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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C07C 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C07C 審判 全部申し立て 1項2号公然実施 C07C 審判 全部申し立て 1項1号公知 C07C 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C07C 審判 全部申し立て 2項進歩性 C07C |
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管理番号 | 1067428 |
異議申立番号 | 異議2000-73767 |
総通号数 | 36 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-09-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-10-04 |
確定日 | 2002-09-09 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3029618号「フッ素アルコ―ルの製造法」の請求項1ないし20に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3029618号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3029618号の請求項1ないし20に係る発明についての出願は、平成11年2月25日(優先権主張平成10年12月28日 日本)に出願され、平成12年2月4日にその特許権の設定登録がされ、その後和田浩司、旭硝子株式会社より特許異議の申立て(以下、それぞれ「異議1」、「異議2」という。)がされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月13日に訂正請求がされ(その後取り下げ)、特許権者及び異議申立人双方に審尋がされ、双方から回答書が提出され、平成14年6月14日に再度の取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年7月22日に訂正請求がされたものである。 2.訂正の適否について (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「ラジカル発生源の存在下に反応させて下記式(I)」とあるのを「ラジカル発生源の存在下に反応させて蒸発残分が50ppm以下である下記式(I)」と訂正する。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「で表されるフッ素アルコールを製造する方法において、」とあるのを「で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを製造する方法において、」と訂正する。 ウ.訂正事項c 特許請求の範囲の請求項13の記載について、「フッ素アルコール。」とあるのを「情報記録媒体製造用のフッ素アルコール。」と訂正する。 エ.訂正事項d 特許請求の範囲の請求項20の記載について、「請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された下記式(1)」とあるのを「請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された蒸発残分が50ppm以下である下記式(1)」と訂正する。 オ.訂正事項e 特許請求の範囲の請求項20の記載について、「で表されるフッ素アルコール」(2箇所)とあるのを「で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 ア.訂正事項a及びdは、特許請求の範囲の請求項5、13あるいは段落【0013】の記載に基づいて、フッ素アルコールの蒸発残分の上限を数値で限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。 イ.訂正事項b、c、eは、特許請求の範囲の請求項19あるいは段落【0001】、【0004】の記載に基づいて、フッ素アルコールの用途を情報記録媒体製造用に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。 そして、上記訂正事項a〜eは、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 上記2.(3)に記載されたとおり、上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし20に係る発明(以下、「本件発明1ないし20」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の1ないし20に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】メタノール及びテトラフルオロエチレン若しくはヘキサフルオロプロピレンをラジカル発生源の存在下に反応させて蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを製造する方法において、反応液を塩基の存在下に蒸留もしくは反応終了後の反応液を塩基と接触させた後蒸留する工程を有することを特徴とする式(1)で表されるフッ素アルコールの製造法。 【請求項2】塩基のpKbが2以下である請求項1に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項3】塩基がアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ金属水酸化物である請求項1または2に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項4】塩基がナトリウムアルコラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項5】蒸留で得られた式(1) H(CFR1F2)nCH2OH(1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が50ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項6】式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が25ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項7】式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が10ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項8】ラジカル発生源が反応開始剤、UV及び熱からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項9】ラジカル発生源が、反応温度における半減期が約10時間となる反応開始剤である請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項10】ラジカル発生源が過酸化物である、請求項8または9に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項11】ラジカル発生源がパーブチルDまたはパーブチルIまたはパーブチルOである請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項12】ラジカル発生源と共に受酸剤を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項13】蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール。 