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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A61F
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない A61F
審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効としない A61F
管理番号 1074518
審判番号 審判1996-19001  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-10-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-11-08 
確定日 2001-09-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1719657号発明「伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.経緯
本件特許第1719657号の発明は、昭和61年11月7日(優先権主張、1985年11月7日、米国)の出願に係り、平成4年12月14日にその設定登録がなされたものであって、その後、テルモ株式会社から、本件特許を無効にするとの審決を求める審判請求がなされ、これに対して、平成9年9月25日付けで訂正請求がなされている。
II.無効審判請求人の主張
本件無効審判請求人の主張の概要は以下のとおりである。
(1)本件特許発明は、甲第1〜3号証の刊行物に記載された発明であるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(2)本件特許発明は、甲第1〜5号証の刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)本件特許発明は、本件特許出願の先願に相当するものであって、甲第6号証に係る先願明細書に記載された発明と同一であるから、本件特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。
また、本件無効審判請求人は、上記訂正請求についても、新規事項を付加するものであり、また訂正後の発明にも依然として上記(1)〜(3)の主張に係る無効理由があるとと共に、訂正後の明細書には記載不備があるから、本件訂正後の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることできないものであり、該訂正請求は特許法第134条第5項において準用する同法126条第2項および第4項の規定に違反する旨主張している。
証拠方法
甲第1号証;米国特許第3657744号明細書
甲第2号証;「Radiology」Vol.156 No.1 P.73-77
甲第3号証;「American Journal of Roentgenol-ogy」Vol.145 P.821-825(1985.10)
甲第4号証;特開昭57-52527号公報
甲第5号証;特開昭60-100956号公報
甲第6号証;特願昭60-234388号(特開昭61-98254号公報)
参考資料1;「MATERIALS AND PROCESSES IN MAN-UFACTURING Sixth Edition」P.719
参考資料2;特開平8-332229号公報
参考資料3;特開平8-336597号公報
参考資料4;特開平9-285548号公報
参考資料5;本件特許出願に添付された優先権証明書及び米国明細書No796009
参考資料6;本件特許発明のモデル例を撮影した写真
参考資料7;特開平2-174859号公報
III.訂正請求について
i)上記訂正は、特許明細書の請求項1における「第1端部及び第2端部と該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する管状部材を具備し、該壁表面は複数の交差する細長い部材によって形成されており、該細長い部材の少なくとも幾つかは該管状部材の第1端部と第2端部との中間で相互に交差していることと、該交差している細長い部材は複数の薄いバーであり、各バーは均一な薄い長方形の断面形状を有することと、
該管状部材は内腔を有する身体通路内への該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有していることと、
該管状部材は該管状部材の内側から半径方向外方に伸び広げる力をかけられるとき第2の伸張した直径を有し、該第2の直径は可変であり且つ該管状部材に加えられた力の量に依存していることを特徴とする伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ。」を「第1端部及第2端部と該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する管状部材を具備し、該壁表面は複数の交差する細長い部材によって形成されており、該細長い部材の少なくとも幾つかは該管状部材の第1端部と第2端部との中間で相互に交差していることと、該交差している細長い部材は複数の薄いバーであり、各バーは均一な薄い長方形の断面形状を有することと、
該管状部材は内腔を有する身体通路内への該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有していることと、
かつ該壁表面を形成する複数の交差する細長い部材は、肉薄の壁をエッチングすることによって該交差する細長い部材間に開口を設けることによって形成されたものであり、これにより複数の該交差する細長い部材は相互に一体的に形成されていることと、および
該管状部材は該管状部材の内側から半径方向外方に伸び広げる力をかけられるとき第2の伸張した直径を有し、該第2の直径は可変であり且つ該管状部材に加えられた力の量に依存していることを特徴とする伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ。」に訂正すると共に(以下、この訂正を訂正1という。)、特許明細書の請求項2の削除を求めるものである(以下、この訂正を訂正2という。)
ii)そこで、これらの訂正について以下検討する。
(a)上記訂正の1は、特許明細書の請求項1に記載された、管状部材の壁表面を形成する複数の交差する細長い部材が、エッチングにより形成されているものであるという要件をさらに付加するものであり、これにより、特許明細書の請求項1における管腔内脈管移植片又はプロテーゼを構成する管状部材の構成がより限定されているから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書の発明の詳細な説明における「好ましくは、管状部材71は最初肉薄のthin-walled)ステンレス鋼管であり、そして交差するバー78と79間の開口82は慣用のエッチングプロセス、例えば電機機械的またはレーザーエッチングにより形成され、その際得られる構造は複数の交差する細長い部材78,79を有する管状部材である。」との記載(公告公報第10欄34から41行)に基づくものであり、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正である。
