。」ことが記載されている。(第811頁要約の欄第7〜15行)
(8)刊行物8には、次の記載がなされている。
8-1.「【請求項1】 成分A:下記に示す(a)〜(d)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体 50〜99重量%
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が20〜85℃であり;該ピークの高さをHとし、該ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上であり;該ピークの溶出温度以外の温度において溶出するものが実質的に該溶出曲線に存在することがある
成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレン 1〜50重量%
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有することを特徴とするラミネート用樹脂組成物。」(【請求項1】)
8-2.「(b)エチレン・α-オレフィン共重合体の製造
このような線状低密度ポリエチレンの製造法は、・・・・などに記載されている方法、すなわち、メタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、または、・・・・触媒を使用して、主成分のエチレンと従成分のα-オレフィンとを共重合させる方法である。・・・・重合活性種を形成するものである。」(【0013】)
8-3.「(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる本発明のラミネート用樹脂組成物の物性としては、望ましくは、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;Q値が2〜10、好ましくは3〜6でり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であり;且つ該樹脂組成物のMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]/g を満足するものが好適である。」(【0029】)
(9)刊行物9には、次の記載がなされている。
9-1.「メルトフローレートが1ないし30g/10min、エチレン含有量が86ないし95モル%、密度が0.870ないし0.910g/cm3、X線による結晶化度が5ないし25%及び示差走査型熱量計による融点が60ないし100℃のエチレンと炭素数4ないし10のα-オレフインとの共重合体(A):60ないし90重量%と、メルトフローレートが0.1ないし100g/10min及び密度が0.910ないし0.925g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(B):40ないし10重量%とからなることを特徴とするエチレン・α-オレフイン共重合体組成物。」(特許請求の範囲第1項)
9-2.「実施例1
<エチレン・1-ブテン共重合体の製造>
撹拌羽根を備えた10lのステンレス製重合器を用いて、連続的にエチレン・1-ブテン共重合反応を行つた。すなわち、重合器上部から重合溶媒としてヘキサンを毎時5lの速度で連続的に供給する。一方、重合器下部から重合器中の重合液が常に5lとなるように連続的に重合液を抜き出す。触媒として、(A)バナジウムオキシトリクロリドとエチルアルコールとの反応生成物(触媒調製容器中でバナジウムオキシトリクロリドとエチルアルコールとのモル比が1/1となるように調製した)を重合器中のバナジウム原子濃度が0.6ミリモル/lとなるように、(D)エチルアルミニウムセスキクロリド〔(C2H5)1.5AlCl1.5〕とエチルアルミニウムジクロリド〔(C2H5)AlCl2〕との混合物(エチルアルミニウムセスキクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとのモル比が7/3となるように調製した)を重合器中のアルミニウム原子の濃度が4.8ミリモル/lとなるようにそれぞれ重合器上部から重合器中に連続的に供給した。重合器上部からエチレンと1-ブテンを、それぞれ毎時350l、0.7lの速度で、また分子量調節剤として水素ガスを毎時5lの速度で供給する。共重合反応は、重合器外部にとりつけられたジヤケツトに温水を循環させることにより60℃で行つた。この場合重合器内圧力は5.1kg/cm2(ゲージ)であつた。以上に述べたような条件で共重合反応を行うと、エチレン・1-ブテン共重合体が均一な溶液状態で得られる。重合器下部から抜き出した重合液中に少量のメタノールを添加して重合反応を停止させ、スチームストリツピング処理にて重合体を溶媒から分離したのち、80℃で一昼夜減圧乾燥した。以上の操作でエチレン・1-ブテン共重合体(試料1)が毎時330gの速度で得られた。赤外線吸収スペクトル分析により測定した共重合体のエチレン含有量は91.5モル%、MFR 3.3g/10min、密度0.889、X線による結晶化度15% DSCによる融点66℃、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)1.9であった。
<組成物の製造及び評価>
前記方法で得られた共重合体70重量%(試料1)と高圧法低密度ポリエチレン(ミラソン(R)FL60)30重量%とを押出機によりブレンドした(押出機温度200℃、N2シール)。次いで該組成物、共重合体(試料1)及び高圧法低密度ポリエチレンの物性を以下の方法により測定した。・・・・・溶融張力(g):メルトテンシヨンテスター(東洋精機製)により150℃でL/D=4mm/2.13mmのノズルを用い、押出速度8mm/min、引取り速度20rpmの条件下で求めた。」(第3頁左下欄下から第11行〜第4頁左下欄第3行)
9-3.MFR(g/10分)17.6、エチレン含量(モル%)92.5、密度(g/cm3)0.892、HSFR(sec-1)880、メルトテンシヨン(g)0.1以下、破断点抗張力(kg/cm2)143、Haze(%)4、Tm(℃)83、X線結晶化度(%)20、分子量分布2.0、σ1.3のエチレン・1-ブテン共重合体(表2の試料2参照)70重量%と、MFR(g/10分)7.2、密度(g/cm3)0.917、HSFR(sec-1)2950、メルトテンシヨン(g)9.0、破断点抗張力(kg/cm2)120、硬度(JIS A)96、Haze(1mmシート)(%)94、ESCR F50(時間)<1、の高圧法低密度ポリエチレン(表3のミラソンM-11参照)を30重量%を配合した、実施例8の樹脂組成物の物性は、MFR(g/10分)12.5、密度(g/cm3)0.899、破断点抗張力(kg/cm2)145、HSFR(sec-1)1510、押出肌1、メルトテンシヨン(g)0.8、ESCR F50(時間)1000以上、耐熱老化性ΔTH91、ΔEB95であったこと(表1参照)
(10)刊行物10には、三井石油化学工業株式会社のポリオレフィン系樹脂改質材タフマーについて記載され、タフマーの特長に優れた改質性能(柔軟性、耐衝撃性、ヒートシール性、透明性などの改良効果に優れていること)をあげ、タフマーには、タフマーA、P、XR、Sの4つのシリーズがあり、タフマーAは、エチレン-αオレフィン共重合体で、A-4085,A-4090、A-20090があること、そのMFR(190℃)は、それぞれ、3.6、3.6、18であること、タフマーAの主な用途は、レトルト用CPPフィルム、共押出PPフィルム、L-LDPEフィルム、LDPE押出コーティング、電線被覆、チューブほかがあることが記載されている。
(11)刊行物11には、「Cp2ZrMe2/MAO系触媒を用い、エチレン-プロピレン共重合やエチレン-プロピレン-ジエン共重合を行うと、V触媒を用い工業的に製造されている共重合体に匹敵する基礎物性を示すポリマーが高い活性で得られる。」(第140頁左欄下から第12〜8行)と記載されている。
(12)刊行物12には、「一方の面に印刷層を有する基材フイルムの該印刷層を含む面に接着剤あるいはアンカーコート剤からなる接着層を設け、該接着層を介してエチレン・α-オレフインコポリマーとポリオレフインとのブレンド樹脂層を設け、さらにその上に非イオン性界面活性剤を混練したポリプロピレン層を積層してなる食品包装用防曇性フイルム。」(特許請求の範囲)に関して、ポリオレフインには、低密度ポリエチレン等が用いられること(第4頁右上欄第1〜2行)が記載され、実施例には、基材フイルム(厚さ20μ)の延伸ポリプロピレンの一方の面に印刷層を設け、該印刷層上に有機チタン系アンカーコート剤を塗布し、エチレン・α-オレフインコポリマー(三井石油化学社製タフマー)と低密度ポリエチレン(三井ポリケミカル社製ミラソン)を1/1の割合でドライブレンドし、これを押出しコーテイング法により30μの厚さで積層したこと、さらにポロプロピレンにソルビタンモノステアレートを混練して押出コーテイング法により30μの厚さを積層したことが示されている。
3.実験報告書1〜2の記載
(1)実験報告書1には、特開昭59-133238号公報の実施例に従い、試料No.2のエチレン・1-ブテン共重合体をバッチ式重合装置で製造し、その物性を測定した結果、MFR:11.4g/10分、密度:0.885g/cm3、温度上昇溶離分別(TREF)によるピーク温度:42℃、温度上昇溶離分別(TREF)によるH/W:1.3であったこと、高圧法ポリエチレンとしては、商品名「ミラソンM-11P」を用い、その物性を測定した結果、MFR:7.4g/10分、密度:0.917g/cm3、ME:1.86、MT:5.2gであったこと、そして、該エチレン・1-ブテン共重合体を70重量%とミラソンM-11Pを30重量%との樹脂組成物の物性を測定した結果、MFR:9.9g/10分、密度:0.896g/cm3、Q値:3.8、ME:1.52、MT:1.6gであったことが記載されている。
