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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200515110 審決 特許
不服200119641 審決 特許
無効200035214 審決 特許
不服200629058 審決 特許
不服20061739 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 延長登録 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1071654
審判番号 不服2001-9649  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-08 
確定日 2003-02-05 
事件の表示 平成11年特許権存続期間延長登録願第700057号「眼圧亢進及び緑内障の治療用エイコサノイド及びその誘導体」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件特許の概要
本件特許第1870577号は、昭和58年4月28日(優先権主張1982年5月3日、米国)に出願され、平成4年11月2日の出願公告を経て、平成6年9月6日に特許権の設定の登録がされたものであり、その特許発明の要旨は、特許権の設定の登録時の明細書の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。

「有効量のPGF2αのC1乃至C5アルキルエステルと眼科的に許容し得るキャリヤとを含んでいることを特徴とする霊長類の眼の緑内障局所治療用組成物。」

2.本件出願の概要
これに対する特許権の存続期間の延長登録の出願(以下、本件出願という。)は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとして、4年6月5日の延長を求めるものであって、その政令で定める処分として平成11年3月12日に受けた以下の内容の処分を挙げている。

(1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
(2)処分を特定する番号
医薬品(キサラタン点眼液)輸入承認番号
21100AMY00084000
(3)処分の対象となった物
一般的名称 ラタノプロスト
化学名 13、14-ジヒドロ-15R-17-フェニル-18、
19、20-トリノルPGF2αイソプロピルエステル
化学構造式

(4)処分の対象となった物について特定された用途
緑内障、高眼圧症の治療薬

なお、この処分を、以下、本件処分という。

3.原査定の拒絶理由の概要
本件出願に対する原審の拒絶の理由は、「本特許権存続延長登録願の対象とする特許第1870577号の特許請求の範囲第1項に記載のPGF2αのアルキルエステル化合物は、プロスタグランジンの第13位に二重結合を持つものと認められるが(必要であれば、下記参考文献を参照のこと)、医薬品輸入承認書に添付された承認申請書に記載の構造式Iで表される化合物、及び、治験計画届書に添付された成分及び分量の記載されている「PhXA41化合物」は当該部位に二重結合を有しておらず、両者は一致していない。」ことを具体的な理由として示し(参考文献として、今堀 和友 外 監修「生化学事典第1版」(1984年4月10日発行)東京化学同人発行、P.1104「プロスタグランジンF」の項、を挙げている。)、「したがって、特許発明と処分を受けた物とが一致しているとは認めることができず、本出願に係る特許発明の実施をすることができなかった期間の算定ができないので、特許法第67条の3第1項第4号に該当する。」というものである。

4.当審の判断
そこで、原査定の拒絶の理由について、検討する。

(1)本件特許請求の範囲の第1項の記載(本件特許発明)
有効量のPGF2αのC1乃至C5アルキルエステルと眼科的に許容し得るキャリアとを含んでいることを特徴とする霊長類の眼の緑内障局所治療用組成物。

(2)本件処分の対象となった物
薬事法第14条第1項に基づく処分の対象として請求人が示した物は、上記2.(3)に記載された化学構造式(式Iとして下記に示す。)を有する化合物(一般名ラタノプロスト)である。

式I:ラタノプロスト


(3)対比・判断
特許権の存続期間延長登録が認められるためには、延長登録の理由となる処分の対象となった物が特許請求の範囲に記載されていることが必要であり、本件出願については、本件処分の対象となったラタノプロストが本件特許発明の有効成分である「PGF2αのC1乃至C5アルキルエステル」に該当することが必要である。
本件特許発明のPGF2αとは、プロスタグランジンF2αを意味することは明らかである。プロスタグランジンF2αは、上記参考文献にも記載されているように下記式IIに示す化学構造式を有する化合物であり、本件特許発明の有効成分であるそのC1乃至C5アルキルエステルの中では、イソプロピル基によりエステル化されている点でラタノプロストと最も類似するプロスタグランジンF2αイソプロピルエステルは下記式IIIに示す化学構造式を有する化合物である。

式II:プロスタグランジンF2α


式III:プロスタグランジンF2αイソプロピルエステル


プロスタグランジンF2αイソプロピルエステルとラタノプロストとは、原査定において指摘するとおり、前者が第13位に二重結合を持ち後者は当該部位に二重結合がない点で一致していない点をはじめ、両者が異なる化合物であることは、それぞれの化学構造式(式IIIと式I)を対比すれば明らかである。