この点に関して、本件無効審判請求人が新規事項の付加に相当する旨主張する根拠は、管状部材が該エッチングにより形成されたことに基づく被請求人が主張する作用効果は、訂正前の明細書に記載がないというものであるが、該作用効果は、答弁書において述べているものであって、訂正後の明細書において該作用効果を記載として付加するものではないから、上記訂正を新規事項の付加に相当するものとすることはできない。
さらに、上記訂正の1は特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
(b)また、上記訂正の2は、請求項の削除に係るものであるから、当然特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、さらに、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでもない。
(c)一方、これらの訂正による訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が、特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか否かについては、無効審判請求人の訂正後の発明に対する主張に基づき、以下、検討する。
(1)の主張について、
甲第1号証の発明は、移植プロテーゼ部材の固定法に関するものであり、甲第1号証のクレームにおいては、
「1.生体に移植プロテーゼ装置を迅速、確実に固定する方法であって、
A 移植すべきプロテーゼ装置を、体液に適合し放射状に伸張する変形可能で無害な物質の少なくとも1以上の透かし管状スリーブに固定し、このスリーブは移植すべき部材に対応する径をなし、プロテーゼ部材に取り付けられるようになっていて、上記スリーブの周縁に対し角度を持って設けられた、縦方向に伸張するリボン状をなす複数の波状部を含み、複数の千鳥状をなして緊密にスペースをとった孔を形成して相互結合している、
B スリーブとプロテーゼ装置を予定の移植位置に導入し、
C 上記の位置の組織壁に対しスリーブを放射状に外方に向けて伸張し、スリーブのリボン状をなす部分とそれとを緊密に密着させ、それにより組織はスリーブがこれをカバーするようにスリーブを通し且つこの周りを成長することを含む方法。
2.クレーム1の方法であって、
A 移植すべきプロテーゼ装置は脈管移植片であり、
B 上記の透かしスリーブは上記の脈管移植片の各端部に部分的に挿入され、固定され、スリーブがそこから伸張する露出部分を残しており、
C 上記移植片はスリーブ伸張ツールを受けるために縦長に開口し、
D 上記プロテーゼ装置とスリーブは、上記スリーブの露出部分を切断された移植すべきホスト脈管に導入することによりホスト脈管に結合され、および
E スリーブは放射状に外方に向けて伸張し脈管と移植片の壁と緊密に密着することにより、
更に特徴付けられる方法。」と記載され(クレーム1及び2)、また、要約においては、「生体に移植プロテーゼを迅速、確実に固定することを促進するための装置と方法である。この装置は変形可能な物質の管状スリーブを含み、これにプロテーゼ部材を固定し、管状スリーブは放射状に伸張して組織周囲と緊密に密着する。心臓弁、脈管移植片などのような固定装置やプロテーゼ部材は、手術前に集合体とする。この集合体は手術前に迅速に移植位置に導入配置され、伸張ツールの使用で変形可能なスリーブの拡張で適所に固定される。」と記載されている。
そして、この管状スリーブの使用に関して、図1に示されるように、分岐した人工的な大動脈ダクロン移植片10の端部と切断された大動脈11の端部は、突き合わせ関係で、伸張した固定スリーブ(管状スリーブ)により固定される旨(第2欄14〜27行)、管状スリーブ16は、変形可能な金属薄板に、千鳥状の連続するスリットを平行に入れた後、スリットに対し直交方向に引きのばすことにより、スリットが拡張されそれが開口となりこの結果形成され、伸張により均一に分布した菱形状開口23が形成され、また、伸張された金属板は好ましくはスリーブ状にした後、形作るのが良い旨(第2欄56〜第3欄2行)、第5図に示されるように、スリーブのリボン状の部分は、スリーブの周縁から所定の角度をもって伸張し、その結果、スリーブ周縁には、多数の突出エッジが形成され、その突出エッジが組織の壁にはめ込まれる旨(第3欄2行〜6行)、及びスリーブの伸張は、スリーブ内に配置した伸張ツールによる旨(第2欄33〜51行)記載されている。
甲第2号証においては、拡張可能な管腔内移植体について記載され、該移植体は、経管的血管形成術後の狭窄病変部の弾性反跳を予防することができ、また、この移植体は、管状ワイヤメッシュで、改造した血管形成用カテーテルに装着され、血管形成用バルーンを狭さくした血管中で膨張させると、ワイヤーメッシュがバルーンと共に拡大し、バルーンの収縮除去後も拡大したまま残る旨(73頁左欄及び右欄1行〜25行)、及びこの移植体はステンレスワイヤーの連続織物から成り、ワイヤーの交差部は銀で固定してあり、管に半径方向の破壊に対する比較的強い抵抗と、バルーンの最大膨張により得られた直径の維持能力を付与する旨(73頁物質及び方法の項3行〜6行)の記載がある。
甲第3号証においては、拡張可能な肝内門脈シャントステントについて記載され、該ステントは拡張可能なワイヤーメッシュ管から成る旨(821頁27行〜33行)、また、このステントはステンレスワイヤーを手で編んだもので、メッシュの交点は低融点銀はんだではんだ付けされている旨(822頁右欄、ステントの構造の項)記載され、さらに、このステントの使用法に関して、「ステントを、バルーン径10mmの血管形成カテーテルのたたんだバルーンの周りに収縮した状態で沿わせた。・・・・バルーンの膨張で、ステントをバルーンが到達する最大径に拡張した。移植体は、バルーンの収縮除去後も拡張したままとどまった。」(822頁左欄28行〜36行)と記載されている。
しかしながら、まず、甲第1号証についていえば、甲第1号証の管状スリーブは、移植プロテーゼを生体に固定するためのもので、血管にも適用され、また、管状スリーブの内側から伸び広げる力をかけてその直径を伸張させるものであって、
該管状スリーブは、金属薄板に千鳥状の連続するスリットを平行に入れ、この金属板をスリットに対し直交方向に引き延ばすことで、前記スリットは拡張されて開口になり、この結果形成されるものであり、この管状スリーブの形成においてスリットを入れた金属板を管状にしその後伸張させる場合も含み得るが、この伸張前の管状スリーブはその管面に千鳥状のスリットが形成されているだけである。これに対して、訂正後の請求項1の発明の伸張前の管状部材は、その壁表面が複数の交差する細長い部材により形成され、該細長い部材間にはエッチングにより形成された開口が形成されているのであるから、この状態の管状部材は、管面に単にスリットが形成されているだけの上記甲第1号証の管状部材とは異なるものとするのが妥当である。
一方、甲第1号証の管状部材は、クレーム1、要約及び第1図の記載からみて、あらかじめ移植するプロテーゼに固定され、その後、脈管等の組織の所定位置に導入されるものであり、特にクレーム1における「このスリーブは移植すべき部材に対応する径をなし、プロテーゼ部材に取り付けられるようになっていて、上記スリーブの周縁に対し角度を持って設けられた、縦方向に伸張するリボン状をなす複数の波状部を含み、複数の千鳥状をなして緊密にスペースをとった孔を形成して相互結合している」なる記載からみると、上記プロテーゼに管状スリーブが固定された状態において、すでに管状スリーブは、リボン状をなす複数の波状部を有し、複数の千鳥状をなして緊密にスペースをとった孔が形成されていることは明らかであって、これは、管状スリーブの当初の状態すなわち金属板に千鳥状のスリットを設けた状態から、すでに伸張された状態になっていることを意味し、このことは、移植片を移植する様子を表す第1図の記載とも符合する。しかも、この伸張された状態においては、突出エッジがすでに形成されていることは明らかであり、この状態で、脈管等の端部に挿入されるとするのが妥当である。