(2)実験報告書2には、特願平4-157938号(先願明細書3に該当)に記載のエチレン系共重合体組成物に関して、触媒の調整、予備重合触媒の調整、重合の工程により、密度0.903g/cm3、メルトフローレート(MFR)15g/10分のLLDPEを作製し、また、MFRが5.2g/10分、密度がアニール前0.916g/cm3、アニール後0.919g/cm3の高圧ラジカル法低密度ポリエチレンを使用して、LLDPE77重量%、高圧ラジカル法低密度ポリエチレン23重量%となるようにブレンドして、エチレン系共重合体組成物を得て、積層フィルムの製造を行い、その物性評価した結果が示されている。そして、LLDPEの製造に関しては、重合条件(全圧20kg/cm2-G、重合温度70℃、ガス組成1-ヘキセン/エチレン=0.035、水素/エチレン=1.3×10-3、エチレン濃度=24%)で共重合して、物性が(密度0.903g /cm3、メルトフローレート15g/10分)のものを得たことが記載されている。
V.判断
1.分割不適法に基づく特許法第29条第1項第3号違反について(=申立人Aの申立理由(3)及び申立人Cの申立理由(1)について)
申立人A及びCは、それぞれ、1(3)、3(1)で、分割不適であることを主張しているので、まず、本件が適法な分割出願であるかを検討する。(1).分割出願の発明が分割前の原出願に包含された二以上の発明のうちの1つであるか
分割前の原出願の明細書(前記刊行物8(特開平7-26079号公報))には、ラミネート用樹脂組成物に関して、上記8-1.〜8-3.の記載がされている。上記訂正請求により訂正された、分割出願の明細書に記載された発明である積層体に関して、樹脂組成物の物性値、樹脂組成物を構成する成分である、エチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体、及び高圧法低密度エチレン重合体についての性状の規定は、上記8-1.〜8-3.の記載からみて、分割前の原出願の明細書に記載されているから、分割出願の発明は、分割前の原出願の明細書に記載された発明である。
(2).分割出願の発明と分割後の原出願の発明は同一でないといえるか
分割後の原出願の発明は、その特許公報(特許第2978387号公報=甲第8号証の1=先願明細書1)によれば、「成分A:下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体 50〜99重量%
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の最大ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有することを特徴とするラミネート用樹脂組成物。」(【請求項1】)である。
上記訂正請求により訂正された分割出願の明細書の請求項1に係る発明は「・・樹脂組成物からなる層を含む積層体」であり、分割後の原出願の請求項に係る発明は「ラミネート用樹脂組成物」であり、物として異なるから、両者は同一とはいえない。
(3).むすび
したがって、本件は適法な分割出願であり、特許法第44条第2項の規定により、原出願の出願日である平成5年11月26日(優先権主張、平成4年12月3日、平成4年12月25日、平成5年5月13日)に出願したものと見なされる。
よって、原出願の公開公報である刊行物8(申立人Aの甲第8号証の2及び申立人Cの甲第1号証に同じ)を証拠とした、申立人Aの申立理由(3)及び申立人Cの申立理由(1)は、妥当とはいえない。
2.特許法第39条第2項違反について(=申立人Aの申立理由(4)について)
本件請求項1に係る発明と先願明細書1及び2に記載された発明をそれぞれ対比検討する。
(1)本件請求項1に係る発明と先願明細書1の発明との対比・検討
先願明細書1の発明は、エチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体50〜99重量%と高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%を含有するラミネート用樹脂組成物であるのに対して、本件請求項1に係る発明は、先願明細書1における様な樹脂組成物について、さらに樹脂組成物の物性を「MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり;且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]を満足する」と限定したものであって、上記樹脂組成物からなる層を含む積層体であるから、両者は同一の発明であるとはいえない。
(2)本件請求項1に係る発明と先願明細書2の発明との対比・検討
先願明細書2の発明は、「メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)50〜99重量%、およびMFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3 である高圧法低密度ポリエチレン(成分B)1〜50重量%を含有し、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなるフィルム」であるのに対して、本件請求項1に係る発明は、先願明細書2における様な樹脂組成物について、その構成成分であるエチレン・α-オレフィン共重合体の物性を「温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である」と限定し、さらに樹脂組成物の物性を「且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]を満足する」と限定したものであって、上記樹脂組成物からなる層を含む積層体であるから、両者は同一の発明であるとはいえない。
なお、異議申立人Aは、甲第9号証の2を提出して、先願明細書2について「樹脂組成物からなるフィルム」を「樹脂組成物からなる押出ラミネートフィルム」とする訂正請求がされており、当該「押出ラミネートフィルム」は、「積層体」に相当すると主張している。しかし、該訂正請求による訂正が認容されたとしても、訂正が適法である限りにおいては、訂正後の対象も訂正前の発明と同様に「フィルム」すなわち単層フィルムであるはずであるから、上記申立人Aの主張は理由がない。
3.特許法第29条の2第1項違反について(=申立人Cの申立理由(2)について)
(1)本件請求項1に係る発明と先願明細書3の発明との対比・検討
先願明細書3には、エチレン系共重合体組成物が、基材フィルムと貼り合わせて、多層フィルムとして用いことができると記載されている(先願明細書3の摘示3-4の記載参照)ものの、エチレン系共重合体組成物を積層フィルムにおける層とした具体例は開示されていないし、該エチレン系共重合体組成物の物性に関して、Q値の規定、MEの規定及びMEとMTの関係の規定についての記載はない。
申立人Cは、実験報告書2(申立人Cの甲第4号証に同じ)を提出して、先願明細書3の発明のエチレン系共重合体組成物でもその物性は備えているから、該物性の規定の有無は、実質的の相違点ではない旨主張している。しかし、実験報告書2は、エチレン系共重合体組成物の成分である、LLDPE(エチレン-α-オレフィン共重合体)の製造に関して、その重合条件(全圧20kg/cm2-G、重合温度70℃、ガス組成1-ヘキセン/エチレン=0.035、水素/エチレン= 1.3×10-3、エチレン濃度=24%)及び得られた共重合体の物性(密度0.903g/cm3、メルトフローレート15g/10分)が、先願明細書3に記載されたエチレン-α-オレフィン共重合体[A]の製造方法における重合条件(全圧18kg/m2-G、重合温度80℃、ガス組成(1-ヘキセン/エチレン=0.020、水素/エチレン=6.6×10-4、エチレン濃度=16%)及び得られた共重合体の物性(密度0.923g/cm3、MFR1.1g/10分)と一致せず、先願明細書3に記載された発明の忠実な追試とはいえないものであるから、参酌することはできない。
したがって、先願明細書3に記載された発明と本件請求項1に係る発明は同一ではない。
4.本件請求項2及び3に係る発明と先願明細書1〜3に記載された発明の対比・検討(=申立人Aの申立理由(4)及び申立人Cの申立理由(2)について)
本件請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定するものであるから、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由により、先願明細書1〜3に記載された発明と同一であるとはいえない。
5.特許法第29条第1項違反について
(1)本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明との対比・検討(=申立人Aの申立理由(1)について)
刊行物1には、基材上にエチレン-α-オレフィン共重合体に該当する線状低密度エチレン炭化水素コポリマーと高圧法低密度ポリエチレンとの樹脂組成物を積層したフィルムが開示されるものの、(i)樹脂組成物を構成する成分樹脂である、線状低密度エチレン炭化水素コポリマーが、メタロセン触媒を用いて製造され、且つそのMFRが2〜30g/10分、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が20〜85℃であり、かつ、このピークの[ピーク高さ]/[ピークの1/2の高さにおける幅](H/W)が1以上であること、(ii)高圧法低密度ポリエチレンが、ME(3g)は、1.6以上、MTが 1.5g以上であること、(iii)樹脂組成物の物性値が、)MFRが5〜25g/10分、密度が0.87〜0.932g/cm3、Q値が3〜6、ME(3g)が1.2〜2.3、MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/gを満たすこと、は開示されていない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載されたものであるとはいえない。
(2)本件請求項1に係る発明と刊行物2に記載された発明との対比・検討(=申立人Aの申立理由(1)について)
