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審決分類 |
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない G11B 審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効としない G11B 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない G11B 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない G11B |
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管理番号 | 1073924 |
審判番号 | 審判1999-35576 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-05-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-10-20 |
確定日 | 2002-11-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2138602号発明「記録再生装置の防振装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)本件特許第2138602号に係る発明についての出願は、平成2年10月22日に出願され、平成7年12月25日に特公平7-122983号として出願公告がなされ、平成8年3月22日及び平成8年3月25日に特許異議の申し立てがなされ、平成10年10月9日にその発明について特許の設定登録がなされた。 (2) その特許に対し、平成11年10月20日に請求人北辰工業株式会社、(以下「請求人」という。)から、および平成12年5月16日に請求人東海ゴム工業株式会社からそれぞれ無効審判の請求がなされ、被請求人から答弁書が提出され、さらに、両請求人から上申書が提出された。 (3) その後、両審判事件は平成12年12月12日に併合され、平成12年12月13日付けで当審から無効理由の通知がなされ、被請求人から所定期間内である平成13年2月26日に意見書と共に訂正請求書が提出され、訂正を求めた。 (4)請求により、平成13年5月11日に口頭審理が行われ、それぞれ提出された陳述要領書を含めて陳述すると共に、該口頭審理に関して平成13年6月11日に被請求人から、平成13年7月11日に請求人から上申書が提出された。 (5)平成13年9月5日付けで両審判事件を分離した。 2.訂正の可否に対する判断 2.-(1)訂正内容 被請求人の求めた訂正の内容は、以下のとおりである。 a.特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。 請求項1記載中の要件c.「・・・端部に型成形により・・・」を「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。 b.発明の詳細な説明の[課題を解決するための手段]を以下のように訂正する。 「c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と」と訂正する。 2.-(2)訂正の目的の適否・新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項a.について この訂正事項は、請求項1に係る「第1密封部材」の位置と成形手段を限定したものと認められる。 すなわち、訂正前は、「第1密封部材」の位置は「前記筐体内方側の端部」とされていたので、少なくとも「端部」と解釈できるが、この訂正により「端部」だけに限定される。また、「成形」も「型」により行っていたものをより具体的に「射出」により行うものに限定したものであるから、これらの訂正はいずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものと言える。 また、これらの訂正については、特許公報の第5欄4〜7行に「筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成される。この環状段部13には、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1の密封部材が射出成形により一体に熱融着されている。」と記載されており、更に、第6欄9行〜11行には、「この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形・・・」と記載されている。よって上記訂正は、願書に最初に添付した特許明細書の範囲内においてしたものと認められる。 そして、上記訂正は、特許明細書の範囲内において、明確に限定されたものであるから実質上特許請求の範囲の請求項1を拡張し、又は変更するものでもない。また、請求項1を引用している請求項2乃至4も同様である。 訂正事項b.について この訂正は、訂正事項a.の訂正すなわち、特許請求の範囲の訂正に対応して発明の詳細な説明の記載の整合を取るためにおこなったものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものと言え、かつ、この訂正により実質上特許請求の範囲1乃至4を拡張し、又は変更するものでもない。 なお、請求人は、「型成形」を「射出成形」に訂正することは組立順序の要件を追加することになり要旨変更であると主張している(平成13年7月11日付け上申書第14頁)が、上記のように適法に訂正したものと認められるために、その主張は採用できない。 2.-(3)独立特許要件の判断 次に、上記の様に訂正した請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)が、当審で通知した無効理由に掲げた下記の引用刊行物に記載された発明から容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。 2.-(3)-a.訂正発明 本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明(以下、「訂正発明1乃至4」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものと認める。記載 上記訂正事項a.により訂正された特許請求の範囲は、以下のとおりである。 「【請求項1】 A.内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、 B.前記減衰手段は、 a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、 b.この筒状部内に収容された減衰材と、 c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、 d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。 【請求項2】請求項1において、前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。 【請求項3】請求項1において、前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。 【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。」 (なお、請求項1の「A」,「B」は便宜上付与した符号である。) 2.-(3)-b.当審における無効理由について 上記訂正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明に対して、当審で通知した無効理由が該当するか否か検討する。 2.-(3)-b.-イ.引用刊行物 当審で通知した引用刊行物1乃至5は、以下のとおりである。 引用刊行物1:実願昭63-151566号(実開平2-72834号)のマイクロフィルム (平成2年6月4日公開) 引用刊行物1には、以下の記載事項がある。 (1)「本考案は、車載用のコンパクトディスクプレーヤのドライブユニット等の精密機器を支持する際に使用される防振支持装置に関する。」(2頁6行〜同8行) (2)「第3図はコンパクトディスクプレーヤの主要部を示す図である。図中1はシャーシ等の支持部材である。この支持部材1はコンパクトディスクプレーヤを取り付けるためのフレームである。この支持部材1に、メカシャーシ等の被支持部材2が弾性支持用附勢手段であるコイルスプリング6とダンパー60によって支持されている。被支持部材2上にはコンパクトディスクDを支持して回転させるターンテーブル4aと、このターンテーブル4aを回転駆動させるモータ機構4と、光学ピックアップ5及び図示していない電子回路ユニットや表示機構ならびに外部接続コネクタ機構などが搭載されている。」(2頁10行〜3頁3行) (3)「容器部12はブチルゴム等のゴム材料にて厚肉に形成された円筒状の胴部12aの一端に底12bが設けられて容器状に一体に成形されている。・・・(中略)・・・この蓋部13はブチルゴムとのゴム材にて容器部12より柔らかく弾性体に成形される。」(10頁8行〜11頁5行) (4)「ダンパー20の容器部22は筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔laに嵌入させる溝22dが設けられている。胴部22aの一端には底部22bを有し、容器部22は一体成形されている。さらに、蓋部23は胴部22aの開ロ端を覆うとともに、容易に弾性変形するように容器部22より軟質に成形されている。蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着できるように端部23bを有し、蓋部23は一体成形されている。」