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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない G01F
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G01F
管理番号 1070002
審判番号 審判1999-35078  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-02-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-19 
確定日 2003-01-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第1734107号発明「容器内流動材料のレベルを測定する方法および装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第1734107号発明は、昭和60年4月25日(パリ条約による優先権主張1984年4月25日、スウエーデン国)に出願され、平成4年4月23日に出願公告(特公平4-23726号)がされた後、平成5年2月17日に設定登録がなされたもので、その発明の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項及び第3項に記載された次のとおりのものである。
「1.導波管7を介して送信機から供給されるマイクロ波信号を使って、容器1に貯蔵されている流動材料3のレベル10を測定する方法であって、
前記導波管7は、容器を経て下方へ垂直に伸び、かつ該導波管7内の材料のレベル10が、周囲の材料のレベルと等しくなるよう、容器1と連通しており、また、前記信号は、前記レベル10で反射されて導波管7を通り、かつ電子ユニットで信号処理された後、容器1内の材料のレベル10を決定しうるようになっている受信機へ導かれるようになっており、かつ
導波管7の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器11により、導波管7へ供給されるようになっていることを特徴とする容器内流動材料のレベル測定方法。」
(以下、第1の発明という。)
「3.容器1内の流動材料のレベル測定装置であって、導波管7にマイクロ信号を供給するための送信機14と、反射されたマイクロ波信号を受信するための受信機と、受信信号を用いることによって、容器中の材料のレベル10を決定しうるようになっている電子ユニットとから成り、前記導波管7は、容器1を経て垂直に下方へ伸び、かつマイクロ波信号を反射する該導波管7内の材料のレベル10が、周囲における材料のレベル10と等しくなるよう、容器1と連通している測定装置において、
送信機14と導波管7との間に、一つだけの信号の主伝搬モードを生成しうるモード発生器11があり、かつ導波管7の直径が、波長より相当に大きいことを特徴とする容器1内の流動材料のレベル測定装置。」
(以下、第2の発明という。)
2.審判請求人の主張
審判請求人は、証拠として、
・甲第1号証:IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS AND CONTROL INSTRUMENTATION,August1971,Vol.IECI-18,No.3,P85〜92 STANLEY S.STUCHEY他による「Microwave Surface Level Monitor」
・甲第2号証:THE BELL SYSTEM TECHNICAL JOURNAL,VOLUME XXXIII,No.6,NOVEMBER 1954,P1209〜1265,S.E.MILLERによる「Waveguide as a Communication Medium」
・甲第3号証:Radar Handbook,MERRILL I.SKOLNIL編,1970年McGRAW-HILL BOOK COMPANY発行,P8-7〜8-33
・甲第4号証:TRE TRANSACTIONS ON MICROWAVE THEORY AND TECHNIQUES,P102〜110,L.B. FELSEN 他による「Measurement of Two-Mode Discontinuities in a Mutimode Waveguide by a Reasonance Technique」を提出し、
「本件特許の特許請求の範囲第1項に記載された第1発明及び同第3項に記載された第2発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明であるか、少なくとも、甲第1号証の記載に、甲第2号証、甲第3号証、及び、甲第4号証から明らかな当業者の技術常識を参照することにより、当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件特許は、特許法第49条第1項第1号の規定に違反して与えられたものであるから、同法第123条の規定により無効とされるべきである。」旨主張している。
3.甲第1号証乃至甲第4号証の記載事項
・甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「一般に、2つの基本的配置が可能である。第一に、図1に示すように、液面をモニターすべき液体(例えば、水、油、石油など)に部分的に挿入した垂直の導波管を使用するものがある。この場合には、導波管の充満された部分が反射器として働くので、入射電磁エネルギの一部は界面において反射される。系が閉じているので、周囲の物体による寄生反射はない。第2のスキームは、図2に概略的に示すように、測定される固体表面からの自由空間反射が用いられる。利用可能な反射パワーは、モニターされる粗い表面における散乱現象に依存する。明らかに、このスキームは、周囲の物体の存在による寄生反射の影響を受ける。」(86ページ左欄22行〜36行)
(イ)Fig.1には「送信機」と「受信機」を有する点がみてとれ、また、拡大図には導波管内の液体のレベルが、周囲の液体のレベルと等しくなっていることがみてとれる。
(ウ)「距離測定の精度を高めるためには、λg/λc及びλg/λoの比を減少させるので、遮断周波数よりもはるかに高い作動点が望ましいことは、式(12)からも明らかである。」(88ページ右欄の(12)式の下のパラグラフ5行〜9行)
(エ)「一例を挙げれば、H01モードで作動する矩形状の導波管に対して」
(89ページ左欄6行〜8行)

・甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(オ)「与えられた周波数では、いずれのモードについても、損失は、ガイドの横断面積を大きくすることにより望むだけ減少させることができるが、ガイドサイズの増加に伴い、他のいずれのモードにおけるよりもはるかに急速に損失が減少するモードがある。これは、直線状の丸形パイプにおける円形電気(TE01)モードである。円形電気モードの直線状丸形パイプの金属壁では、伝搬の方向に電流が流れなくなる。伝搬の方向に電流が流れないことにより、円形電気電波減衰が、周波数の増加に伴って無限に減少することになる。」(1213ページ18行〜24行)
(カ)「円形電気電波の尋常ではないこの損失対周波数特性の結果として、与えられた損失を達成するために必要な直径は、搬送周波数の増加に伴って減少する。これは、図3及び4にTE01と付記された曲線により示されている。高次の円形電波(TE0m)以外の他の導波モードは、主ウエーブ(TE11)について表した図3及び4に示す一般的形態の特性を有する。」(1215ページ1行〜7行)
・甲第3号証の8‐9ページには、あらゆる横断面形状の導波管にも適用できる一般式として式(25)を掲げている。
・甲第4号証には、マルチモードの円形導波管においてE01モードとH01モードとの結合のための不連続について記載があり、そのための構造の一例として、第109ページの図10にスパイラル形状の不連続構造が示されている。
5.対比・判断
5-1.第1の発明について
(a)一致点及び相違点の認定
甲第1号証記載の「導波管」、「入射電磁エネルギ」、「液体」、「液面モニター」は、第1の発明の「導波管7」「マイクロ波信号」、「流動材料3」、「レベル10を測定」に相当し、液体を容器に貯蔵することは技術常識であり、甲第1号証のものも液面をモニターする以上反射波による信号を電子ユニットにより信号処理することは自明なものであるから、第1の発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は「導波管を介して送信機から供給されるマイクロ波信号を使って、容器に貯蔵されている流動材料のレベルを測定する方法であって、前記導波管は、容器を経て下方へ垂直に伸び、かつ該導波管内の材料のレベルが、周囲の材料のレベルと等しくなるよう、容器と連通しており、また、前記信号は、前記レベルで反射されて導波管を通り、かつ電子ユニットで信号処理された後、容器内の材料のレベルを決定しうるようになっている受信機へ導かれるようになっている容器内流動材料のレベル測定方法」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
第1の発明では、「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器により、導波管へ供給されるようになっている」のに対して甲第1号証記載の発明では、その旨の記載がない点。
(b)相違点の技術的意義
本件第1の発明の「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器により、導波管へ供給されるようになっている」との構成の技術的意義を考察すると、第1の発明は、
第1に「波長λは、パイプの内径の1.3倍乃至1.7倍にしなければならないことを意味し、従って、代表的レーダー周波数に対し、パイプの直径は、せいぜい数cm程度にしかならない。」(本件特許公告公報明細書3ページ左欄11行〜15行)こととなり、そのため「タンクの中味が、ワックスに富んだ原油である場合、パイプが目詰まりを起こす。」(同3ページ左欄18行〜19行)という問題点があること。
第2に「従来のタンクの中にある同じ導波管は、もともと機械的測定装置として用いられるフロートを入れるためにつくられたものであり、従って、その直径は、通常、20〜30cm程度であることが望ましいとされている。もし、このような貯蔵装置を有するものを、レーダー測定装置に切り換える際、従来のタンクの基本的構成を変えずに設置することができる。また、フロートによる測定のために使われてきた大きなパイプを、引続いて使用できるとしたら、大いに価値のあることである。」(同5ページ左欄4行〜14行)ことの二つの技術的課題を有するものである。
そして、第1の発明では上記第1及び第2の技術的課題を解決するために、「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号」を採用するものである。
またさらに、本件特許公報明細書に「レーダー放射が、あらゆる不要な導波管モードを抑制して導くことができるような相当に大きな導波管が使用される。」(同3ページ左欄34行〜36行)
「本発明による導波管を用いて、正確な距離測定をおこなうために必要なことは、あらゆる不要な伝搬モードを抑制することである。」(同4ページ左欄35行〜37行)に記載されているように、 本件第1の発明は、「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号」との構成を採用したことにより、不要な伝搬モードの発生という新たな課題が生じるものであり、該不要な伝搬モードを抑制するために、第1の発明では、さらに「一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器」の構成を付け加えたものである。
つまり、本件第1の発明では「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号」の構成と「一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器」の構成とが相俟って上記技術的課題を解決するものである。
(c)相違点の判断
(新規性について)
これに対して、甲第1号証の(ウ)には、「λg/λc及びλg/λoの比を減少させるので、遮断周波数よりもはるかに高い作動点が、望ましい」と記載されており、この記載によれば、作動点は遮断周波数よりもはるかに高いものであること、言い換えれば、作動点の波長は遮断波長よりもはるかに小さいものであり、距離測定の精度を高めるためには導波管の波長λgと遮断波長λcの比が小さくすれば良いことから、上記作動点の波長が望ましいことが述べられている。
このことから甲第1号証の作動点の波長は、遮断波長との比を小さくすることが望ましいとしても、遮断波長よりもはるかに小さいものといわざるを得ない。
したがって、甲第1号証のものが、本件第1の発明の「導波管7の直径の数分の1程度の波長」との構成を示すとはいえない。
しかも、甲第1号証には、本件第1の発明が有する「パイプの直径が、波長λに比べて大きくする際の、不要な伝搬モードが発生」することについての知見さえなく、よって、「一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器」の構成は存在しない。
