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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A41B
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A41B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A41B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41B
管理番号 1074822
異議申立番号 異議2002-71075  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-04-25 
確定日 2003-02-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3222470号「ローション剤を施されたトップシートを有する吸収性用品」の請求項1〜7,9〜15,21〜24,26〜37に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3222470号の請求項1〜6,8〜14,19〜22,24〜35に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3222470号の請求項1〜7,9〜15,21〜24及び26〜37に係る各発明についての特許出願は,平成7年10月26日に出願され(国際出願による。優先権主張:平成6年11月28日(米国)),平成13年8月17日にその特許の設定登録がなされ,その後,山林和子より特許異議の申立てがなされ,取消理由の通知がなされ,その指定期間内である平成14年10月15日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項
◎訂正事項1
請求項1を次のとおりに訂正する。
「吸収性用品であって,
A)液体不透過性バックシート,
B)液体透過性トップシート,および
C)該トップシートと該バックシートの間に配置された吸収性コア
を備え,
該トップシートの少なくとも一部には,着用者の肌に部分的に移行可能である有効量のローション組成物が適用されており,該ローション組成物は,
(i) 10%から95%までの,石油系エモリエント,脂肪酸エステルエモリエント,アルキルエトキシレートエモリエント,脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント,脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ,実質的に水を含まず,20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし,少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く),および
(ii) 5%から90%までの,該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって,ポリヒドロキシ脂肪酸エステル,ポリヒドロキシ脂肪酸アミド,C14〜C22脂肪アルコール,C12〜C22脂肪酸,C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート,ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし,少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含む
吸収性用品。」

◎訂正事項2
(a) 請求項2を削除する。
(b) 請求項3〜7及び9〜15を,それぞれ請求項2〜6及び8〜14に訂正し,併せて以下の訂正をする。
・当該訂正前の請求項3で引用する請求項2を請求項1に訂正する。
・当該訂正前の請求項5で引用する請求項4を請求項3に訂正する。
・当該訂正前の請求項10及び12でそれぞれ引用する請求項9を請求項8に訂正する。
・当該訂正前の請求項11で引用する請求項10を請求項9に訂正する。
・当該訂正前の請求項13で引用する請求項12を請求項11に訂正する。
・当該訂正前の請求項14で引用する請求項13を請求項12に訂正する。
・当該訂正前の請求項15で引用する請求項14を請求項13に訂正する。
(c) 特許異議の申立てがされていない請求項に係る請求項8及び16〜19を,それぞれ請求項7及び15〜18に訂正し,併せて以下の訂正をする。
・当該訂正前の請求項16及び19でそれぞれ引用する請求項9を請求項8に訂正する。
・当該訂正前の請求項17及び18でそれぞれ引用する請求項16を請求項15に訂正する。

◎訂正事項3
(a) 請求項21〜24及び26〜37を,それぞれ請求項19〜22及び24〜35に訂正し,併せて以下の訂正をする。
・当該訂正前の請求項22で引用する請求項21を請求項19に訂正する。
・当該訂正前の請求項23及び30でそれぞれ引用する請求項22を請求項20に訂正する。
・当該訂正前の請求項24で引用する請求項23を請求項21に訂正する。
・当該訂正前の請求項32及び33でそれぞれ引用する請求項31を請求項29に訂正する。
・当該訂正前の請求項37で引用する請求項36を請求項34に訂正する。
(b) 特許異議の申立てがされていない請求項に係る請求項25及び38〜41を,それぞれ請求項23及び36〜39に訂正し,併せて以下の訂正をする。
・当該訂正前の請求項25で引用する請求項21を請求項19に訂正する。
・当該訂正前の請求項38で引用する請求項37を請求項35に訂正する。
・当該訂正前の請求項40で引用する請求項39を請求項37に訂正する。
・当該訂正前の請求項41で引用する請求項40を請求項38に訂正する。

◎訂正事項4
上記訂正事項3(a)による訂正前の請求項36(当該訂正後の請求項34)を次のとおりに訂正する。
「トップシートの少なくとも一部にローション組成物が適用された吸収性用品の製造方法であって,
(1) トップシートを提供する工程,および
(2) 該トップシートにローション組成物を適用する工程であって,該ローション組成物は,
(i) 10%から95%までの,石油系エモリエント,脂肪酸エステルエモリエント,アルキルエトキシレートエモリエント,脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント,脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ,実質的に水を含まず,20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし,少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く),および
(ii) 5%から90%までの,該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって,ワックス,ポリヒドロキシ脂肪酸エステル,ポリヒドロキシ脂肪酸アミド,C14〜C22脂肪アルコール,C12〜C22脂肪酸,C12〜C22脂肪アルコールエトキシレートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし,少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含むところの適用工程
を備える吸収性用品の製造方法。」

◎訂正事項5
特許異議の申立てがされていない請求項に係る,上記訂正事項3(b)による訂正前の請求項39(当該訂正後の請求項37)で引用する請求項43を請求項34に訂正する。

(2) 訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の適否
上記訂正事項1及び4による訂正は,いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項2による訂正のうち(a)は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,(b)及び(c)は,いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項3による訂正は,いずれも誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項5による訂正は,誤記の訂正を目的とするものである。
また,いずれの訂正も新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,または変更するものではない。

(3) 独立特許要件の判断
上記訂正のうち,訂正事項3(b)及び訂正事項5は,特許異議の申立てがされていない請求項についての訂正であって,誤記の訂正を目的とするものであるが,当該訂正後の請求項23及び36〜39にそれぞれ記載されている事項により特定される各発明は,いずれも特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(4) むすび
以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する特許法第126条第2項〜第4項の規定に違反するものではないので,当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1) 申立ての理由の概要
特許異議申立人は,下記甲第1〜5号証を提出し,次の理由により本件特許は特許法第113条第2号及び第4号に該当する旨主張している。
○本件特許の請求項1〜5,7,9〜11,21〜23,26,28,29及び34〜37(上記訂正後の請求項1〜4,6,8〜10,19〜21,24,26,27及び32〜35)に係る各発明は,甲第1号証刊行物に記載された発明であるか,当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,同請求項に係る特許はいずれも特許法第29条第1項第3号または第2項の規定に違反してされたものである。
○本件特許の請求項27(上記訂正後の請求項25)に係る発明は,甲第5号証刊行物に記載された発明であるから,同請求項に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
○本件特許の請求項6,12〜15,24,27及び30〜33(上記訂正後の請求項5,11〜14,22,25及び28〜31)に係る各発明は,当業者が甲第1〜5号証各刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,同請求項に係る特許はいずれも特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
○本件特許の請求項1及び26(上記訂正後の請求項1及び24)の記載は不明確であり,同請求項に係る特許はいずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものである。

甲第1号証:特開昭62-90371号公報(S62.4.24公開)
甲第1号証の2:「ハンドブック-化粧品・製剤原料-改訂版」(日光ケミカルズ株式会社・日本サーファクタント工業株式会社), S52.2.1発行, pp.18〜19
甲第2号証:米国特許第3,489,148号明細書(1970.1.13発行)
甲第3号証:「化粧品新素材」(株式会社シーエムシー), 1986.9.25発行, pp.76〜77
甲第4号証:「化粧品製剤実用便覧」(日光ケミカルズ株式会社・日本サーファクタント工業株式会社), S57.5.28発行, pp.182〜184
甲第5号証:特開昭62-90375号公報(S62.4.24公開)

(2) 本件特許に係る発明
上記したように,特許権者が請求した本件特許明細書の訂正が認められるものであるから,本件特許の請求項1〜6,8〜14,19〜22及び24〜35に係る各発明は,本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6,8〜14,19〜22及び24〜35にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものである。

(3) 甲号証記載の発明
特許異議申立人の提出した上記証拠には下記の事項が記載されている。
(a) 甲第1号証刊行物
(a-1) 界面活性剤を含有し柔らかくて皮膚を保護する吸湿性衛生用品用カバー不織布において,ラノリン,乳化剤及び界面活性剤の混合物を含有した加工処理剤で表面を仕上げ加工したことを特徴とするカバー不織布。(特許請求の範囲第1項)
(a-2) この種のカバー不織布は周知であり,例えば乳児又は成人用おむつ,生理帯等の吸湿性使い捨て衛生用品の製造に使用される。これらは,身体に面した側に透湿性材料,例えばカバー不織布,そして裏面に不透湿性材料,例えば合成樹脂フィルムを設けた吸湿層から成る。(1頁右下欄8〜13行)
(a-3) この発明は,界面活性剤を含有する使い捨て衛生用品用カバー不織布を皮膚をいためないように改良し,又特に界面活性剤を含有する湿ったカバー不織布が皮膚表面に及ぼす悪影響を低減することを目的とする。(2頁左下欄12〜16行)
(a-4) ラノリンは,繊維表面に吸着され又同時に湿った状態にして皮膚の著しい脱脂を防止するという2つの働きをはたす。…… あらゆる天然原料のうちラノリンはその化学組成及び生理学的性質が人間の皮膚脂肪に最も近いものであることが知られている。それゆえラノリンは皮膚脂肪の機能を代替することができる。ラノリンを加工処理剤に含めることにより,皮膚は柔軟性を保ち又は柔軟にされる。(2頁右下欄4行〜末行)
(a-5) 実施例1〜4には,カバー不織布の処理剤としてラノリンに加え,セチルアルコールが添加されたものが記載されている。(4頁左上欄5行〜5頁右上欄13行)

(b) 甲第5号証刊行物
(b-1) 界面活性剤を含有し柔らかくて皮膚を保護する吸湿性衛生用品用カバー不織布において,コラーゲン水解物と界面活性剤との混合物を含有した加工処理剤で不織布の表面を仕上げ加工したことを特徴とするカバー不織布。(特許請求の範囲第1項)
(b-2) 加工処理剤が付加的に乳化剤とラノリンとを含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項又は第2項に記載のカバー不織布。(特許請求の範囲第3項)
(b-3) この種のカバー不織布は周知であり,例えば乳児又は成人用おむつ,生理帯等の吸湿性使い捨て衛生用品の製造に使用される。これらは,身体に面した側に透湿性材料,例えばカバー不織布,そして裏面に不透湿性材料,例えば合成樹脂フィルムを設けた吸湿層から成る。(1頁右下欄11〜16行)
(b-4) この発明は,界面活性剤を含有する使い捨て衛生用品用カバー不織布を皮膚をいためないように改良し,又特に界面活性剤を含有する湿ったカバー不織布が皮膚表面に及ぼす悪影響を低減することを目的とする。(2頁左下欄15〜19行)
(b-5) あらゆる天然原料のうちラノリンはその化学組成及び生理学的性質が人間の皮膚脂肪に最も近いものであることが知られている。それゆえラノリンは皮膚脂肪の機能を代替することができる。ラノリンを加工処理剤に含めることにより,皮膚は柔軟性を保ち又は柔軟にされる。(3頁左上欄18行〜右上欄3行)
(b-6) 実施例2に,カバー不織布の処理剤としてラノリンとセチルアルコールに加え,コラーゲン水解物が添加されたものが記載されている。(4頁右下欄6行〜5頁左上欄15行)

(4) 対比・判断
(A) 請求項1に係る発明
(a) 新規性について
本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とを対比すると,
(i) 本件特許の請求項1に係る発明の吸収性用品で使用されるエモリエント剤は「石油系エモリエント,脂肪酸エステルエモリエント,アルキルエトキシレートエモリエント,脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント,脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ,実質的に水を含まず,20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有する(ただし,少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く)」ものであるが,甲第1号証刊行物に記載された発明においてはこのエモリエント剤に該当するものとして「ラノリン」が使用されている点,及び,
(ii) 本件特許の請求項1に係る発明の吸収性用品で使用される固定化剤は「ポリヒドロキシ脂肪酸エステル,ポリヒドロキシ脂肪酸アミド,C14〜C22脂肪アルコール,C12〜C22脂肪酸,C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート,ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる(ただし,少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)」ものであるが,甲第1号証刊行物に記載された発明においてはこの固定化剤に該当するものが明示的に記載されていない点,の2つの点で少なくとも相違する。

相違点(i)に関し,特許異議申立人は,甲第1号証の2刊行物に,「ラノリンは各種脂肪酸と各種アルコールとのエステルの混合物」である旨が記載されていることを理由に,「ラノリン」は「脂肪酸エステルエモリエント」に該当する旨主張する。しかし,甲第1号証の2刊行物に記載されているように,「ラノリン」は脂肪酸エステル以外に遊離アルコールや遊離脂肪酸,炭化水素などをも含有する複雑な混合物であり,このような「ラノリン」はそれらの混合物全体として「エモリエント」として機能するのであって,「脂肪酸エステルエモリエント」に「ラノリン」を含むことが明示されていない本件においては,必ずしも「ラノリン」を「脂肪酸エステルエモリエント」の一種であると解することは相当ではない。そして,本件特許の請求項24及び本件訂正明細書29頁2〜13行にエモリエント剤としてのラノリンが示されているが,このラノリンは,本件特許の請求項1に係る発明のエモリエント剤のほかに少量含めることができる従来のエモリエント剤の範疇に属するものとして説明されているものであって,単独でエモリエント剤として使用されるものではないことはその記載から明らかである。この点からしても,ラノリン自体は本件特許の請求項1に係る発明で使用し得る「脂肪酸エステルエモリエント」に含まれないものと解することが相当である。したがって,甲第1号証刊行物に記載された発明で使用する「ラノリン」は本件特許の請求項1に係る発明で使用する「エモリエント剤」ではない。
さらに,相違点(ii)に関し,特許異議申立人は甲第1号証刊行物における実施例で使用されているセチルアルコールが固定化剤である旨主張しているが,甲第1号証刊行物にはセチルアルコールが固定化剤であることについて何ら記載されていない。かえって,甲第1号証刊行物においてセチルアルコールに触れている実施例1の記載とその特許請求の範囲の記載(上記摘記事項(a-1))とを対比すれば,セチルアルコールは乳化剤として使用されているものと認めるのが相当である。そして,甲第1号証刊行物に記載された発明においては,特定の乳化剤を使用しようとするものではなく,また乳化剤であれば固定化剤として使用可能なわけではなく,乳化剤として使用する際の配合量は固定化剤として使用する場合のそれとは必ずしも一致するものではないことからすると,本件特許の請求項1に係る発明の固定化剤としてセチルアルコールが使用可能であることが本件訂正明細書に記載されているとしても,甲第1号証刊行物に記載された発明において乳化剤として使用されたセチルアルコールを固定化剤と認定することは適切ではない。

