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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
管理番号 1070270
異議申立番号 異議2000-74554  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-26 
確定日 2001-11-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3055650号「パンツ型使い捨ておむつ」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3055650号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯

特許第3055650号の請求項1ないし3に係る発明についての手続の経緯は、およそ次のとおりである。
(1)特許出願 平成7年1月31日(優先権主張平成6年10月14日)
(2)特許権の設定の登録 平成12年4月14日
(3)特許掲載公報の発行 平成12年6月26日
(4)土山健二より特許異議の申立て及び証拠調申請書の提出 平成12年12月26日
(5)田中正子より特許異議の申立て 平成12年12月26日
(6)特許の取消理由の通知の発送 平成13年5月8日
(7)特許権者より特許異議意見書の提出及び訂正請求(指定期間内) 平成13年7月2日

II.訂正の適否について

1.訂正の内容
前記I.(7)の訂正請求は、次のア〜オのとおり、明細書の記載を訂正することを求めるものである。
ア 特許異議の申立てがされている請求項1〜4について、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜4の記載、すなわち、
「【請求項1】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、
上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、
接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり、該両側縁部の接合強度は1000gf/30mm以上であることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】上記両側縁部の接合強度は3000gf/30mm以下であることを特徴とする請求項1記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】上記ウエスト開口部及び一対の上記レッグ開口部には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項4】上記ウエスト開口部と一対の上記レッグ開口部との間に存し上記吸収体の配置されている胴周囲部には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のパンツ型使い捨ておむつ。」
を、訂正明細書の特許請求の範囲の記載、すなわち、
「【請求項1】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、
上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、
接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり、該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう〕は1000〜3000gf/30mmであることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】上記ウエスト開口部及び一対の上記レッグ開口部には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】上記ウエスト開口部と一対の上記レッグ開口部との間に存し上記吸収体の配置されている胴周囲部には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパンツ型使い捨ておむつ。」
に訂正する。
イ 発明の詳細な説明の段落【0008】中の記載について、訂正前の「該両側縁部の接合強度」を、訂正明細書の「該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう〕」に訂正する。
ウ 発明の詳細な説明の段落【0026】中の記載について、訂正前の
「そして、上記の各々のパートについての接合強度〔接合部8を、その長さ方向に対して30mmの幅に切断してサンプルを作成し、得られたサンプルを引っ張り速度300mm/min の条件で図5に示す矢印方向、即ち180度剥離する方向に引っ張った際の最大(極限)の力〕は、それぞれ1000gf/30mm以上、好ましくは1000〜3000gf/30mm、更に好ましくは1500〜2000gf/30mmである。本実施例では上記の3つのパートとも平均値で約1800gf/30mmである。
即ち、本発明においては、上記接合部8を形成する上記両側縁部の接合強度は1000gf/30mm以上である。
上記の各パートの接合強度が、3000gf/30mmを超えると、接合部8を実質的に剥がす(引き裂く)ことが困難であり、1000gf/30mm未満であると、装着時に剥がれて(裂けて)しまう可能性が高くなるので、上記範囲内とするのが好ましい。」を、訂正明細書の
「そして、上記の各々のパートについての接合強度〔接合部8を、その長さ方向に対して30mmの幅に切断してサンプルを作成し、得られたサンプルを引っ張り速度300mm/min の条件で図5に示す矢印方向、即ち180度剥離する方向に引っ張った際の最大(極限)の力〕は、それぞれ1000〜3000gf/30mm、好ましくは1500〜2000gf/30mmである。本実施例では上記の3つのパートとも平均値で約1800gf/30mmである。
即ち、本発明においては、上記接合部8を形成する上記両側縁部の接合強度は1000〜3000gf/30mm以上である。
上記の各パートの接合強度が、3000gf/30mmを超えると、接合部8を実質的に剥がす(引き裂く)ことが困難であり、1000gf/30mm未満であると、装着時に剥がれて(裂けて)しまう。」
に訂正する。
エ 発明の詳細な説明の段落【0028】末尾の記載について、訂正前の「また、この際の上記の接合固定された接合部8の接合強度は、1000gf/30mm以上である。」を、訂正明細書の「また、この際の上記の接合固定された接合部8の接合強度は、1000〜3000gf/30mmである。」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
アの訂正は、訂正前の請求項1〜4の記載において、その請求項1を削除し、残る請求項2〜4を順次繰り上げて新請求項1〜3とし、これに対応してこの新請求項2〜3が引用する請求項を新請求項1のみとし、併せて、新請求項1の記載において、両側縁部の接合強度について定義を加えたものに相当するから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ〜エの訂正は、アの訂正に整合させて、対応する発明の詳細な説明に所要の訂正を行うものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、これらの訂正は、いずれも願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、訂正前の請求項1〜4に記載された事項により特定される発明の具体的な目的の範囲を逸脱してその技術的事項を変更するもの等に該当しないから、当該訂正は、特許請求の範囲を実質上拡張するものでも変更するものでもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、ア〜エの訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについて

1.本件発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「第1発明ないし第3発明」という。)は、前記II.1.アに摘記した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1を再掲すれば次のとおりである。
「【請求項1】液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、
上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、
接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり、該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう。〕は1000〜3000gf/30mmであることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。」

