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審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:813 訂正する B29C
審判 訂正 旧特126条1項1号 請求の範囲の減縮 訂正する B29C
審判 訂正 2項進歩性 訂正する B29C
審判 訂正 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正する B29C
審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正する B29C
管理番号 1075656
審判番号 訂正2002-39247  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1984-12-20 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2002-11-25 
確定日 2003-02-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1893038号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1893038号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
特許第1893038号の発明は、昭和58年6月10日(特願昭58-102713号)に出願され、平成4年3月23日に出願公告後、平成5年6月28日付け手続補正書の補正により明細書が補正され、平成6年12月26日に設定登録されたものである。その後、平成12年4月5日に特許無効審判の請求があり、平成13年1月25日に無効理由通知を通知し、平成14年9月25日付けで「本件特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を無効とする」との審決がなされた。その後、審決取消訴訟が提起される一方、平成14年11月25日に、本件訂正審判の請求がなされたものである。

2.請求の要旨
本件訂正審判の請求の要旨は、特許第1893038号(平成6年12月26日設定登録)の明細書を、平成14年11月25日付け審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるもので、その訂正事項は次のとおりである。
訂正事項1.:本件特許明細書の特許請求の範囲第1項(特公平4-16330号公報(以下、公告公報という)、甲第1号証の1:平成5年4月30日発行の訂正公報及び甲第1号証の2:平成7年8月9日発行の訂正公報(以下、まとめて「訂正公告公報」という))の、
「1.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。」
との記載を、
「1.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。」
と訂正する。
訂正事項2.:平成3年10月5日付け手続補正書第2頁下から2行〜第3頁19行において補正された明細書第4頁第17行〜第5頁7行(訂正公告公報;第3欄41行〜43行)の
「超高分子量ポリオレフィンAで、且つ縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、」との記載を、
「超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、」と訂正する。

3.当審の判断
3-1.訂正の目的の適否、新規事項、実質拡張・変更の存否について
訂正事項1.は、「本発明は、超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム及びその製造方法に関するものであり、とくに、超高分子量ポリオレフィンと特定の炭化水素系可塑剤との混合物から得られた二軸延伸フィルム(以下、単に超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムという場合がある)及びその製造方法に関し」(明細書第2頁下から6〜5行:平成3年5月27日付手続補正書第2頁6〜13行及び平成3年10月5日付手続補正書第2頁11〜18行において補正された明細書第2頁第15〜16行;訂正公告公報第2欄11〜17行)の記載、
「かかる状況に鑑み、本発明者は、超高分子量ポリオレフィンの二軸延伸フィルムを得る方法について鋭意検討した結果、超高分子量ポリオレフィンに特定の炭化水素系可塑剤を混合することにより、二軸延伸フィルムが得られることが分かり、本発明に到達した。」(明細書第4頁10〜15行、訂正公告公報第3欄34〜39行)の記載、
「本発明の方法に用いる超高分子量ポリオレフィンAは、デカリン溶媒135℃における極限粘度〔η〕が5dl/g以上、好ましくは7ないし30dl/gの範囲のものである。〔η〕5dl/g未満のものは、分子量が低く超高分子量ポリオレフィンの特徴である高強度フィルムが得られない虞れがあり、一方〔η〕の上限はとくに限定はされないが、30dl/gを越えるものは後述の炭化水素系可塑剤Bを添加しても溶融粘度が高く押出成形性に劣る。」(明細書第5頁8〜17行、訂正公告公報第4欄15〜24行)の記載、
「また、炭化水素系可塑剤Bの分子量は、超高分子量ポリオレフィンAに混合して、混合物のMFRを0.005ないし50g/10min、好ましくは0.01ないし50g/min、更に好ましくは0.1ないしlog/minの範囲にするものであれば、とくに限定はされないが、分子量が2000を越えるものは、MFRを上記範囲にするには、多量に添加することになり、延いては、フィルムにした場合に超高分子量ポリオレフィン本来の特徴である優れた特性を発揮できない虞れがある。」(明細書第7頁2〜11行、訂正公告公報第5欄5〜14行)の記載、
及び「本発明の方法は、前記超高分子量ポリオレフィン(A)に前記炭化水素系可塑剤Bを添加混合してMFRを0.005ないし50g/10min、好ましくは0.01ないし50g/10min、更に好ましくは0.1ないし10g/10minの範囲にした混合物を溶融混練後ダイより押出し、前記超高分子量ポリオレフィンAの融点未満の温度で二軸延伸することにより、前記高強度、高弾性率の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムを製造する方法である。」(明細書第10頁13〜第11頁1行、訂正公告公報第6欄32〜40行)の記載に基づいて、特許請求の範囲の記載において、超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムが、超高分子量ポリオレフィンAに炭化水素系可塑剤Bを添加してなるものを二軸延伸したものであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正と認められる。

訂正事項2.は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合をとるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正と認められる。
そして、訂正事項1.、2.は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3-2.独立特許要件について
本件の独立特許要件については、無効審判請求(無効2000-35172)において提示された主な証拠に基づいて判断することとする。

3-2-1.本件訂正発明
訂正明細書の特許請求の範囲第1〜5項に記載された発明(以下、独立形式で記載された特許請求の範囲第1、4項に記載された発明を「訂正発明1,2」という)は、本件審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「1 少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。
2 前記超高分子量ポリオレフィンAが該超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである特許請求の範囲1項記載の二軸延伸フィルム。
3 前記超高分子量ポリオレフィンAが超高分子量ポリエチレンである特許請求の範囲1ないし2項のいずれか1項記載の二軸延伸フィルム。
4 少なくとも極限粘度「η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAと、該超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を押出し、一旦固化した後、前記超高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度で、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸することを特徴とする、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上である超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの製造方法。
5 前記超高分子量ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンである特許請求の範囲第4項記載の二軸延伸フィルムの製造方法。 」

3-2-2.証拠とその記載事項
(1)証拠
甲第1号証:欧州特許出願公開第0024810号明細書、および同訳文
甲第2号証:特開昭52-155221号公報、第4頁左下欄下段〜右下欄上段
甲第3号証:「Colloid and Polymer Science」、第258巻、第7号(1980年発行)、第891〜894頁、および同訳文
甲第4号証:欧州特許出願公開第0024810号明細書に記載された例13に関する平成12年2月1日付け実験報告書(作成者:東燃化学株式会社 技術開発センター 河野公一、滝田耕太郎)
甲第5号証:特公平4-16330号公報に記載された実施例1に関する平成12年2月1日付け実験報告書(作成者:東燃化学株式会社 技術開発センター 河野公一、滝田耕太郎)

