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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議200271227 審決 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E02D
管理番号 1069028
異議申立番号 異議2001-73459  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-01-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-25 
確定日 2002-12-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第3179733号「地下構造物用蓋」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3179733号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第一 手続の経緯
本件特許第3179733号(請求項の数2)の請求項1及び2に係る発明についての出願(特願平9-158888号)は、平成9年6月16日に特許出願され、平成13年4月13日に特許権の設定登録がなされ、その後、長島鋳物株式会社から全請求項について、特許異議の申立てがなされ、当審から取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年11月1日に意見書が提出されたものである。

第二 本件発明
本件特許第3179733号の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。(以下、「本件発明1及び2」という)
【請求項1】雄ネジ部材と雌ネジ部材とから成る螺合手段を備えた地下構造物用蓋において、前記雄ネジ部材と雌ネジ部材の何れか一方をステンレス鋼により形成し、何れか他方を銅合金により形成することを特徴とする地下構造物用蓋。
【請求項2】前記螺合手段が締付機構または昇降機構を構成する請求項1記載の地下構造物用蓋。

第三 異議申立ての理由の概要
異議申立人は、証拠方法として、下記の甲第1〜6号証を提出して、
(1)本件発明1及び2は、本件出願前に頒布された下記甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができた発明であるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである、
(2)本件発明1及び2は、下記甲第5、6号証から、本件出願前に公然知られた発明又は公然実施された発明といえるので、特許法29条1項1、2号に該当し、特許を受けることができないものである、
旨主張している。

甲第1号証;特開平8-165651号公報
甲第2号証:特開平8-270621号公報
甲第3号証;「日本工業規格 ステンレス鋼製耐食ねじ部品の機械的性質 JISB1054」財団法人日本規格協会、平成7年2月28日
甲第4号証;「日本工業規格 非鉄金属製ねじ部品の機械的性質 JISB1057」財団法人日本規格協会、平成6年3月31日
甲第5号証;カタログ「ハードロック」ハードロック工業株式会社、1983(昭和58)年発行
甲第6号証;カタログ「黄銅ボールト・ナット」夏原製作所、昭和57年11月発行

第四 甲各号証に記載された事項
1.甲第1号証(特開平8-165651号公報)には「土木用などのサポート具」に関して、
(ア)「【作用】……突張りのためのねじ調整に際して、ねじ棒1と雌ねじ筒体2との螺合部が、互いに異種金属であり、従来のように一体化して、カジリを生じる虞がない。」(2欄21〜24行)、
(イ)「【実施例】……本発明に係わるサポ-ト具100は、基本的には、中空円筒状又は棒状のねじ棒1と、これに螺合する短円環状の雌ねじ筒体2と、ねじ棒1を平滑内孔で進退自在に嵌合する支持筒体3とよりなり、螺合動作で、雌ねじ筒体2を支持筒体3の一端に当接して、ねじ棒1の自由端と支持筒体3の自由端との間で、突張り作用をなすものである。これにより、例えば、土木基礎工事において、掘削溝4の壁面に立て込んだ矢板5を、そこに水平に設けた腹起こし6を介して、支持するのである。【0008】特に、本発明では、前述のねじ棒1、雌ねじ筒体2及び支持筒体3の少なくとも主体部をアルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成すると共に、雌ねじ筒体2の内周側の雌ねじ部2A(この実施例では、円環状の外周筒体2B内に圧入されている)を、例えば、砲金、青銅、黄銅などの銅合金やスチールなどの異種金属、あるいは、異種金属合金で構成して、この雌ねじ部2Aをねじ棒1のねじ部1Aに螺合させている。」(2欄28〜46行)と記載されており、
これらを含む明細書全体の記載及び図面によれば、刊行物1には、
「一体化してカジリを生じる虞がないように、ねじ棒1のねじ部1Aをアルミニウム又はアルミニウム合金で形成し、雌ねじ筒体2の雌ねじ部2Aを銅合金やスチールなどの異種金属又は異種金属合金で形成して、ねじ棒1のねじ部1Aを雌ねじ部2Aに螺合させた土木用などのサポート具。」という技術事項が記載されているものと認める。

