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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議200171906 審決 特許
異議199971254 審決 特許
異議199971260 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 発明同一 訂正を認める。無効としない G11B
審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない G11B
審判 一部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない G11B
管理番号 1073923
審判番号 無効2000-35269  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-05-18 
確定日 2002-11-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2138602号発明「記録再生装置の防振装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2138602号に係る発明についての出願は、平成2年10月22日に出願され、平成7年12月25日に特公平7-122983号として出願公告がなされ、平成8年3月22日及び平成8年3月25日に特許異議の申し立てがなされ、平成10年10月9日にその発明について特許の設定登録がなされた。
(2) その特許に対し、平成12年5月16日に請求人東海ゴム工業株式会社(以下、「請求人」という。)から無効審判の請求がなされ、被請求人から答弁書が提出され、さらに、請求人から上申書が提出された。なお、この特許に対し、平成11年10月20日に請求人北辰工業株式会社から無効審判の請求がなされている。(平成11年-審判第35576号)
(3) その後、両審判事件は平成12年12月12日に併合され、平成12年12月13日付けで当審から無効理由の通知がなされ、被請求人から所定期間内である平成13年2月26日に意見書と共に訂正請求書が提出され、訂正を求めた。
(4)請求により、平成13年5月11日に口頭審理が行われ、それぞれ提出された陳述要領書を含めて陳述すると共に、該口頭審理に関して平成13年6月11日に被請求人から、平成13年7月11日に請求人から上申書が提出された。
(5)平成13年9月5日付けで両審判事件を分離した。

2.訂正の可否に対する判断
2.-(1)被請求人の求めた訂正は、以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。
請求項1記載中の要件c.「・・・端部に型成形により・・・」を「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。
b.発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]を以下のように訂正する。
「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。

2.-(2)訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a.について
この訂正事項は、請求項1に係る「第1密封部材」の位置と成形手段を限定したものと認められる。
すなわち、訂正前は、「第1密封部材」の位置は「前記筐体内方側の端部」とされていたので、少なくとも「端部」と解釈できるが、この訂正により「端部」だけに限定される。また、「成形」も「型」により行っていたものをより具体的に「射出」により行うものに限定したものであるから、これらの訂正はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものと言える。
また、これらの訂正については、特許公報の第5欄4行〜7行に「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成される。この環状段部13には、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1の密封部材が射出成形により一体に熱融着されている。」と記載されており、更に、第6欄9行〜11行には、「この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形・・・」と記載されている。よって上記訂正は、願書に最初に添付した特許明細書の範囲内においてしたものと認められる。
そして、上記訂正は、特許明細書の範囲内において、明確に限定されたものであるから実質上特許請求の範囲の請求項1を拡張し、又は変更するものでもない。また、請求項1を引用する請求項2乃至4項においても同様である。
訂正事項b.について
この訂正は、訂正事項a.の訂正すなわち、特許請求の範囲の訂正に対応して発明の詳細な説明の記載の整合を取るためにおこなったものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものと言え、かつ、この訂正により実質上特許請求の範囲1乃至4を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、請求人は、「筒体内方側端部のみ」と限定できる理由がないと主張している(口頭審理陳述要領書第2頁7-A参照)が、先に記したように、限定する理由は明確と認められる。
2.-(3)独立特許要件の判断
請求項2乃至4に係る特許発明(下記3.参照)は、無効審判の請求がなされていないが、請求項1を引用して記載されているために、請求項1の訂正に伴い実質的に訂正されているので、独立特許要件の検討を行う。
請求項2乃至4に記載された事項には不備な点は認められず、かつ、各発明で引用する請求項1に係る発明が、下記6.に記載したように特許法第36条の規定を満たしている以上、請求項2乃至4に記載された発明は、同法第36条の規定を満たしていることは明かである。
また、請求項2乃至4に係る発明が引用している請求項1に係る発明は、下記6.,7.に記載のように特許法第29条の2,同法第29条第2項の規定に該当しないから、請求項1に係る発明よりも減縮されている請求項2乃至4に係る発明も当然に同法第29条の2及び同法第29条2項の規定に該当しないことは明かである。
したがって、請求項1に係る発明をそのまま包含する請求項2乃至4に係る発明は、当然、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
2.-(4)むすび
したがって、平成13年2月26日付けの訂正請求は、特許法第134条第2項及び同条第5項で準用する同法第126条第2項乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明
本件特許第2138602号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)及び請求項2乃至4乃至に係る発明は、平成13年2月26日付け訂正請求書により訂正された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
A.内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
B.前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。

【請求項3】請求項1において、前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。

【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。」
(なお、請求項1の「A」,「B」は便宜上付与した符号である。)

4.請求の趣旨
請求人は、本件特許第2138602号の請求項1に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の無効審判を請求し、証拠方法として後記の書証を提示し、以下の理由により無効にされるべきであると主張している。

(1)無効理由1
本件特許発明(請求項1に係る発明)は、特許請求の範囲に記載の発明の要部である事項と実施例に記載の事項との対応に矛盾があり、発明の構成が不明である。
したがって、本件特許発明の明細書の記載は、特許法第36条に違反するものである。
(2)無効理由2
本件特許発明(請求項1に係る発明)は、平成2年5月31日付け出願の特願平2-142337号(特開平3-223539号公報)の先願が存在し、該先願発明と本件特許発明との相違点は先願の出願当時の本件特許発明の要部である減衰手段の普通の使用形態を特定したにすぎないものであるから、特許法第29条の2によって拒絶されるべきものである。

