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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1072883 |
審判番号 | 不服2002-8695 |
総通号数 | 40 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-16 |
確定日 | 2003-02-28 |
事件の表示 | 特願2001- 35021「番組供給方法及び番組受信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 9月28日出願公開、特開2001-268537]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年2月13日の出願であって、平成4年10月15日に出願された特願平4-276941号の一部を特許法第44条第1項の規定に適合するとして新たな特許出願として出願したものであって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「番組を番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル番組とし; 前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し; 視聴者からの視聴申し込みに対して前記番組毎に異なるスクランブルデータを通信回線により供給し; 前記番組毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する:番組供給方法。」 2.分割要件の適否 原出願とされた特願平4-276941号の明細書又は図面を参照すると、 【0012】欄には、静止衛星13に対して、スクランブルされたTV信号及び番組コードから構成されたTV電波を送出すること、【0014】欄には、放送される番組にスクランブルがかけられており、スクランブルを解除する視聴許可コードを有する特定の視聴者のみが、TV番組を視聴することができることが記載されている。 また、【0019】欄には、視聴許可コードに対応した番組コードを付与されている番組のスクランブルを解除すること、【0025】欄には、デコーダ制御部から供給されたデコード情報を用いてスクランブルされた番組のスクランブルを解除することが記載され、 また、【0026】欄には、デコーダ部においては、デコーダ制御部から供給されたデコード情報を用いてスクランブルされた番組のスクランブルを解除すること、【0027】欄には、記録された放送番組のうち任意のものに対してスクランブルの解除を行うこと、【0037】欄には、【発明の効果】として、スクランブルされた放送番組に対する課金を行うための受信装置を提供することができることが記載されている。 しかしながら、 上記出願の明細書又は図面には、本願発明の構成要件の一部である、番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルすること、番組毎に異なるスクランブルデータを通信回線により供給すること、及び、番組毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除することは、全く記載されておらず、上記出願の明細書又は図面には、本願発明は含まれていない。 以上のように、本願は、二以上の発明を包含する特願平4-276941号の特許出願の一部を新たな特許出願の一部とするものではないから、特許法第44条第1項の規定に該当しない。 したがって、本願は、特許法第44条第2項の規定に適合せず、もとの特許出願である特願平4-276941号の特許出願の時にしたものとみなすことはできない。 3.刊行物記載の発明 原審における拒絶理由に引用された下記の刊行物には、以下の事項が記載されている。 (1) 刊行物1(特開平1-282945号公報) ア.「送信側と受信側で同一コードデータを格納した光デイスクを備え、送信側で該光デイスクのコードデータによって情報を符号化し、受信側で該光デイスクのコードデータによつて該符号化された情報を復調することを特徴とする通信システム。」(第1頁左下欄第5行〜10行、特許請求の範囲の記載) イ.「本発明は、無線放送や有線放送によつて情報の提供を行なう通信システムに関する。」(第1頁右下欄第12行〜13行) ウ.「本発明は、送信側と受信側とで同一データを格納したCD-ROM(データ記憶媒体としてのコンパクトな光ディスク)を備え、送信側でCD-ROMのコードデータにより情報を符号化し、受信側でCD-ROMのコードデータにより情報を復調する。」(第2頁右下欄第2行〜7行) エ.「この実施例では、受信側で送信側と同一のコードデータを格納したCD-ROMを備えつけることにより、送信側から提供される情報の利用が可能となる。送信側では、一方的に情報を不特定多数の受信側に提供している。この際、情報毎にCD-ROM2の異なるコードデータを用いて符号化する。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第3行) オ.