(2)証拠の記載事項
甲第1号証:
甲第1号証は、「高分子量結晶性重合体ゲルから溶剤を除去する方法及びそれから製造する成形品」に関するものであって、
ア.「微結晶形成能を示す一般的重合体はポリ(エチレン)、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ(ヒドロキシブチラート)-以下PHBという-を含む高分子量ポリ(エステル)、ポリ(アミド)、・・・である。」(訳文第4頁9〜13行)
イ.「重合体の分子量は、鎖長に沿って少なくとも3個の結合点をもつ重合体鎖をかなりの数許容する(これはゲル形成に必要な限界である)に十分な長さの鎖を提供するのに十分大きい分子量であるべきである。・・・例えばポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)及びポリ(テトラフルオロエチレン)などでは、分子量は何も問題ないほど十分に高い。こうして、上記物質は0.5×106又はそれより大きい平均分子量で一般に入手可能であり、・・・ポリ(アミド)例えばナイロン66又はポリエステル例えばポリ(エチレンテレフタレート)の品種は、繊維を調製し又は成形品に注入成形するために入手可能であるが、一般的に0.1×106より小さい平均分子量を有している。そして、形成されるゲルは実際に顆粒でありそして高分子量物質によるゲルよりもかなり劣る機械的不完全性があるので、本発明による成形品の製造に使用するにはかなり劣っている。」(第4頁18行〜第5頁6行)
ウ.「本明細書に開示の手順により結晶性重合体から形成したゲルは通常、溶剤が、重合体物質とゆるやかに結びついておりそして伸びたゲルから容易に抜き出されるものである。こうして、溶剤液体に懸濁されていたとしてもポリ(エチレン)ゲルは約2日間を越えて重合体とはじめから結びついていた溶剤の50%を排出する。このゲルの脱溶剤自由な特性はゲルに応力をかける処理によって成形品を製造するのに理想的に適したものにゲルをつくり上げる。こうして、ゲルを単純に相対する2表面間で押圧して溶剤を実質的に除去して重合体薄膜を残すことができる。他方、かなり激しさの少ない応力を用いて溶剤を排出可能である。ポリ(エチレン)ゲルから繊維を延伸するなどゲルの延伸で発生する内部応力は溶剤の実質的量を絞り出させるのに十分である。規則的変形処理では溶剤の一部だけを除去することが望ましい。というのは、繊維又は薄膜上の製品に別途加工するのに1部分残った溶剤は有益だからである。こうして、本質的に全ての溶剤を押圧で除去した薄膜はたぶん極僅かな量の溶剤の存在のために、室温で一軸延伸されてもとの長さの1000〜1500%の伸び率にすることが可能である。他方に於いて、この同じ薄膜(所望ならば真空炉での)は、室温で脆い。しかしながら例えば乾燥させて溶剤を全て除去した製品は、重合体の溶融温度に至る高温で容易に製造可能である。これらの処理が重合体は配向する段階を含んでいる場合には、物理特性に於いて、顕著な改良が結果し重合体の溶融処理又は単結晶沈殿処理のような別の形の重合体処理によって配向されたものよりも優れている。」(第9頁11行〜第10頁1行)
エ.「例13 `Hostalen´GUR(高分子量線状ポリエチレン)(3g)を還流してキシレン(400ml)に溶解した。高温溶液を20cm径ペトリ皿にたらした。(中略)冷却すると、最初は溶剤が占めていた容積の殆どをゲルが占めて形成した。上向きの皿においてゲルに対して孔あきスクリーンを押圧してゲルから溶剤を除去した後、引き続いて、空気中で8時間乾燥させた。得られた生成物は、いくらか繊維材料の存在を示す脆性の白色シートであって、50〜100μmの厚さを有した。赤外分析は、キシレンが存在しないことを示した。乾燥されたシートから正方板状サンプル(6cm×6cm)を切り出して120℃の温度で二軸延伸した。両方の方向に同時に3:1の倍率でサンプルを延伸した。サンプルの薄肉部は、高い延伸倍率の適用を妨げた。延伸フィルムは、透明であったが、未延伸シートの繊維質特性のために不均質であった。この方法で調製した8枚のフィルムの平均厚さは、8.35μmであり、しかも、平均弾性率は、2.4±0.6GN/m2であった。これらの数値は、溶融して調製した普通の線状高密度ポリエチレンフィルムに比べてかなり高いものであるが、もっと厚い原反シートを用いてもっと高い延伸倍率で延伸すると、さらに高い数値が得られると予想される。」(同訳文第19頁第16行〜第20頁第3行;欧州特許出願公開明細書)
と記載されている。

甲第2号証:
甲第2号証は、繊維状重合体結晶の連続製造方法及びその装置に関するもので、
オ.「本発明は、流動溶液中で種結晶を縦方向に成長させ、成長速度に等しい平均速度で、結晶性重合体の溶液から成長中の重合体フィラメントを取り出すことにより、結晶性重合体の溶液からフィラメント状重合体結晶を連続的に製造する方法に関する。」(第2頁上左欄16行〜同頁上右欄1行)
カ.「線状ポリエチレンをp-キシレンに溶解して0.5%溶液に調製した。このポリエチレン(商品名、ホスタレンGUR)の特性は、次の通りであった。
135℃でデカリン中の固有粘度:15dl/g(浸透法による)数平均分子量 Mn=10×10,000(135℃、α-クロロナフタレン中の光分散による)重量平均分子量 Mw=1.5×1,000,000ポリエチレン溶液を、耐酸化剤・・・で安定させ、すべての実験を純粋な窒素ふん囲気下で行なつた」(第4頁下左欄17行〜同頁下右欄7行)
と記載されている。

