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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1067639
異議申立番号 異議1998-72354  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1986-12-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-12 
確定日 2001-04-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2676030号「ディスク」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2676030号の特許を取り消す。 
理由 (A)手続きの経緯
本件特許2676030号発明は、昭和60年6月14日に特許出願され、平成9年7月25日に特許登録がなされた。その後、山下義和、飯島洋、北村清隆、森田宏司、黒岩景、大澤幸子、田村典子より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年12月25日に訂正請求がなされた。これに対して、当審は、訂正請求された明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、引用刊行物1(「標準MS-DOSハンドブック」(1984年8月31日発行)アスキー出版局 第17〜23、30〜45、208〜217頁)及び引用刊行物2(特開昭58-56146号公報)記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない旨通知したところ、請求人より平成11年2月15日付で手続補正書(訂正請求書)が出された。
(B)平成11年2月15日付補正について
(B-1)補正の内容
特許請求の範囲を以下のように補正するとした。
「デジタル情報を記憶し、情報処理装置の光ディスクドライブ装置に着脱可能でCDブーツを実現する一枚の光ディスクであって、
少なくとも、第1の記憶領域と第2の記憶領域と第3の記憶領域と第4の記憶領域とを有し、
前記第1の記憶領域は前記情報処理装置が初期に読み出す位置に配置され、前記第2の記憶領域から前記情報処理装置へ次に実行されるプログラムを読み出すためのブーツストラッププログラムが記憶されており、
前記第2の記憶領域は前記ブーツストラッププログラムが読み出す位置に配置され、前記情報処理装置を動作させて前記第3の記憶領域に格納されたアプリケーションプログラムを実行するためのシステムプログラムであって、使用に先立って前記第3の記憶領域に格納された、選択時に該システムプログラムが実行しなければならない予め固定された複数のアプリケーションプログラムをオペレータによるリクエスト無しに選択可能に表示し、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読出して実行する該システムプログラムが記憶されており、
前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記選択表示されたアプリケーションプログラムを含む予め固定された複数のアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されており、
前記第4の記憶領域は前記アプリケーションプログラムが使用する位置に配置され、文字情報、グラフィック情報、音声情報を含む情報が読み出し可能に記憶されていることを特徴とする光ディスク。」
(B-2)補正の適否
当該補正は第3の記憶領域に記憶されたアプリケーションプログラムと選択可能に表示されるアプリケーションプログラムの関係を「前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記選択表示されたアプリケーションプログラムを含む予め固定された複数のアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されており、」としている。
出願当初の明細書では、第3の記憶領域に記憶されたアプリケーションプログラム、及び、選択可能に表示されるアプリケーションプログラムに関して、9頁11行〜同12行で「23a〜23dはパッケージ化された各アプリケーションプログラムa〜dの記憶領域である。」とし、11頁12行〜同14行で「例えばステップ6でCRT6に選択すべきアプリケーションの選択画面を表示し、」とするのみで、第3の記憶領域に記憶されたアプリケーションプログラムが選択表示されるアプリケーションプログラムを含むものであること、即ち、第3の記憶領域に記憶されたアプリケーションプログラムには選択表示されるアプリケーションプログラム以外のアプリケーションプログラムを含みうることは全く記載されておらず、示唆もされていない。
以上のとおり、当該補正は、出願当初の明細書に記載されていない事項を本件特許の要旨として付加するものであり、認めることはできない。
(C)平成10年12月25日付訂正について
(C-1)訂正明細書の特許請求の範囲に係る発明
訂正明細書の特許請求の範囲に係る発明は、平成10年12月25日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「(1)デジタル情報を記憶し、情報処理装置のディスクドライブ装置に着脱可能なディスクであって、
少なくとも、第1の記憶領域と第2の記憶領域と第3の記憶領域とを有し、
