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審決分類 審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1070372
異議申立番号 異議2001-72129  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-08-02 
確定日 2002-10-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3132462号「低密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレン混合物およびそのフィルム」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3132462号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3132462号の発明は、平成1年7月10日に出願された特願平1-178641号の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて平成10年4月1日に分割出願したものであって、平成12年11月24日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、田中圭子より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、平成14年1月25日付けで特許異議意見書とともに訂正請求書が提出されたものである。
[2]訂正の適否についての判断
[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項1ー1:
特許請求の範囲の請求項1の「完全融解後徐冷した後示差走査熱量計により測定される昇温サーモグラム」を「示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で 40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラム」に訂正する。
訂正事項1ー2:
特許請求の範囲の請求項1の「該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して0.8以上である」を「該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である」に訂正する。
訂正事項1ー3:
特許請求の範囲の請求項1の「ランダム共重合体(I)60ないし99重量部」を「ランダム共重合体(I)85ないし98重量部」に訂正する。
訂正事項1ー4:
特許請求の範囲の請求項1の「高密度ポリエチレン(II)40ないし1重量部」を「高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部」に訂正する。
訂正事項2-1:
本件特許明細書の段落番号[0016]を、「すなわち、本発明は、(1)密度が0.895ないし0.915g/cm3 であり、完全融解後徐冷した後示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である、αオレフィン含有量が2.0ないし10mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(I)85ないし98重量部および密度が 0.945g/cm3以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で 150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、125℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部からなり、密度が0.900ないし0.930g/cm3、メルトフローレートが0.1ないし100g/10 分であることを特徴とするポリエチレン混合物(ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との合計量は100重量部である)、
(2)請求項2記載のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルム、および
(3)少なくとも片側の表面層が請求項3記載のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルムに関するものである。」に訂正する。
訂正事項2-2:
本件特許明細書の段落番号[0024]を、「(4)ポリエチレン混合物 本発明のポリエチレン混合物は、密度が0.895ないし0.915g/cm3、好ましくは0.900ないし0.910g/cm3であり、α-オレフイン含有量が2.0ないし10.0mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフインとの共重合体であり、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて80〜100℃、好ましくは85ないし95℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全吸熱量に対して1.0であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフインとのランダム共重合体(I)98ないし85重量部と、密度が0.945以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて125℃以上、好ましくは130℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)2ないし15重量部とを混合して得ることができる。ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)の合計量は100重量部である。」に訂正する。
訂正事項2-3:
本件特許明細書の段落番号[0026]を、「高密度ポリエチレン(II)は、エチレンの単独重合体および/またはエチレンと炭素数3ないし10個のα-オレフインとの共重合体であって、高密度ポリエチレンとして市販されているものの内から選ぶことができる。ランダム共重合体(I)および高密度ポリエチレン(II)のMFRは、混合物のMFRが0.1ないし100g/10分になる限り、それぞれ0.01ないし1000g/10分の範囲で任意に選ぶことができる。この際、MFR の対数についてほぼ加成性が成立することを目安にできる。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との混合割合(重量部)は、98〜85/2〜15 である。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)とをいずれの成分も融解する温度以上で混練すれば均一な混合物が得られる。混練機としては、バッチ式あるいは連続式、単軸あるいは多軸スクリュウ方式、いずれのものも使用できるが、フィルム製造機中の押出機も使用できる。」に訂正する。
訂正事項3:
実施例3を新たな比較例10に、実施例7を新たな比較例11に訂正し、実施例3および実施例7は欠番とする。
[訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
訂正事項1-1は、本件特許明細書の段落番号[0020]の記載に基づいて「完全融解後徐冷した後示差走査熱量計により測定される昇温サーモグラム」を具体的に明らかにしたもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1-2は、本件特許明細書の段落番号[0046][表1]に、共重合体(1-A)〜(1-E)について、いずれの共重合体のDSC融解ピーク温度が1つのみであることが示されており、ピークの吸熱量と全熱量とは一致するものであることから、このピークの吸熱量と全熱量とは一致するということを根拠とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1-3、1-4は、本件特許明細書の実施例を根拠とするものであり、特に、「共重合体(I)85重量部と高密度ポリエチレン(II)15重量部」については、実施例2、4、9、10、11および12を根拠とし、「共重合体(I)98 重量部と高密度ポリエチレン(II)2重量部」については、実施例5を根拠とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2ー1,2-2,2-3.3はいずれも、訂正事項1により特許請求の範囲が訂正された結果、不一致になった説明内容を是正して一致させたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]特許異議の申立についての判断
(訂正後の本件特許発明)
訂正後の請求項1〜3に係る本件特許発明(以下、「訂正後の本件発明1」、「訂正後の本件発明2」、「訂正後の本件発明3」という。)は、訂正明細書の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】密度が0.895ないし0.915g/cm3であり、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して隆温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である、αオレフイン含有量が2.0ないし10.0mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(I)85ないし98重量部および密度が0.945g/cm3以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて125℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部からなり、密度が0.900ないし0.930g/cm3、メルトフローレートが0.1ないし100g/10分であることを特徴とするポリエチレン混合物(ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との合計量は100重量部である。)。
