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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A63F
審判 訂正 発明同一 訂正しない A63F
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
管理番号 1074534
審判番号 訂正2002-39206  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-09-30 
確定日 2003-03-26 
事件の表示 特許第3092171号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3092171号の請求項1に係る発明は、平成3年1月19日に特許出願され、平成12年7月28日にその設定登録がなされたところ、異議申立(2001-70918号)がなされて平成14年6月10日付けで本件特許を取り消すとの異議決定がなされ、その後、平成14年7月29日付けで東京高等裁判所に決定取消を求める訴(平成14年(行ケ)390号)がなされるとともに、平成14年9月30日付けで本件訂正審判が請求されたものである。

第2.審判請求の要旨
本件審判請求の要旨は、特許第3092171号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を、本件審判請求書に添付された訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正事項の内容は以下のとおりのものである。
i.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「図柄表示装置の変動結果が大当り図柄を表示したときに大当り遊技状態となって変動入賞装置が所定の態様で駆動されるパチンコ機の大当り図柄を判定する大当り図柄判定装置であって、前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後に終了大当り図柄が表示されるまでそのまま遊技を継続できる継続大当り図柄として設定すると共に、前記図柄表示装置の変動結果が前記継続大当り図柄を表示したときから前記終了大当り図柄に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当り遊技状態の期間中に継続信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出する継続信号導出手段を備えたことを特徴とするパチンコ機の大当り図柄判定装置。」と訂正する。
ii.訂正事項b
特許明細書の段落【0004】の【課題を解決するための手段】の記載を
「上記した目的を達成するために、本発明においては、図柄表示装置の変動結果が大当り図柄を表示したときに大当り遊技状態となって変動入賞装置が所定の態様で駆動されるパチンコ機の大当り図柄を判定する大当り図柄判定装置であって、前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後に終了大当り図柄が表示されるまでそのまま遊技を継続できる継続大当り図柄として設定すると共に、前記図柄表示装置の変動結果が前記継続大当り図柄を表示したときから前記終了大当り図柄に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当り遊技状態の期間中に継続信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出する継続信号導出手段を備えたことを特徴とするものである。」と訂正する。
iii.訂正事項c
特許明細書の段落【0024】の【発明の効果】の記載を、
「以上説明したところから明らかなように、本発明に係る大当り判定装置においては、図柄表示装置の変動結果が継続大当り図柄を表示したときから前記終了大当り図柄に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当り遊技状態の期間中に継続信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出する継続信号導出手段を備えて構成されているので、導出された継続信号を所定の表示装置等に伝達することにより、遊技場の店員がわざわざパチンコ機のところまでいって確認しなくても、継続大当り図柄が表示されたことが分かり、その後の処置を速やかに行うことができる。」と訂正する。

第3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項aは、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1における、「前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後にそのまま遊技を継続できる継続大当り図柄」、及び「前記図柄表示装置の変動結果が前記継続大当り図柄を表示したときに継続信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出する継続信号導出手段」を、それぞれ、「前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後に終了大当り図柄が表示されるまでそのまま遊技を継続できる継続大当り図柄」、及び「前記図柄表示装置の変動結果が前記継続大当り図柄を表示したときから前記終了大当り図柄に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当り遊技状態の期間中に継続信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出する継続信号導出手段」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記訂正事項b及びcは、前記特許請求の範囲の減縮に伴って訂正された特許請求の範囲の記載と、発明の詳細な説明の記載とを整合させるために訂正する、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、そして、これらの訂正事項a乃至cは、明細書及び図面に記載された事項の範囲内において訂正するものであるから新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
よって、本件訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合する。

第4.独立特許要件の適否
1.本件発明
特許第3092171号の請求項1に係る発明は、本件の訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件発明」という。)に記載された事項(前記第2.i.訂正事項a参照)により特定されるものである。

2.特許法第29条第2項違反について
(1)訂正拒絶理由の概要
当審が通知した訂正拒絶理由は、本件発明は、刊行物である下記の第1引用例乃至第3引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない、というものである。
第1引用例.特開平2-174879号公報(請求人提示の参考資料2)
第2引用例.特開昭63-168194号公報(請求人提示の参考資料3)
第3引用例.特開平2-164384号公報(請求人提示の参考資料4)