そうすると,本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とでは,上記したように相違点が存在するので,本件特許の請求項1に係る発明は甲第1号証刊行物に記載された発明ではない。

(b) 進歩性について
本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明とでは,上記(i)及び(ii)の相違点が少なくとも存在する。
ところで,甲第1号証刊行物における上記摘記事項(a-3)及び(a-4)の記載からすれば,エモリエント剤に該当するものとして使用できるものは「ラノリン」のみであって,「ラノリン」以外のものをエモリエント剤として使用し得るとする記載も示唆も存在しないといえる。さらに,甲第1号証刊行物には,上記したように,固定化剤に関する記載が明示的にないのであるから,吸収性用品のトップシートに「エモリエント剤」を「固定化剤」で固定化するという技術思想に関する示唆を読みとることはできない。
そうすると,ラノリンの代わりに本件特許の請求項1に係る発明で使用する「エモリエント剤」を使用し,これを「固定化剤」で吸収性用品のトップシートに固定化することを,当業者が甲第1号証刊行物の記載にしたがって容易に想到することができたものであるということはできない。

なお,特許異議申立人は,「固定化剤の役割は,流体コンシステンシーを有するローション組成物の粘度を高くしたり結晶化傾向を高める等して,トップシートから流れ難くすることに他ならない。従って,エモリエント剤に,これと相溶する,該エモリエント剤よりも粘度の高い成分又は融点の高い成分を加えれば当然に得られる現象を,本件特許発明を規定したに過ぎない。」と主張するが,まさにこの点に関する示唆が甲第1号証刊行物には欠けているのであり,また,上記特許異議申立人の主張は本件特許明細書の記載に基づくものであって,このようなエモリエント剤の固定化手法が本件特許の出願時(優先権主張日当時)の当業者における技術常識であるとも認められない。

(B) 請求項2〜4,6,8〜10,19〜21,24,26,27,32及び33
本件特許の標記請求項はいずれも請求項1の従属項であって,標記請求項に係る各発明はいずれも請求項1に係る発明の特定事項の一部または全部を限定するものであるが,上記したとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証刊行物に記載された発明であるとはいえず,また当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえないのであるから,標記請求項に係る各発明もまた甲第1号証刊行物に記載された発明ではなく,当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(C) 請求項25
本件特許の請求項25は請求項1の従属項であって,請求項25に係る発明は請求項1に係る発明で使用するローション組成物にさらに,セルロース誘導体,タンパク,レシチンおよびそれらの混合物から選ばれる安定剤を添加するものである。
一方,甲第5号証刊行物には,甲第1号証刊行物に記載された発明のカバー不織布の加工処理剤にさらにコラーゲン水解物が添加されたものが記載されている。
そうすると,本件特許の請求項25に係る発明と甲第5号証刊行物に記載された発明とを対比した場合,本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証刊行物に記載された発明との間の上記相違点(i)及び(ii)がそのまま存在することになり,したがって,本件特許の請求項25に係る発明は甲第5号証刊行物に記載された発明であるとはいえない。(なお,甲第5号証刊行物に記載されたコラーゲン水解物は安定剤ではなく,コラーゲン水解物はセルロース誘導体,タンパク,レシチンのいずれでもない(特許異議申立人はコラーゲン水解物がタンパクの一種であると主張するが,コラーゲン自体ならともかくコラーゲン水解物はもはやタンパクといえるか疑問である)ことから,これらの点についても相違点といえる。)

(D) 請求項5,11〜14,22,25及び28〜31
本件特許の標記請求項はいずれも請求項1の従属項であって,標記請求項に係る各発明はいずれも請求項1に係る発明の特定事項の一部または全部を限定するものであるが,上記したとおり,本件特許の請求項1に係る発明は,甲第1号証刊行物に記載された発明であるとはいえず,また当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえないのであるから,標記請求項に係る各発明もまた当業者が甲第1号証各刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また,上記したように,甲第1号証刊行物の記載からは,エモリエント剤として使用できるものはラノリン以外にはあり得ず,吸収性用品のトップシートにエモリエント剤を固定化剤で固定するという技術思想が見出せないのであるから,「おむつかぶれを防止するために,おむつのトップシートに鉱油やペトロラタムを塗布すること」(甲第2号証刊行物)や「ポリグリセリン脂肪酸エステルが増粘剤や油ゲル化剤として使用されること」(甲第3,4号証刊行物)が公知であったとしても,これらのことを甲第1号証刊行物に記載された発明と組み合わせることはできない。
したがって,標記請求項に係る各発明もまた当業者が甲第1〜5号証各刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(E) 請求項34及び35
本件特許の請求項34及び35に係る発明は,いずれも本件特許の請求項1に係る発明の吸収性用品の製造方法の発明であるが,上記したように本件特許の請求項1に係る発明が甲第1号証刊行物に記載された発明であるとはいえず,また当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえないのであるから,その製造方法に係る発明(請求項34及び35)も当然に甲第1号証刊行物に記載された発明ではなく,当業者が甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) 明細書の記載要件について
(a) 特許異議申立人は,本件特許の請求項1に係る発明において,同一の物質が「エモリエント剤」と「固定化剤」との両方で使用されている点を記載不備と指摘しているが,本件特許の請求項1に係る発明においては,吸収性用品のトップシート表面に「エモリエント剤」を「固定化剤」で固定化するために,適用するローション組成物中に「エモリエント剤」と「固定化剤」の両方の成分を含有していることがその発明の特定に必要であって,「固定化剤」が固定化剤の用途に加えてさらに「エモリエント剤」としての性質を有することは何ら本件特許の請求項1に係る発明を不明確にするものではなく,そのことが記載不備に当たるとはいえない。

(b) 特許異議申立人は,本件特許明細書における請求項26(訂正明細書の請求項24)おいて,追加のエモリエント剤として「ラノリン」が記載されていることが記載不備に該当すると指摘しているが,上記したとおり,本件特許の請求項1に係る発明で使用する「エモリエント剤」にラノリンは含まれないと解されるのであるから,当該請求項の記載に何ら不備はない。

(c) 特許異議申立人は,本件特許明細書の記載からは発明の効果が不明瞭であると指摘するが,エモリエント剤を含有するローション組成物に関する技術常識に加え,実施例における固定化剤の効果を参酌すると,本件訂正明細書の記載により当業者が容易に本件特許に係る発明の効果を理解することができるから,この点に関し記載不備とはいえない。

(d) 特許異議申立人は「脂肪酸エステルエトキシレート」に関する記載が発明の詳細な説明の欄にないことを記載不備と指摘しているが,「脂肪酸エステルエトキシレート」との用語は特段不明確なものではなく,この記載により当業者は従来周知のエモリエント剤から一定のものを容易に選択し得るものである。したがって,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に「脂肪酸エステルエトキシレート」に関する詳細な記載が存しないとしても,そのことをもって記載不備に該当するとはいえない。なお,特許異議申立人は従来「脂肪酸エステルエトキシレート」に該当するエモリエント剤が存在しなかったことまでを主張するものではない。

(e) 以上のとおりであるから,本件訂正明細書に特許異議申立人の指摘するような記載不備は存在しない。

4.むすび
以上のとおりであるから,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1〜6,8〜14,19〜22及び24〜35に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1〜6,8〜14,19〜22及び24〜35に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ローション剤を施されたトップシートを有する吸収性用品
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性用品であって、
A)液体不透過性バックシート、
B)液体透過性トップシート、および
C)該トップシートと該バックシートの間に配置された吸収性コア
を備え、
該トップシートの少なくとも一部には、着用者の肌に部分的に移行可能である有効量のローション組成物が適用されており、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ、実質的に水を含まず、20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし、少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く)、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート、ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし、少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含む
吸収性用品。
【請求項2】
前記エモリエント剤が、5%以下の水を含有する請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項3】
前記固定化剤が、35℃以上の融点を有する請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項4】
前記固定化剤が、エモリエント剤と混和性である請求項3に記載の吸収性用品。
【請求項5】
前記エモリエント剤が、鉱油、ペトロラタムおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれた16から32個の炭素原子の鎖長を有する炭化水素の混合物を含む石油系エモリエントを含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項6】
前記エモリエント剤が、メチルパルミテート、メチルステアレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、ラウリルラクテート、セチルラクテートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれた脂肪酸エステルエモリエントを含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項7】
前記エモリエント剤が、2から30までの平均エトキシル化度を有するC12〜C18脂肪アルコールエトキシレートからなる群の中から選ばれるアルキルエトキシレートを含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項8】
前記ローション組成物が、5%から50%までの固定化剤を含み、該固定化剤が少なくとも40℃の融点を有する請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項9】
前記固定化剤が、C14〜C22脂肪アルコールを含む請求項8に記載の吸収性用品。
【請求項10】
前記固定化剤が、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれたC16〜C18脂肪アルコールを含む請求項9に記載の吸収性用品。
【請求項11】
前記固定化剤が、式

(ここで、Rは、C5〜C31ヒドロカルビル基、Yは、少なくとも2つの遊離ヒドロキシル基が直接結合したヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル基、nは、少なくとも1)を有するポリヒドロキシ脂肪酸エステルを含む請求項8に記載の吸収性用品。
【請求項12】
前記固定化剤が、C16〜C22飽和脂肪族のソルビタンエステル、C16〜C22飽和脂肪酸のグリセリルモノエステル、およびC12〜C22飽和脂肪酸のシュクロースエステルからなる群の中から選ばれるポリヒドロキシ脂肪酸エステルを含む請求項11に記載の吸収性用品。
【請求項13】
前記固定化剤が、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンベヘネート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノベヘネート、シュクロースモノ-およびジ-ステアレート、シュクロースモノ-およびジ-ラウレートからなる群の中から選ばれるポリヒドロキシ脂肪酸エステルを含む請求項12に記載の吸収性用品。
【請求項14】
前記固定化剤が、ソルビタンステアレートを含む請求項13に記載の吸収性用品。
【請求項15】
前記固定化剤が、式:

(ここで、R1は、H、C1〜C4ヒドロカルビル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、メトキシエチル、メトキシプロピルまたはそれらの混合物、R2はC5〜C31はヒドロカルビル基、Zは、少なくとも3つのヒドロキシルが直接結合した線状ヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル基)で示されるポリヒドロキシ脂肪酸アミドを含む請求項8に記載の吸収性用品。
【請求項16】
R1が、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピル、N-ブチル、N-2-ヒドロキシエチル、N-メトキシプロピルまたはN-ヒドロキシプロピルであり、R2が、直鎖C11〜C17アルキルもしくはアルケニル、またはそれらの混合物であり、Zがグリシチルである請求項15に記載の吸収性用品。
【請求項17】
固定化剤が、N-ラウリル-N-メチルグルカミド、N-ラウリル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-ココイル-N-メチルグルカミド、N-ココイル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-パルミチル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-タロウイル-N-メチルグルカミド、およびN-タロウイル-N-メトキシプロピルグルカミドからなる群の中から選ばれたポリヒドロキシ脂肪酸アミドを含む請求項15に記載の吸収性用品。
【請求項18】
前記固定化剤が、カルナウバワックス、蜜ロウ、カンデリラワックス、パラフィンワックス、セレシンワックス、エスパルトワックス、オウリクリワックス、レゾロウワックスおよびそれらの混合物からなる分の中から選ばれる物質を含む請求項8に記載の吸収性用品。
【請求項19】
前記ローション組成物が、1%から50%までの親水性界面活性剤をさらに含み、該親水性界面活性剤は少なくとも4のHLB値を有する請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項20】
前記親水性界面活性剤が非イオン系であり、4から20までのHLB値を有する請求項19に記載の吸収性用品。
【請求項21】
前記親水性界面活性剤が、8から22個までの炭素原子を有するアルキル鎖を有し、1から54までの平均エトキシル化度を有するエトキシル化アルコールを含む請求項20に記載の吸収性用品。
【請求項22】
前記親水性界面活性剤が、11から22個までの炭素原子を有するアルキル鎖を有し、2から30までの平均エトキシル化度を有するエトキシル化アルコールを含む請求項21に記載の吸収性用品。
【請求項23】
前記親水性界面活性剤が、2から20までの平均エトキシル化度を有する、C12〜C18脂肪酸のエトキシル化ソルビタンエステルを含む請求項19に記載の吸収性用品。
【請求項24】
前記エモリエント剤が、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、鯨ロウもしくは他のロウ、脂肪酸、脂肪鎖中に12から28個までの炭素原子を有する脂肪アルコールエーテル、ポリヒドロキシアルコールの脂肪エステル、ラノリンおよびその誘導体、およびそれらの混合物からなるエモリエントを全エモリエント剤の10%までさらに含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項25】
前記ローション組成物が、セルロース誘導体、タンパク、レシチンおよびそれらの混合物から選ばれる安定剤をさらに含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項26】
前記ローション組成物が、水、粘性率調整剤、香料、消毒剤、抗バクテリア剤、薬理活性剤、フィルム形成剤、脱臭剤、不透明化剤、アストリンジェント、溶媒およびそれらの混合物からなる群の中から選ばれる少なくとも1種の物質をさらに含む請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項27】
前記トップシート上のローション組成物の量が、0.16g/m2(0.1mg/in2)から39g/m2(25mg/in2)までである請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項28】
前記トップシート上のローション組成物の量が、1.6g/m2(1mg/in2)から16g/m2(10mg/in2)までである請求項20に記載の吸収性用品。
【請求項29】
前記ローションコーティングが、不均一にトップシートに適用されている請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項30】
前記ローションが、吸収性用品の縦中心線と整列し、該縦中心線上に中心を持つストライプの形態で適用されている請求項29に記載の吸収性用品。
【請求項31】
前記ローションが、トップシートのいつくかの部分に適用され、他の部分にはローションが適用されていない請求項29に記載の吸収性用品。
【請求項32】
おむつ、失禁用品、おむつホルダーまたはトレーニングパンツである請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項33】
衛生ナプキンまたはパンティライナーである請求項1に記載の吸収性用品。
【請求項34】
トップシートの少なくとも一部にローション組成物が適用された吸収性用品の製造方法であって、
(1)トップシートを提供する工程、および
(2)該トップシートにローション組成物を適用する工程であって、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ、実質的に水を含まず、20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし、少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く)、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ワックス、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし、少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含むところの適用工程
を備える吸収性用品の製造方法。
【請求項35】
前記適用工程が、スプレー、印刷、コーティング、押し出しまたはそれらの組合せからなる群の中から選ばれる請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記適用工程が、押し出しである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ローション組成物が、トップシートに適用されたとき、少なくとも半固体である請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ローション組成物が固化するに十分に低い温度までローション組成物を冷却する工程をさらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記固定化剤が、冷却により結晶化するものである請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本出願は、おむつ、トレーニングパンツ、成人向け失禁用用品生理用品、パンティライナーなどの吸収性用品に関するものである。特に、本発明は、通常の接触、着用者の身動き、および/または体温によって着用者の皮膚に移ることができるローション剤が、トップシートの外側表面にコーティングされた吸収性用品に関するものである。
発明の背景
尿に対して高い吸収能力を有するおむつのような多種類の使い捨て吸収用品が入手可能である。この種の使い捨て用品は、一般に、ある種の流体透過性トップシート材、吸収性コア、および流体不透過性バックシート材を含む。これらの種類の吸収構造は、流体を吸収することに対してはきわめて有用であるが、便(以下、BMという)を吸収することはできない。一般にBMは、流体透過性トップシートの外側表面と、着用者の皮膚との間に閉じ込められ、その殆どが着用者の皮膚に付着する。
BMが着用者の皮膚に付着しないように、介護者は多くの場合、着用者に吸収性用品を着用させる前に、ペトロラタムもしくは鉱油のような保護用品もしくは“撥性”用品を、臀部および肛門の部分に塗布する。この方法では通常、介護者が、たとえば、鉱油またはローション剤をどちらかの手に取り、両手をこすってその液体を手の上で延ばし、そして延ばした液体を幼児の皮膚へと塗る。このような無駄で、繁雑で、そしてすぐ忘れてしまう方法を用いなくても済むように、トップシートに保護用もしくは治療用の皮膚手入れ剤を含んだ吸収性用品を作ろうとする数多くの試みが、過去になされた。
ローション剤としておむつ用品に塗布され、緩和し保護するコーティングをもたらしてきた物質の一つに鉱油がある。鉱油(液体ペテロラタムとしても知られている)は、石油の高沸点(すなわち300℃〜390℃)留分を蒸留することで得られる様々な液体炭化水素の混合物である。鉱油は、周囲の温度(たとえば20℃〜25℃)では液体である。そのため、鉱油は、おむつのトップシートに塗布されても、比較的流動的で動きやすくなっている。
鉱油は、周囲温度において流動的で動きやすいため、トップシート上で局部的には残らない傾向にある代りに、トップシートを通っておむつの内部へと染み込んでいく。そのため、コーティングローション剤の所定の治療効果もしくは保護効果が得られるためには、比較的多量の鉱油を塗布する必要がある。このことは、ローション剤が塗布されたおむつ用品のコストを増加させるだけでなく、その他の好ましくない影響をも引き起こすものである。
好ましくない影響の一つは、多量の鉱油はトップシートの孔をふさぐ傾向にあるために、流体取扱い特性が低下することである。さらに、鉱油はおむつの内部に染み込んだ際に、疎水性の添加物として振る舞うために、下に敷かれた吸収性コア(もし使用された場合)の吸収性が低下する。塗布される鉱油の量が増えると、吸収性の低下はより顕著になる。
たとえ多量の鉱油が使用されなくても、鉱油が一度塗布されれば、鉱油が染み込むという傾向はその他の好ましくない影響をもたらす。たとえば、塗布された鉱油は、ローション剤が塗られたおむつ用品を梱包するまたは包装する材料へ移り、その中へ入り、そして通過してしまう。このため、おむつ用品から出た鉱油による汚れや、その他の漏れを防ぐために、障壁型の梱包または包装フィルムを用いる必要が生じる。
以上のことより、(1)コーティングローション剤の所定の治療効果もしくは保護効果を有し、(2)室温で液体であるコーティング(たとえば鉱油)をそれほど多量には必要とせず、(3)おむつ用品の吸収性に悪影響を及ぼさず、(4)特別な包装または梱包用障壁材を必要としないローション剤が塗られたおむつ用品が望まれる。
ヘイフォード(Hayford)らの米国特許第3,585,998号においては、ベビーオイルを含み圧力が破裂するカプセルが内部裏地に配列された、使い捨てベビーおむつについて述べられている。この特許においては、おむつを使用する前に、綿棒やハンドアイロンのような家庭用品を用いて圧力を加え、カプセルを破ることが望ましいことが述べられている。圧力で破裂するカプセルと同じ原理が、ゴールドファーブ(Goldfarb)らの米国特許第3,464,413号において用いられ、傷口に薬剤を与えることができる包帯が作成されている。しかし、両方の特許において開示されている用品には、重大な欠点が存在している。つまり、おむつまたは包帯を使用する前に、圧力を加えてカプセルを破裂しない限り、カプセルに含まれている皮膚手入れ剤は全く与えられないか、または不均一に与えられて皮膚の一部がコーティングされない。
ブチャルター(Buchalter)の米国特許第3,896,807号においては、クリーム配合の固体油相が充填された用品について述べられており、この固体油相は、水分が加えられるとクリームを形成するようになっている。この特許において開示されている用品に存在する重大な欠点は、効果的な薬物が吸収性基材から皮膚に移るのが遅れることがあり、さらに薬物が移るのは体内から流動物が出た時のみであることである。
ダンカン(Duncan)らの米国特許第3,489,148号においては、疎水性でかつ親油性のトップシートを含むベビーおむつについて述べられており、このトップシートの一部には、油性材料からなる不連続フィルムがコーティングされている。ダンカンらの特許により開示されているおむつに存在する重大な欠点は、疎水性でかつ親油性のトップシートは、その下に敷かれた吸収性コアへ尿が移るのを促進することが遅いことである。
以上のことより、本発明の目的は、すぐれた流体取扱い特性を有するトップシートを備えた吸収性用品を提供することにある。
さらに本発明の目的は、着用者の皮膚に移ることができ、かつ、着用者の皮膚にBMが付着することを減少させ、その結果、BMの清浄除去を容易にするローション剤コーティングを外側表面に有するトップシートを提供することにある。
さらに本発明の目的は、以下の性質を有する、ローション剤が塗られた吸収性用品を提供することである。つまり、
(1)望ましいBMの脱離、BMの清浄、治療もしくは保護ローション利益を有し、
(2)鉱油をそれほど多量には必要とせず、
(3)吸収性用品の流体の取り扱い特性に悪影響を及ぼさず、および
(4)特別な包装もしくは梱包用の障壁材を必要としない。
以下に開示される内容を読むことによって容易に明らかになるように、これらの目的に限らず他の目的も本発明によって達成される。
発明の概要
本発明は、トップシートの外側表面にローション剤コーティングを有する吸収性用品に関する。ローション剤は、周囲温度(つまり20℃)において半固体もしくは固体であり、着用者の皮膚に移るように配合される。
簡潔には、本発明に係る吸収性用品は、
A)液体不透過性バックシート、
B)液体透過性トップシート、および
C)該トップシートと該バックシートの間に配置された吸収性コアを備え、
該トップシートの少なくとも一部には、着用者の肌に部分的に移行可能である有効量のローション組成物が適用されており、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれたエモリエント剤、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート、ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤を含む。
また、本発明によれば、トップシートの少なくとも一部にローション組成物が適用された吸収性用品の製造方法であって、
(1)トップシートを提供する工程、および
(2)該トップシートにローション組成物を適用する工程であって、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれたエモリエント剤、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ワックス、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤を含むところの適用工程を備える吸収性用品の製造方法が提供される。
本発明において、トップシートの少なくとも一部にコーティングされるローション剤の量は、約0.16g/m2(0.1mg/in2)〜約39g/m2(25mg/in2)であることが好ましく、より好ましくは約1.6g/m2(1mg/in2)〜約16g/m2(10mg/in2)である。ローションが塗られたトップシートにおいては、所望のBMの清浄、およびコーティングローション剤の治療効果もしくは保護効果が得られる。エモリエント剤はトップシート表面上では実質的に固定化されているため、所定の皮膚手入れ効果をもたらすために必要なローション組成物はより少なくて済む。さらに、本発明に係るローション剤が塗られた吸収性用品を梱包する上で、特別な障壁材もしくは包装材は不要である。
後述するように、本発明に係るローション組成物は次のような融解特性を有していることが好ましい。つまり、室温においてはトップシート上で比較的不動的で局在化しており、体温のもとでは着用者に移ることができ、それにもかかわらず、極端な保存条件のもとでも完全には液体とならない。
重要なことは、本発明に係るローション組成物は、通常の接触、着用者の身動き、および/または体温によって、容易に皮膚へ移ることができることである。理論により拘束されるものではないが、ローション組成物は皮膚の表面エネルギーを変化させ、および/または「障壁」を形成してBMに対する皮膚の親和性を減少させると信じられる。その結果、BMが皮膚に付着する傾向が低下するため、BMを除去することが容易になる。
図面の簡単な説明
図1は、本発明に係るローション組成物をトップシートに塗るための、好適なプロセスを示す模式図である。
図2は、本発明に係るローション組成物をトップシートに塗るための、他のプロセスを示す模式図である。
図3は、本発明に基づく、おむつの形状をなす吸収性用品を示す図である。
発明の詳細な説明
本明細書で用いられている「含む、包含する」という用語は、本発明を実施するために、様々な構成部材、成分、もしくは手順を共に使用できることを意味する。従って、「含む、包含する」という用語は、より限定的な「本質的に〜からなる」という用語および「〜からなる」という用語を包含する。
以下に用いられているパーセンテージ、割合および比率は、別段の定めがない限り、すべて重量で表わされている。
A.吸収性用品
本明細書で用いられている「吸収性用品」という用語は、体内からの滲出物を吸収し内部に含む用品を指す。より具体的には、着用者の皮膚に接するように取り付けられて、体内から排出された様々な滲出物を吸収し内部に含む用品を指す。本明細書で用いられる「使い捨て」という用語は、吸収性用品として一度使用した後に、洗濯もしくは再生して吸収性用品として再使用することが意図されていない、吸収性用品を説明するために用いられる。使い捨て吸収性用品の例としては、生理ナプキンおよびパンティライナーのような女性用生理用品、おむつ、失禁用パンツ、おむつホルダー、トレーニングパンツなどが含まれる。
使い捨て吸収性用品には、一般に、液体を透過するトップシート、トップシートに接続され液体を透過しないバックシート、およびトップシートとバックシートの間に配置された吸収性コアが含まれている。吸収性用品およびその構成部材は、トップシート、バックシート、吸収性コアおよびこれらの構成部材からなる各層を含めて、身体側表面および衣類側表面を有している。本明細書で用いられているように、「身体側表面」は、吸収性用品もしくは構成部材の表面であって、着用者の身体側にもしくは身体に隣接して着用されるように意図された表面を示す。一方、「衣類側表面」は反対側に位置し、使い捨て吸収性用品が着用された際に着用者の下着の側に着用されもしくは隣接して取り付けられるように意図されている。
以下の記述において、使い捨て吸収性用品向けに有用な吸収性コア材、トップシート材、およびバックシート材について、一般的に論じる。この一般的な説明は、図3に示し以下で詳しく説明する具体的な吸収性用品の構成部材についてなされているが、本明細書中で一般的な説明がなされている他の使い捨て吸収性用品の構成部材についても適用されることを了解されたい。
一般に、吸収性コアは液体(たとえばメンス、尿、および/または体内からの他の滲出物)を吸収もしくは保有することができる。吸収性コアは、着用者の皮膚に対して、圧縮性があり、なじみやすく、そして刺激的でないことが好ましい。吸収性コアは、多種多様なサイズおよび形状(たとえば、長方形、楕円形、砂時計形、「T」字形、犬骨形、非対称形など)で製造される。本発明に係る吸収性複合材の他に、吸収性コアは、吸収性用品に一般に使用される多種多様な液体吸収材のいかなるものも含むことができる。このような液体吸収材としては、一般にエアーフェルト(airfelt)と呼ばれる、細かく砕かれた木材パルプなどがある。吸収性コアに使用する上で好適な他の吸収材には、縮めた(creped)セルロースの詰物;同形態(coform)等の溶融吹込み成型(meltblown)されたポリマー;化学的に堅くされ、変性され、もしくは架橋されたセルロースファイバー;捲縮された(crimped)ポリエステルファイバーのような人工繊維;ピート苔(moss);ティッシュラップおよびティッシュラミネートを含むティッシュ;吸収性発泡樹脂;吸収性スポンジ;超吸収性ポリマー;吸収性ゲル材;またはこれらと等価ないかなる材料、もしくはこれらの材料の組合わせ、もしくはこれらの材料の混合物が含まれる。
吸収性コアの構成および構造についても様々であっても良い(たとえば、吸収性コアは、可変のカリパス領域(caliper zones)を有する、および/または中央部が厚くなるような断面を有する;親水性に勾配がある;本発明に係る吸収性複合剤が傾斜している、もしくは超吸収性に勾配がある;または平均密度が低くかつ平均坪量がより低い領域、たとえば収集領域(acquisition zones)がある;または、一つもしくはそれ以上の層もしくは構造を含んでいても良い)。しかし、吸収性コアの総吸収能力は、設計上の制約および吸収性用品の意図する用途と、両立していなければならない。さらに、吸収性コアのサイズおよび吸収能力は、用途に合わせて変更しても良い。用途としては、おむつ、失禁用パッド、パンティライナー、普通用生理ナプキン、夜用生理ナプキンなどがある。また、幼児から大人までの着用者に合わせて変更しても良い。
吸収性コアは、吸収性用品によく使用される他の吸収性部材を含むことができる。たとえば、拭き取り層、吸い取り層もしくは収集層、または着用者の着心地を高めるための副トップシート等である。
トップシートは、着用者の皮膚に対してなじみやすく、感触が柔らかく、そして刺激的でないことが好ましい。さらに、トップシートは液体を透過し、いろいろな液体(たとえばメンス、および/または尿)を、容易にその厚み方向に浸透させる。好適なトップシートは、織物材および不織材(たとえば、繊維の不織布);穴の開いたプラスチックフィルム、穴の開いた可塑性フィルム、およびハイドロフォーミング法により作成されたプラスチックフィルムのような高分子材料;多孔質の発泡樹脂、網目状の発泡樹脂;網目状の熱可塑性フィルム;熱可塑性スクリムのような広範な材料から製造することができる。好適な織物材および不織材には、天然繊維(たとえば、木繊維もしくは綿繊維)、合成繊維(たとえば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン繊維のような高分子繊維)、もしくは天然繊維および構成繊維の組み合わせが含まれる。トップシートが不織布を含む場合、この不織布は既存の広範囲に渡る技術を用いて製造することができる。たとえば、この不織布はスパンボンド(spunbonded)され、梳解(carded)され、ウェットレイド(wet-laid)され、溶融吹込み成型され、ハイドロエンタングル(hydroentangled)され、またはこれらが組合わされてなされる。
バックシートは、液体(たとえばメンス、および/または尿)を透過しない。バックシートは、薄いプラスチックフィルムから製造されていることが好ましいが、液体を透過しない他の柔軟な材料が使用されても良い。本明細書で使用されている「柔軟な」という用語は、人体の一般的な形および輪郭に対して、なじみやすく容易に追従する材料を指す。バックシートは、吸収性コアに吸収され内部に含まれる滲出物が、吸収性用品に接触する用品、たとえばベッドシーツ、ズボン、パジャマおよび下着を濡らすことを防いでいる。従って、バックシートは、織物材もしくは不織材、ポリエチレンもしくはポリプロピレンの熱可塑性フィルムのような高分子フィルム、フィルムコーティングされた不織材のような複合材料を含んでいても良い。好適なバックシートは、厚みが約0.012mm(0.5mil)から約0.051mm(2.0mil)であるポリエチレンフィルムである。例示的なポリエチレンフィルムとしては、クロペイコーポレーション(Clopay Corporation)(シンシナティ、オハイオ州)によって製造された、製品名P18-1401、そしてトレデガーフィルムプロダクツ(Tredegar Film Products)(テル ホイテ(Terre Haute)、インディアナ州)によって製造された、製品名XP-39385が挙げられる。バックシートは表面に模様を付けて、および/または艶消しに仕上げて、見た目に、より布地に近い方が好ましい。さらに、バックシートは、滲出物を通過するのは防ぐが、吸収性コアから蒸気が逃がしても良い(すなわち、バックシートは呼吸をする)。バックシートのサイズは、吸収性コア、および選び出された吸収性用品の正確なデザインによって、決められる。
バックシートならびにトップシートは、それぞれ、吸収性コアの衣類側表面ならびに身体側表面に隣接して配置される。吸収性コアは、トップシート、バックシートもしくは両方と接続されていることが好ましい。接続の方法は、当該技術分野で良く知られているような取り付け手段(図3には図示せず)によって知られている、いかなる方法であっても良い。しかしながら、本発明の態様として、吸収性コア全体の中の一部分が、トップシート、バックシート、もしくは両方に接していないものが想定される。
たとえば、バックシートおよび/またはトップシートは、吸収性コアに固定されていても良いし、もしくは互いに固定されていても良い。固定の方法としては、均一で連続した接着剤層、パターン形成された接着剤層、もしくは互いに分離された線状、螺旋状、もしくは点状の接着剤の配列を使用する。これまで満足できている接着剤としては、エイチ.ビー.フラー カンパニー(H.B.Fuller Company)(セント ポール(St.Paul)、ミネソタ州)によって製造された、製品名HL-1258、もしくはH-2031が挙げられる。取り付け手段としては、ミネトラ(Minetola)らの米国特許第4,573,986号(1986年3月4日発行)に開示されている、接着剤フィラメントのオープンパターンネットワーク(open pattern network)を含んでいることが好ましい。この特許は、本明細書において引用により取り入れられている。フィラメントオープンパターンネットワークの、例示的な取り付け手段には、何本かのラインの接着剤フィラメントが螺旋型に渦巻かれたものが含まれる。このような取り付け手段としては、スプラーグ ジュニア(Sprag、ue,Jr)の米国特許第3,911,173号(1975年10月7日発行)、ツィーカー(Zwieker)らの米国特許第4,785,996号(1978年11月22日発行)、ウェレニック(Werenicz)の米国特許第4,842,666号(1989年6月27日発行)の中で示された装置および方法によって明らかにされているものがある。これらの特許は、それぞれ本明細書において引用により取り入れられている。上述したものの代わりに、取り付け手段は、熱接着、圧力接着、超音波接着、動的機械的接着、または当該技術分野において知られているその他の好適な取り付け手段もしくは以上の取り付け手段の組み合わせを含んでいても良い。
本発明に係るローションが塗られたトップシートが使用される使い捨て吸収性用品としては、おむつであることが好ましい。本明細書において使用されている「おむつ」という用語は、幼児および失禁者によって一般に着用され、着用者の下半身の周囲に着用される吸収性用品を指す。言い換えれば、「おむつ」という用語は、幼児用おむつ、トレーニングパンツ、成人向け失禁用用品などを含んでいる。
図3は、本発明に係るおむつ50の平面図である。図3において、おむつ50は開かれており、収縮していない(弾性的に起こる縮みが引き伸ばされた)状態が示されている。また、構造の一部が取り除かれることでおむつ50の構造がより明瞭に示され、さらに、着用者から遠い側に面しているおむつ50の部分、つまり外側表面が、見る者の側に向けられている。図3に示すように、おむつ50は以下のものを含んでいることが好ましい;液体透過性トップシート520;トップシートに接合された液体不透過性バックシート530;トップシート520とバックシート530の間に配置された吸収性コア540。ここで吸収性コア540は衣類側表面542、身体側表面544、サイドエッジ546、ウェストエッジ548、そして耳549を有する。おむつ50は、さらに以下のものを含むことが好ましい;弾性を持たせたレッグカフス550;弾性的なウェスト多プライ560;取り付け部分、通常570として示す多プライ。
図3に示すおむつ50は、外側表面52、外側表面52と反対側に位置する内側表面54、第1のウェスト領域56、第2のウェスト領域58、おむつ50の外端によって規定される周囲51(縦方向の端は55で、終端は57で示す)。(精通した技術者にとって切られているのは、おむつは通常、一対のウェスト領域とこのウェスト領域の間の股領域を有していると説明されるということであるが、本発明においては、用語を簡単にするために、おむつ50はウェスト領域のみを有しており、このウェスト領域の中に、典型的には股領域の一部として表示されるおむつ部分が含まれているとしている)。おむつ50の内側表面54には、使用中に着用者の身体に隣接して位置するおむつ50の部分が含まれている(すなわち、内側表面54は一般に、少なくともトップシート520の一部分およびこのトップシート520に接続される他の部材によって形成される)。外側表面52には、着用者の身体から遠くに位置するおむつ50の部分が含まれている(すなわち、外側表面52は一般に、バックシート530の少なくとも一部およびこのバックシート530に接続される他の部材によって形成され得る)。(また、本明細書で用いられているように、着用者側に面しているおむつ50の部分およびその構成部材は、また身体側表面と呼ばれる。同様に、着用者から遠い側に面している部分は、また衣類側表面と呼ばれる。)第1のウェスト領域56および第2のウェスト領域58は、周囲51の終端57から、おむつ50の横方向の中心線53までそれぞれ広がっている。また、図3においては、縦方向の中心線59も示されている。
図3においては、おむつの好適な態様が示されている。この好適な態様においては、トップシート520およびバックシート530の長さおよび幅の寸法は、一般に吸収性コア540のそれよりも大きい。弾性を持たせたレッグカフス550ならびにバックシート530は、吸収性コア540の端の外側に拡がり、おむつ50の周囲51を形成している。
本発明に係るおむつには、吸収性コアを本発明に適応させることで、良く知られている多くの構成を用いることができる。例示的な構成は、以下の特許の中で一般的に説明されている。ブエル(Buell)の米国特許第3,860,003号(1975年1月14日発行)、ブエル(Buell)らの米国特許第5,151,092号(1992年9月29日発行)、ブエル(Buell)らの米国特許第5,221,274号(1993年6月22日発行)。これらの特許は、それぞれ本明細書の中で引用により取り入れられている。本発明を容易に適応させることができる他のおむつの構成としては、本発明と同時係属中である米国特許出願第08/203,456(1994年2月28日提出)の中で説明されているものがある。この特許は、本明細書の中で引用により取り入れられている。本明細書中で述べている技術から見て、上述の特許の中で説明されているおむつ吸収性コアを適応させることにより、本発明に係る吸収性複合材を上述の特許の中で説明されている吸収性ゲル材として含むことができる。
おむつ50に使用する上で特に好適なトップシート520は、織物技術に精通した者に良く知られている方法によって、梳解され、そして熱接着されている。本発明にとって満足のいくトップシートには、約2.2デニールの太さを有する、ステープル長さのポリプロピレン繊維が含まれる。本明細書中で用いられているように、「ステープル長さの繊維」という用語は、長さが少なくとも約15.9mm(0.625インチ)である繊維を示す。トップシートは、約14〜25g/m2の坪量を有していることが好ましい。好適なトップシートとしては、ベラテック株式会社(Veratec Inc.)のインターナショナルペーパーカンパニー(International Paper Company)事業部(ワルポーレ(Walpole)、マサチューセッツ州)によって製造された製品名P-8がある。
おむつ50のトップシート520は、親水性の材料から形成され、液体(尿など)がトップシートをすばやく通り抜けるのを促進することが好ましい。トップシートが疎水性の材料から形成されている場合には、液体がトップシートを通ってより速く移るように、少なくともトップシートの上側表面が親水性を持つように処理される。こうすることによって、体内からの滲出物がトップシートを通り抜けて吸収性コアに吸収されるというよりもむしろ、トップシートのまわりへはみ出て流れてしまう(flow off)という可能性を減らすことができる。トップシートは界面活性剤を用いて処理することにより、親水性を持たせることができる。界面活性剤を用いてトップシートを処理する好適な方法には、トップシート材に界面活性剤をスプレーすること、ならびにトップシート材を界面活性剤の中に浸すことが含まれる。このような処理方法および親水性については、以下の特許の中でより詳しく論じられている。レイジング(Reising)らの米国特許第4,988,344号「多層吸収層を有する吸収性用品」(1991年1月29日発行)、およびレイジング(Reising)の米国特許第4,988,345号「急速に収集(Acquiring)する吸収性コアを有する吸収性用品」(1991年1月29日発行)。これらの特許は、どちらも本明細書の中で引用により取り入れられている。
本明細書において説明されているおむつの好適な態様において、バックシート530は、変形された砂時計の形状を有し、おむつの周囲全体に渡って、最小でも約1.3cm〜約6.4cm(約0.5インチ〜約2.5インチ)の距離だけ、吸収性コアの外側に拡がっている。
吸収性コア540は、おむつ50と併用できるものであれば、どんなサイズまたは形状も取ることができる。おむつ50の好適な一つの態様としては、第1のウェスト領域には、耳を有する非対称な改変T字形の吸収性コア540を有し、しかし、第2のウェスト領域には、一般的な長方形の吸収性コア540を有するものが挙げられる。広く受け入れられ、また商業的にも成功している。本発明の吸収性コアとして使用する上で例示的な吸収構造は、以下の特許の中で説明されている。ウェイスマン(Weisman)らの米国特許第4,610,678造「高密度吸収構造」(1986年9月9日発行)、ウェイスマンらの米国特許第4,673,402号「2層コアを有する吸収性用品」(1987年6月16日発行)、オングスタット(Angstadt)の米国特許第4,888,231号「ほこり拭取層を有する吸収性コア」(1989年12月19日発行)、アレマニー(Alemany)らの米国特許第4,834,735号「低密度で低坪量の収集領域を有する高密度吸収性部材」(1989年5月30日発行。吸収性コアは、さらに、化学的に堅くした繊維からなる収集/分散コアを吸収性保存コアの上方に配置した、2層コアシステムを含んでいても良い。この2層コアシステムは、以下の特許の中で詳しく説明されている。アレマニーらの米国特許第5,234,423号「弾性的なウェスト部および向上した吸収性を有する吸収性用品」(1993年8月10日発行)、ヤング(Young)、ラボン(LaVon)、およびティラー(Taylor)の米国特許第5,147,345号「失禁処理用の高効率吸収性用品」(1992年9月15日発行)。これらの特許は、すべて本明細書の中で引用により取り入れられている。
好ましい態様においては、おむつ50は、液体および他の体内からの滲出物をより多く含有するための弾性を持たせレッグカフス550;より良く装着させ、より多く含有するための弾性的なウェスト部560;横方向に引っ張る力がおむつの周囲に渡って保たれることで、おむつを着用者に保持することができるように、第1のウェスト領域56と第2のウェスト領域58を部分的に重ねる構成に保つサイドクロージャーを形成する取り付け部分570をさらに備える。また、弾性を持たせたサイドパネル(図示せず)をウェスト領域56および58内に含ませることで、おむつ50は弾性的に伸び縮み可能となっていても良い。その結果、より快適にかつ輪郭に沿うように着用できるため、おむつ50をより効果的に用いることができる。
弾性を持たせたレッグカフス550は、広範囲に渡る異なる構成に形成することができる。構成としては、以下の特許で説明されているものが含まれる。アジズ(Aziz)らの米国特許第3,860,003号、米国特許第4,909,803号(1990年5月20日発行)、ローソン(Lawson)の米国特許第4,695,278号(1987年9月22日発行)、ドゥラゴー(Dragoo)の米国特許第4,795,454号(1989年1月3日発行)。以上の特許は、それぞれ本明細書中で引用により取り入れられている。
弾性を持たせたウェスト部は、弾性を持たせたウェストバンド(図示せず)を含んでいることが好ましい。ウェストバンドは、以下の特許で説明されるものを含む広範囲に渡る異なる構成に形成することができる。キュビット(Kievit)らの米国特許第4,515,595号(1985年5月7日発行)、ロバートソン(Pobertson)の米国特許第5,026,364号(1991年6月25日発行)、すでに引用した、ブエル(Buell)らの米国特許第5,151,092号(1992年9月29日発行)。これらの特許は、それぞれ本明細書の中で引用により取り入れられている。
弾性を持たせたサイドパネルは、広範囲に渡る異なう構成に形成することができる。弾性を持たせたサイドパネルを、おむつの耳(耳ぶた)内に配置したおむつの例が、以下の特許で開示されている。ウッド(Wood)らの米国特許第4,857,067号(1989年8月15日発行)、サイアラファ(Sciaraffa)らの米国特許第4,381,781号(1983年5月3日発行)、ファン ゴンペル(Van Gompel)らの米国特許第4,938,753号(1990年7月3日発行)、ブエル(Buell)らの米国特許第5,151,092号(1992年9月29日発行)。以上の特許は、それぞれ本明細書の中で引用により取り入れられている。
例示的な取り付け部分570としては、以下の特許で開示されたものがある。スクリップス(Scripps)の米国特許第4,846,815号(1989年7月11日発行)、ネステガード(Nestegard)の米国特許第4,894,060号(1990年1月16日発行)、バットレル(Battrell)の米国特許第4,946,527号(1990年8月7日発行)、ブエルの米国特許第3,848,594号(1974年11月19日発行)、ヒロツ(Hirotsu)らの米国特許第B1 4,662,875号(1987年5月5日発行)、ブエルらの米国特許第5,151,092号(1992年9月29日発行)。以上の特許は、それぞれ本明細書の中で引用により取り入れられている。
おむつ50は、おむつのウェスト領域の一つ(第2のウェスト領域58であることが好ましい)を着用者の背中の下で押さえて、おむつの残りの部分を着用者の両足の間に渡して着用者に着用させることが好ましい。その結果、もう一つのウェスト領域(第1のウェスト領域56であることが好ましい)を、着用者の前にかけて押さえることが好ましい。それから、取り付け部分を使ってサイドクロージャーで留める。
本発明に係るローション剤が塗られたトップシートは、トレーニングパンツ用としても有用である。「トレーニングパンツ」という用語は、本明細書中で用いられているように、両側が固定され、足を入れるための開口部を有している使い捨て衣服を指す。トレーニングパンツは、前記開口部に着用者の両足を入れ、着用者の下半身のまわりでトレーニングパンツを所定の位置までずらすことにより、着用者に着用させる。好適なトレーニングパンツについては、ハッセ(Hasse)らの米国特許第5,246,433号(1993年9月21日発行)の中で開示されている。
本発明に係るローション剤が塗られたトップシートが有用なものとして使用される別の使い捨て吸収性用品として、失禁用用品が挙げられる。「失禁用用品」という用語は、パッド、下着(ベルトなどのような同じタイプの吊り下げ用具によって支えられたパッド)、吸収性用品向けの挿入物、吸収性用品向けの容量増加具、ブリーフ、ベッドパッドなどを指す。これらは、着用する失禁者が成人か、以外であるかには依らない。好適な失禁用用品については、以下の中で開示されている、ストリックランド(Strickland)らの米国特許第4,253,461号(1981年3月3日発行)、ブエルの米国特許第4,597,760号および米国特許第4,597,761号、アー(Ahr)らの前述の米国特許第4,704,115号および米国特許第4,909,802号、ギプソン(Gipson)らの米国特許第4,964,860号(1990年10月23日発行)、ノエル(Noel)らの米国特許出願第07/637,090号(1991年1月3日提出)(PCT公開第WO92/11830、1992年7月23日)。
B.ローション組成物
本発明に係るローション組成物は、20℃つまり周囲温度において、固体もしくは、より多くの場合に半固体である。「半固体」という用語は、ローション組成物が、擬可塑性もしくは可塑性の流動物に典型なレオロジー(rheology)を有することを意味する。せん断力が加えられていない時には、ローション組成物は見た目には半固体である。しかし、せん断力が増加するにつれて流れ出す。これは、ローション組成物が主として固体成分を含んでいるが、少量の液体成分を同時に含んでいるという事実による。
本発明に係るローション組成物は、ローション剤が流動することを極力抑えるために、室温において少なくとも半固体であり。さらに、ローション組成物の最終融点(100%液体となる温度)は、45℃を上回るような「高ストレスになる(stressful)」可能性のある保存条件(たとえば、アリゾナ州にある倉庫、フロリダ州を走る車のトランクなど)よりも高いことが好ましい。
具体的には、本発明に係るローション組成物は下記の融解特性を有すべきである。