【請求項14】蒸発残分が25ppm以下である請求項13に記載のフッ素アルコール。 【請求項15】蒸発残分がl0ppm以下である請求項13または14に記載のフッ素アルコール。 【請求項16】メタノール中での吸光度(190〜300nm)が0.2abs以下である請求項13〜15のいずれかに記載のフッ素アルコール。 【請求項17】メタノール中での吸光度(205nm)が0.1abs以下である請求項13〜16のいずれかに記載のフッ素アルコール。 【請求項18】メタノール中での吸光度(205nm)が-0.2abs以下である請求項17に記載のフッ素アルコール。 【請求項19】請求項13〜18のいずれかに記載のフッ素アルコールを用いて製造された基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体の製造のための使用。 【請求項20】請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール、或いは、請求項13〜18のいずれかに記載の下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを用いて製造された、基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体。」 (2)申立て理由の概要 異議1の申立人和田浩司は、 ア.訂正前の本件の請求項1ないし18に係る発明は、本件出願前頒布された甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明であるか、あるいは、 イ.訂正前の本件の請求項1ないし20に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1ないし20に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであり、また、 ウ.訂正前の本件明細書は、特許法第36条第4項又は第6項に規定する要件を満たしていないと主張している。 甲第1号証:特公昭62-42893号公報 甲第2号証:特開平4-8585号公報 甲第3号証:特開平8-291091号公報 甲第5号証:特開平7-137448号公報 甲第6号証:米国特許第2,559,628号明細書 甲第7号証:J.Am.Chem.Soc.,Vol.83(1961年)3142〜3147頁 参考資料:有機過酸化物、日本油脂株式会社、発行日不詳 異議2の申立人旭硝子株式会社は、 ア.訂正前の本件の請求項13ないし15、19に係る発明は、本件出願前頒布された甲第1号証に記載された発明であるか、または、 イ.訂正前の本件の請求項13ないし15に係る発明は、甲第5号証により、公知または公用の発明であるか、あるいは、 ウ.訂正前の本件の請求項1ないし20に係る発明は、上記甲第1号証〜甲第4号証、甲第6号証〜甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1ないし20に係る特許は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであると主張している。 甲第1号証:特開平4-8585号公報 甲第2号証:特開昭54-154707号公報 甲第3号証:特開平2-188540号公報 甲第4号証:特開平5-339183号公報 甲第5号証:TFPOの納入仕様書 甲第6号証:特開平7-137448号公報 甲第7号証:1998年1月23日付けメチルシクロヘキサンの分析表 甲第8号証:特開平5-16529号公報 (3)当審の取消理由 当審の通知した取消理由は、異議1及び2の主張と同旨である。 (4)刊行物等の記載事項 当審が通知した取消理由で引用された刊行物等には次の事項が記載されている。 [刊行物の記載事項] 刊行物1(特開平4-8585号公報、異議1の甲第2号証、異議2の甲第1号証)には、 「1.99重量%以上の純度を有する下記の一般式(I): A-CH2OH (I) [ただし、AはF(CnF2n)またはH(CnF2n)であり、nは1乃至3の整数である]で表わされる弗素化アルコールを含む溶剤に色素を溶解して塗布液を調製した後、基板上に該塗布液を塗布乾燥することによりレーザーによる情報の書き込みが可能な記録層を形成することからなる情報記録媒体の製造方法。」(特許請求の範囲)、 「本発明の情報記録媒体の製造方法の好ましい態様は次の通りである。 1)上記溶剤が弗素化アルコールのみからなることを特徴とする上記記録媒体の製造方法。 2)上記弗素化アルコール中の上記弗素化アルコールより炭素原子数の多い弗素化アルコールの含有量が、上記弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であることを特徴とする上記情報記録媒体の製造方法。 3)上記弗素化アルコール中のアルデヒド類の含有量が、上記弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であることを特徴とする上記情報記録媒体の製造方法。 4)上記弗素化アルコール中の金属イオンの含有量が、重量で100ppm以下であることを特徴とする上記情報記録媒体の製造方法。」(第2頁右下欄7行〜第3頁左上欄2行)、「特に好ましくは、H-CF2-CF2-CH2OHである。本発明では99重量%以上の純度を有する弗素化アルコールを溶剤として用いることが必要である。通常の純度の低い弗素化アルコールは不純物を含んでおり、このような弗素化アルコールを用いて形成された色素記録層は、色素層形成時の色素、溶剤および塗布条件等の組合せによって結晶化が発生する場合がある。これは、以下の不純物が原因で起こると推定される。例えば、弗素化アルコール(2,2,3,3-テトラフロロ-1-プロパノール)は下記式のように製造される。 CF2=CF2+CH3OH→H-CF2-CF2-CH2OH この際、上記式で得られる-CF2-CF2-CH2OHで表わされる化合物以外に、これが高分子化したH-(CF2-CF2)m-CH2OHのmが2や3の化合物が副生する。また弗素化アルコールの酸化物であるアルデヒドが生成する。さらに使用した触媒あるいは製造容器等からのNiやFeなどの金属イオンが得られる弗素化アルコールに混入する。このように、得られる弗素化アルコールには、目的の化合物より炭素原子数の多い分子量の大きい化合物また場合によっては分子量の小さい化合物、アルデヒド類、カルボン酸そして金属イオンなどが含まれている。従って、本発明で使用される弗素化アルコールは、アルデヒド類や金属イオンを実質的にあるいはほとんど含まれていないことが望ましいことから、金属イオンは弗素化アルコール全体に対して重量で100ppm以下が好ましく、アルデヒド類は0.5重量%以下が好ましい。さらに目的の化合物より炭素原子数の多い弗素化アルコールを含んでいないことが望ましいことから、一般に一般式(I)により表わされる弗素化アルコールより炭素原子数の多い弗素化アルコールの含有量が、弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であることが好ましく、特に含んでいないことが好ましい。」(第8頁右下欄5行〜第9頁右上欄2行)と記載されている。 刊行物2(特公昭62-42893号公報、異議1の甲第1号証、異議2の甲第2号証に対応する公告公報)には、 「1 テトラフルオロエチレンとメタノールのバッチ式テロメル化反応によって一般式 H(CF2CF2)nCH2OH で示されるフルオロアルカノールを製造するにあたり、反応系内にテトラフルオロエチレンを連続的に導入し、且つ反応をテトラフルオロエチレンとメタノールの分圧比30/1〜1/5ならびに第1図中A,B,C,D,Eで囲まれた範囲内の全反応圧力および温度条件下で行なうことにより、前記一般式においてn≧5の生成物の生成を抑制し、n≦4の生成物を主としたテロマー混合物を得ることを特徴とする、テトラフルオロエチレンのテロメル化反応方法。」