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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A01C
管理番号 1068816
異議申立番号 異議2001-70872  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-02-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-19 
確定日 2002-09-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3089340号「田植機」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3089340号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3089340号の請求項1に係る発明についての出願は、平成1年4月12日に出願した実願平1-43482号を平成9年4月4日に特許出願に変更し、平成12年7月21日に設定登録がなされ、その後、山本進(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成14年6月28日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1) 訂正の内容
ア. 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1について、「走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)」とあるのを、「走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)」と訂正し、全体を「エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したことを特徴とする田植機。」と訂正する。

イ. 訂正事項b
明細書の段落【0005】の記載について、「走行車の停止を検出する走行車センサ」とあるのを、「走行車の全駆動停止状態を検出する走行車センサ」と訂正する。

ウ. 訂正事項c
明細書の段落【0023】の記載について、「走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)」とあるのを、「走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、請求項1において、走行車センサの検出する内容を「停止」から「全駆動停止状態」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項b及びcは、上記特許請求の範囲の減縮に伴い、これと整合を図るために発明の詳細な説明を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正は願書に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲を超えるものとは認められないから、新規事項の追加に該当せず、また特許請求の範囲を実質的に拡張または変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法という。」)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立て
(1)当審の取消理由
当審で通知した特許法36条第3項及び第4項についての取消の理由は、次の通りである。
「3.特許法第36条第3項及び第4項について
本件の特許明細書の記載は、次の点で不明確である。
請求項1に「走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成した」と記載されているが、【0012】、【0013】には「図6に示す如く、前記走行変速レバー(28)のレバーガイド板(52)の苗継ぎ位置に、該レバー(28)の苗継ぎ位置を検知する非作業センサである切換式苗継ぎスイッチ(53)を設けている。そして、図1に示す如く、前記アクチュエータ(42)を正逆駆動制御するエンジン回転数制御回路(54)を備え、前記回転センサ(40)と、前記スロットルバルブ(41)の開度位置を検知するバルブ開度センサ(55)とを前記制御回路(54)に入力接続させると共に、エンジン回転数の高速基準値を可変設定するエンジン高速設定器(56)及びエンジン回転数の低速基準値を設定するエンジン低回転設定要素であるエンジン低速設定器(57)とを前記スイッチ(53)を介して前記制御回路(54)に入力接続させ、これら各センサ(40)(55)及びスイッチ(53)による設定器(56)或いは(57)の出力に基づき前記バルブ(41)開度の自動調節を行ってエンジン回転数の一定維持を図るように構成している。」としか記載されておらず、
「走行車センサ(53)」に相当すると認められる「切換式苗継ぎスイッチ(53)」がどのように走行車(1)の停止を検出するのか、発明の詳細な説明の記載内容及び図面に図示されている田植機の実施例を参照しても不明である。
したがって、本件発明は当業者が実施できる程度に明確に記載されているものであるとも、発明の詳細な説明に記載したものであるとも認められないから、本件発明は、特許法第36条第3項及び第4項の規定に違反して特許されたものである。」

(2) 当審の判断
訂正請求により請求項1の「走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成した」の記載を、「走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成した」に訂正したことにより上記(1)の取消の理由が解消されたかについて検討する。