この点に関し、請求人は、参考資料1〜4を提示して、「本件特許請求の範囲に記載のPGF2αとは、当業者の一般的認識において特定の単一化合物のみを意味するのではなく、構造上第13位に二重結合を持つ必然性のない、PGF2αとされる一連のプロスタグランジン化合物群を意味する」旨を主張し、「処分化合物はアラキドン酸から誘導されるプロスタグランジン化合物であって、α鎖の5-6位に二重結合を有し、プロスタン酸骨格における9位及び11位が同骨格の裏側に向かった水酸基で置換されている化合物のイソプロピルエステルであり、緑内障治療に好適なPGF2α活性を示すものであることから、明らかに本件特許請求の範囲における「PGF2αのC1乃至C5アルキルエステル」に該当する」と主張する。
以下、この主張について検討する。
参考資料1には「プロスタグランジンは、シクロペンタン環の置換によって区別される文字表記のいくつかの主クラスに分けられる。・・・これらの主クラスは、更に側鎖の二重結合の数に応じていくつかの群に分けられる。これらは、添字1、2、又は3によって示され、脂肪酸前駆体を表す(reflects the fatty acid precursor )。すなわち、・・・・アラキドン酸から誘導されるプロスタグランジンは2群であり(these derived from arachidonic acid carry the subscript 2)、・・・」との記載があるのみで、一般に「プロスタグランジンF2α」又は「PGF2α」と記載された場合に一連の化合物を意味すると理解されることを示すような記載はない。
参考資料2の30欄〜31欄には、化合物名中に「PGF2α」を含む一連の化合物(84)〜(98)が記載されているが、例えば、(84)13、14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-PGF2αのように、プロスタグランジンF2αを変性した箇所を具体的に示した化合物名が記載され(上の例では、13、14-ジヒドロは、13、14位置の2重結合が水素化されて単結合であることを示し、15-ケトは、15位の水酸基がケト基になっていることを示している。)、PGF2αという記載自体が、一連の化合物を示している訳ではない。そして、(96)PGF2αが、上記の式IIで示されるプロスタグランジンF2αであり、(98)PGF2αイソプロピルエステルが、上記式IIIで示されるプロスタグランジンF2αイソプロピルエステルであると考えら、PGF2αは、単一の化合物と理解されていることを示している。
参考資料3についても、Unoprostoneは、13、14-ジヒドロ-15ケト-20-エチル-PGF2αと記載されているのであって、単にプロスタグランジンF2α又はPGF2αとしているものではない。
参考資料4においても、タイトルに「プロスタグランジンF2α及びその3種の代謝産物」と記載され、要約部にも「PGF2αとその13、14-ジヒドロ代謝産物」、「他の2つの代謝産物、15-ケト-PGF2α及び13、14-ジヒドロ-PGF2α」と記載されているように、代謝産物(Metabolites)でさえプロスタグランジンF2αとは明確に区別して記載され、プロスタグランジンF2α(PGF2α)は単一の化合物として記載されている。
また、本件明細書を精査しても、PGF2α自体が一連のプロスタグランジン化合物群を意味すると解されるような記載は見当たらない。
したがって、ラタノプロストが本件特許発明におけるPGF2αのC1乃至C5アルキルエステルに該当する旨の請求人の主張は採用できない。

なお、本件特許発明におけるPGF2αが単一化合物を指すことについては、本件特許に係る専用実施権侵害差止請求控訴事件:平成11年(ネ)第169号(平成11年9月30日、東京高等裁判所)判決においても、判示されている。
また、 ラタノプロストは、本件特許の出願日(昭和58年4月28日)より6年以上を経た平成1年9月6日に本件特許の専用実施権者により出願され、平成9年11月21日に特許権の設定登録がされた特許2721414号の特許請求の範囲の請求項1に化学物質発明として具体的に記載された化合物である。

5.むすび
以上のとおり、本件処分の対象であるラタノプロストは、本件特許発明の有効成分である「PGF2αのC1乃至C5アルキルエステル」には該当しないので、本件特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められず、本件処分を受けるために本件特許発明の実施をすることができなかった期間はないから、特許法第67条の3第1項第4号に該当し本件出願は拒絶すべきものであるとした原査定の判断に誤りはない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-04 
結審通知日 2002-09-10 
審決日 2002-09-24 
出願番号 特願平11-700057
審決分類 P 1 8・ 7- Z (A61K)
P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 聖子  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 守安 智
大宅 郁治
発明の名称 眼圧亢進及び緑内障の治療用エイコサノイド及びその誘導体  
代理人 川口 義雄  
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