これに対して、訂正後の請求項1の発明における管状部材は、伸張されて第2の直径になるが、同請求項1における「管状部材は身体通路内へ該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有している」との記載からみると、管状部材が管腔内に送り込まれる際には、管状部材は伸張前の第1の直径を有しており、上記したように、この状態の管状部材は、エッチングによって該交差する細長い部材間に開口を設けることによって形成されているのであるから、その壁表面はほぼ平滑であり、突出エッジなどは形成されてはいないことは明らかである。
してみると、両者における管状スリーブと管状部材は、管腔内に送り込む際の形状もそれぞれ相違するものとせざるを得ない。
甲第2及び3号証の移植体あるいはステントは、ステンレスワイヤーの連続織物からなるメッシュ管であって、一方本件訂正後の請求項1の管状部材の壁表面は、薄い長方形の断面形状を有する細長い部材であって、ワイヤーは通常このような断面形状は有していないから、まず、この点で本件訂正後の請求項1の発明と甲第2,3号証の発明とは相違する。また甲第2及び3号証の移植体あるいはステントは、そのワイヤ交差部は銀はんだではんだ付けされているとするのが相当であり、これに対して本件訂正後の請求項1の管状部材の壁表面においては、エッチングにより交差する細長い部材間に開口が形成されているのであるから、銀はんだ等は使われておらず、その壁表面には突出部分がなく、この点でも異なる。
したがって、本件訂正後の請求項1の発明における管腔内脈管移植体又はプロテーゼを構成する管状部材は、甲第1〜3号証のいずれにも記載されておらず、本件訂正後の請求項1の発明はこれら甲各号証に記載された発明ではない。
(2)の主張について、
甲第1〜3号証の記載は上記したとおりであり、本件訂正後の請求項1の発明における管腔内脈管移植体又はプロテーゼを構成する管状部材は、甲第1〜3号証のいずれにも記載されていない。
甲第4号証においては、形状記憶合金から円筒形等の形状を有する部材について記載され、該部材は、本件訂正後の請求項1の管状部材の壁表面と同様な開口を有し、該開口はエッチング等により形成され、さらに、該部材は、伸張可能なものではあるが、該部材は、パイプとパイプの接合及びシーリング手段における打ち込み要素として使用するものであり、甲第4号証においては、該部材を管腔内脈管移植片又はプロテーゼとして使用することを示唆する記載は全くなく、また、該部材の伸張は、形状記憶合金が、加熱により記憶された形状に自立的に復帰することを利用するものであり、伸張された寸法は可変ではない。一方、本件訂正後の請求項1の管状部材は、管状部材の内側から伸び広げる力を与えることによって伸張するもので、この伸び広げる力の量に依存して管状部材の直径は可変であるから、この点でも相違するものである。
また、甲第5号証においては、形状記憶合金を使用したコイル状ステントについて記載があるが、このステントの生体挿入時の形態は単なるワイヤであり、挿入後コイル形状に変形するものであるから、本件訂正後の請求項1の発明における管状部材の伸張前又は後の形状とは全く相違し、しかも、甲第5号証と同様に形状記憶合金を使用するものであるから、変形後のコイルの直径も可変ではない点でも本件訂正後の請求項1の管状部材とは明確に異なる。
してみると、甲第1〜5号証のいずれにおいても、本件訂正後請求項1の発明における管腔内脈管移植片又はプロテーゼを構成する管状部材は記載されていない。ただ、甲第4号証には、上記したように、本件訂正後の請求項1の管状部材の壁表面における開口と同様な開口を有する部材が記載されてはいるが、該部材は、生体とは全く別異の用途であるパイプとパイプの接合及びシーリング手段における打ち込み要素として使用するものであり、また、この部材は伸張後の寸法が可変ではない点で、甲第1〜3号証の管状スリーブ、移植体及びステントとは機能的にも異なるから、甲第4号証の部材を、甲第1〜3号証の管状スリーブ、移植体及びステントに代えて用いることは当業者において容易には想到し得ず、さらに甲第5号証のステントは、生体挿入時、単なるワイヤー形状であって、生体の所定位置でコイルに変形するのであって、その形状は、甲第4号証の部材とは全く異なるものであり、それに加えて、甲第4号証においては、甲第4号証の部材が生体とは全く別異の用途に用いられるものであるから、これらの点からみれば、甲第4号証の部材を、甲第5号証のステントに代えて用いることも当業者が容易に想到できないとするほかない。
しかも、特に、本件訂正後の請求項1の管腔内脈管移植片又はプロテーゼを構成する管状部材の壁表面においては、エッチングにより交差する細長い部材間に開口が形成されているのであるから、その壁表面は突出部分がなく、管腔内脈管移植片又はプロテーゼを脈管内を移動させるとき、組織を傷つけることがないという効果を奏するものである。これに対して、甲第1号証の管状スリーブは、上記したように、プロテーゼに管状スリーブが固定された状態において、すでに管状スリーブは、伸張され、突出エッジがすでに形成されていることは明らかであり、この状態で脈管内を移動させれば組織を傷つける恐れがあるばかりか、甲第1号証には、管状スリーブを脈管内で移動させること自体記載がないものである。また、甲第2,3号証の移植体及びステントもワイヤ交差部を銀はんだではんだ付けするものであり、やはり、このはんだによる突出部が形成され、脈管内を移動させるとき、組織を傷つける恐れがあるものである。さらに、甲第4号証においては、上記したように生体内に適用すること自体記載がなく、また甲第5号証のステントは、形状記憶合金からなるものであって、本件訂正後の請求項1の管状部材のように、伸張した場合の直径を制御できないものであり、脈管内への移植に際し、脈管径の大小にに対応できないものである。
したがって、本件訂正後の請求項1の発明の効果は、甲第1〜5号証には示唆されない顕著な効果を奏するとすべきである。
なお、参考資料2〜4は単に、脈管に対する固定手段を有する伸張可能なステントに関する記載があるだけで、該記載は、本件訂正後の請求項1の発明における上記した効果を否定するものではない。また、無効審判請求人は、参考資料5及び7として、本件特許出願の優先権証明書に添付された米国特許出願明細書及び本件特許出願に係る公開公報を提示して、本件発明は、本件訂正後の請求項1の発明においては、管状部材の被覆上に固定手段を設けることを排除していない旨主張しているが、被覆は通常柔軟な部材からなり、この被覆上に固定手段が設けられていても、該固定手段は、甲第1〜3号証のように金属の突出部ではないから、管状部材の脈管移動中組織を傷つけるものではなく、この参考資料5及び7も、訂正後の請求項1の発明における上記効果を否定するものではない。さらに、参考資料6は、本件訂正後の請求項1の管状部材が、伸張により突出エッジが形成されることを示そうとするものではあるが、上記したように、本件訂正後の請求項1の管状部材は、伸張前においては、その壁表面に突出部分がなく、脈管内をその組織を傷つけることなく移動し得るものであり、該効果は伸張後に奏されるものではないから、この甲第6号証も上記した訂正後の請求項1の発明における効果を否定するものではない。