5.証拠方法及び参考資料
5.-(1)請求人の提示した証拠方法
甲第1号証:特開平3-223539号公報(特願平2-142337号、平成2年5月31日出願、平成3年10月2日公開)
甲第2号証:特開昭61-189336号公報(昭和61年8月23日公開)
甲第3号証:実開昭60-163592号公報
甲第4号証:実開昭61- 68393号公報
甲第5号証:実開昭63-114492号公報
甲第6号証:実開昭63-164891号公報
甲第7号証:特開昭61-215822号公報
甲第8号証:実開平 2- 96056号公報及び実願平1-4970号のマイクロフィルム
甲第9号証:実開平2-114238号公報及び実願平1-23407号のマイクロフィルム
甲第10号証:東海ゴム工業株式会社の昭和60年6月27日付定款
甲第11号証:ソニー向けCDオートチェンジャー用ダンパーの開発NO’89-65 1989年10月23日作成(1989年12月29日付優先権出願(実願平1-152196)日前に試作・量産へ向けての検討を行っていた資料)
甲第12号証:ソニー向けCDオートチェンジャー用ダンパーの開発NO’89-66 1989年10月23日作成(1989年12月29日付優先権出願(実願平1-152196)日前に試作・量産へ向けての検討を行っていた資料)

5.-(2)被請求人の提示した証拠方法
乙1号証:桜内雄二郎著、新版「プラスチック材料読本」、株式会社工業調査会発行、1987年5月15日発行の第10頁乃至第12頁等
乙2号証:白石雅夫著「機能材料」1999.10月号Vol.19,No.10 株式会社シーエムシー発行第18頁乃至第23頁
乙3号証:大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、改訂第8版「プラスチック読本」1971年5月10日発行の第227頁乃至同第197頁等
乙4号証:永井進監修「プラスチック用語辞典」、株式会社工業調査会、1982年8月25日発行、第469頁
なお、被請求人は当事者尋問を申請したが、尋問事項が「本件発明1」の実用化の困難性に関するものであるため前記尋問は行わないこととなった。そのため、提出された検証物乙1,乙2号証および乙5号証の1ないし60、乙6号証については検討しない。

6.請求人の無効理由についての当審の判断
6.-(1)特許法第36条違反について
請求人は、請求項1に係る発明は、以下の点で不備であり、特許法第36条に違反していると主張している。
イ. 「前記減衰手段」は、「a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」と記載されているが、本件特許明細書における「減衰手段」は、「側板4の下端に減衰手段6が複数(実施例では各側板4に対して2つ)設けられている。減衰手段6は再生装置1の側部に設けた突起7を介して、再生装置1を支持するとともに、再生装置1からの振動が伝達される。第2図は減衰手段6の詳細を示す図である。減衰手段6は、ブラケット8を有している。・・・・ブラケット10には、中空の筒状部11が形成され、その内部に減衰材12が封入されている。」(特許公報第4欄41行〜第5欄2行)と記載されており、実施例の「減衰手段」には「複数の中空の筒状部」を有しておらず、「1個の中空の筒状部」のみであるから、特許請求の範囲に記載の発明の要部である事項と実施例に記載の事項の対応に矛盾があり、本件特許発明の要部の構成が不明である。
検討するに、請求項1においては「減衰手段」は振動を減衰するための手段全体を総称しているのに対し、発明の詳細な説明における「減衰手段6」は、筒状部からなる個々の部材を呼称しているものと認められる。しかしながら、請求の範囲の記載では「減衰手段」の構成は、「筐体にその内方を向くよう」に「複数の中空の筒状部」が設けられ、各筒状部が更にb,c,dの構成を備えているのであるから、表現手法が異なるものの「各筒状部」の構成と実施例の「減衰手段6」の構成が一致することは明かであり、請求項1に係る記載と実施例の記載に矛盾はないから、請求の範囲の記載が不備とは言えない。
ロ. 請求項1に係る構成Bb.では「筒状部内に収容された減衰材」と表現されているが、「減衰材」は流体であり、筒状部内のみに収容されるものではない。実施例においても第1密封部材14と第2密封部材16と筒状部11で形成した空間内に減衰材12を収容しており、特に第1密封部材14は端部から突出しており、筒状部11の内側の位置に存在しないから、特許請求の範囲に記載の事項と実施例との対応に矛盾があり、本件特許発明の要部となるべく発明の構成が不明である。
しかしながら、本件発明は、装置の発明であって組立方法の発明ではないから、記載の順序が逆になっていても配置関係が明らかになれば不備とは言えない。本件発明は請求の範囲で表現された結果として、筒状部とその両端に設けられる第1・第2の密封部材で閉じた空間を形成し、該空間に減衰材が収納される構成が明かであり、発明の構成が不明であるとは言えない。
また、第1密封部材が端部より突出している点は、実施例における具体的構成の特徴にすぎず、請求の範囲の記載が上記のように不明と言えない以上、実施例の具体的構成と請求の範囲に記載された構成が不一致であるから不備であるとすることはできない。
ハ. 前記請求項1に係る構成Bc.では、「端部に型形成により一体に熱融着」と記載されており、更に、前記「端部」について、特許異議答弁書(加藤妙子)第4頁下9及び7行で「本願発明の構成要件(D)の部分の「前記筒状部の前記筐体内方側の端部に型成形により一体」の「端部」は「端部のみ」を意味し、・・・」と記載しているが、本件特許発明の構成要件(Bd)の前記「端部」が「端部のみ」と限定される旨本件特許発明の明細書の何れをみても記載がない。
しかしながら、この点については、平成13年2月26日付けで訂正された訂正明細書により「端部のみ」と明確になったので、請求人の主張は根拠がない。

