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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
管理番号 1067642
異議申立番号 異議1998-74738  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-12-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-30 
確定日 2001-03-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2732468号「磁気カード用マルチ磁気ヘッド」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2732468号の特許を取り消す。 
理由 (1)本件発明
特許第2732468号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「複数の磁気トラックを有するカード状の磁気記録媒体に接触し相対的に移動して記録再生を行う磁気カードマルチ磁気ヘッドにおいて、ギャップを有する複数の磁気ヘッドコアと磁気シールド部材を、非磁性体からなる支持部材に形成した複数の溝へ交互に装着して各ギャップ部を所定間隔で一列に配列させると共に、磁気シールド部材を各磁気ヘッドコア間に配置し、更に、ギャップ部と磁気シールド部材間の支持部材上に形成された凹部に非磁性体からなる耐摩耗性部材を嵌合接着して耐摩耗性部材を各磁気ヘッドコアの側面に密着させて形成したマルチ磁気ヘッドの基本体と、上部に開口を有し前記基本体を収容するための有底箱状ケースとを備え、各ギャップ部と磁気シールド部材と耐摩耗性部材が開口に露出するように前記基本体が前記ケースに挿入され、箱状ケースの前記開口にギャップ部、磁気シールド部材および耐摩耗性部材が露出して同一の媒体接触面を形成することを特徴とする磁気カード用マルチ磁気ヘッド。」
(2)引用例に記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1〜3には、以下のような発明が記載されている。
刊行物1:特開昭48-71216号公報
2個のコアホルダーの構成部品1a、1bには所要数の磁気コア及びシールド板に対する取り付け基準面を形成する嵌合溝2〜7が規定の位置にそれぞれ構成されていると共に、前記コアホルダーの前面側の中央部付近の所要範囲にわたり、磁気コアの先端部分の後方位置に溝状の切り欠き部(その底部が取り付け面A)を設け、前記コアホルダーの嵌合溝に前記磁気コア及びシールド板を装着した後突き合わせることにより突き合わせ部にスリットができるように磁気ヘッドを構成し、前記溝状の切り欠き部と磁気コア及びシールド板からなる溝状の空間にガラス製の耐摩耗摺接部材8を嵌入固着でき、かつ前記空間に嵌入した耐摩耗性摺接部材におけるコアホルダー1の前面部より突出した部分は磁気コアの先端部分の研磨時にその表面形状と一致させて構成される多チャンネル用磁気ヘッド。
なお、上記のようなコアホルダーを用いるいわゆる突き合わせ法により磁気ヘッドを構成する際、コアホルダーとしてアルミ、黄銅等の非磁性材が用いられる旨及び、耐摩耗性部材は平らな取り付け面Aにも固着される旨も記載されている。
刊行物2:特公昭30-9235号公報
一対の枠又は軌条により複数のコア半体や遮蔽板を順次配列し所定の間隔で保持したものを磁気ギャップ面と同一面上で突き合わせて複数の磁気ヘッドを一体に構成し、5面を有し一面が開口している箱(有底箱状ケースに相当する)に、前記一体にした磁気ヘッドをその記録媒体との摺接面を開口から露出するように挿入する点。(公報第1頁右欄第10行〜第2頁左欄第31行、第1,2,4図参照)
刊行物3:特開昭62-75909号公報
一対のコアホルダーを突き合わせることにより多数の磁気ヘッドを形成すると共に、突き合わせたコアホルダーの媒体と接触する部分に耐摩耗性材料を備える磁気ヘッドは、データカートリッジ用やカードリーダ用に適用可能である点。(公報第2頁左下欄第11行〜同右下欄第一行、第3頁右下欄第10〜14行参照)
(3)対比・判断
本件発明と刊行物1に記載の発明を対比する。
本件発明の目的(課題)は、「マルチ磁気ヘッドの摩耗を低減させて長寿命かを図ることが可能で、マルチ磁気ヘッドのトラック間におけるばらつきが小さく、しかも、製作が容易な磁気カードを提供すること」(特許公報第3欄第32〜35行参照)であるのに対し、刊行物1に記載の発明の目的は「製作容易な突き合わせ法による磁気ヘッドを長寿命化し」(公報第第2頁左上欄第10行〜11行参照)と、磁気ヘッドの製作方法を容易にすると共に長寿命化を少なくとも意図しており、両者の目的はほぼ一致する。