(2)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開平2-174879号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「遊技球が予め定められた入賞口に入賞することによって図柄表示装置に図柄が変動表示され、変動表示された図柄の組み合わせが予め設定された複数の図柄の組み合わせのうちのいずれかと一致する場合に、遊技球の入賞の容易な大当りモードとなるパチンコ機であって、前記大当りモードとなった時に、遊技客へ大当りモードとなった図柄の組み合わせに応じてゲーム続行可能、或いはゲーム終了等の指示を与える告知手段を備えたことを特徴とするパチンコ機。」(第1頁左下欄第5〜14行)、
「本発明は、以上のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲーム続行可能、或いはゲーム終了等の指示を、遊技客及びホールの係員の手を煩わせることなく、確実に与えることができるパチンコ機を提供することにある。」(第2頁右上欄第13〜17行)、
「第1図に示すように、本実施例のパチンコ機は、遊技盤(10)のほぼ中央に図柄表示装置(1)、遊技盤(10)の下部に大入賞口(2)及びこの大入賞口(2)を塞ぐ扉(3)、図柄表示装置(1)の下部及び大入賞口(2)の両サイドに始動入賞口(4)を備えている。図柄表示装置(1)には、可変表示体(ディスプレイ)(5)が設けられ、遊技球が始動入賞口(4)に入賞することにより、000〜999の3桁の数字が変動表示されるようになっており、遊技客が図示しない変動時間短縮ボタンを押すか、一定の時間が経過することにより、百の位、十の位、一の位の順に停止していくようになっている。」(第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第1行)、
「ディスプレイ(5)が停止し、111、222、999というように3桁ともに同じ数字が揃った場合に大当りモードとなり、大入賞口(2)を塞いている扉(3)が開き、遊技球の入賞が容易な状態となる。なお、3桁ともに同じ数字が揃わなかった場合には、大入賞口(2)を塞いでいる扉(3)は閉じたままである。本実施例にあっては、第4図に示すように、ラッキーナンバー設定回路(6)が設けられており、このラッキーナンバー設定回路(6)によりラッキーナンバー(例えば777)を予め設定しておくようになっている。なお、ラッキーナンバーは1種類に限定されず、例えば333と777というように複数設けてもよい。また、例えばボタン操作等の簡単な操作でラッキーナンバーを設定する設定手段を設けておけば、ホールの係員等がラッキーナンバーを容易に変更することができ、日によってラッキーナンバーを変更する等、このパチンコ機による遊技をより変化に富んだものとすることができる。CPU(7)では3桁ともに同じ数字が揃った場合に、揃った数字がラッキーナンバーであるかどうかを判別するようになっている。ラッキーナンバーが揃った場合には、第2図に示すようにゲーム続行可能を意味する『ゾッコウ』の文字が、またラッキーナンバー以外の数字が揃った場合には、第3図に示すようにゲーム終了を意味する『シュウリョウ』文字が大当りモードの終了時にディスプレイ(5)に表示されるようになっている。なお、告知手段により遊技客へ指示を与える時期は、本実施例のように大当りモードの終了時の他、例えば大当りモードとなった瞬間、或いは大当りモードの最中でもよく、特に限定されない。従って、遊技客は、ゲーム続行であるのか、ゲーム終了であるのかを容易に認識することができるのである。また、ホールの係員にあっては、サインボード等により遊技客にその都度指示を与える必要がなくなり、その負担が軽減されるのである。」(第3頁左上欄第10行〜左下欄第12行)。
ii.第1引用例における前記摘示の記載及び図面第1乃至4図によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「図柄表示装置(1)の変動結果が予め設定された複数の図柄の組み合わせを表示したときに大当りモードとなって大入賞口(2)が所定の態様で駆動されるパチンコ機の予め設定された複数の図柄の組み合わせを判定するCPU(7)であって、前記予め設定された複数の図柄の組み合わせのうちの一部を大当りモードの終了後にラッキーナンバー以外が表示されるまでそのまま遊技を継続できるラッキーナンバーとして設定すると共に、前記図柄表示装置の変動結果が前記ラッキーナンバーを表示したときから前記ラッキーナンバー以外に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当りモードの最中に継続信号をパチンコ機の図柄表示装置(1)の可変表示体(5)に表示するパチンコ機のCPU(7)。」

