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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B43K
管理番号 1073302
異議申立番号 異議1999-72390  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-14 
確定日 2003-02-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第2841292号「定規ガイド付きペン」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2841292号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2841292号の請求項1に係る発明についての出願は、出願日が平成5年4月20日である実願平5-28458号を平成9年3月3日に特許出願に変更したものであって、平成10年10月23日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、訂正審判(審判11-39026)が請求され、その訂正審決が確定し、その特許について、異議申立人株式会社トンボ鉛筆、テイボー株式会社及び吉葉芳彦より特許異議の申し立てがなされ、平成11年12月6日付けで取消理由通知がなされ、平成12年2月14日に意見書が提出され、平成12年5月12日付けで異議申立人の提出した回答書の副本を送付し、平成12年7月10日付けで意見書が提出されたものである。
2.本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「根元部が円柱状で先がくさび状のフェルトペンのペン先に、定規ガイドとなるガイド部を設けた定規ガイド付きペンにおいて、ガイド部は、筒部と筒部の先に設けたペン先の形状に添ってすき間なく接した突片からなり、その突片の先端は定規を使用して筆記した際に描く方向に対して丸くなっていることを特徴とする定規ガイド付きペン。」
3.引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1:実願昭53-64411号(実開昭54-166945号)のマイクロフィルム、刊行物2:実願昭53-177018号(実開昭55-93580号)のマイクロフィルム、刊行物3:実願昭58-56371号(実開昭59-162281号)のマイクロフィルム、刊行物4:実願昭56-162234号(実開昭58-66982号)のマイクロフィルム、刊行物5:カタログ(東京ハット株式会社、昭和53年7月15日発行)(第1頁、CーCHーP参照)、刊行物6:1991トンボ鉛筆総合カタログ(JAN49 01991 640656参照)には、以下のとおり記載されている。
上記刊行物1には、「もし硬質筒部(3)までの板厚のない薄い定規(6′)だと軸芯(1)に接して直線を引くことになる為、定規(6′)の接触面を汚してしまったり、又、紙面にインクが滲んで汚すなどの欠点が起きてしまう。」(第1頁第18行〜第2頁第1行)こと、
「硬質筒部(3)に取りはずし可能の筆記具用罫線引きガイド具などがあるが、これらはあくまで取りはずしとしての機能を果たす際、指にインクが付着して汚したりまた紛失しやすいなどの難点がある。」(第2頁第14行〜第18行)こと、
「本考案は、このような難点を除くために考案されたもので、従来からあるフェルトペンの容器部(2)から円筒(4)、(5)を介して連接する硬質筒部(3)の先端に、第3図の様にへら状のガイド部(3′)を設け、その先端が軸芯(1)の先端よりも僅か短かめになるように固定したものである。本考案はこのような構造であるから使用する場合はへら状のガイド部(3′)を定規にあてて紙面に対して平行に直線を引くようにする。尚、へら状のガイド部(3′)の先端よりも軸芯(1)の先端の方が僅かではあるが出ているので文字を書くことが可能である。」(第2頁第19行〜第3頁第9行)こと、
第3図ないし第6図を参照すると、へら状のガイド部(3′)の先端の形状は、定規を使用して筆記した際に描く方向に対して丸くなっていること
が記載されている。
第3図ないし第6図の記載によれば、フェルトペンの軸芯(1)(ペン先に相当)の形状は、根元部及び先が円柱状であるものと認められる。
したがって、上記刊行物1には、根元部及び先が円柱状であるフェルトペンの軸芯(1)(ペン先)に、へら状のガイド部(3′)を設けたフェルトペンにおいて、へら状のガイド部(3′)は、硬質筒部(3)の先に設けられ、へら状のガイド部(3′)の先端は、定規を使用して筆記した際に描く方向に対して丸くなっていることを特徴とするフェルトペンが記載されている。
上記刊行物2には、「この実用新案は、線引きの汚れ防止となるカバーを設けたフェルトペンに関する」(第1頁第8行〜第9行)こと、