2.特許異議の申立ての理由の概要

(1)特許異議申立人土山健二は、後記の甲第1号証ないし甲第6号証、「参考説明図」及び検甲第1号証を提出し、次の(サ)ないし(ス)の理由により、訂正前の請求項1ないし4に係る特許は取り消されるべきものであると主張し、検甲第1号証について証拠調を申請している。なお、特許異議申立書の証拠方法欄において、甲第4号証の2を「実開平4-44920号公報」としているのは、添付書類から見て、同号公開実用新案公報に係る実用新案登録出願の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムを意味するものと解されるので、甲第4号証の2を後記のとおりのものと認める。
(サ)訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第6号証を参照すれば、甲第1号証ないし甲第3号証の各刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(シ)訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第4号証の2の刊行物及び提出した「参考説明図」を参照すれば、出願公開がされた甲第4号証の1の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明といえるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
(ス)訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第5号証の1及び甲第5号証の2を参照すれば、検甲第1号証の「ムーニーマンおんなの子用ビッグサイズ」現品により公然知られ又は公然実施をされた発明といえるから、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し、特許を受けることができないものである。
【証拠方法】
甲第1号証:特表平6-500153号公報
甲第2号証:特開平5-239754号公報(以下「刊行物2」という。)
甲第3号証:特開平5-317356号公報
甲第4号証の1:特願平5-169202号の明細書及び図面(特開平7-75653号公報参照)
甲第4号証の2:実願平2-111729号(実開平4-44920号)のマイクロフィルム
甲第5号証の1:1994年2月現在のユニ・チャーム総合カタログ
甲第5号証の2:ダイオーペーパーコンバーティング株式会社消費開発部所属近藤耕司作成の実験成績証明書
甲第6号証:旭化成工業株式会社作成のダイオー・ペーパーコンバーティング株式会社向け「材料仕様書」
検甲第1号証:ユニ・チャーム株式会社が本件特許出願前に市販していたパンツ型使い捨て紙おむつとして「ムーニーマンおんなの子用ビッグサイズ」現品

(2)特許異議申立人田中正子は、後記の甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、次の(セ)の理由により、訂正前の請求項1ないし4に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。
(セ)訂正前の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証の各刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
【証拠方法】
甲第1号証:特開昭53-19246号公報(以下「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開昭61-207605号公報(以下「刊行物4」という。)
甲第3号証:特開平6-181949号公報(以下「刊行物3」という。)
甲第4号証:特開平5-317356号公報(以下「刊行物5」という。)

3.当審の取消理由において引用した刊行物とその記載内容

当審では、前記I.(6)の特許の取消理由において、前記の刊行物1〜5及び職権探知による刊行物6を引用した。
(1)刊行物1(特開昭53-19246号公報)の記載内容
(1-1)刊行物1には、次のa〜fの事項が図面(第1〜17図)とともに記載されている(aにおいては便宜上段落を設けた。)。
a 「乳児の排泄訓練または失禁状態の子供や大人に使用するのに適した伸縮性不織布から構成された多層構造の単一の使い捨て下ばきであって:
前部および後部と、この前部と後部をつなげる股の部分とからなり;
前身の両脇外周部は後身の対応する脇外周部と接合されていて、自然フイツトするウエスト部と自然フイツトする脚開口部とを形成しており;
該下ばきは着用者の皮膚に触れるのに適合する伸縮性布はくの透水性内層と、水不透過性の伸縮性外層と、これらの間にはさみこまれた中間の液体吸収体とを有し;