これらローション組成物は、周囲温度において固体もしくは半固体であるために、流れ出してローション組成物が塗られたおむつトップシートの内部へと染み込んでいくという傾向を示さない。このことは、コーティングローション剤の所望の治療効果もしくは保護効果をもたらすために必要なローション組成物の量が少なくて済むということを意味する。
本発明に係るローション組成物は、トップシートの外表面に塗られた際に、通常の接触、着用者の身動き、および/または体温によって着用者の皮膚に移ることができる。重要なことは、本発明において開示されているローション剤は、着用者の皮膚にBMが付着することを減少させ、その結果、BMの清浄除去を容易にしていることである。
本発明に係るトップシートには、有効な量のローション組成物が含まれている。本明細書中で用いられているように、「有効な量のローションコーティング」という用語は、トップシートに塗られた際に着用者の皮膚にBMが付着することを減少させる効果があるような、個々のローション組成物の量を指す。ローションコーティングの有効な量が、使用する個別のローション組成物に、かなりの程度依存することは言うまでもない。
本発明に係るローション組成物には、以下のものが含まれる。(1)エモリエント剤、(2)エモリエント剤用の固定化剤、(3)任意の親水性界面活性剤、(4)その他の任意成分。
配合されたローション組成物の粘性率は、エモリエント剤、固定化剤および任意成分も含んで、ローション剤が吸収性用品の内部へと流れ込まないようにできるだけ高くなければならない。残念ながら、粘性率が高いと、ローション組成物を塗る際に作業上の問題が発生する。従って、トップシートの表面でローション組成物が局在化できる程度に十分高く、しかしながら、作業上の問題が発生しない程度に高くないような粘性率となるように、バランスが取られなければならない。ローション組成物にとって好適な粘性率は、典型的には、60℃において、約5〜約200センチポアズであり、好ましくは、約15〜約100センチポアズである。
1.エモリエント剤
ローション組成物の中で鍵となる活性成分は、一つもしくはそれ以上のエモリエント剤である。本明細書中で用いられているように、エモリエント剤とは、皮膚を軟化し、和らげ、柔軟にし、被覆し、潤滑し、湿気を与え、もしくはきれいにする材料である。エモリエント剤により、一般に、皮膚を和らげ、湿気を与え、そして潤滑するというような、上述の目的のいくつかが達成される。本発明の目的のために、これらのエモリエント剤の粘度(consistency)は、20℃つまり周囲温度において、可塑性もしくは流動性のどちらかとなっている。このエモリエント剤のそれぞれの粘度により、ローション組成物からは柔らかく、すべすべした、ローションと同じような感触がもたらされる。
本発明において有用であるエモリエント剤は、また実質的に水分を含まない。「実質的に水分を含まない」という用語は、エモリエント剤に水分が意図的には加えられていないことを意味する。本発明に係るローション組成物を調製し、または使用する上で、エモリエント剤に水を加える必要はなく、水の添加は別に乾燥作業を必要とすることさえあり得る。しかしながら、たとえば周囲の湿度の影響でエモリエント剤中に取り込まれた少量もしくは極微量の水分は、悪影響をもたらすこともなく許容される。典型的に、本発明において使用されるエモリエント剤としては、約5%あるいはそれ未満の水分、より好ましくは約1%あるいはそれ未満の水分、最も好ましくは約0.5%あるいはそれ未満の水分が含まれている。
本発明において有用であるエモリエント剤は、石油系、脂肪酸エステル系、アルキルエトキシレート系、脂肪酸エステルエトキシレート、脂肪アルコール系、ポリシロキサン系、もしくはこれらのエモリエント剤の混合物であり得る。好適な石油系エモリエント剤には、鎖の長さが16〜32の炭素原子である炭化水素もしくは炭化水素の混合物が含まれる。これらの鎖の長さを有する石油系炭化水素には、鉱油(「液体ペテロラタム」としても知られている)およびペトロラタム(「ミネラルワックス」、「石油ゼリー(petroleum jelly)」そして「鉱ゼリー(mineral jelly)」としても知られている)が含まれる。鉱油は、16〜20の炭素原子を有する炭化水素の粘度率が低い混合物を、通常指す。ペトロラタムは、16〜32の炭素原子を有する炭化水素からなる粘性率が高い混合物を、通常指す。ペトロラタムおよび鉱油は、本発明に係るローション組成物にとっては特に好ましいエモリエント剤である。
好適な脂肪酸エステル系エモリエント剤には、C12-C28脂肪酸、好ましくはC16-C22飽和脂肪酸、および短鎖(C1-C8、好ましくはC1-C3)一価アルコールから得られるエモリエント剤が含まれる。このようなエステルの代表例には、メチルメチルパルミテート、メチルステアレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、エチルヘキシルパルミテート、およびこれらの混合物が含まれる。好適な脂肪酸エステルエモリエント剤は、さらに、より長い鎖の脂肪アルコール(C12-C28、好ましくはC12-C16)、および、たとえば乳酸のようなより鎖の短い脂肪酸から得られ、たとえばラウリルラクテートおよびセチルラクテートがある。
好適なアルキルエトキシレート系エモリエント剤には、平均のエトキシル化度が約2〜約30である、C12-C22脂肪アルコールエトキシレートが含まれる。脂肪アルコールエトキシレートエモリエント剤は、平均のエトキシル化度が約2〜約23であるラウリル、セチル、およびステアリルエトキシレート、およびこれらの混合物から構成された群から選ばれることが好ましい。このようなアルキルエトキシレートの代表例には、ラウレス-3(平均のエトキシル化度が3であるラウリルエトキシレート)、ラウレス-23(平均のエトキシル化度が23であるラウリルエトキシレート)、セテス-10(平均のエトキシル化度が10であるセチルアルコールエトキシレート)、そしてステアレス-10(平均のエトキシル化度が10であるステアリルアルコールエトキシレート)が含まれる。これらのアルキルエトキシレートエモリエント剤は、典型的には、ペトロラタムのような石油系エモリエント剤と組合わされて使用される。組合わせとしては、アルキルエトキシレートエモリエント剤と石油系エモリエント剤との重量比が、約1:1から約1:5、好ましくは約1:2から約1:4である。
好適な脂肪アルコール系エモリエント剤には、C12-C22脂肪アルコール、好ましくはC16-C18脂肪アルコールが含まれる。代表的には、セチルアルコールならびにステアリルアルコール、およびこれらの混合物が含まれる。これらの脂肪アルコールエモリエント剤は、典型的には、ペトロラタムのような石油系エモリエント剤と組合わせて使用される。組合わせとしては、脂肪アルコールエモリエント剤と石油系エモリエント剤との重量比が、約1:1から約1:5、好ましくは約1:1から約1:2である。
本発明で使用する上で好適な他の系のエモリエント剤には、ポリシロキサン化合物が含まれる。一般に、本発明で使用する上で好適なポリシロキサン材料には、次に示す構造のシロキサン単量体単位を有するものが含まれる。