刊行物2には、基材にエチレン-α-オレフィン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの樹脂組成物を押出しラミネートにより積層したフィルムが開示されるものの、(イ)刊行物2における高圧法低密度ポリエチレンのメルトテンションは、その測定条件(試験温度150℃)(刊行物2の記載2-6参照)が、請求項1に係る発明における測定条件(試験温度190℃)と異なるので、その数値自体を同一視できないことから、刊行物2には、(i)樹脂組成物を構成する成分樹脂である、エチレン-α-オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造され、且つそのMFRが2〜30g/10分、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が20〜85℃であり、かつ、このピークの[ピーク高さ]/[ピークの1/2の高さにおける幅](H/W)が1以上であること、(ii)高圧法低密度ポリエチレンが、0.1〜20g/10分のMFR及び0.915〜0.930g/cm3の密度を有し、かつ、ME(3g)は、1.6以上、MTが1.5g以上であること、(iii)樹脂組成物の物性値が、MFRが5〜25g/10分、密度が0.87〜0.932g/cm3、Q値が3〜6、ME(3g)が1.2〜2.3、MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/gを満たすこと、は開示されていない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物2に記載されたものであるとはいえない。
(3)本件請求項1に係る発明と刊行物9に記載された発明との対比・検討 (=申立人Bの申立理由(1)について)
刊行物9には、実施例8として、「エチレン・1-ブテン共重合体70重量%と高圧法低密度ポリエチレン30重量%とからなる樹脂組成物」について記載されるものの、(i)樹脂組成物を構成する成分樹脂である、エチレン-α-オレフィン共重合体が、メタロセン触媒を用いて製造され、且つそのMFRが2〜30g/10分、温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が20〜85℃であり、かつ、このピークの[ピーク高さ]/[ピークの1/2の高さにおける幅](H/W)が1以上であること、(ii)低密度ポリエチレンが、ME(3g)は、1.6以上、MTが1.5g以上であること、(iii)樹脂組成物の物性値が、MFRが5〜25g/10分、密度が0.87〜0.932g/cm3、Q値が3〜6、ME(3g)が1.2〜2.3、MTが1.0以上であり、MEとMTの関係が ME≧[0.2×MT+1]/gを満たすこと、は開示されていない。
申立人Bは、実験報告書1(申立人Bの甲第2号証に同じ)を提出して、上記相違点に関して、刊行物9の樹脂組成物においても、その物性を実質的に備えている旨主張する。しかし、実験報告書1では、高圧法低密度ポリエチレンとして、ミラソンM-11Pを使用しているので、刊行物9の実施例8における、高圧法低密度ポリエチレンとしてミラソンM-11(三井化学(株)製)と製品が相違することが認められる。また、実験報告書1では、エチレン-α-オレフィン共重合体であるエチレン・1-ブテン共重合体は、MFR11.4g/10分、密度が0.885g/cm3であり、高圧法低密度ポリエチレンであるミラソンM-11Pは、MFRが7.4g/10分、密度が0.917g/cm3、MTが5.2gであったとされているが、刊行物9の実施例8で使用されたエチレン・1-ブテン共重合体のMFRは17.6、密度は0.892g/cm3であり、高圧法低密度ポリエチレンは、MFRは7.2g/10分、密度が0.917g/cm3、MTは9.0gであるから、実験報告書1の使用材料は、刊行物9の実施例8の使用材料と相違する。
そうすると、刊行物9の実施例8の忠実な追試とはいえないので、実験報告書1の樹脂組成物の物性を参酌することはできない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記の点で相違するから、刊行物9に記載されたものであるとはいえない。
(4)本件請求項2及び3に係る発明と刊行物1、2又は9に記載された発明との対比・検討
本件請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定するものであるから、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由により、刊行物1、2、又は9に記載された発明であるとはいえない。
6.特許法第29条第2項違反について
(1)本件請求項1に係る発明の刊行物1に記載された発明からの容易性について(=申立人Aの申立理由(2)について)
上記「5.特許法第29条第1項違反について」「(1)本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明の対比・検討(=申立人Aの申立理由(1)について)」で述べたように、本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、上記5.(1)に記載の相違点(i)〜(iii)がある。
相違点を検討すると、刊行物2には、上記相違点(i)〜(iii)について開示するところがない。
刊行物3は超低密度ポリエチレン(Ultralow Density Polyethylene)(ULDPE)について、刊行物4はEXACT(登録商標)ポリマーについて、刊行物5はEXXPOL(登録商標)ポリマーについて、刊行物6は新しいファミリーの線状ポリエチレンについて、刊行物7は低密度ポリエチレンの粘弾性に及ぼす長鎖分枝の影響について記載するだけで、いずれにも、メタロセン触媒を使用して得られた特殊なLLDPEをラミネート用材料として適用して、その優れた性能を保ちながら加工性を改良することのために、エチレン-α-オレフィン共重合体及び高圧法低密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物の物性値が特定の範囲にあることで、低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性などの性能に優れ、かつ加工性の改良された積層フィルムが得られることを、開示するところがない。
本件明細書の比較例1〜19と実施例1〜21、23との対比からすると、本件請求項1に係る発明は、請求項1で規定するようなエチレン-α-オレフィン共重合体及び高圧法低密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物、すなわち、相違点(i)〜(iii)の点を要件とする樹脂組成物からなる層を含む積層体とすることで、低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性などの性能に優れ、かつ加工性の改良された積層体が得られるという効果を奏すると認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1〜7に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
(2)本件請求項1に係る発明の刊行物9〜12に記載された発明からの容易性について(=申立人Bの申立理由(1)について)
本件請求項1に係る発明と刊行物9の実施例8とを対比すると、上記「5.特許法第29条第1項違反について」「(3)本件請求項1に係る発明と刊行物9(特開昭59-133238号公報)に記載された発明との対比・検討」で述べたように、本件請求項1に係る発明と刊行物9に記載された発明を対比すると、上記5.(3)に記載の相違点(i)〜(iii)がある。
刊行物10には、三井石油化学工業株式会社製のポリオレフィン系樹脂改質材タフマーについて記載され、タフマーAは、エチレン-αオレフィン共重合体であって、主な用途は、に押出コーテイングがあること、刊行物11には、Cp2ZrMe2/MAO系触媒を用い、エチレン-プロピレン共重合やエチレン-プロピレン-ジエン共重合を行うと、V触媒を用い工業的に製造されている共重合体に匹敵する基礎物性を示すポリマーが高い活性で得られること、刊行物12には、延伸ポリプロピレンフィルム上に、接着層を介して、エチレン・α-オレフインコポリマー(三井石油化学社製タフマー)と低密度ポリエチレン(三井ポリケミカル社製ミラソン)とのブレンド樹脂層を押出コーテイング法により設け、さらにその上に非イオン性界面活性剤を混練したポリプロピレン層を積層してなる食品包装用防曇性フイルムが記載されているにすぎず、いずれにも、相違点(i)〜(iii)については開示されていない。
本件明細書の比較例1〜19と実施例1〜21、23との対比からすると、本件請求項1に係る発明は、請求項1で規定するようなエチレン-α-オレフィン共重合体及び高圧法低密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物、すなわち、相違点(i)〜(iii)の点を要件とする樹脂組成物からなる層を含む積層体とすることで、低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性などの性能に優れ、かつ加工性の改良された積層フィルムが得られるという効果を奏すると認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物9〜12に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
(3)本件請求項2及び3に係る発明の刊行物1〜7、9〜13に記載された発明からの容易性について