(12頁16行〜13頁10行) これらの記載事項及び第2,3図によれば、引用刊行物1には「内部に空間を有する支持部材1と、該支持部材1内にコンパクトディスクプレーヤを配置し、 支持部材とコンパクトディスクプレーヤ間にコイルスプリング6とダンパー20を設けるとともに、ダンパーはその容器部を支持部材に取付け、内方に向いた支持軸66をコンパクトディスク側に取付けてなる防振装置において、 上記ダンパー20は、ゴム材料で形成されたダンパーの容器部22が筒状の胴部22aの一端に開口端22cを有し、その開口端22cの近辺の外周には支持部材の取付孔1aを嵌入させる溝22dが設けられ、前記胴部22aの他端には底部22bを有し、容器部22は一体に成形され、蓋部23は前記胴部22aの前記開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の前記開口端22cに対して接着する端部23bを有し、前記蓋部23は一体成形され、容器部内に粘性流体を封入して構成されている防振装置。」の発明(以下、「引用刊行物1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 引用刊行物2:特開昭61-189336号公報(昭和61年8月23日公開) 引用刊行物2には、「ビデオテープレコーダ及びコンパクトディスクプレーヤ等の磁気記録再生装置を含む電子機器に好適する防振装置」に関し(1頁左欄13行〜15行)、第2図等には粘性流体28を封入したダンパー29が開示されており、「ダンパー29として、ゴムを用いた場合で説明したが、これに限ることなく、例えば弾性プラスチック等の弾性材料でなる弾性体を用いて構成してもよい」点が記載されている(3頁右上欄4行〜8行)。 引用刊行物3:特開平1-139240号公報(平成1年5月31日公開) 引用刊行物3には、「(産業上の利用分野) 本発明は、硬質部位と軟質部位を有する複合成形体の新規な製造方法に関する。更に詳しくは、ポリカーボネートなどの硬質で諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックで構成された部位と、軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を熱融着手段により効率よく製造する方法に関するものである。」(2頁左上欄1行〜同8行)、「(従来の技術)優れた機械的強度を持つエンジニアリングプラスチックスは、・・・・(中略)、一方熱可塑性弾性体・・・(中略)近年、合成樹脂(プラスチック)性部品や部材の性能の高度化、機能の高度化の要求が厳しく、その中で前記したエンジニアプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し両者に共通した成形手段である射出技術により、両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁左上欄9行〜右上欄16行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄17行〜左下欄1行参照)、「合成樹脂成形体の存在下に該合成樹脂成形体より硬度の低い成形体を与える熱可塑性弾性体組成物を熱融着により接合させる」点(特許請求の範囲の請求項1参照)及び、「熱融着により接合させる技術手段は、いずれでも採用可能である。例えば、(中略)生産の観点から射出成形法が望ましい。」(4頁右上欄11〜16行参照)と記載されている。 これらの記載によれば、引用刊行物3には「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を射出成形により一体に熱融着させる」発明が記載されているものと認められる。 引用刊行物4:特開平2-107415号公報(平成2年4月19日公開) 引用刊行物4には、「一方・・・(中略)エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者に共通した成形手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが量産性という点から最も効果的である。」(2頁左下欄4行〜右下欄10行)、「一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体との熱融着生が悪く、両者を強固に接合することができない。」(2頁左下欄11行〜同15行)及び、「自動車用ランプのランプボディをエンジニアリングプラスチックで成形する成形工程と、前記ランプボディを射出成形金型に入れる挿入工程と、前記ランプボディと前記射出成形金型との間に形成される空間部に熱可塑性エラストマーを注入する注入工程と、前記ランプボディと前記熱可塑性エラストマーを熱融着させる熱融着工程」(特許請求の範囲の請求項1)と記載されている。 これらの記載を総合すると、引用刊行物4には引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。 引用刊行物5: 特開平1-139241号公報(平成1年5月31日公開) 引用刊行物5には、「(産業状の利用分野) 本発明は、機械的強度に優れたエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂で構成される成形体部位と、弾性に富んだ熱可塑性弾性体で構成される成形体部位とを有する複合成形体の製造に有用な、熱融着特性に優れた熱可塑性弾性体組成物に関する。」(1頁右欄13行〜18行)、 「エンジニアリングプラスチックと熱可塑性弾性体との複合化を試みる動きがある。そして、その複合化に際し、両者を共通した形成手段である射出成形技術により両者を相互に熱融着させて複合化することが最も効果的である。」(2頁右上欄2行〜6行)、「しかしながら、一般に熱可塑性のエンジニアリングプラスチックと熱可塑性樹脂とは、熱融着性が必ずしも良くない。とりわけ、ゴム弾性に優れた熱可塑性弾性体(TPE)との熱融着性が悪く、両者を強固に接合させることができない。」(2頁右上欄7行〜11行)と記載されている。 これらの記載を総合すると、引用刊行物5には、引用刊行物3と同様の発明が記載されているものと認められる。 2.-(3)-b.- ロ.対比 訂正発明1と上記引用刊行物1に記載の発明を対比すると、引用刊行物1に記載の発明の「支持部材1」、「コイルスプリング」、「ダンパー」、「容器部22の筒状の胴部22a」、「粘性流体」及び「支持軸挿入部23a」は、訂正発明1の「筐体」、「弾性支持具」、「減衰手段」、「中空の筒状部」、「減衰材」及び「記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部」にそれぞれ相当し、さらに引用刊行物1に記載の発明の「蓋部23は胴部22aの開口端22cを覆うとともに、容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形され、蓋部23の中央部に支持軸挿入部23aを有し、この支持軸挿入部23aの周囲に連結して断面がV字状に内側に折り曲げられた環状の薄肉部23cを有し、さらにこの薄肉部23cの外周に上記容器部22の開口端22cに対して接着する端部23bを有し」における蓋部は容器22を密封する部材であることは明らかであり、またその部材である「軟質のゴム材料」が軟質の弾性体であることも自明のことであるので、 両者は「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、前記減衰手段は、前記筐体にその内方を向くように設けられた、複数の中空の筒状部と、 この筒状部内に収容された減衰材と、 前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに固着され軟質の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた密封部材と、 を有する記録再生装置の防振装置。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 訂正発明1が、筐体の内方に向くように設けられた複数の中空の筒状部を「熱可塑性のエンジニアリングプラスチック」で構成するとともに、該筐体内方側端部に「軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を設けているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部22は「ゴム材料」で形成するとともに、該容器部の内方側端部である開口部22cに設けるものは,「容易に変形するように容器部22の材料より軟質のゴム材料で成形された蓋部23」である点。 相違点2 訂正発明1の筐体内方側端部に設けられる第1密封部材が、「射出成形により一体に熱融着」されるのに対し、引用刊行物1に記載の発明では、筒状の容器部の内方側端部である開口端22cに蓋部23を接着して設けている点。 相違点3 訂正発明1が、第1密封部材が設けられている筒状部の他端部に第2密封部材を備えているのに対し、引用刊行物1に記載の発明では容器部の蓋が設けられている側の反対側には、底部22bが胴部22aと一体に設けられている点。 2.-(3)-b.-ハ .相違点の検討 [イ]相違点1,2について 引用刊行物1に記載の発明は、ダンパーを構成する筒状の容器部に対して、その端部に接着される蓋部は、前記容器部のゴム材料に比して軟質のゴム材料を用い、且つ両者を接着することにより接合している。 一方、ダンパーの構成材料としてゴム材料に換えてプラスチックを用いることが可能なことは引用刊行物2に記載されている。 そして、「熱可塑性のエンジニアリングプラスチックスからなる部材に、軟質の熱可塑性弾性体を型成形により一体に熱融着させる」ことは上記引用刊行物3乃至5に記載のように周知のことである。 以上の点を考慮すれば、引用刊行物1に記載の発明の硬い筒状の容器部とその端部を塞ぐ柔らかい蓋部の組合せについて、ダンパー構成部材に少なくともプラスチックを用いる引用刊行物2に記載の発明思想の基に、硬いプラスチック構成材料として熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックを、軟質のプラスチック構成材料として熱可塑性弾性プラスチックの周知(引用刊行物3乃至5記載参照)の組合せを用いると共に、両者の接合手段として同じく周知の前記熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックに射出成形により軟質の熱可塑性弾性体を一体に熱融着する接合構成を用いることが、考え得る。しかしながら、下記[ロ.相違点3について]で検討することにより、困難性があることが明かとなった。 [ロ]相違点3について 引用刊行物1に記載の発明は、従来のダンパーが「袋体61内に流体65を注入する必要があり、この袋体61内に支持軸66部が突出しているので、流体65を注入する際、支持軸66部が邪魔になり、」(5頁17行〜20行)との欠点および「このダンパー70は、容器部71の底部71aを薄肉に形成し、周囲部71bを厚肉に形成したものであり。且つ、これ等は同一材で一体に形成されている。・・・従って、周囲部71bを厚肉に形成しても、十分な振動減衰効果が得られないという問題を有していた。」(6頁10行〜18行)との欠点を克服するためになされたものであり、支持軸76を支持するダンパーの容器として適するように硬質材料からなる容器部22と、ダンパーの支持軸挿入部として適するように軟質の材料を用いると共に、粘性流体の注入作業が容易となるように、従来のダンパー(第5図参照)では容器の底部にあった一体成形の支持軸挿入部を蓋部に移動させたものであると認められる。そのために、唯一の密封部である容器部22の開口端22cと蓋部23の端部23b(蓋部の外周部)を後から密封するために、該部分を接着する構成にしたものと認められる。 したがって、あえて支持軸挿入部(従来例の支持軸支持部)を底部から蓋部に移動させたものを、再び底部に移動させる点、および底部と筒状部を別材料で形成されるにもかかわらず一体に形成する点は、引用刊行物1の発明においては相容れない技術事項と認められる。 そして、この2つの技術事項は、前記相違点1,2の検討において記した引用刊行物1に記載の発明に、引用刊行物2に記載のプラスチックをダンパー材料として適用するとの思想および引用刊行物3乃至5に記載の硬軟のプラスチックの組合せ及びこれらの固着構成を適用することを困難にしていることは明かである。 2.-(3)-b.-ニ.請求人の主張 なお、この無効理由に関して行われた口頭審理における請求人の陳述内容を検討しても、上記相違点の検討における判断を覆す理由を見出せない。 特に、請求人は、平成13年7月11日付け上申書第7頁において、「引用刊行物1は素材としてブチルゴム等が記載されているものであるから、接着のみが記載されているにすぎない。・・・したがって、引用刊行物1には、接着技術が開示されているのみであるから、これに換えて射出成形により熱融着する技術は適用できないという主張は根拠がないものである。・・・」と主張している。 しかしながら、引用刊行物1には、減衰材を注入した後、蓋を接着剤により封入するものが記載されているのみであって、「蓋部を接着剤によらず固着した後、減衰材を注入しうる」点が記載されていない以上、引用刊行物1の記載から請求人の主張するような「可能である」との思想を採用することはできない。 2.-(3)-b.-ホ.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、引用刊行物1乃至5に記載された発明から容易に発明をすることができたものであると言えず、また請求項1を引用し減縮されている訂正明細書の請求項2乃至4に係る発明(訂正発明2乃至)も、容易に発明をすることができたものであると言えないから、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明である。 2.-(3)-c.独立特許要件に関する他の理由について 上記無効理由の他に無効審判の請求人の掲げた無効理由が存在するので、この点について検討する。 請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっても、訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明が、特許法第29条の2及び同法第29条2項に該当せず、かつ、同法第36条の規定を満たしていることは、下記6.に記載したとおりであり、また、この他に本件訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明が、本件出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も発見しない。 2.-(4)むすび 以上のとおりであるから、平成13年2月26日付けの訂正請求は、特許法第134条第2項及び同条第5項で準用する同法第126条第2項乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 訂正が認められた結果、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件発明1乃至4」という。)は、平成13年2月26日付け訂正請求書により訂正された特許明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりであって、その記載は、「2.-(3)-a.」の項に記載されたとおりのものと認める。 4.請求の趣旨 請求人は、本件特許第2138602号の請求項1乃至4に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の無効審判を請求し、証拠方法として後記(「5.-(1)」参照)の書証を提示し、以下の理由により無効にされるべきであると主張している。 (1)無効理由1 本件特許の請求項1乃至4に係る特許発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とそれぞれ同一であるので、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、請求項1乃至4に係る特許発明は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 (2)無効理由2 請求項1乃至4に係る特許発明は、甲第3号証乃至甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、請求項1〜4に係る特許発明は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 (3)無効理由3 請求項1〜4には本件特許発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないので、請求項1〜4に係る特許発明は、特許法第36条第4項第2号に違反し、特許法第123条第1項第3号の規定により、無効とすべきである。 5.証拠方法及び参考資料 5-(1)請求人の提示した証拠方法及び参考資料 甲第1号証:特開平3-223539号公報(特願平2-142337号、平成2年5月31日出願、平成3年10月2日公開) 甲第2号証:特開平4-34239号(特願平2-142339号、平成2年5月31日出願、平成4年2月5日公開) 甲第3号証:実願昭63-151566号(実開平2-72834号)の願書に添付した明細書及び図面のマイクロフィルム(平成2年6月4日公開) 甲第4号証:特開昭61-189336号公報(昭和61年8月23日公開) 甲第5号証:日本プラスチック工業連盟誌、「プラスチックス」、第40巻、第1号、1989年1月1日発行、第151頁〜第156頁 甲第6号証:実願昭59-153438号の願書に添付した明細書及び図面のマイクロフィルム(実開昭61-68393号、昭和61年5月10日公開) 甲第7号証:特開平1-139240号公報(平成1年5月31日公開) 甲第8号証:特開昭61-213145号公報(昭和61年9月22日公開) 甲第9号証:実開平3-91548号(実願平1-151198号の全文明細書、平成1年12月29日出願) 甲第10号証:平成11年(ワ)第20,766号事件 平成11年12月3日付け原告準備書面(二)第3乃至5頁 参考資料1:「プラスチック用語辞典」、(株)プラスチックス・エージ、1989年9月10日発行、第469頁 参考資料2:「プラスチック大辞典」、株式会社工業調査会、1994年10月20日初版発行、第844頁 参考資料3:「プラスチック材料読本」、株式会社工業調査会、1987年5月15日新版発行、第5頁〜第11頁 参考資料4:「エンジニアリングプラスチック」、産業図書株式会社、昭和58年10月31日発行、第1頁〜第7頁 5.-(2)被請求人の提出した証拠方法 乙第1号証:桜内雄二郎著、新版「プラスチック材料読本」、株式会社工業調査会発行、1987年5月15日発行の第10頁〜12頁等 乙第2号証:大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、改訂第8版「プラスチック読本」の第227頁〜同第237頁等 乙第3号証:桜内雄二郎著、新版「プラスチック技術読本」、株式会社工業調査会発行、1982年8月25日第195頁〜第197頁等 なお、被請求人は当事者尋問を申請したが、尋問事項が「本件発明」の実用化の困難性に関するものであるため前記尋問は行わないこととなった。そのため、提出された検証物乙1,乙2号証および乙5号証の1ないし60、乙6号証については検討しない。 6.当審の判断 6.-(1)証拠に記載の発明 請求人の提出した証拠には、以下の発明が記載されているものと認める。 (i)甲第1号証(特開平3-223539号公報) 甲第1号証には、粘性流体封入ダンパーについての発明が記載されており、車両等にCDプレーヤーを搭載する場合、車両の振動がそのままCDプレーヤーに伝達されるのを防止するために用いられるものである点が記載されている(第1頁右欄3行〜8行)。 このような粘性流体封入ダンパーを用いた車両に用いるCDプレーヤーの支持構造の一例が、第2図に記載されており、「第2図は、・・・この支持フレーム10によりメカデッキ12がスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持されている。」