本願明細書【0016】には「今前記変速レバー(28)が苗継ぎ位置に操作されて苗継ぎ作業が行われる本機側の全駆動が停止するような条件下にあっては、前記苗継ぎスイッチ(53)がオンとなることにより該スイッチ(53)の切換スイッチ片は低速端子側に切換わり前記制御回路(54)には低速設定器(57)で設定される低速基準値(c)が入力され、前記回転センサ(40)で検出されるエンジン回転数の検出値(b)をこの基準値(c)に一致させる状態に前記アクチュエータ(42)が正逆駆動されスロットルバルブ(41)の開度調節が行われてエンジン回転数は低速基準値(c)に一定維持され燃料消費量を小さなものとする。」としか記載されておらず、
「走行車センサ(53)」に相当すると認められる「切換式苗継ぎスイッチ(53)」は変速レバー(28)が苗継ぎ位置に操作されたことを検出するが、どのように走行車(1)の全駆動停止状態を検出するのか、発明の詳細な説明の記載内容及び図面に図示されている田植機の実施例を参照しても不明である。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確に記載されたものであると認められないから、本件発明は、特許法第36条第4項の規定に違反して特許されたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確に記載されたものであると認められないから、本件発明は、特許法第36条第4項の規定に違反して特許されたものである。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
田植機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したことを特徴とする田植機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は苗載台及び植付爪を有する植付部を走行車に装設させ、連続的に苗植付作業を行う田植機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、実開昭62-27413号公報に示す如く、植付中止操作を検出してアクセルを低速側に作動させたりエンジンを停止させる田植機がある。また、特開昭60-206944号公報に示す如く、建設機械の操作レバーが所定時間以上非操作状態にあると、エンジンのガバナを油圧アクチュエータによってオートデセル位置に自動的に戻す技術がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術は、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などにより前後輪の走行抵抗が変化すると、走行負荷変動によってエンジンの回転数が変化し、走行速度が変化して植付爪の苗植付深さが変化するから、作業者の手動アクセル操作によってエンジンの回転数を調整し、走行速度を作業者が制御する手動操作を行う必要があり、運転操作の簡略化並びに苗植付機能の向上などを容易に図り得ないと共に、植付中止時にエンジンを低速回転させたり停止させるための部材を特別に設置する必要があり、植付中止制御構造の簡略化などを容易に図り得ない等の問題がある。
【0004】
そこで、特開昭63-177717号公報に示す如く、植付作業中であるか否かを検出させ、植付クラッチ切のときにエンジン回転を自動的に低下させ、圃場枕地で方向転換させるときの走行速度を低下させ、運転操縦性を向上させる技術がある。しかし乍ら、一般的に多くの圃場では、給水側の圃場枕地では砂質が多く泥土が浅くなって走行抵抗が小さいが、排水側の圃場枕地は粘土質が多く泥土が深くなって走行抵抗が大きくなるから、排水側の圃場枕地等の走行抵抗が大きい場所で方向転換させるとき、エンジンの回転を低下させると、走行駆動力が不足してエンジン停止等のトラブルが発生し易くなる不具合がある。また、植付部の停止によってエンジン回転が低下するが、走行車の走行に必要な動力を確保することにより、走行車を停止させたとき、必要以上の高速回転でエンジンが駆動され、走行車を停止させて行う苗の補給作業時にエンジンを低速回転させたり停止させる操作を行う必要があると共に、苗補給後にエンジン回転を戻したり始動させて植付作業を再開させる必要があり、走行車を停止させて行う作業並びに走行車の再発進操作の簡略化などを容易に行い得ない等の問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
然るに、本発明は、エンジン出力によって走行車の前後輪と植付部を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン出力を検出するエンジンセンサと、エンジンを走行車走行出力に設定する設定操作具とに基づき、コントローラによって出力アクチュエータを自動制御し、エンジンを走行車走行出力に自動的に保って走行車を移動させると共に、走行車の全駆動停止状態を検出する走行車センサに基づき、前記走行車走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン負荷が変化しても、設定操作具の設定出力に基づく自動制御により、エンジンの回転数を自動的に制御して走行車を移動させ得、植付走行速度の変化によって植付爪の苗植付深さが変化する等の不具合をなくし得、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン出力を制御する人為操作を省き得、走行抵抗変化によってエンジン負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン出力を充分に確保し得、植付部を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくし得ると共に、走行車を停止させたときに走行時の回転でエンジンが駆動される不具合をなくし得、走行車を停止させて行う苗補給作業並びに走行車の再発進操作などの簡略化を容易に行い得、エンジントラブルの防止並びに走行車の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図り得るものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1はエンジン回転数の制御回路説明図、図2は乗用田植機の側面図、図3は同平面図を示し、図中(1)は作業者が搭乗する走行車であり、エンジン(2)を前側に搭載する車体フレーム(3)後端にミッションであるミッションケース(4)を装備させ、前記エンジン(2)の後方両側にフロントアクスルケース(5)を介して水田走行用前輪(6)を支持させると共に、前記ミッションケース(4)の後方両側にリヤアクスルケース(7)を介し水田走行用後輪(8)を支持させる。そして前記エンジン(2)を覆うボンネット(9)両側外方に予備苗載台(10)を適宜取付けると共に、ステップ(11)を形成する車体カバー(12)によって前記アクスルケース(5)(7)等を覆い、前記ミッションケース(4)上方の前記車体カバー(12)上部に運転席(13)を取付け、その運転席(13)の前方で前記ボンネット(9)後部に操向ハンドル(14)を設ける。
【0007】
さらに、図中(15)は多条植え用の苗載台(16)並びに複数の植付爪(17)…などを具有する植付部であり、前高後低の後傾式の苗載台(16)を案内レール(18)及びガイドレール(19)を介して植付ケース(20)に左右往復摺動自在に支持させると共に、一方向に等速回転させるロータリケース(21)を前記植付ケース(20)に支持させ、該ケース(21)の回転軸芯を中心に対称位置に一対の植付アームである爪ケース(22)(22)を配設し、その爪ケース(22)先端に植付爪(17)(17)を取付ける。また前記植付ケース(20)の前側に回動支点軸を介して支持フレーム(23)を設け、トップリンク(24)及びロワーリンク(25)を含む三点リンク機構(26)を介して走行車(1)後側に支持フレーム(23)を連結させ、前記リンク機構(26)を介して植付部(15)を昇降させる昇降シリンダ(27)を走行車(1)に備え、前記前後輪(6)(8)を走行駆動して略定速で移動すると同時に、左右に往復摺動させる苗載台(16)からロータリケース(21)の1回転で2本の植付爪(17)(17)により2株の苗を取出し、連続的に苗植え作業を行うように構成する。
【0008】
また、図中(28)は走行変速レバー、(29)は植付操作レバー、(30)は植付け感度調節レバー、(31)は主クラッチペダル、(32)(32)は左右ブレーキペダルである。
【0009】
図4及び図5に示す如く、前記エンジン(2)は左右の車体フレーム(3)に左右固定取付板(33)(34)及び防振体(35)を介してエンジン台(36)を取付け、エアクリーナ(37)などを接続させるキャブレータ部(38)に電子ガバナ(39)を設けている。前記電子ガバナ(39)はエンジン(2)の出力軸(2a)よりエンジン回転数を検知するエンジン回転センサ(40)と、前記キャブレータ部(38)に内設するスロットルバルブ(41)の開度調節を行う電動モータなどアタチュエータ(42)とを備え、前記センサ(40)がエンジン回転数の高低変化を検出するときアクチュエータ(42)を駆動してスロットルバルブ(41)の開度調節を行ってエンジン回転数の一定維持を図るように構成している。
【0010】
前記アクチュエータ(42)はエンジン(2)本体上方に充分剛性を有するブラケット(43)を介しエンジン(2)と一体に取付けるもので、前記エンジン(2)の上側面からは浮き上った状態にアクチュエータ(42)は取付固定され、エンジン(2)の上側面との間に伝熱防止隙間(44)を形成して、この下方のエンジン(2)からの発生熱が直接アクチュエータ(42)に伝わるのを防止するように構成している。そして前記スロットルバルブ(41)のバルブ軸(41a)に連結するキャブレータ部(38)外側のスロットルアーム(45)と、前記アクチュエータ(42)の出力軸(42a)に連結するアクチュエータアーム(46)との間を単一の連結杆(47)で連結して、前記アクチュエータ(42)の指示出力をこの単一の連結杆(47)により正確にスロットルバルブ(41)に伝達させると共に、前記アーム(45)(46)間に引張りバネ(48)を張設して、これらアーム(45)(46)と連結杆(47)両端接続ピン部(49)(49)のガタ発生を解消させるように構成している。
【0011】
なお、左右の車体フレーム(3)(3)に一体的に支持する枠フレーム(50)の上側部に燃料タンク(51)を設け、該タンク(51)の燃料を前記キャブレータ部(38)に送り込んでいる。
【0012】
図6に示す如く、前記走行変速レバー(28)のレバーガイド板(52)の苗継ぎ位置に、該レバー(28)の苗継ぎ位置を検知する非作業センサである切換式苗継ぎスイッチ(53)を設けている。
【0013】
そして、図1に示す如く、前記アクチュエータ(42)を正逆駆動制御するエンジン回転数制御回路(54)を備え、前記回転センサ(40)と、前記スロットルバルブ(41)の開度位置を検知するバルブ開度センサ(55)とを前記制御回路(54)に入力接続させると共に、エンジン回転数の高速基準値を可変設定するエンジン高速設定器(56)及びエンジン回転数の低速基準値を設定するエンジン低回転設定要素であるエンジン低速設定器(57)とを前記スイッチ(53)を介して前記制御回路(54)に入力接続させ、これら各センサ(40)(55)及びスイッチ(53)による設定器(56)或いは(57)の出力に基づき前記バルブ(41)開度の自動調節を行ってエンジン回転数の一定維持を図るように構成している。
【0014】