前記第1の記憶領域は前記情報処理装置が初期に読み出す位置に配置され、前記第2の記憶領域から前記情報処理装置へ次に実行されるプログラムを読み出すためのブーツストラッププログラムが記憶されており、
前記第2の記憶領域は前記ブーツストラッププログラムにより読み出される位置に配置され、前記情報処理装置を動作させて前記第3の記憶領域に格納されたアプリケーションプログラムを実行するために、使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムをオペレータによるリクエスト無しに選択可能に表示し、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読み出して実行するシステムプログラムが記憶されており、
前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記複数の選択すべきアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されていることを特徴とするディスク。
(2)更に、第4の記憶領域を有し、前記アプリケーションプログラムに使用される各種情報が読み出し可能に配置されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のディスク。
(3)前記着脱可能なディスクは光ディスクであることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項記載のディスク。」
(C-2)引用刊行物
訂正拒絶理由通知で引用した「標準MS-DOSハンドブック」(1984年8月31日発行)アスキー出版局第17〜23、30〜45、208〜217頁(以下、「引用刊行物1」と言う)には、以下のことが記載されている。
(1)リセット直後にROMの中のプログラムが起動され、(略)その後、システムディスクからROM-BIOSがブート手続きのプログラムをメモリ上へロードします(Fig.1,4)。(211頁 14行〜18行)
(2)MS-DOSのブート・プログラムは、各ディスクのトラック0、セクタ1、サイド0に書かれています(略)、このブート・プログラムが正しくロードされると、ROM-BIOSからこのプログラムへ制御が移ります(JMPする)。次にブート・プログラムはMS-DOSの中心となる3つのファイルのうち、”IO.SYS”と”MS-DOS.SYS”をメモリ上ヘロードします(Fig1.5)。(212頁 1行〜7行)
”IO.SYS”、”MS-DOS.SYS”の初期化動作はFig.1.7の状態ですべて終了しました.後は”COMMAND.COM”をメモリ上にロードして制御を移せは、初期化の処理はすべて終了することになります。(215頁 8行〜10行)
(3)216頁のFig.1.9「初期化動作の流れ」で、COMMAND.COMのロード後、AUTOEXEC.BATが実行され、コマンド待ちとなることが記載されている。
(4)31頁 2.2.2ファイル名の一覧出力(DIR)には、コマンド”DIR”を実行すると、ドライブAのディスク、即ち着脱可能なディスクに存在するファイル名が表示されること(Fig.2.4)が記載されている。
(5)33頁〜43頁には、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラム(EDLIN)をプログラム領域から読み出して実行することが記載されている。
同じく引用した、特開昭58-56146号公報(以下、「引用刊行物2」と言う)には、
CPU17はイニシャルプログラムローディングによってシステムが起動された後に、PSKキーがキー操作されるとプログラム選択起動のための割り込み処理を実行する。
割り込み処理では、CPU17は外部記憶装置13からプログラム名とプログラム番号との対応を示すプログラムテーブルを読み込み、プログラム番号順にレジスタ16に保持せしめる。
次にCPU17はレジスタ16から1画面分たとえば26プログラム分のプログラムテーブルをプログラム番号順に取り出し(略)CRTモニタに表示出力する。
オペレータはプログラムの選択起動を行うためキー操作を行い、目的とするプログラムを指定する。
ことが記載されている。このCRTモニタヘの表示出力は「選択時に該システムプログラムが実行しなければならない固定された複数のアプリケーションを選択可能に表示」することであることは明らかである。
(C-3)対比・判断
引用刊行物1のブート・プログラムが本件発明のブートストラッププログラムに相当し、該ブートストラッププログラムが記憶された領域が第1の記憶領域となる。引用刊行物1のIO.SYS,MSDOS.SYS,COMMAND.COMが本件発明のシステムプログラムがに相当する。また、引用刊行物1記載のものでは、前記システムプログラムの読み込み後、AUTOEXEC.BATで指定されたプログラムがオペレータによるリクエスト無しに実行される。そして、これらプログラムが記憶された領域が第2の記憶領域となる
引用刊行物1記載の記憶媒体(ディスク)には複数のアプリケーションプログラムが記憶されている(Fig.2.4)。このことから、引用刊行物1に記載される記憶媒体(ディスク)は、複数のアプリケーションプログラムを記憶し、その中から1つのアプリケーションプログラムを指定し、該指定されたアプリケーションプログラムを実行するものである事は明らかである。また、これら複数のアプリケーションプログラムはアプリケーションプログラムのための領域、即ち第3の領域にシステムプログラムから選択読み出し可能に配置されている。
以上のことから、引用刊行物1には以下のことが記載されていることとなる。
「デジタル情報を記憶し、情報処理装置のディスクドライブ装置に着脱可能なディスクであって、