6.-(2)特許法第29条の2違反について
a.証拠に記載の発明
請求人の提示した証拠には、以下の発明が記載されているものと認める。
(i)甲第1号証(特開平3-223539号公報参照)
甲第1号証には、粘性流体封入ダンパーについての発明が記載されており、車両等にCDプレーヤーを搭載する場合、車両の振動がそのままCDプレーヤーに伝達されるのを防止するために用いられるものである点が記載されている(1頁右欄3行〜8行)。
このような粘性流体封入ダンパーを用いた車両に用いるCDプレーヤーの支持構造の一例が、第2図に記載されており、「第2図は、・・・この支持フレーム10によりメカデッキ12がスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持されている。」と記載されている(2頁左下欄下から2行〜右下欄3行)。
また、粘性流体封入ダンパーの一例が第5図に記載されている。そして、「この例のダンパー53は、容器本体54が軟質樹脂(又はゴム)製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、それらが一体に固着されている(樹脂製の第一部材と第二部材とは2色成形により同時成形することが可能である)。第一部材には、支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の周壁部の一部(外周壁部62)が形成され、また第二部材には、周壁部の一部(外周壁部64)と厚肉のフランジ66とが形成されている。この硬質樹脂製の第二部材には、図中上面側に嵌合凹所68が形成され、そこに同じく硬質樹脂製の蓋体70が嵌め込まれた上、固着されるようになっている。尚、容器本体54と蓋体70との固着は、樹脂同士の溶着によって行うことができる。」と記載されている(3頁左下欄2行〜17行)。
なお、2色成形が、型内に材料を圧力をかけて射出する成形方法であることは、周知のことと認められる。
これらの記載事項によれば、甲第1号証には「支持フレーム10上にCDプレーヤーの板状のメカデッキ12が、上下方向に可動なスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持される防振装置において、前記粘性流体封入ダンパーの筒状をなす容器本体は軟質樹脂製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、
第一部材には略中央部に支持部材又は被支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、容器本体の内周壁部62と、前記中央部の攪拌軸部58と、前記内周壁部62を連結する可撓部60が形成され、また前記第二部材には、容器本体の外周壁部64と厚肉のフランジ66とが形成され、前記第一部材と第二部材は、前記内周壁部62の外周面と前記外周壁部64の内周部全面において接する関係で射出成形され、一体に固着され、第二部材の前記穴部とは反対側端部であるフランジ部には上面側に硬質樹脂製の蓋体70が固着された防振装置。」の発明(以下、「先願発明」という。)が認められる。

(ii)甲第2号証
内部に空間を有する筐体5、20と、該筐体5、20の内方の一部に設けられるばね部材7、23と前記筐体に設けられる複数のダンパー10,29とで、筐体内に被支持体1を支持する点。(1,2,8図参照)
(iii)甲第3号証
内部に空間を有する固定フレーム7、この固定フレーム7の一部に設けられるコイルばね10と、固定フレーム7の内方に向けて設けてある複数のダンパー11によりメカデッキ1を支持する点。(2,3図参照)
(iv)甲第4号証
甲第4号証の発明(2図参照)は、甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(v)甲第5号証
再生装置内の筐体10内でディスク駆動ユニット11が複数のスプリング11とダンパ14により支持されている点。(4,5図参照)
(vi)甲第6号証
内部に空間を有する固定フレーム11と、この固定フレーム11の一部に設けられるスプリング18、23と、固定フレームの内方に向けて設けてある複数のダンパー17によりメカデッキ12を支持する点。(1,2図参照)
(vii)甲第7号証
内部に空間を有する筐体5にその内方に向けて複数のダンパー9を設け、該ダンパ9と複数のばね部材6により被支持体1を支持する点。(6図参照)
(Viii)甲第8号証
甲第8号証の発明(4図参照)は、甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(ix)甲第9号証
甲第9号証の発明(2図参照)は、甲第3号証の3図と同じ構成であると認められる。
(x)甲第10号証
請求人が合成樹脂も扱っている点。
(xi)甲第11,12号証
1989年12月29日前に、ダンパー材料としてナイロン、PPの使用、PPとTPEを2色成形により接着する点等を検討していた点。


6.-(2)-b.甲第1号証に記載の発明(先願発明)と本件発明1との対比
先願発明と本件発明1を対比すると、先願発明の「支持フレーム」、「CDプレーヤー」、「スプリング」、「粘性流体」、「ダンパー」、「軸体を嵌入させるための穴部」は、本件発明1の「筐体」、「記録再生装置」、「弾性支持具」、「減衰材」、「減衰手段」、「突起を受け入れるための凹部」に相当するものと認められ、前記突起を受け入れるための凹部は、共に筒状部の端部を覆う弾性部材に設けられている点で共通し、また、先願発明の「硬質樹脂製の第二部材」と本件発明1の「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部」は硬質樹脂である点で共通し、さらに、先願発明の「蓋体」と本件発明1の「第二密封部材」は、減衰手段をなす容器の「密封部材」として共通するから、
両者は「筐体の一部に設けられる弾性支持具と振動を減衰するための減衰手段で記録再生装置を支持する防振装置であって、
減衰手段は、前記筐体に設けられた複数の硬質樹脂からなる中空の筒状部と、この筒状部内に収容された減衰材と、
前記筒状部の端部を覆う弾性部材には記録再生装置を支持するための突起を受け入れるための凹部を設けると共に、
前記筒状部の他端部に設けられた密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」で一致するが、以下の点で相違する。
相違点1
本件発明1が「内部に空間を区画する筐体」を備えているのに対し、先願発明が「上部にメカデッキを支持するための支持フレーム」を備えている点。
相違点2
本件発明1が「筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」を備えているのに対し、先願発明は中空の筒状部は支持フレームに上下方向に向いており、かつ、筒状部は硬質樹脂で形成されている点。
相違点3
記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられる弾性部材について、本件発明1が「筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を備えているのに対し、先願発明は第一部材が容器本体をなす硬質樹脂製の第二部材の内周壁全面において、軟質樹脂で射出成形される内周壁部と、これに連結し、前記突起を受け入れるための凹部を弾性的に支持するための可撓部とからなっている点。

6.-(2)-c.相違点の検討
上記相違点について検討する。
イ.相違点1について
先願発明の、上部にCDプレーヤーのメカデッキを支持するための支持フレームを備える構成は、支持フレームの内部にCDプレーヤーを収納するための空間を備えていないので、本件発明1の「内部に空間を区画する筐体」とは、明らかに構成が相違する。
しかしながら、請求人の提示した甲第2乃至9号証によれば「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」の構成は、この分野におけるダンパーの周知の使用形態にすぎず、先願発明においても、このように構成することは適宜実施しうる程度のことにすぎない。