「受信側では、提供される情報を利用するためには、送信側のCD-ROM2と同一コードデータが格納されたCD-ROM6を購入などによつて手に入れなければならない。」(第3頁左下欄第3行〜6行) カ.「CD-ROMの代りにFD(フロツピデイスク)を用いることが考えられるが、FDの記録容量はCD-ROMの1/600程と極めて小さいために実用的でない。」(第3頁左下欄第15行〜18行) キ.「CD-ROMには膨大なコードデータを格納でき、このために、提供する情報毎に異なるコードデータを符号化のために用いることができる。」(第3頁左下欄第15行〜18行) ク.「受信側の映像情報格納手段として、光デイスク12の代りに、磁気デイスクなどの他の記録媒体を用いてもよい。」(第4頁右下欄第1行〜4行) ケ.「本発明によれば、不特定多数の受信が可能に情報を提供するものであるが、該情報を符号化して送信するものであるから、これを復調可能にした特定のユーザのみが該情報の利用が可能とすることができ…情報の不正利用を防止できて、しかも情報利用を希望するユーザには容易にCD-ROMを提供できて情報を利用できるようにすることができるようにすることができるという優れた効果が得られる。」(第5頁左上欄第4行〜16行) 上記ア.の事項を参照すると、刊行物1には、 送信側と受信側で同一コードデータを格納した光デイスクを備え、送信側で該光デイスクのコードデータによって情報を符号化し、受信側で該光デイスクのコードデータによつて該符号化された情報を復調することを特徴とする通信システムが記載されている。 また、上記イ.の事項を参照すると、本発明の通信システムは、無線放送や有線放送によつて情報の提供を行なう通信システムであり、 また、上記ケ.の事項を参照すると、本発明の通信システムは、不特定多数の受信が可能に情報を提供し、該情報を符号化して送信するものであるから、これを復調可能にした特定のユーザのみが該情報の利用が可能とすることができる通信システムであることが記載されている。 また、上記ウ.の事項を参照すると、CD-ROM(データ記憶媒体としての…)と記載され、CD-ROMはデータ記憶媒体であることが記載されている。 上記カ.の事項を参照すると、FDの記録容量はCD-ROMの1/600程と極めて小さいために実用的でないと記載され、また、上記キ.の事項を参照すると、CD-ROMには膨大なコードデータを格納でき、このために、提供する情報毎に異なるコードデータを符号化のために用いることができると記載されていて、提供する情報毎に異なるコードデータを用いるデータ記録媒体としては、FDは記録容量が小さくて実用的でなく、CD-ROMが適当であることも開示されている。 なお、上記ク.の事項を参照すると、受信側の映像情報格納手段として、光デイスクの代りに磁気デイスクなどの他の記録媒体を用いてもよいことが記載されている。 したがって、上記のウ.及びカ.の事項を勘案すると、 刊行物1に記載されたCD-ROMは、送信側と受信側とで同一データを格納したデータ記憶媒体として把握されるものであり、 刊行物1には、送信側でデータ記憶媒体のコードデータにより情報を符号化し、受信側で記憶媒体の同じコードデータにより情報を復調することが記載されている。 また、上記エ.及びキ.の事項を参照すると、送信側では、情報毎にCD-ROMに格納された異なるコードデータを用いて符号化し、一方的に情報を不特定多数の受信側に提供することが記載されている。 また、上記オ.の事項を参照すると、受信側では、提供される情報を利用するためには、送信側のCD-ROMと同一コードデータが格納されたCD-ROM6を購入などによつて手に入れることが記載されている。 以上を勘案すると、刊行物1には、 無線放送や有線放送によって提供する情報を情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報とし、 前記情報を送信側から不特定多数の受信側に通信システムにより供給し、 提供される情報を利用する受信側は、送信側のデータ記録媒体と同一コードデータが格納されたデータ記録媒体を購入などによって手に入れて、受信側に備えつけ、 前記情報毎に異なるコードデータを用いて、符号化された情報を復調する、無線放送や有線放送によって情報の提供を行なう通信システムの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。 (2)刊行物2(特開平6-141004号公報:平成6年5月20日出願公開) ア.「【請求項12】有料放送番組視聴希望者から公衆電信電話回線を介して行われた有料放送番組視聴申し込みに対して、課金センタが有料放送番組を視聴するための視聴許可データを送信するとともに料金徴収を行い、視聴許可データを受け取った受信装置が視聴許可データに従って有料放送番組信号を処理する課金システムにおいて、番組毎に異なるスクランブルパターンによってスクランブルされた番組が公開の番組番号とともに放送され、視聴申し込みが番組番号を指定することにより行われ、視聴許可データとしてデコードデータが送信され、チューナ/デコーダにおいては申し込んだ番組番号が送信されるとデコードデータによってスクランブルが解除されることを特徴とする課金システム。」