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1の発明は、参考資料2〜7号証を参酌しても甲第1〜5号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
(3)の主張について、
甲第6号証に係る先願明細書においては、カテーテルを介して血管等の身体管に挿入される補綴ステントに関し、該補綴ステントは伸張可能であることが記載されているが、該補綴ステントは高分子材料からなる網組フィラメントからなるものであって、本件訂正後の請求項1の管状部材のように、その壁表面が断面形状が薄い長方形を有す複数の細長い部材で構成されてはおらず、またエッチングにより上記複数の交差する細長い部材間に開口が形成されているものではないから、この甲第6号証の補綴ステントは、本件訂正後の請求項1の管腔内脈管移植片又はプロテーゼとは異なる。 したがって、本件訂正後の請求項1に記載された発明と甲第6号証に記載された発明とはこの点で同一発明とはいえない。
記載不備について
本件無効審判請求人は、本件訂正後の請求項1の記載において、管状部材の壁表面の開口がエッチングによって形成される旨記載されているのに対し、発明の詳細な説明によれば、金網管を用いても良いものとし、また、開口の形成方法として、薄いバーをはんだ付けや溶接などで固定しても良いとされており、このような記載は請求項1の訂正部分と矛盾し、本件特許発明の構成が特定できず、また当業者が容易に実施できない旨主張しているが、本件訂正後の請求項1においては、管状部材の壁表面が、薄いバーからなる複数の交差する細長い部材からなること、及び該壁表面の開口はエッチングにより開口が形成されることが明示されており、この請求項1の記載によれば、発明の詳細な説明に記載された金網管は明らかに請求項1には含まれず、また、開口の形成方法として薄いバーをはんだ付けあるいは溶接で形成することも包含しないことは明確である。してみれば、上記無効審判請求人が指摘する発明の詳細な説明の記載により、本件訂正後の請求項1に記載された発明の構成が特定できないとすることはできず、また同発明を容易に実施し得ないとすることもできない。
また、本件無効審判請求人は、参考資料1の記載を挙げ、本件訂正後の明細書に記載されるレーザーエッチングを用いて開口を形成する場合には、管状部材は、熱硬化により伸張しにくくなるばかりか、無理に伸張すれば、破損してしまい、この点で、本件訂正後の請求項1の発明は実施不能である旨主張しているが、参考資料1の記載は、どのような対象について、どのような条件でレーザー処理したのか、また、どのような熱影響が生じるのか全く明らかではなく、この記載のみによって、本件訂正後の請求項1の発明が実施不能であるとすることはできない。
以上のとおりであるから、本件訂正請求についての本件無効審判請求人の上記主張はいずれも採用できず、本件訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとするのが相当である。
したがって、本件訂正請求は、特許法第134条第2項、並びに同法同条第5項において準用する同法第126条第2項及び同3項の規定に適合するから(なお、本件訂正請求については平成5年法が適用される)、当該訂正は認容できる。
IV.本件特許発明を無効にすべきか否かについて、
上記のとおり、本件訂正請求に係る訂正は認容できるものであるから、本件特許発明の要旨は、訂正された明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの以下のものと認める。
「第1端部及第2端部と該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する管状部材を具備し、該壁表面は複数の交差する細長い部材によって形成されており、該細長い部材の少なくとも幾つかは該管状部材の第1端部と第2端部との中間で相互に交差していることと、該交差している細長い部材は複数の薄いバーであり、各バーは均一な薄い長方形の断面形状を有することと、
該管状部材は内腔を有する身体通路内への該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有していることと、
かつ該壁表面を形成する複数の交差する細長い部材は、肉薄の壁をエッチングすることによって該交差する細長い部材間に開口を設けることによって形成されたものであり、これにより複数の該交差する細長い部材は相互に一体的に形成されていることと、および
該管状部材は該管状部材の内側から半径方向外方に伸び広げる力をかけられるとき第2の伸張した直径を有し、該第2の直径は可変であり且つ該管状部材に加えられた力の量に依存していることを特徴とする伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ。」
これに対し、上記III.ii)(c).で述べた様に、上記訂正は適法なものであり、また、訂正後の請求項1の発明及び明細書については、本件無効審判請求人の上記(1)〜(3)の主張及び記載不備に関する主張は採用できないものであるから、当然、上記訂正が認容された本件特許について、本件無効審判請求人の主張する無効理由によって無効にすることはできない。
V.したがって、本件訂正請求に係る訂正は認容でき、また、本件無効審判請求人の主張する無効理由によっては本件特許を無効にすることはできない。さらに、他に本件特許を無効にすべき理由を見いだせない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ
(57)【特許請求の範囲】
1.第1端部及び第2端部と、該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する管状部材を具備し、該壁表面は複数の交差する細長い部材によって形成されており、該細長い部材の少なくとも幾つかは該管状部材の第1端部と第2端部との中間で相互に交差していること、
該交差している細長い部材は複数の薄いバーであり、各バーは均一な薄い長方形の断面形状を有すること、
該管状部材は内腔を有する身体通路内への該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有していること、
かつ該壁表面を形成する複数の交差する細長い部材は、肉薄の壁を有する管状体をエツチングすることによって該交差する細長い部材間に開口を設けることによって形成されたものであり、これにより複数の該交差する細長い部材は相互に一体的に形成されていること、および
該管状部材は該管状部材の内側から半径方向外方に伸び広げる力をかけられるとき第2の伸張した直径を有し、該第2の直径は可変であり且つ該管状部材に加えられた力の量に依存していることを特徴とする伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