本件請求項2及び3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定するものであるから、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由により、刊行物1〜7、9〜13に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるとはいえない。
7.特許法第36条の要件違反について(=申立人Aの申立理由(4)について)
本件明細書の実施例1及び14では、LLDPEの製造について、特開昭61-130314号公報を引用して、エチレン-ヘキセン-1共重合体(成分A)製造について、具体的に記載(段落0041、0051)し、また、エチレン重合体(成分B)の製造についても、高圧法低密度ポリエチレンの製造を具体的に記載(段落0042、0052)している。そして、この実施例の記載を参考にすれば、実施例1、14以外の他の実施例、比較例において使用する、種々のLLDPE及びLDPEの具体的製造条件は、当業者が容易に選定できることと認められる。
したがって、本件は、実施例及び比較例で使用する種々のLLDPE及びLDPEの具体的製造条件の開示に関して、明細書の記載に不備があるとはいえない。
VI.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由と証拠によっては、本件請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
積層体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 成分A:メタロセン触媒を用いて製造され下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体を50〜99重量%:
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;及び
成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレンを1〜50重量%:
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3
(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有し、
MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]
を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体。
【請求項2】 前記樹脂組成物が、MFRが8〜20g/10分;密度が0.89〜0.912g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.5〜2.0;MTが1.5g以上であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]
を満足するものである請求項1記載の層を含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム、特に、加工性が改良され、低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性が優れているラミネート積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ラミネート用フィルムとして用いられてきたものは、ラジカル開始剤を使用し、高温・高圧下でエチレンを重合することによって得られた高圧法低密度ポリエチレン(以下単に「LDPE]と略記する。)であった。このLDPEは成形時に安定な膜が得られ、かつ高速加工性に優れているが、その反面低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性に劣るものであった。このため、該LDPEの代替材料として、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等が用いられているが、このようなEVAは低温ヒートシール性に優れているが、LDPEの他の欠点であるヒートシール強度やホットタック性について改良することができず、しかも、ラミネート加工時の通常の成形温度である280℃付近での熱安定性にも欠けているので、ラミネート加工時に分解されて特有の臭いを発生させるという問題点もあった。
【0003】
その後、チーグラー触媒を用いて中圧法、例えば特公昭56-18132号公報等に記載される方法で製造されるエチレンとα-オレフィンとの共重合体、いわゆる線状低密度ポリエチレン(以下単に「LLDPE」と略記する。)が出現した。しかし、このLLDPEはヒートシール強度、ホットタック性、耐衝撃強度等に優れ、LDPEの上記欠点を改良することができる性能を有しているが、加工性に大きな問題を抱えていた。すなわち、このLLDPEは従来のLDPEと比較して、押出機内での剪断粘度が高いために樹脂圧力が大きくなって高速加工が難しくなったり、押出機の所要動力が著しく増大したりするという欠点があった。また、溶融張力が小さいために膜の厚みや幅に斑ができて実用に供することができないとの欠点もあった。しかし、これらの欠点は特開昭58-194935号公報等に記載されているLLDPEとLDPEとをブレンドする技術によって改良できることが提案された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなブレンドによる改良技術によって加工性を満足させることができる材料は、逆に低温ヒートシール性、ヒートシール強度、ホットタック性などが不足となりがちで、これらの性能と加工性のバランスの良好な材料の開発が望まれていた。一方、近年、特開昭58-19309号公報等に記載されている新しい触媒を使用することによって、従来のLLDPEよりも分子量分布、組成分布の狭い特殊な材料が得られるようになったことから、本発明者らは、この特殊なLLDPEを押出ラミネート用材料として適用するために検討を行なったところ、上記の低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性の性能については従来のLLDPEよりも格段に良好なものとなるが、LLDPEの欠点である加工性の不良が従来のものより大幅に悪化してしまって、より一層バランスの悪い材料となってしまうことが判明した。本発明の目的は、この様な優れた性能を保ちながら加工性を改良する、上記従来の材料では達成されていない低温ヒートシール性、ヒートシール強度及びホットタック性などの性能に優れ、かつ、加工性の改良されたフィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いて製造されたLLDPEと特殊なLDPEとからなり、特定の物性を有する樹脂組成物により、上記本発明の目的が達成されうるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体50〜99重量%と、MFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%とからなり、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3、Q値が3〜6,;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり;且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]
を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体である。
【0006】
【発明の実施の形態】
[1] 構成成分
(1)メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)
(a) 性状
本発明のフィルムの成形原料となる樹脂組成物を構成する成分Aのエチレン・α-オレフィン共重合体は、以下の▲1▼〜▲5▼の物性を示すものであることが好ましい。
【0007】
▲1▼ MFR
本発明にて用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体は、JIS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow Rate:溶融流量)が2〜30g/10分、好ましくは5〜25g/10分、特に好ましくは10〜22g/10分、最も好ましくは13〜20g/10分の物性を示すものである。該MFRが上記範囲より大であると成膜が不安定となる。また、MFRが上記範囲より小さすぎると成形時に膜切れが起こる。
【0008】
▲2▼ 密度
本発明にて用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体は、JIS K7112による密度が0.935g/cm3以下、好ましくは0.87〜0.92g/cm3、特に好ましくは0.88〜0.913g/cm3、最も好ましくは0.89〜0.91g/cm3の物性を示すものである。該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度があまりに小さすぎると、フィルム表面にベタつきが生じ実用性に供し得なくなり、下限は通常0.86g/cm3程度である。
【0009】
▲3▼ 温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線のピーク温度
本発明にて用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体は、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fractionation)によって得られる溶出曲線が以下に記載のものが好ましい。その最大ピーク温度が20〜85℃、特に好ましくは30〜75℃、最も好ましくは40〜70℃であり、かつ、この最大ピークの[ピークの高さ]/[ピークの1/2の高さにおける幅](H/W)が1以上、好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜15、最も好ましくは1〜10の物性を示すものである。該溶出曲線の最大ピーク温度が上記温度を超える場合は低温ヒートシール性が不良となるので実用性がない。上記H/Wが上記の値未満の場合はベタツキ成分が多くなり、経時的にヒートシール性が不良となるので実用性がない。