(3)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔特開昭63-168194号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「従来、パチンコ機には、各遊技機から集中管理室のコンピュータへ上タンクが空になったことを検出する検出器の信号を送って打止め管理等を行なえるようにするため、島設備内に配設される信号線に接続可能な出力部が設けられていたが、それ以外の信号に関してはパチンコ機から集中管理室へ送信するための出力部等は設けられていなかった。しかしながら、パチンコ店によっては打止め管理以外にも、例えば各パチンコ機ごとの出球数や打込球の数等を把握したいと欲することがある。そこで、そのような場合には、入賞球検出器、打込球検出器を各パチンコ店で用意してパチンコ機に装着し、島設備を通して集中管理室の管理装置に接続配線していた。一方、最近はパチンコ島の上部(パチンコ機の上方)に設けた表示装置に、パチンコ機の状態を表示するようにしているパチンコ店が増加しており、たとえば、パチンコ機における特別遊技態様(「大当り」と呼ばれる遊技状態)の発生やマグネットや静電気等による不正、金枠を開状態にしてしまう不正等を表示装置によって表示してパチンコ店の係員にすぐわかるようにしている。しかし、表示装置側は上記の状態に対応できるように入力部を備えているが、パチンコ機側は出力部を備えていなかった。」(第1頁右下欄第10行〜第2頁左上欄第15行)、
「次に、上記実施例の入出力装置10を有するパチンコ機と集中管理室の管理装置(コンピュータ)との関係について説明する。パチンコ店には、第7図に示すように複数個のパチンコ機1が横一列に配置されてなる島設備200が何列か設けられている。」(第5頁左上欄第11〜16行)、
「また、各パチンコ機1ごとにその上方に、トラブルが生じた際に係員を呼び寄せるためのフリッカランプ210が設けられ、・・・この実施例では、各パチンコ機1の上方の上記フリッカランプ210に隣接して前記特別遊技態様の発生回数等を表示可能な大当り回数表示装置230を設けてある。そして、各パチンコ機1の制御回路は、前記入出力装置10を介して上記フリッカランプ210や警報ランプ220、大当り回数表示装置230に接続されている。また、島設備200の上部には、各パチンコ機に共通の信号線群(以下、バスと称する)が配設され、このバスを介して各パチンコ機1は集中管理室の管理装置240に接続される。なお、管理装置と各パチンコ機との間の信号の入出力を可能にするため、インタフェース装置250が各パチンコ機ごとに設けられている。」(第5頁右上欄第20行〜右下欄第1行)、
「第8図に、本発明に係る入出力装置10を備えたパチンコ機1と管理装置240、フリッカランプ210、警報ランプ220および大当り回数表示装置230とを用いたパチンコ店全体のシステム構成の一例を示す。」(第5頁右下欄第11〜15行)、
「一方、パチンコ機の入出力装置10を介して出力される特別遊技態様発生検出信号(大当り信号)は、フリッカランプ210と大当り回数表示装置230へ各々供給されて、ランプの点滅と数字による回数表示が行なわれるようにされている。なお、パチンコ機1の制御系への給電は大当り回数表示装置230の側から給電線を分岐して行なうようになっている。」(第6頁右上欄第2〜9行)。
ii.第2引用例における前記摘示の記載及び図面第7、8図によれば、第2引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「大当りの発生に伴う信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられるフリッカランプ210による表示装置に導出するパチンコ機。」

