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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E01F
管理番号 1071537
審判番号 訂正2002-39107  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-14 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-04-30 
確定日 2003-01-27 
事件の表示 特許第3069770号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
特許第3069770号は、平成8年4月2日に出願され、平成12年5月26日に特許権の設定登録がなされたものであって、株式会社ユニックスから無効審判の請求がなされ、特許庁において無効2001-35504号事件として審理され、平成14年3月29日に「特許第3069770号の請求項1、3、4、7に係る発明についての特許を無効にする。」との審決が送達されたが、本件請求人はこれを不服として出訴し、東京高等裁判所において平成14年(行ケ)第194号事件として審理されているところである。
本件訂正審判請求は、平成14年4月30日付けで、特許第3069770号の明細書を訂正明細書のとおり訂正することを求めたものであり、当審において平成14年9月2日付けで訂正拒絶理由通知が出され、平成14年11月1日付けで意見書が提出された。

2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3069770号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的として、その請求項1および2に係る発明について、特許明細書の請求項1および2に係る発明に請求項7の限定事項を付加するとともに、請求項7を削除する訂正を含み、請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「訂正発明1」という。)である。
「四方を囲み厚さを有する枠部材と、前記枠部材の片面側に取付けられる光を通す透光パネル部材と、前記透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に取付けられる光を通し音を吸収する透光吸音パネル部材とを備え、前記透光吸音パネル部材は、極薄の透光フィルムを大孔径エクスパンドメタルと小孔径エクスパンドメタルとにより挾みこんで形成したことを特徴とする透光・吸音パネルの組立構造。」

3.訂正拒絶理由
一方、平成14年9月2日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「訂正発明1は、上記特許出願の出願前に頒布された、特開昭55-95999号公報(以下、「引用例1」という。)及び、特開平6-83365号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。」

4.引用例記載の発明
引用例1には、特許請求の範囲に「1 相対向させた枠体の音源側に透明油展合成ゴム薄膜材を張設し、該音源側と反対側に透明プラスチックしゃ音板を張設し、前記張設されたゴム薄膜材としゃ音板とのなす空間部位に共鳴空気層を形成させてなる透明合成ゴム薄膜材よりなる吸音構造体。」、第1頁右下欄第5〜8行に「透明油展合成ゴム薄膜材と該薄膜材の背後に形成される共鳴空気層とによって吸音性能を高め、すぐれた防音・吸音構造としたものである。」、第3頁右下欄第2〜9行に「透明油展合成ゴム薄膜体2・・・が枠体に相対向させて設けられた突出部位1a、1aにボルト3によって均一に張設されている。・・・3aはナット、・・・音源側と反対側の枠体1に形成された突出部位1a’、1a’に透明プラスチック製しゃ音板4・・・がボルト3及び・・・ナット3aで取付けられ」、3頁右下欄第12〜14行に「枠体1は同一の形状の縦枠と横枠とを額縁形に構成するように型止金具6とボルト類によって予め組立てたものが用いられる。」と記載されており、これらの記載及び第4図を参照すると、引用例1には、「四方を囲み厚さを有する枠体と、前記枠体の音源側と反対側にボルト及びナットで張設される透明プラスチックしゃ音板と、前記透明プラスチックしゃ音板とのなす空間部位に共鳴空気層を形成させて前記枠体の音源側の相対向させて設けられた突出部位にボルト及びナットで張設される光を通し音を吸収する透明油展合成ゴム薄膜材とを備えた吸音構造体」という発明が記載されていると認められる。
引用例2には、特許請求の範囲に「【請求項1】多数の開口を有する板状体で、樹脂薄膜を挟持してなることを特徴とする膜振動吸音材。【請求項2】多数の開口を有する板状体で樹脂薄膜を挟持してなる積層体と、多孔質材とを有することを特徴とする膜振動吸音材。【請求項3】前記樹脂薄膜を挟持する板状体の開口率が互いに異なる請求項1または2に記載の膜振動吸音材。【請求項4】前記板状体が、エクスパンドメタル、パンチングメタルおよび金網のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の膜振動吸音材。【請求項5】前記板状体がアルミニウムおよび/または鉄製である請求項1〜4のいずれかに記載の膜振動吸音材。【請求項6】前記樹脂薄膜が透明である請求項1〜5のいずれかに記載の膜振動吸音材。」と、段落【0026】に「図2に示される膜振動吸音材(以下、吸音材とする)70は、多数の開口を有する板状体(以下、板状体とする)として、金属板に多数の開口を形成してなるいわゆるパンチングメタルを用いた例であって、開口率の異なる2枚のパンチングメタル、つまり小さな開口72aを有するパンチングメタル72と大きな開口74aを有するパンチングメタル74とによって、樹脂薄膜16を挟持してなる構成を有する。」と、段落【0042】に「このような樹脂薄膜16の厚さとしては、特に限定はないが、好適な膜振動を得、良好な吸音特性を実現するために4〜50μm程度、好ましくは6〜10μm程度とするのがよい。」と記載されており、これらの記載を参照すると、刊行物2には、「好ましくは6〜10μm程度の透明な樹脂薄膜を大きな開口を有するエクスパンドメタルと小さな開口を有するエクスパンドメタルとにより挟持してなる膜振動吸音材」が記載されていると認められる。