本発明は身体通路(body passageway)又は管(duct)内で使用するための伸張性のある管腔内移植片(expandable intraluminal graft)又はプロテーゼに関するものであり(以下、「移植片」又は「プロテーゼ」は、本願発明を説明する際に、或る程度交換可能に使用される。)更に特定的には疾患により狭くなつた又は閉塞した血管を修復するための特に有用な伸張性のある管腔内脈管移植片(expandable vascular graft)又はプロテーゼに関するものである。管腔内脈管内移植(intraluminal endovascular grafting)は慣用の脈管手術に替わるものとして可能であることが実験により示された。管腔内脈管内移植には管状プロテーゼ移植片の血管への経皮挿入及びその脈管系内の所望の位置にカテーテルを介してそれを送り込むことが含まれる。慣用の脈管手術に対するこの方法の利点は欠陥のある血管を外科的に露出させ、切開し、除去し、取り替え、又はバイパスを付ける必要をなくすることを含む。
従来管腔内脈管移植片として使用されてきた構造物には、ステンレス鋼コイルバネ;伸張性のある感熱性材料から製造されたら旋状に巻かれたコイルバネ;及びジグザグパターンにステンレス鋼ワイヤから形成された伸張性ステンレス鋼ステント(stents)が包含されていた。一般に、上記の構造は共通した1つの欠点を有している。身体通路を通過するためには、これらの構造物はしぼんだ(collapsed)状態で所定の身体通路内の所望の位置に送られなければならない限り、各構造物の最終の伸張した形状にたいする有効な制御ができなかつた。例えば、特定のコイルバネ型移植片の伸張はコイルバネ構造物を製造するのに使用された特定の材料のバネ定数及び弾性率によりにより予め決定される。これらの同じフアクターはステンレス鋼ワイヤからジグザグパターンに形成されたしぼんだステントの伸張量を予め決定する。加熱すると伸張する感熱性材料から形成された管腔内移植片又はプロテーゼの場合には、伸張量は管腔内移植片の製造に使用された特定の合金の熱膨張特性により同様に予め決定される。
故に、前記した型の管腔内移植片が身体通路内の、例えば動脈又は静脈内の所望の位置で伸張させられると、移植片の伸張した寸法は変えることができない。所望の身体通路の直径を間違えて計算すると、寸法が足りない移植片は身体通路の内側表面にしつかりと取り付けられるように身体通路の内側表面に接触するのに十分には伸張されないことがある。その場合にはそれは身体通路内の所望の位置から移動して離れることがある。同様に、寸法が大き過ぎる移植片は身体通路に対して移植片により及ぼされるバネ力又は伸張力が身体通路の破壊を引き起こす程に伸張することがある。
慣用の血管手術に替わる他の方法としては、カテーテルに取り付けられた血管形成術バルーンの弾性脈管狭窄症(elastic vascular stenoses)又は遮断障害(blockages)の経皮バルーン拡大(percutaneous balloon dilation)であつた。この方法においては、血管の壁成分に剪断力をかけてそれを砕いて(disrupt)拡大された内腔を得るために、血管形成術バルーンは狭窄血管又は身体通路内で膨らまされる。アテローム性動脈硬化症に関しては、身体通路のより弾性の内側(medial)及び外膜(adventitial)層はプレーク(Plaque)の回りに伸びるが、比較的圧縮不能なプレークは変化しないままである。この方法は動脈又は身体通路の切り裂き(dissection)又は裂け(splitting)及び引き裂き(tearing)を生じ、動脈又は身体通路の脈管内膜(intima)又は内側表面はき裂(fissuring)を生じる。この切り裂きは下にある組織の“フラツプ”(flap)を形成し、これは内腔を通る血流を減少させたり内腔を閉塞することがある。典型的には、身体通路内の拡張する(distending)管腔内圧力が砕かれた層又はフラツプを所定の位置に保持することができる。バルーン拡大過程により生じた脈管内膜フラツプが伸張された脈管内膜に対して所定の位置に保持されていないならば、脈管内膜フラツプは内腔内に折れそして内腔をふさぐことがあり又は離れたり身体通路に入つたりすることすらある。脈管内膜フラツプが身体通路をふさぐ場合には、この問題を直すために直ちに手術が必要である。
バルーン拡大法は典型的には病院のカテーテル挿入室(catheterization lab)で行なわれるけれども、前記の問題のため、脈管内膜フラツプが血管又は身体通路をふさぐ場合に備えて外科医を待機させることが常に必要である。更に、脈管内膜フラツプが血管から引き裂けたり内腔をふさいだりする可能性があるため、バルーン拡大は或る極めて重要な身体通路、例えば心臓に通じている左主冠状動脈に対して行うことはできない。バルーン拡大法により形成された脈管内膜フラツプが急に左主冠状動脈の如き重要身体通路に落ち込みそしてそれをふさぐならば患者は手術を行う前に死亡することがある。
弾性脈管狭窄症のバルーン拡大に関連した追加の欠点は狭窄性病変(stenotic lesion)の弾性跳ね返り(elastic recoil)のために多くが失敗するということである。これは通常病変における高いフイブロコラーゲン含有率により起こり、そして時には拡大されるべき区域の或る機械的特性に起因する。故に、身体通路は最初はバルーン拡大法により都合良く伸張させられうるけれども、身体通路の以前に伸張させられた内腔の寸法を減少させる身体通路の跳ね返り(recoil)によりその後の早期の再発狭窄症(restenosis)が起こることがある。例えば、入り口(ostium)における腎臓動脈の狭窄症は、前記拡大力が腎臓動脈自体にかかるよりはむしろ大動脈壁にかかるため、バルーン拡大にたいして治療抵抗性であることが知られている。新生内膜線維症(neointimal fibrosis)により引き起こされる脈管狭窄症、例えば、透析路フイステル(dialysis-access fistulas)においてみられる如きこれらは、高い拡大圧力及びより大きいバルーン直径を必要とするので拡大するのが困難であることが証明された。同様な困難が移植動脈吻合狭窄症(graft-artery anastomotic strictures)及び動脈内膜切除後の再発狭窄症(postendarterectomy recurrent stenoses)の血管形成術において観察された。高安動脈炎(Takayasu arteritis)及び神経線維腫症動脈狭窄症(neurofibromatosis arterial stenoses)の経皮血管形成術は不十分な初期応答及びこれらの症状の線維症の性質(fibrotic nature)によると考えられる再発を示すことがある。
従つて、本発明の開発以前には、身体通路における狭窄症の再発を防止し;患者の心臓の左主冠状動脈の如き極めて重要な身体通路に使用することができ;身体通路壁の跳ね返りを防止し;そして管腔内移植片が可変寸法に伸張させられて移植片が所望の位置から離れるように移動するのを防止することを可能としそして伸張させられた移植片による身体通路の破壊を防止することを可能とする、伸張性のある管腔内脈管移植片及び身体通路内の内腔を伸張させるための方法及び装置はなかつた。故に、当業界では、身体通路における狭窄症の再発を防止し;心臓の左主冠状動脈の如き極めて重要な身体通路に使用することができると考えられ;身体通路の跳ね返りを防止し;身体通路内で可変寸法に伸張させられて移植片が所望の位置から離れるように移動するのを防止しそして伸張させられた移植片による身体通路の破壊を防止することができる、伸張性のある管腔内脈管移植片及び身体通路の内腔を伸張させるための方法及び装置が探し求められてきた。