(4)第3引用例に記載の発明
i.第3引用例〔特開平2-164384号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「(1)パチンコ機の管理データを集計するとともに、集計した管理データを各パチンコ機毎のデータとして記憶する演算記憶手段を有する管理装置と、各パチンコ機に対応する表示手段と,上記演算記憶手段に記憶させたデータを、対応する表示手段に表示させる操作手段とを有し、上記操作手段を操作することにより、各表示手段に、対応するデータを表示させることを特徴とするパチンコ機の情報表示装置。」(第1頁左下欄第5〜13行)、
「パチンコ機1は、第1図に示すように、機枠2の一側に額縁状の前面枠3をヒンジ4により開閉可能に蝶着し、該前面枠3の表面の上部に表示手段である表示ユニット5を取付けてある。表示ユニット5は、第2図に示すように、前面枠3の表面に取付ける本体ベース6と、該本体ベース6を包囲する包囲枠7と、本体ベース6に取付けるランプ8…と、各ランプ8を覆うようにして取付けたレンズ部材9と、データの表示を行う表示器10と、表示器の前面を覆うようにして取付けたプレート11が主要な構成部材である。」(第2頁右上欄第20行〜左下欄第11行)、
「上記した情報表示装置での処理を第4図のシステム概念図に基づいて以下に説明する。遊技店内の管理室等に設けられた管理装置39のデータ収集制御装置40は、データ収集路41を介して各パチンコ機1と電気的に接続されている。このデータ収集路41では、パチンコ機1からのセーフ玉信号、回収玉信号、補給要求信号、大当り信号等、および管理装置39からの補給信号等が送受信される。」(第3頁左下欄第12〜20行)、
「大当り回数は、大当りが発生する毎にデータ収集路41を介して管理装置39に送出された大当り信号の積算値である。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第1行)、
「上記した管理装置39における各種演算は、中央処理装置48により行われる」(第4頁右上欄第4〜5行)、
「一方、CPU49からはドライバ58を介して表示器10やランプ8へドライブ信号が送出される。」(第4頁左下欄第7〜9行)、
「大当りが発生すると、ROM51に記憶させてある大当り表示データを読み出し、表示器10に大当り表示を行なう。」(第5頁右上欄第4〜6行)、
「第9図から第12図は、表示ユニットの第2実施例である。この表示ユニット62は、ユニット制御装置63等を収納した横長な収納箱64と、収納箱64の前面を塞ぐ表示扉65よりなる。」(第6頁右下欄第12〜16行)、
「上記した表示ユニット62は、第11図に示すようにパチンコ機88の上部に載置されていて、第12図に示すようにパチンコ遊技店内に設置されている。この表示ユニット62は、パチンコ機88と別体に設けてあるので、大型の表示器77を使用することができる。」(第7頁右上欄第14〜20行)。
ii.第3引用例における前記摘示の記載及び図面第4、11図によれば、第3引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「大当りの発生に伴う信号を中央処理装置48を有する管理装置39及びパチンコ島台の上方に設けられる表示ユニット62に導出するパチンコ機。」

(5)本件発明と引用発明との対比検討
i.本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、「図柄表示装置(1)」、「予め設定された複数の図柄の組み合わせ」、「大当りモード」、「大入賞口(2)」、「CPU(7)」、「ラッキーナンバー」、「ラッキーナンバー以外」は、それぞれ、本件発明における、「図柄表示装置」、「大当り図柄」、「大当り遊技状態」、「変動入賞装置」、「大当り図柄判定装置」、「継続大当り図柄」、「終了大当り図柄」に相当する。
また、引用発明が、図柄表示装置の変動結果がラッキーナンバーを表示したときに継続信号を導出する継続信号導出手段を備えていることは明らかであり、引用発明における「図柄表示装置の可変表示体(5)」は、本件発明における「パチンコ島台の上方に設けられる表示装置」と対比して、いずれも図柄表示装置の変動結果がラッキーナンバー(継続大当り図柄)を表示したときに導出される継続信号を表示する「表示装置」である点で一致する。
請求人は、本件発明では、一旦継続大当り図柄を表示したときは、終了大当り図柄が表示されてそれに基づく終了信号が導出されるまでの間、継続大当り図柄及び終了大当り図柄以外の通常の(普通)大当り図柄が表示された場合であっても継続信号が導出されることになる旨主張するが、特許請求の範囲の記載によれば、本件発明の必須の構成要件である継続大当り図柄及び終了大当り図柄についてはその作用機能を特定する表現をもって明確に規定しているものの、それ以外の通常の(普通)大当り図柄については発明に必須の構成要件として規定していないところからして、本件発明は大当り図柄が継続大当り図柄及び終了大当り図柄のみからなる構成を含むものというべきであるから、通常の(普通)大当り図柄の存在をもって本件発明の特徴とする請求人の主張は採用できない。
ii.そうすると、本件発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違(以下、「相違点A」という。)するものと認められる。
一致点 「図柄表示装置の変動結果が大当り図柄を表示したときに大当り遊技状態となって変動入賞装置が所定の態様で駆動されるパチンコ機の大当り図柄を判定する大当り図柄判定装置であって、前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後に終了大当り図柄が表示されるまでそのまま遊技を継続できる継続大当り図柄として設定すると共に、前記図柄表示装置の変動結果が前記継続大当り図柄を表示したときから前記終了大当り図柄に基づく終了信号が導出されるまでの間の前記大当り遊技状態の期間中に継続信号を表示装置に導出する継続信号導出手段を備えたパチンコ機の大当り図柄判定装置。」
相違点A.図柄表示装置の変動結果が継続大当り図柄を表示したときの継続信号について、本件発明では、管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に該継続信号を導出する継続信号導出手段を備える構成であるのに対して、引用発明では、管理コンピュータに該継続信号を導出する構成を備えているか明らかでないとともに、図柄表示装置に該継続信号を表示するものであってパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に該継続信号を表示するものではない点。
iii.そこで、前記相違点Aについて検討する。
まず、パチンコ機の技術分野において、遊技の状況、例えば大当たり遊技状態に係る発生状況等を報知する信号を管理コンピュータやパチンコ機に設けられる表示装置に導出することは常套手段であるところ、該常套手段の一形態として、パチンコ遊技における大当りに伴う信号を管理コンピュータ及びパチンコ島台の上方に設けられる表示装置に導出するパチンコ機は、周知技術(例えば、第2引用例〔特開昭63-168194号公報〕、第3引用例〔特開平2-164384号公報〕)である。
そうすると、引用発明に示される継続信号は、大当たり遊技状態に関係して発生される信号であるから、大当たり遊技状態に関係して発生される報知信号を管理コンピュータやパチンコ機に設けられる表示装置に導出する常套手段の一形態として、前記周知技術を採用して、前記相違点Aにかかる本件の発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.そして、本件発明に係る、導出された継続信号を所定の表示装置等に伝達することにより、遊技場の店員がわざわざパチンコ機のところまでいって確認しなくても、継続大当り図柄が表示されたことが分かり、その後の処置を速やかに行うことができるという作用効果は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が当然予測できるものである。

