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審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199935774 審決 特許
無効200680172 審決 特許
訂正2008390031 審決 特許
無効200580346 審決 特許
審判19949675 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) C07D
審判 全部無効 産業上利用性 無効とする。(申立て全部成立) C07D
審判 全部無効 特39条先願 無効とする。(申立て全部成立) C07D
審判 全部無効 特29条の2 無効とする。(申立て全部成立) C07D
管理番号 1074241
審判番号 審判1999-35773  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1984-01-06 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-24 
確定日 2003-03-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第2961267号発明「イミダゾール又はピラゾール誘導体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2961267号の発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯及び本件特許発明
本件特許第2961267号に係る出願は、昭和58年5月31日(パリ条約による優先権主張1982年6月1日、1983年3月30日、1983年4月4日及び1983年4月25日、米国)の特許出願であって、平成10年12月10日付けで手続補正された後、平成11年8月6日にその特許権の設定の登録がなされたものであり、本件特許発明の要旨は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「下記式(I-A)、


式中、Qは



であり、R1は炭素数5又は6のシクロアルキル基であり、R10は炭素数1ないし4のアルキル基であり、R11は-COOR24であり、R24は炭素数1ないし3のアルキル基であり、Xは-CH3又は-OCH3であり、Yは-CH3又は-OCH3である、で表される化合物又はそれらの農業的に適する塩類。」(以下、「本件発明」という。)
2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明の特許を無効にする、との審決を求め、その理由として、本件発明は、パリ条約に基づく優先権の利益を享受できないので、本件出願の日前の出願であって本件出願後に公開された特願昭57-228261号(特開昭59-122488号公報参照:甲第1号証)の願書に最初に添付された明細書に記載された発明(以下、「N発明」という。)と同一の発明であり、その発明をしたものが当該特許出願に係る発明の発明者と同一ではなく、当該特許出願の時にその出願と当該他の特許出願の出願人とが同一の者ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり(主張1)、また、本件発明は上記N発明に係る出願の分割出願にかかる特許第1421539号発明(特公昭62-29433号公報参照:甲第2号証)と同一であるので、本件特許は特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができないものであり(主張2)、さらに、本件明細書の発明の詳細な説明が当業者が容易にその発明を実施できる程度に記載されていないので、本件特許は特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり((主張3)、第1回口頭審理調書参照)、さらに、本件発明は未成立の部分を含むので、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものである(主張4)から、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、乙第1号証ないし乙第10号証及び参考資料1ないし3を提出し、N発明に相当する被請求人の出願に係る本件発明(以下、単に「N発明に相当する発明」という。)についても最先の米国出願明細書において十分開示されているので、最先の米国出願に基づく優先権の利益を享受できるから、本件特許の出願は請求人主張の上記二出願に対して先願の地位を有するものであり、また本件明細書の記載に不備はなく、さらに、本件発明は未成立の部分を含んでいないので、請求人の主張する理由はいずれも根拠が無く、失当である旨主張する。