(第3頁右欄第13行〜26行) イ.「【0018】データ通信装置43に送信された視聴許可コードは、パラレルデータ通信線、RS232C規格のシリアルデータ通信線あるいはモデムを利用する通常の公衆電信電話回線によってオンラインにより、あるいはICカード、メモリカード等の半導体記憶装置又は磁気カード、磁気ディスク等の磁気記憶装置によってオフラインにより、衛星放送チューナ/デコーダ15、CATVアダプタ/デコーダ23あるいは文字多重アダプタに送り込まれる。」(第5頁右欄第15行〜23行) ウ.「0042】図13に示されたのは第12番目の態様であり、スクランブル・パターンは番組毎に変更される。放送局は、スクランブルされた番組と共に公開された番組番号を放送する。視聴希望者は、公衆電信電話回線を経由して公開された番組番号を指定することにより、視聴申し込みを行う。センタは、視聴申し込みに対し視聴許可データとしてデコードデータを公衆電信電話回線を経由して送信するとともに課金処理を行う。チューナ/デコーダは、放送局から申し込んだ番組番号が送信された場合にデコードデータによりスクランブルを解除する。」(第8頁左欄第22行〜32行) 上記ア.の事項を参照すると、刊行物2には、 有料放送番組を番組毎に異なるスクランブルパターンによってスクランブルされた番組とし、 スクランブルされた番組が公開の番組番号とともに放送され、 有料放送番組視聴希望者からの、公衆電信電話回線を介して番組番号を指定することにより行われた視聴申し込みに対して、課金センターが有料放送番組を視聴するための視聴許可データとしてデコードデータが送信され、 申し込んだ番組番号が送信されるとデコードデータによってスクランブルが解除される課金システムが記載されている。 また、上記イ.の事項を参照すると、刊行物2には、 視聴許可コードは、データ通信装置に送信され、更に、 パラレルデータ通信線、シリアルデータ通信線あるいは公衆電信電話回線によってオンラインにより、又は、 半導体記憶装置又は磁気記憶装置によってオフラインにより、 チューナ/デコーダ、アダプタ/デコーダあるいは文字多重アダプタに送り込まれることが記載されている。 また、上記ウ.の事項を参照すると、刊行物2には、 スクランブル・パターンは番組毎に変更されること、放送局は、スクランブルされた番組と共に公開された番組番号を放送すること、センタは、視聴申し込みに対し視聴許可データとしてデコードデータを公衆電信電話回線を経由して送信すること、チューナ/デコーダは、放送局から申し込んだ番組番号が送信された場合にデコードデータによりスクランブルを解除することが記載されている。 したがって、上記のア.〜ウ.の事項を参照すると、刊行物2には、 有料放送番組を番組毎に異なるスクランブルパターンによってスクランブルされた番組とし、 スクランブルされた番組が公開の番組番号とともに放送され、 有料放送番組視聴希望者からの、公衆電信電話回線を介して番組番号を指定することにより行われた視聴申し込みに対して、課金センターが有料放送番組を視聴するための視聴許可データとしてデコードデータが公衆電信電話回線を経由して送信され、 スクランブルされた番組と共に公開された番組番号を放送され、チューナ/デコーダに申し込んだ番組番号が送信された場合に、デコードデータにより、番組のスクランブルを解除する課金システムの発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。 4.対比・判断 (1)対比 そこで、本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、 ア.刊行物1記載の発明の「無線放送や有線放送によって提供する情報」については、この無線放送や有線放送は、通常は、放送番組等を提供するものであって、この放送番組等において情報が提供されるのであり、 一方、本願発明の「番組」についても、この番組の情報を無線放送や有線放送により提供するものであるから、 刊行物1記載の発明の「無線放送や有線放送によって提供する情報」と、本願発明の「番組」とは、放送される情報である点では一致する。 イ.刊行物1記載の発明の「コードデータ」は、放送される情報を符号化して送信するものであり、この符号化された情報を不特定多数の受信者に対して提供し、これを復調可能な特定のユーザのみが該情報を利用することが可能となるように、放送される情報を符号化するものであり、 また、本願発明の「スクランブルデータ」も、放送される情報を特定のユーザのみがスクランブルを解除できるように符号化して送信するものであるから、両者は、放送される情報をスクランブルする「スクランブルデータ」である点では一致する。 なお、刊行物1には、「コードデータ」について、「スクランブルデータ」という本願発明と同じ記載がない点が形式上は相違する。 ウ.刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報」は、放送される情報を情報毎に異なるコードデータで符号化した情報であり、一方、本願発明の「番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル番組」も、放送される番組の情報をスクランブルデータでスクランブルした番組のスクランブル情報であるから、本願発明が、とくに、番組毎に異なるスクランブルデータを用いる点では相違があるものの、 刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報」と本願発明の「番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル番組」とは、放送される情報を情報毎に異なるスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル情報である点では一致する。 エ.刊行物1記載の発明の「前記情報を送信側から不特定多数の受信側に通 信システムにより供給」する手段は、符号化された放送情報を放送手段により供給するものであり、一方、本願発明の「前記スクランブル番組を番組供給手段により供給する」番組供給手段も、いずれも、放送される情報を無線放送や有線放送により供給するものであるから、 両者は、放送される情報を無線放送や有線放送により供給する手段である点では一致する。 オ.刊行物1記載の発明の「提供される情報を利用する受信側は、送信側のデータ記録媒体と同一コードデータが格納されたデータ記録媒体を購入などによって手に入れる」構成は、放送情報の利用を希望する視聴者が、データ記録媒体の購入を送信側に何らかの手段で申込んで購入するものであり、購入されたデータ記録媒体は、例えば、郵送等により利用者に送られると考えられる。 一方、本願発明では、スクランブルデータは通信回線により供給されるものであって、供給手段は相違しているが、 刊行物1記載の発明と本願発明とは、いずれも、視聴者からの視聴申込みに対して、スクランブルデータを供給する点では一致する。 なお、刊行物1には、記録媒体の購入について、「視聴者からの申込み」という本願発明と同じ記載がない点が形式上は相違する。 カ.刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータを用いて、前記符号化された情報を復調する」点は、放送される情報毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル情報のスクランブルを解除するものであり、一方、本願発明では、番組毎にスクランブルを解除する点は相違しているものの、 刊行物1記載の発明と本願発明とは、放送される情報毎に異なるスクランブルデータを用いてスクランブル情報を解除する点では一致する。 キ.刊行物1記載の発明は「無線放送や有線放送によって情報の提供を行なう通信システム」のシステムの発明であるが、この通信システムにより、放送される情報が供給されるものであり、 放送される情報の供給方法である点では、刊行物1記載の発明の放送される情報の供給方法は、本願発明の「番組供給方法」と一致する。 したがって、両者は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。 <一致点> 放送される情報を情報毎に異なるスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル情報とし; 前記スクランブル情報を放送される情報の供給手段により供給し; 視聴者からの視聴申し込みに対して前記放送される情報毎に異なるスクランブルデータを供給し; 前記放送される情報毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル情報のスクランブルを解除する:放送される情報の供給方法。 <相違点> (ア)放送される情報が、 本願発明では、番組であるのに対して、 刊行物1記載の発明では、番組と特定されていない点。 (イ)番組をスクランブルするスクランブルデータが、 刊行物1では、コードデータと記載され、スクランブルデータという同じ記載がない点が形式上は相違する。 (ウ)情報毎にスクランブルされ、スクランブルが解除される情報が、 本願発明では、番組毎であるのに対して、 刊行物1記載の発明では、番組毎と特定されていない点。 (エ)視聴申し込みに対して供給されるスクランブルデータが、 本願発明では、番組毎に通信回線により供給されるのに対し、 刊行物1記載の発明では、複数の異なる情報のコードデータが供給され、また、供給手段が通信回線でない点。 (オ)視聴者の視聴申込みが、 刊行物1では、記録媒体の購入であって、視聴者からの視聴申込みという同じ記載がない点が形式上は相違する。 (2)判断 上記の相違点(ア)については、 放送される情報を番組として供給することは、無線放送、有線放送の分野では周知技術であり、刊行物1記載の発明の「放送される情報」として、「番組」を放送することは当業者が容易に推考することができたものである。 