【請求項2】請求項1記載のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルム。
【請求項3】少なくとも片側の表面層が請求項2記載のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルム。」
(特許異議申立の理由の概要)
[理由1]
本件訂正前の請求項1〜3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
[理由2]
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び特許明細書の記載は不明確であるから、特許法第36条第3項、4項及び5項の規定に違反して特許されたものである。

刊行物1:特開照57-126835号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開照63-20309号公報(甲第2号証)
参考資料:東ソー株式会社発行のパンフレット「東ソーのポリエチレン樹脂」(参考資料)
(刊行物等の記載事項)
刊行物1:
「密度が0.895g/cm3以上、0.935g/cm3以下で、極限粘度数が1.5dl/g以上、6.0dl/g以下で、炭素数1000個当りの短鎖分岐数(短鎖分岐度)が7以上、40以下のエチレンと炭素数3以上、18以下のαオレフィンとの共重合体AIO重量%以上、70重量%以下と、密度が0.910g/cm3以上、0.955g/cm3以下で極限粘度数が0.8dl/g以上、1.5dl/g以下で、炭素数1000個当りの短鎖分岐数が5以上、30以下のエチレンと炭素数3以上、18以下のαオレフィンとの共重合体B90重量%以下、30重量%以上とを混合してなり、その際、(共重合体Aの短鎖分岐度)/(共重合体Bの短鎖分岐度)が1.7以上になるように調節してなる密度が0.910g/cm3以上、0.940g/cm3以下で、メルトインデックスが0.02g/10分以上、5g/10分以下で、メルトフロー比が40以上、250以下である強度にすぐれ押出成形に適したエチレン系樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項(1))
「本発明の第1の特徴は、高圧法ポリエチレンと比べ加工性は同等以上でかつ引張強度や引裂強度、衝撃強度が大巾に優れさらにホットタック性、挟雑物シール性を中心としたヒートシール性に優れたポリエチレン系樹脂組成物を提供しうる点にある。本発明の第2の特徴は、上述のように機械的強度が優れ剛性も高圧法ポリエチレンよりも高いことと、溶融体のドローダウン性(・・・)に優れるため、高圧法ポリエチレンのフィルム厚みよりも10〜20%以上薄肉化しても・・・。本発明の第3の特徴は、従来技術の低密度エチレン-αオレフィン共重合体に比べ押出加工性が良好なため、・・・。本発明の第4の特徴は、・・・均質なフィルムが得られる点にある。本発明の第5の特徴は、・・・、柔軟性、衝撃特性が特に要求される用途にも適している点にある。本発明の第6の特徴は、実質的にポリマーブレンドの手法により高品質樹脂を提供しうるので多様化する顧客のニーズに応じたグレード構成がとりやすい点にある。上述したような特徴は従来技術に比べ本発明の有利な点である。」(第5頁右上欄第13行〜右下欄8行)
「かようにして得られる本発明のポリエチレン系樹脂組成物は押出成形に供した場合、既存の中低圧法で得られる低密度エチレン-αオレフィン共重合体(通常線状低密度ポリエチレン、LLDPEと呼称されている)に比べ大幅に加工性が良好で、高圧法ポリエチレンに比べても遜色なく・・・、さらにはヒートシール特性が良好なため広範な用途に供される。」(第10頁右上欄15行〜左下欄5行)
刊行物2;
「エチレンと1-ブテンを主重合単位とする、実質上線状構造を有するエチレン・1-ブテンランダム共重合体であり、かつ下記(A)〜(E)の要件を満足することを特徴とするエチレン系共重合体。
(A)結合エチレン含量が85〜95モル%であること、
(B)重量平均分子量3万〜20万であること、
(C)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnが2〜5であること、
(D)示差走査型熱量計で求められる融点が高温側と低温側の2個存在し、高温側のピークが95〜110℃、低温側のピークが40〜85℃に存在すること、
(E)示差走査型熱量計で求められる2個の融点の高温側と低温側の吸熱量の割合(熱量比)が4〜30/96〜70であること。」(特許請求の範囲の請求項(1))
「このようにして得られる新規エチレン系共重合体は、単独でまたは結晶性ホモポリプロピレンおよび/もしくはプロピレン以外のα-オレフィンを20重量%以下共重合させた結晶性ポリプロピレン樹脂またはその他のオレフィン(共)重合体樹脂に、5重量%、好ましくは10重量%以上混合してエチレン系共重合体組成物として用いられる。さらに・・・、フィルム、テープ、シート、中空成形品、射出成形品等として使用される。」(第4頁右下16行〜5頁左上9行)
(判断)
[理由1]について:
刊行物1には、訂正後の本件発明1と共通する技術分野である、エチレンと炭素数3以上のαオレフィンの低密度共重合体と高密度ポリエチレンとの混合物の発明が記載されており、これらの点では訂正後の本件発明1と刊行物1に記載された発明とは一致しているが、訂正後の本件発明1の低密度共重合体と高密度ポリエチレンが特定の測定条件のサーモグラムにおいて、限定された吸熱ピークのもので、また、低密度共重合体が85ないし98重量部で高密度ポリエチレン15ないし2重量部の混合割合であるのに対し、刊行物1には、サーモグラムの測定値は記載されておらず、また、低密度共重合体が10〜70重量%で高密度ポリエチレン30〜90重量%の混合割合である点で両発明は相違するものと認める。
そこで、この相違点を検討する。
刊行物2には、訂正後の本件発明1の低密度共重合体に相当するエチレンー1ブテンの共重合体のサーモグラムに相当する測定値が開示されており、また、これが他のポリオレフィン系樹脂とのポリマーブレンドに有効であるとの記載はあるものの、他のポリオレフィン系樹脂として訂正後の本件発明1の高密度ポリエチレンを示唆する記載もなく、両成分の混合割合を示唆する記載もない。 したがって、刊行物1、刊行物2に記載された発明を組み合わせても、上記相違点である特定の混合割合を容易に想到しうるものとはいえない。 そして、訂正後の本件発明1は、特許明細書、特に実施例と比較例の記載から、この特定の混合割合とすることにより、ダート衝撃強度において格別の効果を奏するものである。
したがって、訂正後の本件発明1は、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。
また、訂正後の本件発明2は、訂正後の本件発明1のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルムであり、また、訂正後の本件発明3は、少なくとも片側の表面層が訂正後の本件発明2のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルムであるから、上記訂正後の本件発明1と同様の理由により、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。
[理由2]について
特許異議申立人は、(イ)本件請求項1に「αオレフィン含有量が2.0ないし10.0mol%である、エチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(1)」とあるが、実施例には、エチレンとブテン-1の供給速度の記載しかなく、ランダム共重合体(1)中のα-オレフインの含有量が不明であり、請求項1との関係もまた不明である。(ロ)発明の詳細な説明の、段落番号[0020]に「本発明において最も重要な要件は、以下に詳述する熱転移挙動である。
・・・ポリマーの熱転移挙動は、その熱履歴によって変化するので、予めそれを消去して測定されなければならない。また実施例および図面に示すように、冷却速度が充分小さくないと、その後の昇温過程において見掛け上ピークが分裂することがある。これは、急速な冷却下で十分成長できなかったラメラ晶が昇温過程で融解-再結晶化するためと考えられる。そのため本発明では、DSC中150℃で5分間保持(プレメルト)した後、1℃/1分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して昇温サーモグラムを得る。」と記載されている。ところが、請求項1によると、「完全融解後徐冷した後示差走査熱量計により測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピーク」および「完全融解後徐冷した後示差走査熱量計により測定される昇温サーモグラムにおいて、125℃以上に吸熱ピーク」と記載されているに過ぎず、最も重要な要件であるにも拘わらず、「溶融保持時間」 「降温速度」 「昇温速度」の記載を欠く請求項1は記載不備である。(ハ)メルトフローレート(MFR)は、請求項1に記載された重要な数値限定の一つである。ところが、明細書の段落番号[0033]によれば、「JISK6760に規定された方法に従った。」との記載があるに過ぎず、メルトフローレートは、測定時の荷重条件を特定すべきもので、それを欠く本件発明の詳細な説明は記載不備である。(ニ)本件請求項1に「80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して0.8以上である」とあるが、実施例を含む発明の詳細な説明において、上記「0.8以上」の技術的意義が説明されていない。 一方、本件特許公報の段落番号[0046][表1]には、共重合体[1 -A]〜[1-E]について、それぞれのDSC融解ピーク温度が1点のみ示されているから、ピークの吸熱量と全熱量とは一致するものと理解され、そうであれば、前記ピークの吸熱量割合は「0.8以上」ではなく、「1.0」となるものと考えられる。