(特許請求の範囲の請求項1、第1図)、「本発明方法を実施するには、通常、撹拌機付きオートクレーブに所定量のメタノールと重合開始剤を入れ、容器内の空気を真空ポンプで排除してから所定の温度に加熱し、TFEを所定の圧力になるように逐次導入することによって、円滑且つ危険なくテロメル化反応を行うことができる。重合開始剤としてはラジカル発生剤であってTFEに対しテロゲン的に作用しないものなら何でもよいが、普通、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物あるいはジ-i-プロピルオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシドのような過酸化物が好適であり、テロメル化反応温度に応じて適宜選択、使用する。」(第6欄2〜14行)、「本発明の方法に従ってTFEとメタノールのテロメル化反応により有用なテロマーを得る場合、反応の進行につれて反応系内に生成蓄積する酸性物質を除くため、反応系内に受酸剤を存在せしめるのが望ましい。受酸剤としては、TFEのテロメル化反応を阻害せず酸を除きうる物質であれば何でもよいが、特にアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム)および亜鉛の酸化物、水酸化物および炭酸塩ならびに水酸化アンモニウムおよび炭酸アンモニウムのような無機化合物およびアルカリ金属などとメタノールあるいはH(CF2CF2)nCH2OHのアルコラートが好適である。酢酸ナトリウムのような有機弱酸塩も本発明の受酸剤として効果を有するが、酢酸などはそれ自身がTFEの重合におけるテロゲンとなり得るので、生成テロマーを不純化する恐れがあり、同様な意味でアルカリ金属のメタノールあるいはH(CF2CF2)nCH2OH以外のアルコラートもそのアルコラートがTFEのテロゲンとなるので生成テロマー中に微量の不純物を混入させる恐れがある。従って、それらの混入が特に問題にならない場合は本発明における受酸剤として使用されてよい。」(第7欄26行〜第8欄6行)、「実施例1 ・・・オートクレーブにメタノール800g(25モル)を入れ、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート4gを加える。オートクレーブを攪拌しながら真空ポンプでメタノールが沸騰する迄減圧した後、TFEを常圧になるまで加えてから、加熱する。内温が50℃に達した後、TFEを導入して反応を開始し、反応開始後、TFEを連続的に導入して、圧力を8kg/cm2に保持する。55分後にオートクレーブを室温まで冷却し、反応生成物を回収する。反応生成物から精留によってメタノールを除去した結果、テロマー混合物211gを得た。上記テロマー混合物をガスクロマトグラムで分析した結果、H(CF2CF2)nCH2OHの組成は次のとおりであった:n=1、21.5%(重量);n=2、38.2%;n=3、23.6%;n=4、10.5%;n=5、4.1%;n=6、1.3%;n=7、0.5%;n=8、0.3%。平均分子量は276.9であり、比較例に比してn≧5のテロマーの生成量が著しく少ないことが判った。」(第9欄20〜42行)と記載されている。 刊行物3(特開平8-291091号公報、異議1の甲第3号証)には、 「【請求項1】芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルとグリコールとをエステル交換反応する際に排出・回収される回収メタノールに、アルカリを加えて加熱した後、蒸留して蒸留メタノールとし、次いで該蒸留メタノールを活性炭で処理することからなる回収メタノールの精製方法。 【請求項2】芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルとグリコールとをエステル交換反応する際に排出・回収される回収メタノールに、アルカリを加えて加熱した後、蒸留して蒸留メタノールとし、次いで該蒸留メタノールを活性炭で処理することより得られるアセトアルデヒドの含有量が1ppm未満の精製メタノール。」(特許請求の範囲の請求項1、2)と記載されている。 刊行物5(特開平7-137448号公報、異議1の甲第5号証、異議2の甲第6号証)には、 「【請求項1】光透過性基板と、この光透過性基板の上に形成された記録膜と、この記録膜の上に形成された光反射膜と、この光反射膜の上に形成された保護膜とを備える光記録媒体において、前記記録膜が溶媒にpH6.0以上の2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(TFP)を用いた有機色素により形成されていることを特徴とする光記録媒体。 【請求項2】光透過性基板上に有機色素からなる記録膜を形成する記録膜形成工程と、該記録膜形成工程で形成された記録膜上に光反射膜を形成する光反射膜形成工程と、該光反射膜形成工程で形成された光反射膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程とを有する光記録媒体の製造方法において、前記記録膜形成工程で使用する有機色素の溶媒にpH6.0以上の2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(TFP)を用いることを特徴とする光記録媒体の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1、2)、「このような色素を主成分として含有する記録膜12は、例えば、スピンコート法等の常用手段により塗設される。有機色素の塗布に用いる溶媒には、pH6.0以上、好ましくはpH6.4以上である2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(TFP)が用いられる。このような2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(TFP)は、200〜250nm付近に吸収をもたないものである。」(段落【0018】、図6参照)と記載されている。 刊行物6(米国特許第2,559,628号明細書、異議1の甲第6号証)には、「4.テトラフルオロエチレンをメタノールと100℃から250℃の温度範囲で加熱することを包含し、該メタノールの該テトラフルオロエチレンとのモル比が1:1から10:1の範囲であり、該加熱が該テトラフルオロエチレンとメタノールの合計重量の0.001%から10%の範囲内の量で存在するジエチル過酸化物の下、1気圧から200気圧の圧力範囲で行なわれることを特徴とするフッ素含有有機アルコールを得るための方法。」(第11欄25〜36行(クレーム4))と記載されている。 刊行物7(J.Am.Chem.Soc.Vol83(1961年)3142-3147頁、異議1の甲第7号証)には、「水(90ml)を2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(TFP)450ml及び亜硫酸水素ナトリウム2.25gと混合する。濁った溶液を激しく振とうして24時間静置した後に、次表に示すように混合物を分留した。・・・全ての留分は二酸化硫黄を含有し、それはモレキュラーシーブ4Aで除去できたが、他の光吸収不純物が少量混入した。留分C、D、Eを一緒にして5.6gの水酸化ナトリウムと一緒に4時間還流した。・・・TFPを急速蒸留してから分留した。次の留分が得られた。・・・留分C及びDは分光分析用に極めて満足な溶媒であり、1865ÅのCary14と同じくらい薄いセル中で十分に用いられた。」旨(第3146頁右欄47行〜第3147頁左欄20行)記載されている。 刊行物8(特開平2-188540号公報、異議2の甲第3号証)には、 「(1)メタノールを主成分とし、アルデヒドその他の不純物を含む粗メタノール溶液から、精留によってメタノールを回収する方法において、該粗メタノール溶液に対して10〜60重量%の水を共存させるか又は該粗メタノール溶液のpHを7〜12に調整して精留する事を特徴とするメタノールの精製法。」