また、上記の相違点(イ)及び(ウ)については、刊行物2には、 有料放送番組を番組毎に異なるスクランブルパターンによってスクランブルされた番組とし、 スクランブルされた番組が公開の番組番号とともに放送され、 有料放送番組視聴希望者からの、公衆電信電話回線を介して番組番号を指定することにより行われた視聴申し込みに対して、課金センターが有料放送番組を視聴するための視聴許可データとしてデコードデータを、公衆電信電話回線及びオンライン又はオフラインの手段を経由してチューナ/デコーダ等に送信し、 スクランブルされた番組と共に公開された番組番号が放送され、チューナ/デコーダに申し込んだ番組番号が送信された場合に、デコードデータにより、番組のスクランブルを解除する課金システムの発明(刊行物2記載の発明)が記載されており、 上記刊行物2記載の発明には、番組を番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルし、前記番組毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除することが示されているから、 上記刊行物2記載の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明の情報毎に異なるコードデータを用いて符号化と復号化を行うことに代えて、 番組毎にスクランブルし、スクランブルを解除するように変更することは、当業者が容易に推考することができたものである。 また、上記の相違点(エ)及び(オ)については、 刊行物2記載の発明では、有料放送番組を視聴するための視聴許可データとしてデコードデータを、公衆電信電話回線及びオンライン又はオフラインの手段を経由してチューナ/デコーダ等に送信すること、及び、デコードデータにより、番組のスクランブルを解除することが開示されており、 上記刊行物2記載の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明の、情報毎に異なるコードデータを、刊行物2記載の発明と同様に、番組毎に通信回線により供給するように変更することは、当業者が容易に推考することができたものである。 なお、刊行物2記載の発明では、スクランブルデータは「スクランブルパターン」と記載され、通信回線により供給するデータは「デコードデータ」と記載されていて、これらのスクランブルパターンとデコードデータとが全く同じデータであるかどうか、この記載だけでは必ずしも明らかではないが、 刊行物2には「デコードデータによってスクランブルが解除される」とも記載されており、通信回線で供給される「デコードデータ」がスクランブル番組のスクランブルを解除するデータであることは明らかである。 また、刊行物1記載の発明では、スクランブルするデータとスクランブルを解除するデータとを全く同一なコードデータとすることが示されており、 この点からも、スクランブルデータとスクランブルを解除するデータを同じデータとすることは、当業者が容易に推考することができたものである。 以上を纏めると、本願発明は、原出願とされた特願平4-276941号の明細書又は図面には記載されていないため、出願日は遡及せず、刊行物1及び刊行物2は、いずれも、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である。 そして、その刊行物1には、放送される情報を情報毎にスクランブルデータでスクランブルし、スクランブル情報は放送される情報の供給手段で供給し、視聴者からの視聴申し込みに対して異なるスクランブルデータを供給し、情報毎に同じスクランブルデータでスクランブルを解除する放送情報の供給方法の発明(刊行物1記載の発明)が記載され、刊行物1記載の発明には、本願発明の基本的な構成が示されているものである。 本願発明は、上記のいくつかの点で、上記刊行物1記載の発明と相違するものの、各相違点については、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物2に、番組毎に異なるスクランブルデータでスクランブルして、スクランブルを解除し、番組毎に異なるデコードデータを通信回線により供給し、及び、デコードデータにより、スクランブルを解除する発明(刊行物2記載の発明)が記載されていて、 刊行物2記載の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明の構成の一部を、当業者が容易に変更することができたと認められるから、本願発明は、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-12-18 |
結審通知日 | 2002-12-24 |
審決日 | 2003-01-07 |
出願番号 | 特願2001-35021(P2001-35021) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 貴裕、望月 章俊 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
橋本 正弘 吉見 信明 |
発明の名称 | 番組供給方法及び番組受信装置 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 松倉 秀実 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 南條 眞一郎 |
代理人 | 永田 豊 |