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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1074300 |
審判番号 | 不服2001-15035 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-10-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-24 |
確定日 | 2003-03-26 |
事件の表示 | 平成8年特許願第34758号「データ・ディスク及びディスク・ドライブの一体型アセンブリ」拒絶査定に対する審判事件[平成8年10月11日出願公開、特開平8-263937]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[1]手続きの経緯、本願発明 本願は、平成8年2月22日(パリ条約による優先権主張1995年3月16日、米国(US))の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年4月5日受付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 なお、平成13年8月24日受付の手続補正は却下された。 「【請求項1】 データ・ディスクとディスク・ドライブの一体型アセンブリであって、 回転可能に支持されたデータ格納用ディスクと、 前記ディスクを回転させるようにワン・ピース・アセンブリとして前記ディスクと一体化され、周囲から径方向に外側に伸びて円周上に互いに離隔した複数のロータ磁極を持つロータと、 前記ロータ回りで円周上に互いに離隔して配置され、前記ロータ極それぞれと順次に連係して前記ディスクを回転させるように前記ロータを回転させ、前記ディスクとの間でデータの書込みと読取りを可能にする複数のステータ極を持つステータとを含み、 前記ステータ極はそれぞれ導電コイルが一体型に巻かれた磁気コアを含み、該導電コイルは前記磁気コアの励起時に前記磁気コアを通して磁束を生じさせ、 前記ステータの磁気コアと導電コイルは基板上に一体化され、それぞれ被着磁性材料と被着導電性材料及びそれらの間に配置された誘電体を含む 一体型アセンブリ。」 [2]原審の拒絶理由 平成13年5月31日付けの拒絶査定は、「この出願は,平成12年11月22日付け拒絶理由通知書に記載の理由によって,拒絶をすべきものと認める。」というものであり、平成12年11月22日付けの拒絶理由のうち、理由2は大略以下のとおりである。 「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内において公然知られ又は公然実施をされ若しくは日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 請求項1〜21 引用文献等一覧 1.特開昭51-024210号公報 2.実願昭56-046348号(実開昭57-158075号)の マイクロフィルム 3.特開昭59-052455号公報 4.特開昭59-101068号公報 5.特開平 3-198262号公報 6.特開平 3-254464号公報 7.特開平 4-263166号公報 8.特開平 6-203522号公報」 [3]引用文献に記載された事項 上記引用文献7の特開平4-263166号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 コンピュータの補助記憶装置などとして用いられるハードディスク装置であって、 外周部にリング状の回転子を設けた記憶媒体用のディスクと、 上記回転子に回転力を発生させる固定子を備えたことを特徴とするハードディスク装置。」 「【0004】 磁気ディスク1の読み取りおよび記憶は各磁気ディスク1の両面側に配置された磁気ヘッド41によって行なわれる。磁気ヘッド41は、立軸42を中心に適宜な手段によって旋回するヘッドアーム43の先端に取り付けられている。ヘッドアーム43は、根元側に設置された多段状の案内板44によって磁気ディスク1と平行な平面内を正しく移動するように規制されている。これによって、磁気ヘッド41は磁気ディスク1に接触することなく、磁気ディスク1の半径方向に沿って移動するようになる。上述した各構成部は外ケース51内に収納され、上蓋52で略密封されている。」 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、コンピュータに用いられる各種の記憶装置は小形化および大容量化が求められており、上述したハードディスク装置においても大きさを変えずに記憶容量を増やすことができれば有利である。図6に示したハードディスク装置の記憶容量は、磁気ディスク1の記録範囲Rによって決まるものである。したがって記録範囲Rが広がれば記憶容量も当然増大するが、外周側を広げると磁気ディスク1が大きくなるので好ましくない。」 「【0010】 【課題を解決するための手段】 上述の課題を解決するため、この発明においては、コンピュータの補助記憶装置などとして用いられるハードディスク装置であって、外周部にリング状の回転子を設けた記憶媒体用のディスクと、回転子に回転力を発生させる固定子を備えたものである。 【0011】 【作用】 図1に示す第1実施例では、磁気ディスク本体11の外周側に永久磁石12のS極とN極が交互に固着されており、磁気ディスク1が回転子として形成されている。磁気ディスク1の周囲にはリング状の鉄心61が配置され、この鉄心61に図2に示す如く永久磁石12と対峙するコイルC1、C2・・・が巻装されており、固定子として形成されている。」 「【0015】 図1は第1実施例の磁気ディスク1と、この磁気ディスク1の周囲に配置されたコイル部6を示す。磁気ディスク本体11の外周部にはその全周に亘って所定のピッチでS極とN極とが交互に着磁されて永久磁石12が形成される。コイル部6において、リング状の鉄心61に全周に亘って複数個のコイルC1、C2・・・(一部のみ図示)が分割巻装されている。この場合、コイルC1,C2・・・に通電することによって発生する磁束(回転磁束)が永久磁石12を横切るように鉄心61に巻装される。 【0016】 コイル部6は図2のように永久磁石12に対して僅かな間隔を保持して対向配置される。鉄心61は適宜な手段でベースプレート3(図3)に固定されている。また、磁気ディスク1はスピンドル部2によってベースプレート3に回転自在に装着されている。」 「【0019】 上述したことからわかるように、このハードディスク装置は磁気ディスク1が回転子(ロータ)であり、コイル部6が固定子(ステータ)となるリングコアモータとして構成されている。