ここで、互いに独立したシロキサン単量体単位についてのR1およびR2は、互いに独立に、水素、もしくはいかなるアルキル、アリール、アルケニル、アルカリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化炭化水素、またはその他の基であり得る。このような基は、いずれも置換もしくは非置換のどちらでも良い。いずれかの特定の単量体単位のR1およびR2の基は、隣接する次の単量体単位の対応する官能基と異なっていても良い。さらに、ポリシロキサンは、直鎖もしくは分岐鎖のどちらでも良く、また環状構造を有していても良い。さらに、基R1およびR2は、互いに独立に、ポリシロキサン、シラン、およびポリシラン(しかし、これらに限定されない)のような他のシラス(silaceous)官能基であっても良い。基R1およびR2には、たとえばアルコール、カルボン酸、フェニル、およびアミン官能基遠のさまざまな有機官能基のうち、いかなるものも含まれる。
例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ベンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、オクタデシルなどが挙げられる。例示的なアルケニル基としては、ビニル、アリルなどが挙げられる。例示的なアリール基としては、フェニル、ジフェニル、ナフチルなどが挙げられる。例示的なアルカリール基としては、トイル、キシリル、エチルフェニルなどが挙げられる。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、アルファ-フェニルエチル、ベータ-フェニルエチル、アルファ-フェニルブチルなどが挙げられる。例示的なシクロアルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。例示的なハロゲン化炭化水素基としては、クロロメチル、ブロモエチル、テトラフルオロエチル、フルオロエチル、トリフルオロエチル、トリフルオロトイル、ヘキサフルオロキシリルなどが挙げられる。
ポリシロキサンをトップシートに塗る上で、ポリシロキサンが流れるもしくは流れるように作れる限り、有用なポリシロキサンの粘性率は、ポリシロキサンの粘性率が一般に変化するのと同じように、広く変化していても良い。このことは、粘性率として、5から約20,000,000センチストークス(37℃においてガラス粘性度計(glass viscometer)で測定)の値を含む(しかし、この値に限定されない)。ポリシロキサンの粘性率は、37℃において、約5〜約5,000センチストークスであることが好ましく、より好ましくは、約5〜約2,000センチストークスであり、最も好ましくは、約100〜約1,000センチストークスである。ポリシロキサンは粘性率が高くなると、それ自身は流れにくくなるが、たとえばポリシロキサンを界面活性剤中で乳化するか、もしくは溶媒を用いて溶解させるというような方法により、ポリシロキサンを効果的にトップシート上に塗ることができる。溶媒としては、単に例示的なものという意味で、ヘキサンが挙げられる。ポリシロキサンエモリエント剤をおむつトップシートに塗るための個々の方法については、後でより詳しく説明する。
本発明に用いる上で好ましいポリシロキサン化合物は、アンパルスキ(Ampulski)らの米国特許第5,059,282号(1991年10月22日発行)で開示されている。この特許は、本明細書の中で引用により取り入れられている。本発明に係るローション組成物のエモリエント剤として用いるポリシロキサン化合物は、以下のものを含んでいることが特に好ましい。フェニル官能性のポリメチルシロキサン化合物(たとえば、ダウコーニング550コスメチックグレード液体のポリフェニルメチルシロキサン)、およびセチル官能基もしくはステアリル官能性のジメチコーン(dimethicones)(それぞれ、たとえばダウ2502およびダウ2503ポリシロキサン液体)。このようなフェニル官能基もしくはアルキル基による置換に加えて、以下の基を用いても効果的な置換が行える。つまり、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エーテル基、ポリエーテル基、アルデヒド基、ケトン基、アミド基、エステル基、およびチオール基である。これらの効果的な置換基の中でも、フェニル基、アミノ基、アルキル基、カルボキシル基、およびヒドロキシル基を含む基の族が、他のものよりもより好ましく、さらにフェニル官能基が最も好ましい。
石油系エモリエント剤、脂肪酸エステルエモリエント剤、脂肪酸エステルエトキシレート、アルキルエトキシレートエモリエント剤、脂肪アルコールエモリエント剤、およびポリシロキサンのほかに、本発明に有用なエモリエント剤には、他の従来のエモリエント剤が少量(たとえばエモリエント剤の総量に対して最大約10%まで)含まれていても良い。これらのその他の従来のエモリエント剤としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、鯨ロウその他のワックス、脂肪酸、そして脂肪鎖の中に12から28の炭素原子を含む脂肪アルコールエーテル(例えば、ステアリン酸、プロポキシレン脂肪アルコール)、グリセリド、アセトグリセリド、そしてC12-C28脂肪酸のエトキシル化グリセリド、ポリヒドロキシアルコールのその他の脂肪エステル、ラノリンおよびその誘導体が含まれる。これらのその他のエモリエント剤は、ローション組成物の固体もしくは半固体の特性が保持されるように含まれなければならない。
ローション組成物に含まれるエモリエント剤の量は、さまざまな要因に依存する。要因としては、含まれる個々のエモリエント剤の種類、所望のローション様効果、ローション組成物に含まれる他の成分などが挙げられる。ローション組成物には、約10%〜約95%のエモリエント剤が含まれる。好ましくは、ローション組成物は、約20%〜80%、最も好ましくは40%〜75%のエモリエント剤を含む。
2.固定化剤
本発明に係るローション組成物の中で特に鍵となる成分は、ローション組成物が塗られた吸収性用品のトップシート上に、エモリエント剤を固定することができる固定化剤である。ローション組成物のエモリエント剤の粘度は、20℃において可塑性もしくは流動性であるため、加えられたせん断力がわずかでも、流れるか、もしくは染み込んでいく傾向を有する。エモリエント剤がおむつトップシートに塗られた時には、特にエモリエント剤が融解もしくは溶融している状態においては、エモリエント剤はほとんどトップシートの表面には残らない。その代わり、エモリエント剤は吸収性用品の中へと染み込んでいく、もしくは流れ込んでいく傾向を有する。
このように、吸収性用品の中へエモリエント剤が染み込んでいくことによって、吸収性用品のコアの吸収性に対して望ましくない影響が生じる。これは、本発明に係るローション組成物において使用されるエモリエント剤の多くが、疎水性を有するためである。また、ローション剤の所定の治療効果もしくは保護効果が得られるためには、多量のエモリエント剤をトップシートに塗らなければならないということも、意味する。エモリエント剤の量が増えると、コストが上昇するだけでなく、コアの吸収性に対して望ましくない影響が顕著になる。
固定化剤により、ローション組成物が塗られたトップシートの表面にエモリエント剤がほぼ局在化するため、エモリエント剤が染み込むもしくは流れるという傾向が妨げられる。これは、固定化剤によってローション組成物の融点がエモリエント剤の融点を上回るという事実に、ある程度起因するものであると信じられている。固定化剤には、またエモリエント剤と混合する(または、適切な乳化剤を使用することにより、エモリエント剤の中で溶解する)性質もあるため、エモリエント剤がトップシートの表面に捕らえることも起こる。
トップシートの表面に固定化剤を「固定(lock)」してしまうことも、また利点となる。これは、トップシートの表面で急速に結晶化する(すなわち固体化する)固定化剤を使用することにより、実現される。また、処理されたトップシートの外側を、送風器、扇風機などを用いて冷却することにより、固定化剤の結晶化を速めることができる。
エモリエント剤と混合する(もしくはエモリエント剤の中で溶解する)ことに加えて、固定化剤はその融点が少なくとも約35℃である必要がある。このことにより、固定化剤自体は染み込むもしくは流れるという傾向を有しない。固定化剤の融点は、少なくとも約40℃であることが好ましい。典型的には、固定化剤の融点は、約50℃から約150℃であることが好ましい。
本発明に係る好適な固定化剤には、C14-C22脂肪アルコール、C12-C22脂肪酸、ならびに、平均のエトキシル化度が2から約30であるC12-C22脂肪アルコールエトキシレート、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた一つの要素が含まれる。好ましい固定化剤には、C16-C18脂肪アルコールが含まれ、最も好ましくは、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた要素が含まれる。これらのうち、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物が特に好ましい。好ましいその他の固定化剤には、C16-C18脂肪酸が含まれ、最も好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物からなる群から選ばれた要素が含まれる。これらのうち、パルミチン酸およびステアリン酸の混合物が特に好ましい。さらに、好ましいその他の固定化剤には、平均のエトキシル化度が約5〜約20であるC16-C18脂肪アルコールエトキシレートが含まれる。脂肪アルコール、脂肪酸および脂肪アルコールは、直鎖であることが好ましい。
重要なのは、C16-C18脂肪アルコールのような好ましい固定化剤により、ローション剤の結晶化速度が増加し、その結果、ローション剤が基板表面で急速に結晶化することである。その結果、使用するローション剤が少なくて済むか、またはローションのすぐれた感触がもたらされる。従来、これらの液体がおむつコアへと流れていたために、柔らかさを出すために多量のローション剤が必要であった。
その他の種類の固定化剤は、単独で使用するか、もしくは前述した脂肪アルコール、脂肪酸、そして脂肪アルコールエトキシレートと組合わせて使用することができる。その他の種類の固定化剤の例には、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、およびこれらの混合物が含まれる。エステルおよびアミドは、3もしくはそれ以上の遊離ヒドロキシ基をポリヒドロキシ基に有していることが好ましく、また典型的には非イオン性であることが好ましい。ローション組成物が塗られるトップシートに対して、皮膚は敏感であり得るので、これらのエステルおよびアミドは、また皮膚に対して比較的やさしく、そして刺激的でない必要がある。本発明に使用する上で好適なポリヒドロキシ脂肪酸エステルは、次の構造を有する。