(特許請求の範囲の請求項1)、「<発明の効果>本発明の方法によれば、アルデヒド含量の極めて低いメタノールを効率よく得ることができる。」(第2頁右下欄1〜3行)と記載されている。 刊行物9(特開平5-339183号公報、異議2の甲第4号証)には、 「【請求項1】アルデヒドを含有するアルコール溶液からアルコールを分離回収するアルコールの精製方法であって、下記の工程を含むアルコールの精製方法。 アルカリ処理工程:アルデヒドを含有するアルコール溶液に対し、該溶液100重量部あたり0.2〜5.0重量部のアルカリを添加混合することによりアルデヒドをアルドールに変換する工程 中和工程:アルカリ処理工程で得た混合液を中和する工程 蒸留工程:中和工程で得た中和液を、分離回収すべきアルコールより沸点が高いアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶媒の存在下、蒸留に付し、分離回収すべきアルコールを留出させる工程」(特許請求の範囲の請求項1)、「【発明の効果】以上説明したとおり、本発明により、アルデヒドを含有するアルコール溶液から高純度のアルコールを効率的に分離回収でき、かつ蒸留装置内に不溶分が蓄積せず、よって長期にわたって連続的な安定運転が可能であるという優れたアルコールの精製方法を提供することができた。」(段落【0024】)と記載されている。 刊行物10(特開平5-16529号公報、異議2の甲第8号証)には、 情報記録媒体および光情報記録方法に関し、「上記色素塗布液調製用の溶剤としては、・・・メチルシクロヘキサン・・・2、2、3、3-テトラフロロプロパノール等フッ素系溶剤などを挙げることができる。」(段落【0072】)と記載されている。 [その他の証拠] 参考資料1(有機過酸化物、日本油脂株式会社、発行日不詳、異議1の参考資料)は、有機過酸化物(商品名パーブチルO、I、D等)の特性値(分解温度に対する半減期、活性化エネルギー)を立証するためのものである。 書証1(TFPO納入仕様書、異議2の甲第5号証)には、「TFPOの納入仕様書、制定日1998年11月25日、品質規格;蒸発残分 wtppm 20以下 乾燥重量測定 商品名 TFPO 化学名 2,2,3,3-Tetrafluoro-1-propanol」との記載がある。 書証2(分析表、1998年1月23日、異議2の甲第7号証)には、「化学名 メチルシクロヘキサン、蒸発残分 最大0.005% 通常<0.005%」との記載がある。 (5)当審の判断 [本件の特定発明] 訂正後の明細書の段落【0004】の記載「本発明の目的は、蒸発残分やUV吸収成分などの不純物を実質的に含まない一般式(1)・・・で表されるフッ素アルコールおよびその製造法、該フッ素アルコールの・・・情報記録媒体の製造用溶剤としての用途並びに該フッ素アルコールを用いて製造された・・・記録媒体を提供することにある。」からみて、本件の特定発明は、フッ素アルコールの発明に係る本件発明13であるから、本件発明13〜18を最初に審理する。 [蒸発残分の定義] 本件明細書の段落【0014】には、「蒸発残分は、以下のようにして求めることができる。即ち、フッ素アルコールを40℃、5mmHgで濃縮したときの重量を測定し、HCF2CF2CH2OHに対するwt.ppmで表わす。」と記載がある。そして、HCF2CF2CH2OHで例示された記載から、本件発明で定義する他の2つのフッ素アルコールにも同1条件で適用できることは、自明である。また、蒸発残分の測定とは、本件発明のフッ素アルコールの残留がなくなる状態、言い換えれば、重量減少がなくなり、残存重量が一定の数値を示す状態にすることを意味するものである(平成13年7月19日付け回答書第2頁17行〜第3頁10行)から、本件発明でいう蒸発残分をそのように定義する。なお、蒸発残分の測定の当初から、40℃、5mmHgの条件を適用すれば、突沸等の不具合が起こることは、技術常識であるから、過度の蒸発が起きないように徐々に減圧して、最終的に40℃、5mmHgの条件にすることが、実験操作上での慣用手段であることはいうまでもない。 [特許法第29条第1項について] ア.本件発明13について 本件発明13と刊行物1ないし7に記載された発明とをそれぞれ対比する。 本件発明13では、「蒸発残分が50ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明13は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 また、書証1(TFPO納入仕様書、異議2の甲第5号証)には、「TFPOの納入仕様書、制定日1998年11月25日、品質規格;蒸発残分 wtppm 20以下 乾燥重量測定 商品名 TFPO 化学名 2,2,3,3-Tetrafluoro-1-propanol」との記載があるが、この書証1が異議2の異議申立人が主張するように、秘密保持義務のない納入先に送付されたものであるとする根拠が示されておらず、書証1の存在により「TFPOの蒸発残分が20ppm以下」であることが公知または公用であったとすることができない。 したがって、本件発明13が本件出願前公然知られた発明あるいは公然実施された発明とすることができない。 イ.本件発明14ないし15について 本件発明14ないし15は蒸発残分を更に限定するものであるから、本件発明13と同様のことがいえる。 したがって、本件発明13は、刊行物1ないし7に記載された発明でもないし、また、本件出願前公然知られた発明あるいは公然実施された発明とすることができない。 ウ.本件発明16ないし18について 本件発明16ないし18は、先行する請求項を引用し「蒸発残分が50、25あるいは10ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明16ないし18は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 エ.本件発明1について 本件発明1では、「蒸発残分が50ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明1は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 オ.本件発明2ないし5について 本件発明2ないし5は、本件発明1を引用し「蒸発残分が50ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明2ないし5は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 カ.本件発明6ないし7について 本件発明6ないし7は、本件発明5を引用し「蒸発残分を25あるいは10ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明6ないし7は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 キ.本件発明8ないし12について 本件発明8ないし12は、先行する本件発明を引用するものであるが、「蒸発残分を50、25あるいは10ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1ないし7には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明8ないし12は、刊行物1ないし7に記載された発明ではない。 ク.本件発明19について 本件発明19は、先行する請求項を引用し「蒸発残分が50、25あるいは10ppm以下」であることを発明の特定事項とするのに対し、刊行物1には、蒸発残分についての記載がないし、自明な事項でもない点で相違する。 したがって、本件発明19は、刊行物1に記載された発明ではない。 [特許法第29条第2項について] ア.