との4点の記載不備を指摘している。
そこで、これらの記載不備を検討する。
(イ)の点は、特許権者が、平成14年1月25日付けで提出した特許意見書に添付した参考資料1(平成14年1月9日付け住友化学工業株式会社 近成 謙三作成実験証明書)を参酌すると、実施例のもののランダム共重合体(1)中のα-オレフインの含有量が確認され、それと請求項に記載されたものとの関係が明確になったことから、記載不備は解消した。
(ハ)については、平成14年1月25日付けで提出した特許意見書において、メルトフローレート(MFR)の荷重条件が明確にされたので記載不備は解消した。
(ロ)及び(ニ)は、上記訂正により訂正され、記載不備は解消した。
したがって、特許異議申立人の指摘する記載不備は全て解消した。
[4]結び
したがって、特許異議申立人の主張および挙証によっては、本件の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
低密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレン混合物およびそのフィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】密度が0.895ないし0.915g/cm3であり、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である、αオレフィン含有量が2.0ないし10.0mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(I)85ないし98重量部および密度が0.945g/cm3以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて125℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部からなり、密度が0.900ないし0.930g/cm3、メルトフローレートが0.1ないし100g/10分であることを特徴とするポリエチレン混合物(ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との合計量は100重量部である。)。
【請求項2】請求項1記載のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルム。
【請求項3】少なくとも片側の表面層が請求項2記載のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた物性を有する低密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレン混合物およびそのフィルムに関する。さらに詳しくは、ヒートシール特性、透明性、光沢、腰の強さ、衝撃強度、引裂強度など、包装用途に必要な性質を高度に満足する低密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレン混合物およびそのフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】低密度ポリエチレンは、防水性・防湿性に富み、適度に柔軟で、比較的透明性が良く、強度も比較的よいのでフィルム状で広範囲に用いられている。さらに、ヒートシールが比較的低温から可能で、しかもシール強度も良好なので、単層あるいは他の薄膜状素材との多層形態の包装用フィルムとしても多用されている。
【0003】近年、充填速度の高速化の可能な包装用フィルムが強く要請されるようになっている。充填速度の高速化は、フィルム繰り出し速度の高速化、ヒートシールの短時間化、ヒートシール直後シール面に内容物の荷重のかかるまで時間の短縮化を意味しており、このためには、腰があって、低温でヒートシール性が発現し、ヒートシール直後のまだシール部分が熱い間に内容物の荷重が加わってもシールの剥離が起こらない(ホットタック性の良好な)フィルムであることが必要である。また、複合フィルムは種々の方法で製造されるが、広範囲の素材の組み合わせができ、かつ印刷の美麗な複合フィルムが製造できるので多用されている貼合わせ(ラミネート)法では、低密度ポリエチレンフィルムに腰がないとしわも発生しやすく、高速加工のためには腰の強さも重要である。さらに、透明性や光沢は包装された内容物のディスプレイ価値を高め、衝撃やどの方向の引き裂きにも強いことは物品の保護という包装本来の機能を高めるので、同じく重要である。
【0004】低密度ポリエチレンは、その製造法または分子構造によって、次の2種類に大別される。1つは、高圧高温下ラジカル重合法によって製造され、短鎖分岐と長鎖分岐とを本質的に有するエチレンの重合体である。生長中のポリマーラジカルの分子内転移反応によって短鎖分岐が、分子間転移反応によって長鎖分岐が生成すると考えられている。ラジカル重合においてα-オレフィンは大きな連鎖移動定数を有するので、合成樹脂として用いられる高分子量の低密度ポリエチレンには、存在しても極く少量のα-オレフィンしか共重合されていない。
【0005】もう1つは、チーグラー触媒重合法に代表される遷移金属触媒重合法によるエチレンとα-オレフィンとの共重合体である。α-オレフィンの共重合により、その炭素数より2個少ない炭素数の短鎖分岐が生成し、ポリマーの密度が低下する。後者は、通常長鎖分岐を持たないので、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)とも呼称されている。前者は、後者よりも歴史的に早く発明されたため、従来単に低密度ポリエチレンと呼ばれていたが、L-LDPEと明確に区別するために、分岐状低密度ポリエチレン(B-LDPE)と呼ぶことにする。
【0006】一般に高分子物質は種々の分子の混合物であり、その分布様式によって諸物性が変化することは一般論として広く認められていることである。分布様式の解析、分布様式と諸物性の関係の定量的・機構的解明、新規な分布様式による改良された物性を有する高分子物質の発明等は、学問的にも、工業的にも、高分子科学の中心課題の1つとなっている。
【0007】低密度ポリエチレンについては、分子量に関する分布(分子量分布)と短鎖分岐度に関する分布(短鎖分岐度分布)が物性的に重要である。B-LDPEが広い分子量分布と比較的狭い短鎖分岐度分布を有するのに対し、L-LDPEは一般に比較的広い短鎖分岐度分布を有することが知られている(例えば、S.Hosoda:Polymer J.,20,383(1988))。なお、L-LDPE分子中の短鎖分岐はコモノマーとしてのα-オレフィンが共重合されることによって生成するので、L-LDPEの短鎖分岐度分布はコモノマー分布または(共重合)組成分布とも呼ばれる。
【0008】L-LDPEの組成分布と物性の関係について、いろいろの文献が公表されている。特公昭46-21212号公報は、部分的結晶性エチレン-α-オレフィン共重合体におけるコモノマー分布の重要性を指摘した最も早い文献の1つである。ここで、分子間のコモノマー分布が均一な共重合体は、不均一な共重合体に比べて、「押出しフィルムの低いくもり度、高い衝撃強さ、機械加工方向とその横方向における物性の優れた均衡を発揮する」ことが、2付近のメルトインデックスと0.919付近の密度を持つ均一および不均一共重合体を吹込み成形したフィルムの物理的性質についての実施例も含め、開示されている。ここで、コモノマー分布が均一な共重合体は、特定の有機アルミニウム化合物と特定のバナジウム化合物を混合することによって調製せる触媒の存在下に、エチレンとα-オレフィンとを共重合することによって得られている。これはまた、コモノマー分布の均一性が共重合体の密度と融点の関係によって識別されることも、図をもって開示している。すなわち、均一共重合体の密度は、同じコモノマー含量の不均一共重合体の密度より低い。
【0009】しかしながら、ここには、低密度ポリエチレンフィルムの重要な性質であるヒートシール性やホットタック性についての記述がなく、複合フィルムとしての用途についても言及されていない。後に、本明細書の比較例にも示すように、このような均一共重合体は、良好なホットタック性を示すヒートシール温度域が極めて狭く(また低い剛性にも拘らず低温ヒートシール性も不十分である)、上記の比較的優れた他の性質を有するものの、包装用フィルムとしては事実上実用性がないものである。
【0010】特開昭59-66405号公報には、複数個の融点を示すエチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体フィルムが、低温ヒートシール性が優れ、しかも耐熱性が高いことが示されている。実施例に記載された共重合体は全て3個の融点を示すが、最高融点は124℃を越えず、最低融点は104〜106℃に位置している。しかしながら、ここには、ホットタック性についての記述がなく、複合フィルムとしての用途についても言及されていない。
【0011】特開昭60-88016号公報には、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体において、その組成分布特性、分岐度特性、ランダム性特性、DSC融点特性、結晶化度、分子量分布などの組み合わせによって特定された共重合体が、機械的特性、光学的特性、耐ブロッキング性、耐熱特性、低温ヒートシール性などの性質に優れ、かつこれらの諸特性をバランスよく兼備することが開示されている。組成分布特性については、特定の手法によって導出された組成分布パラメーターが特定値以下であることを必須としており、これは組成分布が十分狭くなければならないことを意味している。DSC特性については、最高融点が125℃以下の特定の温度範囲にあること、最高融点と最低融点との温度差が特定の範囲にあること、最高融点と第二番目に高い融点との温度差が特定の範囲にあること、そして最高融点の結晶融解熱量が全結晶融解熱量に対して特定の比以下であることを必須としており、これらの必須条件は、共重合体が前記特公昭46-21212号公報でいう不均一共重合体ではあるが均一共重合体に近いものでなければならないことを意味している。また、最高融点が125℃を越えて高すぎたり、最高融点の結晶融解熱量の割合が大きすぎると、低温ヒートシール性等のフィルム物性が劣るとされている。しかも、ここには、ホットタック性についての記述がなく、複合フィルムとしての用途についても言及されていない。後に、本明細書の比較例に示すように、このようなエチレン共重合体は、低温ヒートシール性やホットタック性等フィルム物性が不満足なものである。