と記載されている(第2頁左下欄下から2行〜右下欄3行)。 また、粘性流体封入ダンパーの一例が第5図に記載されている。そして、「この例のダンパー53は、容器本体54が軟質樹脂(又はゴム)製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、それらが一体に固着されている(樹脂製の第一部材と第二部材とは2色成形により同時成形することが可能である)。第一部材には、支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の周壁部の一部(外周壁部62)が形成され、また第二部材には、周壁部の一部(外周壁部64)と厚肉のフランジ66とが形成されている。この硬質樹脂製の第二部材には、図中上面側に嵌合凹所68が形成され、そこに同じく硬質樹脂製の蓋体70が嵌め込まれた上、固着されるようになっている。尚、容器本体54と蓋体70との固着は、樹脂同士の溶着によって行うことができる。」と記載されている(第3頁左下欄2行〜17行)。 なお、2色成形が、型内に材料を圧力をかけて射出する成形方法であることは、参考資料1の記載から明かである。 これらの記載事項によれば、甲第1号証には「支持フレーム10上にCDプレーヤーの板状のメカデッキ12が、上下方向に可動なスプリング14と粘性流体封入ダンパー16とにより支持される防振装置において、前記粘性流体封入ダンパーの筒状をなす容器本体は軟質樹脂製の第一部材と硬質樹脂製の第二部材とで構成され、 第一部材には略中央部に支持部材又は被支持部材から延び出す軸体を嵌入させるための穴部56を備えた攪拌軸部58と、容器本体の内周壁部62と、前記中央部の攪拌軸部58と、前記内周壁部62を連結する可撓部60が形成され、また第二部材には、容器本体の外周壁部64と厚肉のフランジ66とが形成され、前記第一部材と第二部材は、前記内周壁部62の外周面と前記外周壁部64の内周部全面において接する関係で射出成形され、一体に固着され、第二部材の前記穴部とは反対側端部であるフランジ部には上面側に硬質樹脂製の蓋体70が固着された防振装置。」の発明(以下、「先願発明1」という。)が認められる。 (ii)甲第2号証(特開平4-34239号公報) 甲第2号証には、粘性流体封入ダンパーについての発明が記載されており、車両等のCDプレーヤーを搭載する場合に車両の振動がそのままCDプレーヤーに伝達されるのを防止するために用いられるものである点が記載されている(第2頁左上欄3行〜8行参照)。 また、粘性流体封入ダンパーとしては、例えば、第1図に示された構造が記載され、「第二体の可撓部と周囲の固着部とをそれぞれ別々の材料、即ち可撓部を軟質材料により、また、固着部を硬質樹脂材により形成した場合においても、かかる第二体を容易に製造することができる。具体的には、金型内に固着部となる硬質樹脂材片をセットしておいて、可撓部をゴム材、軟質樹脂材等の注型にて形成することにより、両者を簡単に一体化することができる。」(第3頁左上欄3行〜10行)と、「このダンパー10は、第一体14と第二体16との分割形態を成し、それらが互いに固着されて容器体、つまりダンパー10が構成されている。尚、この例では第一体14が蓋体として、また第二体16が容器本体として構成されている。第二体16は、またゴム製の第一部材18と、硬質樹脂(熱可塑性樹脂)製の第二部材20とから成っている。」(3頁左上欄18行〜右上欄5行)、更に「第一部材18は、この可撓部26に連続する部分が厚肉部28とされており、この厚肉部28より円筒状部30が延び出している。そしてその円筒状部30を取り囲むようにして、同じく円筒形状に形成された前記第二部材20がこの円筒形状部30に嵌合され、固着される。」(第3頁右上欄17行〜同頁左下欄2行)と記載されている。 なお、金型内に樹脂を注型あるいは、注入(公報3頁右下欄11行参照)する際、圧力を加えて射出することは当然行うことと認められる。 したがって、これらの記載事項によれば、 甲第2号証には、「蓋体をなす第一体14と容器本体をなす第二体16との分割形態をなし、それらが互いに固着されて容器体を成し、第二体16は軟質樹脂材の第一部材18と、熱可塑性硬質樹脂材の第二部材20とからなり、第一部材18はその中央部において容器内方へと突入する粘性流体の撹拌部22と備え、該撹拌部には行き止まり穴形態の穴部24が設けられ、該穴部24に支持部材または被支持部材から延び出す軸体が嵌入され、該撹拌部22の周囲に設けられた可撓部26の外周には円筒状部30が延び出しており、円筒状に形成された前記第二部材20を金型内に予めセットしておいて軟質樹脂材を金型内に射出成形することにより前期第一部材18を成形し、前記第二部材20内周全面で前期第一部材の円筒状部30を嵌合・固着により一体に成形する、車両等にCDプレーヤーを搭載するための粘性流体封入ダンパー。」の発明(以下、「先願発明2」という。)が記載されているものと認められる。 (iii)甲第3号証(実開平2-72834号公報:平成2年6月4日公開) 甲第3号証は独立特許要件の判断で掲げた引用刊行物1と同じであるので、該証拠に記載の発明については前記2.-(3)A.参照のこと。 (iv)甲第4号証(特開昭61-189336号公報) 甲第4号証は独立特許要件の判断で掲げた引用刊行物2と同じであるので、該証拠に記載の発明については前記2.-(3)A.参照のこと。 (v)甲第5号証(「プラスチックス」) 甲第5号証は、熱可塑性エラストマーについての総説であり、熱可塑性エラストマーとしての独自の用途展開として、「2色成形あるいはインサート成形等の成形技術を駆使し、熱可塑性エラストマーの成形性を加味し、いわゆる硬い材料の上に、熱融着のみで柔らかいエラストマーを成形、融着し、1つの部品を複合化でつくりあげたものである。」(第156頁26行〜30行)と記載されている。 (vi)甲第6号証(実開昭61-68393号公報) 甲第6号証は、「自動車、航空機等に搭載して使用するのに好適な耐振性が改善された光学ディスクプレーヤ」に関するものであり(第2頁5行〜7行)、「光学ピックアップやディスクテーブル等が設けられたメカデッキを、複数箇所に設けられた懸垂用コイルばねによりフレームに対して懸垂するとともに、上記メカデッキの振動を吸収するためのダンパーを上記フレームと上記メカデッキとの間に介装し、これによって、上記フレームに対して上記メカデッキをフローティング状態で支持するように構成した光学ディスクプレーヤ」に関する発明が開示されている(実用新案登録請求の範囲)。 そして、第2図には、「シャーシ1にメカデッキ2が4個の懸垂用コイルばね10によって懸垂されるとともに、シャーシ1の側板部7,7とメカデッキ2との間には、メカデッキ2の振動を吸収するための4個のダンパー11がそれぞれ懸垂用コイルばね10に隣接して介装され、これによって、シャーシ1に対してメカデッキ2がフローティング状態で支持されている。」構造が開示され(第7頁6行〜13行)、第6図に示されるダンパーについては、「ダンパー11は、シャーシ1の側板部7,7に取付けられている容器部11aと、メカデッキ2に固着されているロッド11bとから構成され、容器部11aはゴム等の弾性材料から成り、その内部には、粘性流体を封入するための収容空間40が形成されている。そして、収容空間40のほぼ中央には、この収容空間40中に突出している泳動部41が設けられている。」と記載されている(第8頁14行〜第9頁2行)。 (vii)甲第7号証(特開平1一139240号公報) 甲第7号証は独立特許要件の判断で掲げた引用刊行物3と同じであるので、該証拠に記載の発明については前記2.-(3)A.参照のこと。 (viii)甲第8号証(特開昭61-213145号公報) 甲第8号証は、「硬質プラスチック成形部材と軟質プラスチック成型部材とが一体的に融着している複合プラスチック成形品」に関するものであり(第1頁左欄下から6行〜下から4行)、「硬質プラスチックがポリプロピレン樹脂であり、軟質プラスチックが熱可塑性エラストマーであり、且つ上記両部材が一体的に融着している」発明を開示するものである(特許請求の範囲(1))。また、かかるプラスチック成形体の成形方法として、「従来公知の各種プラスチック成形方法がいずれも使用できる。・・・射出成形方法でまず硬質プラスチック成形部材を成形し、次いで熱可塑性エラストマーを注入して、成形と同時に両者を融着させるインサート方式の射出成形方法あるいは、従来公知の2色成形機を用いる方法等いずれの成形方法でもよい。」点が記載されている(第3頁右上欄6行〜19行)。 (ix) 甲第9号証:実開平3-91458号 硬質樹脂部材(例えばポリプロピレン)からなる外周壁部と、軟質樹脂(例えばサーモプラスチックラバー)で構成された内周壁部34と可撓部26及び攪拌軸部28とからなる容器状本体12(いわゆる器に相当)と、蓋体14とからなる構造。 (x)甲第10号証:(準備書面) 熱融着についての記載 6.-(2)請求人の無効理由についての検討 6.-(2)-a.無効理由1(29条の2)について イ.甲第1号証に記載の発明(先願発明1)との対比・判断 [イ]本件発明1について (対比) 本件発明1と先願発明1を対比すると、先願発明1の「支持フレーム」、「CDプレーヤー」、「スプリング」、「粘性流体」、「ダンパー」、「軸体を嵌入させるための穴部」は、本件発明1の「筐体」、「記録再生装置」、「弾性支持具」、「減衰材」、「減衰手段」、「突起を受け入れるための凹部」に相当するものと認められ、また、前記突起を受け入れるための凹部は、共に筒状部の端部を覆う弾性部材に設けられている点で共通し、また、先願発明1の「可塑性の硬質樹脂製の第二部材」と本件発明1の「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部」は硬質樹脂である点で共通し、さらに、先願発明1の「蓋体」と本件発明1の「第二密封部材」は、減衰手段をなす容器の「密封部材」として共通するから、 両者は「筐体の一部に設けられる弾性支持具と振動を減衰するための減衰手段で記録再生装置を支持する防振装置であって、 減衰手段は、前記筐体に設けられた複数の硬質樹脂からなる中空の筒状部と、この筒状部内に収容された減衰材と、 前記筒状部の端部を覆う弾性部材には記録再生装置を支持するための突起を受け入れるための凹部を設けると共に、 前記筒状部の他端部に設けられた密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。」