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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G01P |
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管理番号 | 1069035 |
異議申立番号 | 異議2002-72201 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-09-11 |
確定日 | 2002-12-14 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3264414号「移動検出方式」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3264414号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第3264414号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成7年1月17日に特許出願され、平成13年12月28日にその発明について特許権の設定登録がされ、平成14年3月11日にその特許公報が発行されたところ、同年9月11日にその請求項1に係る特許に対して湯本亨より特許異議の申立てがされたものである。 2 本件請求項1に係る発明 特許第3264414号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】複数の質問器と、移動物体に付随して移動し、前記質問器に応答する応答器と、前記各質問器に接続された位置情報記憶装置とを具備して、前記移動物体の移動の方向を検出する移動検出方式であって、 前記応答器は、前記質問器からの指示信号に従うかあるいは自発的に、自己を他と識別する個別識別情報を質問器に送信する手段を有し、 前記質問器は、位置検出の分解能力に応じて他の質問器と適当な距離を置いて、検出する移動物体の移動の方向に少なくとも二つ以上設置され、各質問器は、応答器からの個別識別情報を受信して前記位置情報記憶装置に送る手段を有し、 前記位置情報記憶装置は、各質問器からの個別識別情報を、各々の質問器と対応させて記憶する手段と、移動物体に付随して応答器の移動する際に生ずる個々の質問器における個別識別情報の検出時刻の差を検出する手段とを有する、 ことを特徴とする移動検出方式。」 3 特許異議の申立ての理由の要点 本件発明は、甲第1号証(特開昭63-159780号公報)及び甲第2号証(特開昭56-135295号公報)に記載された発明に基づいてその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、本件発明に係る特許は同法113条1項2号により取り消すべきものである。 4 甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明 (1)甲第1号証について 甲第1号証には、「車の進行方向を検知する路車間通信装置における車の進行方向検知方式。」(1頁左下欄19行ないし20行)、「上り車線及び下り車線を有する道路に沿って空間的に隔てて複数の質問機を設置する。各質問機は、車に専属する質問信号を無線により所定範囲内に発射し、この範囲内の車から返送される無線応答信号を受信する。一方、車には自己に専属する質問信号を受信するとき上記応答信号を送信する応答機を積載する。そして、一の質問機の両側の地域にそれぞれ異なる時刻に質問信号を送信し、一の車に積載される応答機がこれらの質問信号を受信する時上記応答信号を送信し、質問機が上記二つの地域のいずれから先に又は後に上記応答信号を受信したかを知ることにより上記一の車の進行方向を検知する。」(2頁左上欄20行ないし右上欄12行)、「中央分離帯Sには、質問機Q-n、Q-(n-1)、・・・Q-1、Q1、Q2・・・Qnが所定の間隔で配置されている。」(2頁右上欄17行ないし19行)、「上記質問機群は、識別制御装置Cに連結されている。」(2頁左下欄1行ないし2行)、「上り車線UP及び下り車線DNを走行するトラックT1、T2、・・・ Tnには、応答機A1、・・・Anが積載されている。」(2頁左下欄7行ないし9行)、「送信電力は、各質問機の有効送信区域が隣の他の質問機の有効送信区域と重合しないように設定する。認識制御装置Cは、まず全ての質問機Q-n、・・・Q0・・・QnにトラックT1、T2に予め付与された認識符号IDC1、IDC2を例えばこの順序にて時分割的に発射させる。トラックT2は、質問機Q0が自己の質問信号を送信した瞬間に応答機・・・でこれを受信する。そして応答機・・・はただちに自己に定められた認識符号を含む応答信号を返送する。返送された応答信号は、質問機Q0で受信され、識別制御装置Cに送出される。