甲第1号証の他の記載事項をみるに、(エ)に一例として「H01モード」の記載があるだけであって(エ)の記載も「H01モード」が「パイプの直径が、波長λに比べてはるかに大きくすること」と関連付けられたものとして把握することができない。
したがって、甲第1号証には「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器により、導波管へ供給されるようになっている」の構成がなく、また、該構成が設計上の微差あるいは表現上の差異ということはできないから、第1の発明と甲第1号証記載の発明とが同一の発明とは認めることができない。
(容易性について)
甲第2号証の記載事項(オ)によれば、「与えられた周波数では、いずれのモードについても、損失は、ガイドの横断面積を大きくすることにより望むだけ減少させることができ、特に(TE01)モード時に急速に損失が減少する」旨記載されている。上記記載からは、導波管断面が円形であった場合に直径を大きくすれば損失が少なくなるということは示唆しているが、導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号を用いる点までは記載されていない。
また、同号証においてTE01モード、H01モード時にガイドの横断面積を大きくすることにより急速に損失が減少しているは、H01モードという決まった導波管モードでの知見であり、導波管波長に比べガイドの横断面積を相対的に大きくする際に生じる不要な伝搬モードの発生についての知見はない。
よって、甲第2号証には、本件第1の発明の「導波管7の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器11により、導波管7へ供給される」との構成は記載されていない。
さらに、甲第3号証及び甲第4号証の記載事項をみても「導波管7の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器11により、導波管7へ供給される」の構成は記載されていない。
そして本件第1の発明では、「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号が、一つだけの信号の主伝搬モードを生成するモード発生器により、導波管へ供給されるようになっている」の構成により、導波管の目詰まりを防止し、かつ、フロートを用いて材料レベルを検出していたときの既存管の適用が可能となるという効果を奏するものである。
したがって、本件第1の発明は、甲第1号証乃至甲第4号証の記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。

5-2.第2の発明について
第2の発明と甲第1号証記載の発明とを5-1(a)で述べた相当関係を用いて対比すると、両者は「容器1内の流動材料のレベル測定装置であって、導波管7にマイクロ信号を供給するための送信機14と、反射されたマイクロ波信号を受信するための受信機と、受信信号を用いることによって、容器中の材料のレベル10を決定しうるようになっている電子ユニットとから成り、前記導波管7は、容器1を経て垂直に下方へ伸び、かつマイクロ波信号を反射する該導波管7内の材料のレベル10が、周囲における材料のレベル10と等しくなるよう、容器1と連通している測定装置」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
第2の発明では「送信機14と導波管7との間に、一つだけの信号の主伝搬モードを生成しうるモード発生器11があり、かつ導波管7の直径が、波長より相当に大きくする」のに対して甲第1号証記載の発明では、その旨の記載がない点。
上記相違点の技術的意義は、上記5-1(b)「相違点の技術的意義」で述べた事項のうち、「第1の発明では上記第1及び第2の技術的課題を解決するために、「導波管の直径の数分の1程度の波長を有するマイクロ波信号」を採用するものである。」の記載を「第2の発明では上記第1及び第2の技術的課題を解決するために、「導波管7の直径が、波長より相当に大きくする」マイクロ波信号を採用するものである。」と置き換えたものと同様である。
甲第1号証には、上記5-1(c)の「相違点の判断」で述べたように、「作動点の波長は遮断波長よりもはるかに小さくする」旨の知見を有しており、上記相違点の後段部分に当たる「導波管7の直径が、波長より相当に大きくする」構成を示唆しているものといえる。
しかしながら、甲第1号証には、「導波管波長に比べガイドの横断面積を相対的に大きくする際に生じる不要な伝搬モードの発生」についての知見はなく、よって「送信機14と導波管7との間に、一つだけの信号の主伝搬モードを生成しうるモード発生器11」が存在していない。また、甲第2号証乃至甲第4号証の記載事項をみても上記モード発生器についての開示はない。
そして、第2の発明では、「導波管7の直径が、波長より相当に大きくする」構成と「送信機14と導波管7との間に、一つだけの信号の主伝搬モードを生成しうるモード発生器11」の構成とが相俟って、第1の発明と同様に導波管の目詰まりを防止し、かつ、フロートを用いて材料レベルを検出していたときの既存管の適用が可能となるという効果を奏するものである。
したがって、第2の発明は、甲第1号証記載の発明と同一ものでなく、また、甲第1号証乃至甲第4号証記載の発明に基づいて当業者が容易に導き出し得るものでもない。
6.むすび
したがって、審判請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-05-01 
結審通知日 2000-05-16 
審決日 2000-05-29 
出願番号 特願昭60-89868
審決分類 P 1 112・ 113- Y (G01F)
P 1 112・ 121- Y (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片寄 武彦  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
高瀬 浩一
登録日 1993-02-17 
登録番号 特許第1734107号(P1734107)
発明の名称 容器内流動材料のレベルを測定する方法および装置  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 村社 厚夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 日野 修男  
代理人 中村 稔  
代理人 小川 信夫  
代理人 竹内 英人  

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