で一致するが、以下の点で相違する。 相違点1 本件発明1が「内部に空間を区画する筐体」を備えているのに対し、先願発明1が「上部にメカデッキを支持するための支持フレーム」を備えている点。 相違点2 本件発明1が「筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」を備えているのに対し、先願発明1は中空の筒状部は支持フレームに上下方向に向いており、かつ、筒状部は硬質樹脂で形成されている点。 相違点3 記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられる弾性部材について、本件発明1が「筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材」を備えているのに対し、先願発明1は第一部材が容器本体をなす硬質樹脂製の第二部材の内周壁全面において、軟質樹脂で射出成形される内周壁部と、これに連結し、前記突起を受け入れるための凹部を弾性的に支持するための可撓部とからなっている点。 (相違点の検討) 上記相違点について検討する。 相違点1について 先願発明1の、上部にCDプレーヤーのメカデッキを支持するための支持フレームを備える構成は、支持フレームの内部にCDプレーヤーを収納するための空間を備えていないので、本件発明1の「内部に空間を区画する筐体」とは、明らかに構成が相違する。 しかしながら、甲第3号証の第3図および甲第6号証の1〜4図の記載及び他の無効審判請求人である東海ゴム工業株式会社の提示した甲第3、5乃至9号証も合わせて考慮すれば、「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」の構成は、この分野におけるダンパーの周知の使用形態にすぎず、先願発明においても、このように構成することは適宜実施しうる程度のことにすぎない。 なお、上記請求人東海ゴム工業株式会社の提示した上記証拠は以下のとおりである。 甲第3号証:実開昭60-163592号公報 甲第5号証:実開昭63-114492号公報 甲第6号証:実開昭63-164891号公報 甲第7号証:特開昭61-215822号公報 甲第8号証:実開平 2- 96056号公報及び実願平1-4970号のマイクロフィルム 甲第9号証:実開平2-114238号公報及び実願平1-23407号のマイクロフィルム 相違点2について 先願発明1における粘性流体封入ダンパーは、支持フレームに上下方向に向いており、かつ、上記相違点1のように、先願発明1における支持フレームは内部に空間を区画していないので、「筐体内方に向くように設けられた、・・・中空の筒状部」の構成とも異なる。しかしながら、本件発明1に係る上記構成は、上記したように周知の使用形態を採用する際、当然得られる構成にすぎない。 一方、先願発明1の容器本体は、熱可塑性の硬質樹脂であり、本件発明1の材料である熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックとも異なる。そして、甲第7号証に「ポリカーポネートなどの硬質で諸特性に優れたエンジニアリングプラスチックで構成された部位と、軟質の熱可塑性弾性体で構成された部位とを有する複合成形体を熱融着手段により効率よく製造する方法」および、甲第8号証に「硬質プラスチックがポリプロピレン樹脂であり、軟質プラスチックが熱可塑性エラストマーであり、且つ上記両部材が一体的に融着している」発明が開示されているとしても、それにより先願発明1における前記硬質樹脂が実質的に「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」を意味するとも、先願発明1において、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックが当然に用いられるべきものとも認められない。 相違点3について 本件発明1は、予め形成されている「筒状部」の端部のみに射出成形により軟質の熱可塑性弾性体を固着している。 これに対して、先願発明1は、「樹脂製の第一部材と第二部材を2色形成により、同時成形」している。その際、同時成形といっても、このような2つの筒状のものを全く同時に形成できず、一方を形成しておいてから他方を形成するであろうことは参考資料1の記載から明かであるので、予め形成した硬質樹脂の筒に接するように軟質樹脂を射出成形すれば両者の間には、程度の差はあっても「熱融着」と同様の現象が生じているものと認められる。 しかしながら、先願発明1は、攪拌軸部58と、可撓部60と、容器本体の内周壁部62が一体に形成され、そのうちの内周壁部62の外周には外周壁部64が同時成形により配置された形状となっている。即ち、外周壁部64の内周面全面で内周壁部と固着されており、外周壁部の端部のみで固着するとの思想は認められない。 このため、先願発明1は、積極的に固着の強度を高める等の意図がない以上、軟質樹脂として軟質の熱可塑性弾性体を実質的に用いていると認めることはできない。 また、先願発明1の攪拌軸部58と可撓部60及び容器本体の内周壁部62とからなる第一部材は一体に形成されることにより一つの容器を形成しているので、外周壁部64の端部を本件発明1のように密封部材を固着することにより「密封」して容器を形成する構成とも相違する。 さらに、先願発明1における第一部材は、その上端の開口周縁部から内側に突出するようにして立ち上がる薄肉の環状突片72が設けられ(第3頁左下欄18〜19行参照)、すなわち柔らかい前記環状突片72をも一体に成形するので、前記周壁部62を短くして前記外周壁部64の下側端部のみとする思想は認められない。 なお、請求人は平成12年5月10日付け上申書第2頁において、「筒状部の筐体内方側端部に」という構成は、筒状部の端部のみに第1密封部材が熱融着していなければならないということを示している訳ではないことは明らかであり、甲第1号証のように、筒状部に相当する第二部材の内側全体に第1密封部材に該当する第一部材が熱融着しているからといって、同一でないとは言えない旨主張しているが、上記したように先願発明1には筒状部の端部のみで密封する思想はうかがえないから、その主張は採用できない。 以上検討したように、相違点1乃至3は全て実質的な相違でないと言えないので、本件発明1と先願発明1を同一であると認めることはできない。 [ロ]本件発明2乃至4について 本件発明2乃至4は、請求項1に係る発明を引用して更に減縮した発明であるので、本件発明1が先願発明1と同一であると認められない以上、先願発明1と同一とであるとすることはできない。 ロ.甲第2号証に記載の発明(先願発明2)との対比・判断 [イ]本件発明1について (対比) 本件発明1と先願発明2とを対比すると、先願発明2の「蓋体14」、「粘性流体」、「行き止まり形態の穴部」、「第二体の第二部材20」は、本件発明の「第2密封部材」、「減衰材」、「突起を受け入れるための凹部」、「中空の筒状部」に相当し、また、先願発明2の「蓋体14」と本件発明1の「第2密封部材」は、容器を密封する点で共通するから、両者は、「熱可塑性樹脂からなる中空の筒状部と、該筒状部に接して型成形により一体に固着された軟質樹脂の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた部材を前記筒状部の一端側に設け、他端側には密封部材を備え、前記筒状部内に収容された減衰材とからなる記録再生装置用の減衰手段。」で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本件発明1が「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」の構成を備えているのに対し、先願発明2はこの構成を備えていない点。 相違点2 本件発明1が「筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」の構成を備えているのに対し、先願発明2はこのような構成を備えておらず、「熱可塑性樹脂からなる中空の筒状部」を備えているのみである点。 相違点3 該筒状部に接して型成形により一体に固着された軟質樹脂の弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた部材について、本件発明1が「筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体」からなり、かつ「密封部材」を形成しているのに対し、先願発明2は「撹拌部22の周囲に設けられた可撓部26の外周には円筒状部30が延び出しており、円筒状に形成された前記第二部材20を金型内に予めセットしておいて軟質樹脂材を金型内に射出成形することにより前記第一部材18を成形し、前記第二部材20内周全面で前記第一部材の円筒状部30を嵌合・固着により一体に成形する」点、すなわち、筒状部に相当する熱可塑性硬質樹脂の第二部材20の内周全面において、軟質樹脂である第一部材の円筒状部30が一体に成形され」、その部材は「軟質樹脂」であり、「金型内に射出成形により嵌合・固着」している点で相違する。 (相違点の検討) 上記相違点について検討する。 相違点1について 「内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置」の構成は、甲第3号証の第3図および甲第6号証の1〜4図の記載によれば、公知の構成と認められ、更に、他の無効審判請求人である東海ゴム工業株式会社の提出した甲第3、5乃至9号証を加えて考慮すれば周知の構成(参照のこと)であり、先願発明2のような粘性流体封入ダンパーをこのように配置することは、周知の使用形態にすぎないと認められる。 相違点2について 「筐体の内方を向くように設けられた複数の中空の筒状部」は、先願発明2を上記の周知の使用形態とする際、当然得られる構成にすぎない。 