(6)まとめ
よって、本件発明は、第1引用例及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.特許法第29条の2第1項違反について
(1)訂正拒絶理由の概要
当審が通知した訂正拒絶理由は、本件発明は、先願である第4引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない、というものである。
第4引用例.特願平2-151146号〔特開平4-44783号公報〕 (請求人提示の参考資料9)

(2)第4引用例に記載の発明
i.先願である特願平2-151146号の明細書及び図面を示す第4引用例〔特開平4-44783号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「さらに、大当たり遊技或いはラッキーナンバー遊技がそれぞれ終了した時点で、獲得球の交換あるいは継続遊技を人為的に判断してその指示を出すシステムでは、係員が表示図柄を確認する前に遊技が継続されてしまった場合には、その有効性を巡って係員と遊技者との間でトラブルが発生するおそれがあった。この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、パチンコ遊技機毎に簡単にラッキーナンバーの設定とその確認ができて、かつ遊戯中には遊技状況に応じて適切な情報を遊技者に表示し、伝達することができるパチンコ遊技情報表示システムを提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第16行〜右下欄第8行)、
「第1図に示すように遊技店には島設備1にそって複数のパチンコ遊技機2が設置されている。」(第3頁右上欄第11〜12行)、
「そして、遊戯中、その始動口への入賞または始動口への入賞の記憶に基づいて上記可変表示装置の可変表示部の表示が変化される補助遊技(可変表示ゲーム)が行われる。そして、一定時間が経過するか、またはストップボタンが押されると、その表示の変化が停止される。その停止されたときの表示図柄の態様により、大当たりか否かを決する。その結果、大当たりが発生したときには、変動入賞口が開いて多くの賞球獲得のチャンスを与える大当たりの遊技(特別遊技)が行われる。この実施例では前記表示装置の変化後の表示がぞろ目となった場合に大当たりを発生させ、そのぞろ目がラッキーナンバーとして指定された特定のぞろ目と一致したときにはラッキーナンバーの大当たりを発生させ獲得球の交換を行なわず遊技を続行させるようになっている。これらの各パチンコ遊技機2の上方に位置するところには情報表示制御部としての情報表示制御装置3が設置されている。この情報表示制御装置3は各パチンコ遊技機2の遊技に関する各種の情報を表示するもので、第2図に詳しく示すように前面中央部には遊技店が指定するラッキーナンバーを可視的に表示するラッキーナンバー表示部41、遊技状況を遊技者に知らせるメッセージ表示部42及び大当たり等を表示する表示ランプ43を有するメイン表示部4が設けられ、その右側には大当たりの発生回数を表示する大当り発生回数表示部51とラッキーナンバーの発生回数を表示するラッキーナンバー発生回数表示部52を有するサブ表示部5が設けられている。」(第3頁右上欄第20行〜右下欄第10行)、
「また、前記情報表示制御装置3の内部には、設定されたラッキーナンバを記憶する(後述)とともに該装置のメイン表示部4の表示を制御するラッキーナンバー表示制御手段31(第4図)、サブ表示部5の表示を制御したりスピーカー7からの音の発生を制御したりするメッセージ制御手段32(第4図)、及びパチンコ遊技機2の打球発射装置24を制御する発射制御手段33(第4図)等を傭えたマイクロコンピューターが内蔵されている。第3図(a)に示す中央管理装置8は前記パチンコ遊技機2及び前記情報表示制御装置3、その他パチンコ遊技店における遊技システム全体を管理制御するものある。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第12行)、
「特に前記可変表示ゲームの結果としての表示図柄がラッキーナンバー表示部41の表示(前記の例では333,555,777等)と一致したものであるときには前記メッセージ表示部42には「ラッキーダブルチャンス」などの表示とラッキーナンバーを表示するラッキーナンバー表示が行われるとともにスピーカー7からファンファーレが発声される。」(第5頁左上欄第16行〜右上欄第3行)、
「パチンコ遊技機2からは遊技状況に関する信号を前記中央管理装置8と情報表示制御装置3に出力するようになっている。」(第15頁左下欄第18〜20行)、
「また前記情報表示制御装置3は具体的には、前記中央管理装置8のラッキーナンバー設定手段88によって設定されたラッキーナンバーの記憶するとともにパチンコ遊技機2の大当り図柄信号出力手段22からの表示図柄信号を受けてその表示図柄が前記ラッキーナンバーの表示図柄と一致するか否かの判定等を行うラッキーナンバー表示制御手段31、」(第5頁右下欄第9〜16行)、