上記から明らかなように、エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサであるエンジン回転センサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具であるエンジン高速設定器(56)とに基づき、コントローラであるエンジン回転数制御回路(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の停止を検出する走行車センサである苗継ぎスイッチ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させる。そして、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン(2)負荷が変化しても、高速設定器(56)の設定出力に基づく自動制御により、エンジン(2)の回転数を自動的に制御して走行車(1)を移動させ、植付走行速度の変化によって植付爪(17)の苗植付深さが変化する等の不具合をなくし、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン(2)出力を制御する人為操作を省き、走行抵抗変化によってエンジン(2)負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン(2)出力を充分に確保し、植付部(15)を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくすと共に、走行車(1)を停止させたときに走行時の回転でエンジン(2)が駆動される不具合をなくし、走行車(1)を停止させて行う苗補給作業並びに走行車(1)の再発進操作などの簡略化を行い、エンジン(2)トラブルの防止並びに走行車(1)の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を図るように構成している。
【0015】
本実施例は上記の如く構成するものにして、以下図7のフローチャートを参照しこの作用を説明する。
【0016】
今前記変速レバー(28)が苗継ぎ位置に操作されて苗継ぎ作業が行われる本機側の全駆動が停止するような条件下にあっては、前記苗継ぎスイッチ(53)がオンとなることにより該スイッチ(53)の切換スイッチ片は低速端子側に切換わり前記制御回路(54)には低速設定器(57)で設定される低速基準値(c)が入力され、前記回転センサ(40)で検出されるエンジン回転数の検出値(b)をこの基準値(c)に一致させる状態に前記アクチュエータ(42)が正逆駆動されスロットルバルブ(41)の開度調節が行われてエンジン回転数は低速基準値(c)に一定維持され燃料消費量を小さなものとする。
【0017】
一方、苗継ぎ位置以外の植付作業位置或いは路上などの移動走行位置に前記変速レバー(28)が操作される作業条件下にあっては、前記苗継ぎスイッチ(53)がオフとなることにより該スイッチ(53)の切換スイッチ片は高速端子側に切換保持される状態となって、前記制御回路(54)には例えばアクセルレバーにより可変設定される高速設定器(56)での高速基準値(a)が入力され、以後前記回転センサ(40)で検出されるエンジン回転数の検出値(b)をこの基準値(a)に一致させる状態にエンジン回転数の一定制御が行われて作業能率での向上化が図られる。
【0018】
而して該構成の場合、前記アクチュエータ(42)をスロットルバルブ(41)などの支持部材と別部材とすることなくエンジン(2)に一体的に取付けるものであるから、エンジン振動が仮え大きい(防振体(35)などの作用により振動が増幅される)場合でも、スロットルバルブ(41)との相対位置が変化することなく、微小なアクチュエータ(42)の動きに対しても前記ロッド(47)により正確に伝えて高精度なエンジン(2)の回転数制御が行えるものである。
【0019】
図8及び図9は他の変形構造例を示すもので、該構造のものは前記アクチュエータ(42)を、防振体(35)などによってエンジン振動から遮断した枠フレーム(50)の固定ブラケット(59)に固設し、該ブラケット(59)のアウタ受け部(59a)と前記キャブレータ部(38)のアウタ受け(60)との間にアウタワイヤ(61)を張設すると共に、該ワイヤ(61)内を挿通させるインナワイヤ(62)で前記アクチュエータ(42)のアクチュエータアーム(46)とキャブレータ部(38)のスロットルアーム(45)とを連動連結させ、前記スロットルアーム(45)の反ワイヤ側とキャブレータ部(38)の固定ブラケット(63)間に引張バネ(64)を張設している。そして前記アクチュエータ(42)をエンジン振動の少ない枠フレーム(50)に設けることによってその耐久性向上を図ると共に、エンジン振動によりキャブレータ部(38)が変動しアクチュエータ(42)との相対距離が変化するときにも前記ワイヤ(61)(62)により伝達出力に変化のない正確な出力の伝達を可能とさせるように構成したものである。
【0020】
図10及び図11は前記アクチュエータ(42)におけるアクチュエータアーム(46)の他の変形構造例を示すもので、アクチュエータ(42)の出力軸(42a)をエンジン(2)の最も振動の大きい左右方向(図10実線矢印方向)に対し直角に交わるようにエンジン(2)に取付けると共に、前記出力軸(42a)を中心としたアクチュエータアーム(46)の反対側位置に該アーム(46)と同形状の回転防止アーム(65)を一体固設させ、左右方向のエンジン振動に対し前記出力軸(42a)の軸受(66)をラジアルに作用させると共に、前記防止アーム(65)の形成により出力軸(42a)にはエンジン振動によるアクチュエータアーム(42)の回転力が発生するのを防止するように構成している。なお前記アクチュエータアーム(42)と防止アーム(65)とを一体とさせた単一形状でも良い。
【0021】