【0012】組成分布は、異なったコモノマー含有量を有するエチレン共重合体(エチレン単独重合体も含まれ得る)を均一に混合することによっても変化させることができる。特に、複数の均一共重合体を混合することによって、原理的には任意の組成分布を作ることができる。
【0013】特公昭57-37616号公報には、0.94〜0.97g/cm3の密度の高密度ポリエチレン95〜50重量部、好ましくは90〜70重量部と、0.86〜0.91g/cm3、好ましくは0.88〜0.90g/cm3の密度のバナジウム系触媒により重合された特定のエチレン・1-ブテンランダム共重合体5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部との混合物を素材とする包装用ポリオレフィンフィルムが開示されている。しかしながら、ここで開示されているフィルムは、B-LDPEからなるフィルムより腰(剛性)が著しく高く、低密度ポリエチレンフィルムとは呼べないものである。エチレン・1-ブテンランダム共重合体(具体的には0.889g/cm3の密度を有する)の割合を上記範囲外以上に増加して、剛性をB-LDPEフィルムと同程度にした混合物のフィルムについても記載があるが、測定不能なほどブロッキングが激しくなる。また、ヒートシール性について具体的記述がなく、ホットタック性について言及されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】包装用フィルムにおいて、近年強く要請されるようになっている充填速度の高速化を達成するためには、ヒートシール特性、特にホットタック性が優れていることが不可欠であり、さらに包装用フィルムとして内容物のディスプレイ価値を高めるために透明性や光沢が、物品の保護という包装本来の機能を高めるために高い衝撃強度やいずれの方向にも大きな引裂強度が必要であることは、既に述べた通りである。しかしながら、従来知られている低密度ポリエチレン系フィルムは、これらの総合的な物性が不満足であった。したがって、本発明の目的は、上記の全ての物性を高度に満足する包装用途に最適な低密度ポリエチレン系フィルムおよびその材料を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、包装フィルム用低密度ポリエチレンにおいて重要な特性であるヒートシール特性、特にホットタック性について、その発現機構を詳細に検討した。ヒートシール過程が、予め定められた温度に加熱されたシールバーからの熱によりフィルムの温度が上昇し、シールバーの離脱後放冷される過程であることから、低密度ポリエチレンの熱転移挙動とヒートシール性、ホットタック性との係わりを中心に検討した結果、高度に優れたヒートシール特性を得るためには、熱転移挙動が特定のものであることが必要であることを見出した。さらに、このような特定の熱転移挙動を有する低密度ポリエチレンが、意外なことに、包装用フィルムとして必要な透明性、光沢、腰の強さ(剛性)、衝撃強度、引裂き強度の方向性等の他の性質も高度に満足することを見出した。
【0016】すなわち、本発明は、
(1)密度が0.895ないし0.915g/cm3であり、完全融解後徐冷した後示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である、αオレフィン含有量が2.0ないし10mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(I)85ないし98重量部および密度が0.945g/cm3以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、125℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部からなり、密度が0.900ないし0.930g/cm3、メルトフローレートが0.1ないし100g/10分であることを特徴とするポリエチレン混合物(ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との合計量は100重量部である)、
(2)請求項2記載のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルム、および
(3)少なくとも片側の表面層が請求項3記載のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルムに関するものである。
【0017】従来の技術の項で述べたように、従来は、組成分布が狭く、均一組成に近いかもしくは均一組成の直鎖状低密度ポリエチレンが透明性、衝撃強度、低温ヒートシール性等に優れたフィルムを与えると考えられてきた。また、DSCにおいて複数の融点を示す場合には、最高融点は高すぎず、その結晶融解熱量は小さい方が、上記フィルム物性の点で好ましいと考えられてきた。一方、本発明で用いる低密度ポリエチレンは、上記の考え方とは異なり、組成分布は不均一であり、最高融点はポリエチレンとして許される範囲内で高い方が好ましいものである。従来の考え方に基づいた直鎖状ポリエチレンを用いたフィルムと比較して、本発明のフィルムは、腰が強く(剛性が高く)、透明性、光沢に優れ、衝撃強度が大きく、引き裂き強度が加工方向、その直角方向とも大きく、ヒートシール性の発現する温度が低く、ホットタック性の発現する温度が低くかつその温度域が広いという特徴を有しており、これら包装用フィルムとして重要な性質全てが優れている。以下、各項目について説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
(1)密度およびメルトフローレート
本発明によるポリエチレンの密度は、JIS K6760に従って100℃で1時間アニール後測定され、0.900ないし0.930g/cm3、好ましくは0.905ないし0.925g/cm3である。本発明のフィルムは、用いるポリエチレンの密度の割りに腰が強い(弾性率が高い)が、密度がこれより低いと、フィルムの腰が弱くなり、ラミネート工程でしわが発生しやすくなるなどの点で好ましくない。一方、密度がこれより高いと、ヒートシール性やホットタック性の発現する温度が高くなりすぎ、包装・充填の高速化の達成が困難になる。本発明によるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、JIS K6760に従って測定され、0.1ないし100g/10分の範囲内にある。好適なMFRは、フィルムの製造法の選択によって異なり、インフレーション法では0.1ないし10g/10分、さらに好ましくは0.2ないし5g/10分、Tダイ法では0.5ないし50g/10分、さらに好ましくは1ないし10g/10分、押出ラミネーション法では、1ないし100g/10分、さらに好ましくは2ないし50g/10分である。一般に、MFRが低いほど、フィルムの強度は増すが、フィルム加工時の押出負荷が増し、MFRが高いほど、フィルムの強度は低下するが、高速で厚みの小さいフィルムを加工しやすくなる。
【0019】(2)αオレフィン
本発明でエチレンと共重合されるαオレフィンは炭素数3ないし10で、一般式R-CH=CH2(式中Rは炭素数1〜8のアルキル基を示す)で表される化合物で、その具体例としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、4-メチルペンテン-1、4-メチルヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等があげられる。これらのαオレフィンのうち、プロピレン系は本発明の改良効果が比較的少なく、炭素数4以上のαオレフィンが好ましく、特にブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1等がモノマー入手や共重合性や得られる共重合体の品質の点で好ましい。なお、これらのαオレフィンは2種以上併用して用いることも可能である。
【0020】(3)熱転移挙動
本発明において最も重要な要件は、以下に詳述する熱転移挙動である。ポリマーの熱転移挙動は、示差走査熱量計(DSC)によって測定するのが今や通例となっており、その発熱あるいは吸熱速度と温度の関係図はサーモグラムと呼ばれている。このサーモグラムはポリマーのラメラ厚さ分布を反映しており、そのラメラ厚さ分布はポリマーの組成分布および熱履歴に影響されることが知られている(例えば、S.Hosoda:Polymer J.,20,383(1988))。本発明での熱転移挙動の測定はポリマー本来の持つ組成分布についての知見を得たい場合と、成形されたフィルムの持つラメラ厚さ分布についての知見を得たい場合とに分けられる。以下、その方法について説明する。
▲1▼ポリマー本来の持つ組成分布についての知見を得たい場合
この場合は完全融解後徐冷した後昇温サーモグラムを測定する。ポリマーの熱転移挙動は、その熱履歴によって変化するので、予めそれを消去して測定されなければならない。また実施例および図面に示すように、冷却速度が十分小さくないと、その後の昇温過程において見掛け上ピークが分裂することがある。これは、急速な冷却下で十分成長できなかったラメラ晶が昇温過程で融解-再結晶化するためであると考えられる。そのため本発明では、DSC中150℃で5分間保持(プレメルト)した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して昇温サーモグラムを得る。各サーモグラム上、最初の発熱が開始した温度と50℃との間、あるいは50℃と全ての吸熱が終了した温度との間を、直線で結んで熱量を求めるためのベースラインとする。本発明において「ピーク」とは、明瞭に吸熱側に極大を示すものであって、単に変曲点によって識別されるようなショルダー(肩)状のものや、サーモグラムにおける最大ピーク強度の1/10未満の小さな変化によってピーク状に見えるものは「ピーク」とはしない。これは、下記のように本発明がサーモグラムの微小な変化を問題にするものではないからである。本発明での吸熱ピークはその半値幅(Wa1/2)が30℃以下、さらに27℃以下、特に25℃以下が好ましい。Wa1/2はピークからベースラインへ下ろした垂線の中点からベースラインに平行に引いた線と融解サーモグラムとが交わる2点間の温度差とする。ここで該線がサーモグラムと交わる前に隣ピークとの境界線と交わった場合この温度ともう一方の交点との温度差を取るものとする。Wa1/2が30℃を超えると低温側でのヒートシール強度やホットタック時の剥離距離が大きくなり好ましくない。