「前記パチンコ遊技機2は具体的には、補助遊技状態(可変表示ゲーム状態)を検出して前記メッセージ制御手段32に検出信号を送る補助遊技状態(可変表示ゲーム)検出手段21、前記ラッキーナンバー表示制御手段31に表示図柄信号を送る大当り図柄信号出力手段22、前記ラッキーナンバー表示制御手段31や前記中央管理装置8や大当りランプ43に大当り信号を送る大当り信号出力手段23、前記情報表示制御装置3の発射制御手段33からの制御信号を受けてメッセージ制御手段32に発射状態信号を送る発射装置24、前記情報表示制御装置3の発射制御手段33に金枠29(第1図)の開閉状態信号を送る金枠スイッチ25、前記情報表示制御装置3の発射制御手段33に前面枠28(第1図)の開閉状態信号を送る前面枠スイッチ26を具えている。」(第6頁右上欄第4〜19行)、
「また、補助遊技中、大当りが発生すると、大当り図柄信号出力手段22からの可変表示ゲームの結果としての表示図柄信号がラッキーナンバー表示制御手段31に送られ、その大当り図柄がラッキーナンバーか否か判定されて、ラッキーナンバーでなかったときはその判定信号がメッセージ制御手段32に出力され、メッセージ制御手段32からメッセージ信号がメッセージ表示部42に送られて、大当り表示が行われて通常の大当り遊技状態であることを遊技者に報知する。一方、ラッキーナンバーであったときはその判定信号がメッセージ制御手段32に出力され、メッセージ制御手段32からメッセージ表示部42にメッセージ信号が送られてラッキーナンバー表示が行われ、また前記メッセージ制御手段32からスピーカー7に制御信号が送られて音声が発声され、ラッキーナンバー遊技状態であることが遊技者に知される。」(第6頁右下欄第15行〜第7頁左上欄第12行)、
「さらに、通常の特別遊技状態が終了したときには情報表示制御装置3の発射制御手段33から発射停止制御信号が同時に発射装置24と中央管理装置8の発射制御手段89に送られ、さらに中央管理装置8からの制御信号がメッセージ制御手段32に送られ、このメッセージ制御手段32からのメッセージ信号によりメッセージ表示部42に大当りの終了表示が行なわれ、またメッセージ制御手段32からの制御信号によりスピーカー7が賞球交換後再遊技可能である旨の音声を出力する。なお、ラッキーナンバーの特別遊技状態の終了時には情報表示制御装置3の発射制御手段33からパチンコ遊技機2の発射装置24に制御信号として発射継続信号が送られ、そのまま遊技を継続することができ、また発射継続信号が中央管理装置8の発射制御手段89にも送られる。さらにこの発射継続信号としての制御信号はメッセージ制御手段32に出力され、このメッセージ制御手段32からメッセージ信号がメッセージ表示部42に送られて継続して遊技を行える旨の表示が行われるとともに、制御信号がスピーカー7に送られて継続して遊技を行える旨の音声報知がなされる。」(第7頁右上欄第4行〜左下欄第5行)、
「なお上記実施例では情報表示制御装置をパチンコ遊技機の上方に取付けたが、パチンコ遊技機に内蔵して一体的にしてもよいし、パチンコ遊技機の右側の位置に取付けるか、左側の位置に取付けてもよいし、上記実施例ではマイクロコンピュータは情報表示制御装置に内蔵するものとしたが、マイクロコンピュータを別体にしてもよい。」(第15頁左上欄第11〜17行)、
「以上のように詳述したこの発明によれば、パチンコ遊技機毎に迅速かつ容易にラッキーナンバーを設定することができて、そのラッキーナンバーがラッキーナンバー表示部に表示されるので遊技者が容易にそのナンバーを視認することができるとともに、遊技状況に応じて適切な遊技情報を遊技者に表示し伝達して遊技店と遊技者とのトラブルを未然に防止することができる。」(第15頁右上欄第16行〜左下欄第3行)。
ii.第4引用例における前記摘示の記載及び図面第1乃至9図によれば、第4引用例には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「可変表示装置の変動結果が大当り図柄を表示したときに大当り遊技状態となって変動入賞口が所定の態様で駆動されるパチンコ機2の大当り図柄を判定する情報表示制御装置3であって、前記大当り図柄のうちの一部を大当り遊技状態の終了後にラッキーナンバー以外が表示されるまでそのまま遊技を継続できるラッキーナンバーとして設定すると共に、前記可変表示装置の変動結果が前記ラッキーナンバーを表示したときからラッキーナンバー以外が表示されるまでの間に、パチンコ機2からの表示図柄信号を受けるラッキーナンバー表示制御手段31からの制御信号を受けた発射制御手段33から発射継続信号を中央管理装置8の発射制御手段89に送ると共に、発射継続信号をメッセージ制御手段32に出力してメッセージ表示部42に継続して遊技を行える旨の表示が行われる継続信号導出手段を備えたパチンコ機の情報表示制御装置。」