なお、被請求人は、第1回口頭審理の請求人陳述において請求人が行った、米国特許第4,169,719号明細書に基づく主張は審判請求書で言及されていないので審判請求の理由を変更するものである、と主張するが、上記米国特許は本件特許明細書中であげられている先行技術の一つで、審判請求書第11〜12頁でもすでに取り上げられており、そのような前提技術の説明は請求の理由を変更するものには該当しないので、被請求人のこの主張は採用しない。
4.甲第1号証ないし甲第9号証及び乙第1号証ないし乙第10号証、参考資料1ないし3の記載内容
甲第1号証(特開昭59-122488号公報)には本件の化合物と同一の化合物、その製法及び該化合物を含有する除草剤が記載され、甲第2号証(特公昭62-29433号公報)には本件発明の化合物と同一の化合物及びその製法が記載されている。甲第3号証(本件発明者の一人であるアンソニー・デビッド・ウルフの証言録取記録)には、アンソニー・デビッド・ウルフ及び彼の下で研究している者が、1982年6月1日付の第一優先権の前には、ピラゾール系化合物は合成していなかった旨の証言が記載され、その他甲第4号証(平成10年5月12日付拒絶理由通知書)、甲第5号証(平成7年(行ケ)第57号事件判決書)、甲第6号証(平成11年(行サ)第78号事件上告提起通知書)、甲第7号証(平成11年(行サ)第78号事件上告取下書)、甲第8号証(平成2年(行ケ)第243号事件判決書)及び甲第9号証(平成6年(行ツ)第194号事件判決書)には請求人主張のとおりの内容が記載されている。
一方、乙第1号証(特許第2961267号公報)、乙第2号証(平成8年2月20日発行の「通産省公報No.13504」、第14頁)、乙第3号証(平成7年6月28日社団法人発明協会発行、特許庁編「平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」、表紙、はしがき、目次、第3ないし8頁、奥付、裏表紙)、乙第4号証(特開昭59-1480号公報)、乙第5号証(本件特許の発明者の一人であるアンソニー・デビッド・ウルフの宣誓供述書)、乙第6号証(本件特許の米国第一優先件出願(Serial No.384,043)の明細書)、乙第7号証(本件特許の米国第一優先件出願の一部継続出願である米国特許出願第486,092号と甲第1号証の発明者の一人である鈴木文男等の米国特許出願469,458号との間で争われたインターフェアレンスに関する米国特許商標局の特許審判及びインターフェアレンス部の決定)、乙第8号証(本件特許に対応するヨーロッパ特許第95925号明細書)、乙第9号証(上記ヨーロッパ特許第95925号に対し請求人会社が行った特許異議申立に対するヨーロッパ特許庁による異議決定)、乙第10号証(ヨーロッパ特許公開第87780号明細書)、参考資料1〜3には、被請求人主張のとおりの内容が記載されている。
5.当審の判断
(主張1について)
N発明の出願(以下、「N出願」ともいう。)は昭和57年12月28日になされたものであるところ、本件特許は4件の米国特許出願に基づく優先権の主張を伴うものであり、その最先のものは1982年(昭和57年)6月1日を優先権主張日とするものであるから、形式的には本件特許の出願がN発明の先願となるものであるが、請求人の主張する主張1は、N発明に相当する発明は、上記最先の優先権を主張する米国出願第384,043号明細書(乙第6号証、以下、「米国第一優先権出願明細書」という。)においては成立していないのであるから、N発明に相当する発明については、本件特許に係る二番目に早い優先権主張日である1983年(昭和58年)3月30日よりも早い出願日を有するN出願こそが先願としての地位を有する、というものである。
そこでまず、本件発明に係る化合物とN発明に係る化合物との相互関係を確認すると、N発明に関する甲第1号証第5頁右下欄第1表にその融点、性状とともに記載されている化合物のうち、化合物No.1は本件発明に係る化合物を表す一般式(I-A)において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数1のアルキル基で、Xが-CH3で、かつYが-CH3である化合物に相当し、化合物No.2は上記一般式において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数1のアルキル基で、Xが-CH3で、かつYが-OCH3である化合物に相当し、化合物No.3は上記一般式において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数1のアルキル基で、Xが-OCH3で、かつYが-OCH3である化合物に相当し、化合物No.6は上記一般式において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数2のアルキル基で、Xが-CH3で、かつYが-CH3である化合物に相当し、化合物No.7は上記一般式において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数2のアルキル基で、Xが-CH3で、かつYが-OCH3である化合物に相当し、化合物No.8は上記一般式において、QがQ-4で、R10が炭素数1のアルキル基で、R11が-COOR24で、R24が炭素数2のアルキル基で、Xが-OCH3で、かつYが-OCH3である化合物に相当するので、本件発明に係る化合物を表す一般式(I-A)において、QがQ-4を表す場合、その化合物はN発明に係る化合物と同一のものであると認められる。