少なくとも、第1の記憶領域と第2の記憶領域と第3の記憶領域とを有し、
前記第1の記憶領域は前記情報処理装置が初期に読み出す位置に配置され、前記第2の記憶領域から前記情報処理装置へ次に実行されるプログラムを読み出すためのブーツストラッププログラムが記憶されており、
前記第2の記憶領域は前記ブーツストラッププログラムにより読み出される位置に配置され、前記情報処理装置を動作させて前記第3の記憶領域に格納されたアプリケーションプログラムを実行するために、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読み出して実行するシステムプログラムが記憶されており、
前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記複数の選択すべきアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されていることを特徴とするディスク。」
訂正請求された発明(1)と引用刊行物1記載のものと比較すると、前者では、システムプログラムが「使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムをオペレータによるリクエスト無しに選択可能に表示」する構成であるのに対して、後者では、オペレータが選択可能なアプリケーションプログラムを表示することに関しては開示されていなす点で相違し、その余に実質的な差異は認められない。
上記相違点を検討するに、オペレータによるアプリケーションプログラムの選択を支援するため、システムが起動された後にオペレータにより選択すべきアプリケーションプログラムの一覧を選択可能に表示するすることは引用刊行物2に示されるように広く知られている技術である。また、引用刊行物1に示されるように「MS-DOS」では、システムの起動直後にAUTOEXEC.BATで指定されたアプリケーションプログラムがオペレータによるリクエスト無しに実行されることは周知の事実であり、AUTOEXEC.BATにシステムの起動直後に実行したいアプリケーションプログラムを指定することは広く行われていることである。してみれば、引用刊行物1に示されるものにおいて、オペレータによるアプリケーションプログラムの選択を支援するため、AUTOEXEC.BATに引用刊行物2に示される、オペレータにより選択すべきアプリケーションプログラムの一覧を選択可能に表示するするプログラムを指定し、「使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムをオペレータによるリクエスト無しに選択可能に表示」する構成とすることに格別の技術力を要するとは認められない。
訂正請求された発明(2)に関して、
アプリケーションプログラムが別途情報を必要とする場合、その情報のための領域を設け、そこに必要とする情報を記憶することは周知慣用の事項である。引用刊行物1においても、文書編集プログラム”EDLIN”によって利用される文書ファイル”EDHLP.TXT”或いは”BIG.TXT”をAドライブ、即ちシステムディスクに格納することが記載されている。また、アプリケーションプログラムとして世に多数存在するグラフィック情報、音声情報等を取り扱うものとし、文字情報に加え、グラフィック情報、音声情報も格納することにも、新規な点はもちろん、何らの進歩性も認められない。
訂正請求された発明(3)に関して、
着脱可能な記憶媒体として光ディスクは周知であり、引用刊行物の着脱可能な記憶媒体であるフロッピーディスクを同じ着脱可能な記憶媒体である光ディスクとした事に全く意義は認められない。
なお、特許権者は平成11年2月15日付特許異議意見書の7頁で、「 上述の補正(平成11年2月15日付補正)より、本件発明のCDブーツを実現する一枚の光ディスクを情報処理装置の光ディスクドライブ装置に装着するのみで、システムが立ち上がり、選択時に該システムプログラムが実行しなければならない固定された複数のアプリケーンョンを選択可能に表示し、オペレータが選択すると、当該光ディスクに予め固定配置されたアプリケーションの1つが、同じく当該光ディスクに固定配置された文字情報、グラフィック情報、音声情報を使って実行され、サービスを提供します。
すなわち、本件発明の一枚の光ディスクは、例えばゲームやカーナビのように、予め完成されたストーリーのあるサービスをオペレータに提供するに当たって、その提供前にサービス内容の分岐を表示します(例えば、ゲームであれば、2人の対戦モードか、コンピュータとの対戦か、ゲームのデモか、の選択表示など)。この分岐の表示は、選択時にシステムプログラムが実行しなければならない予め同定された複数のアプリケーンョンプログラムの表示であり、オペレータは、分岐点で行き先を指示するだけで、サービスを受けることが可能です。」としている。しかし、平成11年2月15日付補正による発明も、平成10年12月25日付で訂正請求された発明も「一枚の(光)ディスクを情報処理装置の(光)ディスクドライブ装置に装着するのみで、システムが立ち上がり、」アプリケーンョンプログラムを選択可能に表示するものであることは全く述べられていない。特許権者のこの主張は本件とは何ら関係のないものである。また、本件では選択表示を「第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムをオペレータによるリクエスト無しに選択可能に表示し、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読み出して実行する」ものであり、「ゲームであれば、2人の対戦モードか、コンピュータとの対戦か、ゲームのデモか、の選択表示」即ち、ゲームと言うアプリケーションプログラムの「モード」を選択するものではないことは明かである。