図12及び図13は前記高速設定器(56)の基準値を手動アクセルレバー(67)及びフットアクセルペダル(68)により可変設定する如く設け、従来の機械式アクセル操作と同一機能を持たせるように構成したもので、前記レバー(67)とペダル(68)とをアウタワイヤ(69)内を挿通させるインナワイヤ(70)により連動連結すると共に、前記設定器である回動可変形ポテンショメータ(56)のメータ軸(56a)に止メボルト(71)を介し筒軸(72)を結合させ、該筒軸(72)に固定する回動アーム(73)と前記ペダル(68)のペダルアーム(74)間をアウタワイヤ(75)内を挿通させるインナワイヤ(76)により連動連結させ、前記ペダル(68)を優先したこれらレバー(67)及びペダル(68)操作でもって回動アーム(73)を最低速設定用ストッパ(77)及び最高速設定用ストッパ(78)の範囲内で移動させてこのポテンショメータ(56)での基準値を設定するように構成している。
【0022】
而して該構成の場合、前記ポテンショメータ(56)を泥水などより回避できる任意の安全位置に設置可能にできて長期に亘る性能保持が図れる。なお前記回動アーム(73)を支持するアーム軸を設け、該アーム軸と前記メータ軸(56a)とを弾性筒体により相互に結合連結させる構成でも良い。
【0023】
【発明の効果】
以上実施例から明らかなように本発明は、エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン(2)負荷が変化しても、設定操作具(56)の設定出力に基づく自動制御により、エンジン(2)の回転数を自動的に制御して走行車(1)を移動させることができ、植付走行速度の変化によって植付爪(17)の苗植付深さが変化する等の不具合をなくすことができ、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン(2)出力を制御する人為操作を省くことができ、走行抵抗変化によってエンジン(2)負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン(2)出力を充分に確保でき、植付部(15)を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくすことができると共に、走行車(1)を停止させたときに走行時の回転でエンジン(2)が駆動される不具合をなくすことができ、走行車(1)を停止させて行う苗補給作業並びに走行車(1)の再発進操作などの簡略化を容易に行うことができ、エンジン(2)トラブルの防止並びに走行車(1)の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】制御回路図。
【図2】田植機の全体側面図。
【図3】同平面図。
【図4】エンジン部の正面説明図。
【図5】同側面説明図。
【図6】走行変速レバー部の平面説明図。
【図7】フローチャート。
【図8】他の変形構造例を示す説明図。
【図9】同説明図。
【図10】同説明図。
【図11】同説明図。
【図12】同説明図。
【図13】同説明図。
【符号の説明】
(1) 走行車
(2) エンジン
(6) 前輪
(8) 後輪
(15) 植付部
(40) エンジン回転センサ(エンジンセンサ)
(42) アクチュエータ
(53) 苗継ぎスイッチ(走行車センサ)
(54) エンジン回転数制御回路(コントローラ)
(56) エンジン高速設定器(設定操作具)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
[訂正事項a]
特許請求の範囲の請求項1について、
「エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したことを特徴とする田植機。」とあるのを、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したことを特徴とする田植機。」と訂正する。
[訂正事項b]
明細書の段落【0005】の記載について、
「【課題を解決するための手段】 然るに、本発明は、エンジン出力によって走行車の前後輪と植付部を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン出力を検出するエンジンセンサと、エンジンを走行車走行出力に設定する設定操作具とに基づき、コントローラによって出力アクチュエータを自動制御し、エンジンを走行車走行出力に自動的に保って走行車を移動させると共に、走行車の停止を検出する走行車センサに基づき、前記走行車走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン負荷が変化しても、設定操作具の設定出力に基づく自動制御により、エンジンの回転数を自動的に制御して走行車を移動させ得、植付走行速度の変化によって植付爪の苗植付深さが変化する等の不具合をなくし得、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン出力を制御する人為操作を省き得、走行抵抗変化によってエンジン負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン出力を充分に確保し得、植付部を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくし得ると共に、走行車を停止させたときに走行時の回転でエンジンが駆動される不具合をなくし得、走行車を停止させて行う苗補給作業並びに走行車の再発進操作などの簡略化を容易に行い得、エンジントラブルの防止並びに走行車の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図り得るものである。」