【0010】
温度上昇溶離分別による溶出曲線の測定
温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による測定は、「Journal of Applied Polymer Science,Vol26,4217-4231(1981)」または「高分子討論会予稿集2P1C09(1985年)」に記載されている原理に基づき、以下のようにして行われる。TREF測定の原理は、まず、測定の対象とするポリマーを溶媒中で完全に溶解する。その後、冷却して不活性担体表面に薄いポリマー層を形成させる。かかるポリマー層は結晶しやすいものが内側(不活性担体表面に近い側)に、結晶しにくいものが外側に形成されてなるものである。次に、温度を連続又は段階的に上昇させると、低温度段階では対象のポリマー組成中の非晶部分すなわちポリマーの持つ短鎖分岐の分岐度の多いものから溶出し、温度が上昇するとともに徐々に分岐度の少ないものが溶出し、最終的に分岐のない直鎖状の部分が溶出し測定は終了するのである。かかる各温度での溶出成分の濃度を検出し、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフによってポリマーの組成分布を見ることができるものである。
【0011】
▲4▼ 積分溶出量
上記TREFの測定において、各溶出温度における溶出物の重量分率を積算して求めた積分溶出量が、溶出温度10℃のとき10%以下であり、90℃のとき90%以上であること、好ましくは溶出温度20℃のとき10%以下であり、90℃のとき95%以上であること、特に好ましくは溶出温度20℃のとき5%以下であり、90℃のとき97%以上であることである。
【0012】
▲5▼ Q値
このエチレン・α-オレフィン共重合体は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)によって求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が4以下、好ましくは3以下、特に好ましくは2.5以下の物性を示すものが好ましい。該Q値が上記範囲より大であると、フィルム外観が悪化してくる傾向にある。
【0013】
(b) エチレン・α-オレフィン共重合体の製造
このような線状低密度ポリエチレンの製造法は、特開昭58-19309号、同59-95292号、同60-35005号、同60-35006号、同60-35007号、同60-35008号、同60-35009号、同61-130314号、特開平3-163088号の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420436号明細書、米国特許第5055438号明細書及び国際公開公報WO91/04257号明細書などに記載されている方法、すなわち、メタロセン触媒、特にメタロセン・アルモキサン触媒、または、例えば、国際公開公報WO92/01723号等に開示されているようなメタロセン化合物と以下に述べるメタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物からなる触媒を使用して、主成分のエチレンと従成分のα-オレフィンとを共重合させる方法である。上述のメタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる化合物とは、カチオンとアニオンのイオン対から形成されるイオン性化合物あるいは親電子性化合物であり、メタロセン化合物と反応して安定なイオンとなって重合活性種を形成するものである。
【0014】
このうちイオン性化合物は下記一般式(I)で表される。
一般式(I)
〔Q〕m+〔Y〕m-(mは1以上の整数)
Qはイオン性化合物のカチオン成分であり、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等があげられ、さらには、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオンなどもあげられる。これらのカチオンは特表平1-501950号公報などに開示されているようなプロトンを与えることができるカチオンだけではなく、プロトンを与えないカチオンでも良い。これらのカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、イニデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、また、銀イオン、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオン等があげられる。
【0015】
また、Yはイオン性化合物のアニオン成分であり、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオンなどがあげられ、具体的にはテトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5-(t-ブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5-ジ(t-ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5-ジ(t-ブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレート等があげられる。
【0016】
また、親電子性化合物としては、ルイス酸化合物として知られるもののうち、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなって重合活性種を形成するものであり、種々のハロゲン化金属化合物や固体酸として知られている金属酸化物などがあげられる。具体的には、ハロゲン化マグネシウムやルイス酸性無機酸化物などが例示される。
【0017】
α-オレフィン
ここでα-オレフィンとしては、炭素数3〜18のα-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチルペンテン-1、4-メチルヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。これらα-オレフィンの中で好ましくは炭素数4〜12、特に好ましくは6〜10の1種又は2種以上のα-オレフィン2〜60重量%と、エチレン40〜98重量%とを共重合させるのが好ましい。
【0018】
共重合
重合方法としては、気相法、スラリー法、溶液法、高圧イオン重合法等を挙げることができる。これらの中では溶液法、高圧イオン重合法が好ましく、特に高圧イオン重合法で製造することが好ましい。なお、この高圧イオン重合法とは、特開昭56-18607号、特開昭58-225106号の各公報に記載されている、圧力が100kg/cm2以上、好ましくは200〜2,000kg/cm2、温度が125℃以上、好ましくは130〜250℃、特に150〜200℃の反応条件下に行なわれるエチレン系重合体の連続的製造法である。
【0019】
(2)高圧法低密度ポリエチレン:LDPE(成分B)
(a) 性状
本発明の樹脂組成物を構成する成分Bの高圧法低密度ポリエチレンは、以下の▲1▼及び▲2▼の物性を有するものである。また、成分Bは下記▲3▼〜▲6▼の物性を示すものが好ましい。
▲1▼ MFR
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、JIS K7210によるMFR(メルトフローレート:Melt Flow rate:溶融流量)が0.1〜20g/10分、好ましくは1〜13g/10分、特に好ましくは2〜13g/10分の物性を示すものである。該MFRが上記範囲より大であると、成膜が不安定となる。また、MFRが上記範囲より小さすぎると、押出性やフィルム外観が不良となる。
【0020】
▲2▼ 密度
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、JIS K7112による密度が0.915〜0.93g/cm3、好ましくは0.916〜0.925g/cm3、特に好ましくは0.918〜0.922g/cm3の物性を示すものである。該密度が上記範囲より大であると、低温ヒートシール性が不良となる。また、密度が上記範囲より小さすぎると、フィルム表面にベタつきが多くなる。
【0021】
▲3▼ メモリーエフェクト(ME:Memory Effect:復元効果)
本発明にて用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、ME(3g)は、1.6以上、好ましくは1.8以上、特に好ましくは2.0以上、最も好ましくは2.3以上の物性を示すものが好ましい。該MEが上記値より小さすぎると成膜が不安定となり好ましくない。なお、上記ME(3g)の測定は、JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分に設定して、以下のように実施される。装置にサンプルを充填し、ピストンのみを乗せ、6分後に規定の押出速度をかける。次に、エチルアルコールを入れたメスシリンダーをオリフィス直下に置き、真っ直ぐな押出物を採取する。採取した押出物の直径(D)をマイクロメーターで測定し、ダイスのオリフィン径をD0として、次式によりMEが求められる。
ME=D/D0
【0022】
▲4▼ メルトテンション(MT:Melt Tension:破断時溶融張力)
本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、MTが1.5g以上、好ましくは2.5g以上、特に好ましくは5g以上である。MTが小さすぎると、加工性の改良効果が少なくなるので、好ましくない。