そこで、両者を対比すると、刊行物1に記載の発明における「コアホルダー」「磁気コア」「シールド板」「スリット」「ガラス製の耐摩耗摺接部材」「多チャンネル磁気ヘッド」は、本件発明の「非磁性体からなる支持部材」「磁気ヘッドコア」「磁気シールド部材」「ギャップ」「非磁性の耐摩耗性部材」「マルチ磁気ヘッド」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1において、磁気ヘッドの構成部材としての耐摩耗性部材を面に他の固着手段を用いることなく固着している点からみて、接着剤を用いた固着即ち「接着」であることは自明のことと認められるから、刊行物1に記載の発明における「固着」は本件発明における「接着」に相当する。一方、スリット(ギャップ)は磁気コアの突き合わせ部に形成されるから刊行物1における「取り付け面Aの溝状の切り欠き部と磁気コア及びシールド板からなる溝状の空間」は、本件発明の「ギャップ部と磁気シールド部材間の支持部材上に形成された凹部」に相当する。さらに刊行物1に記載の発明において「前記溝状の空間にガラス製の耐摩耗摺接部材8を嵌入する」は、本件発明における「ギャップ部と磁気シールド部材間の支持部材上に形成された凹部に非磁性からなる耐摩耗性部材を嵌合接着して」に相当すると共に、嵌入することにより磁気コアおよびシールド板と耐摩耗性部材の間は当然密着されるので、本件発明の「耐摩耗性部材を各磁気ヘッドコアの側面に密着させ」にも相当する。
したがって、両者は「複数の磁気トラックを有する磁気記録媒体に接触し相対的に移動して記録再生を行うマルチ磁気ヘッドにおいて、ギャップを有する複数の磁気ヘッドコアを磁気シールド部材を、非磁性体からなる支持部材に形成した複数の溝へ交互に装着して各ギャップ部を所定間隔で一列に配列させると共に、磁気シールド部材を各磁気ヘッドコア間に配置し、更に、ギャップ部と磁気シールド部材上に形成された凹部に非磁性体からなる耐摩耗性部材を嵌合接着して耐摩耗性部材を各磁気ヘッドコアの側面に密着させて形成したマルチ磁気ヘッド。」で一致し、本件発明が「上部に開口を有し前記基本体を収容するための有底箱状ケースとを備え、各ギャップ部と磁気シールド部材と耐摩耗性部材が開口に露出するように前記基本体が前記ケースに挿入され、箱状ケースの前記開口にギャップ部、磁気シールド部材および耐摩耗性部材が露出して同一の媒体接触面を形成」しているのに対し、刊行物1に記載の発明では「ギャップ部、磁気シールド部材および耐摩耗性部材が露出して同一の媒体接触面を形成」しているものの、これらを「上部に開口を有する有底箱状ケースに挿入して、前記開口にギャップ部、磁気シールド部および耐摩耗性部材が露出して」いない点(相違点▲1▼)および本件発明が磁気カード用マルチ磁気ヘッドであるのに対し、刊行物1に記載の発明が磁気カード用でない点(相違点▲2▼)で相違する。
次に上記相違点について検討する。
相違点▲1▼について
一対の枠又は軌条(コアホルダに相当)により複数のコア半体(磁心に相当)や遮蔽板を順次配列し所定の間隔で保持したものを磁気ギャップ面と同一面上で突き合わせて複数の磁気ヘッドを一体に構成し、5面を有し一面が開口している箱(有底箱状ケースに相当)に、前記一体にした磁気ヘッドの記録媒体との摺接面を開口から露出するように挿入する点は、刊行物2に記載されているので、この一体に構成した磁気ヘッドと同様な構成を有する刊行物1に記載のような磁気ヘッドにおいても、刊行物2に記載のように開口を備えた箱状ケースに挿入することは、容易に考えられるものと認められる。
相違点▲2▼について
刊行物1に記載のようなコアホルダの突き合わせ部で、かつ記録媒体摺動面に露出して耐摩耗摺接部材を設けた磁気ヘッドを、磁気カードに適用可能なことは、刊行物3に記載されているので、刊行物1に記載の構成の磁気ヘッドを刊行物2に記載のように開口を備えた箱状ケースに挿入した構成の磁気ヘッドにおいても、これを磁気カード用とすることは、当業者が適宜実施知る程度のことにすぎないと認めらる。
そして、得られる効果も当然期待しうる程度のことにすぎないと認められる。
したがって、本件発明は、上記刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、特許権者は、特許異議意見書において本件発明を自動改札に使用する磁気カード用磁気ヘッドとして使用可能である旨主張しているが、これらの主張は、実施例に係る効果にすぎず、特許請求の範囲に記載された各構成要件により特定される発明から当然得られる効果とは認められない。
(4)むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法の一部を改正する法律(昭和62年法律第27号)により改正された特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項および第2項の規定により、上記結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-05-28 
出願番号 特願平1-125371
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G11B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 内藤 二郎  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 矢崎 賀子
今井 義男
登録日 1997-12-26 
登録番号 特許第2732468号(P2732468)
権利者 株式会社サンエテック
発明の名称 磁気カード用マルチ磁気ヘッド  
代理人 丸山 幸雄  
代理人 大塚 康徳  
代理人 松本 研一  
代理人 野河 信太郎  

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