該下ばきの破断時伸びは前部と後部のたて中心線の方向に少なくとも約80%で、このたて中心線と実質的に垂直の方向に少なくも約40%である
上記使い捨て下ばき。」《特許請求の範囲欄第12項》
b 「近年、使い捨ておむつは、いったん汚れたら洗濯しなければならない布製おむつとは異なるその簡便さが主にうけて、市場にも大いに出回ってきている。しかし、おむつから普通の再使用できる下ばき(パンツ)への移行期間中に使用しうるような使い捨てのトレーニングパンツはなお要望されている。この種の下ばき製品は、その吸収性、フイツトすること、使い捨て可能であることのために、失禁状態の大人や子供にも有用であろう。」《3頁左下欄下から5行〜右下欄5行》
c 「本発明の使い捨て下ばきは、排泄訓練期間中にトレーニングパンツとして使用するのに特によく適したものである。この下ばきは伸縮性不織布1枚またはこれを2枚以上重ねたものから構成される。《中略》下ばきの内層すなわち前面層には、着用者の皮膚との接触用の柔かい表面を有する最も内側の1枚の層が設けられ、排泄された体液はこれを容易に通過していくことができ、所望により体液の吸収体も設けることができる。一方、下ばきの外層、すなわち裏面層は、効果的な液体バリアーとなり、体液のしみ通りを防ぐか、または実質的に最小限にする少なくとも1枚の層が設けられている。」《4頁左下欄10行〜右下欄7行》
d 「次に、第1図と第2図の好ましい具体例を参照すると、ベビー用トレーニングパンツ1は、前部2、後部3、股部4、前ウエストバンド区域5と後ウエストバンド区域6(両者は一体になって自然フイツトするウエストバンドを形成する)、脇とじ目7と8,ならびに自然フイツトする脚穴9と10を有する多層構造体である。脇とじ7と8はそれぞれ接着剤線11と18のような接合線によって固着されている。」《6頁右上欄下から7行〜左下欄2行》
e 「脇のとじ目7と8はいくつかの方法で形成しうる。好ましい構成を第8図に示す。それぞれブランク12と112のたて方向の脇外周部28と130を突き合せにつなげる。そうすれば、ブランク12の外周部32は突き合せに接触している外周部28と130の片面側に重なり、外周部126は同じ突き合せ外周部の反対側の面に重なりあって、脇とじ目7(第2図)を形成し、これはその後、追加の接着剤線80と86によってシールされる。同様にパンツの反対側の脇のとじ目8も、《中略》によって形成される。このような脇とじの構成は3層分の厚みのみの脇とじを与える。」《9頁左上欄12行〜右上欄8行》
f 「布はくと接着剤との接合は布はく自体より弱いので、第8図に図示したような上述の好ましい脇とじの構成により、パンツが汚れたときにパンツをとじ目のところで引き裂いて簡単に脱がすことが可能である。」《9頁右上欄末行〜左下欄4行》
(1-2)前記a中段にいう「伸縮性布はく」や前記fにいう「布はく」とは、前記cの記載から見て、前記a冒頭にいう「伸縮性不織布」を意味するものと解され、また、「着用者の皮膚に触れるのに適合する伸縮性布はくの透水性内層と、水不透過性の伸縮性外層と、これらの間にはさみこまれた中間の液体吸収体」とは、使い捨て下ばきの吸収性本体を構成し、さらに前記fにいう「布はくと接着剤との接合は布はく自体より弱い」とは、技術常識を勘案すると、「脇とじ目の接合強度が布はく(つまり伸縮性不織布)の引張強度よりも小さいこと」を意味するものと解されるから、前記a〜fの記載を図面の記載を参照しつつ総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(便宜上段落を設けた。)。
【引用発明】「着用者の皮膚に触れるのに適合する透水性内層を構成する伸縮性不織布と、水不透過性外層を構成する伸縮性不織布と、これらの間にはさみこまれる中間の液体吸収体とを有する吸収性本体を備え、
前部及び後部と、この前部と後部とをつなげる股の部分とからなり、前身の両脇外周部は後身の対応する脇外周部と接合されて脇とじ目を形成するとともに、自然フイツトするウエスト部と自然フイツトする脚開口部とを形成しており、
汚れたときにその脇とじ目のところで引き裂いて簡単に脱がすことができる、乳児の排泄訓練または失禁状態の子供や大人に使用するのに適する、伸縮性不織布から構成された多層構造の単一の使い捨てトレーニングパンツにおいて、
脇とじ目の接合強度は、前記透水性内層又は水不透過性外層を構成する伸縮性不織布の引張強度よりも小さく、
脇とじ目は、前記透水性内層を構成する伸縮性不織布及び前記水不透過性外層を構成する伸縮性不織布を含み、
該使い捨てトレーニングパンツの破断時伸びが前部と後部のたて中心線の方向に少なくとも約80%で、このたて中心線と実質的に垂直の方向に少なくも約40%である
使い捨てトレーニングパンツ。」