2.甲第2号証(特開平8-270621号公報)には、「異種金属間のねじ固定構造」に関して、
(ウ)「【産業上の利用分野】この発明は、長期高温負荷状態下で異種金属を締結するのに用いられる異種金属間のねじ固定構造に関するものである。」(1欄13〜15行)、
(エ)「【0003】このような原子プラントにおいて、燃料集合体や反射体などの結合部(以下、「被固定物」という。)を固定するために、同種金属で作られたボルトや、ナットのようなめねじ穴を持つ部材(以下、「ナット」という。)を長期高温負荷状態で使用すると、保守や定期点検などのためにこれらを解体をする場合に同種金属ゆえに、ボルトとナットとの螺合面間やナット端面と被固定物表面との間で、焼付きやかじりが生じてしまう。……【0004】この対策として、例えば高速炉における構造では、図7(a)のように、被固定物7140とボルト7130とがステンレス鋼材であった場合には、ナット7110の材質をステンレス鋼材からインコネルなどのニッケル基合金材に変更していた。一方、ボルトの機械的強度を重視する場合には、同図(b)のように、被固定物7240は変更することができないのでステンレス鋼材のままで、ボルト7230をインコネルなどニッケル基合金材に変更していたが、ボルトとナットとの螺合面間7250のかじりを避けようとすれば、必然的にナット7210をステンレス鋼材にせざるを得ない。」(1欄22〜48行)と記載されており、
これらを含む明細書全体の記載及び図面によれば、刊行物2には、
「焼付きやかじりが生じるのを防止するため、ボルトとナットの何れか一方をステンレス鋼材により形成し、何れか他方をニッケル合金材により形成した異種金属からなる長期高温負荷状態で使用されるねじ固定構造。」という技術事項が記載されているものと認める。

3.甲第3号証(「日本工業規格 ステンレス鋼製耐食ねじ部品の機械的性質 JISB1054」財団法人日本規格協会、平成7年2月28日)には、
ステンレス鋼製耐食ねじ部品の機械的性質とその試験,検査及び表示等についての規定が記載されている。

4.甲第4号証(「日本工業規格 非鉄金属製ねじ部品の機械的性質 JISB1057」財団法人日本規格協会、平成6年3月31日)には、
銅,銅合金及びアルミニウム合金を材料とする、非鉄金属製ねじ部品の機械的性質とその試験,検査及び表示等についての規定が記載されている。

5.甲第5号証(カタログ「ハードロック」ハードロック工業株式会社、1983(昭和58)年発行)には、5〜6頁に
ナットの材質として「SUS304」のものがあることが示されている。

6.甲第6号証(カタログ「黄銅ボールト・ナット」夏原製作所、昭和57年11月発行)には、第4〜7葉に、
黄銅ISO規格及び黄銅JIS規格のボールト及びナットが示されている。

第五 対比・判断
1.特許法29条2項違反について
(本件発明1)
本件出願前、「雄ネジ部材と雌ネジ部材とから成る螺合手段を備えた地下構造物用蓋」は、周知のものであり普通に実施されていた(例えば、実願昭60-156181号(実開昭62-66946号)のマイクロフィルム、実願昭62-84753号(実開昭63-194951号)のマイクロフィルム、実願昭63-39624号(実開平1-147043号)のマイクロフィルムを参照)。(以下、「周知発明」という)
ところで、本件発明1と周知発明は、本件発明1が「雄ネジ部材と雌ネジ部材の何れか一方をステンレス鋼により形成し、何れか他方を銅合金により形成する」点で相違している。

そこで、この相違点について検討する。
甲第1〜4号証には、いずれにも、相違点に係る本件発明1の技術事項は記載されておらず、甲第1〜4号証記載の事項を周知発明に適用して、本件発明のようにすることは、当業者にとって容易な事項とは認められない。
そして本件発明1は、本件明細書の段落0038に記載の「…雄ネジ部材および雌ネジ部材の螺合部の腐食による動作不良、焼付きによる動作不良が防止される。」等の、周知発明及び甲第1〜4号証記載の発明が有しない、上記相違点に係る事項に伴う格別な効果を有するものと認められる。

以上のとおり、本件発明1は、周知発明及び甲第1〜4号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(本件発明2)
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であり、前記相違点に係る本件発明1の事項を必須の事項とする発明であるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.特許法第29条第1項1、2号違反について
甲第5、6号証には、いずれにも、本件発明1及び2が本件出願前に公然知られた発明又は公然実施された発明であることを示すものはない。

第六 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-11-19 
出願番号 特願平9-158888
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E02D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 安藤 勝治
特許庁審判官 山口 由木
中田 誠
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3179733号(P3179733)
権利者 日之出水道機器株式会社
発明の名称 地下構造物用蓋  
代理人 長門 侃二  
代理人 井沢 洵  

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