【0023】
▲5▼ MEとMTの関係:本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレンは、ME(3g)とMTが以下の関係を有する。
ME≧[0.05×MT+1.3]、好ましくは
ME≧[0.05×MT+1.5]
この関係を満たさないと、加工性の改良効果が少なくなるので、好ましくない。
【0024】
▲6▼ Q値
この高圧法低密度ポリエチレンは、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)によって求められるQ値(重量平均分子量/数平均分子量)が5〜30、特に好ましくは7〜25、最も好ましくは10〜20の物性を示すものが好ましい。該Q値が上記範囲より大であると、フィルム外観が悪化してくる傾向にあるので好ましくない。また、Q値が上記範囲より小さすぎると、成膜が不安定となってくる傾向があるので好ましくない。
【0025】
(b)高圧法低密度ポリエチレンの具体例
このような高圧法低密度ポリエチレンは市販品の中から適宜選んで使用することができるが、中でも、反応温度220℃以上、反応圧力1,700kg/cm2以下でオートクレーブ法にて製造されたポリエチレンを使用するのが好ましい。
【0026】
[II] 成分Aと成分Bの量比
これら成分Aのエチレン・α-オレフィン共重合体と成分Bの高圧法低密度ポリエチレンとの配合割合は、成分Aが50〜99重量%で成分Bが1〜50重量%、好ましくは成分Aが55〜95重量%で成分Bが5〜45重量%、特に好ましくは成分Aが60〜85重量%で成分Bが15〜40重量%である。上記成分Bの配合割合が上記範囲よりも少なすぎると加工性改良効果が不十分となる。また、上記成分Aの配合割合が上記範囲よりも少なすぎるとヒートシール性、ホットタック性等が不良となる。
【0027】
[III] 樹脂組成物の製造
(1) 配合
本発明のラミネート用樹脂組成物は、通常の樹脂組成物の製造方法と同様の方法で成分Aのエチレン・α-オレフィン共重合体と成分Bの高圧法低密度ポリエチレンとを配合することによって製造することができる。具体的には、成分Aと成分Bとを押出機、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー等を用いて溶融、混練し、ラミネート用樹脂組成物が得られる。該樹脂組成物は通常に行なわれている方法、例えば、押出機によりペレット状とするのが普通である。
【0028】
(2) その他の添加剤
本発明の樹脂組成物には、一般に樹脂組成物用として用いられている補助添加成分、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤等を配合しても良い。
【0029】
(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる樹脂組成物は、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であるものでなけらばならない。MFRが上記範囲より大であると製膜が不安定になり、上記範囲より小さいと押出し性、延展性が不良となり好ましくない。密度が上記範囲より大であると低温ヒートシール性が不良となり、上記範囲より小さいとフィルム表面がベタつくため好ましくない。MEが上記範囲より大であると延展性が不良となり、上記範囲より小さいとネックインが不良となりので好ましくない。MTが上記範囲より小であると加工性の改良効果が少なくなるので好ましくない。またQ値については、3〜6、特に好ましくは3.0〜5.2であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]
を満足する。
【0030】
[IV] 成形加工
上記樹脂組成物からなるペレツトを用いて成形加工して本発明の積層体を構成する層に用いるフィルムが製造される。このようなフィルムの製造方法としては、慣用の方法を採用することができる。例えば、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、Tダイフィルム成形、水冷インフレーション等が挙げられる。本発明の積層体を構成する層に用いるフィルムは、ドライラミネート法、押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等により、各種基材に押出コーティング或いは基材と共押出することによって、ラミネートされた各種包装用積層体(フィルム)を得ることができる。特に、押出ラミネート法により基材にラミネートして、ラミネート積層体(フィルム)とすることができる。また、各種基材とシーラント基材とのサンドイッチラミネート基材として使用することもできる。
【0031】
上記各種基材としては、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、フィルムとすることができる高分子重合体、例えば、高密度ポリエチレン、中、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリー1-ブテン、ポリ-4-メチルペンテン-1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例及び比較例よりなる実験例を記載し、本発明を更に具体的に説明する。
[I] 物性の測定方法と評価方法
実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。
(1) 物性の測定
(a) MFR:JIS K7210に準拠(190℃,2.16kg荷重)
(b) 密度:JIS K7112に準拠
(c) ME(Memory Effect:復元効果):JIS K7210で使用されるメルトインデクサーを使用し、測定条件をシリンダー温度240℃、定速押出量3g/分に設定して行なった。装置にサンプルを充填し、ピストンのみを乗せ、6分後に規定の押出速度をかける。次に、エチルアルコールを入れたメスシリンダーをオリフィス直下に置き、真っ直ぐな押出物を採取する。採取した押出物の直径(D)をマイクロメーターで測定し、ダイスのオリフィス径をD0として次式によりMEを求める。ME=D/D0
【0033】
(d) 溶出曲線の測定:本発明における温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)による溶出曲線のピークは、一度高温にてポリマーを完全に溶解させた後に冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、次いで、温度を連続又は段階的に昇温して、溶出した成分を回収し、その濃度を連続的に検出して、その溶出量と溶出温度によって描かれるグラフ(溶出曲線)のピークで、ポリマーの組成分布を測定するものである。
【0034】
該溶出曲線の測定は、以下のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(三菱化学(株)製CFC T150A)を使用し、付属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、試料を溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Exclusion Chromatography:SEC)をオンラインで接続した装置である。
【0035】
まず、測定すべきサンプル(共重合体)を溶媒(o-ジクロロベンゼン)を用い、濃度が4mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入する。以下の測定は設定条件に従って自動的に行われる。サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置付属のステンレス製カラム)に0.4ml注入される。次に、該サンプルを1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、上記不活性担体にコーティングさせる。このとき、高結晶性成分(結晶しやすいもの)から低結晶性成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。TREFカラムが0℃で更に30分間保持された後、0℃の温度で溶解している成分2mlが、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工社製 AD80M/S 3本)へ注入される。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持される。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度は以下の温度で段階的に昇温される。
0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79、82,85,88、91,94,97,100,102,120,140℃
【0036】
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液は、装置付属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度が測定され(波長3.42μ,メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムが得られる。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理される。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算される。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算される。計算結果の作図はプリンターに出力される。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行った。次に、この微分溶出曲線のピーク高さ(mm)を1/2高さの幅(mm)で除した値をH/Wとした。