ロ.相違点2について
先願発明における粘性流体封入ダンパーは、支持フレームに上下方向に向いており、かつ、上記相違点1のように、先願発明における支持フレームは内部に空間を区画していないので、「筐体内方に向くように設けられた、・・・中空の筒状部」の構成とも異なる。しかしながら、本件発明1に係る上記構成は、上記したように周知の使用形態を採用する際、当然得られる構成にすぎない。
一方、先願発明の第一部材は「硬質樹脂」製であり、本件発明1の材料である熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックとも異なる。そして、熱融着を意図していない前記先願発明の「硬質樹脂製の第一部材」が実質的に「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」を意味するとは認められない。

ハ.相違点3について
先願発明は、第一部材に軟質樹脂を用いているが、この軟質樹脂を硬質樹脂との組合せで2色成形するとの事項のみから、該軟質樹脂が実質的に「軟質の熱可塑性弾性体」であると認定することはできない。
なお、「樹脂製の第一部材と第二部材を2色形成により、同時成形」する際、同時成形といっても、このような2つの筒状のものを全く同時に形成できず、一方を形成しておいてから他方を形成するであろうことは当然行うべきことと認められる。 そして、その際、両部材間は一体成形されるのであるから、何らかの力が働いて両者を固着していることは明かであり、予め形成した硬質樹脂の筒に接するように軟質樹脂を射出成形すれば両者の間には、被請求人の主張する「熱融着」程の強度が得られるかは不明であるが、程度の差があっても同様の現象が生じているものと認められる。
しかしながら、先願発明は、攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の内周壁部62が一体に形成され、そのうちの内周壁部62の外周には外周壁部64が同時成形により配置された形状となっている。即ち、外周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており、外周壁部の端部のみで固着するとの思想は認められない。
また、先願発明の攪拌軸部58と可撓部60及び容器本体の内周壁部62とからなる第一部材は一体に形成されることにより一つの容器を形成しているので、外周壁部64の端部のみに本件発明1のように密封部材を固着することにより密封して容器を形成する構成とも相違する。
しかも、先願発明における第一部材は、その上端の開口周縁部から内側に突出するようにして立ち上がる薄肉の環状突片72を設けることを必須の構成要件としている(特許請求の範囲及び第3頁左下欄18〜19行参照)。すなわち、柔らかい前記環状突片72をも必ず一体に成形するので、先願明細書には、この突片を省略して前記周壁部62を短くし、前記外周壁部64の下側端部のみで固着するとの思想は認められない。
さらに、先願発明の攪拌軸部58と可撓部60及び容器本体の内周壁部62とからなる第1部材は一体に形成されることにより一つの容器を形成しているので、外周壁部64の端部を本件発明1のように密封部材を固着することにより密封して容器を形成する構成とも相違する。
以上検討したように、相違点1乃至3は全て実質的な相違でないと言えないので、本件発明1と先願発明を同一であると認めることはできない。

6.-(2)-d.請求人の主張
なお、請求人は、本件発明1と先願発明との対比に関し、概ね以下のように主張している。
イ.先願の甲第1号証が開示する発明
甲第1号証(先願発明)には、以下の点が記載されている。
(a)第2図には、支持フレーム10と、この支持フレーム10の一部に設けられ,CDプレーヤーを支持するためのスプリング14と、支持フレーム10の一部に設けられ、CDプレーヤーを支持し、かつ、その振動を減衰するための複数個の第5図に示す粘性流体封入ダンパー16(53)とを備えたCDプレーヤーの支持構造であること。
(b)第5図に示す粘性流体封入ダンパー16(53)は、熱可塑性樹脂からなる中空の筒状部64を有すること。
(c)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64内に収容された粘性流体を有すること。
(d)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64のCDプレーヤーを設ける側に型成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記CDプレーヤー側に設けた突起を受け入れるための凹部56が設けられた第1密封部材54を有すること。
(e)第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64の他端部に固着された第2密封部材70を有すること。

ロ.先願出願前の周知慣用技術
先願発明の粘性流体封入ダンパー16(53)は、当該防振装置としてCDプレーヤー等の記録再生装置での使用を前提として発明されたものである。
そこで、前記(a)の構成に代る他の「CDプレーヤーの支持構造」をみてみると、上記甲2〜9号証等で、「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」が、先願の出願前の周知の「CDプレーヤーの支持構造」の使用形態(以下、先願出願前の周知の使用形態(a’)」という。)であることが判る。
したがって、先願発明の粘性流体封入ダンパー16(53)における(a)の構成に関する構成(a’)は周知の製品の普通の使用形態として使用されることを前提とするものであり、又、構成(b)に関しても「粘性流体封入ダンパーは、前記減衰手段は筐体にその内方を向くように設けられる」構成(b’)、さらに、構成(d)に関しても「粘性流体封入ダンパーは、筒状部の筐体内方側に設けられること」の構成(d’)も、粘性流体封入ダンパーの周知の製品の普通の使用形態である。