(2)刊行物2(特開平5-239754号公報)の特許請求の範囲欄、段落【0001】、【0002】、【0019】、実施例、比較例、表1等の記載を総合すると、同刊行物には、次のgの事項が記載されていると認められる。
g 「使い捨ておむつの身体に接触する側の表面材に用いる不織布として、縦方向(つまりMD方向)及び横方向(つまりCD方向)の引張強力の平均値である引張強度が4.2〜5.4kg/5cm(すなわち4200〜5400gf/50mm)の不織布を使用すること」

(3)刊行物3(特開平6-181949号公報)の特許請求の範囲欄、段落【0001】〜【0006】、【0016】、実施例、比較例、表1等の記載を総合すると、同刊行物には、次のhの事項が記載されていると認められる。
h 「使い捨ておむつの身体に接触しない側の表面材に用いる多孔性フィルムとして、引張強度が縦(つまりMD方向)1.5〜12kg/25mm(すなわち3000〜24000gf/50mm)、横(つまりCD方向)0.5〜10kg/25mm(すなわち1000〜20000gf/50mm)の多孔性フィルムを使用すること」

(4)刊行物4(特開昭61-207605号公報)の特許請求の範囲欄第1〜11項、4頁左下欄2〜18行、5頁右上欄6〜16行、5頁左下欄7行〜右下欄4行、7頁左上欄10行〜左下欄5行、8頁左上欄4行〜右上欄5行、8頁右下欄下から3行〜9頁左上欄2行、9頁右上欄4〜10行、9頁右下欄4〜11行、図面(第1〜12図)等の記載を総合すると、同刊行物には、次のi〜jの事項が記載されていると認められる。
i 「前板及び後板の側縁部分の一部を互いに接合した側部シームを具備し、使用後に、この側部シームを手で引き剥がして廃棄するタイプの使い捨てパンツにおいて、パンツの形態保持及び側部シームの引き剥がしの容易達成のために、側部シームの接合強度を約2000グラム/インチ(すなわち約2400gf/30mm)とすること」
j 「前記接合強度は、インストロン張力テスタ(すなわちインストロン型引張試験機)のような適当な器具で測定した値であること」

(5)刊行物5(特開平5-317356号公報)の特許請求の範囲欄、段落【0001】、【0011】、【0017】、図面(図1〜8)等の記載を総合すると、同刊行物には、次のk〜lの事項が記載されていると認められる。
k 「前後見頃の胴回りの対向側部を互いに重ね合せ、前後身頃の一方の胴回り対向側部に外側へ延出するように設けた各締結片の基端部を前後見頃の胴回りの対向側部にそれぞれ重ね合せ、これら重ね合せ部を一体に接合し、これら接合部よりも内側であってこれら接合部にそれぞれ近接する前記前身頃の部位にはこれら接合部に沿って前身頃を後身頃から切り離すための切断線を設けてあり、使用後に、この前身頃に設けた切断線からその対向側部を後見頃のそれから切り離して廃棄するタイプの使い捨てオムツにおいて、着用時や前記切り離し時に前後身頃どうしの接合部が剥がれないようにするため、前後身頃どうしの接合部の接合強度(剥離強度)を1000g/インチ(すなわち約1200gf/30mm)以上とすること」
l 「前記接合強度(剥離強度)は、接合部を、その長さ方向に対する直交方向に1インチの幅の細片に切断し、この細片を、引っ張り速度100mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいうこと」