しかしながら、参考資料4に熱可塑性樹脂がエンジニアリングプラスチックの中心であると記載されている(第4頁第8〜10行参照)からといって、該第二部材の硬質樹脂(熱可塑性樹脂)が実質的にエンジニアリングプラスチックであると断定できないから、先願発明2が「筐体の内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」の構成を実質的に備えているとすることはできない。 相違点3について 甲第5号証には「熱可塑性エラストマー」がゴムとプラスチックの両方の機能を合わせ持つ唯一の素材である点、及び該熱可塑性エラストマーを熱融着により成形する点が公知であることが甲第6号証により認められ、また、甲第7、8号証に、「他の樹脂に軟質の熱可塑性弾性体(エラストマー)を熱融着手段により融着させて複合成型品を製造する点について記載されている。 しかしながら、先願発明2は、第一部材18は軟質樹脂材(またはゴム材)を注型により形成する旨記載している(前記指摘部分参照のこと)が、実施例では、該第一部材にゴムを用い、対する第二部材に硬質樹脂を用いている(同じく前記指摘部分参照のこと)。このようなゴムと合成樹脂の組合せにおいて、その接合面で上記証拠のように積極的に接着しようとする場合と同じように当然に強固に接着しうるとは認め難い。しかも、両者を成形により嵌合・固着しているのであるから、先願発明2においては、両者間を強固に接着しようとの思想は認められない。 そのため、先願発明2における該軟質樹脂材が実質的に熱可塑性弾性体であると認定することはできない。 さらに、軟質樹脂からなる第二体の第一部材18は、第二体の第二部材20である硬質樹脂製円筒状部材の内周全体で嵌合・固着されており、円筒状部材の端部のみで固着されていない。しかも、第一部材18はこれのみで一つの密閉容器を形成しており、前記硬質樹脂製円筒状部材は、第一部材の補強材として用いられていることは明らかであり、本件発明1における第1密封部材のように筒状部の端部のみに他の部材を固着することにより該筒状部の端部を密封するとの思想はうかがえない。 したがって、この相違点3に係る構成は実質的に同じであるとすることはできない。 上記の理由により、先願発明2は筒の内周全面で固着しているので、端部も当然に固着しているとの請求人の上申書における主張は採用することができない。 したがって、上記相違点1乃至3は全て実質的な相違でないとすることはできないから、本件発明1と先願発明2を同一であると認めることができない。 [ロ]本件発明2乃至4について 本件発明2乃至4は、請求項1に係る発明を引用して更に減縮した発明であるので、本件発明1が先願発明2と同一と認められない以上、先願発明2と同一とすることはできない。 6.-(2)-b.特許法第29条第2項違反について イ.甲第3号証に記載の発明との対比・判断 [イ]本件発明1について 本件発明1と甲第3号証に記載の発明(独立特許要件を検討した引用刊行物1と同じ)を対比すると、両者における一致点・相違点については、先の独立特許要件の判断(2.-(3))で記したとおりである。 なお、請求人は、両者の一致点・相違点等について、概ね以下のように主張している。 すなわち、甲第3号証の第3図の防振装置の構造は本件発明の構成要件「A」で一致し、また、ダンパ60を構成する容器部22は筒状体に一致し、蓋部23は、第1密封部材に一致する。叉、甲第3号証には、容器部22の筐体内方側端部に容器部22より軟質の蓋部23を設ける点、及び、蓋部23は中央部に支持軸挿入部23aを有する点も記載され、内部に粘性流体14aを封入する点も記載されている。・・・両者は筒状体の端部に第1密封部材を設けた点で一致し、・・・一方、甲第3号証は、筒状部(容器部23)及び第1密封部材(蓋部23)を硬さは異なるが、同様なゴム材料で形成した点、また、両者を接着している点、さらに、第1密封部材(蓋部23)とは反対側に第2密封部材がない点で、本件発明1と異なる。 しかしながら、同様なダンパにゴムではなく、弾性プラスチックを用いても良い点は甲第4号証から公知であるので、これを甲第3号証の筒状部(容器部22)を第1密封部材(蓋部23)より硬質に形成するという着想を組み合わせれば、第1密封部材に弾性プラスチックを用い、筒状部に硬質プラスチックを用いる点は容易に相当することができる。 また、弾性プラスチック、すなわち、熱可塑性エラストマーは、2色成形により硬い樹脂の上に熱融着により成形、融着し、複合化できることが、甲第4号証に示されており、「硬質プラスチックと熱可塑性エラストマーとを一体的に熱融着させる」点は、甲第7号証又は甲第8号証等によっても公知であるから、硬い筒状体と柔らかい第1密封部材とを熱融着により一体化する点も当業者が容易に想到できるものである。なお、このように筒状体と第1密封部材とを一体的に形成すれば、例えば、甲第6号証の第6図に示されるように筒状体の他端部に第2密封部材を固着する構成とする点も当業者であれば容易に想到し得るものである。」と主張している(審判請求書第9頁10行〜10頁17行)。 しかしながら、このように、筒状部を硬くする点、ダンパに弾性プラスチックを用いる点から、第1密封部材に弾性プラスチックを用いると共に筒状部に硬質プラスチックを用いる過程、弾性プラスチック(熱可塑性エラストマー)が2色成形により成形、融着できることから、硬質プラスチックと熱可塑性プラスチックを一体的に熱融着させる過程、更に、硬質プラスチックとして熱可塑性エンジニアリングプラスチックを選択する過程との何段もの思考過程を経ないと、本件発明1の構成の一部である筒状部と第1密封部材の構成が得られないのであるから、容易に想到しうるとすることは到底できない。 また、本件発明1が熱融着のみに特徴を有するものではないことは、上記複数の相違点に示したとおりであり、2色成形により熱可塑性エラストマーを硬い材料の上に熱融着のみで成形、融合し、1つの部品を複合化でつくりあげる点が公知であるとしても、それのみでダンパーに転用し、本件発明の特許性を否定することができないことも先に記したとおりである。 [ロ]本件発明2について 甲第3号証の第12頁には「開口端22cの近辺には支持部材の取付孔1aに嵌入させる溝22dが設けられている。」と記載されているように、請求項2に記載の減衰手段は筐体に着脱自在に取りつけられ」の構成を備えているものと認められるが、「エンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていること」の構成を備えておらず、甲第4乃至8号証を参照しても単なる設計事項との根拠も認められない。 しかも、本件発明2は、請求項1の従属項であるから、上記のように本件発明1が、甲第3乃至8号証に記載の発明から容易に発明をすることができないものである以上、本件発明2も、容易に発明をすることができたものとすることができない。 [ハ]本件発明3について 「筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる」点は、甲第3号証に記載されておらず、かつ、甲第4乃至8号証の記載を参照しても単なる設計事項との根拠も認められない。 しかも、本件発明3は、請求項1の従属項であるから、上記のように本件発明1が、甲第3乃至8号証に記載の発明から容易に発明をすることができないものである以上、本件発明3も、容易に発明をすることができたものとすることができない。 [ニ]本件発明4について 「第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていること」点は、甲第3号証に記載されておらず、かつ、甲第4乃至8号証の記載を参照しても単なる設計的な選択事項との根拠も認められない。 しかも、本件発明4は、請求項1乃至3の従属項であるから、上記のように本件発明1が、甲第3乃至8号証に記載の発明から容易に発明をすることができないものである以上、本件発明4も、容易に発明をすることができたものとすることができない。 ロ.甲第4乃至8号証に記載の発明との対比・判断 甲第4乃至8号証に記載の発明は、「6.-(1)」に記したように、本件発明1乃至4に対して、部分的に共通するだけなので、これらの発明から、本件発明1乃至4が容易に発明をすることができたとすることはできない。 6.-(2)-c.特許法第36条第4項違反について 請求人は、本件の請求項1乃至4には、以下の理由により本件特許発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないので、請求項1乃至4に係る特許発明は、特許法第36条第4項第2号に違反する旨主張している。 イ.熱融着について 本件特許は、熱融着する点に特許性を求めるのであれば、熱融着について明瞭にするか、熱融着する材料を特定すべきであると、主張している。 しかしながら、本件の特許請求の範囲の請求項1(本件発明1)の記載は、熱可塑性のエンジニアリングプラスチックからなる筒状部の端部のみに軟質の熱可塑性弾性体を射出成形により熱融着することを構成要件としているが、構成要件はこれのみではない。また、本件発明1に対応した目的、構成及び作用が発明の詳細な説明中に記載されており、特に筒状部と第1密封部材の材質や熱融着の方法も具体的に掲げ、かつ掲げられた各材料及び各方法によっても当業者が容易にその発明を一応実施することができる程度に記載されている(特許公報第5欄30行〜第6欄26行参照)ものと認められる。 そして、発明の詳細な説明には、上記具体的な材料を包括する概念である用語として「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」、「熱可塑性弾性体」と材料名を定義したものと認められ、かつ両部材の接着構成である「熱融着」も明細書中で明確に記載している(上記指摘部分参照)ものと認められるから、特許請求の範囲の請求項において、実施例のレベルに熱融着する特定の材料を特定する必要も、熱融着の意味をさらに明確にする必要も認められない。 また、請求人は、平成12年5月10日付け上申書第5頁において、乙2号証の2は融着を定義したものであって、熱融着を定義したものではない旨主張しているが、乙2号証の2には「融着 接着剤、溶剤を使用するのではなくて、被着面を加熱、軟化溶融させて接合する方法」と記載されているが、この場合、融着のために加熱しているのであるから、実質的に「熱融着」の意味であると認められる。 