甲第3号証:
甲第3号証は、溶液からキャストされた高分子量ポリエチレンの超延伸に関するもので、
キ.「高分子物質の究極の機械的特性は、巨大分子の分子量、延伸及び整列に依存するということが長い間にわたり認識されてきた。・・・押出成型物を延伸することにより配向させることは、一見有利であるように思われる(1-3)。ポリマーの融点以下の温度では失敗している。これは、主にこれらの高分子量物質の高い粘性に起因するためであり、この結果、延伸されると、破断を起こす。・・・例えば、2重量%のデカリン溶液から紡糸することにより得られたポリエチレン繊維は、120℃の温度、・・・30倍の延伸倍率に容易に延伸することができた。・・・ポリエチレン繊維の溶融結晶化された物資は、同じ様な延伸条件下では、僅か5倍にしか延伸することができなかった(3,6,7)。」(訳文第1頁下から21〜下から8行)
ク.「数平均分子量が2×l05、重量平均分子量が1.5×106の高分子量ポリエチレンであるHostalen・GURが用いられた。緻密に詰められた粉末は、160℃で0.16mmのシートに圧縮成形された。これらのフィルムは、室温に冷却され固形化された。・・・上記と同じポリマーのフィルムは、同じポリエチレンを溶解する2重量%のデカリン(・・・)溶液からキャスティングすることによりフィルムを調製された。・・・ゲルから室温で溶媒を蒸発させると、厚さ0.14mmのポリエチレンフィルムが得られたが、そのフィルムは、依然として4重量%のデカリンを含有していた。・・・エタノールで抽出することにより除去した。」(訳文第2頁2〜15行)、
ケ.「溶液キャスト法で得られたフィルムは、延伸倍率の増加に伴って引張り強度、弾性率等の機械的特性が向上し、現在のところ、46倍までの高延伸倍率の達成が可能である旨(第893頁右欄第51行〜58行、同訳文第5頁第13行〜19行)、および溶液キャスト法で得られたフィルムを6倍に延伸した場合の引張り強度と弾性率は、それぞれ0.6GPaと13GPaであるのに対し、40倍に延伸した場合の引張り強度と弾性率は、それぞれ3.0GPaと108GPaである旨(第893頁右欄第51行〜56行、同訳文第5頁第13行〜16行、および第894頁上欄の表1、同訳文第6頁第1行〜7行)
と記載されている。

甲第4号証(以下、実験報告書1という):
甲第4号証は、甲第1号証(欧州特許出願公開第0024810号明細書)の例13に開示された高分子量線状ポリエチレン2軸延伸フィルムの初期弾性率と破断強度を測定することを目的として実施した実験の報告書であって、
コ.「(1)乾燥シートの調製 ▲1▼高分子量線状ポリエチレンとして、ヘキスト社(現、セラニーズ社)製のHostalen GUR4120(注)3grを、120℃にて還流してキシレン400mlに溶解した。・・・室温にて、48時間乾燥させた。得られた生成物は、脆性白色シートで、50〜100μmの厚さを有していた。この乾燥シート(脆性白色シート)中のキシレンの存在の有無を・・・結果、キシレンの存在が確認できなかった。(2)二軸延伸フィルムの調製 ・・・正方板状物(9.5cm×9.5cm)を切り出し、・・・同時に、3:1(3×3の延伸倍率(縦×横))の比率まで、供試体を延伸し、二軸延伸フィルムを得た。(3)二軸延伸フィルムの評価 初期弾性率っは、・・・10-4sec-1(0.006min-1)、ASTM D 882に準拠した0.1min-1、及び特公平4-16330号公報の第5頁に記載された実施例1と同様の0.25min-1の3通りの伸張速度にて求めた。また、破断強度は、・・・2通りの伸長速度にて求めた。評価回数(n数)は3とした。3枚のフィルムの平均厚さは、5.5μm・・・であった。・・・(注)・・・「欧州特許出願第0024810号の出願がなされた当時、Hostalen GURの標準銘柄はHostalen GUR412であり、Hostalen GURの物性や性能を検討している文献等で単にHostalen GURと引用されていたら、それはHostalen GUR412を指していると解釈できる。また、当時のHostalen GURにはいくつかの銘柄があるが、その中で最も極限粘度[η]が小さい銘柄はHostalen GUR412であって、その極限粘度[η]は約19dl/gである。・・・銘柄番号が3桁から4桁に変更されたが、・・・Hostalen GUR4120になった。・・・極限粘度[η]を実測ったところ、18.5dl/gであった。」(第2頁17行〜第4頁1行)
サ.「6.実験結果 初期弾性率は3通りの伸長速度にて求めたが、その結果の数値に大きな差異が認められなかったため、・・・例1と同様の10-4sec-1(0.006min-1)の伸長速度にて求めた値を表1に示した。また、破断強度は2通りの・・・大きな差異が認められなかったため、特公平4-16330号公報の第5頁に記載された実施例1と同様の0.25min-1の伸長速度にて求めた数値を表1に示した。・・・平均初期弾性率は、2.25×104kgf/cm2であり、・・・平均引張破断強度は、1,780kgf/cm2であった。」(第4頁2〜15行)

甲第5号証(以下、実験報告書2という):
シ.「1.実験目的 特公平4-16330号公報の第5頁に記載された実施例1に準じた実験例を、同公報の方法で追試して、二軸延伸フィルムを得た上で、該二軸延伸フィルムの評価を行い、・・・初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910以上になるかを調査・確認する。」(第2頁1〜5行)
ス.「(1)二軸延伸フィルムの成形 ▲1▼樹脂組成A、B、C 超高分子量ポリエチレン(粘度平均分子量235万、極限粘度[η]15.8dl/g)・・・、高密度ポリエチレン(重量平均分子量35万、極限粘度[η]4.0dl/g)・・・樹脂ブレンド物Aを用いた。この樹脂ブレンド物Aの極限粘度[η]7.05dl/gである。また、・・・さらに、超高分子量ポリエチレン・・・のみの樹脂Cを用いた。」(第2頁16〜29行)
セ.「▲2▼炭化水素系可塑剤 流動パラフィンA(粘度51cSt@40℃,比重0.862)及び流動パラフィン(粘度93cSt@40℃,比重0.865)を用いた。これらの流動パラフィンA,Bの沸点は、いずれも超高分子量ポリオレフィンの融点よりはるかに高い。」(第2頁30行〜第3頁4行)
ソ.「▲3▼樹脂組成物 上記樹脂ブレンド物A・・と炭化水素系可塑剤として流動パラフィンA又は流動パラフィンB・・との配合割合を種々変えた樹脂組成物7種・・・樹脂C・・と・・・流動パラフィンB・・・との樹脂組成物7種を用いた。」(第3頁5〜12行)
タ.「▲4▼二軸延伸フィルムの成形 上記樹脂組成物を二軸混練機(TEX54)で、温度200℃にて混練し、ダイから溶融押出し又はプレス温度190℃でプレス成形して、厚み0.8〜1.5mmの均一なシートを得た。・・・延伸温度90〜120℃の条件、5×5倍の延伸倍率(縦×横)で、二軸延伸し、均一な厚さの二軸延伸フィルムを得た。」(第3頁13〜18行)
チ.「8.まとめ ・・・炭化水素系可塑剤として流動パラフィンを用いた場合には、使用流動パラフィンの種類等を適宜選択しても、決して、特許請求の範囲で規定された、二軸延伸フィルムの初期弾性率が7300kg/cm2以上となるものではないと判明した。」(第5頁下から5行〜第6頁第2行)