(6)刊行物6(特開平4-166150号公報)の特許請求の範囲欄、5頁左上欄11行〜右上欄4行、5頁右上欄下から4行〜左下欄1行、図面(第1〜7図)等の記載を総合すると、同刊行物には、次のm〜nの事項が記載されていると認められる。
m 「パンツ型使い捨ておむつにおいて、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材を設けること」
n 「パンツ型使い捨ておむつにおいて、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部との間に存し吸収体の配置されている胴周囲部には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材を設けること」

4. 対比・判断

(1)第1発明について
(1-1)第1発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の
「着用者の皮膚に触れるのに適合する透水性内層を構成する伸縮性不織布」、「水不透過性外層を構成する伸縮性不織布」、「これらの間にはさみこまれる中間の液体吸収体」、「前部及び後部と、この前部と後部とをつなげる股の部分とからなり、前身の両脇外周部は後身の対応する脇外周部と接合されて脇とじ目を形成するとともに、自然フイツトするウエスト部と自然フイツトする脚開口部とを形成しており」、「汚れたときにその脇とじ目のところで引き裂いて簡単に脱がすことができる、乳児の排泄訓練または失禁状態の子供や大人に使用するのに適する」、「伸縮性不織布から構成された多層構造の単一の使い捨てトレーニングパンツ」、「脇とじ目」、「引張強度」、「前記透水性内層を構成する伸縮性不織布及び前記水不透過性外層を構成する伸縮性不織布を含み」は、順に、
第1発明の
「液透過性のトップシート」、「液不透過性のバックシート」、「これら両シート間に配置される吸収体」、「該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され」、「使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄される」、「パンツ型使い捨ておむつ」、「両側縁部の接合部」又は「接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部」、「強力」、「少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり」に相当し、また、第1発明では、パンツ型使い捨ておむつの両側縁部の接合強度とトップシート及び/又はバックシートのおむつの縦方向における強力との大小関係は問わないし、パンツ型使い捨ておむつの破断時伸び率は任意であるから、両者は、次の一致点(便宜上段落を設けた。)で一致し、相違点カでのみ相違する。
【一致点】「液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、
該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、
使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、
接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなる
パンツ型使い捨ておむつ。」
【相違点カ】第1発明では、「上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう〕は1000〜3000gf/30mmである」と規定するのに対し、引用発明では、前記強力及び前記接合強度の数値に言及しない点。
(1-2)この相違点カについて検討する。
(トップシート、バックシートのおむつの縦方向における強力の数値限定について)
(i)刊行物2の前記gの記載から、使い捨ておむつの身体に接触する側の表面材つまりトップシートに用いる不織布として、MD方向及びCD方向の引張強力の平均値である引張強度が4200〜5400gf/50mmの不織布が知られ、(ii)通常、この不織布のMD方向の引張強度は平均値であるこの値より高めであり、CD方向の引張強度は平均値であるこの値より低めであると推定される上、この不織布はMD、CDいずれの方向をも使い捨ておむつの縦方向とすることが適宜できるものであり、しかも、(iii)この使い捨ておむつのトップシート用の不織布を、使い捨ておむつの一態様である引用発明のパンツ型使い捨ておむつに適用することを妨げる特段の事情もないから、引用発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、「上記トップシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり」と規定することは、刊行物2の記載から当業者が容易に想到しうることである。
また、(iv)刊行物3の前記hの記載から、使い捨ておむつの身体に接触しない側の表面材つまりバックシートに用いる多孔性フィルムとして、引張強度が、MD方向で3000〜24000gf/50mm、CD方向で1000〜20000gf/50mmの多孔性フィルムが知られ、(v)この多孔性フィルムはMD、CDいずれの方向をも使い捨ておむつの縦方向とすることが適宜できるものであり、しかも、(vi)この使い捨ておむつのバックシート用の多孔性フィルムを、使い捨ておむつの一態様である引用発明のパンツ型使い捨ておむつに適用することを妨げる特段の事情もないから、引用発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、「上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり」と規定することは、刊行物3の記載から当業者が容易に想到しうることである。
さらに、「上記トップシート又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり」と規定することが、前説示のように刊行物2〜3の記載から当業者の容易に想到しうることである以上、引用発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、「上記トップシート及び上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり」と規定することも、これら刊行物の記載から当業者が容易に想到しうることである。
そして、第1発明が、「上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり」と規定することによって、当業者の予期しない格別の作用効果を奏するものともいえない。トップシート及び/又はバックシートのおむつの縦方向における強力が一定の値以上ならば、パンツ型使い捨ておむつの使用後の引き剥がし操作時に、接合部の側部に存在するトップシートやバックシートを構成する材料が横方向へ裂けにくくなるのは当然のことにすぎない。
(両側縁部の接合強度の数値限定について)
(vii)刊行物4の前記iの記載から、使用後に側部シームつまり両側縁部の接合部を引き剥がして廃棄するタイプの使い捨てパンツつまりパンツ型使い捨ておむつにおいて、両側縁部の接合部の引き剥がしの容易達成のために、該接合部の接合強度を約2400gf/30mmとすることが知られ、他方、(viii)刊行物5の前記kの記載から、使用後に、前身頃に設けた切断線からその対向側部を後見頃のそれから切り離して廃棄するタイプの使い捨てオムツつまりパンツ型使い捨ておむつにおいて、着用時に前後身頃どうしの接合部つまり両側縁部の接合部が剥がれないようにするため、両側縁部の接合部の接合強度を約1200gf/30mm以上とすることが知られるから、引用発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、「該両側縁部の接合強度は1000〜3000gf/30mmである」と規定することは、刊行物4〜5の記載から当業者が容易に想到しうることである。
そして、第1発明が、「該両側縁部の接合強度は1000〜3000gf/30mmである」と規定することによって、当業者の予期しない格別の作用効果を奏するものともいえない。両側縁部の接合強度が一定の範囲内にあれば、パンツ型使い捨ておむつの着用中には接合部が剥がれにくく、使用後の脱衣時には接合部が縦方向に引き剥がし易くなるのは当然のことにすぎない。
ところで、第1発明では、両側縁部の接合強度をその測定法により定義している。しかし、当該測定法は、刊行物4の前記jや刊行物5の前記lに記載されている両側縁部の接合強度の測定法と実質上差異はなく、しかも、特許権者は、前記II.1の訂正により、請求項1の記載において、接合強度の測定法を加えるのみで、それがこれら刊行物記載の測定法と異なるとの主張もしていないから、第1発明でことさら当該定義をしたこと自体には格別の意義がないものと認められる。したがって、当該定義によっては、第1発明にいう両側縁部の接合強度と刊行物4〜5記載のそれとを区別することはできない。
(トップシート、バックシートのおむつの縦方向の強力の数値限定と両側縁部の接合強度の数値限定との組み合せについて)
前記I.(7)の特許異議意見書15〜16頁の記載によれば、第1発明は、トップシート、バックシートのおむつの縦方向の強力の数値と両側縁部の接合強度の数値との大小関係に特徴を有するものでなく、これらの数値は個々に独立していて、これらを組み合わせた点に特徴を有するものであるという。それならなおのこと、引用発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、刊行物2〜5によって知られるトップシート、バックシートのおむつの縦方向の強力や両側縁部の接合強度のそれぞれの数値を当てはめることは、当業者にとって容易になしうることであるというほかない。そして、これらの数値を組み合わせた点にも格別の意義がない。
(1-3)したがって、第1発明は、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)第2発明について
第2発明は、第1発明において、「上記ウエスト開口部及び一対の上記レッグ開口部には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材が設けられていること」を規定するものであるが、この点は前記mのように刊行物6に記載されており、これを第1発明に加えることに何らの困難性もなく、しかも、これによって当業者の予期しない格別の作用効果を奏するものでもないから、第2発明も、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)第3発明について
第3発明は、第1発明において、「上記ウエスト開口部と一対の上記レッグ開口部との間に存し上記吸収体の配置されている胴周囲部には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材が設けられていること」を規定するものであるが、この点は前記nのように刊行物6に記載されており、これを第1発明に加えることに何らの困難性もなく、しかも、これによって当業者の予期しない格別の作用効果を奏するものでもないから、第3発明も、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.特許権者の主張に対して