ハ.本件発明1と先願発明との比較
[1]本件発明1の構成要件Aと先願発明の(a)との比較
甲第1号証で粘性流体封入ダンパー53の構造及びその実施の形態の開示があることから、甲第1号証で本件発明1の構成要件A(内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置)について開示され、本件発明1の構成要件Aは先願の甲第1号証で開示された発明の構成要件との間に違いがない。
[2]本件発明1の構成要件Baと先願発明の構成(b)との比較
構成要件aの「熱可塑性のエンジニアリングプラスチック」は通常使用する材料を特定しただけのものであるから、格別限定が付されていない先願発明の熱可塑性樹脂の外周壁部(筒状部)64」に相当する。
したがって、本件発明1の構成要件Ba.は、先願発明の(b)の構成を周知の普通の使用形態(b’)に特定したものであるから、先願発明の(b)に相当し、両者間に違いがない。
[3]本件発明1の構成要件Bb.と先願発明の構成(c)との比較
本件発明1の構成要件Bb.の「前記減衰手段は、前記筒状部内に収容された減衰材を有すること。」は、先願発明の(c)の第5図に示す粘性流体封入ダンパー53は、筒状部64内に収容された粘性流体を有すること。」に想到し、両者間に相違がない。
[4]本件発明1の構成要件Bc.と先願発明の構成(d)との比較
先願発明は、前記指摘部分に記載のように、2色成形すれば第一部材と第二部材とが融着によって接合されることは明かである。
[5]本件発明1の構成要件Bd.と先願発明の構成(e)との比較
構成要件Bd.と先願発明の構成「筒状部64の他端に固着された硬質樹脂製の蓋体70」との間に違いがない。
以上のように、本件発明1の必須構成要件と先願発明の構成は夫々対応する。特に先願発明の「粘性流体封入ダンパー」の発明は、甲第2号証乃至甲第7号証に示す周知の普通の使用形態が全体となって発明されているものであり、且つ、本件特許発明の目的として、「減衰手段の組立て工数が少なく、製作が簡単な防振装置を提供することにある。」と記載していることからも、本件発明1の本旨との間に相違点がない。
したがって、先願発明の粘性流体封入ダンパー53は、その用途を甲第2号証乃至甲第7号証等に示す周知慣用技術の形態を前提に発明されたものであり、本件発明1は、先願の甲第1号証に記載された発明と実質的に同一であるから、本件発明1は特許法第29条の2によって拒絶されるべきものである。

しかしながら、上記[2]の点は、6-(2)-c.に記したように相違がないとは言えない。
すなわち、熱可塑性の硬質樹脂が、実質的に熱可塑性のエンジニアプラスチックと同じであると認定することはできない。
また、同じく上記[4]の点も6-(2)-c.に記したように相違がないとは言えない。
すなわち、先願発明は、本件発明1のように筒状部の端部のみに密封するべく熱融着されていない点で相違する。
したがって、請求人の上記主張は、採用できない。

7.当審における無効理由
7.-(1)当審が通知した無効理由における引用刊行物
引用刊行物1:実願昭63-151566号(実開平2-72834号)のマイクロフィルム (平成2年6月4日公開)
引用刊行物1には、以下の記載事項がある。
(1)「本考案は、車載用のコンパクトディスクプレーヤのドライブユニット等の精密機器を支持する際に使用される防振支持装置に関する。」(2頁6行〜同8行)
(2)「第3図はコンパクトディスクプレーヤの主要部を示す図である。図中1はシャーシ等の支持部材である。この支持部材1はコンパクトディスクプレーヤを取り付けるためのフレームである。この支持部材1に、メカシャーシ等の被支持部材2が弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6とダンパー60によって支持されている。被支持部材2上にはコンパクトディスクDを支持して回転させるターンテーブル4aと、このターンテーブル4aを回転駆動させるモータ機構4と、光学ピックアップ5及び図示していない電子回路ユニットや表示機構ならびに外部接続コネクタ機構などが搭載されている。」(2頁10行〜3頁3行)
(3)「容器部12はブチルゴム等のゴム材料にて厚肉に形成された円筒状の胴部12aの一端に底12bが設けられて容器状に一体に成形されている。・・・(中略)・・・この蓋部13はブチルゴムとのゴム材にて容器部12より柔らかく弾性体に成形される。」(10頁8行〜11頁5行)
(4)「ダンパー20の容器部22は筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔laに嵌入させる溝22dが設けられている。胴部22aの一端には底部22bを有し、容器部22は一体成形されている。さらに、蓋部23は胴部22aの開ロ端を覆うとともに、容易に弾性変形するように容器部22より軟質に成形されている。蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着できるように端部23bを有し、蓋部23は一体成形されている。」(12頁16行〜13頁10行)
これらの記載事項及び第2,3図によれば、引用刊行物1には「内部に空間を有する支持部材1と、該支持部材1内にコンパクトディスクプレーヤを配置し、
支持部材とコンパクトディスクプレーヤ間にコイルスプリング6とダンパー20を設けるとともに、ダンパーはその容器部を支持部材に取付け、内方に向いた支持軸66をコンパクトディスク側に取付けてなる防振装置において、
上記ダンパー20は、ゴム材料で形成されたダンパーの容器部22が筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔1aを嵌入させる溝22dが設けられ、前記胴部22aの他端には底部22bを有し、容器部22は一体に成形され、蓋部23は前記胴部22aの前記開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の前記開口端22cに対して接着する端部23bを有し、前記蓋部23は一体成形され、容器部内に粘性流体を封入して構成されている防振装置。」の発明(以下、「引用刊行物1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

引用刊行物2:特開昭61-189336号公報(昭和61年8月23日公開)
引用刊行物2には、「ビデオテープレコーダ及びコンパクトディスクプレーヤ等の磁気記録再生装置を含む電子機器に好適する防振装置」に関し(1頁左欄13行〜15行)、第2図等には粘性流体28を封入したダンパー29が開示されており、「ダンパー29として、ゴムを用いた場合で説明したが、これに限ることなく、例えば弾性プラスチック等の弾性材料でなる弾性体を用いて構成してもよい」点が記載されている(3頁右上欄4行〜8行)。