なお、上申書,陳述要領書において請求人の指摘するとおり、平成8年12月16日付け異議答弁書における被請求人の主張は「・・・2色成形により溶着・融着する樹脂同士の組み合わせは限られています。」(第4頁17〜18行)と2色成形で溶剤を用いる固着方法である「溶着」が行われる旨、或いは、「追記 本願発明を説明する明細書に溶着可能な組み合わせの樹脂名を明記したのは・・・」(第5頁5〜6行)と主張している様に、溶着と融着を混同しているものと認められる。 しかしながら、上記乙2号証の2および甲第5、7,8号証の記載によれば本件の特許明細書における「熱融着」の定義は矛盾していないものと認められる。 ロ.ポリプロピレンについて 請求人は、「エンジニアリングプラスチック」という技術用語には一般樹脂に分類されるポリプロピレンが含まれないという当業者の共通の認識とも明らかに矛盾し、不明瞭であると、主張している。 この主張について検討すると、 本件請求項1に係る発明の「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部」は、その端部に軟質の熱可塑性弾性体を熱融着するが、発明の詳細な説明中には、「ブラケット6は筒状部11を含めて、周知の射出成型法により一体成形される。ブラケットの材質は、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、PBT,ナイロン6,11,12、など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであるならどんな合成樹脂でも良い。」と記載している(特許公報5欄33〜38行)。 請求人の提示した参考資料3,4によれば、「ポリプロピレン」は、「エンジニアリングプラスチック」の代表的なものではないと認められる。しかしながら、参考資料4には「同一種類の合成樹脂でも、エンプラの場合と汎用プラスチックの場合では、プラスチックとしての性能に当然大きな差がある。 もち論プラスチックの性能は、基本的に原料樹脂の性能によって規定されるが、特にエンプラは、このような素材性能にどの位の付加価値を付与するかということであって、その付加価値は、複合、ブレンド、変性(究極的には分子設計)などの物理化学加工、・・・によって付与される。 さて、エンプラと通常呼んでいる曖昧な表現を、仮に製品分類として考えた場合でも、汎用プラスチックとの区分あるいは境界を、定量的な性能値によって決めるのは極めて困難であり、場合によっては無意味である。」(第3頁21行〜30行)及び 「しかし、一般的な概念としてのエンプラという表現について、現状における常識に最も近いまた無理のない形で概念規定を試みると、(1)高性能プラスチックの原料となる合成樹脂,一般にadvancedまたはexoticな熱可塑性樹脂が中心,(2)高性能プラスチック(汎用樹脂製品の包含される)、(3)高性能でかつ高機能(磁性、導電性など)なプラスチック,などの概念が混在し、かつ、(4)プラスチックという形態で非耐力機械部品、部材、ハウジングなど、いわゆるエンジニアリング的な用途に用いられるもの、ということである。なおこれらの表現が曖昧で、感覚的であることも、エンプラの一つの特徴となっている。」(第4頁8行〜14行)と記載されているように、エンジニアリングプラスチックの定義は極めて曖昧であり、さらに、ポリプロピレンは乙3号証の2によればエンジニアリングプラスチックとして定義される場合もあることが認められる。 したがって、「エンジニアリングプラスチック」の中に、性能的にやや劣る(汎用として定義されることが多いため)ポリプロピレンを入れるか否かは、性能が反対のものを入れるような場合と違い単に定義するか否かの問題にすぎないと認められる。 そして、このように元々用語の定義が曖昧な場合などで特定の意味で使用しようとする場合には、明細書中で定義するように規定されている(特許法施行規則第24条様式29備考8参照のこと)から、上記のように発明の詳細な説明中で「エンジニアリングプラスチック」の具体的材料として列記された材料を用いて実施し得る以上、請求人Hの提示した甲第9号証の公開実用新案公報に記載の考案について、「このサーモプラスチックラバーは、硬質樹脂のポリプロピレンとは融着も溶着もしません。・・・」との特許異議申立人加藤妙子による異議申立に対する平成8年12月1日付け特許異議答弁書において被請求人が主張していたとしても、その事実によって明細書中のエンジニアリングプラスチックからポリプロピレンを排除することはできない。 したがって、特許請求の範囲に記載の「熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチック」は、発明の詳細な説明に記載すなわち、定義している「エンジニアリングプラスチック」中のポリプロピレンを用いても実施可能である以上、上記請求項1の記載が不明瞭であり構成要件を欠いているとの請求人の主張は、採用することができない。 7.むすび 以上のとおりであるから、当審における特許無効理由通知に記載の理由並びに、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1乃至4に係る特許を無効とすることはできない。 又、他に本件発明1乃至4に係る特許を無効とする理由を発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 記録再生装置の防振装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、 前記減衰手段は、 a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、 b.この筒状部内に収容された減衰材と、 c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、 d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置。 【請求項2】請求項1において、 前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。 【請求項3】請求項1において、 前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなることを特徴とする記録再生装置の防振装置。 【請求項4】請求項1ないし3のいずれか1において、 前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されていることを特徴とする記録再生装置の防振装置。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、記録再生装置の防振装置に関する。更に詳しくは、CD(コンパクトディスク)、フロッピーディスク等の記録媒体を再生するための再生装置の衝撃等により発生する振動を緩らげ、かつ減衰させるための防振装置に関する。 [従来技術] CDはデジタル符号化されたオーディオ信号をピット(凹部)の列として記録した小径のディスクである。このディスクに記録された事項は、再生装置においてレーザ光により再生される。再生装置に振動が発生すると、レーザ光が所定のピットに照射されない。従って、このような振動は極力避けなければならない。 従来、再生装置の防振装置として次のようなものが知られている。 すなわち、防振装置は筐体を有している。この筐体内に再生装置が収容され、再生装置は筐体に弾性吊具を介して懸吊されている。筐体に再生装置を支持するとともに、振動を減衰するための減衰手段が設けられている。 この減衰手段は、第6図に示すようなものである。減衰手段71はブラケット72を有し、その上端に設けたねじ孔73に装着されるねじを介して筐体に取付けられる。ブラケット72には、シリコンなどの粘性を有する減衰材12を収容するための中空の筒状部74が形成されている。この筒状部74の両端は、軟質のゴム材料からなる筒状の密封部材75と、密閉板76とによって密封されている。 密封部材75は一端に密封部77を有し、その中央部に再生装置に設けられた突起を受け入れるための凹部78が設けられている。密封部材75の周囲に、その軸線方向に間隔を置いて2つのフランジ79、80が設けられている。 上記減衰手段71は次のように組立てられる。ブラケット72の筒状部74内に、フランジ80側の端部をすぼめた密封部材75を挿通させる。そして、両フランジ79、80を筒状部74の両端面に係合させ、このようにして密封部材75をブラケット72に取付ける。 次に筒状部74内すなわち密封部材75内に減衰材12を注入して、キャップ76をフランジ80に固着する。 [発明が解決しようとする課題] しかし、上記減衰手段71にあっては、ブラケット72と密封部材75はそれぞれ個別に成形される。このため、ブラケット72に密封部材75を前記のようにして取付けなければならない。したがって従来のものは組立てのための工数が多く、しかも取付け作業が面倒であるという問題点があった。 この発明は、上述のような技術的背景のもとになされたものである。 この発明の目的は、減衰手段の組立て工数が少なく、製作が簡単な防振装置を提供することにある。 [課題を解決するための手段] この発明は、上記目的を達成するために次のような手段を採る。 すなわちこの発明は、内部に空間を区画する筐体と、この筐体の一部に設けられ、記録再生装置を支持するための弾性支持具と、前記筐体の一部に設けられ、前記記録再生装置を支持し、かつその振動を減衰するための減衰手段とを備えた防振装置であって、 前記減衰手段は、 a.前記筐体にその内方を向くように設けられた、熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる複数の中空の筒状部と、 b.この筒状部内に収容された減衰材と、 c.前記筒状部の前記筐体内方側の端部のみに射出成形により一体に熱融着された軟質の熱可塑性弾性体からなり、略中央部に前記記録再生装置に設けた突起を受け入れるための凹部が設けられた第1密封部材と、 d.