また、引用刊行物2に示される技術も、オペレータによるシステムの利用に先立ち、利用のために実行するプログラムを表示された複数の候補から選択するものであり、本件と同様、システムを利用するというサービスをオペレータに提供するに当たって、その提供前にサービス内容の分岐を表示するものである。サービスの内容は選択表示されるアプリケーンョンプログラムの種類によって決まることであり、その内容が「完成されたストーリー」であるか否かは本件発明となんら関係のない事項である。
(C-4)むすび
以上のとおり、訂正請求された明細書の特許請求の範囲に記載された発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認められない。
(D)特許異議申立について、
(D-1)本件発明
本件発明は特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「(1)デジタル情報を記憶し、情報処理装置のディスクドライブ装置に着脱可能なディスクであって、
少なくとも、第1の記憶領域と第2の記憶領域と第3の記憶領域とを有し、
前記第1の記憶領域は前記情報処理装置が初期に読み出す位置に配置され、前記第2の記憶領域から前記情報処理装置へ次に実行されるプログラムを読み出すためのブーツストラッププログラムが記憶されており、
前記第2の記憶領域は前記ブーツストラッププログラムにより読み出される位置に配置され、前記情報処理装置を動作させて前記第3の記憶領域に格納されたアプリケーションプログラムを実行するために、使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムを選択可能に表示し、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読み出して実行するシステムプログラムが記憶されており、
前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記複数の選択すべきアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されていることを特徴とするディスク。
(2)更に、第4の記憶領域を有し、前記アプリケーションプログラムに使用される各種情報が読み出し可能に配置されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のディスク。
(3)前記着脱可能なディスクは光ディスクであることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項記載のディスク。」
(D-2)引用刊行物
取消理由通知で引用した「標準MS-DOSハンドブック」(1984年8月31日発行)アスキー出版局第17〜23、30〜45、208〜217頁(以下、「引用刊行物1」と言う)には、以下のことが記載されている。
(1)リセット直後にROMの中のプログラムが起動され、(略)その後、システムディスクからROM-BIOSがブート手続きのプログラムをメモリ上ヘロードします(Fig.1,4)。(211頁 14行〜18行)
(2)MS-DOSのブート・プログラムは、各ディスクのトラック0、セクタ1、サイド0に書かれています(略)、このブート・プログラムが正しくロードされると、ROM-BIOSからこのプログラムへ制御が移ります(JMPする)。次にブート・プログラムはMS-DOSの中心となる3つのファイルのうち、”IO.SYS”と”MS-DOS.SYS”をメモリ上ヘロードします(Fig1.5)。(212頁 1行〜7行)
”IO.SYS”、”MS-DOS.SYS”の初期化動作はFig.1.7の状態ですべて終了しました.後は”COMMAND.COM”をメモリ上にロードして制御を移せは、初期化の処理はすべて終了することになります。(215頁 8行〜10行)
(3)216頁のFig.1.9「初期化動作の流れ」で、COMMAND.COMのロード後、AUTOEXEC.BATが実行され、コマンド待ちとなることが記載されている。
(4)31頁 2.2.2ファイル名の一覧出力(DIR)には、コマンド”DIR”を実行すると、ドライブAのディスク、即ち着脱可能なディスクに存在するファイル名が表示されること(Fig.2.4)が記載されている。
(5)33頁〜43頁には、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラム(EDLIN)をプログラム領域から読み出して実行することが記載されている。
同じく引用した、特開昭58-56146号公報(以下、「引用刊行物2」と言う)には、
CPU17はイニシャルプログラムローディングによってシステムが起動された後に、PSKキーがキー操作されるとプログラム選択起動のための割り込み処理を実行する。
割り込み処理では、CPU17は外部記憶装置13からプログラム名とプログラム番号との対応を示すプログラムテーブルを読み込み、プログラム番号順にレジスタ16に保持せしめる。
次にCPU17はレジスタ16から1画面分たとえば26プログラム分のプログラムテーブルをプログラム番号順に取り出し(略)CRTモニタに表示出力する。
オペレータはプログラムの選択起動を行うためキー操作を行い、目的とするプログラムを指定する。
ことが記載されている。このCRTモニタヘの表示出力は「選択時に該システムプログラムが実行しなければならない固定された複数のアプリケーションを選択可能に表示」することであることは明らかである。