(3)本件発明と先願発明との対比検討
i.本件発明と先願発明とを対比すると、両者はいずれもパチンコ機であって、先願発明における、「可変表示装置」、「変動入賞口」、「情報表示制御装置3」、「ラッキーナンバー」、「ラッキーナンバー以外」、「中央管理装置8」、「メッセージ表示部42」は、それぞれ、本件発明における、「図柄表示装置」、「変動入賞装置」、「大当り図柄判定装置」、「継続大当り図柄」、「終了大当り図柄」、「管理コンピュータ」、「表示装置」に相当する。
また、前記2.(5)i.に示したように、本件発明の必須の構成要件である継続大当り図柄及び終了大当り図柄についてはその作用機能を特定する表現をもって明確に規定しているものの、それ以外の通常の(普通)大当り図柄については発明に必須の構成要件として規定していないから、本件発明は大当り図柄が継続大当り図柄及び終了大当り図柄のみからなる構成を含むと解される。
ii.そうすると、本件発明の構成は、先願発明がすべて備えているものと認められる。
iii.したがって、本件発明は、先願である第4引用例に記載された発明(先願発明)と同一であるので、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。

(4)まとめ
よって、本件発明は、その出願日前の出願であって、その出願日後に出願公開された先願である第4引用例に記載された発明(先願発明)と同一であり、しかも本件発明の発明者は前記先願の発明者と同一でもなく、本件出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項、あるいは、特許法第29条の2第1項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件審判請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、本件審判請求による訂正を認めることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-27 
結審通知日 2003-01-30 
審決日 2003-02-12 
出願番号 特願平3-19338
審決分類 P 1 41・ 161- Z (A63F)
P 1 41・ 856- Z (A63F)
P 1 41・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 前田 建男
藤井 靖子
登録日 2000-07-28 
登録番号 特許第3092171号(P3092171)
発明の名称 パチンコ機の大当り図柄判定装置  
代理人 山田 強  

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