特許権者は、前記I.(7)の特許異議意見書16頁において、(i)パンツ型使い捨ておむつの着用中に接合部が剥がれない程度に十分に高い接合強度を確保しつつ、(ii)同おむつを脱ぐときには接合部を縦方向に引き剥がし易くし、しかも、(iii)同おむつの引き剥がし操作時に、接合部の側部に存する材料を横方向へ裂けにくくするという各解決課題が刊行物1〜6に示されていないと主張している。
しかし、前記(i)は刊行物5の前記kの記載から知られ、前記(ii)は刊行物4の前記iの記載のほかに刊行物1の前記fの記載からも知られ、前記(iii)は、引き剥がし型のパンツ型使い捨ておむつを製作、試用する当業者にとって当然の課題であると考えられる(引き剥がし操作時に接合部側部の構成材料が裂けたり千切れたりするようでは具合が悪いことは自明である。)うえ、仮に、この(iii)の課題が刊行物1〜6の記載から知られなくても、前説示のように、第1発明ないし第3発明は、これらの刊行物に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、前記主張は失当である。

V.むすび

以上のとおりであるから、請求項1ないし3に係る発明は、本件出願前に国内において頒布された刊行物1〜6に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定ににより特許を受けることができないものである。
したがって、請求項1ないし3に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであると認められる。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パンツ型使い捨ておむつ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、
上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、
接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり、該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう〕は1000〜3000gf/30mmであることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】 上記ウエスト開口部及び一対の上記レッグ開口部には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】 上記ウエスト開口部と一対の上記レッグ開口部との間に存し上記吸収体の配置されている胴周囲部には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のパンツ型使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、前見頃と後ろ見頃とを接合してなるパンツ型使い捨ておむつに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、歩けるようになった赤ちゃんを中心としてパンツタイプのオムツの需要が高まっている。
この要因としては、従来からあるフラットタイプのオムツでは装着がしにくいという問題がある一方、パンツタイプのオムツでは赤ちゃんを立ち上がらせた状態で、引き上げてはかせることができ、赤ちゃんに装着する母親の使い勝手が格段に向上したためであると考えられる。
【0003】
しかし、このパンツタイプのオムツは、使い勝手において排便時の廃棄がしにくいという欠点がある。
即ち、フラットタイプのおむつでは、使用後のそのテープを外すことにより排便時においても簡単に脱着が可能である。一方、パンツタイプのオムツでは、前見頃と後ろ見頃との接合部を引き剥がす(引き裂く)必要がある(もちろん足を抜かせ脱がせることも可能ではあるが、赤ちゃんの肌に便が付着する恐れがある)が、この部分には力が集中しやすいため、装着状態では接合部は強固に接合されていることが望ましく、従来のパンツタイプのおむつでは上記接合部の強度が高過ぎて、該接合部を引き裂くためにはかなりの力を要する(問題1)。
しかも、引き裂き時におむつの幅方向におむつの構成素材が裂け、実質的に引き裂くことが出来なかったり、或いは、弾性体のような他の材料が残り、無理に引き裂こうとすると伸びきった弾性体(帯状ゴム等)が母親の手に当たり、引き裂きの動作を妨害したりする(問題2)。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するために接合部のシールパターンを特定のパターンとしたおむつが実開平6-31721号公報に提案されているが、このおむつでは、前述の問題1は解決できるものの、上記問題2は解決できず、更には、シールパターンが複雑になり、工程の管理が煩雑になる。また、接合部の接合強度を特定の範囲とし、上記問題1を解決することも提案されているが、該提案も、上記問題2を解決できるものではなかった。
【0005】
また広い意味での引き裂き易さを向上させるために接着部分の脇にミシン目を設けることが実開平1-141711号公報に提案されている。この提案によれば、引き裂き易さは確かに向上するが、装着中に上記ミシン目でおむつが破れてしまい、おむつが剥がれてしまうことがある。
【0006】
即ち、上記問題1及び2を共に解決する技術は、未だ提案されておらず、そのような技術が要望されているのが現状である。
【0007】
従って、本発明の目的は、パンツ型使い捨ておむつにおける接合部の引き剥がし(引き裂き)易さを向上せしめ、使い勝手をさらに向上させたパンツ型使い捨ておむつを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に配置される吸収体とを有する吸収性本体を備え、該吸収性本体における着用者の腹側に位置する腹側部及び背側に位置する背側部それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成され、使用後に該両側縁部の接合部が引き剥がされて廃棄されるパンツ型使い捨ておむつにおいて、上記トップシート及び/又は上記バックシートは、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上であり、接合固定される上記腹側部及び上記背側部の両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートからなり、該両側縁部の接合強度〔この接合強度は、上記接合部を、その長さ方向に対する直交方向に30mmの幅の複数の細片に切断し、これらの細片を、それぞれ引っ張り速度300mm/min、180度の剥離角度で引っ張る方法により測定される最大(極限)の力をいう〕は1000〜3000gf/30mmであることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。(以下、「第1発明」という場合には、この発明をいう。)を提供することにより上記目的を達成したものである。
【0009】
【0010】
【作用】
本発明によるパンツ型使い捨ておむつによれば、吸収製本体の両側縁部を接合固定して形成される接合部を構成するシートのうち、少なくとも1枚のシートは、おむつの縦方向の対する強力が強く、通常のおむつの引き裂き操作ではおむつの幅方向に裂けることがないため、接合部のおむつの縦方向に対する引き剥がし(引き裂き)を容易に行うことができる。