つぎに、米国第一優先権出願明細書(乙第6号証)に、本件発明に係る化合物を表す一般式(I-A)において、QがQ-4を表す化合物発明が完成された発明として記載されているか否か、について検討する。その際、米国第一優先権明細書及び本件特許明細書に共通して記載されている事項であることが本件特許出願において上記最先の優先権を享受できるための必要条件であることに留意しつつ、米国第一優先権出願明細書に記載されている内容をみてみると、化合物については、QがQ-1である場合の化合物がその第49頁,Table Iaの上から3番目、4番目、5番目及び6番目に記載され、5番目及び6番目の化合物については融点も記載されている。また、QがQ-4である場合の化合物がその第69〜70頁、Table IVにおいて、第69頁、下から7番目、第70頁、下から12番目、下から6番目及び下から5番目に記載され、融点の欄は空欄となっている。
製造方法については、本件化合物の合成法が、その第13頁第2行〜第15頁末行に、反応式「1)」(本件特許明細書における「反応式1」に対応)、「2)」(本件特許明細書における「反応式2」に対応)、「5)」(本件特許明細書における「反応式3」に対応)及び「6)」(本件明細書における「反応式4」に対応)として、Q、Aなどの広範な置換基を意味する部分を有する化合物の反応式が記載され、その出発原料たる中間体の製法が、その第18頁22行〜第35頁末行に、反応式「9)」(本件特許明細書における「反応式5」に対応)、「10)」(本件特許明細書における「反応式6」に対応)、「12)」(本件特許明細書における「反応式7」に対応)、「Scheme 1」(本件特許明細書における「工程式1」に対応)、「Scheme 2」(本件特許明細書における「工程式2」に対応)、「Scheme 4」(本件特許明細書における「工程式3」に対応)、反応式「13)」(本件明細書における「反応式8」に対応)、「Scheme 5」(本件特許明細書における「工程式4」に対応)として記載されている。
実施例に関しては、実施例1〜3として、QがQ-1の場合のイミダゾール系化合物の実施例が記載されている。(これらの実施例は本件特許明細書には参考例1〜3として記載されている。)
また、用途、用法に関しては、その第86頁第14行〜第87頁第7行に本件発明の化合物が強力な除草剤であることが記載され、第96頁のTable A中Compound 14 及びCompound 15(それぞれ第49頁Table Ia中の上から5番目及び6番目の化合物に相当する。)の欄にはそれらの除草効果のデータが記載されている。
これらの記載内容をみると、米国第一優先権出願明細書には、本件特許明細書における一般式(I-A)中のQがQ-1を表すイミダゾール系化合物については実施例として2種の化合物の融点(分解温度)が示され、参考例としてQ-1に含まれるものではないが同じ2-イミダゾール誘導体の製造方法が示され、得られた化合物の除草効果に関するデータも記載されているのに対し、QがQ-4を表すピラゾール系化合物については、単に一般的な化合物についての反応経路を表す一連の反応式といくつかの文献が記載されているのみで、具体的な反応条件や同定データ(融点等)の記載が無く、除草効果についても単に「強力な除草剤」である、というにとどまり、具体的な除草効果を確認する記載はない。
化学物質が産業上利用することができる発明としてその特許が認められるためには、その化学物質が現実に提供されることが必要であり、単に化学構造式や工程式レベルの製造方法を示して理論上の製造可能性を明らかにしただけではたりず、化学物質が実際に確認できるものであることが必要である。そして、ある化学物質に係る特許出願の優先権主張の基礎となる出願に係る明細書に、その化学物質が記載されているか否かについても、同様の基準で判断されるべきである(平成11年(行ケ)207号判決参照)。もっとも、その確認とは、確かに発明の対象となる化学物質を提供したことの証明であるから、現実に製造しなくても現実に製造され、物性データ等の具体的資料が示され、文字どおり確認された化学物質と類似のもので、提供し得たも同然のものと評価されるものであれば、それも確認されたものとして取り扱われるべきである(平成2年(行ケ)第243号判決:甲第8号証参照)。