本件発明13について 本件発明13と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1には、「99重量%以上の純度を有する下記の一般式(I): A-CH2OH (I) [ただし、AはF(CnF2n)またはH(CnF2n)であり、nは1乃至3の整数である]で表わされる弗素化アルコールを含む溶剤に色素を溶解して塗布液を調製した後、基板上に該塗布液を塗布乾燥することによりレーザーによる情報の書き込みが可能な記録層を形成することからなる情報記録媒体の製造方法。」(特許請求の範囲)と記載され、一般式(I)の化合物のうち、AがH(CnF2n)であり、nは1乃至2の整数である時は、本件発明13の式(1)の化合物に相当し、さらに純度に関し、「2)上記弗素化アルコール中の上記弗素化アルコールより炭素原子数の多い弗素化アルコールの含有量が、上記弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であること 3)上記弗素化アルコール中のアルデヒド類の含有量が、上記弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であること 4)上記弗素化アルコール中の金属イオンの含有量が、重量で100ppm以下であること」(第2頁右下欄7行〜第3頁左上欄2行)、「通常の純度の低い弗素化アルコールは不純物を含んでおり、このような弗素化アルコールを用いて形成された色素記録層は、色素層形成時の色素、溶剤および塗布条件等の組合せによって結晶化が発生する場合がある。これは、以下の不純物が原因で起こると推定される。本発明で使用される弗素化アルコールは、アルデヒド類や金属イオンを実質的にあるいはほとんど含まれていないことが望ましいことから、金属イオンは弗素化アルコール全体に対して重量で100ppm以下が好ましく、アルデヒド類は0.5重量%以下が好ましい。さらに目的の化合物より炭素原子数の多い弗素化アルコールを含んでいないことが望ましいことから、一般に一般式(I)により表わされる弗素化アルコールより炭素原子数の多い弗素化アルコールの含有量が、弗素化アルコール全体に対して0.5重量%以下であることが好ましく、特に含んでいないことが好ましい。」(第8頁右下欄5行〜第9頁右上欄2行)と記載されている。 それ故、本件発明13と刊行物1に記載された発明とは、「下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH(1) 〔n=1のときR1はFを示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール。」である点で一致するが、本件発明13では、フッ素アルコールの「蒸発残分が50ppm以下」であるのに対し、刊行物1には、不純物に関し、「金属イオンは100ppm以下、炭素原子数の多い弗素化アルコールは0.5重量%以下、アルデヒド類は0.5重量%以下、特に含んでいないことが好ましい。」と記載されるにとどまる点で相違する。 その相違する点を検討すると、刊行物1には、不純物を「特に含んでいないことが好ましい。」との記載があるが、どの程度なら実質的に「含んでいない」といえるか不明であるし、また、本件発明13の蒸発残分の成分及びその量と刊行物1記載の不純物の成分及びその量の相互の関連が明確ではないから、前記不純物に関する記載のみから、蒸発残分の多寡を推認することができないというべきである。また、刊行物2ないし10及び書証2の記載をみても蒸発残分に関する直接的な記載がなく、蒸発残分の多寡を推認することができない。 そして、本件発明1では、フッ素アルコールの蒸発残分が50ppm以下のものを記録媒体製造用に用いる効果は明細書に記載のとおり格別なものと認められる。 したがって、本件発明13が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 イ.本件発明14ないし15について 本件発明14ないし15は、本件発明13で規定する蒸発残分をさらに限定するものであるから、本件発明13と同様のことがいえる。 したがって、本件発明14ないし15が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 ウ.本件発明16ないし18について 本件発明16ないし18は、先行する本件発明を引用し「蒸発残分が50、25、あるいは10ppm以下」であることを発明の特定事項とするものであるから、先行する本件発明と同様のことがいえる。 したがって、本件発明16ないし18が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 エ.本件発明1について 本件発明1は、実質的に本件発明13に記載されたフッ素アルコールを製造するために、さらにテロメル化反応に続いて、反応液を塩基の存在下に蒸留もしくは反応終了後の反応液を塩基と接触させた後蒸留する工程を付加するものであるから、本件発明13と同様のことがいえる。 したがって、本件発明1が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 オ.本件発明2ないし12について 本件発明2ないし12は、本件発明1をさらに技術的に限定するものであるから、本件発明1と同様のことがいえる。 したがって、本件発明2ないし12が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 カ.本件発明19ないし20について 本件発明19ないし20は、先行する本件発明を引用して「蒸発残分」を特定したフッ素化アルコールを発明の特定事項とするものであるから、先行する本件発明と同様のことがいえる。 したがって、本件発明19ないし20が、刊行物1ないし10及び書証2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。 [特許法第36条第4項又は第6項について] 異議1の申立人は、訂正前の本件明細書の記載について、本件発明は式(1)のフッ素化アルコールのうちnが3より大きい化合物については、明細書に記載がなく、実施例もないので、特許法第36条第4項又は第6項第1号若しくは第2号に規定する要件を満たしていない旨(異議申立書第14頁26〜28行)、訂正前の請求項13ないし18に記載された発明が、明細書の記載によって支持されておらず特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨(異議申立書第19頁12行〜第23頁18行)主張している。 その点について検討すると、本件発明1ないし20では、n=1とn=2を請求するものであるから、nが3より大きい化合物について、何等の記載がなくても適法といえるし、また、本件明細書記載の蒸発残分についても前述のとおり明確に定義されているものと認められるから、訂正後の本件発明13ないし18は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されているものと認められる。。 よって、異議1の申立人の上記主張は採用できない。 [異議申立人のその他の主張及び証拠について] 異議1の申立人は、平成13年7月23日付けの審尋に対する回答書に下記の参考文献1、JIS K0067及び実験成績証明書を添付して、刊行物2(特公昭62-42893号公報、異議1の甲第1号証、異議2の甲第2号証に対応する公告公報)記載の方法で合成した2,2,3,3-テトラヒドロフルオロプロパノ-ル(TFP)を蒸留精製して得られるTFPの蒸発残分及び吸光度を測定したとしているが、異議申立期間を経過してされたものであるから、これら(特に実験成績証明書)を証拠とした、蒸発残分についての新たな主張は採用することができない。 [上記回答書に添付された証拠] 参考文献1には、TFPをKOHの存在下4時間還流し、得られた混合液を蒸留塔で蒸留し、104℃〜109℃の留分を得、さらにこの留分をトリフルオロ酢酸ナトリウムの存在下、再蒸留をした。精製したTFPは、ガスクロマトの分析で水を含んでいなかった旨記載されている。 