「アダプタ式とし、線引きの場合に、インキ芯(2)に取り付け使用し、字を書く場合は取りはずせるように考案したものである。」(第2頁第3行〜第5行)こと、
「第15図より第16図は、インキ芯(2)全体にカバーするものでなく、線引きに当る部分一側にカバー片(3′)を差し込み使用出来るようにしたものである。第17図より第23図に関しては、フェルトペン容器(1)の先端及びインキ芯(2)の大きさに合わせたカバー(3)をインキ芯(2)の先端より約0.5mm手前までの長さにして、フェルトペン容器に取り付けたものである。第24図より第31図に関しては、・・・カバーに関しては、インキ芯(2)にそわせて両側面にカバー(4)が取り付けられるようになるが、後面は、インキ芯にそわせてのカバーは取り付けず(第29図及び第31図参照)フェルトペン容器(1)より5mm位両面を長くし、この部分を手で持って、取り付け、取りはずしの場合に利用するようにした。」(第3頁第2行〜第20行)ことが記載されている。
第26図の角芯の場合の先端部の拡大側面図によれば、第24図(角芯の場合の先端部の拡大後面図)と第28図(角芯の場合の先端部の拡大前面図)と同様に、カバー(4)の前面部において、カバー(4)の内側にインキ芯(2)の外周が点線により示されているから、前面も、両側面と同様にインキ芯(2)にそわせてカバー(4)が取り付けられていることが認められる。
上記刊行物3には、「太さ1〜10デニール位の合成繊維を集束して合成樹脂製接着剤を含浸させ、乾燥、固化させた、いわゆる合成繊維製ペン先の外周に、合成樹脂の薄膜を、エキストルーダーにより一体的に被覆せしめたのち所定寸法に切断し図面に示すような、ナイフ状に研磨し、ペン先端近くまでの未研磨部分に合成樹脂の薄膜層を残したマーキングペンのペン先。」(実用新案登録請求の範囲)であること、
「本考案は定規を用いて線を引いても、定規を汚さない、繊維製のマーキングペン、ペン先に関する。」(第1頁第14行〜第16行)こと、
「本考案は、この繊維ペン先の外周にエキストルーダーにより合成樹脂の薄膜を一体的にとりつけたものであって、特に最近ペン先形状が線引きを主目的としたいわゆるナイフカットと称する形状に研磨したものは、定規を用いて、線を引く事が多いが、本考案によれば定規1に当接する部分2は繊維部分3が露出していないから定規を汚すおそれがない。」(第2頁第18行〜第3頁第5行)ことが記載されている。
上記刊行物4には、「本考案は、・・・第7図に示すように、一般的な円柱状孔を有するチップホルダーに適用し得るよう円柱状ペン先1′とし、ペン先先端部を偏平化したものであってもよい」(第7頁第12行〜第17行)ことが記載されている。
上記刊行物5、6には、「根元部が円柱状で先がくさび状のペン先」が記載されている。
4.対比・判断
そこで、本件発明(以下「前者」という。)と上記刊行物1に記載された発明(以下「後者」という。)とを比較する。
両者は、定規ガイド付きペンであって、
後者の「へら状のガイド部(3′)」は、硬質筒部(3)の先端に設けられ、ペン先の一部分を覆う形状であって、その筒部(3)からみれば突出しており、前者のガイド部の突片は、図3〜6を参照すると、筒部からペン先の一部を覆うように突出しているものであるから、後者の「へら状のガイド部(3′)」は、前者のガイド部の突片に対応し、後者の硬質筒部(3)は前者の筒部に対応する。
したがって、両者は、ペン先に、定規ガイドとなるガイド部を設けた定規ガイド付きペンにおいて、ガイド部は、筒部と筒部の先に設けた突片からなり、その突片の先端は定規を使用して筆記した際に描く方向に対して丸くなっていることを特徴とする定規ガイド付きペンである点で一致し、(1)フェルトペンのペン先が、前者では、根元部が円柱状で先がくさび状であるのに対し、後者では、根元部及び先が共に円柱状である点、(2)ガイド部が、前者では、筒部の先に設けたペン先の形状に添ってすき間なく接した突片からなるのに対し、後者ではそのようになっていない点で相違している。
次に、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
上記刊行物3の記載及び図面の記載によれば、根元部が円柱状で先がくさび状であるフェルトペンにおいて、定規を用いて線を引く場合、定規に当接する部分を、繊維部分3(ペン先に相当)を露出しないようにして定規を汚さないようにすることが記載され、このように、根元部が円柱状で先がくさび状であるフェルトペンにおいて、ペン先の定規に当接する部分を覆うようにすることが開示されている。また、上記刊行物4〜6に記載されるように根元部が円柱状で先がくさび状であるペン先は周知である。これらのことを考慮すると、後者の定規ガイド機能を有するフェルトペンのペン先において、先を円柱状に代えてくさび状にしてみることに格別困難性は認められない。
相違点(2)について
上記刊行物2によれば、カバーに関しては、インキ芯(2)にそわせて前面及び両側面にカバー(4)が取り付けられることが認められ、また、インキ芯(2)全体にカバーするものでなく、線引きに当る部分側にカバー片(3′)を差し込むことも記載されている。