本発明に従えば、前記利点は本発明の伸張性のある管腔内脈管移植片により達成される。本発明は、第1端部及び第2端部と該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する管状部材を含み、該壁表面は複数の交差する細長い部材によつて形成されており、該細長い部材の少なくとも幾つかは該管状部材の第1端部と第2端部との中間で相互に交差しており、該管状部材は内腔を有する身体通路内への該管状部材の管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有しており、そして該管状部材は該管状部材の内側から半径方向外方に伸び広げる力をかけられるとき第2の伸張した直径を有し、該第2の直径は可変であり且つ該管状部材に加えられた力の量に依存しており、それにより、該管状部材は該身体通路の内腔を伸張させるように伸張させることができるようになつている。
本発明の更なる特徴は複数の細長い部材が複数のワイヤであることができ、そして該ワイヤは該ワイヤが相互に交差するところで相互に固定される(fixedly secured)ことができるということである。本発明の追加の特徴は複数の細長い部材が複数の薄いバーであることができ、該複数の細長いバーは該バーが相互に交差しているところで相互に固定されていることである。本発明の更なる特徴は、第5図及び第6図に示されているように、管状部材がその壁表面に生物学的に不活性なコーテイングを有することができ、このコーテイングは管状部材を身体通路に固着させるための手段を含むことができることである。
本発明に従えば、前記利点は身体通路の内腔を伸張させるための方法によつても達成される。該方法は、カテーテル上に配置された管腔内移植片を、それが該身体通路内の所望の位置に隣接して配置されるまで、該身体通路内に挿入することと、該身体通路の所望の位置における該身体通路の内腔が伸張させられるまで、該カテーテルの部分を伸張させて該管腔内移植片を半径方向外方に伸張させて該身体通路と接触させ、それにより、該管腔内移植片は該身体通路がしぼんだり該伸張した内腔の寸法が減少するのを防止することを含む。
該方法の更なる特徴は管腔内移植片と接触している該カテーテルの部分をしぼませそして該カテーテルを該身体通路から除去することができることである。該方法の更なる特徴はそれと関連した伸張性のある膨張可能な部分を有するカテーテルを使用することができ、そして該管腔内移植片及び該カテーテルの部分の伸張は該カテーテルの伸張性のある膨張可能な部分を膨らますことにより達成されることである。
本発明の更なる特徴は管腔内移植片として金網管(wire mesh tube)を使用することができ、この金網管は、該管が所望の位置で身体通路内に挿入されそして所望の位置に送り込まれることを可能とする第1の所定のしぼんだ直径を有することである。本発明の他の特徴は、金網管を該身体通路内で第2の直径に伸張させることができ;該第2の伸張した直径は可変でありそして、該身体通路の所望の伸張された内径により決定され、それにより、該伸張した金網管は該身体通路内で所望の位置から移動せず且該管腔内移植片の伸張は該身体通路の破壊を引き起こさないことである。
本発明に従えば、前記利点は移植片又はプロテーゼを保持し、身体通路内へ挿入するための装置によつても達成される。該装置は、第1端部及び第2端部と該第1端部と該第2端部との間に配置されている壁表面とを有する伸張性のある管状プロテーゼとカテーテルを具備し、該壁表面は複数の交差する細長い部材によつて形成されており;該カテーテルはプロテーゼに関連した伸張性のある膨張可能な部分を有しそして該伸張性のある膨張可能な部分に前記伸張性のある管状プロテーゼを取り付け且つ保持するための手段を含み、それにより該カテーテルの伸張性のある膨張可能な部分が膨らまされると、該プロテーゼは半径方向外方に強制されて該身体通路と接触するようになつている。該装置の更なる特徴は上記取り付け及び保持手段が該伸張性のある膨張可能な部分に隣接して且つ該伸張性のある管状プロテーゼの各端部に隣接して該カテーテル上に配置されている保持器リング部材を具備することができることである。
本発明の、伸張性のある管腔内脈管移植片、そして、該移植片により身体通路の内腔を伸張させる方法及び身体通路を管腔内で強化する装置を、これまでに提唱された先行技術の管腔内移植片、それらを移植する方法及びバルーン拡大法と比較したとき、狭窄症の再発を防止する;心臓の左主冠状動脈における如き極めて重要な身体通路における移植片の移植を可能とすると考えられる;身体通路の跳ね返りを防止する;身体通路内の条件に依存して変動可能な寸法に移植片を伸張させることを可能とする:という利点を有している。
本発明を好ましい態様に関して説明するが、これは本発明をその態様に限定することを意図するものではないことを理解されたい。反対に、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲内に包含されうるようなすべての代替、修正及び均等物及び均等手段を包含することを意図する。
第1A図及び第2A図において、伸張性のある管腔内脈管移植片又は身体通路のための伸張性のあるプロテーゼ70が例示されている。用語“伸張性のある管腔内脈管移植片”及び伸張性のあるプロテーゼとは、方法、装置及び構造が血管又は身体通路の部分的に閉塞されたセグメントを伸張させるための伸張性のある管腔内脈管移植片に関連してのみならず、他の多くの型の身体通路のための伸張性のあるプロテーゼとして多くの他の目的にも使用することが出来る限りにおいて、本発明を説明する際に或る程度交換可能に使用されることは理解されるべきである。例えば、伸張性のあるプロテーゼ70は(1)トランスルミナル再疎通(transluminal recanalization)により開かれているがしかし内部支持体の不存在下ではつぶれそうな閉塞された動脈内の支持移植片配置、(2)手術不能のガンにより閉塞された縦隔静脈(mediastinal vein)及び他の静脈を通るカテーテル通路に従う同様な使用;(3)門脈高圧症(portal hypertension)にかかつている患者の門脈と肝臓静脈間のカテーテルで作られた肝内の連通の強化;(4)食道、腸、尿管、尿道の狭窄化の支持移植片配置(supportive graft placement);及び(5)再開された及び以前に閉塞された胆管の支持移植片強化;の如き目的にも使用することが出来る。従つて、用語“プロテーゼ”の使用は種々のタイプの身体通路内の使用法を包含しそして用語“管腔内脈管移植片”の使用は身体通路の内腔を伸張させるための使用を包含する。更に、この点について、用語“身体通路”は前記した如き人間の身体内の管及び人間の脈管系(vascular system)内の静脈、動脈又は血管を包含する。
更に第1A図を参照すると、伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70は、第1端部72及び第2端部73と該第1端部72と該第2端部73の間に配置された壁表面74を有する管状部材71を具備する。好ましくは、壁表面74は複数の交差する細長い部材75,76により形成され、細長い部材75,76の少なくとも幾つかは交差点77で示された如き管状部材71の第1及び第2端部72,73の中間で相互に交差している。管状部材71は、後に詳細に説明する如く、内腔81を有する身体通路80への管状部材71の管腔内送り込みを可能とする第1直径dを有する。第1B図を参照すると、後に更に詳細に説明する如く、半径方向外方に伸び広げる力が管状部材71の内側から加えられると管状部材71は第2の伸張した直径d′を有し、該第2直径d′は寸法が可変でありそして管状部材71に加えられた力の量に依存する。