(D-3)対比・判断
引用刊行物1のブート・プログラムが本件発明のブートストラッププログラムに相当し、引用刊行物1のIO.SYS,MSDOS.SYS,COMMAND.COMが本件発明のシステムプログラムがに相当する。また、引用刊行物1記載のものでは、前記システムプログラムの読み込み後、AUTOEXEC.BATで指定されたプログラムがオペレータによるリクエスト無しに実行される。
引用刊行物1記載の記憶媒体(ディスク)には複数のアプリケーションプログラムが記憶されている(Fig.2.4)。このことから、引用刊行物1に記載される記憶媒体(ディスク)は、複数のアプリケーションプログラムを記憶し、その中から1つのアプリケーションプログラムを指定し、該指定されたアプリケーションプログラムを実行するものである事は明らかである。また、これら複数のアプリケーションプログラムはアプリケーションプログラムのための領域、即ち第3の領域にシステムプログラムから選択読み出し可能に配置されている。
以上のことから、引用刊行物1には以下のことが記載されていることとなる。
「デジタル情報を記憶し、情報処理装置のディスクドライブ装置に着脱可能なディスクであって、
少なくとも、第1の記憶領域と第2の記憶領域と第3の記憶領域とを有し、
前記第1の記憶領域は前記情報処理装置が初期に読み出す位置に配置され、前記第2の記憶領域から前記情報処理装置へ次に実行されるプログラムを読み出すためのブーツストラッププログラムが記憶されており、
前記第2の記憶領域は前記ブーツストラッププログラムにより読み出される位置に配置され、前記情報処理装置を動作させて前記第3の記憶領域に格納されたアプリケーションプログラムを実行するために、オペレータの選択指示に従って選択されたアプリケーションプログラムを前記第3の記憶領域から読み出して実行するシステムプログラムが記憶されており、
前記第3の記憶領域は前記システムプログラムの管理下で読み出される位置にあって、前記複数の選択すべきアプリケーションプログラムが前記システムプログラムにより選択読み出しが可能に配置されていることを特徴とするディスク。」
本件発明(1)と引用刊行物1記載のものと比較すると、前者では、システムプログラムが「使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムを選択可能に表示」する構成であるのに対して、後者では、オペレータが選択可能なアプリケーションプログラムを表示することに関しては開示されていなす点で相違し、その余に実質的な差異は認められない。
上記相違点にを検討するに、オペレータによるアプリケーションプログラムの選択を支援するため、システムが起動された後にオペレータにより選択すべきアプリケーションプログラムの一覧を選択可能に表示するすることは引用刊行物2に示されるように広く知られている技術である。また、引用刊行物1に示されるように「MS-DOS」では、システムの起動直後にAUTOEXEC.BATで指定されたアプリケーションプログラムが実行されることは周知の事実である。そして、AUTOEXEC.BATにシステムの起動直後に実行したいアプリケーションプログラムを指定することは広く行われていることである。してみれば、引用刊行物1に示されるものにおいて、オペレータによるアプリケーションプログラムの選択を支援するため、AUTOEXEC.BATに引用刊行物2に示される、オペレータにより選択すべきアプリケーションプログラムの一覧を選択可能に表示するするプログラムを指定し、「使用に先だって前記第3の記憶領域に格納された複数の選択すべきアプリケーションプログラムを選択可能に表示」する構成とすることに格別の技術力を要するとは認められない。
本件発明(2)に関して、
アプリケーションプログラムが別途情報を必要とする場合、その情報のための領域を設け、そこに必要とする情報を記憶することは周知慣用の事項である。引用刊行物1においても、文書編集プログラム”EDLIN”によって利用される文書ファイル”EDHLP.TXT”あるいは”BIG.TXT”をブーツストラッププログラム、システムプログラム、およびアプリケーションプログラムの格納されているディスクに格納することが記載されている。
本件発明(3)に関して、
着脱可能な記憶媒体として光ディスクは周知であり、引用刊行物の着脱可能な記憶媒体であるフロッピーディスクを同じ着脱可能な記憶媒体着脱可能な記憶媒体である光ディスクとした事に全く意義は認められない。
(D-4)むすび
以上のとおり、本件発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明は、特許法第113条第1項第2項に該当する。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-03-26 
出願番号 特願昭60-127929
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G06F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 祖父江 栄一
特許庁審判官 川名 幹夫
武井 袈裟彦
登録日 1997-07-25 
登録番号 特許第2676030号(P2676030)
権利者 アドバンストエレクトロニクス株式会社 重富 孝士
発明の名称 ディスク  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 大塚 康徳  
代理人 松本 研一  
代理人 大塚 康徳  
代理人 鈴木 正剛  

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