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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03B |
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管理番号 | 1072745 |
審判番号 | 審判1996-18063 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-05-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1996-10-25 |
確定日 | 2003-02-13 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第303394号「圧力場に空間を創出し、空間と置換する流体の運動により仕事を得る方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月23日出願公開、特開平 7-133756]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件の出願(以下、「本願」という。)は、平成5年11月8日に特許出願がされ、同8年9月12日付けでその特許出願について拒絶をする旨の査定がされ、その後、同8年10月25日にその査定を不服として審判が請求され、同10年6月29日付けで当審において拒絶の理由が通知されたものである。 II.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)の目的及びその目的を達成するための構成は、平成8年3月22日付け、同8年11月22日付け、同8年11月25日付け、同10年9月11日付け、同12年8月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものであると認める。 1.本願発明の目的 地球資源を枯渇させず、人類が必要とするエネルギ・燃料・熱量を充分に供給し続ける方法を提供することを課題として、特許請求の範囲の請求項1に記載された構成により、その課題を解決すること。 2.特許請求の範囲の請求項1に記載された構成 【請求項1】水深Hでの高圧が負荷されている状況下において、先ず、第1の作業物である水35を熱ポンプ32を用いて氷結固化させ、これによって生じる体積の増加により高圧状態の水24を排除(揚水・排水)して新たな第1の空間を創出させる。一方、前記水35から奪った熱を別の液体作業物38に作用させて温度上昇させ、これによって生じる体積膨張により高圧状態の水24を排除して新たな第2の空間を創出させる。次に前記液体作業物38の熱により前記氷結固化した水35の融解を行い、これによって水35の体積を縮小させることで前記第1の空間に高圧状態の水24を流入置換させ、その際の仕事を発電機25で取り出す。一方、前記液体作業物38の残留熱量を装置C外に排熱することで該液体作業物38の温度を元の温度に復帰させ、これによって液体作業物38の体積を縮小させることで前記第2の空間に高圧状態の水24を流入置換させ、その際の仕事を発電機25で取り出す。以上からなることを特徴とする圧力場に空間を創出し、空間と置換する流体の運動により仕事を得る方法。 III.当審の拒絶理由 上記当審における平成10年6月29日付けで通知した拒絶の理由の1つの要点は、「本願特許請求の範囲請求項1〜7項に係る発明は、いづれもピストンを1往復させたとき、その間に、熱ポンプを駆動するために消費される電力が、その間に発電機によって発電される電力より少ないことによって、外部へ電力を取り出すようにしたものであるが、・・・・科学技術常識として知られている「エネルギー保存の法則」からみて、外部へ電力を取り出すことは不可能なことであり、上記各請求項に係る発明は、産業上利用できる発明に該当しないため、特許法第29条柱書きの規定により特許を受けることができない。」というものである。 IV.当審の判断 本願発明は、特許法第29条柱書きの規定する「産業上利用することができる発明」に該当するか否かについて検討する。 まず、本願発明の構成について、装置Cを中心に考えると、装置Cは、 a.氷結固化させ、これによって生じる体積の増加により高圧状態の水24を排除(揚水・排水)すること、 b.熱を別の液体作業物38に作用させて温度上昇させ、これによって生じる体積膨張により高圧状態の水24を排除すること、 c.液体作業物38の残留熱量を装置C外に排熱すること、 の3点で、装置Cの外にエネルギを与え、 d.第1の空間に高圧状態の水24を流入置換させ、その際の仕事を発電機25で取り出すこと、 の1点で、装置Cの外からエネルギを得ていると解される。 これらの装置Cのエネルギの収支関係について検討すると、上記a及びbで排除する水の量・圧力と、dで流入する水の量・圧力は同じあるから、前者の水を排除することに要するエネルギと後者の水を流入することで得られるエネルギは、同じである。 また、上記a及びbで水を排除するエネルギは、熱ポンプの作動によって得るものであって、上記cの液体作業物38の残留熱量は、熱ポンプの作動に伴うエネルギであるから、熱ポンプの作動により生じたエネルギは、水を排除することに全てが使われるものでなく、一部が単に装置Cの外に排出されていることになる。 そうだとすると、上記dにおいて、高圧状態の水24の流入による運動エネルギを100%の効率で発電機25により電気エネルギに変換できたとしても、該電気エネルギにより熱ポンプの作動をさせる以上、このような熱ポンプの作動により、上記a及びbで水を排除するエネルギに加えて、上記cのように装置Cの外にエネルギを排出することができない。 ましてや、上記dにおける発電機25から得られるエネルギを他の用途に使う余地は全くない。 もっとも、特許請求の範囲の請求項1においては、熱ポンプの作動を上記dにおける発電機25から得られるエネルギで賄うか否かについて特定されていないが、本願発明の装置Cの系内で熱ポンプの作動に使い得るエネルギは、上記dにおける発電機25から得られるエネルギしかないので、仮に熱ポンプの作動を上記dにおける発電機25から得られるエネルギで賄うものとして、前示のように、エネルギの収支の関係を検討した。 してみると、装置Cを稼働して、人類が利用できるエネルギを得るには、装置Cに対して、他のエネルギを供給しなければならないことになる。 そして、本願発明の目的は、「地球資源を枯渇させず、人類が必要とするエネルギ・燃料・熱量を充分に供給し続ける方法を提供することを課題として、特許請求の範囲の請求項1に記載された構成により、その課題を解決すること。」であるから、本願発明は、この目的を達成することができない。 したがって、本願発明は、特許法第29条柱書きの規定する「産業上利用することができる発明」に該当するものということができない。 なお、請求人は、「熱力学の第1法則が非科学的である」ことを前提として、種々な主張を行っているが、「熱力学の第1法則」が非科学的であるとする合理的な根拠も見当たらないので、このような前提において誤った主張は、採用することができない。 V.むすび 以上のとおりであるから、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条柱書きの規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-06-08 |
結審通知日 | 2001-06-19 |
審決日 | 2001-07-02 |
出願番号 | 特願平5-303394 |
審決分類 |
P
1
8・
14-
WZ
(F03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村本 佳史、大久保 好二 |
特許庁審判長 |
舟木 進 |
特許庁審判官 |
栗田 雅弘 清水 信行 |
発明の名称 | 圧力場に空間を創出し、空間と置換する流体の運動により仕事を得る方法 |
代理人 | 室田 力雄 |