引用刊行物3:特開平1-139240号公報(平成1年5月31日公開)
引用刊行物3には、「(産業上の利用分野)
本発明は、硬質部位と軟質部位を有する複合成形体の新規な製造方法に関する。更に詳しくは、ポリカーボネートなどの硬質で諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックで構成された部位と、軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を熱融着手段により効率よく製造する方法に関するものである。」(2頁左上欄1行〜同8行)、「(従来の技術)優れた機械的強度を持つエンジニアリングプラスチックスは、・・・・(中略)、一方熱可塑性弾性体・・・(中略)近年、合成樹脂(プラスチック)性部品や部材の性能の高度化、機能の高度化の要求が厳しく、その中で前記したエンジニアプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し両者に共通した成形手段である射出技術により、両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁左上欄9行〜右上欄16行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄17行〜左下欄1行参照)、「合成樹脂成形体の存在下に該合成樹脂成形体より硬度の低い成形体を与える熱可塑性弾性体組成物を熱融着により接合させる」点(特許請求の範囲の請求項1参照)及び、「熱融着により接合させる技術手段は、いずれでも採用可能である。例えば、(中略)生産の観点から射出成形法が望ましい。」(4頁右上欄11〜16行参照)と記載されている。
これらの記載によれば、引用刊行物3には「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を射出成形により一体に熱融着させる」発明が記載されているものと認められる。

引用刊行物4:特開平2-107415号公報(平成2年4月19日公開)
引用刊行物4には、「一方・・・(中略)エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者に共通した成形手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが量産性という点から最も効果的である。」(2頁左下欄4行〜右下欄10行)、「一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体との熱融着生が悪く、両者を強固に接合することができない。」(2頁左下欄11行〜同15行)及び、「自動車用ランプのランプボディをエンジニアリングプラスチックで成形する成形工程と、前記ランプボディを射出成形金型に入れる挿入工程と、前記ランプボディと前記射出成形金型との間に形成される空間部に熱可塑性エラストマーを注入する注入工程と、前記ランプボディと前記熱可塑性エラストマーを熱融着させる熱融着工程」(特許請求の範囲の請求項1)と記載されている。
これらの記載を総合すると、引用刊行物4には引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。
引用刊行物5: 特開平1-139241号公報(平成1年5月31日公開)
引用刊行物5には、「(産業状の利用分野) 本発明は、機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂で構成される成形体部位と、弾性に富んだ熱可塑性弾性体で構成される成形体部位とを有する複合成形体の製造に有用な、熱融着特性に優れた熱可塑性弾性体組成物に関する。」(1頁右欄13行〜18行)、
「エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者を共通した形成手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁右上欄2行〜6行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは、熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く、両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄7行〜11行)と記載されている。
これらの記載を総合すると、引用刊行物5には、引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。

7.-(2)対比
本件発明1と上記引用刊行物1に記載の発明を対比すると、引用刊行物1に記載の発明の「支持部材1」、「コイルスプリング」、「ダンパー」、「容器部22の筒状の胴部22a」、「粘性流体」及び「支持軸挿入部23a」は、本件発明1の「筐体」、「弾性支持具」、「減衰手段」、「中空の筒状部」、「減衰材」及び「記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部」にそれぞれ相当し、さらに引用刊行物1に記載の発明の「蓋部23は胴部22aの開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折り曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着する端部23bを有し」における蓋部は容器22を密封する部材であることは明らかであり、またその部材である「軟質のゴム材料」が軟質の弾性体であることも自明のことであるので、
両者は「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、前記減衰手段は、前記筐体にその内方を向くように設けられた、複数の中空の筒状部と、
この筒状部内に収容された減衰材と、
前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに固着され軟質の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた密封部材と、
を有する記録再生装置の防振装置。」で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件発明1が、筐体の内方に向くように設けられた複数の中空の筒状部を「熱可塑性のエンジニアリングプラスチック」で構成するとともに、該筐体内方側端部に「軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部22は「ゴム材料」で形成するとともに、該容器部の内方側端部である開口部22cに設けるものは,「容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形された蓋部23」である点。
相違点2
本件発明1の筐体内方側端部に設けられる第1密封部材が、「射出成形により一体に熱融着」されるのに対し、引用刊行物1に記載の発明では、筒状の容器部の内方側端部である開口端22cに蓋部23を接着して設けている点。
相違点3
本件発明1が、第1密封部材が設けられている筒状部の他端部に第2密封部材を備えているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部の蓋が設けられている側の反対側には、底部22bが胴部22aと一体に設けられている点。

7.-(3)相違点の検討
イ.相違点1,2について
引用刊行物1に記載の発明は、ダンパーを構成する筒状の容器部に対して、その端部に接着される蓋部は、前記容器部のゴム材料に比して軟質のゴム材料を用い、且つ両者を接着することにより接合している。
一方、ダンパーの構成材料としてゴム材料に換えてプラスチックを用いることが可能なことは引用刊行物2に記載されている。
そして、「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を型成形により一体に熱融着させる」ことは上記引用刊行物3乃至5に記載のように周知のことである。