当審注:なお、丸囲み数字は、▲▼付き数字で表現した。

3-2-3.特許法第36条違反について
(1)無効理由通知で指摘した点について
当審で通知した無効理由通知の概要は、「・・・本件特許明細書の発明の詳細な説明には、・・・炭化水素可塑剤を用いない場合は、本件態様に係る二軸延伸フィルムを得ることができなかった旨、明記されている。・・・技術的課題の解決手段、その具体的実施に係る開示、得られる作用・効果等について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記本件態様の実施に係る実質的記載は一切存在しない。・・・本件特許明細書の発明の詳細な説明が、上記本件態様に係る「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム」の発明を当業者が容易に実施できるように記載されているものとは認められない」というものであり、訂正の審判請求により本件訂正発明1は炭化水素系可塑剤Bを添加して二軸延伸することを明確に規定しており、上記無効理由通知の理由は解消されたものと認められるので、無効理由通知で特許法第36条第3項の規定に違反していると指摘した点については理由がないものと認められる。

(2)無効審判請求で指摘された第36条第4項(注:第3項(昭和60年法)の誤記)について
無効審判請求における主張は、概略以下のとおりである。
実験報告書2によれば、流動パラフィンを使用した場合には、初期弾性率が7300kg/cm2以上の高分子量線状ポリエチレン2軸延伸フィルムが得られないことが判る。本件の明細書は、炭化水素系可塑剤Bとして流動パラフィンを使用したときには、たとえ本件明細書の実施例の記載や他の技術的常識を参酌したとしても、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえず、結局のところ、本件出願は、特許法第36条第4項に規定する要件を具備していないといわざるを得ない。
先ず、本件特許明細書第6頁5行〜第9頁16行には、炭化水素系可塑剤Bについて具体的に例示すると共に、備えるべき条件等が具体的に記載されている。さらに、超高分子量ポリオレフィンAとして超高分子量ポリエチレンを選択した場合には、炭化水素系可塑剤Bとして相溶性の点から好ましいとしているパラフィン系ワックスを用いた、実施例1〜4が具体的に記載されている。このように特許明細書には、当業者が容易に実施し得いる程度に、超高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルムの製造方法が記載されているものと認められる。
また、実験報告書2には、実施例1に準じて追試された実験例であると記載しているが、上記摘示記載シ.〜チ.によれば、樹脂組成物(樹脂ブレンド物)は、高密度ポリエチレン極限粘度[η]4.0dl/gのものをブレンドしたもので、本件明細書には極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンと記載されているにもかかわらず、極限粘度を満足するものではないだけでなく、わざわざブレンド物を選択するなど実験結果が満足しないように、故意に実験条件が設定されていると取れるものであり、この点のみをしても実施例1に準じた追試とは認められない。
さらに付記するならば、炭化水素系可塑剤Bとして選択した流動パラフィンについて確かに融点40℃以上という条件は満たすものの、本件明細書にはその他の条件として超高分子量ポリオレフィンに混合して混合物のMFRが規定した範囲内に入らないと超高分子量ポリオレフィン本来の特徴である優れた特性を発揮できない虞があるとしているにもかかわらず、混合物のMFRを明記することもなく、また、二軸延伸フィルムの製造にしても、混練温度、溶融押出温度、シートの厚みなどの条件が異なるとともに、二軸延伸フィルムの厚みも明記するところがなく、実施例1に準じた追試というにはほど遠い実験内容である。
実験報告書2を根拠に、特許請求の範囲で規定された、二軸延伸フィルムの初期弾性率が7300kg/cm2以上となるものではないとしているが、上述したように実験報告書2に記載された追試自体信用できないものであり、これを根拠にして明細書の記載が当業者が容易に実施し得る程度に記載されていないとすることはできない。

3-2-4.特許法第29条違反について
(1)特許法第29条第1項第3号について
本件訂正発明1と甲第1号証に記載された発明と対比すると、両者は、「高分子量ポリエチレンを原料とし、縦方向と横方向とに延伸してなる高分子量ポリエチレン二軸延伸フィルム」の点で一致し、
相違点1:訂正発明1は「少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリエチレン」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では極限粘度について特に明記されておらず、高分子量ポリエチレンであるHostalenGURを使用することが記載されている点、
相違点2:訂正発明1は「炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上(以下、延伸倍率5×5以上という)に二軸延伸したもの」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明では溶液キャスト法によりシートを形成し、縦方向の延伸倍率が3倍及び横方向の延伸倍率が3倍(以下、延伸倍率3×3という)に二軸延伸したものである点、(当審注:下線部は当審が付記した)
相違点3:訂正発明1は当該二軸延伸フィルムが「初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上である」と特定されているのに対し、甲第1号証に記載された発明では、弾性率が2.4±0.6GN/m2と特定するのみで、破断強度については特に規定していない点
で相違している。
甲第1号証に記載の発明は縦方向の延伸倍率が3倍及び横方向の延伸倍率が3倍に二軸延伸したものであって、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものについては記載されていない。
したがって、実験報告書1を参酌して、上記相違点について検討するまでもなく、訂正発明1は甲第1号証に記載されているものとはいえない。
実験報告書1に記載されている実験内容は、試験サンプルの作成過程において、乾燥条件が異なり、脆性白色シートとの記載はあるが繊維材料の存在を示す記載も未延伸シートの繊維質特性のために不均質であった旨の記載もないものであり、また、乾燥されたシートから切り出すサンプルの大きさも、延伸フィルムの厚さも異なる。そして、測定条件において、初期弾性率、破断強度を求める伸長速度についても、甲第1号証の例13には明記されていないことから、それぞれ、甲第1号証の他の例の伸長速度と訂正発明の実施例1の伸長速度を利用して測定している。
このように、甲第1号証の忠実な追試とは認められないから、実験報告書1に記載の甲第1号証に記載された例13の二軸延伸フィルムについての初期弾性率、破断強度を参酌することはできない。