5.対比・判断
訂正発明1と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1に記載された発明の「枠体」、「音源側と反対側」、「透明プラスチックしゃ音板」、「空間部位に共鳴空気層を形成させて」、「音源側」、「吸音構造体」は、訂正発明1の「枠部材」、「片面側」、「透光パネル部材」、「空間を隔てて」、「他面側」、「透光・吸音パネルの組立構造」に相当し、引用例1に記載された発明の「透明油展合成ゴム薄膜材」と訂正発明1の「透光吸音パネル部材」とは、いずれも「光を通し音を吸収する透光吸音部材」で共通しているから、両者は、四方を囲み厚さを有する枠部材と、前記枠部材の片面側に取付けられる光を通す透光パネル部材と、前記透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に取付けられる光を通し音を吸収する透光吸音部材とを備える透光・吸音パネルの組立構造で一致し、下記の点で相違している。
a.透光吸音部材は、訂正発明1では、極薄の透光フィルムを大孔径エクスパンドメタルと小孔径エクスパンドメタルとにより挾みこんで形成した透光吸音パネル部材であるのに対し、引用例1に記載された発明では、透明油展合成ゴム薄膜材である点。
相違点aについて検討するため、引用例2をみると、引用例2に記載された発明の「好ましくは6〜10μm程度の透明な樹脂薄膜」及び「膜振動吸音材」は、訂正発明1の「極薄の透光フィルム」及び「透光吸音パネル部材」に相当するから、引用例2には、相違点aにおける訂正発明1に係る透光吸音パネル部材と同様の構成を有するものが記載されており、これを引用例1に記載された発明の透明油展合成ゴム薄膜材にかえて採用することは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、全体として訂正発明1の奏する効果も、引用例1及び2に記載された発明から予測しうる程度のもので、格別顕著でない。
以上のとおり、訂正発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、訂正発明1は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。

なお、請求人は、平成14年11月1日付けの意見書で、「本件訂正発明の枠部材は、透光パネル部材と透光吸音パネル部材の双方の四方を所定の厚みで囲むことで、閉鎖された空気層を形成し、それによって透光吸音パネル部材の吸音特性を最大限に活用させるという技術的意義を有しているものなのである。・・これに対し、刊行物1の構造は、上述したように、所定の張力状態の薄膜材が相対向する位置において固着されるものであるとともに、遮音板も相対向する位置で固着されるだけであり、必ずしもその間の空気層を閉鎖的にするものではない。このため、共鳴作用による薄膜材の吸音効果は確かに認められるが、固着されない部分(実施例では左右部分)からの洩れも認められ、吸音効果は完全ではないものとなっている。」(7頁5〜14行)と主張しているが、本件訂正発明1において、特定されているのは、「四方を囲み厚さを有する枠部材の片面側に、透光パネル部材が取付けられ、透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に透光吸音パネル部材が取付けられ」という事項であって、透光パネル部材と透光吸音パネル部材間の空間が閉鎖された空気層であるという事項は、特定されていない。一方、引用例1において、請求人も認めているように、「四方を囲み厚さを有する枠部材」が示されており、かつ、枠部材の片面側に、透光パネル部材に相当する透明プラスチックしゃ音板が取付けられ、透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に透光吸音パネル部材と共通する透明油展合成ゴム薄膜材が取付けられ、それらの間の共鳴空気層によって吸音性能を高めているのであるから、明記はされていないが、引用例1に記載された発明の共鳴空気層を、閉鎖された空気層とすることは、当業者なら当然想到する程度のことにすぎない。

6.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-29 
結審通知日 2002-12-04 
審決日 2002-12-17 
出願番号 特願平8-104526
審決分類 P 1 41・ 121- Z (E01F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 鈴木 憲子
特許庁審判官 山田 忠夫
長島 和子
新井 夕起子
田中 弘満
登録日 2000-05-26 
登録番号 特許第3069770号(P3069770)
発明の名称 透光・吸音パネルの組立構造  
代理人 中澤 直樹  
代理人 吉原 省三  

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