以上の点を考慮すれば、引用刊行物1に記載の発明の硬い筒状の容器部とその端部を塞ぐ柔らかい蓋部の組合せについて、ダンパー構成部材に少なくともプラスチックを用いる引用刊行物2に記載の発明思想の基に、硬いプラスチック構成材料として熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックを、軟質のプラスチック構成材料として熱可塑性弾性プラスチックの周知(引用刊行物3乃至5記載参照)の組合せを用いると共に、両者の接合手段として同じく周知の前記熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックに射出成形により軟質の熱可塑性弾性体を一体に熱融着する接合構成を用いることが、考え得る。しかしながら、下記[ロ.相違点3について]で検討することにより、困難性があることが明かとなった。
ロ.相違点3について
引用刊行物1に記載の発明は、従来のダンパーが「袋体61内に流体65を注入する必要があり、この袋体61内に支持軸66部が突出しているので、流体65を注入する際、支持軸66部が邪魔になり、」(5頁17行〜20行)との欠点および「このダンパー70は、容器部71の底部71aを薄肉に形成し、周囲部71bを厚肉に形成したものであり。且つ、これ等は同一材で一体に形成されている。・・・したがって、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られないという問題を有していた。」(6頁10行〜18行)との欠点を克服するためになされたものであり、支持軸76を支持するダンパーの容器として適するように硬質材料からなる容器部22と、ダンパーの支持軸挿入部として適するように軟質の材料を用いると共に、粘性流体の注入作業が容易となるように、従来のダンパー(第5図参照)では容器の底部にあった一体成形の支持軸挿入部を蓋部に移動させたものであると認められる。そのために、唯一の密封部である容器部22の開口端22cと蓋部23の端部23b(蓋部の外周部)を後から密封するために、該部分を接着する構成にしたものと認められる。
したがって、あえて支持軸挿入部(従来例の支持軸支持部)を底部から蓋部に移動させたものを、再び底部に移動させる点、および底部と筒状部を別材料で形成されるにもかかわらず一体に形成する点は、引用刊行物1の発明においては相容れない技術事項と認められる。
そして、この2つの技術事項は、前記相違点1,2の検討において記した引用刊行物1に記載の発明に、引用刊行物2に記載のプラスチックをダンパー材料として適用するとの思想および引用刊行物3乃至5に記載の硬軟のプラスチックの組合せ及びこれらの固着構成を適用することを困難にしていることは明かである。
7.-(4)請求人の主張
なお、この無効理由に関して行われた口頭審理における請求人の陳述内容を検討しても、上記相違点の検討における判断を覆す理由を見出せない。
特に、請求人は、「熱融着は、熱可塑性合成樹脂相互間の接合を行う基本的接合技術であるから、接着剤で接合するか、熱融着で接合するかは今更証拠を提示する必要のない設計事項である」と主張している(平成13年7月11日付上申書第4〜5頁)が、上記したように引用刊行物1に記載の発明において、接着材で蓋をしていた部分を設計事項であるとして、熱融着に換えて本件発明1を得ることができないことは明かであるから、その主張は採用できない。
7.-(5)むすび
したがって、本件発明1は、当審において通知した引用刊行物1乃至5に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることができない。