JIS K0067-1992(「化学製品の減量及び残分試験方法」、平成4年5月1日改正、日本工業標準調査室 審議) JIS K0067には、この規格は、化学製品の減量及び残分を試験する一般的な方法についての規定である旨記載されている。 実験成績証明書は、刊行物2(特公昭62-42893号公報、異議1の甲第1号証、異議2の甲第2号証に対応する公告公報)記載の方法で合成した2,2,3,3-テトラヒドロフルオロプロパノ-ル(TFP)を蒸留精製して得られるTFPの蒸発残分及び吸光度を測定したとするものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし20に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明1ないし20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 フッ素アルコールの製造法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】メタノール及びテトラフルオロエチレン若しくはヘキサフルオロプロピレンをラジカル発生源の存在下に反応させて蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを製造する方法において、反応液を塩基の存在下に蒸留もしくは反応終了後の反応液を塩基と接触させた後蒸留する工程を有することを特徴とする式(1)で表されるフッ素アルコールの製造法。 【請求項2】塩基のpKbが2以下である請求項1に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項3】塩基がアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ金属水酸化物である請求項1または2に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項4】塩基がナトリウムアルコラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項5】蒸留で得られた式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が50ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項6】式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が25ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項7】式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が10ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項8】ラジカル発生源が反応開始剤、UV及び熱からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項9】ラジカル発生源が、反応温度における半減期が約10時間となる反応開始剤である請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項10】ラジカル発生源が過酸化物である、請求項8または9に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項11】ラジカル発生源がパーブチルDまたはパーブチルIまたはパーブチルOである請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項12】ラジカル発生源と共に受酸剤を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 【請求項13】蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール。 【請求項14】蒸発残分が25ppm以下である請求項13に記載のフッ素アルコール。 【請求項15】蒸発残分が10ppm以下である請求項13または14に記載のフッ素アルコール。 【請求項16】メタノール中での吸光度(190〜300nm)が0.2abs以下である請求項13〜15のいずれかに記載のフッ素アルコール。 【請求項17】メタノール中での吸光度(205nm)が0.1abs以下である請求項13〜16のいずれかに記載のフッ素アルコール。 【請求項18】メタノール中での吸光度(205nm)が-0.2abs以下である請求項17に記載のフッ素アルコール。 【請求項19】請求項13〜18のいずれかに記載のフッ素アルコールを用いて製造された基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体の製造のための使用。 【請求項20】請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール、或いは、請求項13〜18のいずれかに記載の下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを用いて製造された、基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、一般式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表されるフッ素アルコールの製造法、実質的に不純物を含まない該フッ素アルコールおよびその基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体製造用の用途に関する。 【0002】 【従来の技術】H(CF2CF2)nCH2OH(n=1、2)の製造法としては特開昭54-154707号公報および米国特許2559628号に記載されるように、メタノールとテトラフルオロエチレンをt-ブチルオクチルパーオキサイドの存在下に反応させることにより、H(CF2CF2)nCH2OH(nは最高12)のテロマー混合物が得られることが記載されている。 【0003】しかしながら、該方法により得られたテロマー混合物を蒸留により精製しても、数百ppm程度の蒸発残分の除去ができないため、例えばCD-RやDVD-R等の基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体製造時の溶剤として使用した場合、蒸発残分の影響により高品質の情報記録媒体の製造に適していない欠点があった。 【0004】本発明の目的は、蒸発残分やUV吸収成分などの不純物を実質的に含まない一般式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔式中、n、R1は前記に定義された通りである。〕で表されるフッ素アルコールおよびその製造法、該フッ素アルコールの基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体の製造用溶剤としての用途並びに該フッ素アルコールを用いて製造された基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、項1〜項20に関する。 項1.メタノールとテトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンをラジカル発生源の存在下に反応させて下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表されるフッ素アルコールを製造する方法において、反応液を塩基の存在下に蒸留もしくは反応液を塩基と接触させた後蒸留する工程を有することを特徴とする式(1)で表されるフッ素アルコールの製造法。 項2.塩基のpKbが2以下である請求項1に記載のフッ素アルコールの製造法。 項3.