そうすると、カバー片(3′)又はカバー(3)の前面及び両側面はインキ芯(2)にそわせて設けられており、そして、第24,26,28図を参照すれば、カバー片(3′)又はカバー(3)の前面及び両側面はインキ芯(2)にそわせて、すき間なく接して設けられているといえる。
また、上記刊行物3には、根元部が円柱状で先がくさび状であるフェルトペンにおいて、定規を用いて線を引く場合、定規に当接する部分を、繊維部分3(ペン先に相当)を露出しないようにして定規を汚さないようにするために、合成繊維製ペン先の外周に、ペン先端近くまでの未研磨部分に合成樹脂の薄膜層を残すことが記載されており、この「合成樹脂の薄膜層」は、前者の「ガイド部」に対応しているので、刊行物3のペン先とガイド部を構成する合成樹脂の薄膜層はすき間なく接しているものである。
そうすると、上記刊行物2、3に記載されるガイド部をインキ芯にそわせて、すき間なく接して設けるという技術思想を適用して、後者においても、ガイド部(3′)を軸芯(1)(ペン先)の形状に添ってすき間なく接するように構成してみることは、当業者が容易に推考し得ることと認められる。
その際、相違点(1)で検討したように、フェルトペンのペン先が、根元部が円柱状で先がくさび状である場合においても、当然、ガイド部はペン先の形状に添ってすき間なく接するように構成するものと認められる。
次に、本件発明の効果について検討する。
「定規を使って線などを書く際に、ペンのインクが定規に着いて定規や手が汚れてしまうことも無く、また、定規に着いたインクや汚れがペン先に着いてしまうことも無く、インクの色が変わってしまうことも無い。また、定規を使う度に定規に着いたインクを拭き取る手間も省ける。」という効果は、刊行物1に記載される発明に基づいて当業者が容易に予測し得る効果である。
「また、ガイド部の突片の先端の部分は、定規を使用して筆記した際に描く方向に対して鋭利にならない様に丸くしてあるので、ガイド部の突片の先が紙などに触れても紙などを傷つけてしまったり、鋭利な跡が残ってしまうこもなく、書き具合も滑らかとなる。さらに、ガイド部の突片の先が紙に直接触れない様に、最初からガイド部の突片の先端よりもペン先の方を突出するように設定すれば、ガイド部の突片は全く紙に触れることもなく、書き具合もさらに大変滑らかとなる。また、たとえ長期使用などによるペン先の摩耗が予想されても、最初からガイド部の突片の先端よりもペン先の方を突出するように設定しておけば、その分ガイド部の効果の持続性、耐久性は向上し、良い状態で長く使用できるようになる。また、ペン先をガイド部の突片の先端より突出するように設定すれば、ペン先はその分見えやすくなり、取扱いがより容易になる。」という効果は、平成10年6月15日付け手続補正書により追加されたものであり、当業者にとって自明の事項と認められる。
次に、平成12年2月14日付けの意見書において、本件発明の「定規ガイド」と刊行物1の「へら状ガイド部」との相違について主張しているが、上記相違点(2)で検討したように、刊行物1に記載された発明においても、ガイド部(3′)を軸芯(1)(ペン先)の形状に添ってすき間なく接するように構成してみることは、当業者が容易に推考し得ることであり、その効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。
また、平成12年2月14日付け及び平成12年7月10日付けの意見書において、本件発明の「根元部が円柱状で先がくさび状のフェルトペンのペン先」と刊行物1の「根元部及び先が共に円柱状のフェルトペンのペン先」の相違について主張しているが、上記相違点(1)で検討したように、本件発明のような「根元部が円柱状で先がくさび状のペン先」は周知であり、しかもガイド部を設けることも刊行物3に記載されており、刊行物1に記載される定規ガイド機能を有するフェルトペンのペン先において、先を円柱状に代えてくさび状にしてみることに格別困難性は認められないというものである。
したがって、意見書の主張は採用できない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-19 
出願番号 特願平9-87112
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B43K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 白樫 泰子
村山 隆
登録日 1998-10-23 
登録番号 特許第2841292号(P2841292)
権利者 大澤 郁夫
発明の名称 定規ガイド付きペン  
代理人 細井 貞行  
代理人 石渡 英房  
代理人 早川 政名  
代理人 長南 満輝男  
復代理人 湯浅 正彦  
代理人 藤木 三幸  

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