ここで、RはC5-C31ヒドロカルビル基であり、好ましくは直鎖のC7-C19アルキルもしくはアルケニルであり、より好ましくは直鎖のC9-C17アルキルもしくはアルケニルであり、最も好ましくは直鎖のC11-C17アルキルもしくはアルケニルであり、またこれらの混合物である。Yはヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル基であり、少なくとも2つの遊離ヒドロキシルが鎖に直接結合している。そしてnは少なくとも1である。好適なY基は、以下のものから得ることができる:グリセロール、ペンタエリスリトールのようなポリオール;ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、シュクロース、グルコース、キシロース、フラクトース、マルトース、ラクトース、マンノース、およびエチトロースのような糖;エリスリトール、キシリトール、マリトール、アンニトール、およびソルビトールのような糖アルコール;そして、ソルビタンのような糖アルコール無水物。
本発明に使用する上で好適なポリヒドロキシ脂肪酸エステルの一つの種類には、あるソルビタンエステルが含まれ、C16-C22飽和脂肪酸のソルビタンエステルであることが好ましい。ソルビタンエステルが製造される典型的な方法により、これらのソルビタンエステルには、通常モノ-、ジ-、トリ-などのエステルの混合物が含まれる。好適なソルビタンエステルの代表例には、ソルビタンパルミテート(たとえばSPAN40)、ソルビタンステアレート(たとえばSPAN60)、およびソルビタンベヘネートが含まれ、これらの代表例には、ソルビタンエステルのモノ-、ジ-、トリ-エステルのバージョンが、一つもしくはそれ以上含まれる。これらのバージョンには、たとえば、ソルビタンモノ-、ジ-およびトリ-パルミテート、ソルビタンモノ-、ジ-およびトリ-ステアレート、ソルビタンモノ-、ジ-およびトリ-ベヘネート、さらに混合された獣脂(タロウ)脂肪酸モノ-、ジ-およびトリ-エステルが挙げられる。ソルビタンパルミテートとソルビタンステアレートのように、異なったソルビタンエステルからなる混合物を使用しても良い。ソルビタンエステルとしては、ソルビタンステアレートが特に好ましい。ソルビタンステアレートとしては、典型的には、SPAN60のようなモノ-、ジ-、およびトリ-エステル(加えて多少のテトラエステル)の混合物、およびグリコムル-エス(GLYCOMUL-S)という商標でロンザ(Lonza)株式会社より販売されているソルビタンステアレートが挙げられる。これらのソルビタンエステルには、典型的にはモノ-、ジ-、およびトリ-エステルの混合物、加えて多少のテトラエステルが含まれるが、これらの混合物においては、通常、モノ-およびジ-エステルが支配的な種となっている。
本発明に使用する上で好適なポリヒドロキシ脂肪酸エステルの他の種類には、あるグリセリルモノエステルが含まれ、C16-C22飽和脂肪酸のグリセリルモノエステルであることが好ましい。C16-C22飽和脂肪酸のグリセリルモノエステルには、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノパルミテート、およびグリセリルモノベヘネートが含まれる。ここでも、ソルビタンエステルのように、グリセリルモノエステル混合物には、典型的には多少のジ-、およびトリエステルが含まれる。しかしながら、このような混合物には、本発明において有用であるためには、グリセリルモノエステル種が支配的に含まれていなくてはならない。
本発明に使用する上で好適なポリヒドロキシ脂肪酸エステルの他の種類には、あるシュクロース脂肪酸エステルが含まれ、シュクロースのC12-C22飽和脂肪酸エステルであることが好ましい。シュクロースモノエステルおよびジエステルが特に好ましく、これらにはシュクロースモノ-およびジ-ステアレートおよびシュクロースモノ-およびジ-ラウレートが含まれる。
本発明に使用する上で好適なポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、次の構造を有する。

ここで、R1は、水素、C1-C4ヒドロカルビル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、メトキシエチル、メトキシプロピル、もしくはこれらの混合物であり、好ましくは、C1-C4アルキル、メトキシエチル、もしくはメトキシプロピルであり、より好ましくは、C1もしくはC2アルキル、またはメトキシプロピルであり、最も好ましくは、C1アルキル(つまり、メチル)、もしくはメトキシプロピルである。R2は、C5-C31ヒドロカルビル基、好ましくは、直鎖のC7-C19アルキルもしくはアルケニル、より好ましくは、直鎖のC9-C17アルキルもしくはアルケニル、最も好ましくは、直鎖のC11-C17アルキルもしくはアルケニル、またはこれらの混合物である。Zは、線状のヒドロカルビル鎖を有するポリヒドロキシヒドロカルビル基であり、少なくとも3つのヒドロキシルが鎖に直接結合している。ホンザ(Honsa)の米国特許第5,174,927号(1992年12月29日発行)を参照されたい(この特許は、本明細書の中で引用により取り入れられている)。この特許においては、これらポリヒドロキシ脂肪酸アミドが、それらの製造方法とともに開示されている。
Z基は、還元アミノ化反応での還元糖から得られることが好ましい。最も好ましくは、グリシチルである。好適な還元糖には、グルコース、フラクトース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、マンノース、およびキシロースが含まれる。高デキストロースコーンシロップ、高フラクトースコーンシロップ、および高マルトースコーンシロップとともに、上述した個々の糖を使用することもできる。これらのコーンシロップから、Z基用に糖成分の混合物を製造することができる。Z基は、-CH2-(CHOH)n-CH2OH、-CH(CH2OH)-[(CHOH)n-1]-CH2OH、-CH2OH-CH2-(CHOH)2(CHOR3)(CHOH)-CH2OHからなる群から選ばれていることが好ましい。ここで、nは3から5の整数、そしてR3は水素、または環状もしくは脂肪族のモノサッカライドである。nが4であるグリシチル、特に-CH2-(CHOH)4-CH2OHが最も好ましい。
前述の構造式において、R1は、たとえばN-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-イソプロピル、N-ブチル、N-2-ヒドロキシエチル、N-メトキシプロピル、もしくはN-2-ヒドロキシプロピルであっても良い。R2には、たとえばコカミド、ステアラミド、オレアミド、ラウラミド、ミリストアミド、カプリカミド、パルミトアミド、タロウアミドなどを提供するように選ばれてもよい。Z基は、1-デオキシグルシチル、2-デオキシフラクチチル、1-デオキシマルチチル、1-デオキシラクチチル、1-デオキシガラクチチル、1-デオキシマンニチル、1-デオキシマルトトリオチチルなどであっても良い。
最も好ましいポリヒドロキシ脂肪酸アミドは、次の一般的な構造式を有する。