【0021】▲2▼成形されたフィルムの持つラメラ厚さ分布についての知見を得たい場合
本発明の低密度ポリエチレンフィルムではフィルム状態から直接昇温サーモグラムを測定する。成形品の結晶融解挙動は、ポリマー自体が持つ組成分布と加工中やその後に被る種々の熱履歴により決定される。従ってフィルム自身の熱融解挙動を知りたい場合、測定前に該フィルムに熱的処理を施さず直接測定する必要がある。このため本発明ではフィルムをDSC測定パン内にいれ40℃から10℃/分の昇温速度で加熱して昇温サーモグラムを得る。このサーモグラムについて、前述の場合と同様に融解ピーク温度、融解ピーク熱量、およびピークの半値幅を計算する。ただしこの場合には、それまでに受けた熱履歴によるラメラ厚さ分布を重視する必要性があるため、最大ピーク強度の5%以上の変化があればピークと認めることとする。従来のL-LDPEを用いて、後で述べる加工法によって製造されたフィルムは、その昇温サーモグラムにおいて、本質的に単一の幅広い吸熱ピークを示す。これに対して本発明のフィルムは、その昇温サーモグラムにおいて、下記のように複数の明瞭な吸熱ピークを示すことにより特徴づけられる。本発明で用いる低密度ポリエチレンフィルムの昇温サーモグラムにおいて、まず75ないし100℃の範囲内に、好ましくは80ないし95℃の範囲内に吸熱ピーク(a)が観測されることが必要である。吸熱ピーク(a)は上記温度範囲内に複数個観測されてもよい。吸熱ピーク(a)のピーク温度がこの範囲より高いと、十分低温からヒートシール性やホットタック性が発現しない。
【0022】本発明で用いるポリエチレンフィルムの昇温サーモグラムにおいて、さらに120℃以上に吸熱ピーク(b)が観測されることが必要である。吸熱ピーク(a)が存在するだけでは、ホットタック性やヒートシール性の発現する温度が十分低温にならず、しかもホットタック性が発現する温度域が事実上実用性がない程極めて狭い。吸熱ピーク(b)の吸熱量ΔHbが吸熱ピーク(a)の吸熱量ΔHaに対する比、すなわちΔHb/ΔHaが0.03以上、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上であるとヒートシール性やホットタック性が十分低温から発現するようになる。一方、ΔHb/ΔHaが2.0より大きいと、ホットタック性やヒートシール性の発現する温度が高くなり好ましくない。したがって、ΔHb/ΔHaは2.0以下、好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。吸熱ピーク(b)の温度が120℃より低いと、ホットタック性の発現する温度域が狭くなる。吸熱ピーク(b)は122℃以上に存在することが好ましい。しかしながら、ポリエチレンの融点は140℃を越えることはないから、吸熱ピーク(b)のピーク温度はこれ以下である。吸熱ピーク(b)は上記温度範囲内に複数個観測されてもよい。
【0023】本発明は、本発明のポリエチレンフィルムの昇温サーモグラムに上記の吸熱ピーク(a)および(b)以外の吸熱ピークが存在することを妨げるものではないが、本発明の効果を十分に発揮させるためには、ΔHaとΔHbとの和の全吸熱量ΔHtに対する比、すなわち(ΔHa+ΔHb)/ΔHtは、0.6以上、さらに0.7以上、特に0.75以上であることが好ましい。本発明のポリエチレンフィルムでの吸熱ピーク(a)はその半値幅(Wa1/2)が27℃以下、さらに25℃以下、特に23℃以下が好ましい。Wa1/2はピーク(a)からベースラインへ下ろした垂線の中点からベースラインに平行に引いた線と融解サーモグラムとが交わる2点間の温度差とする。ここで該線がサーモグラムと交わる前に隣ピークとの境界線と交わった場合この温度ともう一方の交点との温度差を取るものとする。Wa1/2が27℃を越えると低温側でのヒートシール強度やホットタック時の剥離距離が大きくなり好ましくない。
【0024】(4)ポリエチレン混合物
本発明のポリエチレン混合物は、密度が0.895ないし0.915g/cm3、好ましくは0.900ないし0.910g/cm3であり、α-オレフィン含有量が2.0ないし10.0mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフィンとの共重合体であり、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて80〜100℃、好ましくは85ないし95℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全吸熱量に対して1.0であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフィンとのランダム共重合体(I)98ないし85重量部と、密度が0.945以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて125℃以上、好ましくは130℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)2ないし15重量部とを混合して得ることができる。ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)の合計量は100重量部である。
【0025】ランダム共重合体(I)は、本出願人が昭和63年6月8日に出願した「エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法」なる発明の名称を有する特願昭63-142522号明細書に記載された方法によって得ることができる。すなわち、炭化水素溶媒中、(a)遷移金属成分としてVO(OR)nX3-n(ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0<n<3)なる式で示されるバナジウム化合物および(b)有機金属成分としてR’mAlX3-m(ただし、R’は炭化水素基、Xはハロゲン、1<m<3)で示される有機アルミニウム化合物および(c)第三成分として下記一般式R”(C=O)OR’’’(ただし、R”は炭素数1〜20で、部分的あるいは全てハロゲン置換された有機基、R’’’は炭素数1〜20の炭化水素基)で示されるエステル化合物(Mと略す)とから形成される触媒系を用いて、エチレンと炭素数3ないし10のα-オレフィンを共重合するに際し、Al/V(モル比)が2.5以上、M/V(モル比)が1.5以上となる触媒条件下、エチレンとα-オレフィンとのモル比を35/65ないし60/40として、重合温度40℃ないし80℃において、炭化水素溶媒不溶ポリマー(スラリー部)および炭化水素溶媒可溶ポリマー(溶液部)共存状態で共重合して得られる。又ランダム共重合体(I)は本出願人が出願した特開昭60-226514号公報「エチレン共重合体の製造方法」に記載された、三塩化バナジウムとアルコールとを反応して得られるバナジウム化合物を前記(a)遷移金属成分として用いて同様に重合することによっても得ることができる。ランダム共重合体(I)は、その他特公昭46-21212号公報等に記載された方法によっても得ることができる。α-オレフィンとしては、炭素数4ないし10のものが好ましい。炭素数6以上のα-オレフィンを用いる場合には、特開昭60-226514号公報に記載されたバナジウム化合物を用いることが好ましい。
【0026】高密度ポリエチレン(II)は、エチレンの単独重合体および/またはエチレンと炭素数3ないし10個のα-オレフィンとの共重合体であって、高密度ポリエチレンとして市販されているものの内から選ぶことができる。ランダム共重合体(I)および高密度ポリエチレン(II)のMFRは、混合物のMFRが0.1ないし100g/10分になる限り、それぞれ0.01ないし1000g/10分の範囲で任意に選ぶことができる。この際、MFRの対数についてほぼ加成性が成立することを目安にできる。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との混合割合(重量部)は、98〜85/2〜15である。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)とをいずれの成分も融解する温度以上で混練すれば均一な混合物が得られる。混練機としては、バッチ式あるいは連続式、単軸あるいは多軸スクリュウ方式、いずれのものも使用できるが、フィルム製造機中の押出機も使用できる。
【0027】(5)フィルムの製造
本発明の低密度ポリエチレンフィルムは、前記(3)、(4)で述べたポリエチレン混合物を、原料樹脂が融解する温度で、インフレーション法、Tダイ法など公知の技術によって製造できる。インフレーション法は、吹き込み成形法とも呼ばれ、押出機で溶融混練された樹脂がダイの円形のスリットを通ってチューブ状に押し出され、このチューブ内に吹き込まれる気体(通常は空気)の圧力を調整することによって広範囲の幅のフィルムが製造できる。フィルムの幅と円形スリットの直径との比は、ブロー・アップ・レシオ(BUR)と呼ばれている。フィルムの厚さは、樹脂の押出速度とBURの選択によって調整できる。押し出されたチューブは、その外側から気体(通常は空気)および/または液体(通常は水)によって冷却される。水による冷却を行う方法は、水冷インフレーション法と呼ばれ、透明性の優れたフィルムを得るために用いられるが、フィルムの幅の変更が面倒である。また、空気による冷却を行う方法は、空冷インフレーション法と呼ばれ、種々の冷却装置や方法が提案されているが、大別すると、空冷を1段で行う方法と多段で行う方法がある。従来、L-LDPEの1段空冷インフレーション法によるフィルムは透明性が不十分で、この改良のため多段空冷方式が提案されたが、多段空冷方式ではフィルムの幅の変更が簡単ではなく、水冷インフレーション法と同様、1台の機械で多種類のフィルムを経済的に製造できるというインフレーション法の特徴が失われる。本発明では、1段空冷インフレーション法でも透明性の非常に優れたフィルムが得られる。本発明で、水冷インフレーション法や多段空冷インフレーション法でも透明性の優れたフィルムが得られることは勿論である。加工時の樹脂温度は完全融解温度から250℃の範囲内で通常は選ばれる。