前記筒状部の他端部に固着された第2密封部材とを有する記録再生装置の防振装置にある。 前記減衰手段は、前記筐体に着脱自在に取付けられ、かつ熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなるブラケットを有し、このブラケットに前記筒状部が形成されている。 前記筐体と前記筒状部とが、一体に型成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなる。 前記第2密封部材は熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、略中央部に熱融着可能な前記減衰材の注入口が形成されている。 [作用] 前記第1密封部材は、型成形により一体に筒状部に熱融着される。このため、従来のような密封部材を筒状部に取付けるための作業が省略される。 [実施例] この発明の実施例を図面にしたがって説明する。第1図はこの発明による防振装置の全体を示す正面図である。 防振装置は再生装置1を収容するための筐体2を有している。筐体2は上板3と、その周縁に垂下して設けられた互いに対向する1対の側板4とからなっている。再生装置3は上板3の内面にコイルスプリングからなる複数の弾性吊具5を介して懸吊されている。 側板4の下端に減衰手段6が複数(実施例では各側板4に対して2つ)設けられている。減衰手段6は再生装置1の側部に設けた突起7を介して、再生装置1を支持するとともに、再生装置1からの振動が伝達される。 第2図は減衰手段6の詳細を示す断面図である。減衰手段6はブラケット8を有している。ブラケット8は射出成形された熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなっている。ブラケット8はねじ9を介して側板4に取付けられ(第1図)、ねじ9のための取付孔10がブラケットの端部に形成されている。ブラケット10には中空の筒状部11が形成され、その内部に減衰材12が封入されている。減衰材としては例えば、10000〜50000センチポアズ程度の粘性を有するシリコンが使用される。 筒状部11の端部内周面には、環状段部13が形成されている。この環状段部13に、軟質の熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が射出成形により一体に熱融着されている。第1密封部材14は、その中央部に再生装置1の突起7を受け入れるために凹部15が設けられている。 凹部15は射出成形時には、第2図に鎖線で示すように、凹部15の内周面が外部に露出した状態で成形される。そして成形後実線で示す状態にされる。 筒状部11の他端部は第2密封鎖部材16によって密封されている。この第2密封部材16はブラケット11と同一材料で射出成形により成形される。第2密封部材16は筒状の取付部17を有し、この取付部17の外周面に環状突起18が形成されている。環状突起18に対応して、筒状部11の他端部内周面に環状溝19が設けられている。 第2密封部材16の取付部17が筒状部11に圧入され、かつ環状突起18が環状溝19に係合することにより、第2密封部材16は筒状部11に固着される。 第2密封部材16は、その中央部に減衰材12の注入口20が設けられている。この注入口20は、筒状部11内に減衰材12を注入した後、実線で示すように熱融着により閉じられる。 上記防振装置によれば、再生装置1に衝撃が加わると弾性吊具5が振動することにより衝撃を緩和する。そして再生装置1の振動は突起7を介して減衰手段6に伝達され、減衰材12の粘性抵抗により減衰される。 製造法 上記防振装置は次のようにして製造される。 筐体2は通常エンジニアリングプラスチックを射出成形して作られるが、金属等の薄板を曲げ加工してもよい。ブラケット6は筒状部11を含めて、周知の射出成形法により一体成形される。ブラケットの材質は、ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、PBT、ナイロン6、11、12など、機械的強度、成形性が良いもの、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものであればどんな合成樹脂でも良い。 ブラケットの射出成形後、このブラケットを次の射出成形金型に入れる。ここで使う金型は、射出成形でよく用いられる周知の金型構造を用いる図示せず)。金型内のキャビティ部は、環状段部13などであり、成形前はこれらの部分は空間である。この状態で、スプルーから加熱溶融した熱可塑性の弾性体を流入させる。この熱可塑性の弾性体は、例えば、ナイロンエラストマ、ポリウレタン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ポリエステルエラストマなどから選択する。 流入された樹脂は、スプルー、ランナを通ってゲートを通りキャビティ部を満たす。キャビティ部に流入した熱可塑性弾性体は、それ自身の溶融熱で環状段部13の表面部分を一部溶かして、両者は混合または凝着して熱融着面を作る。このようにして第1密封部材14が熱融着されたブラケットを金型から取出し、他の必要な処理を行なう。 この後、第2密封部材16を筒状部11に取り付ける。さらに、第1密封部材14の凹部15をその内外面が反転するように筒状部11内に押し込む。そして注入口20から減衰材を注入し、注入後この注入口20を熱融着して閉鎖する。 なお、この製造方法は、射出成形法であるが、筒状部11に第1密封部材14を熱融着する方法は、他の公知の手段でも良い。例えば、射出成形、ブロー成形、カレンダ成形、圧縮成形、トランスファ成形など成形と同時に融着する条件であれば、他の方法でも良い。また、凹部15が最初から筒状部11内に位置する形状に、成形してもよい。 [その他の熱可塑性弾性体] ブラケットに高い耐熱性および機械的強度が要求される場合は、ポリカーボネート、ナイロンなどの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックを使用する。しかし、従来用いられている熱可塑性エラストマーをこれらのエンジニアリングプラスチックに接合するには、比較的硬い熱可塑性弾性体(エラストマ)に限られている。この場合には、本出願人が特願昭62-300036号(特開昭1-139240号公報)および特願平1-235620号において提案した方法にしたがい、熱可塑性弾性体組成物を選択すればよい。 [第2実施例] 第3図は、防振装置の第2実施例を示す正面図である。前記第1実施例では減衰手段6が側板4に垂下して設けられている。この第2実施例では、側板4の下端に横向きの張出部34が形成されている。減衰手段36は、この張出部34に凹部15の開口端が上方を向くように取付けられている。また再生装置1の底部に突起47が設けられ、この突起47が凹部15に受け入れられている。その他の構成は第1実施例と同様である。 [第3実施例] 第4図はこの発明の第3実施例を示す正面図である。前記第1実施例では弾性吊具5がコイルスプリングからなっている。この実施例では、弾性吊具55はスリ割り56を有する2つの係止部57と、両係止部57、57を連結する弾性材料からなる連結部58とからなっている。両係止部57、57は、筐体2の上板3および再生装置1の本体1aにそれぞれ設けた取付孔に係合し、これにより再生装置1が筐体2に懸吊されている。その他の構成は第1実施例と同様である。 [第4実施例] 第5図はこの発明の第4実施例の一部を示す正面図である。第1ないし第3実施例では、減衰手段がブラケットを有している。この実施例では、減衰手段はブラケットを有することなく、筐体2の側板64に筒状部11が一体的に形成されている。この実施例では、筒状部11を含む筐体2全体が、前述した各種材料から選択される熱可塑性樹脂のエンジニアリングプラスチックからなり、射出成形により成形される。筐体2の成形後、熱可塑性弾性体からなる第1密封部材14が、射出成形により成形されると同時に筒状部11に熱融着される。 [発明の効果] 以上のようにこの発明によれば、第1密封部材が型成形により一体に筒状部に金型内で熱融着される。したがって、この密封部材の組付作業が自動化できるので、工数が少くて済み、製造コストを安価なものとすることができる。 【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明の第1実施例を示す一部破断した正面図、第2図は減衰手段の詳細を示す断面図、第3、4図はそれぞれ第2、第3実施例を示す第1図と同様な図面、第5図は第4実施例の要部のみを示す一部破断した正面図、第6図は従来例を示す断面図である。 1……再生装置、2……筐体 5……弾性支持具、6……減衰手段 7……突起、8……ブラケット 11……筒状部、12……減衰材 14……第1密封部材、15……凹部 16……第2密封部材、20……注入口 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2000-10-17 |
結審通知日 | 2000-10-27 |
審決日 | 2001-10-02 |
出願番号 | 特願平2-281847 |
審決分類 |
P
1
112・
161-
YA
(G11B)
P 1 112・ 531- YA (G11B) P 1 112・ 534- YA (G11B) P 1 112・ 121- YA (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 相馬 多美子、杉山 務 |
特許庁審判長 |
三友 英二 |
特許庁審判官 |
内藤 二郎 麻野 耕一 |
登録日 | 1998-10-09 |
登録番号 | 特許第2138602号(P2138602) |
発明の名称 | 記録再生装置の防振装置 |
代理人 | 冨永 博之 |
代理人 | 冨永 博之 |
代理人 | 富崎 元成 |
代理人 | 杉本 進介 |
代理人 | 栗原 浩之 |
代理人 | 野上 邦五郎 |
代理人 | 富崎 元成 |
代理人 | 野上 邦五郎 |
代理人 | 杉本 進介 |
代理人 | 円城寺 貞夫 |
代理人 | 円城寺 貞夫 |