第1A図及び第1B図を参照すると、管状部材71の壁表面74を形成する細長い部材75,76は人間の身体及び脈管移植片又はプロテーゼ70が接触しうる体液(示されていない)と適合性であるいかなる適当な材料であつてもよい。細長い部材75,76は又、管状部材71が第1A図に示された形状から第1B図に示された形状に伸張させられることを許容するとともに更に管状部材71を第1B図に示された拡大された直径d′を有するその伸張された形状を保持することを許容するのに必要な強度及び弾性特性を有する材料から作られなければならない。管状部材71を製造するのに適当な材料には銀、タンタル、ステンレス鋼、金、チタン又は前記した必要な特性を有する適当なプラスチツク材料が包含される。好ましくは、細長い部材75,76はステンレス鋼から作られる。好ましくは、第1A図及び第1B図に示された細長い部材75,76はシリンダ状断面を有する小さな直径のステンレス鋼ワイヤである。各細長い部材75,76は三角形、四角形、長方形、六角形等の如き他の断面形状を有することもできることはもちろん理解されるべきである。更に、複数の細長い部材75,76は、該細長い部材75,76が例えば交差点77における如き、相互に交差するところで相互に固定して取り付けられる(fixedly secured)ことが好ましい。細長い部材75,76は慣用の方法で、例えば、溶接、はんだ付け又は接着(gluing)、例えば適当なエポキシ接着材(epoxy glue)による接着によつて相互に固定的に取り付けることができる。しかしながら、交差点77は銀ではんだ付けされていることが好ましい。細長い部材75,76を相互に固定的に取り付けることによつて、管状部材71は半径方向押しつぶしに対する比較的高い抵抗を与えられ、そして管状部材71は第1B図に示された如きその拡大された直径d′を保持する能力を有する。好ましくは、管状部材71は、一般に金網管(wire mesh tube)として示すことができるものを形成するように、十字形管状パターンで織られた連続的なステンレス鋼ワイヤで作られる。
管状部材又は金網管71を製造する場合に、それは第1A図に示された直径dを有する形状に最初作ることができる。あるいは、それは最初の直径dより大きい直径に作り、作つた後第1A図に示された直径dを有するように注意深くしぼませることができる。管状部材又は金網管71をしぼませる期間中隣接した細長い部材75,76の重なりが回避されるように注意しなければならない。管状部材又は金網管71が第1B図に示された形状に伸張されると第1及び第2端部72及び73間の距離はもちろん減少することは理解されるべきである。
第2A図及び第2B図を参照すると、伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70の他の態様が示される。同じ参照番号が使用されそして第1A図及び第1B図に前記した要素に適用可能である。第2A図及び第2B図の管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70は、複数の細長い部材75,76が複数の薄いバー78,79であり、これらのバーはバー78,79が相互に交差するところで好ましくは相互に固定的に取り付けられているという点で、第1A図及び第2A図に関連して前記したそれとは異なる。バー78,79は好ましくは薄い長方形断面形状を有しており、そして例えば、溶接、ろう付け、はんだ付けの如き慣用の方法によって相互に接合されていてもよく、又は相互に一体的に形成されていてもよい。好ましくは、管状部材71は最初肉薄の(thin-walled)ステンレス鋼管であり、そして交差するバー78と79間の開口82は慣用のエツチングプロセス、例えば電気機械的又はレーザーエツチングにより形成され、その際得られる構造は複数の交差する細長い部材78,79を有する管状部材71である。第2A図の移植片又はプロテーゼ70の態様は半径方向外方に伸び広げる力が管状部材71の内側から加えられると、第2B図に示されそして第1B図に関連して前記した如き伸張された形状を同様にとることができる。更に第2A図及び第2B図の脈管移植片又はプロテーゼ70の態様は一般に金網管として示すこともできることは理解されるべきである。
本発明の移植片又はプロテーゼを保持し、身体通路内へ挿入する方法及び装置を、主として、第3図及び第4図を参照しながら、更に詳細に説明する。再び、該方法及び装置は人間の脈管系の動脈、静脈又は血管の如き身体通路の内腔を伸張させるためのみならず、前記した方法を行って前記した如き他の身体通路又は管を管腔内で強化する(intraluminally reinforce)のにも有用であることが理解されるべきである。第1A図又は第2A図に関して前記した型のものであつてもよい伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70はカテーテル83上に配置され又は取り付けられる。カテーテル83はそれに関連した伸張性のある膨張可能な部分84を有している。カテーテル83は伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼをカテーテル83の伸張性のある膨張可能な部分84に取り付け及び保持するための手段85を含む。好ましくは、取り付け及び保持手段85はカテーテル83の伸張性のある膨張可能な部分84に隣接してカテーテル83上に配置された保持器リング部材86を具備し、そして保持器リング部材86は伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70の各端部72,73に隣接して配置されている。保持器リング部材はカテーテル83と一体的に形成されるが、後に詳細に説明する如く、移植片又はプロテーゼ70が身体通路80の内腔81に挿入されるときそれを保護及び保持するために、カテーテル83の先導チツプ87に隣接した保持器リング部材86はカテーテルチツプ87から遠ざかる方向に登りこう配を持つていることが好ましい。残りの保持器リング部材86は身体通路80からのカテーテル83の容易な除去を確実にするためにカテーテル83のチツプ87から遠ざかる方向に下りこう配を持つている。伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ70が前記した如くカテーテル83上に配置された後、移植片又はプロテーゼ70及びカテーテル83は慣用の方法で身体通路80のカテーテル挿入(catheterization)により身体通路80内に挿入される。