【0037】
(e) Q値:サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)を用いて、以下に示す測定条件下で測定し、重量平均分子量/数平均分子量よりQ値を求めた。単分散ポリスチレンで、ユニバーサルな検量線を作成し、直鎖のポリエチレンの分子量として計算した。
機 種:Waters Model 150C GPC
溶 媒:o-ジクロロベンゼン
流 速:1ml/分
温 度:140℃
測定濃度:2mg/ml
注入量 :200μl
カラム :昭和電工(株)製 AD80M/S 3本
【0038】
(2) 評価方法
(a) サージング(surging):押出ラミネート成形時、基材をクラフト紙とし、クラフト紙上に厚み20μmでサンプルを押出ラミネートする。サージングは、押出ラミネートしたフィルムの幅をLとするとき、L/2が1.5mm未満で変動するときを良好、1.5mm以上で変動するときを不良とする。
(b) MT(Melt Tension:破断時溶融張力):東洋精機製キャピログラフ1-Bにて、試験温度190℃、押出速度1cm/分、押し出された溶融樹脂を引き取る際の引き取り速度を徐々に速くして、樹脂フィラメントが破断した時の応力とする。なお、使用したダイ径は、長さ8.00mm、内径2.095mm、外径9.50mmである。
【0039】
(c) 樹脂圧力:押出ラミネート時、押出機のダイヘッドに取り付けた樹脂圧力計によって測定した。
(d) ネックイン:サージング評価と同様に押出ラミネート成形をした際、基材をクラフト紙として、該クラフト紙上にサンプルを20μmの厚みで押出ラミネートする。ネックインはダイスの有効幅をL0、クラフト紙上にコーティングされたフィルムの幅をLとするときの、L0-Lより求められる。
【0040】
(e)ヒートシール強度:東洋精機製熱盤式ヒートシーラーにて、シール温度110℃、シール圧力2kg/cm2、シール時間1秒でヒートシールした後に、引張試験機にてヒートシール強度を測定する。
(f)3kg荷重ヒートシール温度:上記ヒートシール強度を測定し、そのヒートシール強度が3kg得られる温度を3kg荷重ヒートシール温度とする。
(g)ホットタック性:ヒートシール条件として、シールバー寸法200mm×30mm、シール圧力1kg/cm2、シール時間0.5秒、荷重50g、チャック圧力1kg/cm2、シール温度は90℃から150℃まで、5℃おきとしてヒートシールし、ヒートシール後、50g荷重で負荷された状態でヒートシール部剥離が完全に止まるまで放置し、剥離した長さを1mm単位まで読み取る。剥離距離が1mm〜2mmであった温度幅をホットタック性とする。
(h)破断時引取速度:東洋精機製キャピログラフ1-Bにて、試験温度190℃、押出速度1cm/分で、押出された溶融樹脂を引取る際の引取速度を徐々に速くして、樹脂フィラメントが破断したときの最大引取速度(m/分)を測定した。なお、使用したダイ径は、長さ8.00mm、内径2.095mm、外径9.50mmである。
【0041】
[II] 実験例
実施例1 エチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)の製造
触媒の調製は、特開昭61-130314号公報に記載された方法で実施した。すなわち、錯体エチレン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド2.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対し1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製し、以下の方法で重合を行なった。内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1-ヘキセンとの混合物を1-ヘキセンの組成が80重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,600kg/cm2に保ち、160℃で反応を行なった。反応終了後、MFRが18g/10分、密度が0.898g/cm3、Q値が1.9、TREF溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が50℃、該ピーク温度のH/Wが1.5のエチレン・α-オレフィン共重合体(1-ヘキセン含量22重量%)を得た。
【0042】
高圧法低密度ポリエチレン(成分B)の製造
反応温度260℃、反応圧力1,500kg/cm2で、オートクレーブ法にて製造した。MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm3、MEが2.4、Q値が10の高圧法低密度ポリエチレンを得た。
【0043】
樹脂組成物の製造
表1に記載される通り、上記の線状低密度ポリエチレン(成分A)と高圧法低密度ポリエチレン(成分B)とを、成分A:成分B=75:25重量%の割合で配合し、40mmφ単軸押出機で160℃の成形温度にて造粒して、該成分Aと成分Bとからなるペレット状の樹脂組成物を得た。
【0044】
評価
このペレット状の樹脂組成物を、40mmφ単軸押出機を用いて280℃の成形温度で肉厚30μmのフィルム状に押し出し、これを幅360mmのTダイより、予め肉厚30μmのLDPEと厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムとがラミネートされた積層体のLDPE側上に、押出ラミネートコーティングした。このラミネート三層フィルムを用いて、ヒートシール強度、3kg荷重ヒートシール温度、ホットタック性を測定した。また、同様の方法で、基材に二軸延伸ナイロンフィルムの代わりにクラフト紙を用い、肉厚20μmにて押出ラミネートコーティングしたラミネートフィルムのネックインの測定及びサージング評価を行なった。得られた評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例2〜13、23及び比較例1〜8、19
成分A及び成分Bとして、表1に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例1と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表1に示す通りである。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
実施例14 エチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)の製造
すなわち、錯体エチレン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド21.0ミリモルに、東洋ストファー社製メチルアルモキサンを上記錯体に対し1,000モル倍加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製し、以下の方法で重合を行なった。内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器にエチレンと1-ヘキセンとの混合物を1-ヘキセンの組成が80重量%となるように供給し、反応器内の圧力を1,600kg/cm2に保ち、180℃で反応を行なった。反応終了後、MFRが18g/10分、密度が0.890g/cm3、Q値が2.1、TREF溶出曲線のピークが1つであり、そのピーク温度が50℃、該ピーク温度のH/Wが1.5であり、ピーク以外に溶出量の存在を示す曲線がみられるエチレン・α-オレフィン共重合体(1-ヘキセン含量22重量%)を得た。
【0052】
高圧法低密度ポリエチレン(成分B)の製造
反応温度260℃、反応圧力1,700kg/cm2で、オートクレーブ法にて製造した。MFRが4g/10分、密度が0.92g/cm3、MEが2.5、Q値が10の高圧法低密度ポリエチレンを得た。
【0053】
樹脂組成物の製造
表2に記載される通り、上記のエチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)と高圧法低密度ポリエチレン(成分B)とを、成分A:成分B=75:25重量%の割合で配合し、40mmφ単軸押出機で160℃の成形温度にて造粒して、エチレン・α-オレフィン共重合体(成分A)と高圧法低密度ポリエチレン(成分B)とからなるペレット状の樹脂組成物を得た。
評価
得られた樹脂組成物から製造した積層物についての評価は実施例1と同様にして行った。その結果を表2に示す。
【0054】
実施例15〜21及び比較例9〜18
成分A及び成分Bとして、表2に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例14と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表2に示す通りである。
【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
【表9】

【0059】
【発明の効果】
このような本発明の積層体は、従来のLLDPEよりも加工性が改良され、かつ従来の成形材料に比べて低温ヒートシール性、ヒートシール強度、ホットタック性に著しく優れるといった効果が奏されるために、スナック、インスタントラーメン等の乾燥食品、味噌、漬物、スープ、ジュース等の水物食品、冷凍食品、畜肉、ハム等の食品包装・充填用フィルムや醤油、ソース等のミニパック;バッグインボックス、輸液バッグ等の医薬品包装・充填用フィルム;シャンプー、化粧品等のミニパック;カセットテープ等の雑貨品の包装・充填用フィルム;各種蓋材など、広範囲な用途における各種包装用又は充填用として用いた場合極めて有用なものである。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a.