8.むすび
以上のとおりであるから、当審における特許無効理由通知に記載の理由並びに、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明(本件発明1)の特許を無効とすることはできない。
又、他に本件発明1に係る特許を無効とする理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録再生装置の防振装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。
【請求項2】請求項1において、
前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項3】請求項1において、
前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、
前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、記録再生装置の防振装置に関する。更に詳しくは、CD(コンパクトディスク)、フロッピーディスク等の記録媒体を再生するための再生装置の衝撃等により発生する振動を緩らげ、かつ減衰させるための防振装置に関する。
[従来技術]
CDはデジタル符号化されたオーディオ信号をピット(凹部)の列として記録した小径のディスクである。このディスクに記録された事項は、再生装置においてレーザ光により再生される。再生装置に振動が発生すると、レーザ光が所定のピットに照射されない。従って、このような振動は極力避けなければならない。
従来、再生装置の防振装置として次のようなものが知られている。
すなわち、防振装置は筐体を有している。この筐体内に再生装置が収容され、再生装置は筐体に弾性吊具を介して懸吊されている。筐体に再生装置を支持するとともに、振動を減衰するための減衰手段が設けられている。
この減衰手段は、第6図に示すようなものである。減衰手段71はブラケット72を有し、その上端に設けたねじ孔73に装着されるねじを介して筐体に取付けられる。ブラケット72には、シリコンなどの粘性を有する減衰材12を収容するための中空の筒状部74が形成されている。この筒状部74の両端は、軟質のゴム材料からなる筒状の密封部材75と、密閉板76とによって密封されている。
密封部材75は一端に密封部77を有し、その中央部に再生装置に設けられた突起を受け入れるための凹部78が設けられている。密封部材75の周囲に、その軸線方向に間隔を置いて2つのフランジ79、80が設けられている。
上記減衰手段71は次のように組立てられる。ブラケット72の筒状部74内に、フランジ80側の端部をすぼめた密封部材75を挿通させる。そして、両フランジ79、80を筒状部74の両端面に係合させ、このようにして密封部材75をブラケット72に取付ける。
次に筒状部74内すなわち密封部材75内に減衰材12を注入して、キャップ76をフランジ80に固着する。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、上記減衰手段71にあっては、ブラケット72と密封部材75はそれぞれ個別に成形される。このため、ブラケット72に密封部材75を前記のようにして取付けなければならない。したがって従来のものは組立てのための工数が多く、しかも取付け作業が面倒であるという問題点があった。
この発明は、上述のような技術的背景のもとになされたものである。
この発明の目的は、減衰手段の組立て工数が少なく、製作が簡単な防振装置を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
この発明は、上記目的を達成するために次のような手段を採る。
すなわちこの発明は、内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、
前記減衰手段は、
a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、
b.この筒状部内に収容された減衰材と、
c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、
d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置にある。
前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されている。
前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる。
前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されている。
[作 用]
前記第1密封部材は、型成形により一体に筒状部に熱融着される。このため、従来のような密封部材を筒状部に取付けるための作業が省略される。
[実施例]
この発明の実施例を図面にしたがって説明する。第1図はこの発明による防振装置の全体を示す正面図である。
防振装置は再生装置1を収容するための筐体2を有している。筐体2は上板3と、その周縁に垂下して設けられた互いに対向する1対の側板4とからなっている。再生装置3は上板3の内面にコイルスプリングからなる複数の弾性吊具5を介して懸吊されている。
側板4の下端に減衰手段6が複数(実施例では各側板4に対して2つ)設けられている。減衰手段6は再生装置1の側部に設けた突起7を介して、再生装置1を支持するとともに、再生装置1からの振動が伝達される。
第2図は減衰手段6の詳細を示す断面図である。減衰手段6はブラケット8を有している。ブラケット8は射出成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなっている。ブラケット8はねじ9を介して側板4に取付けられ(第1図)、ねじ9のための取付孔10がブラケットの端部に形成されている。ブラケット10には中空の筒状部11が形成され、その内部に減衰材12が封入されている。減衰材としては例えば、10000〜50000センチポアズ程度の粘性を有するシリコンが使用される。
筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。第1密封部材14は、その中央部に再生装置1の突起7を受け入れるために凹部15が設けられている。
凹部15は射出成形時には、第2図に鎖線で示すように、凹部15の内周面が外部に露出した状態で成形される。そして成形後実線で示す状態にされる。
筒状部11の他端部は第2密封鎖部材16によって密封されている。この第2密封部材16はブラケット11と同一材料で射出成形により成形される。第2密封部材16は筒状の取付部17を有し、この取付部17の外周面に環状突起18が形成されている。環状突起18に対応して、筒状部11の他端部内周面に環状溝19が設けられている。
第2密封部材16の取付部17が筒状部11に圧入され、かつ環状突起18が環状溝19に係合することにより、第2密封部材16は筒状部11に固着される。
第2密封部材16は、その中央部に減衰材12の注入口20が設けられている。この注入口20は、筒状部11内に減衰材12を注入した後、実線で示すように熱融着により閉じられる。
上記防振装置によれば、再生装置1に衝撃が加わると弾性吊具5が振動することにより衝撃を緩和する。そして再生装置1の振動は突起7を介して減衰手段6に伝達され、減衰材12の粘性抵抗により減衰される。
製造法
上記防振装置は次のようにして製造される。
筐体2は通常エンジニアリングプラスチックを射出成形して作られるが、金属等の薄板を曲げ加工してもよい。ブラケット6は筒状部11を含めて、周知の射出成形法により一体成形される。ブラケットの材質は、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、PBT、ナイロン6、11、12など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであればどんな合成樹脂でも良い。
ブラケットの射出成形後、このブラケットを次の射出成形金型に入れる。ここで使う金型は、射出成形でよく用いられる周知の金型構造を用いる図示せず)。金型内のキャビティ部は、環状段部13などであり、成形前はこれらの部分は空間である。この状態で、スプルーから加熱溶融した熱可塑性の弾性体を流入させる。この熱可塑性の弾性体は、例えば、ナイロンエラストマ、ポリウレタン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリエステルエラストマなどから選択する。
流入された樹脂は、スプルー、ランナを通ってゲートを通りキャビティ部を満たす。キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は、それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして、両者は混合または凝着して熱融着面を作る。このようにして第1密封部材14が熱融着されたブラケットを金型から取出し、他の必要な処理を行なう。
この後、第2密封部材16を筒状部11に取り付ける。さらに、第1密封部材14の凹部15をその内外面が反転するように筒状部11内に押し込む。そして注入口20から減衰材を注入し、注入後この注入口20を熱融着して閉鎖する。
なお、この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材14を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。また、凹部15が最初から筒状部11内に位置する形状に、成形してもよい。
[その他の熱可塑性弾性体]
ブラケットに高い耐熱性および機械的強度が要求される場合は、ポリカーボネート、ナイロンなどの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックを使用する。しかし、従来用いられている熱可塑性エラストマーをこれらのエンジニアリングプラスチックに接合するには、比較的硬い熱可塑性弾性体(エラストマ)に限られている。この場合には、本出願人が特願昭62-300036号(特開昭1-139240号公報)および特願平1-235620号において提案した方法にしたがい、熱可塑性弾性体組成物を選択すればよい。
[第2実施例]
第3図は、防振装置の第2実施例を示す正面図である。前記第1実施例では減衰手段6が側板4に垂下して設けられている。この第2実施例では、側板4の下端に横向きの張出部34が形成されている。減衰手段36は、この張出部34に凹部15の開口端が上方を向くように取付けられている。また再生装置1の底部に突起47が設けられ、この突起47が凹部15に受け入れられている。その他の構成は第1実施例と同様である。
[第3実施例]
第4図はこの発明の第3実施例を示す正面図である。前記第1実施例では弾性吊具5がコイルスプリングからなっている。この実施例では、弾性吊具55はスリ割り56を有する2つの係止部57と、両係止部57、57を連結する弾性材料からなる連結部58とからなっている。両係止部57、57は、筐体2の上板3および再生装置1の本体1aにそれぞれ設けた取付孔に係合し、これにより再生装置1が筐体2に懸吊されている。その他の構成は第1実施例と同様である。
[第4実施例]
第5図はこの発明の第4実施例の一部を示す正面図である。第1ないし第3実施例では、減衰手段がブラケットを有している。この実施例では、減衰手段はブラケットを有することなく、筐体2の側板64に筒状部11が一体的に形成されている。この実施例では、筒状部11を含む筐体2全体が、前述した各種材料から選択される熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、射出成形により成形される。筐体2の成形後、熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が、射出成形により成形されると同時に筒状部11に熱融着される。
[発明の効果]
以上のようにこの発明によれば、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着される。したがって、この密封部材の組付作業が自動化できるので、工数が少くて済み、製造コストを安価なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の第1実施例を示す一部破断した正面図、第2図は減衰手段の詳細を示す断面図、第3、4図はそれぞれ第2、第3実施例を示す第1図と同様な図面、第5図は第4実施例の要部のみを示す一部破断した正面図、第6図は従来例を示す断面図である。
1……再生装置、2……筐体
5……弾性支持具、6……減衰手段
7……突起、8……ブラケット
11……筒状部、12……減衰材
14……第1密封部材、15……凹部
16……第2密封部材、20……注入口
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2001-09-17 
結審通知日 2001-09-21 
審決日 2001-10-02 
出願番号 特願平2-281847
審決分類 P 1 122・ 534- YA (G11B)
P 1 122・ 161- YA (G11B)
P 1 122・ 121- YA (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相馬 多美子杉山 務  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 内藤 二郎
麻野 耕一
登録日 1998-10-09 
登録番号 特許第2138602号(P2138602)
発明の名称 記録再生装置の防振装置  
代理人 野上 邦五郎  
代理人 富崎 元成  
代理人 富崎 元成  
代理人 冨永 博之  
代理人 野上 邦五郎  
代理人 冨永 博之  
代理人 円城寺 貞夫  
代理人 樋口 武尚  
代理人 杉本 進介  
代理人 杉本 進介  
代理人 円城寺 貞夫  
代理人 萬田 正行  

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