【0011】
【実施例】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を詳述する。
先ず、添付図面の図1〜5を参照し、第1発明の実施例を詳細に説明する。
ここで、図1は、第1発明のパンツ型使い捨ておむつの実施例を示す斜視図であり、図2は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつの展開図であり、図3は、図2に示す展開したパンツ型使い捨ておむつの分解斜視図である。
また、図4は、図1に示すおむつの接合部を示す拡大斜視図であり、図5は、接合部の強力の測定方法の概略を示す概略図である。
【0012】
図1〜図3に示す本実施例のパンツ型使い捨ておむつ1は、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これら両シート間に配置される吸収体4とを有する吸収性本体5を備え、該吸収性本体5における着用者の腹側に位置する腹側部6及び背側に位置する背側部7それぞれの両側縁部の接合固定により、ウエスト開口部10及び一対のレッグ開口部20が形成されている。
【0013】
更に詳述すると、上記パンツ型使い捨ておむつ1においては、腹側部6の側縁部6aと背側部7の側縁部7a及び腹側部6の側縁部6bと背側部7の側縁部7bが、それぞれ接合固定されて接合部8が形成されている。
また、上記ウエスト開口部10及び一対の上記レッグ開口部20には、それぞれその周縁部全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する弾性部材11,21が設けられており、更に、上記ウエスト開口部10と一対の上記レッグ開口部20との間に存し上記吸収体4の配置されている胴周囲部30には、その全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成する複数の弾性部材31が設けられている。
また、上記腹側部6及び上記背側部7の上記両側縁部は、それぞれ上記トップシート2及び上記バックシート3並びに上記各弾性部材11,21,31により形成されており、上記接合固定は、上記両側縁部における上記トップシート2同士が当接するようにしてなされている。
【0014】
上記ウエスト開口部10に設けられている上記弾性部材11は、腹側部6と背側部7とにそれぞれ3本づつ等間隔に設けられており、上記接合固定により連結されて、上記ウエスト開口部10の全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成するようになされている。
上記弾性部材11としては、通常使い捨ておむつに用いられる弾性部材であれば特に制限なく用いることができるが、上記弾性部材11は、天然ゴム、合成ゴム、発泡ポリウレタンなどからなる糸状体又は帯状体として上記トップシート2と上記バックシート3とに連続的に接合されている。尚、本実施例においては、帯状体が用いられている。また、その伸長率は、80%〜140%の範囲とするのが好ましい。尚、本発明において、上記「伸長率」は、伸長率100%を、例えば長さ10cmのものを20cmに伸長すること、即ち2倍の長さに伸長することとして定義したものである。
【0015】
また、上記レッグ開口部20に設けられている上記弾性部材21は、腹側部6と背側部7とにそれぞれ2本づつ、等間隔に且つおむつの股下部において吸収体4を横断するようにして設けられており、上記接合固定により連結されて、上記レッグ開口部20の全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成するようになされている。
上記弾性部材21としては、通常使い捨ておむつに用いられる弾性部材であれば特に制限なく用いることができるが、天然ゴム、合成ゴム、発泡ポリウレタンなどからなる糸状体又は帯状体としてトップシート2とバックシート3とに連続的に接合されている。尚、本実施例においては、糸状体が用いられている。また、その伸長率は、60%〜100%の範囲とするのが好ましい。
【0016】
また、上記胴周囲部30に設けられている上記弾性部材31は、腹側部6と背側部7とにそれぞれ4本づつ、上記ウエスト開口部10に近づく程各弾性部材31の間隔が狭くなるように設けられており、上記接合固定により連結されて、上記胴周囲部30の全周に亘って実質的に連続したギャザーを形成するようになされている。
上記弾性部材31としては、通常使い捨ておむつに用いられる弾性部材であれば特に制限なく用いることができるが、その形状は糸状であるのが好ましい。また、その伸長率は、80%〜120%の範囲とするのが好ましい。
また、上記伸長率は、上記ウエスト開口部10に近づく程各弾性部材31の伸長率が高くなるようになされているのが好ましい。上記伸長率の変化率は、40%とするのが好ましい。
【0017】
また、本実施例のパンツ型使い捨ておむつ1には、図1及び図2に示すように、上記胴周囲部30の下部に位置し且つ着用者の排尿部近傍に位置する、排尿ポイント部40に、おむつの幅方向に向けて連続したギャザーを形成する弾性部材41が、4本それぞれ等間隔で設けられている。
ここで、上記「排尿部近傍」とは、着用者がおむつを着用した際に排尿部自体及びその周辺に位置する部分を意味し、具体的には、一対の上記レッグ開口部20の間に位置する、腹側部6の股下領域を意味する。
【0018】
また、上記トップシート2、上記バックシート3及び上記吸収体4は、それぞれ、中央が括れた砂時計状に形成されており、これらを形成する材料としては、下記するものを用いることができる。
【0019】
上記トップシート2の材料としては、排泄物を吸収体4へ透過させる液透過性シートで肌着に近い感触を有したものが好ましく、このような液透過性シートとしては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等が好ましく挙げられる。また、上記トップシート2には、その周縁部にシリコン系油剤、パラフィンワックス等の疎水性化合物を塗布する方法や、あらかじめアルキルリン酸エステルのような親水性化合物を全面に塗布し、次いでその周縁を温水で洗浄する方法により撥水処理を施し、周縁部における尿等のにじみによるモレを防止することができる。
本実施例では、上記トップシート2として不織布を用い、その強力は、おむつの縦方向(MD)が約3500gf/50mm、おむつの幅方向(TD)が約1500gf/50mmである。即ち、本実施例のトップシート2は、長尺シートの不織布の長手方向(TD)がおむつの幅方向に配され、その幅方向(MD)がおむつの縦方向に配されている。
【0020】
上記バックシート3の材料としては、熱可塑性樹脂にフィラーを加えて延伸した液不透過性かつ蒸気を透過させる蒸気透過性のシートが用いられ、肌着に近い感触を有したもの、たとえば、フィルムと不織布との複合材、あるいはフィルムと織布との複合材料等が用いられる。
本実施例では、フィルムと不織布との複合材を用い、その強力は、おむつの縦方向(MD)が約3000gf/50mm、おむつの幅方向(TD)が約600gf/50mmである。即ち、本実施例のバックシート3は、長尺シートの不織布の長手方向(TD)がおむつの幅方向に配され、その幅方向(MD)がおむつの縦方向に配されている。
尚、上記強力は、JIS L1096 6.12に準じ、チャック間距離を150mmとして、測定した時の最大値である。