【0028】Tダイ法は、キャスト法とも呼ばれ、押出機で溶融混練された樹脂がダイの平行スリットを通って押し出され、水等の冷媒を通したロールに接触させられることによって冷却され、一般に透明性が良く、厚み精度の良いフィルムが製造できる。フィルムの厚さは、樹脂の押出速度とフィルムの引取速度の選択によって調整できる。加工時の樹脂温度は完全融解温度から350℃の範囲内で通常は選ばれる。本発明のポリエチレン混合物からなる単層のフィルムの厚さは、5ないし500μm、特に10ないし100μmであることが望ましい。厚さがこの範囲より薄いと、加工が難しい上にラミネーションする場合に取り扱いが難しくなり、厚いと、加工が難しい上にヒートシール性が発揮されにくくなる。
【0029】(6)複合フィルム
本発明のフィルムは、その卓越したヒートシール特性を十分に発揮させるために、他の基材との複合フィルムの形態であること、特に本発明のポリエチレンフィルムが少なくとも片側の表面層として存在する形態であることが望ましい。基材としては、フィルム形成の可能な任意の重合体、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔等から選択できる。フィルム形成の可能な重合体としては、たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフテレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等から、各々のガスバリヤー性、印刷性、透明性、剛性、接着性等を勘案して、複合フィルムとする目的に応じて選択できる。基材が延伸可能である場合、特にポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のように延伸されることによってフィルムの特性が向上する場合、基材は1軸あるいは2軸に延伸されていてもよい。
【0030】複合フィルムの形態である場合、本発明の低密度ポリエチレンの層の厚さは、1ないし500μm、特に10ないし100μmであることが好ましい。基材層の厚さは任意であって、目的に応じて選択できる。また、複数の基材を種々の構成でもって複合することも、すでに広く行われていることであって、本発明でも採用することができる。本発明において2以上の層を有する複合フィルムは、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、サンドイッチラミネーション法、ホットメルトラミネーション法などのラミネーション法、共押出法、押出コーティング法(押出ラミネーション法とも呼ばれる)およびこれらの組み合わせなど公知の技術によって製造できる。
【0031】ラミネーション法においては、前記単層フィルムの説明で述べた方法によって得られた本発明のフィルムやここで述べる複合フィルムと他の基材とを、溶剤型接着剤、水性型接着剤、ホットメルト接着剤、溶融重合体などによって貼り合わせる。共押出法においては、溶融・押出された本発明によるポリエチレン混合物と溶融・押出された他の重合体とをダイの内部および/または外部で接触させる。押出コーティング法においては、他の基材やここで述べる複合フィルムの少なくとも片方の表面に、溶融・押出された本発明によるポリエチレン混合物膜または上記共押出法による溶融重合体膜をコーティングする。これらのさらに詳細については、加工技術研究会発行の「ラミネート加工便覧」に記載されている。このように製造された複合フィルムのうち、基材が1軸あるいは2軸に延伸が可能である場合はさらに1軸あるいは2軸の延伸を加えることができ、この方法によって本発明によるポリエチレン混合物の層の厚さを1μm程度まで薄くした延伸複合フィルムを得ることができる。延伸は、テンター延伸方式、インフレーション延伸方式、ロール延伸方式等公知の方法によって、基材が延伸可能な温度範囲に複合フィルムを加熱することによってでき、必要とあらばさらにヒートセットされる。
【0032】(7)添加剤
本発明のフィルムおよび混合物は、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料、フィラー等の公知の添加剤を含有することができる。
(8)用途
本発明のフィルムは、腰が強く(剛性が高く)、透明性、光沢に優れ、衝撃強度が大きく、引き裂き強度の方向間のバランスが良く、ヒートシール性の発現する温度が低くかつその温度域が広いという包装用フィルムとして重要な性質全てが優れているので、単層フィルムあるいは複合フィルムの形態で、漬物等のように水とともに包装される食品類、ミルク、スープ等の液体の食品類、菓子等のような乾燥した食品類、ハム、ソーセージ等の加工肉類の包装等々、種々の内容物の包装に用いることができる。
【0033】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの例になんら制約されるものではない。はじめに、以下の実施例および比較例における物性値の測定方法を説明する。
(1)密度
JIS K6760に規定された方法に従った。100℃の水中で1時間アニールを行った後密度を測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K6760に規定された方法に従った。
(3)示差走査熱量計(DSC)
パーキエルマー社製DSC-7を用いた。
完全融解後徐冷した後昇温サーモグラムを測定する場合
熱プレスにより作成した厚さ約0.5mmのシートから切り出した約10mgの試片をDSC測定用サンプルパンに入れ、DSC中で150℃で5分間プレメルトし、1℃/分で40℃まで降温し、5分間保持した後10℃/分の速度で150℃まで昇温しサーモグラムを得た。
フィルム状態から直接昇温サーモグラムを測定する場合
数枚に重ねた約10mgのフィルムをDSC測定用サンプルパンに入れ、DSC中で40℃で5分間保持した後10℃/分で150℃まで昇温しサーモグラムを得た。
(4)ヘイズ(曇り度)
ASTM D1003に規定された方法に従った。この値が小さいほど、透明性が良いことを示す。
(5)グロス(光沢)
JIS Z8741に規定された方法に従った。この値が大きいほど、光沢が良いことを示す。
【0034】(6)1%正割弾性率(Secant Modulus)
フィルムの加工方向(MD)またはその直角方向(TD)に巾2cmの試片を切り出し、引張り試験機にチャック間距離6cmで取りつけ、5mm/分の速度で引っ張り、1%伸びた時の応力から、100×(応力)/(断面積)の式で計算した。
(7)ダート衝撃強度
ASTM D1709のA法に従った。
(8)エルメンドルフ引裂強度
JIS Z1702の規定された方法に従った。
(9)ヒートシール性
2枚の複合フィルムのポリエチレン層どうしを合わせ、テスター産業社製ヒートシーラーを用いて、シール面圧力1.0kg/cm2、シール時間1.0秒の条件でシール巾10mmのヒートシールを行った。シールバーの温度(ヒートシール温度)を5℃ずつ変えて同様にヒートシールを行った。これから、シール面に直角方向に巾15mmの試片を切り出し、ショッパー型引張り試験機を用いて、200mm/分の速度で180°剥離強度を測定した。
(10)ホットタック性
15mm巾に切り出された複合フィルムのポリエチレン層どうしを合わせ、片方には滑車を介して30gの荷重をかけておき、テスター産業社製ヒートシーラーを用いて、シール面圧力1.3kg/cm2、シール時間0.3秒の条件でシール巾20mmのヒートシールを行った。シール終了と同時に荷重が落下し、シール終了から0.14秒後にシール面に荷重による剥離力がかかることになるので、実際に剥離した長さを計測した。シールバーの温度(ヒートシール温度)を5℃ずつ変えて同様の試験を行った。
【0035】実施例1、2、4、5、6、8、9、10、11、比較例1、2、5、7、10、11
(1)ランダム共重合体(I)の製造
内容物200リットルの攪拌機付槽型反応器下部に、n-ヘキサンに所定のエチレンとブテン-1を溶解させた溶液を、n-ヘキサン80kg/時間、エチレンおよび1-ブテンをそれぞれ一定量/時間で連続的に供給した。別の供給ラインから三塩化バナジル、エチルアルミニウムセスキクロリド、パークロルクロトン酸n-ブチルをそれぞれ一定量/時間で連続的に供給した。反応器内温度は、反応器外側に取り付けられたジャケットに冷却水を循環することにより40℃又は50℃に制御した。反応器内が常に満液状態になる様に反応器上部から重合液を連続的に抜き出し、少量のメタノールを添加した重合反応を停止させ、脱モノマーおよび水洗浄後、溶媒をスチームストリッピングして、固形共重合体を取り出し、これを80℃で減圧乾燥してエチレン-1-ブテンランダム共重合体を得た。それぞれの共重合体の重合条件、共重合体の生成速度および得られた共重合体の密度、MFRおよび完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピークの値を表1に示す。
【0036】(2)ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との混合物