塩基がアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ金属水酸化物である請求項1または2に記載のフッ素アルコールの製造法。 項4.塩基がナトリウムアルコラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 項5.蒸留で得られた式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が50ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 項6.式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が25ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 項7.式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n、R1は前記に定義されたとおりである〕で表されるフッ素アルコール中の蒸発残分が10ppm以下である請求項5に記載のフッ素アルコールの製造法。 項8.ラジカル発生源が反応開始剤、UV及び熱からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 項9.ラジカル発生源が、反応温度における半減期が約10時間となる反応開始剤である請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 項10.ラジカル発生源が過酸化物である、請求項8または9に記載のフッ素アルコールの製造法。 項11.ラジカル発生源がパーブチルDまたはパーブチルIまたはパーブチルOである請求項8に記載のフッ素アルコールの製造法。 項12.ラジカル発生源と共に受酸剤を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素アルコールの製造法。 項13.蒸発残分が50ppm以下である下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表されるフッ素アルコール。 項14.蒸発残分が25ppm以下である請求項13に記載のフッ素アルコール。 項15.蒸発残分が10ppm以下である請求項13または14に記載のフッ素アルコール。 項16.メタノール中での吸光度(190〜300nm)が0.2abs以下である請求項13〜15のいずれかに記載のフッ素アルコール。 項17.メタノール中での吸光度(205nm)が0.1abs以下である請求項13〜16のいずれかに記載のフッ素アルコール。 項18.メタノール中での吸光度(205nm)が-0.2abs以下である請求項17に記載のフッ素アルコール。 項19.請求項13〜18のいずれかに記載のHCF2CF2CH2OHの基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体の製造のための使用。 項20.請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表されるフッ素アルコール、或いは、請求項13〜18のいずれかに記載の下記式(1) H(CFR1CF2)nCH2OH (1) 〔n=1のときR1はFまたはCF3を示す。n=2のときR1はFを示す。〕で表されるフッ素アルコールを用いて製造された、基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の製造法において、テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンに対しメタノールを過剰量使用する。反応温度は40〜140℃程度、反応時間は3〜12時間程度、反応圧力は、0.2〜1.2MPa程度である。反応は、例えば高圧反応釜で行うことができる。反応系内は窒素、アルゴン等の不活性ガスで置換するのが好ましい。 【0007】反応終了後、必要に応じて過剰のメタノールを蒸留により除去し、塩基の存在下に蒸留を行う。さらに、反応混合物中にH(CF2CF2)nCH2OH(nは3以上)またはH(CF(CF3)CF2)nCH2OH(nは2以上)の不純物を含む場合、これを蒸留により除去しておくのが好ましい。 【0008】蒸留は、H(CFR1CF2)nCH2OH〔n、R1は前記に定義された通りである。〕で表されるフッ素アルコールを含む反応混合物を塩基の存在下にもしくは反応混合物を塩基と接触させた後に行う。反応混合物中に加える、或いは反応混合物を接触させる塩基としては、pKbが2以下である塩基が好適なものとして挙げられる。塩基としては、例えばナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムプロピラート、カリウムt-ブトキシド、リチウムエチラートなどのアルカリ金属アルコラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、ソーダライム等が挙げられる。塩基の使用量としては、メタノール以外の反応混合物の重量1kgあたり0.05〜1.0モル程度、好ましくは0.1〜0.5モル程度である。 【0009】受酸剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩及び炭酸水素塩、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、ソーダライム、炭酸バリウムなどが挙げられる。受酸剤は、反応系を強アルカリ性にすることなく、反応時に発生するHFなどの酸をトラップできるものが好ましい。 【0010】受酸剤の使用量は、特に限定されないが、テトラフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレン1モルあたり、0.001〜0.1モル程度使用できる。 【0011】ラジカル発生源としては、反応開始剤、UVおよび熱からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。ラジカル発生源がUVであるとき、中圧又は高圧水銀灯からのUVを例示できる。ラジカル発生源が熱であるとき、250〜300℃の温度を例示できる。反応開始剤としては、過酸化物が例示でき、反応温度における半減期が約10時間となる反応開始剤を好ましく例示できる。 【0012】好ましいラジカル発生源としては、パーブチルD(ジ-t-ブチルパーオキサイド)、パーブチルO(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)またはパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)が好ましく例示される。反応開始剤の使用量は、テトラフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレン1モルあたり、通常0.005〜0.1モル程度である。 【0013】本発明で得られるフッ素アルコールの蒸発残分は、50ppm以下、好ましくは25ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。 【0014】蒸発残分は、以下のようにして求めることができる。即ち、フッ素アルコールを40℃、5mmHgで濃縮したときの残分の重量を測定し、HCF2CF2CH2OHに対するwt.ppmで表わす。 【0015】本発明で得られる一般式(1)のフッ素アルコールの205nmにおけるメタノール中での吸光度は、0.1abs以下、好ましくは-0.1abs以下、より好ましくは-0.2abs以下である。メタノール中の吸光度は、一般式(1)のフッ素アルコール1mlにメタノール3mlを加えたものを測定試料とし、リファレンスとしてメタノールを用いて測定される。 