訂正発明2は、二軸延伸フィルムの製造方法の発明であって、「超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を押出し、一旦固化した後、前記超高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度で、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸する」二軸延伸フィルムの製造方法であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は上記摘示記載ウ.、エ.によれば、超高分子量ポリオレフィンを溶剤に溶かし、フィルムを形成する溶液キャスト法によるものを縦方向の延伸倍率が3倍及び横方向の延伸倍率が3倍に二軸延伸する二軸延伸フィルムの製造方法であるから、訂正発明2は延伸倍率が異なる上に、炭化水素系可塑剤Bを添加して溶融押出してシートを形成し、二軸延伸する点でも、甲第2号証に記載された発明の二軸延伸する製造方法と相違するから、訂正発明2は甲第1号証に記載されているとはいえない。

(2)特許法第29条第2項違反について
訂正発明1と甲第1号証に記載された発明と対比すると、上記(1)に記載したと同様の、一致点及び相違点1〜相違点3の相違点がある。
上記相違点について、検討する。
相違点1について
甲第2号証(1977年出願)を提示してHostalenGURという商品名のポリエチレンの135℃でデカリン中の固有粘度は、15dl/gである旨が明記されており、また、甲第1号証についての実験報告書1中で、超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの原料樹脂として1979年当時の甲第1号証記載のHostalenGURが、訂正発明1(1983年出願)の極限粘度を満足するものと解することができるので、両者は相違点1で実質的に差異があるとは認められない。
相違点2について
延伸倍率により延伸フィルムの初期弾性率、破断強度、及び延伸状態によるフィルムの状態が異なることは明らかであり、甲第1号証の延伸倍率3×3の二軸延伸フィルムは、延伸倍率5×5以上の二軸延伸フィルムとは相違するものであるから、訂正発明1は甲第1号証に記載された発明とは認めることができないことは上述のとおりである。
ところで、甲第1号証の前記摘示記載エ.には「これらの数値は、溶融して調製した普通の線状高密度ポリエチレンフィルムに比べてかなり高いものであるが、もっと厚い原反シートを用いてもっと高い延伸倍率で延伸すると、さらに高い数値が得られると予想される。」と記載されているが、ここにいうさらに高い数値とは「弾性率」のことであることは明らかであり、甲第1号証に記載された発明において全く記載も示唆もされていない「破断強度」をも意味するものとは解することができない。
また、二軸延伸フィルムでは、縦横方向に延伸処理するため引張強度は増加するが破断強度は一般的に低下するもので、延伸倍率の増加と共に単純に増加するものとは認められず、甲第1号証に上記記載があるからといって、延伸倍率5×5以上の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムが得られるとの記載とも示唆するものとも認められないし、得られるとの保証もない。
してみると、甲第1号証の上記摘示記載の延伸倍率3×3のものをもって、延伸倍率5×5以上のものが示唆されているとは認められないから、当業者が容易になし得たものとすることもできない。
相違点3について
甲第1号証の例13の追試として実験報告書1を提示しているが、延伸倍率が3×3の二軸延伸フィルムであって、訂正発明1の二軸延伸フィルムとはこの点で既に相違している。
そして、上記相違点2で触れたように、破断強度が訂正発明1に特定されている数値の延伸倍率5×5以上のものが製造でき得るのか、実験的に証明できるにも係わらず、例13の延伸倍率3×3の二軸延伸フィルムのみの追試しか行わず、しかも、その追試は乾燥条件が異なり、脆性白色シートとの記載はあるが繊維材料の存在を示す記載も未延伸シートの繊維質特性のために不均質であった旨の記載もない未延伸シートであって、乾燥されたシートから切り出すサンプルの大きさも、延伸フィルムの厚さも異なるもので、初期弾性率、破断強度を求める伸長速度についても、甲第1号証の例13には明記されていないことから、それぞれ、甲第1号証の他の例の伸長速度と訂正発明の実施例1の伸長速度を利用して測定している。
このように、実験報告書1に記載の実験は、甲第1号証に記載された例13の二軸延伸フィルムの初期弾性率、破断強度を忠実な追試条件で測定しているものとは認められないので、甲第1号証の二軸延伸フィルムが上記相違点3の物性を示すことを証明するものとは認められない。
したがって、相違点3の点からも、訂正発明1は甲第1号証に記載された発明ということはできない。
訂正発明2は、二軸延伸フィルムの製造方法の発明であって、「超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を押出し、一旦固化した後、前記超高分子量ポリオレフィンの融点未満の温度で、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸する」二軸延伸フィルムの製造方法であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、上記摘示記載ウ.、エ.によれば、超高分子量ポリオレフィンを溶剤に溶かし、フィルムを形成する溶液キャスト法によるものを縦方向の延伸倍率が3倍及び横方向の延伸倍率が3倍に二軸延伸する二軸延伸フィルムの製造方法であり、しかも、炭化水素系可塑剤Bを含み且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を溶融押出することについて記載も示唆もするところがなく、また、他の証拠を検討しても上記した超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの製造方法について何ら記載がないから、他の相違点について検討するまでもなく、訂正発明2は甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。