上記(1)で得られた各ランダム共重合体I-A〜I-Eの各々と、表2に示すニッサンポリエチレン(登録商標)1010(II-A)、2010(II-B)、又は1070(II-C)とを表3、又は表4に記載した割合で、日本ロール製造社製#0型インテンシブミキサー機を用い、回転数35rpm、150℃で10分間混練した。この際、上記樹脂の合計100重量部に対して、ステアリン酸カルシウムを0.20重量部、イルガノックス(登録商標)1076を0.15重量部、サンドスターブ(登録商標)P-EPQを0.10重量部、エルカ酸アミドを0.08重量部、シリカ系抗ブロッキング剤を0.10重量部(実施例1、2、比較例1、3、10)又は0.40重量部(実施例4、5、6、8、9、10、11、比較例5、6、7、11)添加した。ここで用いたニッサンポリエチレンは赤外スペクトル分析からいずれもエチレン-1-ブテン系共重合体である。各高密度ポリエチレン(II)の密度、MFR、完全融解後徐冷した後測定したDSC昇温サーモグラムにおける吸熱ピークの値および該吸熱ピークの半値幅を表2に示す。この様にして得られた均一混合物の密度、MFR、完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピーク温度、ΔHb/ΔHa、(ΔHa+ΔHb)/ΔHt、Wa1/2を表3及び表4に示す。
【0037】(3)フィルムの製造
▲1▼インフレーション法
(実施例1、2、4、5、6、8、9、10、比較例1、2、5、7、10、11)ダイ径125mm、ダイリップ2.0mmのスパイラルダイおよびアイリス付き1段エアーリングを備えたプラコー社製インフレーション成形機K-40Rを用いて、24kg/時間の押出速度、170℃のダイ設定温度、1.8のブローアップ比なる条件で、上記(2)で得られた均一混合物から30μmの厚さのフィルムを得た。こうして得られたフィルムの物性を表3、表4に示す。次に示す複合フィルムの製造に供するフィルムは、装置に取り付けられたコロナ処理機により、表面張力が42〜45dyne/cmとなるようにコロナ処理を施した。
▲2▼Tダイ法(実施例11)
内径50mmの押し出し機、ダイ巾400mm、ダイギャップ0.7mmのTダイとセミマットロールを備えた、田辺プラスチック製Tダイフィルム成形機で、加工温度270℃、押出量6.4kg/時間、チルロール温度75℃で30μmの厚さのフィルムを得た。装置に取り付けられたコロナ処理機により、表面張力が42〜45dyne/cmとなる様にコロナ処理を施した。こうして得られたフィルムの物性を表4に示す。
【0038】(4)複合フィルムの製造
▲1▼サンドイッチラミネーション法
(実施例1、2、比較例1、2、10)延伸ナイロン(厚さ15μm)/LDPE(厚さ20μm)基材フィルムと上記(3)で得られたフィルムとを、住友重機械製65mmφ押出機と田辺プラスチックス機械製L550型ラミネーターを用い、樹脂温度320℃のスミカセンL705を中間に押し出すことにより中間層の厚さが30μmのサンドイッチ・ラミネーション複合フィルムを得た。こうして得られた複合フィルムのヒートシール性を表5に、ホットタック性を表6に示す。
▲2▼ドライラミネーション法
(実施例4、5、6、8、9、10、11、比較例5、6、7、11)康井精機製卓上型テストコーターを用いて、上記(3)で得られたフィルムを、乾燥後2g/m2となる様にウレタン系接着剤を塗付した厚さ15μmの延伸ナイロン基材フィルムに、40℃で3g/cm2で圧着させた後、40℃で2日間加温熱成することによりドライラミネーション複合フィルムを得た。こうして得られた複合フィルムのヒートシール性を表7にホットタック性を表8に示す。
【0039】比較例3
住友化学工業株式会社製スミカセン-L(登録商標)の試作品で、密度0.913、MFR1.9のもの(赤外吸収スペクトル分析からエチレン-1-ブテン系共重合体である)を実施例2の均一混合物の変わりに用いる外は実施例2の(3)および(4)と同様に行った。上記試作品の完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピークは103.0および120.4℃に観測され、両吸熱ピーク間の112.0℃で昇温サーモグラムの極小値を示した。この112.0℃を境にした低温側の吸熱量に対する高温側の吸熱量の比は0.42、低温側ピークの半値幅は34.2℃であった。又こうして得られたフィルムを直接昇温して得られたDSCサーモグラムでは116.0℃のみにピークを持ちその半値幅は29.8℃であった。こうして得られたフィルムおよび複合フィルムの性質を表3及び表5、6に示す。
【0040】比較例4
三井石油化学工業株式会社製ウルトゼックス(登録商標)1520L(密度0.913、MFR2.5、赤外吸収スペクトル分析から4-メチル-1-ペンテンが9.1重量%共重合されているエチレン-4-メチル-1ペンテン系共重合体である)を実施例2の均一混合物のかわりに用いる外は実施例2の(3)および(4)と同様に行った。ただし、原料ペレット100重量部あたり0.15重量部の抗ブロッキング剤が分析されたので、抗ブロッキング剤をさらに添加することはしなかった。上記試料の完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピークは102.3および119.3℃に観測され、両吸熱ピーク間の115.4℃で昇温サーモグラムの極小値を示した。この115.4℃を境にした低温側の吸熱量に対する高温側の吸熱量の比は0.19、低温側ピークの半値幅は31.0℃であった。又こうして得られたフィルムを直接昇温して得られたDSCサーモグラムでは109.4℃のみにピークを持つ幅広い分布を持ちその半値幅は27.6℃であった。こうして得られたフィルムおよび複合フィルムの性質を表3及び表5、6に示す。
【0041】比較例6
住友化学工業株式会社製スミカセン-L(登録商標)の試作品で、密度0.914、MFR2.7のもの(赤外吸収スペクトル分析からエチレン-1-ブテン系共重合体である)に対してシリカ系抗ブロッキング剤を0.40重量部溶融混練した試料を実施例9の均一混合物の変わりに用いる外は実施例9の(3)および(4)と同様に行った。上記試作品の完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピークは101.4℃および120.3℃に観測され、両吸熱ピーク間の111.8℃で昇温サーモグラムの極小値を示した。この111.8℃を境にした低温側の吸熱量に対する高温側の吸熱量の比は0.33、低温側ピークの半値幅は31.6℃であった。又こうして得られたフィルムを直接昇温して得られたDSCサーモグラムでは109.5℃のみにピークを持ちその半値幅は27.8℃であった。こうして得られたフィルムおよび複合フィルムの性質を表4及び表7、8に示す。
【0042】実施例12、比較例8
(1)バナジウム系触媒(a)の合成
アルゴン置換された100mlフラスコ中に三塩化バナジウム0.033モルとn-ヘプタン26mlを加えて50℃に昇温し、メチルアルコール0.165モルを加えて、アルゴン気流中で攪拌下、50℃で1時間反応させた。反応後、上澄液をガラスフィルターで抜出し、25mlのn-ヘプタンで3回洗浄し、減圧乾燥を行って、n-ヘプタンに不溶の暗緑色固体粉末状バナジウム化合物を得た。このバナジウム化合物の組成を分析するとバナジウム原子が21重量%、塩素原子が42重量%、CH3OHが40重量%であった。従って、このバナジウム化合物はVCl3・3.0CH3OH(一般式V(OR)mCl3-m・nROHのmおよびnが0および3.0)で示される化合物であった。また、この化合物のX線粉末スペクトルは三塩化バナジウム特有のスペクトルは認められなかった。
(2)ランダム共重合体I-Gの製造
内容積100リットルの攪拌機付反応器にn-ヘキサン60リットル、1-ヘキセン3.8kg、エチルアルミニウムセスキクロリドの10wt%ヘキサン溶液を400ml供給した。反応器外にとりつけたジャケットに温水を循環することにより反応器内部を30℃に昇温した。次に水素1.5kg/cm2、エチレン4.5kg/cm2を供給し、これに前記バナジウム系触媒(a)1.58gとエチルアルミニウムセスキクロリドの10wt%ヘキサン溶液70mlの混合物を投入し重合を開始した。20分毎5回に分けて1mmol/mlのパークロロクロトン酸n-ブチル溶液を1.25mlずつ投入した。反応途中で全圧力が一定となる様にエチレンを供給した。又ジャケットに冷却水を循環することにより、反応器中の温度を30℃に保った。重合開始から2時間後に反応器中のガスをパージし、内容物を大量のメタノールに加えて沈澱物を得た。これらをろ過し固形物を乾燥することによりエチレン-1-ヘキセンランダム共重合体を得た。この様にして得られた共重合体のMFR、完全融解後徐冷した後に測定したDSCサーモグラムでの測定結果を表4に示す。
【0043】(3)ランダム共重合体と高密度ポリエチレンとの混合物
上記(2)で得られたランダム共重合体I-Gを実施例9の(2)と全く同様の条件で日産ポリエチレン1010(II-A)と混合した。この様にして得られた共重合体のMFR、完全融解後徐冷した後に測定したDSCサーモグラムでの測定結果を表4に示す。
(4)フィルムおよび複合フィルムの製造
上記(3)によって得られたポリエチレンペレットを用いて実施例10の(3)、(4)と全く同様の方法で行った。得られたフィルムから直接測定したDSCサーモグラムの各測定値を表4に示す。こうして得られたフィルムおよび複合フィルムの性質を表4および表7、8に示す。
【0044】比較例9
住友化学工業株式会社製スミカセンα(登録商標)の試作品で、密度0.913、MFR2.0のもの(赤外吸収スペクトル分析からエチレン-1-ヘキセン系共重合体である)に対してシリカ系抗ブロッキング剤を0.40重量部溶融混練した試料を実施例12の均一混合物の変わりに用いる外は実施例12の(3)と同様に行った。上記試作品の完全融解後徐冷した後測定したDSCサーモグラムにおける吸熱ピークは103.6℃および121.0℃に観測され、両吸熱ピーク間の114.0℃で昇温サーモグラムの極小値を示した。この114.0℃を境にした低温側の吸熱量に対する高温側の吸熱量の比は0.30、低温側ピークの半値幅は33.4℃であった。又こうして得られたフィルムを直接昇温して得られたDSCサーモグラムでは109.4℃のみにピークを持ちその半値幅は29.2℃であった。こうして得られたフィルムおよび複合フィルムの性質を表4及び表7、8に示す。