とあるのを、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】 然るに、本発明は、エンジン出力によって走行車の前後輪と植付部を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン出力を検出するエンジンセンサと、エンジンを走行車走行出力に設定する設定操作具とに基づき、コントローラによって出力アクチュエータを自動制御し、エンジンを走行車走行出力に自動的に保って走行車を移動させると共に、走行車の全駆動停止状態を検出する走行車センサに基づき、前記走行車走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン負荷が変化しても、設定操作具の設定出力に基づく自動制御により、エンジンの回転数を自動的に制御して走行車を移動させ得、植付走行速度の変化によって植付爪の苗植付深さが変化する等の不具合をなくし得、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン出力を制御する人為操作を省き得、走行抵抗変化によってエンジン負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン出力を充分に確保し得、植付部を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくし得ると共に、走行車を停止させたときに走行時の回転でエンジンが駆動される不具合をなくし得、走行車を停止させて行う苗補給作業並びに走行車の再発進操作などの簡略化を容易に行い得、エンジントラブルの防止並びに走行車の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図り得るものである。」
「走行車の全駆動停止状態を検出する走行車センサ」と訂正する。
[訂正事項c]
明細書の段落【0023】の記載について、
「【発明の効果】 以上実施例から明らかなように本発明は、エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の停止を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン(2)負荷が変化しても、設定操作具(56)の設定出力に基づく自動制御により、エンジン(2)の回転数を自動的に制御して走行車(1)を移動させることができ、植付走行速度の変化によって植付爪(17)の苗植付深さが変化する等の不具合をなくすことができ、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン(2)出力を制御する人為操作を省くことができ、走行抵抗変化によってエンジン(2)負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン(2)出力を充分に確保でき、植付部(15)を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくすことができると共に、走行車(1)を停止させたときに走行時の回転でエンジン(2)が駆動される不具合をなくすことができ、走行車(1)を停止させて行う苗補給作業並びに走行車(1)の再発進操作などの簡略化を容易に行うことができ、エンジン(2)トラブルの防止並びに走行車(1)の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図ることができるものである。」とあるのを、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【発明の効果】 以上実施例から明らかなように本発明は、エンジン(2)出力によって走行車(1)の前後輪(6)(8)と植付部(15)を駆動して植付作業を行う田植機において、エンジン(2)出力を検出するエンジンセンサ(40)と、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に設定する設定操作具(56)とに基づき、コントローラ(54)によって出力アクチュエータ(42)を自動制御し、エンジン(2)を走行車(1)走行出力に自動的に保って走行車(1)を移動させると共に、走行車(1)の全駆動停止状態を検出する走行車センサ(53)に基づき、前記走行車(1)走行出力自動制御を中止させるように構成したもので、圃場耕盤の凹凸または圃場泥土の深浅変化などによって走行抵抗が変化してエンジン(2)負荷が変化しても、設定操作具(56)の設定出力に基づく自動制御により、エンジン(2)の回転数を自動的に制御して走行車(1)を移動させることができ、植付走行速度の変化によって植付爪(17)の苗植付深さが変化する等の不具合をなくすことができ、かつ走行抵抗変化などに対してエンジン(2)出力を制御する人為操作を省くことができ、走行抵抗変化によってエンジン(2)負荷が大きく変動し易い圃場枕地での方向転換に必要なエンジン(2)出力を充分に確保でき、植付部(15)を停止させて行う走行抵抗が大きい場所での方向転換または畦越え移動時に走行駆動力が不足する不具合をなくすことができると共に、走行車(1)を停止させたときに走行時の回転でエンジン(2)が駆動される不具合をなくすことができ、走行車(1)を停止させて行う苗補給作業並びに走行車(1)の再発進操作などの簡略化を容易に行うことができ、エンジン(2)トラブルの防止並びに走行車(1)の一時停止が伴う苗補給などの作業性向上を容易に図ることができるものである。」と訂正する。
異議決定日 2002-07-31 
出願番号 特願平9-102650
審決分類 P 1 651・ 531- ZA (A01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 昭次森藤 淳志  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
瀬津 太朗
登録日 2000-07-21 
登録番号 特許第3089340号(P3089340)
権利者 ヤンマー農機株式会社
発明の名称 田植機  
代理人 北村 修一郎  

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