3-2-5.まとめ
以上のとおり、平成14年11月18日付け審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲第1項及び第4項に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
したがって、本件訂正審判の請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号の附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項及び第3項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
1.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。
2.前記超高分子量ポリオレフィンAが該超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである特許請求の範囲1項記載の二軸延伸フィルム。
3.前記超高分子量ポリオレフィンAが超高分子量ポリエチレンである特許請求の範囲1ないし2項のいずれか1項記載の二軸延伸フィルム。
4.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAと、該超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を押出し、一旦固化した後、前記超高分子量ポリオレフィンの融点未満の延伸温度で、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸することを特徴とする、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上である超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの製造方法。
5.前記超高分子量ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレンである特許請求の範囲4項記載の二軸延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
本発明は、超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム及びその製造方法に関するものであり、とくに、超高分子量ポリオレフィンと特定の炭化水素系可塑剤との混合物から得られた二軸延伸フィルム(以下、単に超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムという場合がある)及びその製造方法に関し、特に、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上である超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム、および、その二軸延伸フィルムの製造方法に関する。
超高分子量ポリオレフィンの代表例である超高分子量ポリエチレンは汎用のポリエチレンに比べ耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、引張強度等に優れており、エンジニアリングプラスチックとして用途が拡がりつつある。しかしながら汎用のポリエチレンに比較して溶融粘度が極めて高く流動性が悪いため、従来の押出成形によって成形することは非常に難しく、その殆どは圧縮成形によって成形されており、一部ロッド等が極めて低速で押出成形されているのが現状であった。
また、超高分子量ポリオレフィンの製造方法としては、超高分子量ポリエチレンの粉末を焼結した後、ポリエチレンの融点以上の温度に加熱して2枚のベルト間で加熱、圧着、冷却してフィルムを製造する方法(特公昭48-11576号公報)、あるいは焼結した超高分子量ポリエチレンシートを二次転移点以上ないし融点未満の温度範囲で加圧ロールで配向させる方法(特開昭53-45376号)等が提案されているが、いずれも超高分子量ポリエチレンの粉末を焼結させてシートで作るので成形に長時間を要し、また後者の方法では超高分子量ポリエチレンは溶融粘度が高く流動性が悪いので、融点未満の温度で加圧ロールで配向させても薄いフィルムを得ることは、殆ど不可能であった。
一方、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)の如く、フィルムを二軸延伸して高強力・薄肉フィルムを製造することは良く知られているが、通常のポリプロピレンと異なり超高分子量ポリオレフィンは高強度化に繁がる延伸可能な温度領域での粘度が極端に高いので二軸延伸フィルムを得ることは殆ど不可能であった。
かかる状況に鑑み、本発明者は、超高分子量ポリオレフィンの二軸延伸フィルムを得る方法について鋭意検討した結果、超高分子量ポリオレフィンに特定の炭化水素系可塑剤を混合することにより、二軸延伸フィルムが得られることが分かり、本発明に到達した。
すなわち本発明は、少なくとも極限粘度[η]が5dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム、および、少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAと、該超高分子量ポリオレフィンの融点を越える沸点を有する炭化水素系可塑剤Bを含み、且つメルトフローレートが0.005ないし50g/10minである混合物を押出し、前記超高分子量ポリオレフィンの融点未満の延伸温度で、縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸することを特徴とする、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上である超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの製造方法、を提供するものである。
本発明に用いる超高分子量ポリオレフィンAは、デカリン溶媒135℃における極限粘度[η]が5dl/g以上、好ましくは7ないし30dl/gの範囲のものである。[η]5dl/g未満のものは、分子量が低く超高分子量ポリオレフィンの特徴である高強度フィルムが得られない虞れがあり、一方[η]の上限はとくに限定はされないが、30dl/gを越えるものは後述の炭化水素系可塑剤Bを添加しても溶融粘度が高く押出成形性に劣る。かかる超高分子量ポリオレフィンAは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等を所謂チーグラー重合により重合することにより得られるポリオレフィンの中で、はるかに分子量が高い範疇のものである。中でもエチレンを主体とした超高分子量ポリエチレンは、耐寒性、耐衝撃性、自己潤滑性等に優れているので好ましい。
本発明の方法に用いる炭化水素系可塑剤Bは、沸点が前記超高分子量ポリオレフィンAの融点(A)を越えるもの、好ましくは沸点が融点(A)+10℃以上で且つ融点(B)が350℃以下、更に好ましくは沸点が融点(A)+50℃以上で融点(B)が40ないし120℃及び分子量が2000以下の炭化水素系可塑剤である。
沸点が超高分子量ポリオレフィンAの融点(A)以下のものは、前記超高分子量ポリオレフィンAと混合して溶融押出した原反シートが発泡するので良好な二軸延伸フィルムが得られない虞がある。また常温で液状のものは少量であれば押出成形性を阻害しないが、多量に用いると例えばスクリュー押出機等を用いる場合に、スクリューと混合物とが共回りを起こして定常な押出成形ができない場合があるので、融点(B)が40℃以上の炭化水素系可塑剤が最も好ましい。
また、炭化水素系可塑剤Bの分子量は、超高分子量ポリオレフィンAに混合して、混合物のMFRを0.005ないし50g/10min、好ましくは0.01ないし50g/10min、更に好ましくは0.1ないし10g/10minの範囲にするものであれば、とくに限定はされないが、分子量が2000を越えるものは、MFRを上記範囲にするには、多量に添加することになり、延いては、フィルムにした場合に超高分子量ポリオレフィン本来の特徴である優れた特性を発揮できない虞れがある。尚本発明におけるMFRは、ASTM D1238に準拠するが、ポリプロピレンは条件L、ポリ4-メチル-1-ペンテンは条件Tとし、ポリエチレンを含むその他のポリオレフィンは条件Eとした。
本発明に用いる前記炭化水素系可塑剤Bとしては、具体的には、n-デカン、n-ドデカン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン等のn-アルカン、流動パラフィン、灯油、パラフィンワックス、低分子量ポリエチレンあるいは低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブテン等のα-オレフィンオリゴマー等の脂肪族炭化水素系化合物、ナフタリン、テトラリン、ジエチルベンゼン、デカリン、低分子量ポリスチレン等の芳香族炭化水素系化合物あるいはその水素化誘導体、C5系石油樹脂、あるいはそれらのハロゲン化物、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸等の高級脂肪酸、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級脂肪族アルコール、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド等の高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