【0021】
上記吸収体4の材料としては、解繊パルプを主材とし、高分子吸水ポリマーを併用したものが好ましく、その他熱可塑性樹脂、セルロース繊維、あるいは高分子吸水ポリマーの混合物に熱処理したものが好ましい。高分子吸水ポリマーの存在位置は、上層、中層、下層のいずれであってもよく、パルプと混合したものであっても良い。高分子吸水ポリマーは自重の20倍以上の液体を吸収して保持する性能を有し、ゲル化する性質を有する粒子状のものが好ましく、このような高分子吸水ポリマーとしては、デンプン-アクリル酸(塩)グラフト共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、アクリル酸(塩)重合体等が好ましい。
【0022】
また、上記吸収体4における長手方向の長さL1は好ましくは300mm〜600mm、本実施例では約430mm、くびれた部分の幅L2は好ましくは80mm〜110mm、本実施例では約100mmに形成されている。また、吸収体4の腹側、背側における幅L3は、好ましくは120mm〜350mm、本実施例では、約200mm、吸収体4から延出するサイドフラップの幅L4は好ましくは、10mm〜150mm、本実施例では約90mmである。
【0023】
また、図2に示すように、上記背側部7には、廃棄処理用のファスニングテープ60が設けられており、該ファスニングテープ60によりおむつの廃棄時に衛生的に廃棄することができる。
【0024】
上記接合部8を形成する際における、接合方法としては超音波シール、ヒートシール、高周波シールなど既知の接合方法を用いることができ、本実施例では、ヒートシールにより接合した。
【0025】
而して、本実施例のパンツ型使い捨ておむつ1は、上記トップシート2及び/又は上記バックシート3は、おむつの縦方向における強力が1500gf/50mm以上、好ましくは2000gf/50mm〜4500gf/50mmの範囲である。尚、本実施例においては、上述の如く、上記トップシートのおむつの縦方向における上記強力が3500gf/50mmであり、上記バックシートのおむつの縦方向における上記強力が3000gf/50mmである。
上記強力が、1500gf/50mm未満であると、おむつの廃棄時に上記接合部8をおむつの縦方向に引き剥がす(引き裂く)際に、おむつの幅方向に裂け目が入ってしまい引き裂くのが困難になる。
尚、上記強力は、JIS L1096 6.12に準じ、チャック間距離を150mmとして、測定した時の最大値である。
【0026】
また、上記接合部8は、その部分に入っているギャザーにより大きく3つのパート、即ち、図4に示すように、ウエストギャザーパート8a、胴周囲パート8b、レッグギャザーパート8cに分けられ、同一条件で接合しても、この3つのパートによりそれぞれの接合強度が異なる可能性がある。
そして、上記の各々のパートについての接合強度〔接合部8を、その長さ方向に対して30mmの幅に切断してサンプルを作成し、得られたサンプルを引っ張り速度300mm/minの条件で図5に示す矢印方向、即ち180度剥離する方向に引っ張った際の最大(極限)の力〕は、それぞれ1000〜3000gf/30mm、好ましくは1500〜2000gf/30mmである。本実施例では上記の3つのパートとも平均値で約1800gf/30mmである。
即ち、本発明においては、上記接合部8を形成する上記両側縁部の接合強度は1000〜3000gf/30mmである。
上記の各パートの接合強度が、3000gf/30mmを超えると、接合部8を実質的に剥がす(引き裂く)ことが困難であり、1000gf/30mm未満であると、装着時に剥がれて(裂けて)しまう。
【0027】
本実施例のパンツ型使い捨ておむつは、上述の如き構成を採用しているので、上記接合部8が使用時にはほつれて裂けることがなく、おむつの廃棄時に接合部8を引き剥がす(引き裂く)際に、引き裂き易いものである。また、このときにおむつの幅方向(引き裂き方向と90度方向)におむつの構成素材が裂けることのないものである。
【0028】
尚、上記の第1発明の実施例では、上記トップシート及び上記バックシートの両方が上記の範囲内の強力を有するものを例示して説明したが、上記トップシートと上記バックシートとの何れか一方が上記の範囲内の強力を有していればよい。
また、上記の第1発明の実施例では、上記両側縁部が上記トップシート及び上記バックシートの2枚のシートにより形成されているものを例示して説明したが、上記トップシート及び上記バックシートのいずれか一方とこれら以外の他のシートとの2枚のシートにより形成することもできる。即ち、本発明のパンツ型使い捨ておむつにおいて、上記両側縁部は、少なくとも上記トップシート及び/又は上記バックシートを含む2枚のシートにより形成することができる。この際、上記両側縁部を形成する上記トップシート及び上記バックシートのうち少なくとも何れか一方は、上述のおむつの縦方向に対する強力を満足する必要がある。また、この際の上記の接合固定された接合部8の接合強度は、1000〜3000gf/30mmである。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【発明の効果】
本発明のパンツ型使い捨ておむつは、パンツ型使い捨ておむつにおける接合部の引き剥がし(引き裂き)易さを向上せしめ、使い勝手をさらに向上させたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明(第1発明)のパンツ型使い捨ておむつの第1の実施例を示す斜視図である。
【図2】
図2は、図1に示すパンツ型使い捨ておむつの展開図である。
【図3】
図3は、図2に示す展開したパンツ型使い捨ておむつの分解斜視図である。
【図4】
図4は、図1に示すおむつの接合部8を示す拡大斜視図である。
【図5】
図5は、接合部8の接合強度の測定方法の概略を示す概略図である。
【符号の説明】
1 使い捨ておむつ
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
5 吸収性本体
6 腹側部
6a 腹側部の側縁部
6b 腹側部の側縁部
7 背側部
7a 背側部の側縁部
7b 背側部の側縁部
8 接合部
10 ウエスト開口部
11 弾性部材
20 レッグ開口部
21 弾性部材
30 胴周囲部
31 弾性部材
40 排尿ポイント部
41 弾性部材
60 ファスニングテープ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許請求の範囲の訂正前の請求項1に対し、下記(イ)の点を限定する共に、下記(ロ)の点を明りょうにすること。
(イ)接合強度の上限を3000gf/30mmに限定する(訂正前の請求項2の要件)。
(ロ)接合強度の測定方法を明りょうにする。
異議決定日 2001-09-19 
出願番号 特願平7-14577
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A41B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 鈴木 美知子
杉原 進
登録日 2000-04-14 
登録番号 特許第3055650号(P3055650)
権利者 花王株式会社
発明の名称 パンツ型使い捨ておむつ  
代理人 羽鳥 修  
代理人 羽鳥 修  
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