ここで、R1は、メチル、もしくはメトキシプロピルである。R2は、C11-C17直鎖アルキルもしくはアルケニル基である。これらには、N-ラウリル-N-メチルグルカミド、N-ラウリル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-ココイル-N-メチルグルカミド、N-ココイル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-パルミチル-N-メトキシプロピルグルカミド、N-タロウイル-N-メチルグルカミド、もしくはN-タロウイル-N-メトキシプロピルグルカミドが含まれる。
前述のように、固定化剤の中には、乳化剤を用いてエモリエント剤中で溶剤させる必要のあるものがある。これは、特に、HLB価が少なくとも約7であるN-アルキル-N-メトキシプロピルグルカミドのような、ある種のグルカミドの場合である。好適な乳化剤には、典型的にHLB価が約7を下回る乳化剤が含まれる。この点に関しては、HLB価が約4.9もしくはそれ未満であるソルビタンステアレートのような、前述したソルビタンエステルが、これらグルカミド固定化剤をペトロラタム中で溶解させる上で有効であることが見出だされている。好適な他の乳化剤には、ステアレス-2(構造式CH3(CH2)17(OCH2CH2)nOH(nの平均値は2)に従う、ステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル)、ソルビタントリステアレート、イソソルビドラウレート、およびグリセリルモノステアレートが含まれる。エモリエント剤の中で固定化剤を溶解させるのに十分な量の乳化剤が投入されることにより、実質的に均一な混合物が得られる。一例として、N-ココイル-N-メチルグルカミドとペトロラタムを約1:1の比で混合した混合物は、通常は融解した単一相混合物になるということはないが、ステアレス-2とソルビタントリステアレートの1:1混合物20%を乳化剤として加えることにより、融解して単一相混合物となる。
固定化剤として用いることができる他の種類の成分には、カルナウ、蜜ロウ、カンデリラ、パラフィン、セレシン、エスパルト、オウリクリ(ouricuri)、レゾロウ(rezowax)のようなワックス、およびその他の既存のワックスが含まれる。これらの他の種類の成分は、単独で、もしくは前述の固定化剤と組合わせて用いることができる。ワックスは、パラフィンワックスであることが好ましい。特に好ましいパラフィンワックスの例は、パラフィンS.P.434(ストラールアンドピッチ(Strahl and Pitsch)社製、私書箱1098、ウェストバビロン、ニューヨーク州11704)である。
ローション組成物に含まれるべき固定化剤の量は、さまざまな要因に依存する。要因としては、含まれる個々のエモリエント剤の種類、含まれる個々の固定化剤の種類、エモリエント剤中で固定化剤を溶解するために乳化剤が必要とされるかどうか、ローション組成物に含まれる他の成分などが挙げられる。ローション組成物には、約5%〜約90%、好ましくは、約5%〜50%、最も好ましくは、10%〜40%の固定化剤が含まれる。
3.任意の親水性界面活性剤
前述したように、トップシートは、親水性の材料から形成され、液体(尿など)がトップシートをすばやく通り抜けるのを促進することが強く望まれる。同様に、ローション組成物も濡れ性が十分に高く、液体がトップシートをよりすばやく通り抜けることを確実にすることが重要である。このことにより、体内からの滲出物が、トップシートを通り抜け吸収性コアに吸収されるというよりおむしろ、トップシートのまわりへはみ出て流れてしまう(flow off)という可能性を減らすことができる。本発明のローション組成物に用いる個々の固定化剤によっては、濡れ性を改善するために親水性の界面活性剤(もしくは親水性界面活性剤の混合物)をさらに必要としたり、またはしなかったりする。たとえば、N-ココイル-N-メトキシプロピルグルカミドのような固定化剤は、HLB価が少なくとも約7であり、親水性の界面活性剤を添加しなくても十分に濡れ性が高い。一方、C16-C18脂肪アルコールのような他の固定化剤は、HLBが約7を下回っており、ローション組成物をおむつトップシートに塗る際に、親水性の界面活性剤を添加して濡れ性を改善する必要がある。同様に、ペトロラタムのような疎水性の固定化剤は、親水性の界面活性剤を必要とする。
好適な親水性の界面活性剤は、緩和材および固定化剤と混合性であり、均一な混合物を形成する。ローション組成物が塗られて使用されるこれらのトップシートに対して、皮膚は敏感であり得るので、これらの界面活性剤も、皮膚に対して比較的やさしく、そして刺激的でない必要がある。一般に、これらの親水性の界面活性剤は非イオン性であるため、皮膚に対して刺激的でないだけでなく、その下に敷かれるいかなるティッシュの積層構造に対しても、その他の好ましくない影響(たとえば、引っ張り力の減少)が生じないようになっている。
好適な非イオン性の界面活性剤は、ローション組成物がトップシートに塗られた後に、実質的に非移動性であっても良く、また一般にHLB価が約4から約20である、好ましくは、約7から約20となっている。非イオン性の界面活性剤が非移動性であるためには、一般にその融点が、保存中、出荷中、取引中、および使い捨て吸収性用品の使用中の温度、たとえば少なくとも約30℃、よりも高くなっている。この点に関しては、これら非イオン性界面活性剤の融点は、前述した固定化剤の融点に近いことが好ましい。
本発明に係るローション組成物に使用する上で好適な非イオン性の界面活性剤には、アルキルグルコシド;アルキルグリコシドエーテル、これらはラングドン(Langdon)らの米国特許第4,011,389号(1977年3月8日発行)で説明されている;ペゴスパース(Pegosperse)1000MS(ロンザ株式会社、フェアローン(Fair Lawn)、ニュージャージー州より販売されている)のような、アルキルポリエトキシレートエステル;C12-C18脂肪酸のエトキシレートソルビタンモノ-、ジ-、および/またはトリ-エステル、ここで、C12-C18脂肪酸は、平均のエトキシル化度が約2〜約20、好ましくは、約2〜約10であり、これには、ツイーン(TWEEN)60(平均のエトキシル化度が約20である、ステアリン酸のソルビタンエステル)、およびツイーン60(平均のエトキシル化度が約4である、ステアリン酸のソルビタンエステル)がある;約1〜約54モルのエチレン酸化物と脂肪族アルコールの縮合物が含まれる。脂肪族アルコールのアルキル鎖は、一般に直鎖(線状)の構成となっており、約8〜約22の炭素原子を含んでいる。約11〜約22の炭素原子を含むアルキル基を有するアルコールとアルコール1モル当たり約2〜約30モルのエチレン酸化物との縮合物が、特に好ましい。このようなエトキシル化アルコールの例には、ミリスチルアルコールとアルコール1モル当たり7モルのエチレン酸化物の縮合物、ココナッツアルコール(10〜14の炭素原子の長さのアルキル鎖を有する脂肪アルコールの混合物)と約6モルのエチレン酸化物の縮合物が含まれる。数多くの好適なエトキシル化アルコールが、市販されている。この中には、以下のものが含まれる。テルジトル(TERGITOL)15-S-9(9モルのエチレン酸化物とC13-C15直鎖アルコールの縮合物)、これは、ユニオンカーバイドコーポレーション(Union carbide Corporation)から販売されている。キロエオブ(KYRO EOB)(9モルのエチレン酸化物とC13-C15直鎖アルコールの縮合物)、これは、プロクターアンドギャンブル(Procter & Gamble)株式会社から、販売されている。ネオドル(NEODOL)という商標名の界面活性剤、これはシェル(Shell)化学株式会社から販売されている。特に、ネオドル25-12(12モルのエチレン酸化物とC12-C15直鎖アルコールの縮合物)、およびネオドル23-6.5T(6.5モルのエチレン酸化物とC12-C13直鎖アルコールの縮合物であって、蒸留(常圧蒸留(tepped))して、ある程度不純物を除去したもの)。そして特に、プルラファック(PLURAFAC)という商標名の界面活性剤、これはバスフ(BASF)株式会社から販売されている。特に、プルラファックA-38(27モルのエチレン酸化物とC18直鎖のアルコールの縮合物)。(ある種の親水性界面活性剤、特にネオドル25-12のようにエトキシレートアルコールは、アルキルエトキシレートエモリエント剤としても機能する)。好ましくはエトキシル化アルコールエモリエント剤のその他の例としては、プリッジュ(Brij)界面活性剤のアイシーアル級(ICI’s class)、およびその混合物が含まれる。その中でも、ブリッジュ72(すなわち、ステアレス-2)およびブリッジュ76(すなわち、ステアレス-10)が、特に好ましい。また、エトキシル化されて平均のエトキシル化度が約10〜約20となっている、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物を、親水性界面活性剤として使用しても良い。
本発明に使用する上で好適な界面活性剤の他の例には、エアロゾルOT(Aerosol OT)が含まれる。これは、ナトリウムスルホコハク酸(sodium sulfosuccinic acid)であり、アメリカン・シアナミド・カンパニー(American Cyanamid Company)から販売されている。
さらに、本発明に使用する上で好適な界面活性剤の他の例には、ジェネラルエレクトリックエスエフ1188(General Electric SF 1188)(ポリジメチルシロキサンおよびポリオキシアルキレンエーテルの共重合体)、およびジェネラルエレクトリックエスエフ1228(シリコーンポリエーテル共重合体)のようなシリコーン共重合体が含まれる。これらのシリコーン界面活性剤は、エトキシル化アルコールのような前述の別の種類の親水性界面活性剤と組合わせて使用しても良い。これらのシリコーン界面活性剤は、0.1%の低い濃度、より好ましくは約0.25%から約1.0%の濃度において、効果があることが見出だされている。ここで、濃度はローション組成物の重量によって決められる。
ローション組成物の濡れ性を所定のレベルにまで増加させるのに必要な、親水性界面活性剤の量は、用いられる固定化剤のHLB価および量、用いられる界面活性剤のHLB価などに依存する。ローション組成物の濡れ性を増加させることが必要とされる際には、ローション組成物には、約1%〜約50%、好ましくは、約1%〜約25%、最も好ましくは、約10%〜約20%の親水性界面活性剤が含まれる。
4.その他の任意成分
ローション組成物は、一般にエモリエント剤、クリーム、そしてこの種のローション剤の中に、その他の任意成分を含むことができる。これらの任意成分には、水、粘性率調整剤、香料、消毒剤、抗バクテリア活性剤、薬理活性剤、フィルム形成剤、脱臭剤、不透明化剤、収斂剤(アストリンジェント)、溶剤などが含まれる。さらに、ローション組成物の保存期間を長くするために、安定剤を添加しても良い。この安定剤には、セルロース誘導体、蛋白質およびレシチンが含まれる。これらの物質はすべて、当該技術分野において、このような配合物に対する添加剤として知られており、適切な量にて、本発明に係るローション組成物に使用することができる。
C.ローション組成物によるおむつトップシートの処理
本発明に基づいてローションが塗られたおむつ用品を調製する際、ローション組成物はおむつトップシートの外側表面(すなわち、身体側表面)に塗られる。溶融粘度もしくは液状粘度を有する潤滑性材料を、均一に分散させることができるさまざまな塗布方法のうち、いかなる方法をも用いることができる。好適な方法には、スプレー法、印刷法(たとえば、フレキソ印刷法)、コーティング法(たとえば、グラビアコーティング法)、押出し法、もしくはこれらの塗布技術の組合わせが含まれる。塗布技術の組合わせとしては、たとえば、カレンダーロールのような回転表面にローション組成物をスプレーし、次に、この組成物をおむつトップシートの外側表面に移すことなどが挙げられる。
おむつトップシートにローション組成物を塗る際、トップシートがローション組成物によって飽和してしまわないようにすることが必要である。もし、トップシートがローション組成物によって飽和してしまうと、このローション剤がトップシートの開口を塞いでしまう可能性が大きい。その結果、下に敷かれた吸収性コアに液体を透過させるトップシートの能力が、損なわれてしまう。また、ローション剤の治療効果、および/または保護効果を得る上で、トップシートがローション組成物によって飽和する必要はない。主としておむつトップシートの外側表面にローション組成物を塗ることができる塗布方法が、特に好適である。
おむつトップシートに塗るローション剤の最小量は、着用者の皮膚にBMが付着することを減少させるのに有効な量である。本発明に係るおむつトップシートに塗るローション組成物の量は、約0.16g/m2(0.1mg/in2)〜約39g/m2(25mg/in2)であることが好ましく、より好ましくは、約1.6g/m2(1mg/in2)〜約16g/m2(10mg/in2)である(mg/in2は、コーティングされたトップシート上の1in2あたりのローション剤のmg量である)。トップシートの表面上で、エモリエント剤は実質的に固定化されているので、所定の皮膚手入れ剤の効果をもたらすのに必要なローション組成物の量は、少なくて済む。このような、ローション組成物の量が比較的少なくとも、ローション組成物の所定の治療効果および/または保護効果をトップシートにもたらす上では十分であり、そしてトップシートの吸収性および/また濡れ性が飽和することもない。
ローション組成物は、トップシートの表面全体に塗っても良いし、表面の一部に塗っても良い。ローション組成物は、使い捨て吸収性用品の縦方向の中心線と整列しこの中心線上に中心を持つストライプの模様に、塗られることが好ましい。また、後述する実施例で説明するように、トップシートの個別の領域にローション組成物が塗られていることが最も好ましい。ここで、個別の領域としては、たとえば、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)、長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)のパッチであって、一般に第2ウェスト領域の方に配置されるものが挙げられる。
ローション組成物は、おむつトップシートの外側表面に不均一に塗られても良い。不均一」とは、ローション組成物の分量、分散パターンなどが、トップシート表面上で変化することを意味する。たとえば、トップシートの処理表面のうち、ある部分のローション組成物の量が多くても、または少なくても良い。これには、ローション組成物が全く塗られていない表面部分があることも含む。
ローション組成物は、組立て中のどの時点においても、塗ることができる。たとえば、完成した使い捨て吸収性用品が包装される前に、トップシートにローション組成物を塗ることができる。また、トップシートが他の素材と組み合わされて使い捨て吸収性用品を完成する前に、トップシートにローション組成物を塗ることもできる。
ローション組成物は、一般に融解したものから、おむつトップシートに塗る。ローション組成物は、周囲温度よりもかなり高い温度で融解するので、通常トップシートへの加熱コーティングとして塗られる。典型的には、ローション組成物はおむつトップシートに塗られる前に、約35℃〜約100℃の温度に、好ましくは、約40℃〜約90℃の温度に、加熱される。融解したローション組成物がおむつトップシートに塗られた後、ローション組成物は徐冷され固体化され、そして、固体化したコーティングもしくはフィルムがトップシートの表面に形成される。塗布工程は、ローション剤の冷却/形成を補助するように設計されていることが好ましい。
本発明に係るローション組成物をおむつトップシートに塗る方法としては、スプレー法、グラビアコーティング法、および押出しコーティング法が好ましい。図1は、このような好ましい方法の一つを示している。この方法は、トップシートが他の素材と組合わされて完成品となる前に、おむつトップシートへコーティングをスプレーすることを含んでいる。図1において、トップシート不織布1が親トップシートロール2(矢印2aで示された方向に回転している)からほどかれて、スプレーステーション6へと進む。スプレーステーション6では、トップシート布1の一方の側面に、熱く、融解した(たとえば65℃)ローション組成物がスプレーされる。スプレーステーションを出たところで、布1はローションが塗られた布3になる。ローション剤が塗られたトップシート布3は、次に、回転ロール4および回転ロール8のまわりに沿って進み、そしてローション剤が塗られたトップシート用の親ロール10(矢印10aで示された方向に回転している)に巻き取られていく。
図2は、好ましい他の方法を示している。この方法は、変換工程の間に、連続的にもしくは断続的に、おむつトップシート上へローション組成物をスプレーすることを含んでいる。図2において、ベルトコンベアー1は、回転ロール3および4の上を矢印で示された方向に進み、そして戻りのベルトコンベアー2になる。ローション剤が塗られていないおむつ5は、ベルトコンベアー1によってスプレーステーション6へと運ばれ、そこでは、熱く、融解した(たとえば65℃)ローション組成物が、トップシートパッチ7にスプレーされる。スプレーステーションを出たところで、ローション剤が塗られていないおむつ5は、ローション剤が塗られたおむつ8になり、ローション剤が塗られたトップシートを有している。トップシートパッチ7へと移されるローション組成物の量は、(1)スプレーステーション6からスプレーされる、融解したローション組成物の速度、および/または(2)スプレーステーション6の下を移動するベルトコンベヤー1の速度により制御される。
本発明に基づいてローション剤が塗られたおむつトップシートを作製する具体的な実施例
以下に、本発明に基づいておむつトップシートにローション組成物を施す具体的な実施例を示す。
実施例1
A.ローション組成物の調製
水分を含まないローション組成物(ローション剤A)を、以下に示す融解した(つまり液体の)成分を同時に混合することにより調製した。鉱油(カーネーションホワイトミネラルオイル(Carnation White Mineral Oil)、USP、ウィトコ社(Witco Corp.)製)、セテアリルアルコール(Cetearyl Alcohol)(混合直鎖C16-C18第1アルコール、商品名TA-1618、プロクターアンドギャンブル社製)、ステアレス-2(ブリッジュ72、平均エトキシル化度が2のC18直鎖アルコールエトキシレート、ICIアメリカ製)。これらの成分の重量パーセントを、下記の表1に示す。