このような観点から上記米国第一優先権出願明細書の記載内容について、 まず、QがQ-4を表すピラゾール系化合物について直接その確認をすることができる程度に記載されているか否かをみてみると、なるほど米国第一優先権特許出願明細書には、反応式やSchemeとともにいくつかの米国特許明細書などの文献が記載されている。しかし、QがQ-4を表すピラゾール系化合物の同定データ(融点等)の記載がなく、その製造方法についてみても、単に反応式やSchemeと、Q部分の構造が異なる特定の化合物についての製造方法が記載されているいくつかの文献が示されただけであって、これでは、QがQ-4であるピラゾール系新規化合物たる本件発明の化合物を製造する方法についての具体的手がかりがないから、QがQ-4を表すピラゾール系化合物を確認できたとすることはできない。
つぎに、本件特許明細書における一般式(I-A)中のQがQ-1を表すイミダゾール系化合物については実施例などにより化学物質が確認できているので、このことから、QがQ-4を表すピラゾール系化合物もまた提供し得たも同然のものと評価できるか否かについて検討する。
QがQ-1を表すイミダゾール系化合物とQがQ-4を表すピラゾール系化合物とを対比すると、前者が2-イミダゾール誘導体であるのに対して、後者は5-ピラゾール誘導体であり、共通点は窒素原子を2個有する5員複素環化合物というだけで、環を構成する2個の窒素原子の位置関係、スルホンアミド基と環窒素原子の位置関係が異なるものである。したがって、その化学構造が互いに著しく相違するものであり、後者が前者と類似のものである、とは到底いえないものである。したがって米国第一優先権出願明細書においては、QがQ-1であるイミダゾール化合物は確認できるものの、QがQ-4を表すピラゾール系化合物もまた提供し得たも同然のものと評価することはできず、この点からもQがQ-4を表すピラゾール系化合物が確認されたものではない。
そうすると、米国第一優先権特許出願明細書には、QがQ-4を表すピラゾール系化合物発明は完成された発明として記載されていないことになり、本件特許出願はQがQ-4を表すピラゾール系化合物の発明すなわちN発明に相当する発明については米国第一優先権を享受できない。
してみると、本件特許の米国第2優先権主張日である1983年3月30日よりも先の出願日を有し、QがQ-4であるピラゾール系化合物が完成された発明として記載されている特願昭57-228261号の存在により、本件特許発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない、という請求人の主張1は理由がある。
(主張2について)
請求人が本件特許発明と同一の発明である、と主張する上記N発明に係る出願の分割出願に係る特許第1421539号発明の特許請求の範囲第1項に記載された発明の内容は、上記N発明のうち、特定の一化合物、すなわち第1表(甲第1号証第5頁右下欄)に記載された化合物No.8に係るものであるところ、(主張1について)で述べたと同様の理由により、化合物No.8に係る発明もまた、本件特許出願の基礎となる米国第一優先権特許出願明細書には、完成された発明として記載されていないものであるから、化合物No.8に係る発明についても、特許第1421539号に係る出願が本件特許出願の先願となり、本件特許発明は特許法第39条第1項の規定によって特許を受けることができない、という請求人の主張2も理由がある。
(主張3について)
本件特許明細書には、QがQ-1を表すイミダゾール系化合物については実施例を伴った具体的記載があるものの、Q-1のイミダゾール系化合物とは化学構造をまったく異にするQ-4のピラゾール系化合物については、実施例もなく、二工程から成る反応式8と四工程から成る工程式4により製造原料を製造する経路及びこのようにして得られるという製造原料を用いて目的化合物、すなわちQがQ-4を表すピラゾール系化合物を製造する経路を示す反応式2または3が記載されているにとどまり、具体的にこれら多数の工程につき個々の工程をどのような反応条件で行うかについては、単にQが全く異なる化合物の製造について記載した欧州特許明細書などの文献をいくつか示すのみであるから、これらの記載からは、当業者がQがQ-4を表すピラゾール系化合物を容易に製造できないものである。
この点に関し、被請求人は、乙第2号証を提出して、本件特許出願(特願昭58-95137号)の審査には、「平成6年改正特許法等における審査及び審判の運用」(乙第3号証)が適用されるべきであり、それによれば本件特許明細書は充分に「発明の詳細な説明」の開示要件を充足していると主張するが、「同運用」には「3.2.1.実施可能要件の具体的運用」という見出しのもとに「(5)説明の具体化の程度について」として「一般に物の構造からその物をどのように作り、どのように使用するかを理解することが困難な技術分野(例.化学物質)に属する発明については、当業者がその発明の実施をすることができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。」(同運用第35頁第3〜6行)と記載されているところ、ここにいう「一つ以上の代表的な実施例」とは、当然のことながら、明細書に実施例が一つあればよい、という意味ではなく(もちろん一つの実施例で特許請求の範囲に記載された化合物群を代表できる場合は一つでよいが、本件発明はそうではない。)、本件でいえば、化学構造が大きく異なるQがQ-1のイミダゾール系化合物群と、Q-4のピラゾール系化合物群のそれぞれについて「代表的な実施例」が必要である、という意味であり、Q-4のピラゾール系化合物について「代表的な実施例」の記載されていない本件特許明細書は、同運用によっても記載に不備があるものであるから、請求人の主張3も理由がある。