【0045】実施例1、2、比較例10の均一混合物、比較例4のウルトゼックス(登録商標)1502Lについて、DSC昇温サーモグラム測定において降温過程の速度を1℃/分とした時と10℃/分とした時の昇温サーモグラムにおける吸熱ピークのピーク温度を表9に示す。また、図1ないし図4に実施例2および比較例4の降温条件を変えた昇温サーモグラムを示す。図において横軸は温度、縦軸はピーク高さ(吸熱)をあらわす。図1〜図2と図3〜図4との対比から、1℃/分の降温速度の時には1本であった高温側の吸熱ピークが、10℃/分と降温速度を大きくすると分裂する場合があることがわかる。この分裂は、急速な冷却下に十分成長できなかったラメラ晶が昇温過程で融解-再結晶化して生じたと考えられる。なお、図1および図2における温度軸(横軸)にほぼ平行な直線はベースラインを示し、また、垂直な直線は各吸熱ピーク間においてサーモグラムが極小値を示す温度を示し、この温度を境にして各ピークの吸熱量が算出される。又実施例2および比較例4のフィルムから得られるDSC昇温サーモグラムを図5および図6に示す。実施例2のフィルムでは92.2℃および125.8℃に明確なピークをもつが、比較例4のフィルムでは、109.0℃にピークを持つ幅広い融解パターンを示す。表5、6での実施例2は比較例3、4よりも、又は表7、8での実施例5、6、8、9、10は比較例6よりもさらに実施例12は比較例9よりも低温からヒートシール、ホットタック性が発現し、なおかつホットタック性の発現する温度域が顕著に広いことが分かる。更に表8では比較例5は同程度の密度を有する実施例4、5と比べてホットタックの最小剥離距離が長くなっており強度が劣ることがわかる。又表3、4で同じ密度で比較すると実施例は従来のL-LDPEからのフィルムに比べて、透明性(ヘイズ)、光沢(グロス)、衝撃強度が格段に優れ、腰(1%正割弾性率)も強い。このように、本発明のフィルムは従来のフィルムに較べて、包装用フィルムとして格段に優れたものである。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】

【0054】
【表9】

【0055】
【発明の効果】以上述べたように本発明により、ヒートシール性、ホットタック性、透明性、光沢、腰、衝撃強度、および引裂強度の全ての物性を高度に満足する包装用用途に最適な低密度ポリエチレン系フィルムおよびその材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1℃/分の速度での降温後10℃/分の速度における実施例2の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図2】1℃/分の速度での降温後10℃/分の速度における比較例4の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図3】10℃/分の速度での降温後10℃/分の速度における実施例2の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図4】10℃/分の速度での降温後10℃/分の速度における比較例4の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図5】フィルム状態から直接測定した10℃/分の速度での実施例2の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図6】フィルム状態から直接測定した10℃/分の速度での比較例4の昇温サーモグラムを示す図面である。
【図面】






 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
尚、訂正事項1ー1、2-1、2-2,2-3,3は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項1ー2、1-3,1-4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1ー1:
特許請求の範囲の請求項1の「完全融解後徐冷した後示差走査熱量計により測定される昇温サーモグラム」を「示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラム」に訂正する。
訂正事項1ー2:
特許請求の範囲の請求項1の「該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して0.8以上である」を「該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である」に訂正する。
訂正事項1ー3:
特許請求の範囲の請求項1の「ランダム共重合体(I)60ないし99重量部」を「ランダム共重合体(I)85ないし98重量部」に訂正する。
訂正事項1ー4:
特許請求の範囲の請求項1の「高密度ポリエチレン(II)40ないし1重量部」を「高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部」に訂正する。
訂正事項2-1:
本件特許明細書の段落番号[0016]を、「すなわち、本発明は、(1)密度が0.895ないし0.915g/cm3であり、完全融解後徐冷した後示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、80ないし100℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全熱量に対して1.0である、αオレフィン含有量が2.0ないし10mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のαオレフィンとのランダム共重合体(I)85ないし98重量部および密度が0.945g/cm3以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定される昇温サーモグラムにおいて、125℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)15ないし2重量部からなり、密度が0.900ないし0.930g/cm3、メルトフローレートが0.1ないし100g/10分であることを特徴とするポリエチレン混合物(ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との合計量は100重量部である)、
(2)請求項2記載のポリエチレン混合物からなることを特徴とするフィルム、および
(3)少なくとも片側の表面層が請求項3記載のフィルムからなる層であることを特徴とする複合フィルムに関するものである。」に訂正する。
訂正事項2-2:
本件特許明細書の段落番号[0024]を、「(4)ポリエチレン混合物 本発明のポリエチレン混合物は、密度が0.895ないし0.915g/cm3、好ましくは0.900ないし0.910g/cm3であり、α-オレフイン含有量が2.0ないし10.0mol%であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフインとの共重合体であり、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて80〜100℃、好ましくは85ないし95℃の範囲内に吸熱ピークが観測され、該吸熱ピークの吸熱量が全吸熱量に対して1.0であるエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフインとのランダム共重合体(I)98ないし85重量部と、密度が0.945以上であって、示差走査熱量計によりDSC中150℃で5分間保持した後、1℃/分の降温速度で40℃まで冷却して降温サーモグラムを得、しかる後10℃/分の昇温速度で150℃まで加熱して測定されるDSC昇温サーモグラムにおいて125℃以上、好ましくは130℃以上に吸熱ピークが観測される高密度ポリエチレン(II)2ないし15重量部とを混合して得ることができる。ただし、ここでランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)の合計量は100重量部である。」に訂正する。
訂正事項2-3:
本件特許明細書の段落番号[0026]を、「高密度ポリエチレン(II)は、エチレンの単独重合体および/またはエチレンと炭素数3ないし10個のα-オレフインとの共重合体であって、高密度ポリエチレンとして市販されているものの内から選ぶことができる。ランダム共重合体(I)および高密度ポリエチレン(II)のMFRは、混合物のMFRが0.1ないし100g/10分になる限り、それぞれ0.01ないし1000g/10分の範囲で任意に選ぶことができる。この際、MFRの対数についてほぼ加成性が成立することを目安にできる。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)との混合割合(重量部)は、98〜85/2〜15である。ランダム共重合体(I)と高密度ポリエチレン(II)とをいずれの成分も融解する温度以上で混練すれば均一な混合物が得られる。混練機としては、バッチ式あるいは連続式、単軸あるいは多軸スクリュウ方式、いずれのものも使用できるが、フィルム製造機中の押出機も使用できる。」に訂正する。
訂正事項3:
実施例3を新たな比較例10に、実施例7を新たな比較例11に訂正し、実施例3および実施例7は欠番とする。
異議決定日 2002-10-08 
出願番号 特願平10-88862
審決分類 P 1 651・ 531- YA (C08J)
P 1 651・ 532- YA (C08J)
P 1 651・ 121- YA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 油科 壮一  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
登録日 2000-11-24 
登録番号 特許第3132462号(P3132462)
権利者 住友化学工業株式会社
発明の名称 低密度ポリエチレンフィルム、ポリエチレン混合物およびそのフィルム  
代理人 榎本 雅之  
代理人 神野 直美  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 神野 直美  
代理人 中山 亨  
代理人 久保山 隆  
代理人 榎本 雅之  

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