特許請求の範囲の請求項1の「成分A:メタロセン触媒を用いて製造され下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体を50〜99重量%:
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の最大ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;及び成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレンを1〜50重量%:
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3
(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有し、
MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなる層を含む積層体。」を、
「成分A:メタロセン触媒を用いて製造され下記に示す(a)〜(c)の性状を有するエチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとの共重合体を50〜99重量%:
(a)MFRが2〜30g/10分
(b)密度が0.935g/cm3以下
(c)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線のピークが1つであり;該ピーク温度が20〜85℃であり;該最大ピークの高さをHとし、該最大ピークの高さの1/2の幅をWとしたときのH/Wの値が1以上である;及び
成分B:下記に示す(a’)、(b’)、(c’)および(d’)の性状を有する高圧法低密度ポリエチレンを1〜50重量%:
(a’)MFRが0.1〜20g/10分
(b’)密度が0.915〜0.93g/cm3
(c’)メモリーエフェクト(ME:Memory Effect)が1.6以上
(d’)メルトテンション(MT:Melt Tension)が1.5g以上
を含有し、
MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり;且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体。」に訂正する。
訂正事項b.
特許請求の範囲の請求項2の「前記樹脂組成物のMEとMTの関係が、
ME≧[0.2×MT+1]
を満足するものである請求項1記載の層を含む積層体。」を、「前記樹脂組成物が、MFRが8〜20g/10分;密度が0.89〜0.912g/cm3;Q値が3〜6;ME(3g)が1.5〜2.0;MTが1.5g以上であり;且つMEとMTの関係が、
ME≧[0.2×MT+1]
を満足するものである請求項1記載の層を含む積層体。」に訂正する。
訂正事項c.
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
訂正事項d.
明細書の段落【0005】欄の「【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いて製造されたLLDPEと特殊なLDPEとからなり、特定の物性を有する樹脂組成物により、上記本発明の目的が達成されうるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体50〜99重量%と、MFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%とからなり、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3、;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上である樹脂組成物からなる層を含む積層体である。」を、「【課題を解決するための手段】
[発明の概要]
本発明者らは、上記問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の触媒を用いて製造されたLLDPEと特殊なLDPEとからなり、特定の物性を有する樹脂組成物により、上記本発明の目的が達成されうるとの知見に基づき本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体50〜99重量%と、MFRが0.1〜20g/10分;密度が0.915〜0.93g/cm3である高圧法低密度ポリエチレン1〜50重量%とからなり、MFRが5〜25g/10分;密度が0.87〜0.932g/cm3、;Q値が3〜6;ME(3g)が1.2〜2.3;MTが1.0g以上であり、;且つMEとMTの関係がME≧[0.2×MT+1]を満足する樹脂組成物からなる層を含む積層体である。」に訂正する。
訂正事項e.
明細書の段落【0029】欄の「(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる樹脂組成物は、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であるものでなけらばならない。MFRが上記範囲より大であると製膜が不安定になり、上記範囲より小さいと押出し性、延展性が不良となり好ましくない。密度が上記範囲より大であると低温ヒートシール性が不良となり、上記範囲より小さいとフィルム表面がベタつくため好ましくない。MEが上記範囲より大であると延展性が不良となり、上記範囲より小さいとネックインが不良となりので好ましくない。MTが上記範囲より小であると加工性の改良効果が少なくなるので好ましくない。またQ値については、特に制限されないが、好ましくは3〜6、特に好ましくは3.0〜5.2である。」を、「(3) 樹脂組成物の物性
このようにして得られる樹脂組成物は、MFRが5〜25g/10分、好ましくは8〜20g/10分であり;密度が0.87〜0.932g/cm3、好ましくは0.89〜0.912g/cm3であり;ME(3g)が1.2〜2.3、好ましくは1.5〜2.0であり;MTが1.0g以上、好ましくは1.5g以上であるものでなけらばならない。MFRが上記範囲より大であると製膜が不安定になり、上記範囲より小さいと押出し性、延展性が不良となり好ましくない。密度が上記範囲より大であると低温ヒートシール性が不良となり、上記範囲より小さいとフィルム表面がベタつくため好ましくない。MEが上記範囲より大であると延展性が不良となり、上記範囲より小さいとネックインが不良となりので好ましくない。MTが上記範囲より小であると加工性の改良効果が少なくなるので好ましくない。またQ値については、3〜6、特に好ましくは3.0〜5.2であり;且つMEとMTの関係が
ME≧[0.2×MT+1]
を満足する。」に訂正する。
訂正事項f.
明細書の段落【0045】欄の「実施例2〜13、22〜23及び比較例1〜8
成分A及び成分Bとして、表1に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例1と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表1に示す通りである。」を、「実施例2〜13、23及び比較例1〜8,19
成分A及び成分Bとして、表1に記載される物性を示すものを用いた以外は、実施例1と同様に調製して樹脂組成物を得た。これを成形し、評価した。得られた評価結果を表1に示す通りである。」に訂正する。
また、明細書の段落【0050】欄の表1のつづきの「実施例22」を「比較例19」に訂正する。
異議決定日 2002-07-24 
出願番号 特願平11-225379
審決分類 P 1 651・ 161- YA (B32B)
P 1 651・ 4- YA (B32B)
P 1 651・ 121- YA (B32B)
P 1 651・ 113- YA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 芦原 ゆりか三谷 祥子  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 淑久
加藤 志麻子
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3142272号(P3142272)
権利者 日本ポリケム株式会社
発明の名称 積層体  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 牧村 浩次  
代理人 鈴木 俊一郎  

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