B.加熱溶融スプレー法によるローション剤が塗られたおむつトップシートの作製
ローション剤Aを、約51.5℃(125°F)の下で動作する加熱容器の中に入れた。続いて、ローション成分Aをおむつのトップシート上へスプレーした(ディナテック(Dynatec)E84B1758スプレーヘッドを使用、温度約73.9℃(165°F)および噴霧圧力ゲージ圧で約168.7g/cm2(2.40psig)のもとで実施)。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)、および長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)であり、このパッチは横方向の中心線の約2.54cm(1インチ)前方から始まって、おむつ用品の後方へと延びている。塗布されたローション剤の量は、0.006g/in2(9.3g/m2)である。
実施例2
ローション剤A(実施例1の手順に従って調製)を、続いておむつのトップシート上にスプレーした。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)のストライプであって、縦方向の中心線上に中心を持ち、おむつ用品の全体の長さに渡って延びている。塗布されたローション剤の量は、0.006g/in2(9.3g/m2)である。
実施例3
ローション剤A(実施例1の手順に従って調製)を、続いておむつのトップシート上にスプレーした。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)のストライプであって、縦方向の中心線上に中心を持ち、長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)を有する。このパッチは横方向の約2.54cm(1インチ)前方から始まって、おむつ用品の後方へと延びている。塗布されたローション剤の量は、0.003g/in2(4.65g/m2)である。
実施例4
A.ローション組成物の調製
水分を含まないローション組成物(ローション剤B)を、以下に示す融解した(つまり液体の)成分を同時に混合することにより調製した。鉱油(カーネーションホワイトミネラルオイル、USP、ウィトコ社製)、セテアリルアルコール(混合直鎖C16-C18第1アルコール、商品名TA-1618、プロクターアンドギャンブル社製)。これらの成分の重量パーセントを、下記の表2に示す。

B.加熱溶融スプレー法によるローション剤が塗られたトップシートの作製
ローション剤Bを、約51.7℃(125°F)の下で動作する加熱容器の中に入れた。続いて、ローション剤Bをおむつのトップシート上へスプレーした(ディナテックE84B1758スプレーヘッドを使用、温度約73.9℃(165°F)および噴霧圧力ゲージ圧で約168.7g/cm2(2.40psig)のもとで実施)。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)、および長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)であり、このパッチは横方向の中心線の約2.54cm(1インチ)前方から始まって、おむつ用品の後方へと延びている。塗布されたローション剤の量は、0.006g/in2(9.3g/m2)である。
実施例5
A.ローション組成物の調製
水分を含まないローション組成物(ローション剤C)を、以下に示す融解した(つまり液体の)成分を同時に混合することにより調製した。ホワイトプロトペット(White Protopet)1S(白ワックス、ウィトコ社製)、セテアリルアルコール(混合直鎖C16-C18第1アルコール、商品名TA-1618、プロクターアンドギャンブル社製)、ステアレス-2(ブリッジュ762、平均エトキシル化度が2のC18直鎖アルコールエトキシレート、ICIアメリカ製)。これらの成分の重量パーセントを、下記の表3に示す。

B.加熱溶融スプレー法によるローション剤が塗られたトップシートの作製
ローション剤Cを、約51.7℃(125°F)の下で動作する加熱容器の中に入れた。続いて、ローション剤Cをおむつのトップシート上へスプレーした(ディナテックE84B1758スプレーヘッドを使用、温度約73.9℃(165°F)および噴霧圧力ゲージ圧で約168.7g/cm2(2.40psig)のもとで実施)。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)、および長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)であり、このパッチは横方向の中心線の約2.54cm(1インチ)前方から始まって、おむつ用品の後方へと延びている。塗布されたローション剤の量は、0.006g/in2(9.3g/m2)である。
実施例6
A.ローション組成物の調製
水分を含まないローション組成物(ローション剤D)を、以下に示す融解した(つまり液体の)成分を同時に混合することにより調製した:ホワイトプロトペット1S(白ワックス、ウィトコ社製);ダウコーニング556コスメチックグレード液体(ポリフェニルメチルシロキサン、ダウコーニング社製);特に好ましいパラフィンワックスの例は、パラフィンS.P.434(ストラールアンドピッチュ社製);セテアリルアルコール(混合直鎖C16-C18第1アルコール、商品名TA-1618、プロクターアンドギャンブル社製)、PEG2000(分子量(MW)2000のポリエチレングリコール、シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社製)。これらの成分の重量パーセントを、下記の表4に示す。

B.加熱溶融スプレー法によるローション剤が塗られたトップシートの作製
ローション剤Dを、約65.6℃(150°F)の下で動作する加熱容器の中に入れた。続いて、ローション剤Dをおむつのトップシート上へスプレーした(ディナテックE84B1758スプレーヘッドを使用、温度約76.7℃(170°F)および噴霧圧力ゲージ圧で約168.7g/cm2(2.40psig)のもとで実施)。トップシートの塗布領域は、幅約9.5cm(3.75インチ)(おむつの横方向)、および長さ約17.8cm(7インチ)(おむつの縦方向)であり、このパッチは横方向の中心線の約2.54cm(1インチ)前方から始まって、おむつ用品の後方へと延びている。塗布されたローション剤の量は、0.006g/in2(9.3g/m2)である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(a) 訂正事項1
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1:
「 【請求項1】
吸収性用品であって、
A)液体不透過性バックシート、
B)液体透過性トップシート、および
C)該トップシートと該バックシートの間に配置された吸収性コア
を備え、
該トップシートの少なくとも一部には、着用者の肌に部分的に移行可能である有効量のローション組成物が適用されており、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれたエモリエント剤、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート、ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤を含む
吸収性用品。」
を、
「 【請求項1】
吸収性用品であって、
A)液体不透過性バックシート、
B)液体透過性トップシート、および
C)該トップシートと該バックシートの間に配置された吸収性コア
を備え、
該トップシートの少なくとも一部には、着用者の肌に部分的に移行可能である有効量のローション組成物が適用されており、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ、実質的に水を含まず、20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし、少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く)、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレート、ワックスおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし、少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含む
吸収性用品。」
と訂正する。
(b) 訂正事項2
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(c) 訂正事項3
誤記の訂正を目的として、特許請求の範囲の請求項21〜41を、請求項19〜39と訂正する。
(d) 訂正事項4
特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項36:
「 【請求項36】
トップシートの少なくとも一部にローション組成物が適用された吸収性用品の製造方法であって、
(1)トップシートを提供する工程、および
(2)該トップシートにローション組成物を適用する工程であって、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれたエモリエント剤、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ワックス、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤を含むところの適用工程
を備える吸収性用品の製造方法。」
を、
「 【請求項34】
トップシートの少なくとも一部にローション組成物が適用された吸収性用品の製造方法であって、
(1)トップシートを提供する工程、および
(2)該トップシートにローション組成物を適用する工程であって、該ローション組成物は、
(i)10%から95%までの、石油系エモリエント、脂肪酸エステルエモリエント、アルキルエトキシレートエモリエント、脂肪酸エステルエトキシレートエモリエント、脂肪アルコールエモリエントおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれ、実質的に水を含まず、20℃で可塑性もしくは流動性コンシステンシーを有するエモリエント剤(ただし、少なくとも2個から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4つの水酸基を含有する多価アルコールを含む液体ポリオールポリエステルエモリエント剤を除く)、および
(ii)5%から90%までの、該エモリエント剤を該トップシート上に固定化し得る固定化剤であって、ワックス、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、C14〜C22脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸、C12〜C22脂肪アルコールエトキシレートおよびこれらの混合物からなる群の中から選ばれる固定化剤(ただし、少なくとも2個の炭素原子から30個までの炭素原子を有する脂肪酸または他の有機基によりエステル化された少なくとも4個の水酸基を含有する多価アルコールを含む固体ポリオールポリエステルを包含する固定化剤を除く)を含むところの適用工程
を備える吸収性用品の製造方法。」
と訂正する。
(c) 訂正事項5
誤記の訂正を目的として、特許請求の範囲の請求項39:
「 【請求項39】
前記ローション組成物が、トップシートに適用されたとき、少なくとも半固体である請求項43に記載の方法。」
を、
「 【請求項37】
前記ローション組成物が、トップシートに適用されたとき、少なくとも半固体である請求項34に記載の方法。」
と訂正する。
異議決定日 2003-01-22 
出願番号 特願平8-518776
審決分類 P 1 652・ 113- YA (A41B)
P 1 652・ 537- YA (A41B)
P 1 652・ 536- YA (A41B)
P 1 652・ 121- YA (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 松浦 新司
大宅 郁治
登録日 2001-08-17 
登録番号 特許第3222470号(P3222470)
権利者 ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー
発明の名称 ローション剤を施されたトップシートを有する吸収性用品  
代理人 吉武 賢次  
代理人 紺野 昭男  
代理人 吉武 賢次  
代理人 高村 雅晴  
代理人 横田 修孝  
代理人 紺野 昭男  
代理人 中村 行孝  
代理人 高村 雅晴  
代理人 横田 修孝  
代理人 中村 行孝  

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