従って、マイコン等の制御によってコイル部6の各コイルC1、C2・・・、Cnに順次励磁電流を流すことにより、発生する回転磁界によって磁気ディスク1はスピンドル部2の回転軸25を中心に回転する。 【0020】 つまり、スピンドル部2は磁気ディスク1にモータなどの回転力を伝達するために設けられたものではなく、磁気ディスク1の回転を支持するために設けられている。したがって、上述したような回転伝達を考慮する必要がないので、磁気ディスク1とハブ21などとの接触面積を図7に比べて小さくすることができるから、ハブ21や押え板24などの外径Dを小さくすることができる。これによって、磁気ディスク1の内周側の記録範囲Rを広くすることができる。」 「【発明の効果】 以上のように、本発明はディスクの外周部に回転力を発生させることによってディスクを回転させるものである。したがって、本発明によれば、スピンドル部はディスクの回転を支えるだけであるから、回転軸とディスクを結合するためのハブなどの外径を小さくすることができ、これによってディスクの内周側の記録範囲を広げることができるなどの効果がある。そのため、本発明によれば従来と同一径のディスクの記憶容量を従来よりも大きくできる。」 [4]引用発明 上記摘記した事項によれば、引用例には、小型で大容量のハードディスク装置に関する発明(以下、引用発明という。)が記載されていると認められる。 「外周にリング状のロータを設けた磁気ディスクと、ロータに回転力を発生させるステータを備えた磁気ディスク装置であって、 回転可能に支持された磁気ディスクと、 前記磁気ディスクの外周側に着磁された複数の永久磁石のS極とN極を交互に固着したロータと、 前記ロータの回りにリングモータを構成するステータとを含み、 前記ステータは、ベースプレートに固定されたリング状の鉄心に全周に亘って複数個のコイルが分割巻装されて形成されている磁気ディスク装置。」 [5]本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明は、コンピュータの補助記憶装置に用いられる磁気ディスク装置であり、「磁気ディスク」は回転時にデータの書込と読取りが実行され、本願発明の「データ格納用ディスク」に対応し、 引用発明の「リング状のロータを設けた記憶媒体用のディスクと、ロータに回転力を発生させるステータを備え」は、磁気ディスクとディスクドライブが一体化した構成であり、本願発明の「データディスクとディスク・ドライブの一体型アセンブリ」に相当し、 引用発明の「鉄心」「コイル」「ベースプレート」は、本願発明の「磁気コア」「導電コイル」「基板」に相当する。 両者は以下の点で一致すると認められる。 「データ・ディスクとディスク・ドライブの一体型アセンブリであって、 回転可能に支持されたデータ収納用ディスクと、 前記ディスクを回転させるようにディスクの円周上のロータと、 前記ロータと連係して、ディスクを回転させるように前記ロータを回転させ、前記ディスクとの間でデータの書込みと読取りを可能にするステータとを含み、 前記ステータは導電コイルに巻かれた磁気コアを含み、導電コイルは前記磁気コアの励起時に前記磁気コアを通して磁束を生じさせる一体型アセンブリ。」 そして、以下の点で両者は相違すると認められる。 1.ロータとステータが、本件補正発明では、ワン・ピース・アセンブリとしてデータ格納用ディスクと一体化され互いに離隔し外側に複数伸びた複数のロータ極を持つロータと、ロータ回りで円周上に互いに離隔して配置された複数のステータ極を持つステータであるのに対して、引用発明では、着磁された永久磁石の複数のS極とN極の磁石が固着されたロータと、リング状のコアにコイルが複数に分割巻装されたステータとでリングモータを構成している点。 2.磁気コアと導電コイルが、本願発明では、導電コイルが一体型として巻かれ、磁気コアと導電コイルは基板上に一体化され、それぞれ被着磁性材料と着導電材料及びそれらの間に配置された誘電体を含むのに対して、引用発明では、 リング状の磁気コアにコイルが巻装されて磁気コアが基板に固定され、材料については記載がない点。 [4]当審の判断 相違点1 本願出願前には、互いに離隔した外側に伸びているロータ極と離隔したステータ極が連係してロータを回転させるモータはリラクタンスモータとして周知(特開平2-294293号公報、特開平5-336715号公報、特開平6-14508号公報等参照)であり、ロータ本体の上面が平坦な円板であってデータ格納用ディスクとして応用可能であることからすれば、引用発明におけるリングモータのロータとステータを、周知のロータとステータに変えることは容易に推考できることと認められる。 相違点2 本願出願前、部材を小型化するためにスパッタリングや蒸着等の技術を用いることは良く知られていることであり、磁気コアを被着磁性材料で形成し、導電コイルを被着で導電性材料で形成し、これらの間に配置された誘電体からなる部材Tを共に基板に一体に形成することは周知(特開昭63-193894号公報、特開平5-13235号公報、特開平5-243495号公報等参照)であって、さらに該特開平5-243495号公報に「【0023】【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、半導体装置内に電界および磁界効果を奏することができるコイル形状を集積させることができるので、鉄芯にコイルが巻取された装置のコンパクト化,集積化,精密化を図ることができ、これは電流により生成された磁界を用いる装置及び磁界により誘導された電流を用いる装置等に使用することができる。したがって半導体素子形態として発振器,小型モータ,磁界センサに応用できる。」と記載されているように、小型モータに応用することも知られており、引用発明におけるステータを、周知の技術を用いて被着磁性材料と被着導電材料と誘電体で基板上に一体形成することは、小型化する過程において、当業者において何等格別の技術的創作力を課すものではない。 [5]むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-10-23 |
結審通知日 | 2002-10-29 |
審決日 | 2002-11-13 |
出願番号 | 特願平8-34758 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 洋一、齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
犬飼 宏 相馬 多美子 |
発明の名称 | データ・ディスク及びディスク・ドライブの一体型アセンブリ |
代理人 | 渡部 弘道 |
代理人 | 坂口 博 |
代理人 | 市位 嘉宏 |