なお、被請求人は、平成12年5月22日付で提出した答弁書の第14〜15頁において、請求人のN発明を開示している特開昭59-122488号公報(甲第1号証)に記載されているピラゾールスルホニルウレア誘導体の製造方法の反応式1、2、3(同公報第2〜3頁)は、本件特許の公開公報(乙第4号証)に記載されている反応式1、6、3と全く同じであると主張するが、記載不備の対象となるのは公開公報ではなく特許明細書であり、特許明細書においては、公開公報に記載されていた反応式3は削除されており、反応式6は反応式4として記載されているものの、甲第1号証には記載されていない方法であるから、結局反応式1のみが共通して記載されているものである。被請求人は、製造方法に共通したものが記載されている以上、製造方法について請求人は何ら非難できない、と主張するが、請求人は単に反応式を示しただけではなく、実施例等をもって具体的に製造方法を記載しているのに対し、被請求人は、単に反応式や工程式を示しただけで具体的に製造方法を記載していないのであるから、被請求人のこの点についての主張も妥当でない。
(主張4について)
本件特許明細書と米国第一優先権特許出願明細書の記載内容を比較する。QがQ-1を表すイミダゾール系化合物である場合とQ-4を表すピラゾール系化合物である場合については、前者がQが特定されていない一般的な反応式1〜4のあとに続けて、反応溶媒、反応温度、単離などの製造条件の一般的記載があるのに対して、後者においてはそのような記載がない点を除いて、ほとんど共通しており、上記の一般的記載によっても完成されていない発明を完成させたものとはいえないので、(主張1について)で述べたことと同様の理由により、本件特許明細書においてQがQ-4のピラゾール系化合物については発明が完成されたものとして記載されていないものである。
したがって、本件特許発明は未完成部分を包含するものであるから、特許法第29条第1項柱書の規定を満たしていない、という請求人の主張4も理由がある。
6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は本件出願の日前の出願であって本件出願後に出願公開された出願の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一であり、その発明をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一ではなく、当該出願の時にその出願人と当該他の特許出願の出願人とが同一の者ではないから、本件特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、また、本件特許発明は先願発明と同一であるから、本件特許は特許法第39条第1項の規定に違反してなされたものであり、また、本件特許発明は未完成部分を包含するものであるから、特許法第29条第1項柱書の規定に違反して特許されたものであり、さらに本件特許は特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第2号及び同項第4号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-11-27 
結審通知日 2000-12-08 
審決日 2000-12-20 
出願番号 特願昭58-95137
審決分類 P 1 112・ 531- Z (C07D)
P 1 112・ 16- Z (C07D)
P 1 112・ 4- Z (C07D)
P 1 112・ 14- Z (C07D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 深津 弘
松井 佳章
登録日 1999-08-06 
登録番号 特許第2961267号(P2961267)
発明の名称 イミダゾール又はピラゾール誘導体  
復代理人 牧野 知彦  
代理人 平木 祐輔  
代理人 江角 洋治  
代理人 小田島 平吉  
代理人 岩田 弘  
代理人 中村 至  
代理人 品川 澄雄  
代理人 大塚 一郎  
代理人 吉澤 敬夫  
代理人 石井 貞次  
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