慣用の方法においては、カテーテル83及び移植片又はプロテーゼ70は身体通路80内の所望の位置に送り込まれ、そこで管腔内移植片70を経由して身体通路80の内腔81を伸張させることが望まれ又はそこでプロテーゼ70を移植することが望まれる。カテーテル83及び移植片又はプロテーゼ70が身体通路内の所望の位置に送り込まれることを確実にするために、X線透視検査(fluoroscopy)及び/又は他の慣用の方法を使用することが出来る。次いでプロテーゼ又は移植片70はカテーテル83の伸張性のある膨張可能な部分84を伸張させることにより伸張せしめられ、それによりプロテーゼ又は移植片70は身体通路80と接触するように半径方向外方に強制される。この点について、カテーテル83の伸張性のある膨張可能な部分は慣用の血管形成術バルーン88であることが出来る。プロテーゼ又は移植片70の所望の伸張が終了した後、血管形成術バルーン88はしぼまされ、又は収縮させられ、そしてカテーテル83は慣用の方法で身体通路80から除去することができる。所望により、それに移植片又はプロテーゼ70が配置されているカテーテル83は最初慣用のテフロンさや89に包まれていてもよく、さや89はプロテーゼ又は移植片70の伸張の前にプロテーゼ又は移植片70から引っ張り離される。
プロテーゼ又は移植片70の管状部材71は、金網管又は管状部材71が前記した如く身体通路80内に挿入されるのを可能とするために、最初は、第1A図及び第2A図に関連して記載された如き第1の所定のしぼまされた直径dを有することに留意するべきである。前記した目的でプロテーゼ70を身体通路80内に移植することを望む場合には、金網管又はプロテーゼ70は第2直径d′に伸張させられ、そして第2直径d′は可変でありそして身体通路80の内径により決定される。従つて、伸張させられたプロテーゼ70は血管形成術バルーン88が収縮させられると身体通路80内の所望の位置から移動することが出来ず、プロテーゼ70の伸張は多分身体通路80の破断(rupture)を引き起こさないであろう。
狭窄症の区域を有する身体通路80の内腔81を伸張するのに伸張性のある管腔内移植片70を使用することが所望される場合には、血管形成術バルーン88による管腔内脈管移植片の伸張は狭窄症区域の制御された拡大を可能とし、同時に、脈管移植片70の制御された伸張を可能とし、それにより脈管移植片70は身体通路80がしぼんだり、先に伸張させられた内腔81の寸法が減少したりするのを防止する。この場合も、管腔内脈管移植片70の第2の伸張させられた直径d′は可変であり、そして身体通路80の所望の伸張させられた内径により決定される。かくして、伸張性のある管腔内移植片70は血管形成術バルーン88が収縮しても身体通路80内の所望の位置から離れるように移動せず、管腔内移植片70の伸張は身体通路80の破断を引き起こさないようである。内膜フラツプ又は裂溝(fissure)が身体通路80内で移植片70の位置に形成されているならば、移植片70はこのような内膜フラツプが身体通路80へと内方に折り込まれ得ないこと及びゆるく引き裂けたり身体通路80を通つて流れたりしないことを確実にする。左主動脈の部分の内腔を伸張させるために前記した方法で移植片70を使用する情況においては、内膜フラツプは心臓にはいることができずそして患者の死を引き起こすことはできないと考えられる。
移植片70を伸張させるために血管形成術バルーン88を1回しか膨らます必要はないので、トランスルミナル血管形成術(transluminal angioplasty)期間中内皮の表皮はく落(endothelial denudation)の程度がバルーン膨らまし時間に比例している限りは、より多くの量の内皮、又は内膜の内側層又は身体通路の内側表面が保存されると考えられる。更に、理論上は、移植片70の伸張させられた形状においては可能性として内皮の80%が移植片70の開口82をとおして露出されるので、保存される内皮(preserved endothelium)の量は大きいであろう。更に、移植片70の細長い部材75,76,78,79間の内皮の損なわれていないパツチが実験的研究により示された如く迅速な多中心内皮化パターン(multicentric endothelialization pattern)をもたらしうると考えられる。
本発明は例示されそして説明された構造、操作の詳細そのもの、材料そのもの又は態様に限定されるものではなく、修正及び均等物又は均等手段が当業者には明らかであることは理解されるべきである。例えば、プロテーゼ又は移植片を伸張させるための手段はカテーテル上に配置された複数の流体圧作動式硬質部材であることができ、又は複数の血管形成術バルーンはがプロテーゼ又は移植片を伸張させるのに使用されうる。従つて、本発明は特許請求の範囲のみによつて限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
第1A図は身体通路内への移植片又はプロテーゼの送り込みを可能とする第1の直径を有する身体通路のための伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼの斜視図である。
第1B図は身体通路内に配置されたときその伸張された形状にある第1A図の移植片又はプロテーゼの斜視図である。
第2A図は身体通路内への移植片又はプロテーゼの管腔内送り込みを可能とする第1の直径を有する、身体通路のための伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼの他の態様の斜視図である。
第2B図は身体通路内に配置されたときその伸張された形状において示された第2A図の移植片又はプロテーゼの斜視図である。
第3図は、第1A図及び第2A図に示された形状にある移植片又はプロテーゼを保持し、身体通路内へ挿入するための装置の断面図である。
第4図は、第1B図及び第2B図に示された形状にある移植片又はプロテーゼを保持している上記装置の断面図である。
第5図及び第6図は移植片又はプロテーゼがその上にコーテイングを有している、身体通路のための移植片又はプロテーゼの斜視図である。
図において、70…伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ、71…管状部材、72…第1端部、73…第2端部、74…壁表面、75,76…交差している細長い部材、77…交差点、78,79…バー、80…身体通路、81…内腔、82…開口、83…カテーテル、84…伸張性のある膨張可能な部分、85…取り付け及び保持手段、86…保持器リング部材、87…先導チツプ、88…慣用の血管形成術バルーン、89…慣用のテフロンさや、である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 1998-06-25 
結審通知日 1998-09-18 
審決日 1998-08-14 
出願番号 特願昭61-265419
審決分類 P 1 112・ 113- YA (A61F)
P 1 112・ 161- YA (A61F)
P 1 112・ 121- YA (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 淑久橋本 傅一  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 小島 隆
柿崎 良男
登録日 1992-12-14 
登録番号 特許第1719657号(P1719657)
発明の名称 伸張性のある管腔内脈管移植片又はプロテーゼ  
代理人 江角 洋治  
代理人 中澤 直樹  
代理人 安田 修  
代理人 吉原 省三  
代理人 小田嶋 平吾  
代理人 小田嶋 平吾  
代理人 小田島 平吉  
代理人 小田島 平吉  
代理人 江角 洋治  
代理人 安田 修  
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