【0016】本発明のフッ素アルコールが「実質的に不純物を含まない」とは、(i)フッ素アルコールの蒸発残分が50ppm以下、好ましくは25ppm以下、より好ましくは10ppm以下であり、および/または、(ii)メタノール中での吸光度(205nm)が0.1abs以下、好ましくは-0.1abs以下、より好ましくは-0.2abs以下であることを意味する。 【0017】基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体は、本発明の一般式(1)のフッ素アルコールを含む溶剤、好ましくは該フッ素アルコールを含むフッ素系溶剤に色素を溶解し、得られた溶液を基板上に塗布、乾燥するなどの常法に従い、色素を含む記録層を形成して製造できる。該色素としては、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、スクワリリウム系色素、アズレニウム系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノン系色素、アルミニウム系色素、ジインモニウム系色素、金属錯塩系色素等が挙げられる。基板としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック、ガラス、セラミックスが挙げられる。尚、記録層と基板の間に平面性の改善、接着力の向上、記録層の変質防止等の目的で下塗層を設けてもよく、記録層の上には保護層を設けてもよい。 【0018】 【発明の効果】本発明によれば、基板上にレーザーによる情報の書き込み及び/又は読みとり可能な記録層が設けられてなる情報記録媒体(CD-R、DVD-R等の光ディスクなど)、フィルムの感光体の製造に好適な実質的に不純物を含まないHCF2CF2CH2OH、H(CF2CF2)2CH2OHおよびHCF(CF3)CF2CH2OHを容易に製造することができる。 【0019】 【実施例】以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。 実施例1 高圧反応釜にメタノール(2L)、パーブチルD(45g)および炭酸カルシウム(30g)を仕込む。反応釜を窒素置換した後テトラフルオロエチレンを初期速度600g/hrで仕込み、温度125℃、圧力0.8MPaに制御し、6時間反応させた。反応混合物を冷却後蒸留し、メタノールを分離し、次いでH(CF2CF2)nCH2OH(nは2以上の整数)を分離し、HCF2CF2CH2OHの留分(1.2L)を得た。得られたHCF2CF2CH2OHの留分の蒸発残分は600ppm程度、吸光度(205nm)は2.0absであった。また、キャピラリGC/MASSにより分析したところ、ホルムアルデヒド、HCF2CF2CHO、HCF2CHFCHO、HCF2CF2CF2CF2CHO、HCF2COOCH2CH=CHCHO、HCF2CH2COOCH=CHCHO、HCF2CF2CH(OH)OCH2CHOなどの各種アルデヒド成分が混在することが判明した。 【0020】上記留分について蒸留を繰り返しても、これら不純物の含量、蒸発残分量、吸光度(205nm)等はほとんど変化しなかった。 【0021】得られたHCF2CF2CH2OHの留分(1L)に28%ナトリウムメチラート(30g)を加え、加熱下に蒸留し、実質的に不純物を含まないHCF2CF2CH2OHを得た。得られたHCF2CF2CH2OHの蒸発残分は10ppm以下であり、吸光度(205nm)は-0.2abs以下であった。また、上記のアルデヒド成分はGC/MASSの検出限界以下であった。GC/MASSの分析条件を以下に示す。 1)カラム:Liquid phase DB-1301フィルム厚み:1.00μmカラム寸法:60m×0.247mm2)分析条件キャリアHe:200kPa空気:40kPaH2:50kPa温度:50℃(5分)から220℃15分(15℃/分で昇温)インジェクション:200℃実施例2H(CF2CF2)nCH2OH(n=2以上)の留分をさらに分離してH(CF2CF2)2CH2OHの分画を得、該分画について上記実施例1と同様にナトリウムメトキシドを加えて蒸留することにより、蒸発残分が25ppm以下のH(CF2CF2)2CH2OHを得ることができる。 実施例3テトラフルオロエチレンに代えてヘキサフルオロプロピレンを用い、実施例1と同様に反応及び蒸留による精製を行うことにより、蒸発残分は25ppm以下であり、吸光度(205nm)は0.1abs以下のHCF(CF3)CF2CH2OHを得ることができる。 実施例4 実施例1で得られた塩基の存在下での蒸留前のHCF2CF2CH2OH留分をソーダライム管を通してHFを除去したところ、ガスクロマトグラフィーの純度は99.974%から99.5368%に低下した。この純度の低下したHCF2CF2CH2OHを蒸留することにより、蒸発残分は50ppm以下であり、吸光度(205nm)は0.1abs以下のHCF2CF2CH2OHを得ることができる。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「ラジカル発生源の存在下に反応させて下記式(I)」とあるのを「ラジカル発生源の存在下に反応させて蒸発残分が50ppm以下である下記式(I)」と訂正する。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1の記載について、「で表されるフッ素アルコールを製造する方法において、」とあるのを「で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコールを製造する方法において、」と訂正する。 ウ.訂正事項c 特許請求の範囲の請求項13の記載について、「フッ素アルコール。」とあるのを「情報記録媒体製造用のフッ素アルコール。」と訂正する。 エ.訂正事項d 特許請求の範囲の請求項20の記載について、「請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された下記式(1)」とあるのを「請求項1〜12のいずれかに記載の方法により製造された蒸発残分が50ppm以下である下記式(1)」と訂正する。 オ.訂正事項e 特許請求の範囲の請求項20の記載について、「で表されるフッ素アルコール」(2箇所)とあるのを「で表される情報記録媒体製造用のフッ素アルコール」と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-08-20 |
出願番号 | 特願平11-48446 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(C07C)
P 1 651・ 113- YA (C07C) P 1 651・ 111- YA (C07C) P 1 651・ 537- YA (C07C) P 1 651・ 112- YA (C07C) P 1 651・ 121- YA (C07C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大嶋 倫世 |
特許庁審判長 |
花田 吉秋 |
特許庁審判官 |
佐藤 修 西川 和子 |
登録日 | 2000-02-04 |
登録番号 | 特許第3029618号(P3029618) |
権利者 | ダイキン工業株式会社 |
発明の名称 | フッ素アルコ―ルの製造法 |
代理人 | 中川 博司 |
代理人 | 舘 泰光 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 大月 伸介 |
代理人 | 小原 健志 |
代理人 | 小原 健志 |
代理人 | 齋藤 健治 |
代理人 | 大月 伸介 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 藤井 淳 |
代理人 | 藤井 淳 |
代理人 | 中川 博司 |
代理人 | 舘 泰光 |
代理人 | 齋藤 健治 |
代理人 | 関 仁士 |
代理人 | 中野 睦子 |
代理人 | 中野 睦子 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 掛樋 悠路 |
代理人 | 関 仁士 |