前記超高分子量ポリオレフィンAとして超高分子量ポリエチレンを選択した場合には、前記炭化水素系可塑剤Bとしては相溶性の点からパラフィン系ワックスが好ましい。
前記パラフィン系ワックスとしては、飽和脂肪族炭化水素化合物を主体とするもので、具体的にはドコサン、トリコサン、テトラコサン、トリアコンタン等の炭素数22以上のn-アルカンあるいはそれらを主成分とした低級n-アルカン等との混合物、石油から分離精製された所謂パラフィンワックス、エチレンあるいはエチレンと他のα-オレフィンとを共重合して得られる低分子量重合体である中・低圧法ポリエチレンワックス、高圧法ポリエチレンワックス、エチレン共重合ワックスあるいは中・低圧法ポリエチレン、高圧法ポリエチレン等のポリエチレンを熱減成等により分子量を低下させたワックス及びそれらのワックスの酸化物あるいはマレイン酸変性物等の酸化ワックス、マレイン酸変性ワックス等が挙げられる。
本発明における融点は、ASTM D3417により、示差走査型熱量計(DSC)により測定した値である。また分子量はGPC法(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により、次の条件で測定して得た重量平均分子量(Mw)である。
装 置:ウオーターズ社製 150C型
カラム:東洋曹達工業(株)製 TSK GMH-6(6mm φ×600mm)
溶 媒:o-ジクロルベンゼン (ODCB)
温 度:135℃
流 量:1.0ml/min
注入濃度:30mg/20ml ODCB(注入量400μl)
尚、東洋曹達工業(株)製及びプレツシャー・ケミカル社製の標準ポリスチレンを用いてユニバーサル法によりカラム溶出体積は較正した。
本発明の方法は、前記超高分子量ポリオレフィンAに前記炭化水素系可塑剤Bを添加混合してMFRを0.005ないし50g/10min、好ましくは0.01ないし50g/10min、更に好ましくは0.1ないし10g/10minの範囲にした混合物を溶融混練後ダイより押出し、前記超高分子量ポリオレフィンAの融点未満の温度で二軸延伸することにより、前記高強度、高弾性率の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムを製造する方法である。
本発明の方法は、超高分子量ポリオレフィンAと炭化水素系可塑剤Bとの混合物のMFRが上記範囲内であれば超高分子量ポリオレフィンAの量は、とくに限定はされないが、通常は超高分子量ポリオレフィンAが15ないし80重量%、好ましくは30ないし70重量%(混合物を100重量%とする)の範囲である。超高分子量ポリオレフィンAの量が15重量%未満では炭化水素可塑剤Bの量が多過ぎて、押出された原反シートの延伸性が損なわれる場合がある。一方、超高分子量ポリオレフィンAの量が80重量%を越える量では、たとえ前記炭化水素可塑剤Bを添加してもMFRが0.005以上にならず、溶融押出しが困難であり、押出された原反フィルムの肌荒れが激しく、また二軸延伸時にも多大な応力を必要とし、延伸性にも劣る。
超高分子量ポリオレフィンAと炭化水素系可塑剤Bとの溶融混練は、例えばヘンシエルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、一軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で、通常融点以上ないし350℃、好ましくは融点+50℃以上ないし300℃の温度で行い得る。溶融混練はフィルムの押出成形に先立ち別途行ってもよいし、スクリュー押出機等で溶融混練しながらダイよりフィルムを押出す連続法によって行ってもよい。
押出温度は通常150ないし350℃、好ましくは190ないし300℃の温度で行い得る。押出温度が150℃未満では溶融粘度が高く押出性に劣り、一方350℃を越えると超高分子量ポリオレフィンが熱劣化により分子量が低下する虞れがある。
前記方法により押出されたフィルムは超高分子量ポリオレフィンAの融点(A)未満の温度、好ましくは融点(A)未満の温度以下ないし60℃以上の温度で二軸延伸される。延伸温度が融点(A)以上の温度では、延伸による配向が不充分であり、機械的強度を発揮できない。また延伸温度が60℃以下では、延伸に多大な応力を必要とするので好ましくない。
押出された原反フィルムを二軸延伸する方法はインフレーションフィルム法による同時二軸延伸法、あるいはテンター法による同時二軸延伸法、もしくはロール等により縦方向に延伸後、テンターにより横方向に延伸する逐次二軸延伸法が挙げられる。二軸延伸時の延伸温度が融点(A)未満の温度で且つ超高分子量ポリオレフィンAの引張試験における降伏点応力が消失する温度以上の温度範囲であればいずれの方法に拠っても二軸延伸できるが、降伏点応力が消失する温度未満の温度で延伸する場合は、逐次延伸法では横延伸時にフィルムが縦割れを起こすので、同時二軸延伸法を採用するのが好ましい。
押出されたフィルムを二軸延伸する際にはダイより押出された溶融状態のフィルムが冷却されて一旦固化した後再度フィルムを前記温度範囲内に加熱して行うものであり、この方法は、温度範囲の制御が容易であるので好ましい。また二軸延伸する際の延伸倍率は、通常縦方向が5ないし20倍、横方向が3倍以上、好ましくは5ないし20倍程度である。延伸倍率が5倍未満では延伸による機械的強度の発現が出来ない。尚、延伸倍率が20倍を越えると、延伸により成形された超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの厚さが原反フィルムの400分の1以下となるので延伸操作が困難である場合がある。また延伸温度が前記降伏点応力が消失する温度以上であれば、低倍率の延伸もできるが、その温度未満では5倍以上に限られる。本発明に用いる超高分子量ポリオレフィンAには、前記炭化水素系可塑剤Bに加えて、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料、染料、無機充填剤等通常ポリオレフィンに添加して使用される各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合しておいてもよい。
本発明の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択され得るが通常50ないし0.5μ、好ましくは20ないし2μの範囲である。又、該フィルムは単独で用いてもよいし、片面もしくは両面をコロナ放電処理等を行って、必要に応じてアンカー処理を行い、他の樹脂もしくは紙、セロファン、アルミニウム箔と積層して用いてもよい。
本発明の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムは、従来の通常のポリオレフィンフィルムでは得られない高引張強度、高衝撃強度を有し且つ高弾性であるので包装材料等のポリオレフィンフィルム分野に加えて高弾性、高強度フィルム分野への利用が可能となり各種材料との複合化による補強材にも使用できる。さらには高延伸により超薄膜化が計れるためにコンデンサーフィルム、絶縁紙にも使用できる。
また本発明の超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルムは均一に炭化水素系可塑剤Bが分散されているので、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン等により抽出することにより副次的に生成する微孔を利用した選択膜、エレクトレットフィルム等の機能材料への適性にも優れている。
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
超高分子量ポリエチレン([η]=8.20dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との50:50(重量比)ブレンド物(MFR:0.037g/10min)を次の条件下で二軸延伸フィルム成形を行った。前記ブレンド物を30mmφ、L/D=25のスクリュー押出機で溶融後ダイ幅30cmのコートハンガー型T-ダイ(設定温度:280℃)よりシートを押出しロールで冷却して厚み200μの均一なシートを得た。次いで該シートから90mm×90mmの試料を切り出し二軸延伸機(東洋精機製作所製)を用いて、延伸温度120℃の条件下で種々の倍率で二軸延伸し均一な厚さの二軸延伸フィルムを得た。該延伸フィルムの評価を以下の方法で行った。
延伸性
4:切断なし、均一延伸
3:延伸ムラ、殆どなし
2:延伸ムラ、ややあり
1:延伸ムラ大
引張試験
島津製作所製 IS-500型引張試験機を用いて室温(23℃)にて測定した。試料片形状はJIS I号ダンベルでクランプ間距離は80mm、引張速度20mm/minとした。
なお、初期弾性率は引張試験にて得られる、応力-歪曲線の初期勾配から求めた。また破断強度は同様に応力-歪曲線の破断応力から求めた。初期弾性率と破断強度の算出に必要な試験片断面積は重量と比重とから試験片の厚みを算出して求めた。試験片の比重は密度勾配法で求めた。
衝撃強度
フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所製)で1/2”φ球面の衝撃頭を用いて測定した。
結果を第1表に示す。