認識制御装置Cは、応答信号を送出した質問機を認識してユーザーロにその所属トラックT2の現在位置信号を送出する。端末機U2は、位置信号を表示信号に変換してプリント出力またはブラウン管表示器等に位置表示する。」(2頁右下欄1行ないし17行)、「識別制御装置Cは、トラックT2が送出する応答信号を質問機Q0及びQ1がこの順序にて受信したので、トラックT2は上り車線を走行していると判断し、質問機Q2にトラックT2の識別符号IDC2を発射せしめる。」(3頁左上欄5行ないし9行)及び「一の質問機の両側に異なる時刻に質問信号を送信し、車に積載される応答機から二つの応答信号を受信し、これらの受信時刻の時間関係を知ることにより車の進行方向を検知することができる。これにより、地上に設けられる質問機と車に積載される応答機との間の交信を効率よく行わせることができる。」(5頁左上欄20行ないし右上欄6行)との記載がされている。 (2)甲第2号証について 「本発明は特定される場所、建屋、室などの入場制限区域において、不正に入退場する者の移動経路を表示する為の入退場者移動経路表示装置に関する。」(1頁右下欄3行ないし6行)、「各出入口12〜18は第2図および第3図に示すような機構となっている。即ち、ドア23の外側には・・・外側カードリーダ21を備え、又ドア23の内側にも・・・内側カードリーダ22を備えている。ここでカードリーダは入退場者の個人情報をカードにより識別するものでカードに磁気、又はその他の手段で個人識別番号が記載されているものを読取ることができるものである。」(2頁左上欄15行ないし右上欄4行)及び「外側マットスイッチ19、外側カードリーダ21、内側マットスイッチ20の一連の信号、情報は計算機25に入力されるので、これらの信号、情報の入力順序を判断することにより計算機25は入場があったことが把握できる。尚、入場時刻は計算機25はタイマーを持っているので、内側マットスイッチ20の入力タイミングをもって、そのときの時刻を記憶すればよい。第6図は退場の場合のタイムチャートであるが、第5図の入場の場合と外側、内側の信号、情報の順序が異るのみで基本的な動作は入場の場合と同じである。以上のようにして各出入口11〜18における入場者、退場者の個人識別番号、入退場時刻等の情報を時系列に記憶することができる。第7図は第1図の制限区域に対応して表示装置26に移動経路を表示するため、経路のポイントとなる箇所にアドレス1から44を付したことを示している。例えば第1図の制限区域において入場者が出入口11より敷地3に入場、以下建屋2内の室4に入場、室5に入退場、室7に入退場、室9に入退場、室10に入場の順に移動したものとする。この場合に個人識別番号、各入退場時刻を時系列に計算機25に記憶している情報に基づいて、第7図に示したアドレス1-2、2-3、・・・ 35-36の順に経路を表示装置26に表示した状態が第8図に示されている。更にIN、OUTは各入退場時刻を表示したものである。」(2頁右下欄7行ないし3頁左上欄18行)との記載がされている。 5 当審の判断 本件発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、本件発明の構成要件である「位置情報記憶装置」が「各質問器からの個別識別情報を、各々の質問器と対応させて記憶する手段と、移動物体に付随して応答器の移動する際に生ずる個々の質問器における個別識別情報の検出時刻の差を検出する手段」を有する点を備えていない。 本件発明は、この点により本件特許明細書記載の顕著な作用、効果を奏するものであり、本件発明が甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 なお、特許異議申立人は甲第1号証及び甲第2号証には個別識別情報の検出時刻の差を検出する手段が開示されていると主張するが、甲第1号証に時刻、時間関係についての記載、甲第2号証に時刻の記憶についての記載は認められるが、いずれにも検出時刻の差を検出することについての記載はなく、特許異議申立人の主張には根拠が認められない。 6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-11-25 |
出願番号 | 特願平7-5315 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(G01P)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
瀧 廣往 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 三輪 学 |
登録日 | 2001-12-28 |
登録番号 | 特許第3264414号(P3264414) |
権利者 | 日本電信電話株式会社 |
発明の名称 | 移動検出方式 |
代理人 | 鈴木 誠 |