比較例1
実施例1で用いたブレンド物を、延伸倍率以外はすべて実施例1と同じ条件にして二軸延伸フィルム成形を行い、均一な厚さの二軸延伸フィルムを得た。得られた結果を第2表に示す。

実施例2
超高分子量ポリエチレン([η]=19.6dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との40:60(重量比)ブレンド物(MFR:0.006g/10min)を用いる以外は実施例1と同様に行った。結果を第3表に示す。

実施例3
超高分子量ポリプロピレン([η]=8.20dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との70:30(重量比)ブレンド物(MFR:0.19g/10min)を次の条件下でフィルム成形を行った。前記ブレンドを20mmφ、L/D=20スクリュー押出機(設定温度220℃)で溶融混練後造粒を行った。得られたペレットをもちいて圧縮成形して90mm×90mm×300μのシートを得た。次いで該シートを実施例1と同様な方法で縦5倍、横5倍の二軸延伸を行った。このときの操作温度は150℃であり同時二軸延伸により厚さの均一なフィルムを得ることができた。該延伸フィルムの評価結果を第4表に示す。

比較例2
超高分子量ポリエチレン([η]=8.20dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との50:50(重量比)ブレンド物を用いて実施例1と同様の方法で210μのシートを得た。このあと操作温度120℃で縦4倍横4倍の逐次二軸延伸を行い厚さの均一なフィルムを得た。該二軸延伸フィルムの評価結果を第5表に示す。

実施例4
実施例1の方法で超高分子量ポリエチレン([η]=8.20dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との50:50(重量比)ブレンド物を用いて500μの均一なシートを得た。次いで該シートを延伸温度120℃にてそれぞれ縦横4、5、6、7倍に同時二軸延伸し、該延伸フィルムから試料を切り出し再たびそれぞれ同一温度にて2倍の同時二軸延伸を行うことにより延伸倍率が高い均一な二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を第6表に示す。

比較例3
超高分子量ポリエチレン([η]=8.20dl/g)とパラフィンワックス(融点=69℃、分子量=460)との50:50ブレンド物を実施例1と同一条件下でシート成形を行った。次いで該シートから試料を切り出した後室温にて二軸延伸を試みた所、延伸ムラ及び破断が起こり均一な延伸を行うことができなかった。
比較例4
超高分子量ポリエチレン([η]=8.20dl/g)を圧縮成形して100μのシートを得た。この時の操作条件は200℃である。次いで該シートを用いて二軸延伸を試みた。延伸温度を60,80,100,120℃としてそれぞれ延伸を試みたがいずれの場合も引張応力が大きく延伸ムラと破断により2倍以上の均一延伸は不可能であった。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項1.:本件特許明細書の特許請求の範囲第1項(甲第1号証:特許出願公告特公平4-16330号公報、甲第1号証の1:訂正公報、平成5年4月30日発行、甲第1号証の2:訂正公報、平成7年8月9日発行)の、
「1.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。」
との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「1.少なくとも極限粘度[η]が5.0dl/g以上の超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、初期弾性率が7300kg/cm2以上で且つ破断強度が910kg/cm2以上であることを特徴とする超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム。」
と訂正する。
訂正事項2.:本件特許明細書第4頁17行〜平成3年10月5日付け手続補正書第3頁2〜3行(甲第1号証:特許出願公告特公平4-16330号公報、甲第1号証の1:訂正公報、平成5年4月30日発行、甲第1号証の2:訂正公報、平成7年8月9日発行、第3欄41行〜43行)の
「超高分子量ポリオレフィンAで、且つ縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上であって、」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「超高分子量ポリオレフィンAで、且つ炭化水素系可塑剤Bを添加して縦方向の延伸倍率が5倍以上及び横方向の延伸倍率が5倍以上に二軸延伸したものであって、」と訂正する。
審理終結日 2003-01-28 
結審通知日 2003-01-31 
審決日 2003-02-12 
出願番号 特願昭58-102713
審決分類 P 1 41・ 113- Y (B29C)
P 1 41・ 531- Y (B29C)
P 1 41・ 811- Y (B29C)
P 1 41・ 813- Y (B29C)
P 1 41・ 121- Y (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 久直松井 佳章  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 高梨 操
井出 隆一
石井 克彦
田口 昌浩
登録日 1994-12-26 
登録番号 特許第1893038号(P1893038)
発明の名称 超高分子量ポリオレフィン二軸延伸フィルム及びその製造方法  
代理人 牧野 利秋  
代理人 増井 忠弐  
代理人 牧野 利秋  
代理人 小田島 平吉  
代理人 江角 洋治  
代理人 鈴木 修  
代理人 江角 洋治  
代理人 鈴木 修  
代理人 小田島 平吉  
代理人 増井 忠弐  
代理人 深井 俊至  
代理人 深井 俊至  

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